JP3980926B2 - 手術用具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人体等に医療手術を施す際に使用する手術用具に係り、詳細には、内視鏡を用いた外科手術に使用される手術用具に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、人体に対する医療外科手術としては、内視鏡と呼ばれるビデオカメラを体内に挿入し、この内視鏡によって映し出される体内映像を頼りに、開腹することなく手術を行う所謂内視鏡術が拡大してきている。この内視鏡術は、例えば患者の腹部に数cm程度の穴を数箇所設け、この穴から内視鏡と鉗子、レーザメス等の処置具を腹腔内に挿入し、腹腔内の問題箇所に対して外科的治療を施すものであり、患者の腹部を開腹して外科的治療を施す場合と比較して人体のダメージが小さく、術後、患者が早期に社会復帰をなし得ることから、近年急速に普及しつつある。
【0003】
このような内視鏡術を行うためには、数cm程度の穴から人体に挿入することができ、しかも人体内では外科医の手に変わって処置作業を行い得る手術用具が必要となる。従来、この種の手術用具としては、特開平7−194608号公報に開示されるように、体内に挿入されるパイプ部の先端に開閉自在な腕部を設け、体内において上記腕部を開閉させて体組織を押さえる、引っ張る等の処置を行うものが知られている。しかし、同公報に開示される手術用具は人間の手首に相当する部位を具備しないことから、体内において広範囲に処置作業を行うことができず、腕部の取り付けられたパイプ部それ自体を大きく動かすことが必要となり、術中の取り扱いが困難であった。
【0004】
一方、特開平7−136173号公報には、体内に挿入したパイプ部の先端が人間の手首と同様に前後に屈曲するように構成された手術用マニュピュレータが開示されている。このマニュピレータではパイプ部の先端に設けられた作業部を自在に屈曲させることにより、体内において広範囲に処置作業を実施し得るが、作業部の屈曲を一対のモータの連動によって実現しており、作業部の駆動機構が複雑且つ大型なものとなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、内視鏡を用いた外科手術において、体内に挿入されたパイプ部の先端を自在に屈曲させることができ、かかる体内で広範囲に処置作業を行うことが可能であると共に、駆動機構の小型化を実現することができ、容易に取り扱うことが可能な手術用具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の手術用具は、ケーシングと、このケーシングから延びると共に体内に挿入されるパイプ部と、このパイプ部の先端に枢支されると共に該パイプ部に対し折れ曲がるようにして揺動自在な中空状の首部と、上記パイプ部内を進退自在に貫通すると共に該パイプ部先端からの突出量に応じて上記首部を屈曲させる中空ロッドと、上記ケーシング内に収容されると共に上記中空ロッドに対して所定の進退量を与える首部駆動手段と、上記首部の揺動端に取り付けられた手術ツールと、上記首部及び中空ロッドを貫通すると共に上記手術ツールに結合された可撓性の駆動ロッドとから構成されることを特徴とするものである。
【0007】
このような技術的手段によれば、パイプ部の内部において中空ロッドを進退させることにより、かかる中空ロッドのパイプ部先端からの突出量に応じ、該パイプ部の先端に枢支された首部を自在に屈曲させることができる。また、中空ロッドを進退させる首部駆動手段はねじ機構を用いることによって容易に実現することが可能であり、また、上記ねじ機構は、中空ロッドの外周面に直接雄ねじを設け、この雄ねじに螺合する雌ねじを中空モータによって回転させることにより、きわめて簡易且つ小型に構成することができるので、首部駆動手段を収容するケーシングの小型化も実現することが可能である。更に、中空ロッド内には首部の揺動端に取り付けた手術ツールの駆動ロッドを収容することができるので、各種の手術ツールを選択することが可能であり、体内に挿入されるパイプ部の直径も小さなものとすることができる。
【0008】
ここで、上記首部をパイプ部と共に体内に挿入し易くするためには、かかる首部をパイプ部と同一の太さ又はそれ以下の太さに設定しておくことが必要であり、また、中空ロッドを何ら進退させていない状態において、首部がパイプ部と一直線上のホームポジションに設定されていることが好ましい。従って、このような観点からすれば、上記首部の中空部内には、上記駆動ロッドに固定されると共に該首部をホームポジションへ付勢する第1弾性部材が収容するのが好ましい。このような構成によれば、首部をホームポジションへ維持するための仕掛けを該首部の内部に収容することができ、パイプ部から首部を同一太さの連続体として形成することができる。また、首部駆動手段に対して何ら動力を与えていない状態では、首部がホームポジションに設定され、該首部とパイプ部とが一直線上になるので、パイプ部を体内に挿入し、あるいは体内から抜き出す作業を容易に行うことが可能となる。
【0009】
また、上記首部の揺動端に取り付けられる手術ツールとしては、内視鏡としてのビデオカメラ、血液や洗浄液等の吸引器、把持具としての鉗子、超音波メスやレーザメスといったメス類等、適宜選択して装着することが可能である。手術ツールをビデオカメラとする場合には、上記駆動ロッド内にビデオ信号を送信するための信号ケーブルを収容することができ、吸引器とする場合には、駆動ロッドそのものを吸引管とすることができる。また、手術ツールを鉗子とする場合には、鉗子の把持爪の開閉を制御するための索引ケーブルを駆動ロッドとすることができる。
【0010】
上記手術ツールを複数の把持爪からなる鉗子とする場合、中空ロッド内を貫通する駆動ロッドを上記把持爪に連結させ、駆動ロッドの進退に応じて各把持爪を開閉させることになるが、この場合、上記首部をホームポジションへ付勢する第1弾性部材を前述の如く設けると、かかる第1弾性部材が首部に対して駆動ロッドを一定の方向へ付勢していることになるので、この第1弾性部材の付勢力を利用して各把持爪を全開方向又は全閉方向へ付勢することができる。すなわち、上記第1弾性部材が首部のホームポジションへの設定と、各把持爪の初期姿勢の設定とを同時に行うことになり、首部と把持爪の姿勢制御を単純な構成で実現することが可能となる。
【0011】
また、駆動ロッドを進退させて把持爪を動作させるためには、パイプ部に対して駆動ロッドを進退させるツール駆動手段を設ける必要があるが、このツール駆動手段も首部駆動手段と同様、ねじ機構を用いることによって容易に実現することができる。このツール駆動手段は駆動ロッドを直接進退させるものであっても差し支えないが、駆動ロッドを進退させずに固定している状態下で首部の揺動を円滑に行い得るよう、上記ツール駆動手段は第2弾性部材を介して駆動ロッドと結合されていることが好ましい。
【0012】
更に、本発明の手術用具は、術者がこれを直接手に持ってパイプ部を体内に対して進退させ、あるいは回転させて内視鏡術を施すものであっても良いが、上記パイプ部及びケーシングを進退又は所定の角度で回転させる駆動装置を設け、術者が直接手に持たずに使用できるように構成することも可能である。内視鏡術を行う場合、内視鏡、鉗子、レーザメス等の複数の手術用具を体内へ同時に挿入することもあり、複数の術者の共同作業が必要となるが、このように駆動装置を設けてパイプ部の進退及び回転を制御し得るように構成しておけば、一人の術者によっても内視鏡術を行うことが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の手術用具を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した手術用具の一実施例を示すものである。この手術用具は、体内に挿入されるパイプ部1と、このパイプ部1の後端に取り付けられたケーシング2と、上記パイプ部1の先端に取り付けられた首部3と、この首部3の先端に取り付けられた手術ツールとしての一対の把持爪4と、この把持爪4の動作を制御する駆動ロッド5とを備えており、かかる把持爪4を体内において開閉させることで、体内組織を押さえる、引っ張る等の作業を行い得る鉗子として構成されている。
【0014】
上記パイプ部1は断面略円筒状の金属パイプであり、外径約6mm程度に形成されている。このパイプ部1はケーシング2の一端に形成された保持部20に嵌合すると共に、螺子21によって離脱不能に固定されており、パイプ部1内の中空部とケーシング2内の空間とが互いに連通されている。また、図2に示すように、このパイプ部1の先端には支持ピン10を介して上記首部3が揺動自在に取り付けられている。この首部3はパイプ部1と同様に断面略円筒状の中空部材であり、上記パイプ部1の先端の開口を塞ぐように、且つ、パイプ部1と一直線上に設けられている。上記支持ピン10はパイプ部1の先端の開口縁部に係合しており、図3に示すように、上記首部3はパイプ部1に対して折れ曲がるように揺動可能となっている。
【0015】
この首部3の揺動を制御するため、上記パイプ部1の中空部内には断面略円筒状の金属製中空ロッド6が収容されている。この中空ロッド6はその先端がパイプ部1の先端開口に略一致する一方、後端はパイプ部1からケーシング2内へ突出しており、かかるケーシング2内に設けられた首部駆動手段7によって保持されると共に、この首部駆動手段7によってパイプ部1内を進退するように構成されている。そして、図3に示すように、中空ロッド6の先端をパイプ部1の先端開口から突出させると、首部3の底面板30が中空ロッド6の先端によつて押圧され、かかる中空ロッド6の突出量に応じて首部3が揺動し、パイプ部1に対して屈曲するようになっている。尚、中空ロッド6の先端は首部3の底面板30を押圧し易いよう、斜めに切り欠かれている。
【0016】
一方、図4は上記把持爪4を駆動するための構成を示すものである。上記首部3の先端にはフランジ部31が設けられており、このフランジ部31には把持爪4を揺動自在に支持するための支軸32が立設されている。図4には1枚の把持爪4のみ描かれているが、上記支軸32には同一形状の2枚の把持爪4が互いに逆向きに嵌合しており、これら一対の把持爪4が揺動することにより、対象物を把持爪4の間に挟持することが可能となっている。また、これらの把持爪4の動作を制御する駆動ロッド5は中空ロッド6及び首部3を貫通するように設けられており、ケーシング2内に設けられたツール駆動手段8によって長手方向へ任意の進退量を与えることが可能となっている。各把持爪4には長孔40が形成されており、この長孔40には駆動ロッド5の先端に立設されたスタッド50が遊嵌している。これにより、駆動ロッド5をケーシング2方向へ引っ張ると(図4中の矢線方向)、かかる駆動ロッド5に立設されたスタッド50が把持爪4の長孔40内を移動しながら該把持爪4を引っ張ることになり、一対の把持爪4は互いに閉じる方向へ揺動する。これにより、把持爪4で対象物を挟み込んで保持することが可能となる。尚、首部3の自由な屈曲を可能とするため、上記駆動ロッド5には可撓性の板ばねが採用されている。
【0017】
また、上記駆動ロッド5に何ら外力が与えられていない状態において、把持爪4を常に開放ポジションへ復帰させるため、かかる駆動ロッド5にはツール駆動手段8に抗して該駆動ロッド5を把持爪4の方向へ引っ張る付勢力が与えられている。具体的には、上記首部3内において駆動ロッド5に係止鍔33を固定すると共に、この係止鍔33と首部3の底面板30との間にコイルスプリング(第1弾性部材)34を介装し、かかるコイルスプリング34の付勢力によって駆動ロッド5を把持爪4の方向へ引っ張るように構成している。このような構成によれば、駆動ロッド5をツール駆動手段8によってケーシング方向へ牽引した場合にのみ、上記把持爪4が矢線方向へ閉じて対象物を挟持することになり、また、駆動ロッド5を常に緊張状態に維持することができるので、ツール駆動手段8による駆動ロッド5の進退量を加減なく把持爪4の開閉量に変換することができる。
【0018】
図5は上記ケーシング2内の構造を示す拡大断面図である。かかるケーシング2内には、中空ロッド6を進退させるための首部駆動手段7と、駆動ロッド5を進退させるためのツール駆動手段8とが収容されており、前者の首部駆動手段7がパイプ部1寄りに位置している。この首部駆動手段7は、任意の回転量を与えることが可能な第1中空モータ70と、この第1中空モータ70のロータ71に嵌合したスクリューナット72とから構成されており、パイプ部1からケーシング2内に突出した中空ロッド6の後端は上記ロータ71内に位置している。また、ロータ71内に挿入された中空ロッド6の外周面には雄ねじが形成されており、上記スクリューナット72はこの中空ロッド6の雄ねじに螺合している。一方、中空ロッド6の周壁には螺子21に対向する位置に長孔60が形成されており、かかる螺子21の先端を長孔60内に挿入することにより、上記中空ロッド6の周り止めがなされている。従って、上記第1中空モータ70のロータ71を回転させると、かかるロータ71に嵌合するスクリューナット72が回転し、その回転量に応じた進退量が上記中空ロッド6に与えられ、前述の如く中空ロッド6で首部3を押圧することにより、図3に示すように、首部3をパイプ部1に対して屈曲させることができるものである。
【0019】
また、上記ツール駆動手段は、ロータ81に対して任意の回転量を与えることが可能な第2中空モータ80と、外周面に雄ねじが形成されると共に上記ロータ81の内周面に螺合した移動スリーブ82と、この移動スリーブ82に嵌合したばね受け部材83と、上記中空ロッド6からケーシング2内に突出した駆動ロッド5の後端を首部3と反対方向へ引っ張る係止部材84と、上記ばね受け部材83と係止部材84との間に設けられたコイルスプリング(第2弾性部材)85とから構成されている。駆動ロッド5は移動スリーブ82及びばね受け部材83を貫通して係止部材84に達しており、ばね受け部材83に対しては自在に進退し得るようになっている。また、係止部材84には駆動ロッド5の進退方向に沿って案内溝86が形成されており、この案内溝86にはケーシング2に立設された案内ピン87が摺動自在に嵌合している。
【0020】
このような構成において、上記第2中空モータ80のロータ81を回転させて移動スリーブ82を首部3と反対方向(図5の紙面右方向)へ移動させると、移動スリーブ82と共にばね受け部材83が移動してコイルスプリング85が押圧され、かかるコイルスプリング85が係止部材84を押圧することによって、該係止部材84に引っ掛けられた駆動ロッド5が首部3と反対方向へ引っ張られることになる。これによって首部3に取り付けられた把持爪4が全開状態から揺動し、対象物を挟持することになる。把持爪4の揺動量、すなわち対象物を挟持する際の微調整はロータ81の回転量を調整して行う。
【0021】
上記係止部材84を押圧するコイルスプリング85は、首部3の中空部内に収容されたコイルスプリング34に比べてばね係数が大きなものを使用しており、ばね受け部材83によってコイルスプリング85を押圧した際には、かかるコイルスプリング85が縮むことなく、首部3内のコイルスプリング34が縮むように構成されている。これにより、第2中空モータ80の回転による移動スリーブ82の進退を把持爪4の開閉動作に正確に反映させることができるようになっている。一方、把持爪4が対象物を掴んだ状態で首部3が屈曲した場合、首部3は中空ロッド6によって直接押圧され、しかも駆動ロッド5は首部3の屈曲によって首部3の方向へ引っ張られることから、仮に駆動ロッド5を直接移動スリーブ82に固定したのでは、駆動ロッド5に対して無理な力が作用し、駆動ロッド5と把持爪4の結合部位、あるいは駆動ロッド5と移動スリーブ82との結合部位が破損してしまう懸念がある。しかし、前述の如くコイルスプリング85を介して移動スリーブ82の進退を駆動ロッド5へ伝達するように構成すれば、首部3の屈曲によって駆動ロッド5に無理な力が作用した場合に、かかるコイルスプリング85が縮むことによって駆動ロッド5に作用する過大な力を逃がすことができ、前述した破損のトラブルを未然に防止することが可能となる。
【0022】
従って、このように構成された本実施例の手術用鉗子は、第1中空モータ70に対してその回転を制御する信号を印加することにより、上記首部3を任意に曲げ延ばすことができ、更に、第2中空モータ80に対してその回転を制御する信号を印加することにより、上記把持爪4を任意に開閉させることができ、内視鏡術の際、体内において柔軟に作業を行うことができるものである。
【0023】
また、この実施例の手術用鉗子では、手術ツールである把持爪4の動作を制御する駆動ロッド5、この把持爪4を搭載した首部3の屈曲を制御する中空ロッド6、首部3を保持するパイプ部1の三者が同心円状に重なり合っているので、内視鏡術の際に体内へ挿入するパイプ部1の断面積を小さく押さえることが可能であり、この鉗子を挿入するための人体の切開部位を小さくして、手術における人体ダメージを小さくすることも可能である。加えて、同心円状に設けられた中空ロッド6及び駆動ロッド5を直列に設けられた一対の中空モータ70,80で夫々駆動しているので、首部駆動手段7及びツール駆動手段8を極めてコンパクトに構成することができ、手術中における取り扱いが容易なものとなっている。
【0024】
一方、この手術用具は極めてコンパクトに形成されているため、術者が手に持って操作することも可能であるが、図6に示すような駆動装置100を取り付けることにより、遠隔操作でパイプ部1を体内に対して進退させ、あるいは回転させることが可能となる。
【0025】
この駆動装置100は、先端部が上記手術用具のケーシング2に固定されるロボット軸9を備えており、かかるロボット軸9を自在に進退させ、回転させ、あるいは螺旋状に運動させることにより、上記パイプ部1にロボット軸9と同じ動作を与えるものである。図1に示すように、上記ケーシング2の後端にはロボット軸9の先端90を固定するための締込み部22が形成されており、必要に応じてロボット軸9を装着することができるようになっている。
【0026】
上記ロボット軸9は中空状に形成されており、その中空部には上記第1及び第2中空モータ70,80の信号線等を通すことができるようになっている。また、このロボット軸9の外周面には長手方向に沿って複数条のスプライン溝91が形成される一方、螺旋状のボール転動溝92が形成されており、これらスプライン溝91及びボール転動溝92を介してボールスプラインナット93及びボールねじナット94がロボット軸9に嵌合している。ボールスプラインナット93は上記スプライン溝91を転走する多数のボールを有すると共に、これらボールを循環させる無限循環路を有しており、ロボット軸9の長手方向には自在に移動することが可能であるが、周方向についてはロボット軸9の回転を拘束している。また、上記ボールねじナット94はロボット軸9のボール転動溝92を転走する多数のボールを有すると共に、これらボールが循環する無限循環路を有しており、ロボット軸9の周囲を相対的に回転しながら、かかる回転量及び回転方向に応じた軸方向への進退量をロボット軸9に与える。
【0027】
上記ボールスプラインナット93は中空状の第1ロータ95に嵌合すると共に、この第1ロータ95の外周面には第3中空モータ96が設けられており、かかる第3中空モータ96を回転させると、ボールスプラインナット93が第1ロータ95と共に回転し、ロボット軸9に対して回転を与えることができるようになっている。また、上記ボールねじナット94は中空状の第2ロータ97に嵌合すると共に、この第2ロータ97の外周面には第4中空モータ98が設けられており、かかる第4中空モータ98を回転させると、ボールねじナット94が第2ロータ97と共に回転するように構成されている。ロボット軸9は上記第1ロータ95及び第2ロータ97を貫通するようにして設けられている。
【0028】
また、第3中空モータ96を保持する第1ハウジング103、第4中空モータ98を保持する第2ハウジング104は駆動装置100の長手方向の中央に位置する支持ブロック105を介して互いに結合されており、かかる支持ブロック105を図支外のアーム等に固定することにより、駆動装置100全体を保持することができるようになっている。尚、図6中の符号101は第3中空モータに対して信号線を接続するためのコネクター、符号102は第4中空モータに対して信号線を接続するためのコネクターであるる
【0029】
そして、以上のように構成された駆動装置では、第3中空モータ96の回転を停止した状態で第4中空モータ98を回転させると、第3中空モータ96によって停止状態に保たれたスプラインナット93がロボット軸9の回転を拘束しているので、かかるロボット軸9は周方向へは回転することなく、ボールねじナット94の回転量及び回転方向に応じて軸方向へ進退する。また、第3中空モータ96及び第4中空モータ98を同一方向へ同一角速度で回転させると、ロボット軸9はスプラインナット93によってボールねじナット94と同一方向、同一角速度の回転を与えられることになるので、軸方向へ進退することなく周方向へ回転することになる。更に、第4中空モータ98を停止させた状態で第3中空モータ96を回転させると、スプラインナット93がロボット軸9を回転させ、このときボールねじナット94は回転することなく停止しているので、ロボット軸9は自らの回転によって軸方向へ進退することになり、結果的には螺旋状の運動を行うことになる。
【0030】
従って、このような駆動装置100のロボット軸9を前述の手術用具のケーシング2に接続すると、第3及び第4中空モータ96,98に対して印加する制御信号の組み合わせにより、手術用具それ自体を体内に対して自在に進退させ、あるいは回転させて使用することが可能となる。このため、図6に示す駆動装置100を用いれば、図1に示す手術用具を術者が手によって直接取り扱わなくとも、遠隔操作で取り扱うことができる。特に、図1に示す手術用具は首部3が一方向へ自在に屈曲し、かかる首部3の先端に取り付けた把持爪4を自在に開閉させることができるものであるから、駆動装置によって手術用具それ自体を自在に回転させ、あるいは進退させることができれば、体内の広範囲な部位に対して処置を施すことが可能となる。
【0031】
尚、図1に示した手術用具は、ケーシング2の後端に設けられた締込み部22が螺子を用いて駆動装置100のロボット軸9に固定されるように構成されていたが、かかる駆動装置100に接続する手術用具を手術中に鉗子からレーザメス等の他の用具に交換する場合に、いちいち螺子を操作して手術用具の取り外し及び取付を行っていたのでは、手術そのものを迅速に執り行うことができない。従って、好ましくは、駆動装置100のロボット軸9をケーシング2の後端に適合させるだけでこれらロボット軸9とケーシング2とを分離不能に接続する機構、例えばエアービストンを駆動動力とした自動チャック機構等を設けるのが好ましい。
【0032】
また、互いに結合されるロボット軸9の先端とケーシング2の後端には、手術用具側に内臓された第1中空モータ70及び第2中空モータ80の駆動信号を受け渡すためのコネクタを設け、図1に示す手術用具を駆動装置100に結合した際に、これらコネクタが互いに接続されて、第1中空モータ70及び第2中空モータ80の駆動準備が完了するように構成するのが好ましい。
【0033】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の手術用具によれば、パイプ部の内部において中空ロッドを進退させ、かかる中空ロッドのパイプ部先端からの突出量に応じて該パイプ部の先端に枢支された首部を自在に屈曲させており、内視鏡を用いた外科手術において、体内に挿入されたパイプ部の先端を自在に屈曲させることができ、かかる体内で広範囲に処置作業を行うことが可能である。また、パイプ部、中空ロッド及び駆動ロッドは同心円状に重ねて配置することができるので、パイプ部を細く形成することができる他、首部の駆動手段及びツール駆動手段に中空モータを用いることにより、駆動機構の小型化を実現することができ、コンパクトで術中における取り扱いが容易なものとすることができる。
【0034】
更に、手術部位を顕微鏡で拡大して観察しつつ行う処置作業に好適であり、微細な手術作業を正確に、しかも素早く完了させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明本発明を適用した手術用具の一実施例を示す正面断面図である。
【図2】 実施例に係る手術用具の首部の拡大断面図てある。
【図3】 実施例に係る手術用具の首部を屈曲させた状態を示す拡大断面図てある。
【図4】 実施例に係る手術用具の把持爪の駆動機構を示す断面図である。
【図5】 実施例に係る手術用具のケーシングの内部を示す拡大断面図である。
【図6】 実施例の手術用具に接続して使用する駆動装置の拡大断面図である。
【符号の説明】
1…パイプ部、2…ケーシング、3…首部、4…把持爪、5…駆動ロッド、6…中空ロッド、7…首部駆動手段、8…ツール部駆動手段、9…ロボット軸、30…底面板、34…コイルスプリング(第1弾性部材)、40…長孔、50…スタッド、70…第1中空モータ、71…ロータ、72…スクリューナット、80…第2中空モータ、81…ロータ、82…移動スリーブ、83…ばね受け部材、84…係止部材、85…コイルスプリング(第2弾性部材)、86…案内溝、91…スプライン溝、92…ボール転動溝、93…ボールスプラインナット、94…ボールねじナット、96…第3中空モータ、98…第4中空モータ、100…駆動装置
Claims (4)
- ケーシングと、このケーシングから延びると共に体内に挿入されるパイプ部と、このパイプ部の先端に枢支されると共に該パイプ部に対し折れ曲がるようにして揺動自在な中空状の首部と、上記パイプ部内を進退自在に貫通すると共に該パイプ部先端からの突出量に応じて上記首部を屈曲させる中空ロッドと、上記中空ロッドが貫通すると共に上記ケーシング内に収容される中空モータを有し、この中空モータの回転に伴って上記中空ロッドに対して所定の進退量を与える首部駆動手段と、上記首部の揺動端に取り付けられた手術ツールと、上記首部及び中空ロッドを貫通すると共に上記手術ツールに結合された可撓性の駆動ロッドと、上記首部の中空部内に収容されると共に上記駆動ロッドに固定され、上記首部をパイプ部と一直線上のホームポジションへ付勢する第1弾性部材と、から構成され、
上記ケーシング内にはモータの回転に伴って上記駆動ロッドを進退させるツール駆動手段が設けられる一方、上記手術ツールは上記首部の先端に枢支されると共に上記駆動ロッドの進退に応じて互いに開閉自在な把持爪であり、上記第1弾性部材は可撓性の駆動ロッドに対して張力を付与していることを特徴とする手術用具。 - 上記ツール駆動手段は、第2弾性部材を介して駆動ロッドと結合されており、この第2弾性部材のばね係数は上記第1弾性部材のそれよりも大きいことを特徴とする請求項1記載の手術用具。
- 上記首部駆動手段及びツール駆動手段はモータの回転を中空ロッド又は駆動ロッドの進退運動に変換するねじ機構を具備することを特徴とする請求項1記載の手術用具。
- 上記ケーシングの後端に固定されると共に、上記パイプ部に対してその軸方向に沿った進退運動及び軸方向周りの回転運動を与えて上記手術ツールを位置決めする駆動装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の手術用具。
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