JP3978849B2 - 宇宙漂流物体の捕獲装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はコスミックダスト、メテオロイド、スペースデブリ等の如き宇宙空間を漂流している物体を捕獲するために人工衛星等に取り付けて使用する宇宙漂流物体の捕獲装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
宇宙空間には数多くの物体(ごみ)が漂い続けている。その中には、星間空間や惑星間空間を飛び交っている直径1μm〜数百μm前後の微粒子であるコスミックダスト(宇宙塵)や、メテオロイド(隕星体)、役目を終えた人工衛星やロケットの残骸、これらが爆発したときの破片や塗料等の人工的な飛行物体であるスペースデブリがある。
【0003】
これらの宇宙漂流物体のうち、上記スペースデブリは、宇宙開発が進むにつれて増加するものであり、その中には地上から観測できる大きさのものから、観測装置にかからない小さいものまであり、これらと現在宇宙で稼動中の人工衛星との衝突のおそれがある。
【0004】
上記宇宙空間を漂い続けている物体を調査するためサンプルとして捕獲することが考えられている。
【0005】
かかる観点から従来では、図6に示す如く、底板bと前後左右の各側板cとを一体型とした金属製のホルダーボックスa内に、エアロジェル(aerogel)の如き低密度物質dをブロック状にして嵌め込んで保持させ、宇宙漂流物体が衝突してきたときに、該宇宙漂流物体の衝突エネルギーを上記低密度物質dで吸収させて捕獲するようにしたものが提案されている。fは低密度物質dを積層するためのフォイルを示す。
【0006】
しかし、上記エアロジェルの如き低密度物質dは透明であるため、漂流物体の衝突位置が見にくく、又、表面に付着した単なるごみを漂流物体と見誤る可能性がある。
【0007】
そのため、図7に一例を示す如く、図6に示したものと同様な構成において、低密度物質dの表面に、金やアルミニウム等の金属蒸着被膜eを形成させるようにしたものが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記図7に提案されているものの場合、漂流物体が衝突すると金属蒸着被膜eに衝突孔が発生するため、衝突位置は確認できるものの、金属蒸着被膜eには、低密度物質dの表面の凹凸がそのまま表われるため、小さな衝突孔は確認しにくいという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、宇宙漂流物体の衝突孔と低密度物質表面の凹凸とを明確に区別できるようにして、小さな衝突孔でも検出することができるような宇宙漂流物体の捕獲装置を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、上部を開口させたホルダーボックス内に、低密度物質をブロック状にして嵌め込んで収納させ、且つ該低密度物質の表面側に、薄膜を展張配置し、更に、上記ホルダーボックス上に、中央部の開口に保護ネットを張った蓋を配置して、上記薄膜を押えて固定するようにした構成とする。
【0011】
宇宙漂流物体が衝突すると、薄膜に衝突孔が生ずるので、衝突位置を容易に確認することができる。この際、薄膜は低密度物質表面に密着させられておらず低密度物質表面の凹凸が表われることがないので、小さな衝突孔でも検出可能となる。
【0012】
上記薄膜は、周辺部を上記低密度物質の外周面部に折り込んでホルダーボックスの側板との間に挟持させるようにし、更に、上記ホルダーボックス上に、中央部の開口に保護ネットを張った蓋を配置して、上記薄膜を押えて固定するようにしたり、全体を蓋の中央部の開口に張った保護ネットの裏面側に貼り付けて固定するとよい。
【0013】
又、薄膜に代えて、圧電フィルムを低密度物質の表面と中央部の開口に保護ネットを張った蓋との間に展張配置した構成とすることにより、宇宙漂流物体が圧電フィルムを貫通するときの出力信号で宇宙漂流物体の衝突時刻を知ることができるようになる。
【0014】
更に、低密度物質の内部に圧電フィルムを展張配置して、該低密度物質を圧電フィルムを介し積層してブロック状にした構成とすることにより、低密度物質内での捕獲物の位置が明確となり、且つ減速の割合がわかるので、衝突速度の推定が可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1及び図2は本発明の実施の一形態を示すもので、底板2と前後左右の側板3とを一体型とした金属製のホルダーボックス1内に、フォイル10を介し積層してブロック状にしたエアロジェルの如き低密度物質4を嵌め込んで収納させ、且つ該低密度物質4の表面に、低密度物質4よりも1回り大きく形成した無機物質製薄膜5を展張配置すると共に、該無機物質製薄膜5の周辺部を低密度物質4の外周面側に折り込んで側板3との間に挾持させるようにして固定し、更に、上記ホルダーボックス1上に、中央部の開口6に保護ネット7を張った蓋8を配して、各側板3の上フランジ部3aにボルト9止めすることにより取り付ける。
【0017】
上記無機物質製薄膜5としては、捕獲目的の物体に応じて金、アルミニウム、銅等の金属フォイル、又は、ポリエステルフィルムを採用する。したがって、たとえば、アルミニウムを捕獲する場合には、金フォイルや銅フォイル等を採用する。
【0018】
上記構成とした捕獲装置は、複数個組み合わせて所要の大きさのブロックとし、これを人工衛星、宇宙ステーション等の宇宙飛翔体にマニピュレータを介し取り付けて使用するようにさせる。
【0019】
ホルダーボックス1の蓋8の開口6が前側となるように宇宙飛翔体に搭載して宇宙空間で軌道を周回させるようにすると、飛来する宇宙漂流物体は、無機物質製薄膜5を突き破って進入し、低密度物質4に衝突して捕獲される。したがって、無機物質製薄膜5に生ずる衝突孔を見ることにより宇宙漂流物体の衝突位置を容易に確認することができる。この際、低密度物質4表面に凹凸があっても、この凹凸は上記無機物質製薄膜5が展張して配置してあることから、無機物質製薄膜5には表れないので、小さな衝突孔でも検出することができる。
【0020】
上記において、無機物質製薄膜5の厚さを変えることによって、捕獲する宇宙漂流物体の下限値を設定することができる。この場合、無機物質製薄膜5の厚さの約10倍以上の径の宇宙漂流物体の捕獲が可能となる。
【0021】
次に、図3及び図4はいずれも無機物質製薄膜5の別の固定方式を示すもので、図3は、無機物質製薄膜5を低密度物質4の表面サイズと同じにして、蓋8の防護ネット7の裏面側に貼り付けるようにした場合を、又、図4は、無機物質製薄膜5を低密度物質4の表面サイズと同じにし、且つ蓋8の開口6をやや小さくして、開口6の周縁部で無機物質製薄膜5の周辺部を押さえるようにした場合をそれぞれ示すものである。
【0022】
図3や図4に示すようにしても、上記実施の形態の場合と同様な作用効果が奏し得られる。
【0023】
次いで、図5は図4に示した実施の形態と同様な構成において、無機物質製薄膜5に代えて、PVDFの如き圧電フィルム11を用いるようにしたものである。上記圧電フィルム11は、ポリフッ化ビニリデンを厚さ数ミクロンから数十ミクロンの正方形のフィルム状にし、その両面にアルミニウムを蒸着させてキャパシター状にしてあり、且つ測定電極(図示せず)が4個所に置いてある構成としてあり、この圧電フィルム11に宇宙漂流物体が衝突することにより表面にできている内部自発分極が破壊され、信号となって出力されるようにしてある。なお、図1、2又は図3の実施の形態における無機物質製薄膜5に代えて、圧電フィルム11を同様に用いるようにしてもよい。
【0024】
無機物質製薄膜5に代えて圧電フィルム11を採用した場合、宇宙漂流物体が圧電フィルム11に衝突すると、該圧電フィルム11の表面にできている内部自発分極が破壊されることにより信号となって出力されるので、宇宙漂流物体の衝突時刻がわかる。又、衝突時刻がわかると、そのときの衛星の姿勢により、宇宙漂流物体がどの方向から飛んできたかを知ることができる。
【0025】
更に、本発明の更に別の実施の形態として、上記各実施の形態において、フォイル10に代えて、低密度物質4の内部に複数枚の圧電フィルム11を展張配置するようにしてもよく、この場合、低密度物質4内での捕獲物の位置が明確になり、又、減速の割合がわかるので、衝突速度を推定することができる。
【0026】
なお、本発明は上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、無機物質製薄膜5に代えて、有機ポリマーフィルムの如き有機物質製薄膜を採用してもよいこと、又、薄膜や圧電フィルム11の固定方式としては、図示した以外の方式等を適宜採用し得ること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0027】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明の宇宙漂流物体の捕獲装置によれば、次の如き優れた効果を発揮する。
(1) 上部を開口させたホルダーボックス内に、低密度物質をブロック状にして嵌め込んで収納させ、且つ該低密度物質の表面側に、薄膜を展張配置し、更に、上記ホルダーボックス上に、中央部の開口に保護ネットを張った蓋を配置して、上記薄膜を押えて固定するようにした構成としてあるので、ブロック体表面の凹凸を薄膜で覆い隠すことができ、これにより、宇宙漂流物体の衝突により生じた衝突孔から衝突位置を容易に確認することができ、小さな衝突孔でも検出することができる。
(2) 薄膜に代えて、圧電フィルムを低密度物質の表面と中央部の開口に保護ネットを張った蓋との間に展張配置した構成とすることにより、宇宙漂流物体が圧電フィルムを貫通するときの出力信号を基に、宇宙漂流物体の衝突時刻を知ることができる。
(3) 低密度物質の内部に圧電フィルムを展張配置して、該低密度物質を圧電フィルムを介し積層してブロックした構成とすることにより、捕獲物の位置を明確に求めることができると共に、衝突速度を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の宇宙漂流物体の捕獲装置の実施の一形態を示す概略切断側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】無機物質製薄膜の別の固定方式を示す概略切断側面図である。
【図4】無機物質製薄膜の更に別の固定方式を示す概略切断側面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示す概略側面図である。
【図6】これまでに提案されている捕獲装置の一例を示す概略切断側面図である。
【図7】これまでに提案されている捕獲装置の他の例を示す概略切断側面図である。
【符号の説明】
1 ホルダーボックス
2 底板
3 側板
4 低密度物質
5 無機物質製薄膜(薄膜)
11 圧電フィルム

Claims (5)

  1. 上部を開口させたホルダーボックス内に、低密度物質をブロック状にして嵌め込んで収納させ、且つ該低密度物質の表面側に、薄膜を展張配置し、更に、上記ホルダーボックス上に、中央部の開口に保護ネットを張った蓋を配置して、上記薄膜を押えて固定するようにした構成を有することを特徴とする宇宙漂流物体の捕獲装置。
  2. 上部を開口させたホルダーボックス内に、低密度物質をブロック状にして嵌め込んで収納させ、且つ該低密度物質の表面側に、薄膜を展張配置し、該薄膜の周辺部を上記低密度物質の外周面部に折り込んでホルダーボックスの側板との間に挟持させるようにし、更に、上記ホルダーボックス上に、中央部の開口に保護ネットを張った蓋を配置して、上記薄膜を押えて固定するようにした構成を有することを特徴とする宇宙漂流物体の捕獲装置。
  3. 薄膜を、蓋の中央部の開口に張った保護ネットの裏面側に貼り付けて固定するようにした請求項1記載の宇宙漂流物体の捕獲装置。
  4. 薄膜に代えて、圧電フィルムを低密度物質の表面と中央部の開口に保護ネットを張った蓋との間に展張配置した請求項1、2又は3記載の宇宙漂流物体の捕獲装置。
  5. 低密度物質の内部に圧電フィルムを展張配置して、該低密度物質を圧電フィルムを介し積層してブロック状にした請求項1、2、3又は4記載の宇宙漂流物体の捕獲装置。
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