JP3976209B2 - プライミング装置、ならびに同装置に併用される使い捨て用接続チューブの使用方法 - Google Patents

プライミング装置、ならびに同装置に併用される使い捨て用接続チューブの使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の目的】
この発明は、腎臓病の治療として欠かすことができない人工透析装置の中、血液ポンプや抗凝固材持続注入器、透析監視機等の機械器具部分を除いた、主として透析器(ダイアライザー、人工腎臓)およびそれに接続、形成される血液回路(以下、合わせて単に透析部位という)に対して透析治療開始前に実施される事前洗浄およびエア抜き操作、所謂プライミングに関するものであり、治療患者一人に1台ずつ必要とされ、1台毎プライミングをしている透析部位を、同時に多数台まとめてプライミングすることを可能にすると共に、プライミングに使用されてきた生理的食塩水が、比較的安価とはいえ治療患者の増加に伴い累積増加し、その経費負担が無視できない事態に陥りつつあることから、生理的食塩水に替え、透析液を使用してプライミングを可能とする透析部位の新規なプライミング装置、およびそのプライミング装置に併用されて有利な使い捨て用チューブの使用方法を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
血液中から老廃物、即ち尿素窒素、クレアチン、尿酸等の尿毒素、あるいは、Na、K、Ca、P等の電解質を取り除くと共に適正な水分量に保つという重要な機能を果たしている腎臓が、慢性糸球腎炎や糖尿病腎症等の機能障害によって腎不全(尿毒症状態)に陥ってしまうと、人は、最早正常な日常生活を送ることができなくなってしまう。
進歩、発展の目覚ましい現代の医学でも、この腎臓病を完治させることは難しいものの、血液透析療法が確立、普及するようになったことから、腎臓病の進行(悪化)だけは確実に阻止することができるようになり、国からの身体障害者の認定を受け、医師の指導の下、定期的にこの血液透析療法を続けることにより、無理をしない限り、腎臓病患者でも極普通の日常生活を送ることができ、就業も可能となる。
【0003】
一頃恐れられた腎臓病も、こうした医学の力によって確かに一応の克服がなされ、多くの患者の命が担保される望ましい時代を迎えてはいるものの、しかし、残念ながら腎臓病患者数は年毎に増加傾向にあり、1993年末のデータによれば、その罹病者数は134,293人の多きに達し、しかも、対前年比で見た場合、8.4%、10,372人増となっている。
この傾向は、正常な生活を送っている人々にとって、極めて重大な関心事となることは勿論言うまでもないことではあるが、それら腎臓病患者を日夜支え続ける医療機関や国庫補助をする国にとっては、血液透析療法を受ける体制維持の面で新たな問題を抱えることになっている。
【0004】
即ち、この血液透析療法の1回の透析費用に約4万円程度を要し、患者は、月平均で13回程度の透析を受けることから、月額約50万円強もの治療費となり、その殆どが公費で負担される体制となっているため、総医療費に占める腎不全医療費の割合は極めて高く、しかも当然のことながら年々増加していってしまうという問題がそれである。
このような医療事情から、医療費抑制のために様々な政策が打ち出され、血液透析療法の実施についても、その事前操作、即ちプライミングに必要な滅菌済み生理的食塩水が医療補助の対象から外されてしまっている。
【0005】
血液透析療法(人工透析療法)において、人工透析を行う場合、先ず始めに、図4の概略的な構成図に示されているように、透析部位、即ち、患者体内からの血液を透析器まで導く動脈回路(A〜B)と透析器Pを経由して浄化された血液を患者体内に戻す静脈回路(C〜D)とを有する血液回路、および、動脈回路(A〜B)と静脈回路(C〜D)との間となる血液回路の中に転倒鉛直配置され、上端(転倒配置されているため、図中で下方)には前記動脈回路出口P2を、また下端(転倒配置されているため、図中で上方)には静脈回路入り口P3を夫々接続し、その間を半透膜製極細中空糸管P1,P1,……束で緊密接続してなる構造部分と、半透膜製極細中空糸管P1,P1,……周囲に接する内部空間であって半透膜製極細中空糸管の半透膜P1,P1,……の作用部分以外では血液回路から隔絶した構造とし、その上方(転倒配置されているため、図中で下方)側を透析液出口O、下方(転倒配置されているため、図中で上方)側を同液入り口Iとした透析液回路の一部とした構造部分とからなる透析器Pによって構成される部位の内部を、市販されている滅菌済みの生理的食塩水Sで流水、洗浄すると共に、内部に満たしたまま、透析器Pの上下を転倒させて元に戻す(即ち、動脈回路接続口P2が上で静脈回路接続口P3が下となり、人工透析治療段階では透析器P内の血液回路を患者の血液は上から下に抜ける。これに対し、透析液は透析液入り口が下で、同液出口が上となり、透析液は、血液と反対に下から上に抜ける。)ことによりエア抜き処理をする事前操作(以下、単にプライミングという。)をしてからでなければ、この人工透析を開始することができない。
【0006】
このプライミングに必要となる滅菌済み生理的食塩水は、これまでのところ全ての医療機関とも市販のものを購入、準備するようにしており、患者一人ずつに1台用意される人工透析装置の透析部位に対して各1個を充当し、しかも1台毎に別々の操作によってプライミングを行ってきた。
滅菌済み生理的食塩水1個の単価は、現状約260円程度であって、単価それ自体を見た場合にはそれ程高額のものとは言えないが、既に見たとおり、患者一人でも月間平均13回程度の人工透析を受けていることから、一人当たりにすると3,400円/月にもなり、血液透析療法の可能な極平均的な医療機関では、月間でこの滅菌済み生理的食塩水に要する費用が、40〜50万円にも上ってしまっているのが実情である。
【0007】
この発明では、以上のような状況に鑑み、医療現場の環境を悪化させることなく、人工透析という重要な治療を支える医療機関が、今後とも変わらず健全な医療行為をなし得ていくようにするための一つの方策として、国庫補助対象から外され、専ら患者および医療機関の負担となってしまっている上記した滅菌済み生理的食塩水に着目し、血液透析療法で欠くことができないプライミング方法において、この滅菌済み生理的食塩水に替わる液体でのプライミングが可能かどうか、長年に渡って鋭意、開発研究を継続してきたところ、遂に以下のような知見に基づき、極めて画期的な透析部位のプライミング方法、およびそれに使用するプライミング装置、ならびに同装置に併用される使い捨て用接続チューブの実現化に成功したものである。
【0008】
この発明は、滅菌済み生理的食塩水に替わる液体として、従来から、プライミング方法において血液中に混じっている老廃物(尿毒素)を半透膜を介して浸透、拡散除去するために使用されてきた透析液の活用を図ろうとするものであって、該透析液は、その機能上、組成が血液に類似したものとして透析開始前に各医療機関において個別に作製され、人工透析装置における透析器の透析液回路内に、常時、流水状とされるものであり、直接血液に触れることがないため、透析液としてのみ使用している限り、特に滅菌をする必要のなかったものを、この発明では、その透析液について下記で詳述するような極めて簡便な構成によって滅菌を可能とし、滅菌済み生理的食塩水に替わる液体として使用する透析部位のプライミング方法を完成すると共に、合わせてそれを実現するための新規な構造のプライミング装置、およびそのプライミングに必要となる使い捨て用接続チューブを実現したものである。
【0009】
【発明の構成】
この発明のプライミングを実施するためのプライミング装置は、基本的に以下のような構成を要旨とするものである。
即ち、人工透析装置に採用される透析器(半透膜浸透拡散式濾過器。またはそれと同等以上の構造機能を有する透析器)の動脈回路接続口および静脈回路接続口、または何れか一方に、中途に洗浄すべき透析部位における血液回路の動脈回路入り口側接続用の多数のコネクターを所定間隔置きに形成した端部二股状あるいは端部単管状洗浄液取出し用シリコンチューブの各端部を接続すると共に、該透析器の透析液入り口または出口の何れか一方には、中途に圧力計の配された透析液送込み用シリコンチューブを接続し、該透析液送込み用シリコンチューブから圧力調整された透析液を透析器内半透膜製極細中空糸管周囲に接する内部空間に送り込み、透析器内の半透膜製極細中空糸管内に浸透して浄化された浄化透析液を、透析器の動脈回路接続口および静脈回路接続口、または何れか一方から、浄化洗浄液取出し用シリコンチューブを通じ、同コネクターに接続された透析部位中に流入、通過させるようにした構成を特徴とするプライミング装置である。
【0010】
そして、上記したこの発明の基本的な構成のプライミング装置には、人工透析装置に採用される透析器(半透膜浸透拡散式濾過器。またはそれと同等以上の構造機能を有する透析器)の動脈回路接続口および静脈回路接続口、または何れか一方に、中途に洗浄すべき透析部位における血液回路の動脈回路入り口側接続用の多数のコネクターを所定間隔置きに形成した端部二股状あるいは端部単管状洗浄液取出し用シリコンチューブの各端部を接続すると共に、該透析器の透析液入り口または出口の何れか一方には、中途に圧力計の配された透析液送込み用シリコンチューブを接続し、該透析液送込み用シリコンチューブから圧力調整された透析液を透析器内半透膜製極細中空糸管周囲に接する内部空間に送り込み、透析器内の半透膜製極細中空糸管内に浸透して浄化された透析液を、透析器の動脈回路接続口および静脈回路接続口、または何れか一方から浄化洗浄液取出し用シリコンチューブを通じ、同コネクターに使い捨て用接続チューブを介して接続された透析部位中に流入、通過させるようにした構成のプライミング装置も包含される。
【0011】
透析部位は、従来技術の中で示した図4の中に示されているように、腎臓病を患った患者に血液透析療法で人工透析を施す際に必要とされる人工透析装置の中、特に患者体内からの血液を透析器まで導く動脈回路(A〜B)と透析器を経由して浄化された血液を患者体内に戻す静脈回路(C〜D)とを有する血液回路、および、動脈回路(A〜B)と静脈回路(C〜D)との間となる血液回路の中に転倒鉛直配置され、上端(転倒配置されているため、図中で下方)には前記動脈回路出口Bを、また、下端(転倒配置されているため、図中で上方)には静脈回路入り口Cを夫々接続し、その間を半透膜製極細中空糸管P1,P1,……束で緊密接続してなる構造部分と、半透膜製極細中空糸管P1,P1,……周囲に接する内部空間であって、半透膜製極細中空糸管P1,P1,……の半透膜の作用部分以外では血液回路から隔絶した構造とし、その上方(転倒配置されているため、図中で下方)側を透析液出口O、下方(転倒配置されているため、図中で下方)側を同液入り口Iとした透析液回路の一部とした構造部分とからなる透析器Pによって構成される装置部分であり、人工透析装置における血液ポンプMや抗凝固材持続注入器、透析監視機(ベッドサイドモニタ)等の機械器具部分が除かれる。
【0012】
血液回路の中、動脈回路(A〜B)を構成する部材は、φ5〜6mm程度の透明なシリコンチューブ本管が主体であって、一端側には、穿刺針を接続する穿刺針接続用ジョイントが、予め保護鞘管で被冠、保護された状態で配され、他端には、透析器の上端側に設けられた動脈回路接続口P2に接続するための動脈カップラーBが組み込まれた上、中途には、血液ポンプ装着用圧送ホース(φ10〜12mm)Hやエアトラップ(チャンバー)Nその他が直列に配されると共に、要所要所に三又接続ジョイントを配し、その中の一つには抗凝固材注入用細枝管(φ2〜3mm)が組み込まれた、全長が約4m程度のものとして形成され、また、静脈回路(C〜D)となる部材は、同じくφ5〜6mm程度の透明なシリコンチューブ本管が主体であって、一端側には、透析器の上端側に設けられた透析液入り口に接続するための静脈カップラーCが組み込まれると共に、他端には、穿刺針を接続する穿刺針接続用ジョイントが、予め保護鞘管で被冠、保護された状態で配され、中途には、シリコンチューブ本管と同じ性状の静脈圧計接続管の組み込まれたエアトラップ(チャンバー)Nその他が直列に配された、全長約3m程度のものに形成されており、何れも消毒済みとした状態で厳密に梱包され、既成品として市販、提供されている。
【0013】
また、透析器P自体も、消毒済みの独立した既成品として提供されるものであって、筒状の中空体としたハウジングの上下端には血液回路接続口P2,P3が形成され、それらの間に半透膜製極細中空糸管P1,P1,……束が配されると共に、同ハウジングの側面には、半透膜製極細中空糸管P1,P1,……周囲に接する内部空間に通じさせた上下一対の透析液回路接続口I,Oが形成され、各接続口にはキャップもしくは栓がなされて、各接続口およびその内部が保護された状態に形成されている。
【0014】
そして、上記した血液回路およびこの透析器共、各医療機関において、人工透析を開始する前までは、厳密に包装された状態のままで保管がなされていて、患者への透析治療開始直前になって初めて包装容器から取り出され、所定の如く、即ち、血液回路の中の動脈回路(A〜B)における動脈回路出口Bを透析器の動脈回路接続口P2に、また静脈回路(C〜D)における静脈回路入り口Cを透析器の静脈回路接続口P3に夫々接続される(但し、動脈回路、静脈回路共、穿刺針接続用ジョイントには、保護鞘管あるいは使い捨て用チューブの何れかが被冠されたままとされている。)ようにして、透析装置における透析部位を形成した上、既に用意されている公知のキャスター付きスタンドに、この透析部位の中の透析器が、その動脈回路接続口B側を下方に位置させた、人工透析治療過程での配置とは逆転する転倒鉛直配置となるようにして吊り下げられ、プライミングを待つことになる。
【0015】
透析装置は、患者一人に1台ずつ用意されなければならず、通常、各医療機関共、治療専用室内で多数の患者を集中治療することになり、ベッド数に応じた透析装置の透析部位が夫々キャスター付きスタンドに吊り下げられた状態でプライミングのために待機状態となっていることから、それらを一ケ所にまとめ、各透析部位の動脈回路(A〜B)の穿刺針接続用ジョイントから保護鞘管を外し、それら複数の動脈回路(A〜B)の穿刺針接続用ジョイントA,A,……個々に対し、略同時に浄化した透析液が供給できる適宜手段、例えば後述するこの発明のプライミング装置のように、1本の浄化透析液取出しチューブに複数のコネクターを直列配置し、そのコネクターに個々の透析部位の先の穿刺針接続用ジョイントAを接続し、1本の浄化透析液取出しチューブを使って浄化した透析液を供給するか、あるいは浄化しながら一時的に浄化透析液を貯留するようにした供給タンクに複数のノズルを用意し、各ノズルに複数の供給チューブを平行配置し、それら供給チューブに夫々の穿刺針接続用ジョイントAを接続し、浄化透析液を略同時に各透析部位を強制流下するようにする等の手段により、まとめて複数の透析部位のプライミングを実施するものである。
【0016】
なお、透析液は、所謂人工透析治療に際し、その透析中に継続して透析器に供給され、患者の血液中から老廃物、即ち尿素窒素、クレアチン、尿酸等の尿毒素、あるいは、Na、K、Ca、P等の電解質を取り除くと共に適正な水分量に調整する機能を果たすための液体であり、Na、K、Ca、P等の電解質その他が患者症状に合わせて調整されるよう、各医療機関においてその都度大量に作製され、特に、市販のプライミング用に提供される市販の生理的食塩水のように消毒されてはいないこともあって、生理的食塩水に近い性質を有するものの、それ比較し遥かに低廉である。
また、浄化透析液は、それら人工透析に使用される透析液を、半透膜を通じて浄化し、細菌の混入をなくした透析液であって、人工透析装置用の部品として市販されている透析器か、あるいはそれと同等以上の構造機能を有するものとして特別に用意された透析器等によって透析液を透析、浄化することによって得られるものである。
【0017】
このプイミング装置に使用する透析器は、所謂人口透析装置用として市販の透析器をそのまま採用するものであり、筒状の中空体として形成されたハウジング(市販の多くは、外径5cm、長さ20cm程度のもの)の、上端には前記動脈回路出口を接続する動脈回路接続口、また下端には静脈回路入り口を接続する静脈回路接続口が夫々形成され、その間のハウジング内には、内径約200ミクロン程度の半透膜製極細中空糸を2万数千本(総膜面積で0.3〜2.2平方米)束ねてなる半透膜製極細中空糸管束で緊密接続してなる構造部分を有すると共に、半透膜製極細中空糸管周囲に接するハウジング内部空間であって、先の半透膜製極細中空糸管の半透膜の作用部分以外では血液回路から隔絶した構造とされ、その上方側に透析液出口、下方側に同液入り口を形成した透析液回路の一部となる構造部分を有している。
【0018】
そして、上記透析器の透析液出口および同液入り口の双方、あるいは何れか一方(但し、何れか一方だけの場合には、選択されなかった他方に、バルブ付きの排出用チューブが接続されるか、栓がなされる。)に、中途に圧力計の配された透析液送込み用シリコンチューブを接続し、透析器の半透膜製極細中空糸管周囲に接するハウジング内部空間に透析液を所定圧力で供給される構造を実現すると共に、透析器上下端の動脈回路接続口および静脈回路接続口の双方、あるいは選択された何れか一方(但し、何れか一方だけの場合には、選択されなかった他方に栓がなされていなければならない。)に、端部二股状あるいは端部単管状洗浄液取出し用シリコンチューブの各端部が接続され、半透膜製極細中空糸管の外側から内部に浸透して浄化された浄化透析液が、動脈回路接続口および/または静脈回路接続口から透析器の外側に向けてに流れ出す構造を実現するようにしてある。
【0019】
洗浄液取出し用シリコンチューブの、端部二股状あるいは端部単管状に形成された側から所定距離離れた箇所には、所定間隔置き(例えば10〜20cm程度の離反間隔。但し、その間隔は一切限定されない。)にコネクターが複数個、直列配置され、各コネクターには、既にプライミングのために待機中としてある複数の人工透析装置における複数の透析部位の中の動脈回路穿刺針接続用ジョイント(動脈回路入り口側)夫々が、接続されることになる。
【0020】
なお、洗浄液取出し用シリコンチューブは、端部二股状あるいは端部単管状に形成された側から所定距離離れた箇所から二股以上に分岐した構造のものとし、夫々にコネクターを配設し、限られた範囲(操作性や浄化透析液圧の平均化に有利な装置にするために有効)内に多数のコネクターが配設されるようにすることも勿論可能である。
また、透析器は、1個に限定されるものではなく、複数個を直列配置して採用した構造のものとすることもでき、この構造によるものの場合には、最後の位置に配される透析器の動脈回路接続口および静脈回路接続口の双方、あるいは選択された何れか一方(但し、何れか一方だけの場合には、選択されなかった他方に栓がなされていなければならない。)に、端部二股状あるいは端部単管状に洗浄液取出し用シリコンチューブが接続されることになる。
【0021】
一方、コネクターへの動脈回路穿刺針接続用ジョイント(動脈回路入り口側)の接続も、使い捨て用接続チューブを介した接続とすると、この発明によるプライミング方法で実施した動脈回路穿刺針接続用ジョイントのコネクターへの接続に起因して発生するかもしれない汚れを未然に防止できるものとすることができる。
したがって、この発明には、上記したプライミング装置に関連し、次のとおりの構成から使い捨て用接続チューブの使用方法も包含されている。
【0022】
【関連する発明】
即ち、比較的短めのシリコンチューブの、一端には透析部位における血液回路の穿刺針接続用ジョイントに嵌合するカップラーを組み込むと共に、他端には保護鞘管が被冠されたコネクター接続用ジョイントを組み込み、前記カップラーを透析部位における血液回路の中の動脈回路側の穿刺針接続用ジョイントに嵌合させ、保護鞘管が被冠されたコネクター接続用ジョイントから保護鞘管を取り去って、請求項3記載のプライミング装置における浄化洗浄液取出し用シリコンチューブのコネクターに差し込まれ、プライミング後、人工透析治療直前までの間、透析部位における血液回路の穿刺針接続用ジョイントに汚染防止用として嵌合されたままとなるようにした構成からなる、上記したこの発明のプライミング装置に併用される使い捨て用接続チューブの使用方法である。
以下、図面に示す各実施例について詳述することにより、この発明が包含する上述までの構成がより具体的且つ明確に把握できるようにすることとする。
【0023】
【実施例1】
図1の簡略化した構成図として示すこの発明の基本的な構造からなるプライミング装置は、2本の市販透析器を採用して構成するようにした事例の一つである。
先ず、最初に配される透析器1(従来例として示す図4中の透析器Pと同じもの)の透析液入り口14(人工透析治療に使用されるときの透析器Pにおける透析液入り口Iまたは同液出口Oの何れであってもよい。)に、圧力計31の取り付けられた透析液供給チューブ3を接続し、透析液を該透析器1のハウジング内、半透膜製極細中空糸管周囲に接する内部空間に血液ポンプを利用して送り込み、半透膜製極細中空糸管の外側からその内部に該透析液が浸透するようにして、透析液から少なくとも細菌やプライミングに支障を来す不純物等を排斥、浄化してしまい、浄化透析液が、動脈回路接続口12および静脈回路接続口13(但し、何れか一方を省略し、栓をしてしまうこともできる。)から透析器1の外側に向けてに流れ出すようにする。
【0024】
その際、強制的に送り込まれる透析液の圧力が高くならないよう、透析液供給チューブ3の中途に配した圧力計31で液圧を確認し、バルブ32によって適正な液圧に調整する(液圧が高まると半透膜製極細中空糸管の構造に異常を来し、透析液の透析、浄化に支障を来す虞がでる。)と共に、透析液供給チューブ3が接続されなかった透析液出口15(人工透析治療に使用されるときの透析器Pにおける透析液入り口Iまたは同液出口Oの何れであってもよく、先の透析液入り口14とされなかった口)に接続されているバルブ41付きの排出用チューブ4から、透析器1に供給される透析液の一部を流れ出してしまうようにし、液圧の調整と共に、半透膜製極細中空糸管で透析、分離された細菌および不純物が溜まってしまわないようにする構造としている。
【0025】
最初の透析器1で浄化された透析液は、該透析器1の上下の血液回路接続口12,13に接続された端部二股状の浄化透析液取出しチューブ2aで第2の透析器1aの透析液入り口14aおよび15a(最初の透析器1では、排出用チューブ4を接続していた透析液出口15に相当)に誘導され、ここでも念のために圧力計31aで液圧を確認しながら、第1の透析器1で浄化された透析液を、再度念を入れて確実な浄化透析液とするよう、該透析器1aの半透膜製極細中空糸管で透析、浄化し、再浄化された浄化透析液として、同透析器1aの動脈回路接続口12および静脈回路接続口13(但し、何れか一方を省略し、栓をしてしまうこともできる。)から透析器1aの外側に向けてに流れ出すようにする。
【0026】
この透析器1aの動脈回路接続口12および静脈回路接続口13には、図示のとおり、中途に多数のコネクター21,21,……が設けられている端部二股状の浄化透析液取出しチューブ2が接続され、再浄化された浄化透析液を通じさせることから、同コネクター21,21,……夫々に、2点鎖線表示の如く、既に待機中としてあるプライミングの必要な透析部位の動脈回路穿刺針接続ジョイント(静脈回路入り口側)A,A,……か、それに別途接続した使い捨て用接続チューブ5,5,……を接続し、同バルブ22を閉操作することにより、浄化透析液が、接続された複数の透析部位に略同時に供給され、複数の透析部位を、従前までの生理的食塩水Sに代わる浄化透析液でまとめてプライミング処理することを可能とするこの発明のプライミング装置を完成する。
【0027】
【実施例2】
図2には、上記したプライミング装置のコネクター21,21,……に接続する使い捨て用接続チューブ5の具体的な1実施例が、透析部位の動脈回路穿刺針接続ジョイント(静脈回路入り口側)Aに接続された状態の拡大断面図として示されている。
即ち、使い捨て用接続チューブ5は、透析部位の血液回路を構成するシリコンチューブ本管と略同じφ5〜6mm程度の比較的短め、例えば10cm程度の長さに形成したシリコンチューブであって、一端には透析部位における血液回路の穿刺針接続用ジョイントAに嵌合するカップラー51を組み込むと共に、他端には保護鞘管6が被冠されたコネクター接続用ジョイント52を組み込み、前記カップラー51を透析部位における血液回路の中の動脈回路側の穿刺針接続用ジョイントAに嵌合させ、保護鞘管6が被冠されたコネクター接続用ジョイント52から保護鞘管6を取り去り、実施例1のプライミング装置における浄化洗浄液取出し用シリコンチューブ2のコネクター21に差し込まる。 図中、61は、保護鞘管6の内側に配され、穿刺針接続用ジョイントAを二重に保護するための内接鞘管を示し、62は、保護鞘管61内部への塵埃の侵入を阻止するフィルターを示している。
【0028】
そして、プライミング後、人工透析治療直前までの間、透析部位における血液回路の穿刺針接続用ジョイントAに汚染防止用として嵌合されたままとされ、人工透析治療を開始するために、穿刺針を接続する段階で、該使い捨て用接続チューブ全体(但し、保護鞘管6は、プライミング処理に入る前の段階で捨て去られている。)を初めて穿刺針接続用ジョイントAから取り去り、廃棄してしまうようにするものである。
図3の断面図には、この使い捨て用接続チューブ5が、その外形を二点鎖線表示してあるように取り去られ、穿刺針が接続可能な裸とした状態の動脈回路における穿刺針接続用ジョイントAを含む動脈回路の端部が示されている。
【0029】
【作用効果】
以上のとおりの構成からなるこの発明は、従前までのプライミング方法とは異なり、市販の生理的食塩水を一切不要とし、各医療機関が人工透析治療に際して予め用意する透析液を使用し、従前の場合と何等変わることなく安全、確実に、しかも、複数の透析部位をまとめてプライミング処理することを可能とする極めて画期的な透析部位のプライミング方法を実現し得たものであり、日夜、腎臓病患者を支え続けるという重要な任務を果たしている医療機関が、医療費抑制の煽りを受け、血液透析療法体制維持の面に支障を来すことがないようにする上で大いに役立つものになると予想される。
【0030】
しかも、そのプライミング方法を安全、確実に実現するためのプライミング装置は、成分的にプライミング用として市販されている生理的食塩水に近いものの、これまで人工透析治療において、直接血液に触れることがないという理由から、特に雑菌等に対する浄化処理をすることなく、自前で簡単に作り出してきた透析液に着目し、それを極めて簡潔且つ経済的な構造の装置で、従前までの滅菌済み生理的食塩水に代替するプライミング用溶液を継続的に作製しながら、複数の透析部位を略同時にまとめてプライミングすることができるようにするものであって、患者一人ずつに用意しなければならない透析部位のプライミングが、従前までのように1台ずつ実施する必要をなくし、透析治療に要する人件費の大巾削減が図れるようにするという秀れた特徴を発揮することが可能となるものであり、上記した滅菌済み生理的食塩水を不要とする特徴と相俟って、腎臓病治療に要する経費の削減に寄与し、腎臓病治療に係わる医療機関の治療環境の悪化を確実に阻止することができるようにするものである。
【0031】
特に、実施例に示したプライミング装置では、血液透析治療のための人工透析装置において使用されている市販の透析器Pを、このプライミング装置用透析器1および1aとして複数取り入れていることから、特別に専用の透析きを誂えることなく、市販のものをそのまま採用できるという利点を有すると共に、透析液の滅菌処理に万全を期したプライミング装置とすることができる上、実施例2で示す使い捨て用接続チューブ5をこのプライミング装置に併用することにより、同一のプライミング装置で繰り返しプライミング処理をしている過程で汚れる可能性が残るコネクター21との接続による動脈回路の穿刺針接続用ジョイントAの汚染が確実に阻止可能となり、プライミング後、単にこの使い捨て用接続チューブ5を取り外してしまうだけで、直ちに穿刺針を接続した血液透析治療に取り掛かることができるという治療の迅速化にも役立ち、プライミング方法の簡素化と共に血液透析治療の効率化に大いに貢献するものとすることができる。
【0032】
叙上した如く、この発明は、治療の必要性は益々高まるものの、次第に圧迫される腎臓病治療に係わる医療現場の安定維持のために欠くことができない秀れた透析部位のプライミング方法、およびそれに使用するプライミング装置、ならびにその装置に併用する使い捨て用接続チューブを実現し得たものであり、統計上では今後更に増加が予測されている腎臓病患者の治療、救済に計り知れない効果を奏することになり、血液透析治療に係わる医療機関は固よりのこと、何よりも腎臓病患者から高い評価がなされるものと予想される。
【図面の簡単な説明】
図面は、この発明のプライミング装置およびそれに併用される使い捨て用接続チューブの代表的な構成の一つを簡略化して示すものである。
【図1】 この発明のプライミング装置を概略的に示す構成図である。
【図2】 この発明のプライミング装置に併用される使い捨て用接続チューブの、動脈回路穿刺針接続用ジョイントに組み合わせた状態の一部を省略した拡大断面図である。
【図3】 使い捨て用接続チューブを取り去った状態で示す穿刺針接続用ジョイントを含む動脈回路端部の拡大断面図である。
【図4】 従来のプライミングを説明するための概略的な構成図である。
【符号の説明】
1 透 析 器
12 同 動脈回路接続口
13 同 静脈回路接続口
14 同 透析液取入れ口
15 同 透析液出口
2 浄化透析液取出しチューブ
21 同 コネクター
22 同 バルブ
3 透析液供給チューブ
31 同 圧力計
32 同 バルブ
4 排出用チューブ
41 同 バルブ
5 使い捨て用接続チューブ
51 同 カップラー
52 同 コネクター接続用ジョイント
6 保 護 鞘 管
61 同 内接鞘管
62 同 フィルター
A 透析部位の動脈回路端部の穿刺針接続用ジョイント
P 人工透析装置における透析器
P1 同 半透膜製極細中空糸管

Claims (3)

  1. 人工透析装置に採用される透析器の動脈回路接続口および静脈回路接続口の中の少なくとも何れか一方に、中途に洗浄すべき透析部位における血液回路の動脈回路入り口側接続用の多数のコネクターを所定間隔置きに形成した端部二股状あるいは端部単管状洗浄液取出し用シリコンチューブの各端部を接続すると共に、該透析器の透析液入り口または出口の何れか一方には、中途に圧力計の配された透析液送込み用シリコンチューブを接続し、該透析液送込み用シリコンチューブから圧力調整された透析液を透析器内半透膜製極細中空糸管周囲に接する内部空間に送り込み、透析器内の半透膜製極細中空糸管内に浸透して浄化された浄化透析液を、透析器の動脈回路接続口および静脈回路接続口の中の少なくとも何れか一方から、浄化洗浄液取出し用シリコンチューブを通じ、同コネクターに接続された透析部位中に流入、通過させるようにした構成を特徴とするプライミング装置。
  2. 人工透析装置に採用される透析器の動脈回路接続口および静脈回路接続口の中の少なくとも何れか一方に、中途に洗浄すべき透析部位における血液回路の動脈回路入り口側接続用の多数のコネクターを所定間隔置きに形成した端部二股状あるいは端部単管状洗浄液取出し用シリコンチューブの各端部を接続すると共に、該透析器の透析液入り口または出口の何れか一方には、中途に圧力計の配された透析液送込み用シリコンチューブを接続し、該透析液送込み用シリコンチューブから圧力調整された透析液を透析器内半透膜製極細中空糸管周囲に接する内部空間に送り込み、透析器内の半透膜製極細中空糸管内に浸透して浄化された透析液を、透析器の動脈回路接続口および静脈回路接続口の中の少なくとも何れか一方から浄化洗浄液取出し用シリコンチューブを通じ、同コネクターに使い捨て用接続チューブを介して接続された透析部位中に流入、通過させるようにした構成を特徴とするプライミング装置。
  3. 使い捨て用接続チューブは、シリコンチューブからなり、その一端には透析部位における血液回路の穿刺針接続用ジョイントに嵌合するカップラーを組み込むと共に、他端には保護鞘管が被冠されたコネクター接続用ジョイントを組み込んでなるものとした、請求項2記載のプライミング装置。
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