JP3980391B2 - 木造建築物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木造建築物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建物躯体側の揺れ等の壁面への伝達を防止する壁面構造としては、従来、マリオン方式のカーテンウォールが提案されている。このカーテンウォールは、上下の床、もしくは梁の間にマリオンと呼ばれる部材を躯体側に対して相対移動自在に掛け渡し、該マリオンにガラスやスパンドレルパネル等の壁面構成部材を固定して構成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来例において、マリオンは建物躯体に対して相対移動する構成部材として形成され、建物躯体に揺れ等が発生した場合には、マリオンと壁面構成部材とを一体として建物躯体に対して相対移動させるものであるために、マリオン、および壁面構成部材の自重を各階の床躯体等で受ける必要がある。
【0004】
この結果、例えば木造家屋等、鉄骨、あるいは鉄筋コンクリート造建造物に比して躯体の耐荷重の低い建造物には適用できないという問題がある。
【0005】
また、壁面構成部材、とりわけサッシを木材により形成した場合には、マリオンとサッシとの連結部は一体として移動するために、木ねじ等の緩みが発生しやすく、サッシのマリオンへの連結信頼性が低くなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、木造建築に適用可能なカーテンウォールを備えた木造建築物の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば上記目的は、
支柱12に各々剛接合された天井躯体1と基礎2のそれぞれの外周部に対して垂直方向に伸びるルーズ孔17および水平方向に延びるルーズ孔17を備えたマリオン固定金具14を介して上下端がボルト止めされ、各階の床躯体3から独立して所定間隔で立設されるマリオン4と、
隣接するマリオン4に両側部が上方に移動可能に吊下されて上下方向に積層される複数の単位壁構造体5、5、・・・とを有する木造建築物を提供することにより達成される。
【0008】
本発明において、壁面を構成する単位壁構造体5は、天井躯体1と基礎2に両端を固定されるマリオン4に吊下されて支持される。躯体、および基礎2側にマリオン4を固定することにより、単位壁構造体5はマリオン4を介して天井躯体1に吊り下げられ、各単位壁構造体5の自重は、マリオン4、および天井躯体1による保持力に分配される。
【0009】
この結果、躯体側、とりわけ各階の床躯体3への応力負担がなくなるために、木造建築物に対するカーテンウォールの施工が可能になる。
【0010】
また、単位壁構造体5は、当該単位壁構造体5として単独でマリオン4に対して移動可能であるために、単位壁構造体5への応力負担は生じない。この結果、単位壁構造体5に木製のサッシ等を使用した場合であっても、繰り返しの応力による木ねじの緩み等が発生することがない。
【0011】
マリオン4は、適宜材料を使用して形成することが可能であるが、木製主体部6の屋外側端面6aにT字状のチャンネル材7を固定して形成することが望ましい。木製主体部6は剛接合が可能で、接合状態において力学的に一体の部材として挙動するために、比較的高層の建築物を構築する際、マリオン4を適宜接合して長寸仕様のものを容易に得ることができる。
【0012】
さらに、マリオン4を木製主体部6とT字状のチャンネル材7との複合体とし、該チャンネル材7に固定された有頭のピン部材8を介して単位壁構造体5を支承することにより、単位壁構造体5との可動連結部における集中的な応力負担に対して十分な強度を確保できる。なお、ピン部材8は、係止対象に対する長さを調整することなどにより、無頭のものを用いることも可能である。
【0013】
単位壁構造体5は、マリオン4に対して相対移動自在であれば、施工後にマリオン4から脱離可能であることは要しないが、施工後においても各単位壁構造体5をマリオン4から脱離可能とすることにより、任意の単位壁構造体5を交換、撤去が可能となるために、メンテナンス性が向上する。
【0014】
この場合、単位壁構造体5は、側壁に固定される連結プレート9の係止孔10を前記ピン部材8に係止してマリオン4に連結され、
かつ、前記係止孔10は、連結プレート9の側辺に開放されてピン部材8に着脱可能とされるカーテンウォールが使用できる。
【0015】
さらに、上記係止孔10に鉛直線に対して傾斜する立ち上がり部10aを形成すると、各単位壁構造体5のマリオン4に対する上下方向への相対移動に建物外方、あるいは内方(屋内方向)への移動を含めることができる。この結果、各単位壁構造体5が自重により下方に移動する力を利用して単位壁構造体5に水平方向分力を付与することが可能となるために、単位壁構造体5の自重を利用したシール圧の確保が可能になり、壁面の密閉性能が向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1ないし3に3階建て木造建築物に適用された本発明の実施の形態を示す。この実施の形態において、建築物は、図1に示すように、基礎2上に立設された支柱12に天井構造体、および床構造体を各々剛に接合した天井躯体1、および床躯体3を有し、これら天井躯体1と床躯体3に両端が固定されて上下方向に長寸のマリオン4が所定ピッチで配設される。
【0017】
マリオン4は、図2および図3に示すように、断面矩形の長尺木材からなる木製主体部6と、取付片7aの中心から前方に向けて前方突出片7bを突出させて断面T字形状に形成される金属製チャンネル材7とからなる。金属製チャンネル材7は、アルミニウム、あるいは鋼等の押出成形品であり、木製主体部6の前面(屋外側端面6a)にほぼ全長に渡って取付片7aを嵌合させて固定される。
【0018】
このマリオン4は、図2に示すように、木製主体部6の下端6bが基礎2上に高さ調整可能に支承されるジャッキプレート13により支承され、マリオン4の上下端には、図2および図3に示すように、L字状のチャンネル鋼材により形成される一対のマリオン固定金具14が固定される。マリオン固定金具14は、基礎2においては、ベースチャンネル材15に、天井部においてはI型チャンネル鋼材16を介して基礎2、および天井躯体1に固定される。
【0019】
基礎2、および天井躯体1の地震時等における変位を吸収するために、マリオン4は基礎2、および天井躯体1に対して相対移動自在であり、マリオン4の移動を許容するために、上記ベースチャンネル材15、およびI型チャンネル鋼材16に対するマリオン固定金具14、およびマリオン固定金具14に対するマリオン4の固定はルーズ孔17を利用したボルト止めにより行われる。
【0020】
図3に示すように、上記マリオン4の金属製チャンネル材7には、側方に向けて有頭のピン部材8が溶接等により固定され、該ピン部材8に両側壁部を支持されて単位壁構造体5が吊下される。単位壁構造体5は、図4に示すように、木製枠部材を矩形に枠組みして形成される枠体18(サッシ)と、該枠体18に固定されるファスナプレート(連結プレート9)とを有する。
【0021】
ファスナプレート9は、図4に示すように、鋼板等の十分な強度を有する金属材料により形成される矩形の板材であり、木ビス等19を使用して枠体18の縦枠材18aに形成された凹部21に嵌合され、固定される。このファスナプレート9には、図5(a)に示すように、一端が側辺に開放されるガイド切欠部10bから斜め上方に立ち上がり部10aを延設した倒L字形状の係止孔10が形成される。後述するように、単位壁構造体5がマリオン4に対して相対変位した後、単位壁構造体5が自重により降下する際に、単位壁構造体5に屋外方向への分力が発生するように、図5(a)に示すように、係止孔10は上方に行くに従って漸次ガイド切欠部10bの開放辺から遠ざかる方向にθ傾斜するように形成される。
【0022】
一方、枠体18の内周壁面には全周に支持段部23が設けられ、図2に示すように、該支持段部23と枠体18前面に固定される押え材24とにより枠体18内に配置されるボード、あるいはガラス等の面部材25が固定される。また、枠体18の下枠材18bは前方に向かって低くなる斜面により形成され、雨水等が速やかに屋外側に流出するように配慮される。
【0023】
したがってこの実施の形態において、まず、建物の天井躯体1と基礎2とに固定されたマリオン固定金具14、14に両端を固定してマリオン4を立設し、該マリオン4、4間に予め形成された単位壁構造体5を連結することにより壁面が構成される。単位壁構造体5のマリオン4への連結は、図6および図7に示すように、金属製チャンネル材7に突設されるピン部材8にファスナプレート9をガイド切欠部10bから挿入して行われる。単位壁構造体5の取付作業に先立って金属製チャンネル材7の取付片7aの表面部にはバックアップ材27が配置され、さらに、金属製チャンネル材7の前方突出片7bの先端にはシール材28が装着される。
【0024】
また、隣接する単位壁構造体5の枠体18には、各々先端が金属製チャンネル材7の前方突出片7bの側壁に突き当てられるジャッキボルト29が装着されてマリオン4、4間における単位壁構造体5の配置姿勢が規制されるため、単位壁構造体5、5間の連結は、図6(a)に示す水平姿勢のほか、同図(b)に示すように角度を付けることも可能である。なお、この場合には、ピン部材8は、前方突出片7bに対して所定角傾斜して固定される。さらに、隣接する単位壁構造体5、5同士は、枠体18間にシール材28’が介装された後、いずれか一方に固定した目地ブロック30の反対端で他方側を覆って側方連結部のシールが確保される。
【0025】
以上のようにしてマリオン4、4間に配置される単位壁構造体5は、基礎2から上方に積層するように順次連結される。図7に示すように、上段側の単位壁構造体5はマリオン4の金属製チャンネル材7に固定された自重受けフランジ31上に下枠材18bが支承された状態で取り付けられ、上段側の単位構造体5の下枠材18bと下段側の単位壁構造体5の上枠材18cとの間にはスペーサ33が配置される。また、該スペーサ33の屋内側端部上面33aと上記自重受けフランジ31下面との間には、図3および図7に示すように、単位壁構造体5の上方への移動スペース34が確保される。
【0026】
また、スペーサ33と上下段の枠体18の下枠材18b、上枠材18cとの間にシール材28”が介装されるとともに、下段側の枠体18の上枠材18cに固定した目地材35により上記スペーサ33、および上段側の単位壁構造体5の下枠材18bを覆い、連結部のシールが確保される。
【0027】
以上のように構築されたカーテンウォールにおいて、建物躯体側が地震等により揺れた場合には、上方に移動スペース34を有し、かつ、係止孔10によりマリオン4に連結される単位壁構造体5は、建物躯体およびマリオン4に対して相対移動することができる。
【0028】
図5(a)および図7に示すように、地震によってマリオン4が上方に移動した場合、振動初期においてのみ単位壁構造体5はマリオン4とともに上方に移動し、その後にマリオン4が下方に移動するときには、移動スペース34および係止孔10によってその移動に追随しない。
【0029】
この状態において当初よりも上方に位置する単位壁構造体5は、図5(a)に示す自重Wによって下方に徐々に移動してゆくが、以後も上下に移動するマリオン4(ピン部材8)に対しては、係止孔10の立ち上がり部10aによって連結されているため、その移動に追随しない。
【0030】
すなわち、例えばピン部材8の上方への移動に伴う図5(a)に示す上方向の力Fは、立ち上がり部10aに沿う方向の力Aとこれに直交する力Bとに分力して単位壁構造体5に作用するため、単位壁構造体5に対しては、実際には力Aのみが働く。そして、力Aは、立ち上がり部10a内をピン部材8が移動することで作用することから、結果、単位壁構造体5は上方に移動しない。
【0031】
なお、立ち上がり部10aを有するファスナプレート9を両側に2個ずつ配置する単位壁構造体5は、角度θで傾斜する立ち上がり部10aに沿ってピン部材8が上方に移動することで、マリオン4に対して後方(屋内方向)に若干移動する。
【0032】
この後、地震が停止した際は、単位壁構造体5は、自重wによって立ち上がり壁10aに沿ってマリオン4に対して下方向、かつ、前方(屋外方向)に相対移動し、当初の位置に自動復帰することができる。
【0033】
したがって、地震等によってマリオン4が揺れても、単位壁構造体5はマリオン4に対して相対移動するために、該単位壁構造体5に応力負担が生じることがない。
【0034】
なお、本実施の形態においては、図5(a)に示すように、係止孔10の立ち上がり部10aは、ガイド切欠部10bの開放辺から遠ざかる方向に角度θで傾斜するように形成されるが、図5(b)に示すようにガイド切欠部10bの開放辺に近づく方向に角度θ’で傾斜させた場合には、単位壁構造体5に復帰時に屋内方向への分力を発生させることができる。
【0035】
また、以上においては、比較的低層の建築物に対する適用を説明したが、より高層の建築物に対する適用も可能であり、この場合、マリオン4は木製主体部6において上下に接合されて使用される。また、高層の場合には、マリオン4の建物躯体との間隔を一定に保持するために、マリオン4は、各階の床躯体3に連結することが可能であるが、この場合、マリオン4と床躯体3とは、離隔方向の移動のみを規制し、荷重負担が生じない連結構造が採用される。
【0036】
さらに、本実施の形態においては、カーテンウォールは、定形の単位壁構造体5を複数連結して形成されるが、マリオン4に対して相対移動自在であれば、異なる形状の単位壁構造体5’、5“等を組み合わせることも可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、木造建築等にもカーテンウォールを適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を示す図で、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【図2】マリオンの固定状態を示す側面図である。
【図3】図2の3A-3A線断面図である。
【図4】枠体を示す分解斜視図である。
【図5】連結プレートを示す図で、(a)は本発明の実施の形態に使用されるもの、(b)はその変形例を示す図である。
【図6】図1(a)の6A-6A線断面図で、(a)は単位壁構造体を平行に連結した状態、(b)は単位壁構造体を角度を付けて連結する場合の構造を示す説明図である。
【図7】図1(a)の7A-7A線断面図である。
【符号の説明】
1 天井躯体
2 基礎
3 床躯体
4 マリオン
5 単位壁構造体
6 木製主体部
6a 屋外側端面
7 T字形状のチャンネル材
8 ピン部材
9 連結プレート
10 係止孔
10a 立ち上がり部
Claims (4)
- 支柱に各々剛接合された天井躯体と基礎のそれぞれの外周部に対して垂直方向に伸びるルーズ孔および水平方向に延びるルーズ孔を備えたマリオン固定金具を介して上下端がボルト止めされ、各階の床躯体から独立して所定間隔で立設されるマリオンと、
隣接するマリオンに両側部が上方に移動可能に吊下されて上下方向に積層される複数の単位壁構造体とを有する木造建築物。 - 前記マリオンは木製主体部の屋外側端面にT字形状のチャンネル材を固定して形成されるとともに、該チャンネル材には側方にピン部材が固定され、
前記単位壁構造体は、両側壁を前記ピン部材に係止させて保持される請求項1記載の木造建築物。 - 前記単位壁構造体は、側壁に固定される連結プレートの係止孔を前記ピン部材に係止してマリオンに連結され、
かつ、前記係止孔は、連結プレートの側辺に開放されてピン部材に着脱可能とされる請求項2記載の木造建築物。 - 前記係止孔は、ピン部材を挿通可能な程度の幅寸法を維持して鉛直線に対して傾斜する方向に延設され、前記単位壁構造体のマリオンに対する上下相対移動に伴って該単位壁構造体を水平方向にガイドする立ち上がり部を備える請求項3記載の木造建築物。
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