JP3978161B2 - 熱間圧延鋼板の冷却装置および冷却方法 - Google Patents

熱間圧延鋼板の冷却装置および冷却方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間圧延された厚鋼板、薄鋼板などの熱間圧延鋼板を冷却する冷却装置および冷却方法に関する。
具体的には、熱間圧延鋼板の通板方向に対して直角に複数のヘッダーを配設し、該ヘッダーに複数の冷却用スプレーノズルを取り付けた熱間圧延鋼板の冷却装置およびそれを用いた熱間圧延鋼板の冷却方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延された鋼板を、冷却水を用いて上下部より冷却する方法は、従来から行われており、例えば、特開昭60−121229号公報には鋼板幅方向に複数配置されたスプレーノズルを捩ることで板上水の排水性を向上させる鋼板の冷却方法置が開示されている。
しかし、従来の熱間圧延鋼板の冷却装置には以下のような問題点があり、この従来技術の問題点について、図4および図5を用いて説明する。
図4は、従来の熱延鋼板の冷却装置を例示する図であり、1は貯水槽、2は冷却水供給配管、3はポンプ、4,5は流量調節弁、6´は低水量ヘッダー、7は高水量ヘッダー、8はスプレーノズル、9は鋼板、10はピンチロールを示す。
【0003】
図4において、貯水槽1に貯められた冷却水は、冷却水供給配管2を経てポンプ3の吸引口に導かれる。ポンプ3の排出口は、低水量用と高水量用の2種類の冷却水配管系統に分岐された構造となっており、要求される冷却水の水量に応じていずれか一方、または、その両方の系統を選択できる(以下、低水量用の冷却水配管系統を「低水量系統」、高水量用の冷却水配管系統を「高水量系統」と略称する)。系統の選択は、流量調節弁4,5の開閉によって行うことが可能である。それぞれの系統には熱間圧延設備の冷却床上方に設置された低水量ヘッダー6´および高水量ヘッダー7が接続され、これに規定水圧で冷却水が供給され、当該ヘッダーに配設された複数のスプレーノズル8から鋼板9にめがけて冷却水が噴射される。鋼板9は、上下に配置されたピンチロール10によって挟まれ、鋼板に多少の反りや曲がりがあっても、正しい方向へ搬送される。
なお、高水量系統と低水量系統では、配管の直径、スプレーノズル先端のサイズが異なっており、要求される水量に応じて適切に設計されている。
【0004】
低水量系統と高水量系統に分ける理由は、さまざまな条件で鋼板を冷却するために広範囲の冷却能力が要求されることに基づいている。冷却能力α(W/m2・K)は水量密度W(m3/min・m2)の指数関数で以下のように表わされる。
【式1】
Figure 0003978161
一般的な鋼板製造の場合、水量密度Wは、冷却される鋼板の板厚・鋼種等によって概 ねW=0.3〜2.0m3/min・m2の可変能力が必要と言われている。このように、7倍 近くに至る格差の水量密度を得るための水圧は、水量Qと水圧Pの以下の関係から、2 乗に相当する変化、すなわち50倍近くの可変能力が求められる。
【式2】
Figure 0003978161
これを1種類の水量系統で行おうとすると、装置の設計が困難である上、低水量側でのスプレーノズルパターンが乱れるという不利な面があった。
【0005】
そのため従来は、低水量・高水量の2系統に分岐し、ノズル径や形状をも工夫するこ とによって水圧変化だけに依存しない形で、要求される水量変化を実現していた。
しかし、このような従来の冷却方法には以下のような問題点があった。
1)低水量域におけるスプレーノズルの噴射パターンが安定しない。
2)低水量系統から高水量系統へ切り替える場合、あるいはその逆の場合、図5に示すように、水量密度Wが0.8m3/min.・m2前後において低水量領域から高水量領域に移行するときに冷却能αが不連続になり、鋼板の冷却が不安定な領域が生じ、鋼板の材質や形状が不均一となる。
3)狭いピンチロール間隔スペースに2組のヘッダーを設置するのは設計・据付・維持メンテナンスを行う上で難しくなり、またコスト高になる。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−121229号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、従来のように複数系統の冷却水配管を用いることなく低水量域での噴射パターンが安定化でき、しかも、設計・据付・維持メンテナンスが容易で省スペース化が実現できる熱間圧延鋼板の冷却装置および冷却方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果、スプレーノズルに高圧ガスを供給するコンプレッサーおよび高圧ガス供給配管を設けることにより、従来のように複数系統の冷却水配管を用いることなく低水量域での噴射パターンが安定化でき、しかも、設計・据付・維持メンテナンスが容易で省スペース化が実現できる熱間圧延鋼板の冷却装置および冷却方法を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)熱間圧延鋼板の通板方向に対して直角に複数のヘッダーを配設し、該ヘッダーに複数の冷却用スプレーノズルを取り付けた熱間圧延鋼板の冷却装置であって、前記スプレーノズルに冷却水を供給するポンプおよび単一系統の冷却水供給配管と、高圧ガスを供給するコンプレッサーおよび高圧ガス供給配管を有し、さらに、前記高圧ガス供給配管には、冷却水の水量密度の変化に応じて高圧ガスの供給量を調整する逆止弁が設けられていることを特徴とする熱間圧延鋼板の冷却装置。
(2)前記ヘッダーには複数の冷却用フラットスプレーノズルが取り付けられ、隣り合う該ヘッダー毎に前記フラットスプレーの拡がり方向を各ヘッダー間中心軸に対して対称に傾けることを特徴とする(1)に記載の熱間圧延鋼板の冷却装置。
(3)(1)または(2)に記載の熱間圧延鋼板の冷却装置を用いる熱間圧延鋼板の冷却方法であって、前記冷却水の流量が低水量の場合に、前記スプレーノズルに高圧ガスを供給して高圧ガスと水とを混合した冷却媒体を熱間圧延鋼板に噴射することにより、水量密度が0.3m/min・m以上、2.0m/min・m以下の範囲を、単一系統の冷却水供給配管を用いて冷却することを特徴とする熱間圧延鋼板の冷却方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1乃至図3を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態を例示する図であり、1は貯水槽、2は冷却水供給配管、3はポンプ、4は流量調節弁、6ヘッダー、8はスプレーノズル、9は鋼板、10はピンチロール、11は高圧ガス供給配管、12は逆止弁、13はコンプレッサー、14は遮断弁を示す。
図1において、貯水槽1、ポンプ3、流量調節弁4までは従来技術を例示する図4と同じ構成であるが、その後の系統は、低水量域から高水量域まで単一の系統の冷却水供給配管だけで対応する装置構成になっている。この単一の系統には配管、ヘッダー6、スプレーノズル8が直列に配置されている。
なお、冷却水供給配管、ヘッダー、スプレーノズルは、低水量域から高水量域まで単一の系統であればよく、鋼板製造設備の規模によって、さまざまな数量の組み合わせが考えられる。
【0010】
各スプレーノズル8には、空気等の高圧ガスを供給する配管11が、冷却水供給配管2と合流する形で取り付けられ、霧吹きの原理で冷却水を微細な粒子状にして鋼板表面に衝突させる。この高圧ガス供給配管の途中には逆止弁12が備えられており、冷却水が高圧ガス配管に逆流することを防止している。この逆止弁の開閉は、水量密度が約0.70m3/min・m2相当の圧力(ここではPa=0.05MPa)を境に切り替えられるよう設定されている。この値以下の水圧ではガス圧力が勝って、逆止弁が開き、ガスがスプレーノズル側へ供給される。一方、この値以上の水圧では、逆止弁は閉じた状態となり、ガスはスプレーノズル方向には流れないと同時に、冷却水もガス配管側には逆流しない機構になっている。ガス配管の上流側には、高圧ガスを発生するためのコンプレッサー13が、遮断弁14を経由して取り付けられている。遮断弁は、保守あるいは緊急停止の目的で取り付けられている。
このように、逆止弁を用いて、前記冷却水の水量密度の変化に応じた量の高圧ガス(エア)を前記スプレーノズルに供給することにより、エア側の流量制御機器が不要となり、設備費が極めて安価になると同時に、シンプルな制御システムを構築することができる。
なお、本発明においては高圧ガスの種類は問わないが、入手の容易性・安全性およびコストの観点から、5kgf/cm2以下の圧縮空気(エア)を用いることが好ましい。
【0011】
また、図1には鋼板9の上面に設置するヘッダー6およびスプレーノズル8を示しているが、鋼板9の下面にもヘッダー6を配設し、さらに、それぞれのヘッダーには複数の冷却用フラットスプレーノズルを直線的に取り付けて、隣り合う該ヘッダー毎に前記フラットスプレーの拡がり方向を各ヘッダー間中心軸に対して対称に傾けることにより、前述の板上水を排出し易くして鋼板を均一に冷却できる。
ここに、フラットスプレーノズルとは、図1に示すように、スプレーの噴射形状が従来の円形ではなく細長い楕円状となるスプレーノズルであり、板上水を排出して均一冷却を行ううえで好ましい。
【0012】
図2は、本発明における水量Qwとエア量Qaの関係を示す図である。
エア(高圧ガス)は、低水量域でのノズル噴射形状を安定化するために、気水状態の噴射を行うために供給するため、図2の例では、水量密度Wが0.7m3/min.m2相当の水圧以下の場合に供給を開始し、水量Qwが少なくなる(水圧が小さくなる)に従って、エア(高圧ガス)の供給量が逆止弁の動作圧(ここではPa=0.05MPa)に相当するエア圧になるように自己制御されて供給される。
図3は、本発明における水量密度Wと冷却能力αとの関係を示す図である。
本発明においては、従来のように低水量と高水量の2系統の冷却水供給配管が必要なく、1系統のみの冷却水供給配管でよいため、図3に示すように水量密度Wが0.3〜2.0(m3/min.・m2)の範囲で変化しても冷却能力αは連続的に変化するため、鋼板を均一に冷却することができ、材質および形状が均一な鋼板を提供することができる。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、スプレーノズルに高圧ガスを供給するコンプレッサーおよび高圧ガス供給配管を設けることにより、従来のように複数系統の冷却水配管を用いることなく低水量域での噴射パターンが安定化でき、しかも、設計・据付・維持メンテナンスが容易で省スペース化が実現できる熱間圧延鋼板の冷却装置および冷却方法を提供することができ、具体的には以下のような産業上有用な著しい効果を奏する。
1)低水量域での噴射パターンを安定化させることができる。
2)低水量系統と高圧水量系統を切り替える必要がないから、冷却能は連続的に変化させることができ、鋼板を均一に冷却することができるので、鋼板の材質および形状の均一化を図ることができる。
3)給水配管が1系統であるため、設計・据付・維持メンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における熱延鋼板の冷却装置の実施形態を例示する図である。
【図2】 本発明における水量Qwとエア量Qaの関係を示す図である。
【図3】 本発明における水量密度Wと冷却能力αとの関係を示す図である。
【図4】 従来の熱延鋼板の冷却装置を例示する図である。
【図5】 従来の熱延鋼板の冷却装置における水量密度Wと冷却能力αとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1・・・貯水槽、
2・・・冷却水供給配管、
3・・・ポンプ、
4,5・・・流量調節弁、
6・・・ヘッダー、
6´・・・低水量ヘッダー、
7・・・高水量ヘッダー、
8・・・スプレーノズル、
9・・・鋼板、
10・・・ピンチロール、
11・・・高圧ガス供給配管、
12・・・逆止弁、
13・・・コンプレッサー、
14・・・遮断弁

Claims (3)

  1. 熱間圧延鋼板の通板方向に対して直角に複数のヘッダーを配設し、該ヘッダーに複数の冷却用スプレーノズルを取り付けた熱間圧延鋼板の冷却装置であって、
    前記スプレーノズルに冷却水を供給するポンプおよび単一系統の冷却水供給配管と、高圧ガスを供給するコンプレッサーおよび高圧ガス供給配管を有し、
    さらに、前記高圧ガス供給配管には、冷却水の水量密度の変化に応じて高圧ガスの供給量を調整する逆止弁が設けられていることを特徴とする熱間圧延鋼板の冷却装置。
  2. 前記ヘッダーには複数の冷却用フラットスプレーノズルが取り付けられ、隣り合う該ヘッダー毎に前記フラットスプレーの拡がり方向を各ヘッダー間中心軸に対して対称に傾けることを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延鋼板の冷却装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の熱間圧延鋼板の冷却装置を用いる熱間圧延鋼板の冷却方法であって、
    前記冷却水の流量が低水量の場合に、前記スプレーノズルに高圧ガスを供給して高圧ガスと水とを混合した冷却媒体を熱間圧延鋼板に噴射することにより、水量密度が0.3m/min・m以上、2.0m/min・m以下の範囲を、単一系統の冷却水供給配管を用いて冷却することを特徴とする熱間圧延鋼板の冷却方法。
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