JP3981770B2 - 抗ロタウイルス剤、及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロタウイルス感染症の予防または治療に有用な剤、衛生品、食品組成物及び餌料添加物に関する。具体的には、N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルまたはその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗ロタウイルス剤、ロタウイルス感染症予防または治療剤、ならびにN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルを表面に有してなる衛生品及び該化合物を配合してなる食品組成物、餌料添加物に関する。
【0002】
【従来の技術】
厚生省の感染症サーベイランス調査によると、乳幼児嘔吐下痢症の患者として毎年10万人以上が報告されている。乳幼児嘔吐下痢症のうち、約半数はロタウイルスの感染によるものである。その主たる罹患年齢は2歳以下で、激しい水様性の下痢と発熱、嘔吐にみまわれる。開発途上国では栄養不良と医療不備もあいまって、年間数百万人もの乳幼児がロタウイルス性下痢症によって死亡しているのが現状である。また、ある種のロタウイルスは乳幼児から成人まで幅広く感染することが知られており、動物間の感染、さらには動物からヒトへの感染が懸念されている。
【0003】
通常ウイルス性感染症に対してはワクチンによる対処がなされるが、ロタウイルスが腸管上皮細胞という局所部位に感染することと感染対象が免疫学的に未熟な乳幼児であることから十分な分泌型IgAを誘導することができず、効果的なワクチンの開発には至っていない。
【0004】
また、ロタウイルスによる感染は特に糞口経路(fecal oral route)によるものであり、排泄物中に含まれるロタウイルスは接触者への感染を容易に成立させる。このことから、ロタウイルス感染は一旦発生すると広く蔓延する傾向にあり、集団発生例も多く報告されている。
【0005】
従って、ロタウイルス感染症の治療剤の勿論のこと、感染の予防剤の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた抗ロタウイルス作用を有し且つ副作用のない抗ロタウイルス剤、ロタウイルス感染症予防・治療剤を提供することを目的とする。また、本発明は、抗ロタウイルス作用を有し且つ安全な衛生品、食品組成物及び餌料添加物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、N−アセチルノイラミン酸の硫酸エステル体およびN−アセチルノイラミン酸ホモポリマーの硫酸エステル体が、抗ロタウイルス作用を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記式(I):
【0009】
【化2】
【0010】
〔式中、Rは、同一または異なって水素原子またはSO3 Hを示し、nは、1〜1000の整数を示す。但し、N−アセチルノイラミン酸残基1分子当たりのSO3 H残基の数は、0.1〜3である。〕
で表されるN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルまたはその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗ロタウイルス剤、及びロタウイルス感染症予防または治療剤を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記一般式(I)で表されるN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルまたはその薬学的に許容される塩を表面に有してなる衛生品を提供するものである。
【0012】
さらに本発明は、上記N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその食品衛生上許容される塩を含有することを特徴とする食品組成物及び餌料添加物を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルは、一般式(I)中、Rで表されるSO3 H残基の数が、N−アセチルノイラミン酸残基1モルに対し0.1〜3個、好ましくは0.3〜1.5個、最も好ましくは0.5〜1個で示されるものである。また、nは1〜1000の整数、好ましくは6〜200の整数、より好ましくは6〜100の整数を示す。
【0014】
本発明で用いられるN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルは、nが1種のみである単一化合物であっても良く、また、1〜1000の範囲内でnの値が異なる複数のN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルの混合物であってもよい。
【0015】
N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体は、以下の方法に従って製造することができる。
即ち、N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマー1重量部に対し、溶媒の存在下又は不存在下に触媒0.5〜200重量部、硫酸化剤0.2〜30重量部を反応させる。反応時間は0.1〜48時間程度であり、反応温度は−20〜90℃程度である。
【0016】
触媒としては、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミンなどが挙げられ、硫酸化剤としては、クロロスルホン酸、ピペリジン硫酸、サルファトリオキシド・トリメチルアミン錯体、サルファトリオキシド・ピリジン錯体などが挙げられる。触媒としてピリジンなどを過剰量使用する場合には、溶媒を使用する必要はない。溶媒は、必ずしも使用する必要はないが、使用する場合には、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ホルムアミドなどが挙げられる。
【0017】
なお、原料のN−アセチルノイラミン酸及びN−アセチルノイラミン酸ホモポリマーは特に限定されるものではく、N−アセチルノイラミン酸または重合度(n)が一定の数であるそのホモポリマーを用いても良く、例えばコロミン酸のような天然のアセチルノイラミン酸ホモポリマーの混合物を用いても良い。また、取得の由来も特に限定されず、天然から抽出、精製したものでも、化学的手法などにより合成したものであってもよい。
【0018】
以下に、製造原料であるN−アセチルノイラミン酸、N−アセチルノイラミン酸ホモポリマーの構造式を示す。
【0019】
【化3】
【0020】
〔式中、nは前記に同じ〕
硫酸化反応の終了後は、公知の方法、例えば濃縮、ゲル濾過、イオン交換などの各種クロマトグラフィー、再沈殿、透析などの処理を行うことができる。
【0021】
本発明において、薬学的にないし食品衛生上許容される塩とは、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらの塩は、N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸化反応液を水酸化ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩で中和することで製造することもでき、また、いったん硫酸化糖の遊離の酸として得た後、それを用いて塩の形態としてもよい。
【0022】
N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体(I)またはその薬理学的に許容される塩は、それ単独でもしくは薬理学的に許容される種々の添加剤とともに、抗ロタウイルス剤またはロタウイルス感染症予防剤及び/または治療剤として用いることができる。
【0023】
本発明の抗ロタウイルス剤は、ロタウイルス感染症の予防及び/または治療等の医薬用途のほか、ロタウイルスによる感染を遮断もしくは予防することを目的として、処理剤、添加剤などとして広く用いられるものである。
【0024】
本発明の抗ロタウイルス剤は、体内投与による副作用のみならず、皮膚に対して優しく安全性に優れているため、使い捨ておむつ、おしり拭き、ウエットティッシュ、マスク、手袋、入浴用洗剤、シャンプー、ベビーパウダー等の衛生品、玩具、ほ乳瓶、ベッド、衣服、皮革製品、カーペット、枕、布団などを処理して、これらの物品に抗ロタウイルス性を付与するための剤として用いることができる。さらには鼻粘膜または口腔粘膜に適用するスプレー剤、または上記物品などを処理して抗ロタウイルス性を付与するのに有用なスプレー剤、コーティング剤として、また食品添加剤、餌料・飼料添加物として使用されてもよい。
【0025】
本発明の抗ロタウイルス剤の組成は特に制限されることなく、目的に応じて調製することができる。界面活性剤、分散剤等の各種添加剤を含有していてもよい。また、その形態も特に限定されず、例えば固形、顆粒状、粉末状、懸濁液状、液状、エアゾール状、乳液状等、使用目的や使用対象に応じて適宜選択される。
【0026】
当該抗ロタウイルス剤中に含まれるN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体の量は、使用目的、処理対象などによって異なり、通常1処理あたり0.1〜10000mg、好ましくは1〜1000mgとなるような範囲で適宜選択することができる。
【0027】
本発明のロタウイルス感染症予防または治療剤の形態も特に限定されるものでなく、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、乳剤、シロップ剤などの経口剤、注射剤、坐剤などの種々の形態が例示される。好ましくは、ロタウイルスの感染部位である腸内で有効に作用する経口剤(例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤等)または坐剤などである。
【0028】
本発明のロタウイルス感染症予防または治療剤を経口剤として調製する場合、添加剤を適当量配合してもよく、添加剤としては賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、矯臭剤、矯味剤、甘味剤などが挙げられる。また、坐剤として調製する場合も同様であり、その添加剤としては基剤、界面活性剤などが、注射剤として調製する場合の添加剤としてはpH調整剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤などが例示される。該注射剤は静脈内、筋肉内、皮下または腹腔内に投与される。
上記添加剤としては、各々の製剤を調製する際に通常用いられる添加剤がすべて挙げられ、これらの適当な量が用いられる。
【0029】
なお、本発明のロタウイルス感染症予防または治療剤は、ヒトは勿論、動物のロタウイルス感染症の予防または治療に用いられる。適用される動物としては、例えば牛、豚、鶏、家兎等で代表される家畜、犬、猫、猿、鳥、ネズミ等で代表されるペット、その他の飼育動物が挙げられる。
【0030】
本発明の予防・治療剤中に配合される有効成分であるN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体の量は、投与すべき患者または動物の年齢、性別、体重、症状などに応じて適宜選択することができる。
【0031】
例えばヒトの場合は、乳幼児を例にとると、1投与単位当たり、経口剤では0.01〜500mg程度、注射剤では0.05〜500mg程度、坐剤では0.1〜500mg程度であるのが好ましく、一日当たりの投与量としては、剤型によって異なるが、0.1〜10000mg程度、好ましくは1〜1000mg程度である。
また動物の場合は、体重1kgあたり、経口剤では0.01〜100mg程度、注射剤では0.01〜100mg程度、坐剤では0.1〜50mg程度であるのが好ましく、一日当たりの投与量としては、剤型によって異なるが、体重1kgあたり0.01〜1000mg程度、好ましくは1〜100mg程度である。
【0032】
また、本発明に示すN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体(I)またはその薬理学的に許容される塩は、衛生品に適用することができる。すなわち、当該化合物を衛生品に付着含有させることにより、抗ロタウイルス作用を有する衛生品を提供することができる。
【0033】
本発明でいう衛生品としては、一般にサニタリー製品などといわれるもの、具体的にはおむつ、おしり拭き、ウエットティッシュ、マスク、手袋、ベビーパウダー、入浴用洗剤等が挙げられる。
ロタウイルス感染は、前述したように糞口経路によって容易に成立する。本発明の衛生品は、かかる糞口経路による感染を有効に予防することができるものである。
【0034】
なお、本発明で「表面に有してなる」とは、少なくとも衛生品の使用時に外部と接触する衛生品の表面にN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその薬理学的に許容される塩が抗ウイルス作用を奏する態様で存在していれば良い意味であり、衛生品等製品の調製時等における該化合物の存在態様(担持、付着、吸着等)、存在場所は問わない趣旨である。
【0035】
本発明の衛生品の製造は、該製品にN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルまたはその薬理学的に許容される塩を付与(担持、付着、吸着等)させる方法であれば特に制限されることなく、通常の方法を用いて行うことができる。たとえば、浸漬法、バッド法、スプレー法、コーティング法などが例示される。
【0036】
本発明の衛生品のN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルまたはその薬理学的に許容される塩の含有量は、使用目的および製品の種類等により異なるが、おしり拭きやウエットティッシュ等の場合は、0.1〜10000mg、好ましくは1〜1000mg程度であり、マスク等は0.1〜1000mg程度、好ましくは1〜100mg程度である。
【0037】
さらに、本発明に示すN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体(I)またはその食品衛生上許容される塩は飲食物に適用することができる。
即ち、本発明はN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体(I)またはその食品衛生上許容される塩を食品添加物として提供する。この場合、食品の種類や飲食者の年齢、体重等により相違するが、N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体(I)またはその食品衛生上許容される塩を、通常一食あたり1〜10000mg、好ましくは10〜1000mgの範囲で、0.01〜20重量%、好ましくは0.03〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%含まれるように適宜選択して、添加するのが望ましい。
【0038】
また別の局面において、本発明は、飲食物にN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体(I)またはその食品衛生上許容される塩を配合してなる食品組成物を提供するものである。
【0039】
本発明が対象とする飲食物は、通常の食品、飲料品及び食品加工品であれば特に制限されるものではないが、好ましくは乳幼児が口にする食品、飲料品およびその食品加工品である。具体的には、粉ミルク、離乳食、乳製品、清涼飲料水等が挙げられる。
【0040】
なお、本発明で「乳幼児」とは、乳児、幼児のみならず新生児をも含む概念であり、通常0歳〜10歳、好ましくは0歳〜4歳の子供を意味する。
【0041】
本発明の食品組成物は、前記のような食品、飲料品およびその食品加工品にN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその食品衛生上許容される塩を通常の方法で配合することにより製造される。
【0042】
本発明の食品組成物は、食品の種類、飲食者の対象によっても相違するが、N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体(I)またはその食品衛生上許容される塩を、通常一食あたり1〜10000mg、好ましくは10〜1000mgの範囲で、0.01〜20重量%、好ましくは0.03〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%含有する。
【0043】
また、本発明に示すN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体(I)またはその食品衛生上許容される塩は餌料に適用することができる。
従って、本発明は、N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその食品衛生上許容される塩を含有する餌料添加物を提供するものである。かかる餌料添加物の中には、N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその食品衛生上許容される塩のほか、ビタミン類などのミネラル、成長促進剤等各種栄養剤が含まれていても良い。
【0044】
本発明において餌料とは、動物を成長させ、また飼育するための食物、飲料物をいう。ここで動物とは、動物の種類によって制限されるものではないが、具体的には牛、豚、鶏、家兎等で代表される家畜、犬、猫、猿、鳥、ネズミ等で代表されるペット、動物園などにいる飼育動物等が例示される。
【0045】
本発明の餌料添加物の餌料・飼料(天然餌料・飼料、人工餌料・飼料等の別を問わない。)に対する配合量は、動物の種類、年齢、体重等に応じて異なり適宜変更することができる。通常、N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルまたはその食品衛生上許容される塩の量として、一食あたり体重1kgに対して0.01〜1000mg、好ましくは1〜100mgの範囲で、0.01〜20重量%、好ましくは0.03〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%含まれるように配合される。
【0046】
別の局面において、本発明はN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルまたはその食品衛生上許容される塩を含有する餌料組成物を提供するものである。当該餌料組成物は、対象とする動物の種類によっても異なるが、通常N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル体(I)またはその食品衛生上許容される塩を0.01〜20重量%、好ましくは0.03〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%含有する。かかる餌料組成物によれば、各種動物に嘔吐下痢症をもたらすロタウイルスの感染を予防し、またロタウイルス感染症の症状を軽減もしくは治癒することも可能である。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を参考例、実施例及び薬理試験例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されない。
【0048】
【参考例1】
N−アセチルノイラミン酸ホモポリマーの硫酸エステルの製造
コロミン酸(購入先:ナカライテスク株式会社製)90mgをジメチルホルムアミド20mlに入れ、ここに477mgのサルファトリオキシド・ピリジン錯体および37mgのジメチルアミノピリジンを加え、30℃にて24時間攪拌した。その後、氷冷し、これを1M炭酸水素ナトリウム50mlに滴下した。ろ過により固形物を分離し、透析チューブ(VISKASE SALES CORP.製、孔の直径:24オングストローム)を用いて透析を行った。透析後、ナトリウムイオン型のイオン交換樹脂(アンバーライトIR−120B、オルガノ株式会社製)カラムに通した。カラム流出液を減圧下で5mlにまで濃縮した。濃縮液を凍結乾燥させ、126mgの目的物を得た。
【0049】
得られた硫酸エステルの硫酸基の含量をロジゾン酸法(rhodizonic acid method)〔アナリティカル バイオケミストリー(Anal. Biochem.)41,471 (1971)〕で測定した結果、その含有率は28重量%であった。
【0050】
−実施例1−
抗ロタウイルス剤
上記配合割合で、常法に従い1本100ml入りのスプレー剤を調製した。
【0051】
−実施例2−
ロタウイルス感染症予防治療剤
処方例1 錠剤
上記配合割合で、常法に従い、1錠当たり300mgの錠剤を調製した。
【0052】
処方例2 顆粒剤
上記配合割合で、常法に従い、顆粒剤を調製した。
【0053】
処方例3 注射剤
上記配合割合で、常法に従い、注射剤を作成した。
【0054】
処方例4 坐剤
上記配合割合で、常法に従い、坐剤を作成した。
【0055】
−実施例3−
衛生品
(1)マスク
エマルジョン状の抗ロタウイルス剤を用いて、綿メリヤス生地にコーティング加工を施した。コロミン酸硫酸エステルのNa塩(平均n=80)100重量部にアクリル樹脂エマルジョン20部を添加混合して、得られた混合液中をリバースコーティング法により綿メリヤス生地原布の塗布した。その後乾燥して、抗ロタウイルス作用を有する加工生地を得た。
この加工生地をインナー層として有するマスクを作製した。
【0056】
(2)ウエットティッシュ
エマルジョン状の抗ロタウイルス剤を用いて、不織布の積層シートにパディング加工を施した。コロミン酸硫酸エステルのNa塩(平均n=80)100重量部にアクリル樹脂エマルジョン20部を添加混合して得られた混合液中に不織布を浸漬し、ロールで均一に絞って、パディング加工を行った。その後乾燥して、抗ロタウイルス作用を有する不織布シートを得た。
このシートをアルコール、界面活性剤等を含有する液に浸漬して、処理後、密封容器中に詰めてウエットティッシュを作成した。
【0057】
−実施例4−
食品組成物
上記の配合割合で乳児用粉ミルク(コロミン酸硫酸エステル0.5重量%含有)を調製した。
【0058】
−実施例5−
(1)下記の割合でコロミン酸硫酸エステルのNa塩を餌料添加物として配合して、コロミン酸硫酸エステルを1重量%含有するペットフードを調製した。
【0059】
(2)下記の割合で、配合飼料にコロミン酸硫酸エステルのNa塩を餌料添加物として配合して、コロミン酸硫酸エステルを0.5重量%含有する豚用飼料を調製した。
【0060】
【0061】
【薬理試験例】
−薬理試験例1−
抗ロタウイルス活性−直接プラーク法−
N−アセチルノイラミン酸ホモポリマーの硫酸エステルの抗ロタウイルス活性を直接プラーク法[レターズ イン アプライド マイクロバイオロジー(Letters in Applied Microbiology) 19, 386 (1994)]を用いて測定した。N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルとして参考例で調製したコロミン酸硫酸エステルを使用した。
【0062】
具体的には、図1に示す手順に従って行った。コロミン酸硫酸エステルまたはコロミン酸(比較化合物)を用いた薬剤処理を前処理(i)、混合処理(ii)および後処理(iii)の系についてそれぞれ実施して、コロミン酸硫酸エステルの抗ロタウイルス活性を評価した。
(i)前処理:図1中、(i)の時点で薬剤を培地に添加して、ウイルス接種前に細胞と接触させる。
(ii)混合処理:ロタウイルスSA−11と2時間反応させた後、図1中(ii)の時点で培養液に薬剤を加える。
(iii)後処理:ウイルスが細胞に吸着した後の図1中(iii)の時点で、薬剤をアガロース培地に添加する。
なお、薬剤の濃度は培地で希釈して調製した。また、コントロールとして薬剤の代わりに培地を同量添加して同様の実験を行った。
【0063】
薬剤としてコロミン酸硫酸エステルを用いた結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
数値は、薬剤無添加(コントロール)の場合のプラーク数を100%としてプラーク数を%に換算して示した。
原料であるコロミン酸を用いた場合は、前処理、後処理及び混合処理ともに全く抗ウイルス活性が認められなかった(データは示さない。)。それに対し、コロミン酸硫酸エステルを用いた場合は、全ての処理方法で活性が認められ、中でも後処理での効果は著しく優れていた。
このことから、N−アセチルノイラミン酸ホモポリマーの硫酸エステルはロタウイルス感染症に対して優れた治療剤として有効であり、また感染予防剤としても有用であることが示唆された。
【0066】
−薬理試験例2−
抗ロタウイルス活性−マルチプルステップ増殖法−
薬理試験例1において特に効果の高かった後処理に関して、更にマルチプルステップ増殖法[レターズ イン アプライド マイクロバイオロジー(Letters in Applied Microbiology) 19, 386 (1994)]により、N−アセチルノイラミン酸ホモポリマーの硫酸エステルの抗ロタウイルス活性を評価した。
具体的には、図2に示す手順に従って行った。
比較化合物としてコロミン酸を用いて同様の実験を行った。
コロミン酸硫酸エステルの結果を表2に示す。数値はウイルスの感染価(log pfu/0.2ml)を示す。
【0067】
【表2】
【0068】
原料のコロミン酸には抗ウイルス活性は認められなかった(データは示さない。)。それに対し、コロミン酸硫酸エステルの場合、感染した細胞に対する増殖抑制効果が有意に認められ、ロタウイルス感染症の治療に有用であることが示された。
【0069】
−比較薬理試験例−
ロタウイルスと同様にエンテリックウイルスに属するポリオウイルスを用いて、コロミン酸硫酸エステルのポリオウイルスに対する抗ウイルス活性を調べた。測定は、薬理試験例1に記載する直接プラーク法に準じて行った(アガロース培地として、アセチルトリプシン無添加のアガロース培地を使用。)。結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
このことから、コロミン酸硫酸エステルには抗ポリオウイルス活性は認められず、N−アセチルノイラミン酸ホモポリマーの硫酸エステルの抗ウイルス作用はロタウイルスに特異的なものであることが示唆された。
【0072】
−薬理試験例3−
細胞毒性
MEM培地(イーグル最小培地)に0.15%重炭酸塩及び10%FBSを配合した培地で36℃にて培養したMA104細胞にコロミン酸または参考例で得られたコロミン酸硫酸エステルを加え、36℃にて6日間培養した。培養後、PBSにより1回洗浄し、生細胞数を血球計算盤にて数えた。結果を表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
このことから、N−アセチルノイラミン酸ホモポリマーおよびN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステルには、上記濃度範囲において顕著な細胞毒性が認められず、本発明の抗ロタウイルス剤、ロタウイルス感染症予防または治療剤、衛生品、食品組成物及び餌料添加物の安全性が確認された。
【0075】
なお、本発明には下記の実施態様も含まれる。
【0076】
(1)N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその食品衛生上許容される塩を含有することを特徴とする食品添加物。
(2)飲食物中に、0.01〜20重量%の割合で含まれるように用いられるN−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその食品衛生上許容される塩が含有することを特徴とする食品添加物。
(3)粉ミルク、離乳食、乳製品及び清涼飲料水の中から選択されるいずれかの飲食物に配合される、(1)又は(2)記載の食品添加物。
(4)N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその食品衛生上許容される塩を配合してなる餌料組成物。
(5)N−アセチルノイラミン酸もしくはそのホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその食品衛生上許容される塩を、0.01〜20重量%の割合で含有する餌料組成物。
【図面の簡単な説明】
【図1】コロミン酸硫酸エステル等の抗ロタウイルス活性を直接プラーク法で測定する手順を示す(薬理試験例1)。
【図2】コロミン酸硫酸エステル等の抗ロタウイルス活性をマルチプルステップ法で測定する手順を示す(薬理試験例2)。
Claims (6)
- 請求項1記載のN−アセチルノイラミン酸ホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその薬学的に許容される塩を有効成分とするロタウイルス感染症予防または治療剤。
- 請求項1記載のN−アセチルノイラミン酸ホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその薬学的に許容される塩を表面に有してなるロタウイルス感染症予防用衛生品。
- 飲食物に、請求項1記載のN−アセチルノイラミン酸ホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその食品衛生上許容される塩を配合してなるロタウイルス感染症予防用食品組成物。
- 飲食物が粉ミルク、離乳食、乳製品及び清涼飲料水の中から選択されるいずれかである請求項4記載のロタウイルス感染症予防用食品組成物。
- 請求項1記載のN−アセチルノイラミン酸ホモポリマーの硫酸エステル(I)またはその食品衛生上許容される塩を含有することを特徴とするロタウイルス感染症予防用餌料添加物。
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