JP3982866B2 - 分泌型Kex2誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、Kex2プロテアーゼ活性を有し、培養液中に大量に分泌されるKex2誘導体及びその製造方法に関する。さらに、本発明は、前述の分泌型Kex2誘導体の利用法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くのキメラタンパク質発現法による生理活性ペプチド生産法が試みられており、目的ペプチドの遊離方法として、化学的あるいは酵素的切断法が用いられている。化学的方法としては、亜硝酸によるアスパラギン残基の開裂、CNBrによるメチオニン残基の開裂がある(Itakura et al. Science 198, 1059, 1977)。しかし、この方法は、目的ペプチドの修飾が避けらず、精製のコストにも問題がある。
【0003】
酵素的方法には、リジンのC末端側のペプチド結合を特異的に切断するリシルエンドペプチダーゼ(アクロモバクタープロテアーゼ−I)、グルタミン酸のC末端側のペプチド結合を特異的に切断するスタフィロコッカルプロテアーゼV8が用いられている(特公平6−87788)。しかし、前述の化学的方法やエンドプロテアーゼは1アミノ酸残基を認識するため、目的ペプチドを効率的にキメラタンパク質から切り出すためには目的ペプチドにこれらのアミノ酸残基が含まれないことが前提となり、生産できるペプチドが限定される。このため、複数のアミノ酸残基を認識する汎用性の高い切断方法が求められている。
【0004】
プロホルモン変換酵素は、生体内でペプチドホルモンをその前駆体から生成する酵素であり、インビトロにおいても、タンパク質からペプチドホルモンを切り出すための酵素として望ましい性質を持つことが期待される。Kex2プロテアーゼは、サッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のプロホルモン変換酵素で、Lys−Arg、Arg−Arg、Pro−Arg配列のC末端側のペプチド結合を特異的に切断する、カルシウム依存性セリンプロテアーゼである。Kex2プロテアーゼは、N末端側にシグナル配列をC末端側に疎水性アミノ酸が連続する膜貫通領域を持つ814アミノ酸残基からなるタンパク質で、細胞内ではトランスゴルジに局在する。
【0005】
なお、Kex2プロテアーゼをコードする塩基配列及び対応のアミノ酸配列を配列表・配列番号1に示す。サッカロマイセス・セレビジアエを宿主としたC末端領域を欠失したKex2誘導体の遺伝子発現およびその解析の結果、配列番号1のアミノ酸配列1から614までのアミノ酸配列を有するKex2誘導体は、Kex2プロテアーゼ活性を保持し、培養液中に分泌されることがわかっている(Fuller et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,86, 1434-1438, 1989 、特開平1−199578)。なお本明細書において、Kex2プロテアーゼの誘導体を配列番号1のアミノ酸配列1からのアミノ酸数によって表記する。即ち、配列番号1のアミノ酸配列1から614までのアミノ酸配列を有するKex2誘導体は、Kex2−614と表記する。
【0006】
今までに、分泌生産が検討されたKex2誘導体に、ss−Kex2とKex2Δp がある。
ss−Kex2は、Kex2−614に3アミノ酸残基のペプチドが付加したKex2誘導体で、サッカロマイセス・セレビジアエを宿主として生産が検討された(Brenner et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. , 89, 922-926, 1992)。宿主にプロテアーゼ欠損株(pep4)を用いて発現され(4mg/L培養液)、培養上清から精製効率20%で精製された。精製したss−Kex2は、Asn型糖鎖分解酵素EndoH 処理により分子量が低下することから、Asn型糖鎖を持つことが示唆されている。さらに合成基質を用いた酵素活性のpH依存性や基質特異性についても検討されている。
【0007】
Kex2Δp は、本明細書においてはKex2−666と表されるKex2誘導体で、昆虫細胞Sf9を宿主として生産条件が検討され、活性の90%が培養上清に分泌すること、また分泌したKex2Δp の分子量は70kDaで、細胞内における分子量120kDaに比べ小さいことがわかった(Germain et al. Eur. J. Biochem. 204, 121-126, 1992)。さらに、分子量70kDaのタンパク質はKex2を発現した培養上清にも見られること、また、Kex2Δp の385番目のセリン残基(Kex2プロテアーゼ活性の触媒部分)をアラニン残基に置換させると、培養上清に見られるKex2Δp の分子量が細胞内のそれと同じ120kDaになることから、70kDaのタンパク質は、培養液中でC末端部分が欠失したKex2Δp (120kDa)の自己分解物と考えられている。
【0008】
さらに、分解物の分子量およびKex2プロテアーゼの基質特異性から予想された切断部位Lys−Arg配列(配列番号1;アミノ酸配列番号503−504番目)をLys−Leu配列に変えた誘導体Kex2Δ504 の発現が試みられた。しかし、この場合も培養液中には70kDaのタンパク質が見られ、Kex2Δp は自己分解時には必ずしも合成基質から予想されるLys−Arg配列を切断していないこと、また、Kex2プロテアーゼの認識部位となるような配列が他に存在しないことから、Kex2Δ504 は合成基質から予想される配列と全く違う配列を認識して自らを切断している可能性が示唆されている。
【0009】
このように、Kex2誘導体については、合成基質を用いた基質特異性の研究は行われているが、タンパク質を用いた場合の基質特異性はわかっていない。また、種々のKex2誘導体の分泌生産量に関する知見も少なく、Kex2−614以外のKex2誘導体が安定に分泌生産可能かどうかについてもわかっていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、Kex2プロテアーゼ酵素活性を有する酵素を大量に供給する方法を提供することを課題とし、本発明を完成した。さらに、本発明は、工業スケールでも本酵素がキメラタンパク質から目的とするペプチドを切り出すために有用な酵素であることを実験的に示すものである。
具体的には、工業的スケールでのキメラタンパク質発現法による有用ペプチドの製造において、Kex2プロテアーゼ酵素活性を有する酵素が利用できるためには、以下の3点の課題の解決が必要である。
【0011】
まず第1の課題は、Kex2誘導体の生産量の向上である。今まで報告されている中でKex2プロテアーゼ活性を有する酵素として最も生産量が多いのはssーKex2で、その生産量は培養液1Lあたり約4mgである。しかし、この生産量は、工業スケールでキメラタンパク質から目的ペプチドを切り出すために用いる酵素の生産量としては少ない。また、Kex2Δp のような分泌型Kex2誘導体は、培養液中で自己分解する可能性が示唆されていて、しかも、その切断部位が予想できないことから、どのような誘導体をデザインすれば生産量を上げることができるかわかっていない。
【0012】
従って、自己分解しないKex2誘導体の選出および当該Kex2誘導体の高発現系の構築が必要になる。なお、本明細書において、自己分解とはKex2プロテアーゼ活性の低下を伴う自分自身の分解を意味し、Kex2プロテアーゼのLys−Arg(配列番号1;アミノ酸配列番号108〜109)の自己切断に伴う成熟化(Brenner & Fuller, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 922-926, 1992 )を意味するものではない。
【0013】
次に第2の課題には、他のプロテアーゼが混入していない高純度のKex2誘導体の精製方法の確立が上げられる。今まで報告されているKex2誘導体の活性は、合成基質のみを用い、タンパク質を基質とした評価がないため、他のプロテアーゼが混入しているか否かわかっていない。特に工業スケールでのキメラタンパク質の切り出しにおいては、反応条件の細かなコントロールが困難で、他のプロテアーゼの混入は著しく目的ペプチドの回収率を低下させる可能性があり、Kex2プロテアーゼ活性を有する酵素を高純度に精製する必要がある。
【0014】
最後に第3の課題として、Kex2プロテアーゼ活性を有する酵素によるキメラタンパク質の切断条件設定が上げられる。タンパク質の高次構造が、酵素活性、反応条件下における酵素の安定性、あるいは、基質の認識に影響を及ぼすことは当業者には良く知られている。一方、先述の報告では、これらの点についてほとんど検討されていない。特に、キメラタンパク質発現法では、キメラタンパク質が不溶性封入体を形成する場合が多いので、これを可溶化するために尿素等の変性剤が用いられる。しかし、一般に酵素がどのような構造を有していれば尿素存在下で酵素活性を保持できるかはわかっていない。従って、Kex2プロテアーゼや分泌型Kex2誘導体が、タンパク質から目的とするペプチドを切り出す酵素として使用可能か否かはわかっていない。
【0015】
また、他のプロホルモン変換酵素についても、大量生産には成功しておらず、これらの酵素が試験管内でキメラタンパク質から目的ペプチドを切り出すための酵素として用いることが可能か否かもわかっていない。従って、Kex2プロテアーゼを始めとするプロホルモン変換酵素をキメラタンパク質から目的ペプチドを遊離させる酵素として用いるためには、効率的な発現方法と精製方法の確立、さらに、試験管内でタンパク質を基質としたときの切断条件の設定が必要である。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前述の課題の解決方法を検討した結果、N末端1位から618〜698のアミノ酸配列を有するKex2誘導体は培養液中で自己分解することなく分泌生産量が著しく増加すること、また、宿主にメタノール資化性酵母を用いればさらに生産量が増加することを見いだし、Kex2誘導体の大量供給を可能にした。また、分泌型Kex2誘導体を、培養上清濃縮液から、陰イオン交換クロマト、疎水クロマトの2ステップでSDS−PAGE上単一バンドまで精製し、精製したKex2誘導体には、キメラタンパク質から目的ペプチドを切り出す条件では、目的ペプチドを分解し、回収率を低下させるような他のプロテアーゼ活性が見られないことを確認した。
【0017】
さらに、キメラタンパク質から目的ペプチドを切り出す条件において、尿素濃度により分泌型Kex2誘導体の基質特異性が変化することを見いだし、目的ペプチド内にKex2プロテアーゼの認識配列を2カ所含む場合でも目的ペプチドを75%の効率でキメラタンパク質から切り出せることを示した。また、中量スケールで、精製したKex2−660を用いてキメラタンパク質βGal−117S4HPPH34からhPTH(1−34)を切り出すことができること、すなわち、分泌型Kex2誘導体の生産量、純度、キメラタンパク質からの目的ペプチドの切り出し効率等が工業スケールの生産にも適応できることを示し、本発明を完成させた。
【0018】
上記の課題を解決するため、本発明は、配列番号:1に示すKex2プロテアーゼのアミノ酸配列において、アミノ酸番号1のMetをN−末端としアミノ酸番号618〜698の間のいずれかのアミノ酸をC−末端とする天然のアミノ酸配列、又はこの天然のアミノ酸配列に対して1個もしくは複数個のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加により修飾されているアミノ酸配列をコードするDNAを含む発現ベクターでメタノール資化性酵母を形質転換し、得られた形質転換体を培養し、該培養物から採取することにより得られるKex2プロテアーゼの酵素活性を有する蛋白質を提供する。なお、上記の蛋白質を含めて、本明細書では、「Kex2プロテアーゼ活性を有する酵素」、「Kex2プロテアーゼ誘導体」、「分泌型Kex2誘導体」等という場合がある。
【0019】
本発明はまた、前記の蛋白質をコードする遺伝子、特にDNA、該DNAを含んで成るベクター、特に発現ベクター、及び該ベクターでメタノール資化性酵母を形質転換することにより得られる形質転換体を提供する。
本発明はさらに、前記蛋白質の製造方法であって、上記発現ベクターにより形質転換されたメタノール資化性酵母を培養し、該培養物から該蛋白質を採取することを特徴とする方法を提供する。該蛋白質は、培養上清から、陰イオン交換クロマトグラフィー及び疎水性クロマトグラフィーを用いて行うのが好ましい。
【0020】
本発明はまた、前記蛋白質を用いた、キメラタンパク質からの目的ペプチドの切り出し方法を提供する。キメラ蛋白質は、目的ペプチドに保護ペプチドが付加されたタンパク質であり、目的ペプチドと保護ペプチドの接合部が、前記蛋白質が認識するアミノ酸配列であれば、前記蛋白質により目的ペプチドを切り出すことができる。また、目的ペプチドと保護ペプチドとの接合部位が、前記蛋白質が認識するアミノ酸配列でない場合においても、目的ペプチドと保護ペプチドの間に前記蛋白質の認識部位を挿入することにより、前記蛋白質を用いて目的ペプチドを切り出すことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の蛋白質は、後記のごとく蛋白質の長さ、特にC−末端の位置により生産分泌効率が顕著に異る。本発明は、高い生産分泌効率をもたらす長さを有する蛋白質を提供するものであり、配列番号:1におけるアミノ酸配列の1位のMetから618〜698位のいずれかのアミノ酸までのアミノ酸配列を有するKex2プロテアーゼ誘導体である。本発明のKex2プロテアーゼ誘導体のC−末端は、好ましくは配列番号:1のアミノ酸配列の630位〜688位のいずれかのアミノ酸であり、さらに好ましくは630位〜682位のいずれかのアミノ酸であり、さらに好ましくは630位〜679位のいずれかのアミノ酸である。配列番号:1の前記アミノ酸配列の一部分からなる上記の種々のアミノ酸配列を、本発明においては天然のアミノ酸配列と称する場合がある。
【0022】
しかしながら、酵素タンパク質のアミノ酸配列中の活性に関与する領域以外の領域において複数個のアミノ酸の他のアミノ酸による置換、アミノ酸の欠失又はアミノ酸の付加を行っても、その酵素の活性が維持されることは当業者によりよく知られている。従って、本発明は、上記の天然のアミノ酸配列を有するKex2プロテアーゼ誘導体の他に、上記天然のアミノ酸配列に対して1個又は複数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加により修飾されているアミノ酸配列を有し、なおKex2プロテアーゼの活性を有している蛋白質も包含する。
【0023】
本発明はまた、前記の種々のポリペプチドをコードする遺伝子、特にDNAを提供する。この様なDNAは、例えば配列番号:1に示すような塩基配列、又は同じアミノ酸配列をコードする他の塩基配列を有する全長DNA又は目的とするDNAを含有するDNAを適当な制限酵素により切断し、所望によりオリゴヌクレオチドを連結するか、又は前記のDNAの適当な場所に翻訳終止コドンを導入する等の常法に従って作製することができる。また、前記の修飾されたアミノ酸配列を有するDNAは、例えば配列番号:1に記載の塩基配列を有する天然の全長DNA又はその断片を鋳型とし、使用し、所望の変異を含むプライマーオリゴヌクレオチドを変異原プライマーとして使用して、部位特定変異誘発法(site−directed mutagenesis)、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)等の常法を用いて作製することができる。
【0024】
本発明の発現ベクターは、使用する宿主において機能し得るプロモーター等の発現制御領域を含有する。例えば、メタノール資化性酵母を宿主として使用する場合には、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素のプロモーター、グリセロリン酸キナーゼのプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、アルコールオキシダーゼのプロモーター、ギ酸脱水素酵素のプロモーター、メタノールオキシダーゼのプロモーター等が使用できる。
【0025】
本発明の宿主としては、メタノール資化性酵母が使用でき、例えばピキア(Pichia)、ハンセヌラ(Hansenula)、キャンディダ(Candida)属等に属するものが好ましく、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、キャンディダ・ボイディニイ(Candida boidinii)種等が挙げられる。特に好ましい酵母はキャンディダ属又はピキア属の酵母、例えばキャンディダ・ボイディニイ、及びピキア・パストリスである。
【0026】
即ち、本発明者等は、Kex2プロテアーゼ活性を有する酵素を、キメラタンパク質からペプチドを工業スケールで切り出すための酵素として利用可能にするためには、1)生産量が高く大量に供給できること、2)高純度で目的ペプチドを切断する他のプロテアーゼの混入がないこと、3)タンパク質を基質とした切断条件が設定できること、の課題の解決が必要であると考え、以下の検討を行った。
【0027】
まず、最初の課題であるKex2プロテアーゼ活性を有する酵素の生産量を上げる条件について検討した。Kex2プロテアーゼ活性を有する酵素を工業スケールで大量に精製するためには、生産量が多いことはもちろん、その精製が簡単であることが重要であり、このためには、Kex2誘導体を他のタンパク質が少ない培養溶液中への分泌させることが有利であると考えた。分泌型Kex2誘導体には、前述のようにssKex2に関する報告があるが、その生産量は4mg/L培養液で、工業的スケールで用いるためには少ない。そこで、種々の分泌型Kex2誘導体をコードする遺伝子を作製してサッカロマイセス・セレビジアエを宿主として発現させ、分泌生産量を調べた。
【0028】
本発明において使用したKex2誘導体は、Kex2−614、Kex2−630、Kex2−640、Kex2−650、Kex2−660、Kex2−679、Kex2−682、Kex2−688及びKex2−699である。Kex2誘導体の遺伝子の発現には、サッカロマイセス・セレビジアエのグリセルアルデヒドー3ーリン酸脱水素酵素(GAP)遺伝子のプロモーターを用いた。これらの発現ユニットを含むプラスミドを導入したサッカロマイセス・セレビジアエを30℃で一晩培養し、培養液中のKex2プロテアーゼ活性を合成基質Boc−Leu−Arg−Arg−MCAを基質として測定した。
【0029】
その結果、Kex2−614、Kex2−630、Kex2−640、Kex2−650、Kex2−660、Kex2−679、Kex2−682及びKex2−688の遺伝子の発現ユニットを導入した酵母の培養上清には、Kex2プロテアーゼ活性が検出されるが、Kex2−699の遺伝子の発現ユニットを導入した酵母の培養上清には、活性は検出されないことがわかった。このことから、Kex2誘導体を培養上清に分泌させるためには、N末端1位からm位までのアミノ酸残基(m=614〜688)を有する誘導体の遺伝子を用いればいいことが明らかになった。
【0030】
さらに、OD660あたりの分泌生産量は、実施例1によれば今までに報告があるKex2−614に比べ、Kex2−660及びKex2−679では有意に多いことも見いだした。また、培養上清を分画分子量サイズ10,000の限外ろ過膜を用いて20倍濃縮したサンプルをSDS−PAGEにて解析した結果、Kex2−660及びKex2−679は、Kex2−614に比べ、Kex2活性だけではなく、分泌量も増加していることが明らかになった。また、これらの分子量はアミノ酸残基数に対応し大きくなること、すなわち、今回の培養においては、昆虫細胞Sf9を宿主としたKex2Δp のように自己分解物が蓄積していないことが明らかになった。
【0031】
さらに、実施例9によれば、Kex2−630、Kex2−640、Kex2−650、Kex2−660、およびKex2−679の培養液OD660あたりのKex2活性は、今までに報告されているKex2−614に比べ10倍以上高いこと、また、Kex2−682、Kex2−688のKex2活性は、それぞれKex2−614の6倍と3.4倍で、Kex2−699のKex2活性は検出できないことが明らかになった。
【0032】
すなわち、培養液のKex2活性は、発現するKex2誘導体のC−末端のアミノ酸残基がKex2の630から679番目のアミノ酸残基までであるとき高くなるが、それ以上ではC−末端領域が長くなるほど低くなることも明らかになった。
また、SDS−PAGE解析から、上記の結果はKex2の分泌量が増加していることも確認した。さらに、今回は、Kex2誘導体のアミノ酸残基が増加するほどその分子量も増加し、昆虫細胞Sf9を宿主にしたKex2Δp の生産の場合のように自己分解物が蓄積しないこともわかった。
【0033】
今回作製した分泌型Kex2誘導体は培養上清で自己分解を起こすことなく蓄積できることがわかったので、発現系をサッカロマイセス・セレビジアエの系から培養液あたりの生産量が高いメタノール資化性酵母、例えばキャンディダ・ボイディニイを宿主とした発現系に換え、Kex2−660の生産検討を行った。その結果、生産量を培養上清1Lあたり340mgまで上げることができた。この量は、約200gの生理活性ペプチドhPTH(1−34)をキメラタンパク質から遊離させることができる量であり、本発明により、工業スケール量でキメラタンパク質から有用ペプチドを切り出すために必要な量の酵素を供給できることを示している。従って、メタノール資化性酵母としてキャンディダ(Candida)属酵母が好ましいことが明らかになった。
【0034】
次に、2番目の問題点である、分泌型Kex2誘導体の純度について述べる。まず、分泌生産量が多かったKex2−660を培養上清から精製した。サッカロマイセス・セレビジアエで細胞外に分泌したKex2−660を、0.2mMカルシウム存在下で、培養上清を限外濾過(分子量30,000)で濃縮し、その後陰イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性クロマトグラフィーで単一バンドまで精製した(回収率57%)。この回収率は今まで報告されている中で最も高く、この方法で高純度のKex2誘導体を大量に供給できることが明らかになった。
【0035】
また、Kex2誘導体のタンパク質を基質としたときの基質特異性、他のプロテアーゼの混入の可能性について調べるために、キメラタンパク質βGal−139S(FM)PPH84に精製した過剰量のKex2−660を作用させ、そのとき生じるペプチドの構造を調べた。なお、βGal−139S(FM)PPH84は、大腸菌β−ガラクトシダーゼのN末端から139アミノ酸残基までのポリペプチドのうち、76番目と122番目のシステイン残基をセリン残基に置換したβGal−139Sに、Phe−Met配列及びヒト副甲状腺ホルモン由来のプロ配列(Lys−Ser−Val−Lys−Lys−Arg)を介してhPTH(1−84)を結合させたキメラタンパク質である。βGal−139Sのアミノ酸の配列を配列番号2に、hPTH(1−84)のアミノ酸配列を配列番号3に示す。
【0036】
その結果、生じたペプチドのN末端の配列は、Kex2プロテアーゼの基質特異性から予想されるペプチド断片由来であり、精製したKex2−660には、キメラタンパク質から目的ペプチドを切り出す時に問題になるような他のプロテアーゼが混入していないことがわかった。
精製したKex2−660を用い、第3の課題、タンパク質を基質としたときの切断条件について検討した。
【0037】
まず、キメラタンパク質から目的ペプチドを遊離させる際に汎用される尿素の影響について検討した。Kex2−660を、0〜4.0M尿素存在下で合成基質Boc−Leu−Arg−Arg−MCAに作用させた結果、1.0M、2.0M及び4.0M濃度では、尿素が存在しない場合に比べ、活性がそれぞれ70%、40%及び10%に低下することがわかった。一般的に、不溶性封入体を尿素溶液に溶解後、プロテアーゼ等を作用させる条件としては2.0〜4.0Mの尿素溶液が用いられる。従って、キメラタンパク質の溶解条件等を検討すれば、Kex2−660はキメラタンパク質から目的ペプチドを切り出すための酵素として使用可能と考えた。
【0038】
次に、Kex2−660をキメラタンパク質βGal−139S(FM)PPH84に作用させたときの、1.5〜3.0M尿素の影響について調べた。Kex2プロテアーゼによって切断が予想される配列は、Arg−Arg(配列番号2;アミノ酸配列番号13−14、以下切断部位Aと記す)、Lys−Arg(プロ配列部分、以下切断部位Bと記す)、Pro−Arg(配列番号3;アミノ酸配列番号43−44、51−52、以下、それぞれ切断部位C及び切断部位Dと記す)の4カ所に存在する。なお、それぞれの部位のC末端側がプロテアーゼによって切断される。
【0039】
Kex2プロテアーゼ処理で生じるペプチドフラグメントの構造および量について調べた結果、1.5〜2.5Mの範囲では尿素濃度が高いほうがKex2−660の切断効率は高いが、尿素濃度2.5Mと3.0Mでは、切断効率に差がないことがわかった。さらに、尿素の基質特異性に与える影響に関しては、尿素濃度が上昇するに従い、切断部位Bの切断効率は良くなるが、切断部位Cの切断効率は、2.5M尿素濃度でピークを迎えること、その結果、尿素濃度が高い方が、キメラタンパク質からのhPTH(1−84)の回収率が良いことがわかった。また、切断部位Dの切断は観察されなかった。3.0〜4.0Mの尿素濃度でも、同様の傾向が観察された。これらの知見は、合成基質を用いた場合からは予想できず、本発明により初めて明らかになった。
【0040】
Kex2−660を用いてβGal−139S(FM)PPH84からhPTH(1−84)を切り出す条件についてさらに検討した。キメラタンパク質からhPTH(1−84)を切り出す条件で、種々の量比のKex2−660(キメラタンパク質1mgあたりKex2−660を25kU、50kU、100kU、150kU及び200kU)を作用させ、生じるペプチドフラグメントの構造と回収率について調べた。50kU/mlのKex2−660を用いた場合、約75%の効率でhPTH(1−84)が切り出された。また、このとき、約10%のβGal−139S(FM)PPH84が残っていた。
【0041】
βGal−139S(FM)PPH84はKex2−660量を増加させるに従って減少し、200kU/mlではほぼ完全に消失した。しかし、同時にhPTH(1−44)とhPTH(45−84)の割合も増加し、hPTH(1−84)の回収率は増加しないことがわかった(図20)。一方、Kex2−660量を増やしても、hPTH(1−44)増加分以上にhPTH(1−84)量が減少することはなく、後述の実施例2で精製されたKex2−660には、キメラタンパク質からhPTH(1−84)を切り出す条件において、Kex2プロテアーゼと基質特異性が異なる他のプロテアーゼは混入していないことが確認された。
【0042】
また、反応条件を選べば、目的ペプチドにKex2プロテアーゼの切断部位を持つ場合でも、キメラタンパク質から効率良く(切り出し効率75%)目的ペプチドを切り出すことができることが判明した。なお、この切り出し効率は、ファクターXaを用いた場合のhPTH(1−84)の切り出し効率50%(Gardella et al. J. Biol. Chem.265, 26, 15854-15859, 1990)より高い。
【0043】
Gardellaらは、ファクターXaの認識部位Ile−Glu−Gly−Arg配列がhPTH(1−84)に存在しないにも関わらず、酵素量を増加させたり反応時間を長くした場合hPTH(1−84)の回収率が下がることから、混入するプロテアーゼまたはファクターXa自身がhPTH(1−84)を分解している可能性を示唆している。hPTH(1−84)にはKex2プロテアーゼの切断配列が2ヶ所存在するにも関わらず、高い回収率でhPTH(1−84)が得られたという事実は、本発明により生産量が増加し、精製されたKex2誘導体が、キメラタンパク質から目的ペプチドを切り出すための酵素として有用であることを示している。
【0044】
さらに、精製したKex2−660は、尿素非存在下で可溶性キメラタンパク質CATPH34から、尿素存在下で不溶性キメラタンパク質βGal−117S4HPPH34から、hPTH(1−34)を切り出すことができ、保護ペプチドや切断部位領域が異なるキメラタンパク質を基質とした場合にも働き、広く工業的に応用できることがわかった。また、尿素非存在下でもプロテアーゼの混入は検出できなかった。
【0045】
すなわち、生産量が増加し、単一バンドまで精製された分泌型Kex2誘導体には、キメラタンパク質から目的ペプチドを遊離させる条件では尿素の存在の有無に関わらず、目的ペプチドを分解し、回収率を下げるような他のプロテアーゼが混入していないこと、また、このKex2誘導体は、目的ペプチドにKex2プロテアーゼの認識部位が存在する場合でも、条件を選べば効率良く目的ペプチドを回収できること、さらに、培養液1Lあたりの発現量は、約200gの目的ペプチドを遊離できる量であり本発明で得られた分泌型Kex2誘導体が工業的スケールでキメラタンパク質から目的ペプチドを切り出すために必要な量を供給できることが明らかになった。
【0046】
【実施例】
以下の参考例および実施例等により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、本発明のための材料として用いたプラスミド、大腸菌と酵母および、各実施例に共通な基本的な実験操作等について述べ、さらに参考例、実施例の順に述べる。
【0047】
プラスミド
プラスミドpG97S4DhCT[G]は、β−ガラクトシダーゼのN末端から97番目までのアミノ酸からなるペプチド(76番目のシステイン残基がセリン残基、40,41,71、と75番目のグルタミン酸残基がアスパラギン酸残基に置換されている:βGal−97S4Dと呼ぶ)にグルタミン酸残基を介してhCT[G](ヒトカルシトニンの32番目のアミノ酸のC末端にグリシン残基が付加したペプチド)が結合したキメラタンパク質を大腸菌ラクトースオペロンのプロモーターにより発現できるプラスミドである。
【0048】
目的とするペプチドをコードするDNA領域を読み枠を合わせてEco RI−Sal IDNAフラグメントとして導入すれば、βGal−97S4Dとのキメラタンパク質を発現することができる。なお、このプラスミドを含有する大腸菌W3110株は、Escherichia coli SBM323と命名し、工業技術院微生物工業技術研究所に受託番号:微工研条寄第3503号(FERM BP−3503)として1991年8月8日に寄託されている。
【0049】
プラスミドptacCATは、合成プロモーターtacによりクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を発現できるプラスミドである。このプラスミドを含有する大腸菌JM109株は、Escherichia coli SBM336と命名し、工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号:FERM BP−5436として1996年3月1日に寄託されている。pG97S4DhCT[G]とptacCATは、可溶性hPTH(1−34)キメラタンパク質発現ベクターptacCATPTH(1−34)作製の材料として用いた(参考例2および図5、図6)。
【0050】
プラスミドpG210ShCT[G]は、pG97S4DhCT[G]のβGal−97S4Dをコードする遺伝子をβGal−210S(β−ガラクトシダーゼのN末端から210番目までのアミノ酸からなるペプチドで76,122および154番目のシステイン残基がセリン残基に置換されている)をコードする遺伝子に置換したプラスミドである。
【0051】
pGHα210(Ser)rop- を制限酵素PvuIIとEcoRIで消化して得られるβGal−210Sをコードする遺伝子を含むDNAフラグメントとpG97S4DhCT[G]を制限酵素PvuIIとEcoRIで消化して得られるベクター部分を含むDNAフラグメントと連結して得ることができる(図24)。なお、pGHα210(Ser)rop- の製作方法については、特公平6−87788に開示されている。pG210ShCT[G]は、合成ヒト副甲状腺ホルモン前駆体(hProPTH(1−84))遺伝子のクローニングおよびプラスミドpGP#19の作製の材料として用いた(参考例1および図5)。
【0052】
プラスミドpCRIIは、インビトロジェン社から購入し、PCR産物を直接クローニングするために用いた。
プラスミドpYE−22mは、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAP)遺伝子のプロモーターおよびターミネーターを利用し、その間にマルチクローニング部位(MCS:Eco RI → Sal I)を持つ発現ベクターで、プロモーターはEco RI側にあり、選択マーカーにTRP1遺伝子を、複製開始点に2μmDNAの一部(Inverted Repeats)を持つ。なお、プラスミドpYEー22mを有する大腸菌JM109株は、Escherichia coli SBM335と命名し、FERM BP−5435として1996年3月1日に工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている(図12)。
【0053】
プラスミドpYE−KEX2(5.0)b(Mizuno et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 156, 246-254, 1988 )は、PCR法によりKex2誘導体の遺伝子を作製するための鋳型として用いた(図12)。プラスミドpYE−KEX2(RI-Pvu II )(特開平1−199578)は、Kex2−614のC末端に14アミノ酸(配列番号4)からなるペプチドが付加したタンパク質の発現ベクターpYE−614の作製のために用いた(図13)。
プラスミドpNOTellは、アルコールオキシダーゼ遺伝子のプロモーターおよびターミネーターを利用し、その間に制限酵素 Not I 部位を持つ発現ベクターで、選択マーカーにURA3遺伝子を持つ(特開平5−344895)。
【0054】
大腸菌と酵母
コンピテントセルの大腸菌JM109株は東洋紡(株)から購入し、プラスミドの調製およびキメラタンパク質発現に利用した。大腸菌JM101株とM25株(Sugimura et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 153, 753-759, 1988 )は、それぞれキメラタンパク質CATPH34およびβGal−117S4HPPH34の生産に用いた。Kex2プロテアーゼ分泌発現のための宿主には、サッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)K16−57C株(MAT α leu2 trp1 ura3 kex2-8 :Mizuno et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 156, 246-254(1988))およびキャンディダ・ボイディニイ(Candida boidinii )TK62株を用いた。
【0055】
TK62株は、キャンディダ・ボイディニイS2AOU−1株から取得されたURA3変異によるウラシル要求株である(Sakai, Y., et al., J. Bacteriol., 173,7458〜7463, 1991)。なお、キャンディダ・ボイディニイS2AOU−1株は、Candida boidinii SAM1958と命名され、工業技術院微生物工業技術研究所に受託番号:微工研条寄第3766号(FERM BP−3766)として、1992年2月25日に寄託されている。
【0056】
培地
大腸菌の培地には、LB培地(0.5%(w/v)酵母エキス、1%(w/v)トリプトン、0.5%(w/v)NaCl)、SB培地(1.2%(w/v)酵母エキス、2.4%(w/v)トリプトン、0.5%(v/v)グリセロール)、SB2培地(2%(w/v)酵母エキス、1%(w/v)トリプトン、0.5%(v/v)グリセロール、1.2%(w/v)K2 HPO4 、0.3%(w/v)KH2 PO4 )、およびNU培地(0.3%(w/v)酵母エキス、1.5%(w/v)グルコース、0.3%(w/v)KH2 PO4 、0.3%(w/v)K2 HPO4 、0.27%(w/v)Na2 HPO4 、0.12%(w/v)(NH4 )2 SO4 、0.2g/L NH4 Cl、0.2%(w/v)MgSO4 、40mg/L FeSO4 ・7H2 O、40mg/L CaCl2 ・2H2 O、10mg/L MnSO4 ・nH2 O、10mg/L AlCl3 ・6H2 O、4mg/L CoCl2 ・6H2 O、2mg/L ZnSo4 ・7H2 O、2mg/L Na2 MoO4 ・2H2 O、1mg/L CuCl2 ・7H2 O、0.5mg/L H3 BO3 )を用いた。
【0057】
サッカロマイセス・セレビジアエの培養には、YCDP培地(1%(w/v)酵母エキス、2%(w/v)カザミノ酸、2%(w/v)グルコース、100mMリン酸カリウム(pH6.0))を用いた。
キャンディダ・ボイディニイ及びピキア・パストリスの培養には、BMGY培地(1%(w/v)酵母エキス、2%(w/v)ペプトン、1%(v/v)グリセロール、1.34%(v/v)YNB w/o AA:Yeast Nitrogen Base without Amino Acids 、0.4mg/Lビオチン、100mMリン酸カリウム(pH6.0))、BMMY培地(1%(w/v)酵母エキス、2%(w/v)ペプトン、0.5%(v/v)メタノール、1.34%(v/v)YNB w/oAA、0.4mg/Lビオチン、100mMリン酸カリウム(pH6.0))、YPD培地(1%(w/v)酵母エキス、2%(w/v)ペプトン、2%(w/v)グルコース)、YPGM培地(1%(w/v)酵母エキス、2%(w/v)ペプトン、3%(v/v)グリセロール、1%(v/v)メタノール、1.34%(v/v)YNB w/o AA、50mMリン酸カリウム(pH6.0))を用いた。
【0058】
基本的な実験操作
具体的に参考例および実施例に示さない場合は、実験操作は以下の方法に従った。
DNAプライマーは、フォスホアミダイド法による全自動合成機(アプライドバイオシステムズモデル 380A )で合成した。DNA塩基配列はジデオキシ法で決定した。
制限酵素によるDNAの切断は購入先の指定する3〜10倍量の酵素を用いて1時間反応させた。プラスミド構造の解析は0.5〜1μgDNAを用いて20μl反応液中で、DNAの調製には3〜10μgのDNAを用いて50〜100μl反応液中で行った。反応温度、反応バッファー等の条件は購入先の指定に従った。
【0059】
アガロースゲル電気泳動サンプルは、反応液に1/5容量の色素液(0.25%(w/v)ブロムフェノールブルーを含む15%(w/v)Ficoll水溶液)を加え調製した。アガロースゲル電気泳動用バッファーにはTAEバッファー(10mM Tris、20mM酢酸、2mM EDTA)を用いた。プラスミドの構造解析にはMupid−2(コスモバイオ(株))を用いて100ボルト1時間の泳動を行ない、DNAフラグメント調製のためには水平ゲル(20 cm x 15 cm x 0.7 cm)を用いて150ボルト4時間または35ボルト13時間の泳動を行なった。ゲルはエチジウムブロミド水溶液(0.5μg/ml)で20分染色した後、紫外線照射してDNAバンドを検出した。アガロースゲル濃度は、分画するDNAフラグメントの大きさに合わせて、1.0、1.5、2.0%(w/v)を用いた。
【0060】
アガロースゲル中のDNAは、0.1×TAEバッファーを満たした透析チューブ内にゲルを入れ電圧をかけて溶出させるか、SUPREC−01(宝酒造(株))を用いてゲルから抽出した。DNA溶液はフェノール処理後、エタノール沈殿を行った。
ライゲーション反応は、0.05〜1μgのDNAフラグメントを含む反応液(67mM Tris/HCl(pH7.5)、5mM MgCl2 、5mM DTT、1mM ATP)30μlに10単位のT4酵素ライゲースを加え、16℃で12〜18時間反応を行うか、TAKARA Ligation Kit (宝酒造(株))を用いて行なった。
【0061】
大腸菌の形質転換法は塩化カルシウム法で行い(JM109株はコンピテントな細胞を購入して使用)、形質転換株は薬剤耐性(アンピシリンまたはテトラサイクリン)で選択した。酵母K16−57C株の形質転換は、リチウム酢酸法(METHODS IN YEAST GENETICS ;A Laboratory Course Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press )により行い、形質転換株はトリプトファン栄養要求の相補性で選択した。TK62株の形質転換法は、阪井らにより報告されている(Sakai et al. J. Bacteriol., 173, 7458 〜7463, 1991)。
【0062】
Kex2活性測定は水野らの方法に準じた(Mizuno et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 156, 246-254, 1988)。すなわち、2mM CaCl2 、0.2%(w/v)ルブロール、100μM Boc−Leu−Arg−Arg−MCA((株)ペプチド研究所)を含む200mM Tris/HCl(pH7.0)溶液100μlに、100mM Tris/HCl(pH7.0)で希釈したKex2 100μlを加え、37℃に30分放置した。反応は、25mM EGTA50μlを添加し停止させた。遊離した蛍光物質(AMC)の蛍光強度は、PANDEX FCA システム(バクスタートラベノール(株)10-015-1 型;(励起波長=365nm、基底波長=450nm))を用いて測定した。上記の条件で1分間に1pmolのAMCを遊離するKex2量を1Uと定義した。
【0063】
SDS−ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)は、Laemmli の方法に準じた(Laemmli et al. Nature 227, 680-685, 1970 )。すなわち、試料に1/4容量の4×SDSサンプルバッファー(375mM Tris/HCl(pH6.8)、30%(v/v)グリセロール、7%(w/v)SDS、15%(v/v)2−メルカプトエタノール、0.1%(w/v)ブロムフェノールブルー)を加え、95℃、5分間加熱した。10μlをSDS−ポリアクリルアミドゲル(55 mm x 85 mm x 1 mmまたはテフコ社)に供し、20mA、80分間の電気泳動を行った。泳動後、ゲルを染色液(10%(v/v)酢酸、40%(v/v) メタノール、0.25%(w/v)クマジーブリリアントブルーR250)で染色した。
【0064】
その他、別途表示する以外は基本的な遺伝子操作は Moleculor cloning(Maniatisら編、Cold Spring Harbor, Cold Spring Harbor Laboratory, New York , 1982)に記載の方法に従って行った。
参考例1.キメラタンパク質βGal−139S(FM)PPH84の調製
1)hProPTH(1−84)遺伝子の作製(図1及び図2)
hProPTH(1−84)遺伝子は、図1に示すようにU1〜U7(配列番号5〜11)およびL1〜L7(配列番号12〜18)の14本のフラグメントに分け、合成した。
【0065】
hProPTH(1−84)遺伝子は、各フラグメントを以下のように連結し、作製した(図2)。まず、DNAフラグメントU1(配列番号5)とL7(配列番号18)(各々約1μg)を16単位のT4ポリヌクレオチドカイネースと0.5nM(1MBq以上)の[γ−32P]dATPを含むリン酸化反応液15μl中(50mM Tris/HCl(pH7.6)、10mM MgCl2 、5mM DTT)で37℃、15分間反応させた。これに5mM ATPを含むリン酸化反応液5μlを加え、さらに37℃で45分間反応させた。U2(配列番号6)とL6(配列番号17)、U3(配列番号7)とL5(配列番号16)、U4(配列番号8)とL4(配列番号15)、U5(配列番号9)とL3(配列番号14)、U6(配列番号10)とL2(配列番号13)、およびU7(配列番号11)とL1(配列番号12)についても同様に行った。
【0066】
上述の7個の反応液をひとつにまとめ、エタノール沈殿を行いDNAを回収した。これを80μlの100mM Tris/HCl(pH7.6)、6.5mM MgCl2 、300mM NaClに溶解した。このうち40μlを95℃に5分間放置した後、30分かけて43℃まで温度を下げた。氷冷後40μlのライゲーションB液(宝酒造(株))を加え、26℃に15分放置した。
このサンプルを5%ポリアクリルアミド電気泳動に供した。泳動後、オートラジオグラフィーで、連結したDNAフラグメントを検出した。約280bpに対応するDNAフラグメントをゲルから抽出後、定法に従い精製した。
【0067】
2)βGal−139S(FM)PPH84発現プラスミドpGP#19の作製(図3及び図4)
合成hProPTH(1−84)遺伝子を含む約280bpのDNAフラグメントには、5’末端には制限酵素Eco RI 部位が3’末端には制限酵素Sal I 部位が存在する。hProPTH(1−84)遺伝子のクローニングはこのEco RI/Sal I DNAフラグメントをpG210ShCT[G]のEco RI/Sal I 部位に挿入し、行った。
【0068】
pG210ShCT[G]を制限酵素Eco RIとSal I で切断後、ベクター部分を含む約3.5kbDNAフラグメントを調製した。これと1)で得られた約280bpからなるhProPTH(1−84)遺伝子のDNAフラグメントを連結し、プラスミドpG210ShProPTHを得た(図3)。pG210ShProPTHを用いて大腸菌JM109株を形質転換し、JM109[pG210ShProPTH]を得た。
さらに、pG210ShProPTHの制限酵素XhoI /EcoRI 部位にリンカーKM091(配列番号19)及びKM092(配列番号20)を導入し、プラスミドpG210S(S/X)を作製した(図3)。なお、このリンカーは、両端に制限酵素XhoIとEcoRI 部位を、その間にSac I 部位を持つ。
【0069】
pG210S(S/X)は、制限酵素Sac I およびXho I で消化後、Kilo-Sequence 用 Deletion Kit (宝酒造(株))を用いて、βGal−210SをコードするDNA領域を経時的かつ特異的に欠失させた。Klenowフラグメントで末端修復をおこなったのち、セルフライゲーションを行ない、βGal−139SとhProPTH(1−84)がPhe−Metを介して連結されたキメラタンパク質βGal−139S(FM)PPH84をコードするプラスミドpGP#19を得た(図4)。pGP#19を導入した大腸菌JM109株をJM109[pGP#19]と呼ぶ。
【0070】
3)キメラタンパク質βGal−139S(FM)PPH84の調製
JM109[pGP#19]は200mlのSB培地を含む1L容三角フラスコに接種、37℃にて16時間振とう培養した。前培養液全量を10μg/mlテトラサイクリンを含む3LのNU培地に接種し、5L容ファーメンター(ミツワ理化学工業(株)、KMJ-5B-4U-FP型)を用いて、37℃にて通気撹拌培養した。通気量は3L/分とし、溶存酸素量は2.0ppm以下にならないように撹拌速度を変化させ制御した。
【0071】
pHは9%(v/v)アンモニア水および1Mリン酸を用いてpH7に制御した。炭素源は培養開始後3、9および14時間目にグリセロールを培養液1Lあたり10ml、窒素源は培養開始後9.5時間目に5倍濃度のSB培地を培養液1Lあたり10ml添加し、供給した。消泡剤(ディスフォームCC-222、(株)日本油脂)を培養開始時に300μl/L添加し、その後は必要に応じて添加した。
【0072】
培養18時間後のOD660は55で、培養液1ml当たり約0.5mgのキメラタンパク質βGal−139S(FM)PPH84が生産できた。キメラタンパク質は不溶性封入体として生産され、以下のように精製した。培養液1.5Lを、6000rpm、4℃にて10分間遠心(日立製作所(株), 20PR-52D)し、菌体を回収した。菌体を320mlの100mM Tris/HCl(pH7.0)に懸濁し、フレンチプレスにて破砕した(10,000psi;2回)。
【0073】
菌体破砕液を4000rpm、4℃にて15分間遠心(日立製作所(株), 05PR-22 :50ml容のプラスチックチューブ(住友ベークライト(株)))した。沈殿を0.5%(w/w)TritonX−100を含む30mlの20mMTris/HCl(pH7.0)に懸濁後、3000rpm、4℃にて15分間遠心し、沈殿を回収した。この操作を4回繰り返し、粗精製キメラタンパク質とした。
【0074】
粗精製キメラタンパク質の純度は約70%(SDS−PAGEによる見積もり)で、タンパク量は約670mg(ウシ血清アルブミンをスタンダードとし、ブラッドフォード法で定量)であった。
粗精製キメラタンパク質は、YMC Packed カラム(2 cm x 25 cm, (株)山村化学研究所)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC;ミリポア(株) Waters 600E )に供し、精製した。キメラタンパク質は、アセトニトリルの直線濃度勾配(A :0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA);B :0.1%(v/v)TFA/80%(v/v)アセトニトリル;%B=30%→60%/60分、流速10ml/分)で溶出した。各画分はSDS−PAGEに供し、純度95%以上の画分をまとめ、凍結乾燥した。
【0075】
凍結乾燥したキメラタンパク質は再度0.1%(v/v)TFAに溶解後、HPLCに供し、さらに精製した(条件は、グラジエントの条件を%B=40%→60%/60分とした以外は同じ)。分析用HPLCによる分析で210nmの吸光度を指標に、純度99%上の画分を集め、凍結乾燥し標準品とした。標準品のタンパク量はアミノ酸分析から推定した。
【0076】
参考例2.可溶性キメラタンパク質CATPH34の調製
1)CATPH34発現プラスミドptacCATPTH(1−34)の作製(図5及び6)
pG97S4DhCT[G]の制限酵素 Eco RI-Xho I 部位にR4リンカー(R4U:配列番号21およびR4L:配列番号22)を挿入してpG97S4DhCT[G]R4を作製した。得られたpG97S4DhCT[G]R4の制限酵素Xho I-Kpn I 部位に、PCRにより調製したPTH(1−34)遺伝子および以下に示すproαリンカー(proαU:配列番号23、proαL:配列番号24)を挿入してpPTH(1−34)proαを作製した。なおPTH(1−34)遺伝子は、pGP#19を鋳型とし、プライマーP1(配列番号25)およびP2(配列番号26)を用いたPCRにより調製した(図5)。
【0077】
次に、CAT遺伝子(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)の3’末端に制限酵素Xho I 部位を導入するため、プライマーCAT1およびCAT3(配列番号27および配列番号28)を合成した。プライマーにCAT1およびCAT3を、鋳型DNAにptacCATを用いたPCRにより、3’末端に制限酵素Xho I 部位が導入されたCAT遺伝子を得た。これを制限酵素Nco I およびXho I 消化後、ptacCAT由来のSal I -Nco I DNAフラグメント(3.6kbp)とpPTH(1−34)proα由来のXho I -Sal I DNAフラグメント(0.15kbp)と連結してptacCATPTH(1−34)を作製した(図6)。
【0078】
2)キメラタンパク質CATPH34の調製(図7参照)
ptacCATPTH(1−34)を有するJM101株をLB培地にて37℃で培養した。培養液のOD660値が0.6になった時点でIPTG(イソプロピルベータチオガラクトシド)を終濃度2mMとなるように添加し、さらに3時間培養を継続してキメラタンパク質CATPH34を生産させた。培養終了後、遠心分離(8,000rpm、20分)により菌体を回収し、懸濁液のOD660値が70となるように溶液A(50mM Tris/HCl(pH8.0)、2mM EDTA、0.1mM 2−メルカプトエタノール、0.1mM PMSF)を添加した。
【0079】
次にこの菌体懸濁液3mlを超音波処理し、菌体を破砕後、遠心分離(12000rpm、10分)で可溶性画分を分離し、溶液Aで平衡化したクロラムフェニコールカプロエート( sigma C-8899 )カラム(3ml)にアプライした。1M NaClを含む溶液Aでカラムを洗浄後、10mMクロラムフェニコールおよび1M NaClを含む溶液Aでキメラタンパク質を溶出させた。図7は精製前後の試料についてSDS−PAGEを行った結果である。なお、レーン1は分子量マーカーを、レーン2は菌体破砕後の可溶性画分を、レーン3は精製後のキメラタンパク質CATPTH(1−34)を示す。レーン1の左側の数字は分子量マーカーの大きさ(kDa)を示す。
キメラタンパク質は可溶性画分に生産され、クロラムフェニコールカプロエートによるアフィニティクロマトグラフィーにより容易に精製された。
【0080】
参考例3.不溶性キメラタンパク質βGal−117S4HPPH34の調製
1)βGal−117S4HPPH34発現プラスミドpG117S4HPPH34の作製(図8〜10)
pGP#19を鋳型にS01(配列番号29)およびS02(配列番号30)をプライマーとして、PCR法により、hPTH(1−84)の35番目のコドンGTTを翻訳停止コドンTAAに変換したDNAフラグメントを増幅後、常法により制限酵素 Aat I I−Sal I DNAフラグメントを単離精製し、pGP#19の対応する部分と交換して、pGP#19PPH34を作製した(図8)。
【0081】
次に、pG210S(S/X)を鋳型にS03(配列番号31)とS05(配列番号32)をプライマーとしてPCR法により増幅後、制限酵素Sal I とSma I で消化したDNAフラグメント、pGP#19PPH34を鋳型にS07(配列番号33)およびS02(配列番号30)をプライマーとしてPCR法により増幅後、制限酵素 Sal IとSma I で消化したDNAフラグメント、並びにpGP#19PPH34の複製開始起点を含む制限酵素 Pvu I-Sal I DNAフラグメントをT4DNAライゲースで連結し、pG117SPPH34を作製した(図9〜10)。
pG117SPPH34の制限酵素Sma I 部位に(His)4 −Pro−GlyをコードするリンカーS08(配列番号34)およびS09(配列番号35)を挿入し、pG117S4HPPH34を作製した(図10)。リンカーの方向性は、プラスミドを調製後、DNA塩基配列を決定し、確認した。
【0082】
2)キメラタンパク質βGal−117S4HPPH34の生産
キメラタンパク質βGal−117S4HPPH34を大量に得るため、本キメラタンパク質の発現ベクターを導入した大腸菌M25[pG117S4HPPH34]株を20L SB2培地中、37℃で培養した。菌体濃度OD660=1.0でIPTGを最終濃度1mMとなるように添加し、菌体濃度がOD660=12まで培養を継続した。消泡剤にはディスフォームCC−222 ((株)日本油脂)を用いた。集菌後、TE(10mM Tris/HCl、1mM EDTApH8.0)に懸濁し、高圧ホモジナイザー(Manton-Gaullin ) による菌体破砕、遠心分離、TE及び脱イオン水での懸濁洗浄を行って、封入体約100gを得た。
【0083】
実施例1.サッカロマイセス・セレビジアエを宿主とした分泌型Kex2誘導体の発現
Kex2プロテアーゼ活性を有する酵素を大量に精製するためには、生産量が多いことはもちろん、その精製が簡単であることが重要であり、このためには、他のタンパク質が少ない培養溶液中へ分泌させることが有利であると考えた。分泌型Kex2誘導体としてssKex2に関する報告があるが、その生産量は4mg/L培養液で、工業的スケールで用いるためには少ない。そこで、まず、種々の分泌型Kex2誘導体を作製し、サッカロマイセス・セレビジアエを宿主として発現させて分泌生産量を調べ、その中から分泌生産量が多いKex2誘導体を得ることにした。
【0084】
1)分泌型Kex2誘導体発現プラスミドの作製(図11、12及び13)
分泌型KEX2遺伝子はPCR法を用いて作製した。プライマーの配列は図11(b)に示した。KM085(配列番号36)は、5’末端に制限酵素Eco RI部位(下線部)を、KM088(配列番号37)、KM089(配列番号38)、KM090(配列番号39)とKM093(配列番号40)は、それぞれ5’末端に制限酵素Sal I 部位(下線部)を有する。
また、これらのプライマーは、図11(a)に示すKEX2遺伝子領域に対応し、KM085は、KEX2遺伝子の開始メチオニンをコードする塩基配列を含み、KM088、KM089、KM090とKM093は、それぞれN末端から、660番目、679番目、688番目、および699番目のアミノ酸の直後に翻訳停止コドンTAAが付加した配列のアンチセンス鎖の塩基配列を有する。
【0085】
制限酵素 Eco RI で切断し直鎖上にしたプラスミドpYE−KEX2(5.0)bを鋳型に、KM085およびKM088をプライマーに用い、PCR反応を行った。反応精製物は制限酵素Eco RIおよびSal I で切断し、Eco RI-Sal I DNAフラグメントを得た。このDNAフラグメントは、Kex2−660をコードするDNA塩基配列(KEX2−660)を有し、その上流に制限酵素Eco RI、下流に制限酵素Sal I 部位を有する。
次に、プラスミドpYE−22mを制限酵素Eco RIとSal I で切断後、ベクター部分を含む約8.3kbのDNAフラグメントを精製した。これと先に得たKex2−660をコードする遺伝子を含むEco RI-Sal I DNAフラグメントをそれぞれ連結し、プラスミドpYE−660を得た(図12)。
【0086】
同様に、プライマーKM088の代わりにKM089、KM090、またはKM093を用いて、それぞれKex2−679、Kex2−688およびKex2−699をコードする塩基配列(KEX2−679、KEX2−688、KEX2−699)を含むEco RI-Sal I DNAフラグメントを回収し、プラスミドpYE−22mのEco RI-Sal I断片と連結することにより、プラスミドpYE−679、pYE−688、またはpYE−699を得ることができる。
プラスミドpYE−614は、pYE−KEX2(RI-Pvu II )のKEX2遺伝子の一部を含むBgl II - Sal I DNAフラグメントをpYE−660のKEX2−660遺伝子の一部を含むBgl II - Sal I DNAフラグメントとを置換し、作製した(図13)。
【0087】
2)形質転換および分泌型Kex2誘導体の発現(図14および15参照)
プラスミド(pYE−22m、pYE−614、pYE−660、pYE−679、pYE−688及びpYE−699)をそれぞれ、K16−57C株へ導入し、K16−57C[pYE−22m]、K16−57C[pYE−614]、K16−57C[pYE−660]、K16−57C[pYE−679]、K16−57C[pYE−688]及びK16−57C[pYE−699]株を得た。
Kex2誘導体の培養液への分泌量は、培養上清のKex2活性測定および濃縮液のSDS−PAGEにより調べた。
【0088】
コロニーをYCDP培地4mlに接種後、32℃で一晩振とう培養した。培養液100μlをYCDP培地4mlに接種後、32℃で一晩振とう培養した。培養液1mlを12,000rpm、5分、4℃(トミー精工;MRX-150 )にて遠心をし、培養上清を得た。培養上清は、100mM Tris/HCl(pH7.0)で2〜64倍希釈後、Kex2活性を測定した。結果を図14に示す。K16−57C[pYE−660]、K16−57C[pYE−679]およびK16−57C[pYE−688]のOD600あたりのKex2活性は、K16−57C[pYE−614]と比較して、それぞれ25倍、15倍と1.2倍であった。K16−57C[pYE−22m]とK16−57C[pYE−699]の培養上清にはKex2活性は検出されなかった。
【0089】
SDS−PAGE用のサンプルは、培養上清をウルトラフリーC3GC(ミリポア(株);分画分子量:10,000)を用いて20倍濃縮して調製し、レーンあたり培養上清200μl相当を用いた。結果を図15に示す。なお、レーン1および7は分子量マーカーを、レーン2はK16−57C[pYE−22m]を、レーン3はK16−57C[pYE−614]を、レーン4はK16−57C[pYE−660] を、レーン5はK16−57C[pYE−679]を、レーン6はK16−57C[pYE−688]を示している。レーン1の左側の数字は分子量マーカーの大きさ(kDa)を示す。
【0090】
Kex2−660およびKex2−679は、活性同様、Kex2−614に比べ分泌量が増加していることが明らかになった。また、これらの分子量はアミノ酸残基数に対応し大きくなること、すなわち、今回の培養においては、昆虫細胞Sf9を宿主としたKex2Δp のように自己分解物が蓄積するのではないことが明らかになった。
Kex2−660とKex2−679の分泌生産量は、今まで報告されているKex2−614の分泌生産量の10倍以上と非常に多いことがわかった。また、培養上清で顕著な自己分解も見られないことから、生産方法の検討によりさらに生産量が上昇することが期待できる。
【0091】
実施例2.Kex2−660の精製
K16−57C[pYE−660]株をスケールを上げて培養し、培養上清からのKex2−660の精製を試みた。
K16−57C[pYE−660]をYCDP培地3Lで、32℃で一晩培養した。培養上清2.3Lは、限外濾過モジュール(UF-LMSII システム;UF2CS-3000PS;東ソー(株))を用いて、濃縮および緩衝液(20mM Bis−Tris/HCl(pH6.0)、50mM NaCl、0.2mM CaCl2 )交換を行なった(最終容量:275ml)。
【0092】
このうち210mlをあらかじめ同緩衝液で平衡化したQ-Sepharose XK16(ファルマシア(株))カラムに吸着させた。75mlの同緩衝液で洗浄した後、同緩衝液で50〜350mMのNaCl濃度の直線濃度勾配による溶出(120ml)を行った。流速は3ml/分で行った。Kex2活性は150〜250mMのNaCl濃度の溶出画分24mlに回収した。この溶出液に6.6gの硫酸アンモニウムを添加した後、1N HClを用いてpHを6.0に調整し、20mM Bis−Tris/HCl(pH6.0)、0.2mM CaCl2 で30mlにフィルアップした。
【0093】
このうち15mlをあらかじめ2M硫酸アンモニウムを含む20mM Bis−Tris/HCl(pH6.0)、0.2mM CaCl2 で平衡化した Phenylsuperose HR 5/5(ファルマシア(株))カラムに吸着させた。2.5mlの同緩衝液で洗浄した後、20mM Bis−Tris/HCl(pH6.0)、0.2mM CaCl2 で2〜0Mの硫酸アンモニウムの直線濃度勾配による溶出(15ml)を行った。流速は0.5ml/分で行った。Kex2活性は0.8〜0.6Mの硫酸アンモニウム濃度の溶出画分2.25mlに回収した。各工程でのKex2−660の回収率を表1に示す。回収率は、各工程の回収率を積算して求めた。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例3.Kex2−660のKex2プロテアーゼ活性に与える尿素の影響
キメラタンパク質発現法では、キメラタンパク質が不溶性封入体を形成する場合が多く、これを可溶化するために尿素等の変性剤が用いられる。今まで、Kex2プロテアーゼや分泌型Kex2誘導体の活性に尿素が与える影響についての報告はない。そこで、Kex2−660のプロテアーゼ活性に与える尿素の影響を、合成基質Boc−Leu−Arg−Arg−MCAおよびキメラタンパク質βGal−139S(FM)PPH84を基質として調べた。
【0096】
1)合成基質を基質としたときのKex2−660のKex2プロテアーゼ活性に与える尿素の影響
実施例2で精製したKex2−660(最終濃度80〜1200U/mlに調整)を用いて、最終尿素濃度0、1、2、4Mでの活性を合成基質Boc−Leu−Arg−Arg−MCAを用いて調べた。反応条件は、尿素以外は前述のKex2活性測定方法に従った。尿素非存在下の活性を100%としたとき、尿素濃度1、2、4Mでの活性は、それぞれ、70%、40%、10%であることがわかった(図16)。不溶性封入体を尿素溶液に溶解後、プロテアーゼ等を作用させる場合には、一般的には2〜4Mの尿素濃度で行われる。従って、キメラタンパク質の溶解条件等を検討すれば、Kex2ー660はキメラタンパク質から目的ペプチドを切り出すための酵素として使用可能と考えた。
【0097】
2)タンパク質を基質としたときのKex2−660のKex2プロテアーゼ活性に与える尿素の影響
参考例1で調製したβGal−139S(FM)PPH84と実施例2で精製したKex2−660を用い、Kex2ー660のプロテアーゼ活性に与える尿素の影響について調べた。まず、尿素濃度1.5〜3.0Mについて、以下の条件で、37℃、30分間反応させた。反応液は、4倍容量の5N酢酸を添加後、50μlをYMC-ODS-A302カラム(d 4.6 mm x 150 mm ;(株)山村化学研究所)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC; 島津製作所(株) LC6A )に供し、直線濃度勾配(A:0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA); B :0.094%(v/v)TFA/80%(v/v)アセトニトリル;%B=30%→60%/30分; 流速1ml/分)で溶出した。
【0098】
2mg/ml βGal- 139S(FM)PPH84
100mM Tris/HCl(pH7.0)
1.5〜3.0M 尿素
1mM CaCl2
50kU/ml Kex2−660
【0099】
Kex2−660処理後新たに生じるピークを分取し、N末端からのアミノ酸配列の決定およびアミノ酸組成分析を行い、βGal(1−14)、hPTH(1−84)およびhPTH(1−44)を同定した。βGal−139S(FM)PPH84には、Kex2プロテアーゼによって切断が予想される配列は、Arg−Arg(切断部位A)、Lys−Arg(切断部位B)、Pro−Arg(切断部位C、切断部位D)の4カ所存在する。同定したペプチドフラグメントから、切断部位A、切断部位B、切断部位Cの切断が確認できたが、切断部位Dの切断は確認できなかった。
【0100】
Kex2−660処理後生じる各ペプチドフラグメントの回収率は、以下のようにして決定した。
回収率(%)=FPA×CAA×100/(CPA×FAA)
FPA;Kex2−660処理を行った後の各ペプチドフラグメントのピークエリア面積
CAA;βGal−139S(FM)PPH84のアミノ酸数(231アミノ酸)
CPA;Kex2−660処理を行う前のβGal−139S(FM)PPH84のピークエリア面積
FAA;各ペプチドフラグメントのアミノ酸数
【0101】
結果を図17に示す。なお、□、○、●、および△は、それぞれ、βGal−(1−14)、hPTH(1−84)、hPTH(1−44)およびhPTH(1−84)+hPTH(1−44)の回収率を示す。
尿素濃度1.5〜2.5Mの範囲では尿素濃度が上昇するに従い、Kex2−660により切り出されるペプチドの回収率が増加すること、すなわち、切断部位A切断部位Bおよび切断部位Cの切断効率が上昇することがわかった。
【0102】
一方、2.5〜3.0Mの尿素濃度では、βGal(1−14)、hPTH(1−44)の回収率が低下し、[hPTH(1−84)+hPTH(1−44)]の回収率はほとんど変わらず、hPTH(1−84)が増加することから、切断部位Bの切断効率は変わらないが、切断部位Aおよび切断部位Cの切断効率が低下することがわかった。すなわち、Kex2−660によるβGal−139S(FM)PPH84の切断において、2.5Mまでの濃度なら尿素濃度は高い方が切断効率が上がるが、2.5〜3.0Mの尿素濃度ではその配列により切断効率に差が出ることがわかった。
【0103】
そこで、より高い尿素濃度3.0〜4.0Mについて、以下の実験を行い、各ペプチドフラグメントの回収率等を調べた。
2mg/ml βGal- 139S(FM)PPH84
100mM Tris/HCl(pH7.0)
3.0〜4.0M 尿素
1mM CaCl2
20kU/ml Kex2−660
結果を図18に示す。なお、シンボル及び回収率の算出は前述の通りである。
【0104】
その結果、尿素濃度3.0〜4.0Mにおいては、すべてのペプチドフラグメントの回収率に顕著な差は見られなかったが、尿素濃度が上昇するに従い、βGal(1−14)、hPTH(1−44)の回収率が低下し、hPTH(1−84)が増加する傾向が見られた。すなわち、尿素濃度が上昇するに従い、切断部位Bの切断効率が若干増加し、切断部位Cの切断効率は減少することがわかった。
【0105】
以上、1.5〜4.0M尿素濃度でのKex2−660によるβGal- 139S(FM)PPH84の切断についてまとめると、尿素濃度1.5〜2.5Mの範囲では尿素濃度が上昇するに従い、切断部位A切断部位Bおよび切断部位Cの切断効率が上昇すること、尿素濃度2.5〜3.5Mの範囲では、切断部位Bの切断効率が上昇するが、切断部位Cの切断効率は低下することがわかった。これらの知見は、合成基質を用いた場合からは予想できず、本発明により初めて明らかになった。
キメラタンパク質からのhPTH(1−84)の切り出しという観点からは、切断部位Bの切断効率が高く、切断部位Cの切断効率が低い、3.5〜4.0Mの尿素濃度が望ましいことが明らかになった。
【0106】
実施例4.Kex2−660によるβGal−139S(FM)PPH84からのhPTH(1−84)の切り出し
実施例3において、βGal(1−14)、hPTH(1−84)およびhPTH(1−44)を同定し、これらのペプチドの回収率から、Kex2−660によるβGal−139S(FM)PPH84の切断効率に尿素が与える影響について検討した。しかし、hPTH(45−84)由来のペプチドフラグメントの同定はできていなかった。そこで、hPTH(1−84)をKex2−660処理したサンプルを、溶出条件を変えたHPLCにて分離、解析してhPTH(45−84)を同定し、前述の条件による溶出では素通り画分に溶出していることを確認した。また、この結果から、切断部位Dはほとんど切断を受けないことが明らかになった。
【0107】
次に、キメラタンパク質に対して、 種々の量比のKex2−660(キメラタンパク質1mgあたりKex2−660を25kU、50kU、100kU、150kUおよび200kU)を作用させ、30分後、各ペプチドフラグメントの回収率を調べた。生じるペプチドフラグメントの解析は、前述の結果からグラジエント条件を%B=0%→80%/80分に変更し、それ以外は実施例3と同様に行った。
1mg/ml βGal- 139S(FM)PPH84
100mM Tris/HCl(pH7.0)
4M 尿素
1mM CaCl2
25〜200kU/ml Kex2−660
【0108】
Kex2−660未処理および50kUのKex2−660で処理したサンプルのチャートを図19に示した。ピーク1、2、3、4、7は、それぞれ、hPTH(45−84)(切断部位Cの次のアミノ酸からhPTH1−84のC−末端まで)、βGal(1−14)(β−Gal−139SのN−末端から切断部位Aまで)、hPTH(1−84)、hPTH(1−44)(切断部位Bの次のアミノ酸から切断部位Cまで)およびβGal−139S(FM)PPH84(キメラタンパク質の全長)である。
【0109】
ピーク6、7は、Kex2−660量が少ないときに多く、多いときは少なく、ピーク6、7の減少に伴いピーク5が増加することから、ピーク5はキメラタンパク質の切断部位Aの次のアミノ酸から切断部位Bまでのペプチドで、ピーク6はβGal−139のN−末端から切断部位Bまでまたは切断部位Aの次のアミノ酸からhPTH(1−84)のC−末端までであると思われる(ピーク6はβGal−139SのN−末端から切断部位Cまでの可能性もあるが、Arg−Argの方がPro−Argより切れやすいのでこの可能性は低い)。
【0110】
また、25〜200kU/mlの範囲でピーク1、4、5、6、7の大きさは変化するが、ピーク2、3の大きさはほとんど変わらない。また、200kU/mlのKex2−660を用いた場合でも、新たなピークは生じなかった。すなわち、hPTH(1−84)を切り出すために必要なKex−660量(25kU/ml)の8倍量(200kU/ml)を用いても、Kex2プロテアーゼ以外のプロテアーゼ活性は検出されず、実施例2で精製されたKex2−660には、キメラタンパク質からhPTH(1−84)を切り出す条件において、問題になる他のプロテアーゼは混入していないことが確認された。
【0111】
25〜200kU/mlの範囲におけるhPTH(1−84)由来のペプチドフラグメントの回収率を図20にまとめた。50kU/mlのKex2−660を用いた場合、hPTH(1−84)は約75%回収されることがわかった。このとき、約10%のβGal−139S(FM)PPH84が残っていたが、Kex2−660量を増加させるに従って減少し、200kU/mlではほぼ完全に消失した。しかし、同時にhPTH(1−44)の割合も増加し、hPTH(1−84)の回収率は増加していない。Kex2−660量を増やした場合も、hPTH(1−84)の分解物hPTH(1−44)とhPTH(45−84)増加は緩やかであり、25〜200kU/mlの範囲でhPTH(1−84)の回収率は65〜75%であった。
【0112】
以上の結果から、Kex2−660は目的ペプチドにKex2プロテアーゼの切断部位を持つ場合でも、キメラタンパク質から効率良く(切り出し効率75%)目的ペプチドを切り出すことができることが判明した。なお、この切り出し効率は、ファクターXaを用いた場合のhPTH(1−84)の切り出し効率50%(Gardella et al. J. Biol. Chem., 265(26), 15854-15859, 1990)より高い。Gardella らは、ファクターXaの認識部位Ile−Glu−Gly−Arg配列がhPTH(1−84)にないにも関わらず、酵素量を増加させたり反応時間を長くしたりするとhPTH(1−84)の回収率が下がることから、混入するプロテアーゼまたはファクターXaがhPTH(1−84)を分解している可能性を示唆している。
【0113】
hPTH(1−84)にはKex2プロテアーゼの切断配列が2ヶ所存在するにも関わらず、高い回収率でhPTH(1−84)が得られたという事実は、本発明により生産量が増加し、精製されたKex2誘導体が、キメラタンパク質から目的ペプチドを切り出すための酵素として有用であることを示している。
また、Kex2−660量を増やした場合もKex2プロテアーゼ部位以外の切断により生じるペプチドフラグメントは検出されず、実施例2で精製したKex2の基質特異性は高く、また、キメラタンパク質から目的ペプチドを切り出す条件では他のプロテアーゼ活性は検出されなかった。
【0114】
実施例6.Kex2−660によるCATPH34からhPTH(1−34)の切り出し
キメラタンパク質CATPH34よりhPTH(1−34)を切り出すため、参考例2の溶出液より60μlを採取しこれに脱イオン水239μl、1M CaCl2 を1.32μl、およびKex2−660 30kUを加え37℃で1時間加温した。反応後に出現したピークについてアミノ酸分析を行ったところ、hPTH(1−34)のアミノ酸組成に一致した(図21)。
【0115】
すなわち、反応溶液に尿素が存在しない状態でも、他のプロテアーゼ活性が検出されず、Kex2−660を用いてキメラタンパク質からhPTH(1−34)が切り出せることが判明した。また、Kex2−660はキメラタンパク質の保護ペプチドおよび切断部位領域が異なっても目的ペプチドを切り出すことが可能で、工業的に広く使用できることが期待される。
【0116】
実施例7.キメラタンパク質βGal−117S4HPPH34からのhPTH(1−34)の切り出し
参考例3で調製したβGal−117S4HPPH34の封入体懸濁液(160g/L)250mlに、1M Tris/HCl(pH8.2)100ml、5M NaCl 50ml、脱イオン水500ml、尿素900gを加えて30℃の恒温槽中30分撹拌溶解し、暖めた脱イオン水で希釈し、30℃で5Lとした。
【0117】
これに250mM CaCl2 溶液50mlを撹拌しながら穏やかに添加し、さらにKex2−660を20kU/mlとなるように加えた。2時間後、90%以上の効率で7gのhPTH(1−34)が切り出された。用いたKex2−660量は、キメラタンパク質の1/20,000(重量比)以下であり、hPTH(1−34)がキメラタンパク質から効率良く切り出されることがわかった。
【0118】
実施例8.キャンディダ・ボイディニイを宿主とした分泌型Kex2誘導体の発現
実施例1の結果から、Kex2−660は、培養液中で顕著な自己分解を起こさないことがわかった。このため、より効率的な発現系を用いれば、生産量の増加が期待できる。メタノール資化性酵母キャンディダ・ボイディニイを宿主とした発現系でKex2−660の生産を試みた。
【0119】
1)キャンディダ・ボイディニイを宿主とした発現プラスミドの作製(図11及び図22)
NKEX2−660遺伝子は、プライマーにNKEX2(配列番号41)とKM088を用いた以外は、実施例1の1)と同様にPCR法を用いて作製した。NKEX2は、5’末端に制限酵素Not I 部位の塩基配列(下線部)を有し、KEX2遺伝子の開始メチオニンの上流−107〜−132塩基の配列を含む(図11)。NKEX2−660遺伝子(KEX2遺伝子の5’非翻訳領域132塩基対を有するKEX2遺伝子)は、pCRIIにクローニング後、制限酵素Not I を用いて切り出した。NKEX2−660遺伝子を含むNot I DNAフラグメントは、プラスミドpNOTelIのNot I 部位にプロモーター支配下にKEX2−660遺伝子が発現できるように挿入し、pCU660を作製した(図22)。
【0120】
2)キャンディダ・ボイディニイを宿主とした分泌型Kex2誘導体の生産(図23)
URA3遺伝子上に存在する制限酵素Bam HIで切断し直鎖上にしたプラスミドpCU660を、TK62に導入し、形質転換株TK62/pCU660を選択した。TK62[pCU660]20株(#1〜#20)をBMGY培地で、27℃で振とう培養した。2日後、前培養液10OD・ml相当を1mlのBMMY培地に接種し、27℃でさらに振とう培養した。30時間後、培養上清のKex2活性を測定した。活性が高い5株について同様に培養し、再現よくKex2活性が高かったTK62[pCU660]#10株を選び、ファーメンターを用いて培養した。
【0121】
グリセロール凍結ストックTK62[pCU660]#10株1mlを25mlのYPD培地を含む、300ml容三角フラスコに接種、27℃にて16時間前培養した。10.5mlの前培養液(OD600=38)を2LのYPGM培養用培地に接種し、5L容ファーメンター(ミツワ理化、KMJ-5B-4U-FP型)を用いて、27℃にて通気撹拌培養した。通気量は4L/分とし、溶存酸素量は2.5ppm以下にならないように撹拌速度を変化させ制御した。メタノール、グリセロールおよび窒素源(5%(w/v)酵母エキス、10%(w/v)ペプトン、6.7%(v/v)YNB w/o AA;1/25容量/回)は、適宜補充した。
【0122】
pHは7.5%(v/v)アンモニア水を添加し、pH5.5以下にならないように制御した。消泡剤(ディスフォーム CC-222 、(株)日本油脂)を培養開始時に0.5ml/L添加し、その後は必要に応じて添加した。図23に各培養時間の培養上清のSDS−PAGEの結果を示した。培養48時間後のOD600は353で、この培養により培養上清1L当たり、約2800MUのKex2−660(約340mgに相当)が生産できた。
この生産量は、実施例7において、hPTH(1−34)200gを切り出すことが可能な量であり、本発明のKex2誘導体が実際に工業スケールでキメラタンパク質からの目的ペプチド切りだしに利用可能であることを明らかにした。
【0123】
実施例9.サッカロマイセス・セルビジアエを宿主とした分泌型Kex2誘導体の発現(2)
実施例1において、C−末端領域を欠失させたKex2プロテアーゼ(Kex2−660およびKex2−679)の生産量が、Kex2−614、Kex2−699、およびに比べ、著しく増大していること示した。本実施例においては、さらに多くのC−末端領域を欠失させたKex2プロテアーゼ(Kex2−630、Kex2−640、Kex2−650、およびKex2−682)を作製し、C−末端領域とKex2プロテアーゼの生産量の関係について調べた。
【0124】
1)分泌型Kex2誘導体発現プラスミドの作製
分泌型Kex2遺伝子は実施例1、1)の方法に準じて作製した。即ち、プライマーの配列KM100(配列番号42)、KM102(配列番号43)、KM103(配列番号44)とKM104(配列番号45)は、それぞれN末端から、630番目、640番目、650番目、および682番目のアミノ酸の直後に翻訳停止コドンTAAが付加した配列のアンチセンス鎖の塩基配列を有し、5’末端に制限酵素Sal I 部位を持つ。
【0125】
分泌型Kex2誘導体遺伝子をコードするEco RI-Sal I DNAフラグメントおよびこれらを含む発現ベクターの作製は実施例1、1)の方法にしたがった。なお、Kex2プロテアーゼのN末端から630番目、640番目、650番目、または682番目までのポリペプチドをそれぞれKex2−630、Kex2−640、Kex2−650、Kex2−682と呼び、これらをコードする遺伝子をそれぞれKEX2−630、KEX2−640、KEX2−650、KEX2−682と呼ぶ。
【0126】
2)形質転換および分泌型Kex2誘導体の生産(図25および26参照)
プラスミド(pYE−630、pYE−640、pYE−650、pYE−682)を、K16−57C株へ導入し、K16−57C[ pYE−630] 、K16−57C[ pYE−640] 、K16−57C[ pYE−650] とK16−57C[ pYE−682] 株を得た。次にこれらの形質転換株、さらに実施例1、2)で調製した分泌型Kex2誘導体生産株についても培養し、Kex2の生産量(培養液へ分泌されるKex2量)を、培養上清のKex2活性測定および培養上清濃縮液のSDS−PAGEにより調べた。
【0127】
培養は、まず、コロニーをYCDP培地に懸濁後、30℃で振とう培養し、対数増殖期の菌を調製した。次にこの菌を、OD660の吸光度が約0.02になるようにYCDP培地に継代し、さらに約16時間、30℃で培養した。Kex2活性測定の結果を図25に、SDS−PAGEの結果を図26に示す。
培養液OD660あたりのKex2活性は、K16−57C[ pYE−630] 、K16−57C[ pYE−640] 、K16−57C[ pYE−650] 、K16−57C[ pYE−660] 、およびK16−57C[ pYE−679] は、K16−57C[ pYE−614] のほぼ12倍で、KEX2−630からKEX2−679の範囲において、Kex2生産量に差がないことが分かった。
【0128】
また、K16−57C[ pYE−682] 、K16−57C[ pYE−688] のKex2の生産量は、それぞれK16−57C[ pYE−614] の6倍、3.4倍で、C−末端領域が長くなるほど低下した(図25)。K16−57C[ pYE−22m] とK16−57C[ pYE−699] の培養上清にはKex2活性は検出されなかった。
また、SDS−PAGEの結果から、Kex2−630、Kex2−640、Kex2−650、Kex2−660、Kex2−679、Kex2−682、Kex2−688の生産量は、Kex2活性と同様に、Kex2−614に比べ増加していることも明らかになった(図26)。
【0129】
実施例10 . ピキア・パストリスを宿主とした分泌型Kex2誘導体の発現
実施例8の結果から、分泌型Kex2誘導体Kex2−660はキャンディダ・ボイディニイを宿主とした発現系で大量に生産できることがわかった。Kex2−660が他のメタノール資化性酵母でも生産可能なことを、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)を宿主とした発現系(ピキアエクスプレッションキット(Pichia Expression Kit);インビトロジェン社)を用いて調べた。
【0130】
1)ピキア・パストリスを宿主とした分泌型Kex2誘導体発現プラスミドの作製(図11および図27参照)
制限酵素EcoRIで切断し直鎖上にしたプラスミドpYE−660を鋳型に、KM085(配列番号36)およびKM088(配列番号37)をプライマーに用い、PCR反応を行った。反応精製物はpCRII(インビトロジェン社)にクローニングした。得られたプラスミドを制限酵素EcoRIで切断し、KEX2−660遺伝子の両端に制限酵素EcoRI部位を有するDNAフラグメントを得た。
プラスミドpHIL−D2(ピキアエクスプレッションキット)の制限酵素EcoRI部位に、KEX2−660遺伝子を含むDNAフラグメントを挿入し、KEX2−660遺伝子がAOXプロモーターにより発現できる向きに挿入されたプラスミドpHIL−660を得た(図27)。
【0131】
2)ピキア・パストリスを宿主とした分泌型Kex2誘導体の生産
プラスミドpHIL−660を制限酵素NotIで切断して得られるKEX2−660遺伝子を含む断片を、ピキア・パストリスGS115株(his- ,AOX+ ;ピキアエクスプレッションキット)に導入し、ヒスチジンを含まない培地で生育する形質転換株GS115〔pHIL−660〕を選択した。これらの中から、メタノールのみを炭素源とした場合に生育できないGS115〔pHIL−660〕(AOX- )5株を得た。これらをBMMY培地で培養し、Kex2生産量が多いGS115〔pHIL−660〕#23を得た。
【0132】
GS115〔pHIL−660〕#23のKex2の生産量を調べた。まず、コロニーを10mlのBMGY培地に接種し、30℃で2日間振とう培養した。培養液10mlから遠心して得た菌を2mlのBMMY培地に懸濁し、25℃でさらに2日間振とう培養後、培養上清のKex2活性を測定した。その結果、培養上清1ml当たり約1350KU(約160μg相当)のKex2−660が生産していることがわかった。
従って、キャンディダ・ボイディニイ以外のメタノール資化酵母ピキア・パストリスを宿主とした発現系でもKex2−660は大量に生産できることがわかった。
【0133】
【配列表】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、合成hProPTH(1−84)遺伝子作製に用いた合成オリゴマーの配列を示す図である。
【図2】図2は、合成hProPTH(1−84)遺伝子の作製方法を示す図である。
【図3】図3は、プラスミドpG210S(S/X)の作製方法を示す図である。Placは大腸菌のラクトースオペロンのプロモーターをTtrpは、大腸菌のTrpEのアテニュエーターターミネーターを示す。
【図4】図4は、キメラタンパク質βGal−139S(FM)PPH84を発現するプラスミドpGP#19の作製方法を示す図である。
【図5】図5は、プラスミドpPTH(1−34)proαの作製方法を示す図である。
【図6】図6は、キメラタンパク質CATPH34を発現するプラスミドptacCATPTH(1−34)の作製方法を示す図である。Ptacは、trpプロモーターの−35領域とPlacの−10領域の合成プロモーターを示す。
【図7】図7は、大腸菌で発現させたキメラタンパク質CATPH34の精製前後の試料のSDS−PAGEの写真を示した図であり、電気泳動図を示す図面代用写真である。
【図8】図8は、キメラタンパク質βGal−139SPPH34を発現するプラスミドpGP#19PPH34の作製方法を示した図である。
【図9】図9は、キメラタンパク質βGal−117S4HPPH34を発現するプラスミドpG117S4HPPH34の作製方法の前半部分を示した図である。
【図10】図10は、キメラタンパク質βGal−117S4HPPH34を発現するプラスミドpG117S4HPPH34の作製方法の後半部分を示した図である。
【図11】図11は、KEX2遺伝子の構成と分泌型Kex2誘導体の遺伝子を作製するために合成したプライマーの配列およびそれぞれのアニーリング部位を示す図である。
【図12】図12は、分泌型Kex2誘導体を発現するプラスミドpYE−660の作製方法を示す図である。P KEX2は、サッカロマイセス・セレビジアエのKEX2遺伝子のプロモーターを示す。
【図13】図13は、Kex2−614を発現するプラスミドpYE−614の作製方法を示す図である。
【図14】図14は、分泌型Kex2誘導体のOD660あたりのKex2活性を合成基質を用いて比較した図である。K16−57C[pYE−614]の活性を1として各分泌型Kex2誘導体生産株の培養液の相対活性を示している。
【図15】図15は、分泌型Kex2誘導体の培養上清200μlあたりの生産量を比較した図であり、電気泳動図を表わす図面に代る写真である。
【図16】図16は、Kex2−660の各尿素濃度での活性を合成基質Boc−Leu−Arg−Arg−MCAを基質に用いて検討した図である。尿素非存在下におけるKex2−660の活性を100%として各尿素濃度における相対活性を示している。
【図17】図17は、Kex2−660の各尿素濃度(1.5〜3.0M)におけるβGal−139S(FM)PPH84からのβGal(1−14)、hPTH(1−84)、hPTH(1−44)および[hPTH(1−84)+hPTH(1−14)]の回収率の比較を示した図である。
【図18】図18は、Kex2−660の各尿素濃度(3.0〜4.0M)におけるβGal−139S(FM)PPH84からのβGal(1−14)、hPTH(1−84)、hPTH(1−44)および[hPTH(1−84)+hPTH(1−44)]の回収率の比較を示した図である。
【図19】図19は、キメラタンパク質βGal−139S(FM)PPH84のKex2−660処理前と処理後のHPLCチャートおよび同定したペプチドフラグメントとβGal−139S(FM)PPH84の関係を模式的に示した図である。チャートのピーク番号と図中のフラグメントの番号とは一致している。なお、フラグメント1、2、3および4はアミノ酸配列決定により同定した。7は溶出時間からの推定、5はβGal(1−14)およびhPTH(1−84)の相関からの推定である。また、6については溶出される可能性のあるフラグメントを図中で6として表記した。
【図20】図20は、Kex2−660の各酵素濃度におけるβGal−139S(FM)PPH84からのhPTH(1−84)、hPTH(1−44)およびhPTH(45−84)の回収率の比較を示した図である。■、○、●、および▲は、それぞれ、βGal−139S(FM)PPH84、hPTH(1−84)、hPTH(1−44)およびhPTH(45−84)の回収率を示す。回収率の算出は、以下のようにして決定した。hPTH(1−84)とβGal−139S(FM)PPH84とに関しては濃度既知の標準品とのピーク面積比から、またhPTH(1−44)とhPTH(45−84)に関しては濃度既知のhPTH(1−84)のピーク面積比をそれぞれのアミノ酸残基数で補正して求めた。
【図21】図21は、キメラタンパク質CATPH34のKex2−660処理前と処理後のHPLCチャート示した図である。
【図22】図22は、Kex2−660発現プラスミドpCU660の作製方法を示す図である。
【図23】図23は、TK62/pCU660#10株の各培養時間におけるKex2−660の培養上清への分泌の様子を示すSDS−PAGEであり電気泳動図を示す図面に代る写真である。
【図24】図24は、プラスミドpG210ShCT[G]の作製方法を示す図である。
【図25】各分泌型Kex2誘導体の培養液OD660あたりの生産量を、合成基質を用いたKex2活性により比較した図である。K16−57C[ pYE22−614] の生産量を1として各分泌型Kex2誘導体の生産量を示している。
【図26】分泌型Kex2誘導体の培養上清200μlあたりの生産量を比較したSDS−PAGEを示した図である。レーン1および12は分子量マーカーを、レーン2〜11はそれぞれ、K16−57C[ pYE22m] 、K16−57C[ pYE22−614] 、K16−57C[ pYE22−630] 、K16−57C[ pYE22−640] 、K16−57C[ pYE22−650] 、K16−57C[ pYE22−660] 、K16−57C[ pYE22−679] 、K16−57C[ pYE22−682] 、K16−57C[ pYE22−688] 、またはK16−57C[ pYE22−699] の培養上清の濃縮液を展開した。レーン1の左側の数字は分子量マーカーの大きさ(kDa )を示す、電気泳動の結果を示す図面代用写真である。
【図27】ピキア・パストリスを宿主としたときのKex2−660発現プラスミドpHIL−660の作製方法を示す図である。
Claims (10)
- (1)配列番号:1のアミノ酸番号1のMetをN−末端とし、アミノ酸番号630〜688のいずれかの間のアミノ酸をC−末端とするアミノ酸配列〔アミノ酸配列A〕;あるいは
(2)前記アミノ酸配列Aに対して、1又は数個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加により修飾されているアミノ酸配列;
を有する、Kex2プロテアーゼの酵素活性を有する蛋白質をコードする DNA を含んで成る発現ベクターにより形質転換されたメタノール資化性酵母である形質転換体。 - 前記アミノ酸配列AのC-末端のアミノ酸が配列番号:1におけるアミノ酸番号630〜682のいずれかのアミノ酸である、請求項1に記載の形質転換体。
- 前記アミノ酸配列AのC-末端のアミノ酸が、配列番号:1におけるアミノ酸番号630〜679のいずれかのアミノ酸である、請求項1に記載の形質転換体。
- 前記酵母が、ピキア(Pichia)、ハンセヌラ(Hansenula)又はキャンディダ(Candida)属酵母である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の形質転換体。
- 前記酵母が、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)又はキャンディダ・ボイディニイ(Candida boidini)種である、請求項4に記載の形質転換体。
- Kex2プロテアーゼの酵素活性を有する蛋白質の製造方法であって、
(1)配列番号:1のアミノ酸番号1のMetをN−末端とし、アミノ酸番号630〜688のいずれかの間のアミノ酸をC−末端とするアミノ酸配列〔アミノ酸配列A〕;あるいは
(2)前記アミノ酸配列Aに対して、1又は数個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加により修飾されているアミノ酸配列;
を有し、且つ、Kex2プロテアーゼの酵素活性を有する蛋白質をコードするDNAを含む発現ベクターでメタノール資化性酵母を形質転換し、得られた形質転換体を培養し、該培養物からKex2プロテアーゼの酵素活性を有する蛋白質を採取することを特徴とする方法。 - 前記酵母が、ピキア(Pichia)、ハンセヌラ(Hansenula)又はキャンディダ(Candida)属酵母である、請求項6に記載の方法。
- 前記酵母が、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)又はキャンディダ・ボイディニイ(Candida boidini)種である、請求項7に記載の方法。
- 前記蛋白質の採取を、培養上清から、陰イオン交換クロマトグラフィー又は疎水性クロマトグラフィーにより行う、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
- キメラ蛋白質から目的ペプチドの切り出し方法において、
(1)請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法により Kex2 プロテアーゼの酵素活性を有する蛋白質を製造し、そして
(2)目的ペプチドのN−末端に隣接して位置する Arg − Arg 、 Lys − Arg 又は Pro − Arg 配列及び目的ペプチドを有するキメラ蛋白質に、前記(1)において製造した蛋白質を作用させ、目的ペプチドを得る、
ことを特徴とする方法。
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