この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、偏光子の耐光性や耐熱性を向上させることにより、コントラストが高く、明るい画像を安定して表示できるプロジェクタを提供することを目的とする。
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の第1の装置は、プロジェクタであって、光源装置と、前記光源装置からの光を変調する電気光学装置と、前記電気光学装置の光入射面側および光射出面側にそれぞれ配置された2つの偏光子と、前記電気光学装置からの光を投写する投写光学系と、を備え、前記2つの偏光子のうちの少なくとも一方は、構造複屈折型偏光板であることを特徴とする。
なお、構造複屈折型偏光板は、形状複屈折型偏光板や形態複屈折型偏光板などと呼称される場合もある。
このプロジェクタでは、構造複屈折型偏光板が用いられている。構造複屈折型偏光板は、光を殆ど吸収しないため、耐光性および耐熱性が比較的高い。したがって、光源装置の光出力を大きくしたり、電気光学装置を小型化したりすることによって、偏光子に入射する単位面積あたりの光の強度が大きくなった場合にも、プロジェクタは、コントラストが高く、明るい画像を安定して表示することができる。
なお、電気光学装置の光入射面側に設けられた偏光子に偏りのない光が入射する場合には、光入射面側の偏光子にかかる熱的負荷が光射出面側の偏光子にかかる熱的負荷よりも大きくなる。このような場合には、電気光学装置の少なくとも光入射面側に構造複屈折型偏光板を設けるとよい。
また、電気光学装置の光入射面側に設けられた偏光子に所定の偏光光が入射する場合には、光射出面側の偏光子にかかる熱的負荷が光入射面側の偏光子にかかる熱的負荷よりも大きくなる。このような場合には、電気光学装置の少なくとも光射出面側に構造複屈折型偏光板を設けるとよい。
上記の装置において、前記構造複屈折型偏光板は、ワイヤグリッド型偏光板であってもよい。
ワイヤグリッド型偏光板は構造が単純なので、構造複屈折型偏光板を容易に製造することができる。
また、上記の装置において、前記構造複屈折型偏光板は、透明結晶基板と、前記透明結晶基板上に所定方向に沿って周期的に形成された微細構造体と、を備えるようにしてもよい。
透明結晶基板は比較的熱伝導率が高いため、構造複屈折型偏光板が光を吸収することによって生じた熱を速やかに放出することができる。なお、透明結晶基板としては、例えば、サファイア基板や水晶基板を使用できる。
上記の装置において、前記構造複屈折型偏光板は、前記電気光学装置を照明する光の中心軸に対して斜めに配置されているようにしてもよい。
このように、構造複屈折型偏光板を斜めに配置すれば、入射する光に対する微細構造体のピッチを実質的に小さくすることができるので、構造複屈折型偏光板の光学特性を向上させることが可能となる。
上記の装置において、前記構造複屈折型偏光板は、前記中心軸に対して約45度の傾斜角で配置されていてもよい。
こうすれば、構造複屈折型偏光板を透過した光を電気光学装置で利用する場合には、構造複屈折型偏光板で反射された不要な光は上記の中心軸に対して約90度の方向に射出されるので、不要な光が他の光学素子に悪影響を及ぼすことがない。また、構造複屈折型偏光板で反射された光を電気光学装置で利用することも可能となる。
あるいは、上記の装置において、前記構造複屈折型偏光板は、複数の領域に分割されており、前記複数の領域のうちの少なくとも一部は、前記電気光学装置を照明する光の中心軸に対して斜めに配置されているようにしてもよい。
こうすれば、構造複屈折型偏光板を斜めに配置する場合にも、構造複屈折型偏光板の厚み(すなわち、電気光学装置の光入射面と垂直な方向における寸法)を比較的小さくすることができる。なお、複数の領域の一部は、電気光学装置を照明する光の中心軸と直交(すなわち、電気光学装置の光入射面と平行)していてもよい。
上記の装置において、前記構造複屈折型偏光板の前記複数の領域のうちの少なくとも一部は、前記中心軸に対して約45度の傾斜角で配置されていてもよい。
こうすれば、構造複屈折型偏光板を透過した光を電気光学装置で利用する場合には、構造複屈折型偏光板で反射された光は、上記の中心軸に対して約90度の方向に射出されるので、このような光が他の光学素子に悪影響を及ぼすことがない。あるいは、構造複屈折型偏光板で反射された光の有効利用を考慮すれば、このような光を光源装置に戻して再利用することもできる。
上記の装置において、さらに、前記構造複屈折型偏光板の光射出面側には、光吸収型偏光板が配置されていることが好ましい。
構造複屈折型偏光板の光学特性は、入射角依存性や波長依存性が比較的大きい。一方、光吸収型偏光板の光学特性は、入射角依存性や波長依存性が比較的小さい。したがって、光吸収型偏光板を併用すれば、構造複屈折型偏光板の入射角依存性や波長依存性を補償することができるので、耐光性および耐熱性に優れ、かつ、光学特性に優れた偏光子を得ることができる。なお、構造複屈折型偏光板と光吸収型偏光板とは、光学的に一体化されていてもよい。こうすれば、両者の界面で生じる光損失を低減させることができる。光吸収型偏光板としては、例えば、ヨウ素または染料を含む材料からなる偏光板を用いることができる。
上記の装置において、前記光吸収型偏光板の光射出面側には、透明結晶基板が配置されており、前記透明結晶基板は、前記光吸収型偏光板と密着していることが好ましい。
光吸収型偏光板を比較的大きな熱伝導率を有する透明結晶基板と密着した状態で配置すれば、光吸収型偏光板の光吸収によって生じた熱を放出し易くなるので、光吸収型偏光板で生じた熱に起因する構造複屈折型偏光板および光吸収型偏光板自体の光学特性の劣化を低減させることができる。
あるいは、上記の装置において、さらに、前記構造複屈折型偏光板の光射出面側には、光反射型偏光板が配置されていてもよい。
なお、光反射型偏光板は、複屈折性を有する薄膜と複屈折性を有しない薄膜とを複数積層した層状偏光板であってもよい。
このように、光吸収型偏光板に代えて、光反射型偏光板を併用しても、構造複屈折型偏光板の入射角依存性や波長依存性を補償することができるので、耐光性および耐熱性に優れ、かつ、光学特性に優れた偏光子を得ることができる。
本発明の第2の装置は、プロジェクタであって、光源装置と、前記光源装置からの光を変調する電気光学装置と、前記電気光学装置の光入射面側および光射出面側にそれぞれ配置された2つの偏光子と、前記電気光学装置からの光を投写する投写光学系と、を備え、前記2つの偏光子のうちの少なくとも一方は、非平行な状態で対向する光入射面および光射出面を有する第1のプリズムと、前記第1のプリズムの光射出面側に配置された光反射型偏光板と、を備え、前記光反射型偏光板は、前記第1のプリズムから射出された光を偏光方向が異なる2種類の偏光光に分離して、第1の偏光光を透過させるとともに第2の偏光光を反射させ、前記第1のプリズムの前記光入射面と前記光射出面との成す角度は、前記光反射型偏光板で反射されて前記第1のプリズム内に戻った前記第2の偏光光が前記光入射面で全反射するように、設定されていることを特徴とする。
このプロジェクタでは、光反射型偏光板を有する光反射型偏光子が用いられている。この偏光子は、光を殆ど吸収しないため、耐光性および耐熱性が比較的高い。したがって、光源装置の光出力を大きくしたり、電気光学装置を小型化したりすることによって、偏光子に入射する単位面積あたりの光の強度が大きくなった場合にも、プロジェクタは、コントラストが高く、明るい画像を安定して表示することができる。
また、この偏光子を用いれば、光反射型偏光板で反射された第2の偏光光は、プリズムの光入射面から外部に射出されない。したがって、この光反射型偏光子をプロジェクタの電気光学装置の光射出面側に配置した場合には、光反射型偏光子の側から電気光学装置の光射出面に光が入射することがないので、電気光学装置が誤動作することを防止できる。
さらに、この偏光子は、プリズムを備えているが、プリズムの光入射面と光射出面との成す角度を比較的小さく設定することができるので、偏光子を小型化することができるとともに、プロジェクタを小型化することができる。
上記の装置において、前記第1のプリズムは、前記光入射面と前記光射出面とによって形成される交線が前記電気光学装置の長方形の表示領域の長辺と略平行となるように、配置されていることが好ましい。
こうすれば、偏光子をより小型化することができるので、プロジェクタをより小型化することが可能となる。
上記の装置において、前記第1のプリズムの前記光入射面と前記光射出面とで形成される頂角に対向する対向面は、前記光入射面で全反射した前記第2の偏光光が前記対向面にほぼ垂直に入射するように、設定されていることが好ましい。
こうすれば、対向面に入射する光の殆どを、対向面から射出させることができるので、対向面で反射して光反射型偏光板に再度入射してしまう光を、かなり低減させることができる。
上記の装置において、前記第1のプリズムは、光弾性定数が約1nm/cm/105 Pa以下の材料で形成されていることが好ましい。
光弾性定数が比較的小さな材料を用いてプリズムを形成すれば、プリズム中を光が通過する際に偏光状態が変化することが殆ど無いので、偏光子は、優れた光学特性を発揮することができる。
さらに、上記の装置において、前記光反射型偏光板の光射出面側に配置され、前記光反射型偏光板を透過した前記第1の偏光光が入射する第2のプリズムを備えることが好ましい。
こうすれば、第2のプリズムの屈折率や、第2のプリズムの光入射面と光射出面との成す角度をうまく設定することにより、偏光子から射出される光の進行方向を制御することができる。これにより、他の光学部品を配置する際の自由度を高めることができる。なお、第2のプリズムの形状および屈折率を第1のプリズムと同じに設定すれば、透過する光の進行方向が殆ど変化しない偏光子を得ることができる。
上記の装置において、前記第1および第2のプリズムのうちの少なくとも一方は、光弾性定数が約1nm/cm/105 Pa以下の材料で形成されていることが好ましい。
上記の装置において、前記第2のプリズムは、前記第2のプリズムを介して射出される前記第1の偏光光の進行方向が前記第1のプリズムに入射する光の進行方向とほぼ一致するように、構成されていることが好ましい。
こうすれば、偏光子に入射する光と偏光子から射出される光との進行方向をほぼ一致させることができるので、他の光学部品を用いた光学系を容易に構成できる。なお、進行方向を一致させるには、例えば、第2のプリズムの屈折率を第1のプリズムの屈折率とほぼ同じに設定し、第2のプリズムの光入射面と第1のプリズムの光射出面を略平行に設定し、第2のプリズムの光射出面と第1のプリズムの光入射面とに略平行に設定すればよい。
上記の装置において、前記光反射型偏光板の光射出面側には、光吸収型偏光板が配置されていることが好ましい。
こうすれば、光吸収型偏光板が、光反射型偏光板の入射角依存性や波長依存性を補償することができるので、耐光性および耐熱性に優れ、かつ、光学特性に優れた偏光子を得ることができる。なお、偏光子が第2のプリズムを備える場合には、光吸収型偏光板は、第2のプリズムの光入射面側に配置されていてもよいし、光射出面側に配置されていてもよい。
上記の装置において、前記光反射型偏光板は、構造複屈折型偏光板であってもよい。
構造複屈折型偏光板は、光吸収を殆ど生じない光反射型偏光板であり、耐光性および耐熱性が比較的高い。したがって、偏光子に入射する単位面積あたりの光の強度が大きくなった場合にも、高い光学特性を安定して発揮する光反射型偏光子を得ることができる。なお、構造複屈折型偏光板としては、例えば、ワイヤグリッド型偏光板を用いることができる。
上記の装置において、前記構造複屈折型偏光板は、所定方向に沿って周期的に形成された微細構造体を備え、前記所定方向は、前記第1のプリズムの前記光入射面と前記光射出面とによって形成される交線と略直交する方向であることが好ましい。
こうすれば、構造複屈折型偏光板は、電気光学装置を照明する光の中心軸に対して斜めに配置されることになるので、入射する光に対する微細構造体のピッチを実質的に小さくすることができ、この結果、構造複屈折型偏光板の光学特性を向上させることが可能となる
上記の装置において、前記光反射型偏光板は、複屈折性を有する薄膜と複屈折性を有しない薄膜とを複数積層して層状偏光板であってもよい。
このように、光反射型偏光板として層状偏光板を用いれば、入射角依存性や波長依存性を比較的小さくすることができる。
本発明の第3の装置は、プロジェクタであって、光源装置と、前記光源装置からの光を変調する電気光学装置と、前記電気光学装置の光入射面側および光射出面側にそれぞれ配置された2つの偏光子と、前記電気光学装置からの光を投写する投写光学系と、を備え、前記2つの偏光子のうちの少なくとも一方は、非平行な状態で対向する光入射面および光射出面を有する第1のプリズムと、前記第1のプリズムの光射出面側に配置された光反射型偏光板と、をそれぞれ含む複数の部分偏光子を備え、前記複数の部分偏光子は、それぞれの前記第1のプリズムの前記光入射面がほぼ同一面内に配置されるように接続されており、前記各部分偏光子において、前記光反射型偏光板は、前記第1のプリズムから射出された光を偏光方向が異なる2種類の偏光光に分離して、第1の偏光光を透過させるとともに第2の偏光光を反射させ、前記第1のプリズムの前記光入射面と前記光射出面との成す角度は、前記光反射型偏光板で反射されて前記第1のプリズム内に戻った前記第2の偏光光が前記光入射面で全反射するように、設定されていることを特徴とする。
この偏光子では、上記の第2の装置における偏光子が部分偏光子として用いられているので、第2の装置と同様の作用・効果を奏する。また、上記の第2の装置における偏光子を1つ用いる場合と比べて、各部分偏光子の厚みを小さくすることができるので、偏光子を小型化することが可能となる。また、この偏光子をプロジェクタに適用することにより、上記の第2の装置としてのプロジェクタと比べて、プロジェクタを小型化することができるという利点がある。
本発明の第4の装置は、偏光子であって、非平行な状態で対向する光入射面および光射出面を有する第1のプリズムと、前記第1のプリズムの光射出面側に配置された光反射型偏光板と、を備え、前記光反射型偏光板は、前記第1のプリズムから射出された光を偏光方向が異なる2種類の偏光光に分離して、第1の偏光光を透過させるとともに第2の偏光光を反射させ、前記第1のプリズムの前記光入射面と前記光射出面との成す角度は、前記光反射型偏光板で反射されて前記第1のプリズム内に戻った前記第2の偏光光が前記光入射面で全反射するように、設定されていることを特徴とする。
この偏光子は、第2の装置で用いられる偏光子と同じであるため、同様の作用・効果を奏する。
本発明の第5の装置は、偏光子であって、非平行な状態で対向する光入射面および光射出面を有する第1のプリズムと、前記第1のプリズムの光射出面側にそれぞれ配置された光反射型偏光板と、をそれぞれ含む複数の部分偏光子を備え、前記複数の部分偏光子は、それぞれの前記第1のプリズムの前記光入射面がほぼ同一面内に配置されるように接続されており、前記各部分偏光子において、前記光反射型偏光板は、前記第1のプリズムから射出された光を偏光方向が異なる2種類の偏光光に分離して、第1の偏光光を透過させるとともに第2の偏光光を反射させ、前記第1のプリズムの前記光入射面と前記光射出面との成す角度は、前記光反射型偏光板で反射されて前記第1のプリズム内に戻った前記第2の偏光光が前記光入射面で全反射するように、設定されていることを特徴とする。
この偏光子は、第3の装置で用いられる偏光子と同じであるため、同様の作用・効果を奏する。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図中に示すX,Y,Z方向は、互いに直交する3つの方向を示している。以下では、偏光方向がX方向である光をX偏光光、偏光方向がY方向である光をY偏光光とも呼ぶ。
A.第1実施例:
図1は、第1実施例としてのプロジェクタPJ1の要部を平面的に見た概略構成図である。プロジェクタPJ1は、光源装置110とインテグレータ光学系120と平行化レンズ190と液晶ライトバルブLVと投写光学系500とを備えている。液晶ライトバルブLVは、本発明の電気光学装置に相当する液晶装置300と、その光入射面側および光射出面側にそれぞれ配置された2つの偏光子200,400とを備えている。なお、後述するように、本実施例では、光入射面側の偏光子200として光反射型偏光板の1つである構造複屈折型偏光板200が用いられており、光射出面側の偏光子400として光吸収型偏光板400が用いられている。
なお、光反射型偏光板とは、透過させない種類の偏光光を反射するタイプの偏光板を意味しており、光吸収型偏光板とは、透過させない種類の偏光光を吸収するタイプの偏光板を意味している。
光源装置110は、光源ランプ111とリフレクタ112とを備えている。光源ランプ111から放射状に射出された偏りのない光はリフレクタ112によって反射され、光源装置110は、照明光軸Lに沿って略平行な光を射出する。
インテグレータ光学系120は、液晶装置300の表示領域と略相似関係にある矩形形状を有する小レンズ131がマトリクス状に配置された2つのレンズアレイ130,140を備えている。第1のレンズアレイ130に入射した光線束は、各小レンズ131によって複数の部分光線束に分割された後、第2のレンズアレイ140によって液晶装置300上で重畳される。これにより、インテグレータ光学系120は、光源装置110から射出された光の面内強度分布を均一化して、液晶装置300を照明することができる。インテグレータ光学系120から射出された光は、平行化レンズ190を経て構造複屈折型偏光板200に入射する。
構造複屈折型偏光板200は、インテグレータ光学系120から射出された偏りのない光からほぼ一種類の偏光光を生成する。偏りのない光は、偏光方向が互いに直交する2種類の直線偏光光の合成光と考えることができる。構造複屈折型偏光板200は、一方の直線偏光光を反射させ、他方の直線偏光光を透過させることにより、光源装置110から射出された偏りのない照明光からほぼ一種類の直線偏光光を生成する。なお、本実施例では、構造複屈折型偏光板200は、偏光方向がX方向となるX偏光光を透過させる。
液晶装置300は、透過型の液晶パネルであり、入射する偏光光を変調して射出する。具体的には、液晶装置300に入射したX偏光光は、図示しない外部からの画像情報に基づいて変調され、部分的にY偏光光に変換された変調光が、液晶装置300から射出される。
光吸収型偏光板400は、液晶装置300から射出された変調光から不要な光を除去して画像を表す光を形成する。具体的には、光吸収型偏光板400は、その透過軸がY方向に一致するように配置されており、液晶装置300から射出された変調光のうち、不要なX偏光成分を吸収し、Y偏光成分を透過させることにより、画像光を形成する。なお、光吸収型偏光板400としては、高い消光比を有する、ヨウ素または染料分子を用いて形成された一軸延伸型の偏光板を用いることができる。
投写光学系500は、光吸収型偏光板400によって形成された画像光を投写面600に投写する。これにより、投写面600上に画像が表示される。
図2は、図1の構造複屈折型偏光板200の種々の例を示す説明図である。構造複屈折型偏光板200は、所定方向(図中X方向)に沿って周期的に形成された微細構造体を備える偏光板であり、微細構造体の周期は、入射する光の波長よりも小さく設定されている。なお、微細構造体の材質や周期等を調整することにより、所望の屈折率分布や光学異方性を実現することができ、この結果、所望の偏光特性を実現することができる。
図2(A)は、ワイヤグリッド型の構造複屈折型偏光板200の概略構造を示す斜視図である。ワイヤグリッド型の偏光板200は、透明基板210上に形成された金属薄膜211がY方向に延びた微細な溝212によって周期的に分断された構造を有している。金属薄膜(微細構造体)211は、偏光されるべき波長域において光を反射する性質を備えており、金属薄膜211としては、アルミニウムやタングステン等を用いることができる。なお、金属薄膜211は、蒸着法やスパッタ法によって形成することができる。また、微細な溝212は、2光束干渉露光法や、電子線描画法、X線リソグラフィー法等と、エッチングとを組み合わせることによって形成することができる。ワイヤグリッド型の構造複屈折型偏光板200は、構造が単純なので容易に製造することができるという利点がある。
図2(B)は、構造複屈折型偏光板200の別の例を示す断面図である。この構造複屈折型偏光板200は、透明基板210上に形成された多層膜215がY方向に延びた微細な溝212によって周期的に分断された構造を有している。多層膜(微細構造体)215は、互いに屈折率が異なり、等方性を有する2種類の誘電体薄膜213,214が交互に積層されて形成されている。なお、多層膜215および溝212は、図2(A)の金属薄膜211および溝212と同様に形成される。
図2(A),(B)に示すような構造複屈折型偏光板200に偏りのない光が入射すると、微細な溝212が延びるY方向に平行な偏光成分であるY偏光光と、これに垂直な偏光成分であるX偏光光と、に分離される。X偏光光は構造複屈折型偏光板200を透過し、Y偏光光は構造複屈折型偏光板200で反射される。このように、構造複屈折型偏光板200は、透過しない種類の偏光光を反射させる光反射型偏光板として機能しており、構造複屈折型偏光板200における光吸収は原理上かなり少ない。
なお、構造複屈折型偏光板200を用いる場合には、実際には、微細構造体211によってわずかに光が吸収され、発熱する。したがって、構造複屈折型偏光板200における温度上昇を減少させるために、透明基板210としては、熱伝導率の高い透明結晶基板を使うことが望ましい。こうすれば、微細構造体211の熱を速やかにかつ均一に分散させることができるため、熱的に安定な構造複屈折型偏光板200を得ることができる。
なお、上記の透明結晶基板としては、熱伝導率と光透過率とが比較的高い材料を用いることが好ましく、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)を主成分とするサファイア基板や、水晶基板を用いることができる。なお、サファイア基板は、一般的なガラス基板の約50倍、石英ガラス基板の約35倍の熱伝導率を有する。
また、構造複屈折型偏光板200としては、形状異方性を有する微粒子や微結晶等を配向させたものや、細孔を有する薄膜(例えばアルミナ)を陽極酸化法によって形成したものを用いることもできる。
ところで、構造複屈折型偏光板の偏光分離特性は、原理上、入射角依存性と波長依存性とを有する。これらの依存性は、一般的には、微細構造体のピッチを入射する光の波長に対して十分に小さくすることによって、低減させることができる。しかしながら、製法上、構造の微細化には限界があるので、特に、短波長域の光については、上記の依存性を十分に緩和できない場合がある。そこで、以下に説明するように、他の偏光板を併用することにより、構造複屈折型偏光板の偏光分離特性を補償することが好ましい。
図3は、光吸収型偏光板と一体化された構造複屈折型偏光板200Aの概略断面図である。この構造複屈折型偏光板200Aは、図2(A)の構造複屈折型偏光板200と、その光射出面側に配置された光吸収型偏光板220と、の2つの偏光板を備えている。光吸収型偏光板220は、構造複屈折型偏光板200の光射出面側の透明基板210を支持体として、透明基板210と密着して配置されている。また、光吸収型偏光板220は、その透過軸方向が構造複屈折型偏光板200の透過軸方向(X方向)と一致するように、配置されている。なお、光吸収型偏光板220は、ヨウ素または染料分子を用いて形成された一軸延伸型の偏光板である。このような光吸収型偏光板は、大量生産されていることから安価で使い易い。
この構造複屈折型偏光板200Aでは、構造複屈折型偏光板200と光吸収型偏光板220との2つの偏光板が光学的に一体化されている。そして、光入射面側には、光吸収が少なく耐光性および耐熱性に優れた構造複屈折型偏光板200が配置され、光射出面側には、偏光特性に優れ入射角依存性や波長依存性が比較的小さな光吸収型偏光板220が配置されている。このように光吸収型偏光板を併用すれば、構造複屈折型偏光板で生じる偏光分離特性の入射角依存性や波長依存性を補償することができる。
なお、2つの偏光板を上記のような順序で配置することにより、光吸収型偏光板220における発熱を比較的小さくすることができるとともに、構造複屈折型偏光板200Aの偏光特性を向上させることが可能となる。
図4も、光吸収型偏光板と一体化された構造複屈折型偏光板200Bの概略断面図である。この構造複屈折型偏光板200Bでは、図3の構造複屈折型偏光板200Aの光射出面に透明結晶基板230が設けられている。
図3の構造複屈折型偏光板200Aを用いる場合には、光吸収型偏光板220はわずかに光を吸収する。このため、光吸収型偏光板220内部に熱歪みが発生し、偏光特性が局所的に変化してしまう場合がある。図4に示すように、光吸収型偏光板220に熱伝導性の比較的高い透明結晶基板230を密着させて配置すれば、光吸収型偏光板220の温度上昇を低減させることができるので、構造複屈折型偏光板200Bは、優れた偏光特性を実現することが可能となる。
なお、透明結晶基板230としては、熱伝導率と光透過率とが比較的高い材料を用いることが好ましく、例えば、アルミナを主成分とするサファイア基板や、水晶基板を用いることができる。また、光吸収型偏光板220と透明結晶基板230とは、例えば、接着剤などによってに密着した状態で固着されていればよい。
また、図4では、光吸収型偏光板220が透明基板210と透明結晶基板230とによって挟まれているので、光吸収型偏光板220で生じた熱をムラなく均一に発散させることができ、光吸収型偏光板220の発熱による構造複屈折型偏光板の温度上昇を低減させることができる。
図3,図4に示す構造複屈折型偏光板200A,200Bを用いれば、構造複屈折型偏光板200の入射角依存性と波長依存性とを緩和し、優れた偏光特性を実現することができるため、照明光の拡がり角が大きな照明装置や、短波長域の光を用いる照明装置に対して特に有効である。
図5は、光反射型偏光板と一体化された構造複屈折型偏光板200Eの概略断面図である。構造複屈折型偏光板200Eは、図3の構造複屈折型偏光板200Aとほぼ同じであるが、光吸収型偏光板220に代えて、光反射型偏光板250を備えている。光反射型偏光板250は、構造複屈折型偏光板200Eを支持する透明基板210に密着して配置されており、光学的に一体化されている。また、光反射型偏光板250は、その透過軸方向が構造複屈折型偏光板200の透過軸方向(X方向)と一致するように、配置されている。
図6は、図5の光反射型偏光板250の構造断面図である。この光反射型偏光板250は、複屈折性を有する第1のフィルム251と複屈折性を有しない第2のフィルム252とが交互に複数積層されて形成された層状偏光板である。第1および第2のフィルム251,252の材料は、第1のフィルム251のX方向の屈折率をn1X、Y方向の屈折率をn1Yとし、等方性の第2のフィルム252の屈折率をn2とすると、n1X≒n2,n1Y≠n2なる関係を充たすように予め選定されている。
第1のフィルム251と第2のフィルム252との境界面におけるX方向の屈折率はほぼ一致しているので、X方向の偏光光は、干渉反射されること無く透過される。一方、境界面におけるY方向の屈折率は異なっているので、Y方向の偏光光の一部は干渉反射される。なお、反射光の波長は、2つのフィルム251,252の屈折率および厚みによって決定されており、反射率は、積層数や第1のフィルム251の複屈折性の大きさによって決定されている。
したがって、フィルム251,252の厚みや、屈折率(材料)、積層数などを所定の条件に設定することにより、入射するX偏光光をほとんど全て透過させ、Y偏光光をほとんど全て反射させる光反射型偏光板250を形成することが可能である。なお、このような光反射型偏光子は、例えば、特表平9−506985号公報に詳述されている。
なお、光反射型偏光板250としては、上記の層状偏光板の他に、例えば、コレステリック液晶とλ/4位相差板を組み合わせた光学素子や、ブリュースター角を利用して反射偏光光と透過偏光光とに分離する光学素子(例えば、SID’92 DIGEST P427)、ホログラムを利用したホログラム光学素子などを用いることができる。
構造複屈折型偏光板200E(図5)では、構造複屈折型偏光板200の光射出面側に光反射型偏光板250が配置されているので、光吸収による発熱を殆ど無くすることができる。このように、図3の光吸収型偏光板220に代えて光反射型偏光板250を用いても、構造複屈折型偏光板で生じる偏光分離特性の入射角依存性や波長依存性を補償することができる。
図3〜図5に示す構造複屈折型偏光板200A,200B,200Eを、図1の構造複屈折型偏光板200に代えて、液晶装置300の光入射面側に配置するようにしてもよい。
なお、構造複屈折型偏光板200A,200B,200Eでは、構造複屈折型偏光板200と、光吸収型偏光板220または光反射型偏光板250とが光学的に一体化されているが、両者は分離されていてもよい。ただし、両者を一体化すれば、両者の界面で生じる光損失を低減することができるので、光の利用効率を高めることが可能となる。
以上説明したように、プロジェクタPJ1では、液晶装置300の光入射面側に光吸収が少ない構造複屈折型偏光板200(200A,200B,200E)が備えられる。したがって、光出力が大きな光源装置を用いたり、表示領域が小さな液晶装置を用いたりすることにより、偏光子に入射する単位面積あたりの光の強度が大きくなった場合においても、偏光子の発熱を小さくすることができ、偏光子の特性を長期に渡って維持することが可能となる。この結果、コントラストが高く、明るい画像を安定して表示するプロジェクタを実現することができる。
また、偏光子における発熱が少ないため、従来用いられていた冷却装置を小型化または省略することができ、プロジェクタの低騒音化と小型化を実現できるという利点もある。
なお、図1のプロジェクタPJ1では、構造複屈折型偏光板200は、液晶装置300の光入射面側に配置されている。これは、プロジェクタPJ1では、偏りのない光が照明光として用いられており、液晶装置300の光射出面側に配置された偏光子400に比べて、光入射面側に配置された偏光子200にかかる熱的負荷の方が大きいためである。このように、偏りのない光を照明光として用いるプロジェクタでは、液晶装置の光入射面側に、耐光性と耐熱性の高い構造複屈折型偏光板を配置することが効果的である。なお、液晶装置300の光射出面側にも、構造複屈折型偏光板200を配置するようにしてもよい。
B.第2実施例:
図7は、第2実施例としてのプロジェクタPJ2の要部を平面的に見た概略構成図である。図7(A)は、Y方向から見たときのプロジェクタPJ2を示しており、図7(B)は、X方向から見たときのプロジェクタPJ2を示している。なお、第1実施例のプロジェクタPJ1と同様の構成要素については、同じ番号を付し、その詳細な説明については省略する。
本実施例のプロジェクタPJ2の構成は、第1実施例のプロジェクタPJ1と類似しているが、図1の偏りのない光を射出するインテグレータ光学系120に代えて、偏りのない光をほぼ1種類の偏光光に変換して射出するインテグレータ光学系(以下、「偏光変換光学系」とも呼ぶ)150が用いられている。なお、本実施例のインテグレータ光学系150は、X偏光光を射出する。
また、インテグレータ光学系の変更に伴い、液晶ライトバルブLVの偏光子の配置が変更されている。具体的には、本実施例のプロジェクタPJ2では、構造複屈折型偏光板200は、液晶装置300の光射出面側に配置されており、光吸収型偏光板400は、光入射面側に配置されている。また、偏光子の配置の変更に伴い、光吸収型偏光板400は、その透過軸がX方向に一致するように配置されており、構造複屈折型偏光板200は、周期的な微細構造体がY方向に沿うように配置されている。すなわち、本実施例の光吸収型偏光板400は、X偏光光を透過させ、構造複屈折型偏光板200は、Y偏光光を透過させる。
偏光変換光学系150は、第1および第2のレンズアレイ130,140と、偏光ビームスプリッタアレイ(以下、「PBSアレイ」と呼ぶ)160と、選択位相差板170と、重畳レンズ180とを備えている。なお、PBSアレイ160は、略平行四辺形の断面形状を有する複数のガラス材を備えており、各ガラス材の界面には、偏光分離膜と反射膜とが交互に形成されている。
第1のレンズアレイ130に入射した光線束は各小レンズ131によって複数の部分光線束に分割され、各部分光線束はPBSアレイ160によって偏光方向が直交する2種類の直線偏光光に分離される。その後、選択位相差板170によって2種類の直線偏光光のうちの一方の直線偏光光の偏光方向が他方の直線偏光光の偏光方向に揃えられる。偏光方向がほぼ一種類に揃えられた偏光光(X偏光光)は、重畳レンズ180を介して射出され、第1実施例と同様に、平行化レンズ190を経て液晶装置300上で重畳される。
このような偏光変換光学系150を用いれば、液晶装置300に入射する照明光の面内強度分布を均一化することができるとともに、光損失を殆ど伴うことなく、偏光方向がほぼ一種類に揃った照明光を射出することができる。なお、このような偏光変換光学系150は、例えば、特開平8−304739号公報に詳述されている。
本実施例のプロジェクタPJ2では、偏光変換光学系150が備えられているので、液晶装置300の光入射面側に配置される偏光子400は、入射する光の偏光度を高めるのに利用される。そして、偏光変換光学系150によって光の利用効率が向上しているので、液晶装置300の光射出面側に配置された偏光子200に入射する光の強度は大きくなる。すなわち、液晶装置300の光入射面側に配置される偏光子400にかかる熱的負荷は第1実施例と比較して小さく、光射出面側に配置される偏光子200にかかる熱的負荷は第1実施例と比較して大きくなる。このため、本実施例のプロジェクタPJ2では、液晶装置300の光入射面側に光吸収型偏光板400を配置し、光射出面側に構造複屈折型偏光板200を配置している。
以上説明したように、プロジェクタPJ2では、液晶装置300の光射出面側に光吸収が少なく耐光性および耐熱性に優れた構造複屈折型偏光板200が備えられている。したがって、偏光変換光学系150を用いることによって偏光子に入射する単位面積あたりの光の強度が大きくなった場合においても、偏光子の発熱を小さくすることができ、偏光子の特性を長期に渡って維持することが可能となる。この結果、コントラストが高く、明るい画像を安定的に表示するプロジェクタを実現することができる。
なお、構造複屈折型偏光板200に代えて、図3〜図5に示す構造複屈折型偏光板200A,200B,200Eを用いてもよい。この場合には、さらにコントラストの高い画像を表示できる。また、液晶装置300の光入射面側の偏光子400として、構造複屈折型偏光板200,200A,200B,200Eを用いるようにしてもよい。
C.第3実施例:
前述したように、構造複屈折型偏光板200を用いる場合には、偏光分離特性を向上させる(すなわち、入射角依存性や波長依存性を低減させる)ために、周期的な微細構造体の形成ピッチを、光の波長よりも可能な限り小さくすることが望ましい。しかしながら、製法上、構造の微細化には限界がある。そこで、本実施例では、構造複屈折型偏光板200の配置を工夫することによって、構造複屈折型偏光板の偏光分離特性を補償している。
図8は、第3実施例としてのプロジェクタPJ3の要部を平面的に見た概略構成図である。このプロジェクタPJ3は、第1実施例のプロジェクタPJ1とほぼ同じであるが、本実施例では、構造複屈折型偏光板200が照明光軸L(すなわち、液晶装置を照明する光の中心軸)に対して斜めに配置されている。
構造複屈折型偏光板200を照明光軸Lに対して傾斜させて配置すると、照明光軸Lに沿って入射する光に対する微細構造体のピッチは、実質的に小さくなる。このように偏光板200を配置すれば、偏光板200の偏光分離特性を向上させることができ、この結果、よりコントラストが高く、明るい画像を安定的に表示するプロジェクタを実現することができる。
なお、構造複屈折型偏光板200の照明光軸Lに対する傾斜角度は大きい方が好ましいが、偏光板200における光の損失や、偏光板200からの反射光の処理を考慮すると、傾斜角度は約45度に設定されることが好ましい。すなわち、このような傾斜角度に設定すれば、構造複屈折型偏光板200で反射された光は照明光軸Lに対して約90度の方向に射出されるので、反射された光が他の光学素子に悪影響を及ぼすことがない。
ところで、構造複屈折型偏光板200の照明光軸Lに対する傾斜角度を約45度に設定することは、偏光板200の図中Z方向の寸法が大きくなったことと等価である。このため、液晶装置300の光入射面側には、構造複屈折型偏光板200を配置するために、より大きな空間が必要となる。
図9は、図8の構造複屈折型偏光板の変形例を示す説明図である。図9(A)は、構造複屈折型偏光板200をY軸に沿って2つに折ってV字状に配置した構造複屈折型偏光板200Cを示しており、図9(B)は、4つに折ってW字状に配置した構造複屈折型偏光板200Dを示している。このように、構造複屈折型偏光板200を複数の領域に分割し、各領域を照明光軸Lに対して斜めに配置すれば、構造複屈折型偏光板のZ方向の寸法を小さくすることができ、構造複屈折型偏光板を配置するための空間を比較的小さくすることができる。
図9(A)の構造複屈折型偏光板200Cを用いる場合には、反射光が照明光軸Lとほぼ直交する方向に射出されるため、反射光が他の光学素子に悪影響を及ぼすことがなく、反射光の処理が容易であるという利点がある。大部分の液晶装置では、光射出面側から光が入射すると誤動作する場合が多いが、上記の点に着目すれば、構造複屈折型偏光板200Cを液晶装置の光射出面側に配置される偏光子として使用することもできる。一方、図9(B)の構造複屈折型偏光板200Dを用いる場合には、反射光の一部を光源装置110(図8)側に戻して再利用することができるという利点がある。
また、構造複屈折型偏光板200C,200Dは、その向きを反転させて、配置するようにしてもよい。例えば、図9(A)の構造複屈折型偏光板200Cの光入射面が光射出面となるように、偏光板200Cの2つの領域によって形成される1つの稜線が液晶装置300側を向くように配置してもよい。
図9(A),(B)では、構造複屈折型偏光板の複数の領域はすべて照明光軸Lに対して斜めに配置されているが、一部の領域を照明光軸Lと直交するように配置するようにしてもよい。一般には、複数の領域のうちの少なくとも一部が、照明光軸Lに対して斜めに配置されていればよい。
なお、図9(A),(B)に示す液晶装置の表示領域は、X方向に長辺を有し、Y方向に短辺を有する長方形である。前述のように、図9(A),(B)では、Y軸に沿って複数の領域に分割された構造複屈折型偏光板200C,200Dが用いられている。しかしながら、上記のような長方形の表示領域を有する液晶装置に対しては、X軸に沿って複数の領域に分割された構造複屈折型偏光板を用いることが好ましい。換言すれば、構造複屈折型偏光板は、長辺方向に沿って分割されていることが好ましい。このとき、複数の領域は、表示領域の短辺方向に沿って列ぶように配置される。こうすれば、図9(A),(B)の構造複屈折型偏光板200C,200Dを用いる場合と比べ、構造複屈折型偏光板のZ方向の厚みを比較的小さくすることができる。
D.第4実施例:
図10は、第4実施例としてのプロジェクタPJ4の要部を平面的に見た概略構成図である。このプロジェクタPJ4では、第3実施例のプロジェクタPJ3と同様に、構造複屈折型偏光板200が照明光軸Lに対して斜めに配置されている。具体的には、構造複屈折型偏光板200は、照明光軸Lに対して45度の角度で傾斜して配置されている。
このように構造複屈折型偏光板200を配置すれば、プロジェクタPJ4は、構造複屈折型偏光板200で反射されたY偏光光を照明光として使用することができる。
なお、図10に示すように構造複屈折型偏光板200を配置すれば、プロジェクタPJ4をL字状に構成することができるため、プロジェクタ全体を覆う筐体の図中X方向の寸法またはZ方向の寸法を比較的短くすることができ、この結果、プロジェクタを小型化することができる。なお、図中Z方向の寸法を小さくすれば、リアプロジェクタに好適であり、図中X方向の寸法を小さくすれば、光源装置110を底部に配置する縦型のプロジェクタに好適である。
E.第5実施例:
ところで、液晶装置の光射出面側に光反射型偏光板を有する偏光子を配置する場合には、光反射型偏光板で反射された不要な偏光光が液晶装置の光射出面に入射しないように注意する必要がある。これは、液晶装置に多く使用されている能動スイッチング素子としての薄膜トランジスター(TFT)等は、液晶装置の光射出面側から光が入射すると誤動作してしまう場合があるからである。
光反射型偏光板を有する偏光子として、近年、偏光分離膜を有する偏光ビームスプリッタを使用することが試みられている(例えば、特開平7−306405号公報)。この偏光ビームスプリッタは、2つの直角プリズムと、その界面に形成された偏光分離膜とを備えている。そして、偏光ビームスプリッタは、偏光分離膜が照明光軸に対して約45度傾いた状態で配置される。このような偏光ビームスプリッタを液晶装置の光射出面側に配置する場合には、偏光分離膜で反射された光は、照明光軸と略直交する方向に射出されるので、液晶装置の誤動作を防止することができる。
しかしながら、偏光ビームスプリッタの照明光軸に沿った寸法は、液晶装置の長方形の表示領域の長辺の寸法とほぼ等しく設定されるため、偏光子が大型化してしまう。この結果、液晶装置の光射出面側には、偏光子を配置するために比較的広い空間が必要となり、プロジェクタが大型化してしまうという問題がある。また、液晶装置と投写光学系との距離が長くなるため、大口径の投写レンズが必要となり、投写光学系の製造コストが高くなるという問題もある。
そこで、本実施例では、液晶装置の光射出面側に光反射型偏光板を有する偏光子を配置して、偏光子の耐光性および耐熱性を向上させるとともに、偏光子が光反射型偏光板とプリズムとを備える場合にも偏光子を小型化できるように工夫している。
図11は、第5実施例における第1の光反射型偏光子1の概略構成を示す断面図である。この光反射型偏光子1は、プリズム10と光反射型偏光板20と光吸収型偏光板30とを備えている。
プリズム10は、非平行な光入射面S1iと光射出面S1oとを有する透明体である。具体的には、プリズム10は、対向する光入射面S1iと光射出面S1oとの成す角度(頂角)αが特定の値に設定された、略三角形の断面形状を有する柱状のガラス体である。なお、頂角αについては、後述する。
光反射型偏光板20は、光吸収を殆ど伴うことなく、偏りのない光を偏光方向が異なる2種類の偏光光に分離する光学素子である。本実施例の光反射型偏光板20は、例えば、以下のような光学素子を用いて構成される。
(a)誘電体多層膜によって形成される偏光分離素子、
(b)周期的な微細構造体が形成された構造複屈折型偏光板、
(c)液晶材料などの屈折率異方性(複屈折性)を有する有機材料を、層状に積層させた高分子系の層状偏光板(例えば、3M社製のDBEF)、
(d)偏りのない光を右回りの円偏光と左回りの円偏光とに分離する円偏光反射板(例えば、コレステリック液晶)とλ/4位相差板を組み合わせた光学素子、
(e)ブリュースター角を利用して反射偏光光と透過偏光光とに分離する光学素子(例えば、SID’92 DIGEST P427)、
(f)ホログラムを利用したホログラム光学素子。
光吸収型偏光板30は、偏光方向が互いに直交する2つの直線偏光光のうちの一方の直線偏光光を吸収し、他方の直線偏光光を透過させる光学素子である。なお、光吸収型偏光板30は、ヨウ素または染料を含浸させたフィルムを一軸延伸して形成することができる。
なお、光吸収型偏光板30が用いられているのは、光反射型偏光板20の偏光分離特性は、入射角依存性を伴う場合が多いからである。発散光あるいは集束光が入射する場合には、光反射型偏光板20を透過する光の偏光度は、入射角に応じて変化する。そこで、光反射型偏光板20の光射出面側に光吸収型偏光板30を配置することにより、透過光の偏光度を向上させている。なお、光吸収型偏光板30は、その透過軸方向が透過光の偏光方向とほぼ一致するように配置されている。このようにして、光反射型偏光子1はほぼ一種類の偏光状態を有する偏光度の高い偏光光を射出することができる。
プリズム10の光入射面S1iから照明光軸Lに沿って入射した偏りのない光は、光射出面S1oに形成された光反射型偏光板20によって、偏光方向が直交する2種類の直線偏光光に分離される。一方の直線偏光光は、光反射型偏光板20を透過する。透過光は、さらに、光吸収型偏光板30を透過して射出される。他方の直線偏光光(X偏光)は、光反射型偏光板20で反射され、プリズム10に再び入射する。なお、本実施例では、光反射型偏光板20を透過した偏光光を透過光、光反射型偏光板20で反射した偏光光を反射光とも呼ぶ。
プリズム10に再入射した反射光(戻り光)は光入射面S1iで全反射され、頂角と対向する面Sαから射出される。このため、光入射面S1iからプリズム10の外部には、光は殆ど射出されない。
図12は、プリズム10の頂角αの設定値を説明するための説明図である。光入射面S1iに入射角θ1で入射した光は、光反射型偏光板20で反射された後、光入射面S1iに入射角θで入射する。このとき、入射角θが下式(1)の関係を充たしていれば、反射光(戻り光)は光入射面S1iで全反射する。また、入射角θは、入射角θ1とプリズムの頂角αとプリズムの屈折率nとによって決定され、頂角αが下式(2)の関係を充たすときに、戻り光は光入射面S1iで全反射する。このように頂角αの値を設定すれば、戻り光は、光入射面S1iからプリズム10の外部に射出されない。
θ ≦ sin-1(1/n) …(1)
α ≧ (sin-1(1/n・sinθ1)+sin-1(1/n))/2 …(2)
例えば、プリズム10に入射する光の最大の入射角θ1を±11.3度(プロジェクタのインテグレータ光学系のFナンバーが約2.5の場合に相当)としてプリズムの屈折率nを1.52とする場合には、プリズムの頂角αを約24.3度以上に設定すれば、戻り光はすべて光入射面S1iで全反射される。
このとき、頂角αと対向する面Sαの照明光軸Lの方向における寸法BCは、光入射面S1iのY方向の寸法ABの約0.45倍に設定することができる。このように、プリズム10の寸法BCを寸法ABよりも短くすることができるので、光反射型偏光子1を小型化することができる。
ところで、プリズム10内部では、光の偏光状態に影響を与える位相変化があまり生じないことが好ましい。プリズム10の頂点付近では、その形状に起因して、内部あるいは外部からの応力が発生し易く、位相変化が生じ易い。そこで、本実施例のプリズム10は、通過する光の偏光状態を維持するために、光弾性定数が比較的小さなガラス材料を用いて形成されている。ガラス材料の光弾性定数は、人間の目の感度を考慮すると、約1nm/cm/105 Pa以下であることが好ましい。このようなガラス材料を用いてプリズムを形成すれば、発生する位相変化の量を小さくすることができ、偏光度の面内分布をほぼ均一とすることができる。なお、光弾性定数が比較的小さな材料であれば、ガラス材料に代えてプラスチック材料を用いるようにしてもよい。
このように、図11の光反射型偏光子1は、光吸収を伴わない光反射型偏光板20が用いられているので、偏光子の耐光性および耐熱性を向上させることができ、偏光子に入射する光の強度が大きくなった場合にも、安定した偏光分離特性を発揮することができる。また、光反射型偏光板20からの反射光(戻り光)がプリズム10の光入射面S1iで全反射するように、光入射面S1iと光射出面S1oとの成す角(頂角)が設定されたプリズム10が用いられている。したがって、不要な偏光光(反射光)が光入射面S1iから外部に射出されない。このような光反射型偏光子をプロジェクタの液晶装置の光射出面側に配置した場合には、液晶装置の光射出面に光が入射することがないので、液晶装置が誤動作することを防止できる。
また、本実施例では、プリズム10と、光反射型偏光板20の基材と、光吸収型偏光板30の基材との屈折率とは、ほぼ一致している。こうすれば、プリズム10と光反射型偏光板20と光吸収型偏光板30とを、光学的に一体化した場合に、各界面での光損失を低減させることができるとともに、光反射型偏光子1の取り扱いも容易となる。また、偏光子1における光の利用効率を高めることができるとともに、プリズム10内部への戻り光を低減させることも可能となる。なお、光吸収型偏光板30は、光反射型偏光板20から射出される偏光光(透過光)の偏光度が高い場合には、省略可能である。
なお、図11の偏光子1を用いる場合には、プリズム10の光入射面S1iおよび面Sαには、反射防止膜が形成される。これにより、外部からの光の殆どをプリズム1の光入射面S1iから入射させることができるとともに、光入射面S1iで全反射された光の殆どをプリズム1の面Sαから射出させることができる。ただし、光入射面S1iと面Sαには、光の入射角に応じて、構造の異なる反射防止膜が形成される。
しかしながら、実際には、プリズム10の面Sαに入射した光が、面Sαで反射されて、光反射型偏光板20に再度入射してしまう場合がある。図13は、図11の偏光子1の変形例を示す説明図である。図13に示す偏光子1’は、図11の偏光子1とほぼ同様であるが、プリズム10’の形状が変更されている。具体的には、プリズム10’の光入射面S1iと光射出面S1oとで形成される頂角αに対向する面(対向面)Sα’が変更されている。すなわち、面Sα’は、プリズム10’の光入射面S1iで全反射した直線偏光光(X偏光光)が面Sα’にほぼ垂直に入射するように、設定されている。なお、このとき、光入射面S1iと面Sα’との成す角βは、光反射型偏光板20で反射された光が、光入射面S1iで全反射する際の入射角θにほぼ等しく設定されている。
このような偏光子1’を用いれば、面Sα’に入射する光の殆どを、面Sα’から射出させることができるので、光反射型偏光板20に再度入射する光をかなり低減させることができる。また、このような偏光子1’を用いる場合には、光入射面S1iおよび面Sα’に入射する光の入射角(ほぼ0度)が等しくなるので、2つの面S1i,Sα’に形成すべき反射防止膜の構造を共通化することができる。
図14は、第5実施例における第2の光反射型偏光子2の概略構成を示す断面図である。この光反射型偏光子2は、図11の光反射型偏光子1とほぼ同じであるが、光吸収型偏光板30の光射出面側に第2のプリズム40が配置されている。
図14の光反射型偏光子2を用いる場合にも、図11の光反射型偏光子1を用いる場合と同様の効果を奏し、さらに、以下のような効果を奏する。
図14では、2つのプリズム10,40として、同じプリズムが用いられており、2つのプリズム10,40はY方向において逆向きとなるように配置されている。このとき、2つのプリズム10,40の屈折率は等しくなっている。また、第1のプリズム10の光射出面S1oと第2のプリズムの光入射面S2iとは略平行となっており、第1のプリズム10の光入射面S1iと第2のプリズムの光射出面S2oとは略平行となっている。このため、光が光反射型偏光子2を通過する際に、その進行方向は殆ど変更されない。換言すれば、光反射型偏光子2に入射する光と光反射型偏光子2から射出される光との進行方向は、ほぼ一致している。このようにすれば、光反射型偏光子2を他の光学部品と組み合わせて使用する場合に光学系を容易に構成できるという利点がある。
あるいは、2つのプリズム10,40を形成する材料は、異なっていてもよい。例えば、光反射型偏光子2の用途に応じて、最適な物性値(例えば、屈折率や光弾性定数)を有する材料を用いて各プリズム10,40を形成するようにしてもよい。2つのプリズム10,40の屈折率が異なる場合にも、第2のプリズムの頂角を調整すれば、光反射型偏光子に入射する光と光反射型偏光子から射出される光との進行方向をほぼ一致させることができる。
なお、屈折率が高い材料あるいは光弾性定数が小さい材料は高価である。したがって、プロジェクタの液晶装置の光入射面側および光射出面側に光反射型偏光子2を配置する場合には、液晶装置に近い方のプリズムに、屈折率が高く光弾性定数の小さい高価な材料(例えば、光弾性定数が約1nm/cm/105 Pa以下の材料)を用い、遠い方のプリズムにはそれ以外の安価な材料を用いるようにしてもよい。こうすれば、光反射型偏光子2の光学特性をあまり低下させずに、低コスト化を図ることができる。
また、第2のプリズム40では全反射を起こさせる必要はない。このため、第2のプリズム40の屈折率や頂角を適当な値に設定することによって、光反射型偏光子2から射出される光の進行方向を制御することもできる。これにより、他の光学部品の配置の自由度を高めることができ、例えば、あおり投写の光学系を容易に構成することができる。
なお、本実施例では、第1のプリズム10と、光反射型偏光板20の基材と、光吸収型偏光板30の基材と、第2のプリズム40との屈折率とは、ほぼ一致している。こうすれば、第1のプリズム10と光反射型偏光板20と光吸収型偏光板30と第2のプリズム40を、光学的に一体化した場合に、各界面での光損失を低減させることができるとともに、光反射型偏光子2の取り扱いも容易となる。また、偏光子2における光の利用効率を高めることができるとともに、プリズム10内部への戻り光を低減させることも可能となる。なお、光吸収型偏光板30は、光反射型偏光子1の場合と同様に、省略可能である。
図15は、第5実施例における第3の光反射型偏光子3の概略構成を示す断面図である。図14の光反射型偏光子2では、光吸収型偏光板30は第2のプリズム40の光入射面S2iに配置されているが、この光反射型偏光子3では、光吸収型偏光板30は第2のプリズム40の光射出面S2oに配置されている。このような光反射型偏光子3を用いる場合にも、図14の光反射型偏光子2を用いる場合と同様の効果を奏し、さらに、以下のような効果を奏する。
光吸収型偏光板30は光吸収によって発熱する。このため、図14の光反射型偏光子2を用いる場合には、光吸収型偏光板30の熱が、第2のプリズム40や光吸収型偏光板30自体に影響を及ぼし、位相変化を生じさせたり、偏光特性を悪化させたりする。一方、図15に示す光反射型偏光子3を用いる場合には、光吸収型偏光板30の熱を外部空間に速やかに放出することができるので、光吸収型偏光板30の熱が第2のプリズム40等の周辺の光学素子に及ぼす影響を低減させることができる。
さらに、第2のプリズム40の光射出面S2oに光吸収型偏光板30を配置すれば、光吸収型偏光板30に入射する透過光の入射角を小さく設定できるので、光吸収型偏光板30の偏光特性を向上させることができるという利点もある。
図16は、第5実施例における第4の光反射型偏光子4の概略構成を示す断面図である。この光反射型偏光子4は、図15の光反射型偏光子3とほぼ同じであるが、光反射型偏光板20として構造複屈折型偏光板21が用いられている。なお、構造複屈折型偏光板21としては、例えば、図2(A),(B)で説明した構造複屈折型偏光板を用いることができ、図16では、図2(A)に示すような構造複屈折型偏光板が用いられている。
構造複屈折型偏光板21は、その透明基板210が第2のプリズム40の光入射面と密着した状態で配置され、周期的な微細構造体(金属薄膜)211と第1のプリズム10とが僅かな空間を隔てた状態で配置されている。また、この僅かな空間を経て、光は微細構造体211の側から透明基板210に入射する。なお、このように空間を設けることにより、構造複屈折型偏光板21の偏光分離特性を高めることができる。
そして、微細構造体211は、第1のプリズム10の光入射面S1iと光射出面S1oとによる交線方向(X方向)と直交し、光射出面S1oと平行な方向に沿って周期的に配列されており、溝212はX方向に延びている。こうすれば、構造複屈折型偏光板21は照明光軸Lに対して斜めに配置されるので、照明光に対する微細構造体のピッチを実質的に小さくすることができ、この結果、構造複屈折型偏光板の光学特性を向上させることが可能となる。
このように、構造複屈折型偏光板21を照明光軸Lに対して傾斜させて配置する場合には、微細構造体211の周期的な配列方向が照明光軸Lに対して傾斜するように、配置することが望ましい。仮に、微細構造体の周期的な配列方向が照明光軸Lに対して直交するように、構造複屈折型偏光板を配置しても、照明光に対する微細構造体のピッチを実質的に小さくすることができないので、光学特性を向上させることは困難である。
なお、図16では、透明基板210の屈折率は、第2のプリズム40の屈折率にほぼ等しく設定されているので、構造複屈折型偏光板21と第2のプリズム40との界面で生じる光損失を低減させることができる。
図16の光反射型偏光子4を用いる場合にも、図15の光反射型偏光子3を用いる場合と同様の効果を奏する。さらに、図16では、偏光分離特性の入射角依存性が比較的小さな構造複屈折型偏光板21を光反射型偏光板として用いているので、光反射型偏光子4に光強度の大きな光が入射したり、入射角の大きな光が入射したりする場合にも、優れた偏光分離特性を発揮することができる。
図15の光反射型偏光板20としては、構造複屈折型偏光板21に代えて屈折率異方性を有する薄膜を用いた層状偏光板を使用することもできる。層状偏光板は、図6で説明したように、複屈折性を有する第1のフィルムと複屈折性を有しない第2のフィルムとが交互に複数積層された偏光板である。
光反射型偏光板20として層状偏光板を用いる場合にも、図15の光反射型偏光子3を用いる場合と同様の効果を奏する。さらに、層状偏光板は偏光分離特性の波長依存性が比較的小さいため、可視光のように波長域が広い光が入射した場合でも、優れた偏光分離特性を発揮することができる。
なお、図14,図15,図16の偏光子2,3,4の第1のプリズム10に代えて、図13に示すプリズム10’を用いるようにしてもよい。
図17は、第5実施例における第5の光反射型偏光子5の概略構成を示す断面図である。この光反射型偏光子5は、図13の偏光子1’の光射出面側に第2のプリズム40が設けられた2つの部分偏光子5a,5bで構成されている。2つの部分偏光子5a,5bは、それぞれの第1のプリズム10’の光入射面S1iがほぼ同一面内に配置されるように、接続されている。また、2つの部分偏光子5a,5bは、照明光軸Lに対して、対称となるように接続されており、このとき、各部分偏光子5a,5bの光反射型偏光板20は、V字状に配置される。
このような偏光子5を用いれば、図9(A)と同様に、光反射型偏光子5のZ方向の寸法を小さくすることができる。したがって、光反射型偏光子を小型化することができるとともに、光反射型偏光子5を配置するための空間を比較的小さくすることができるという利点がある。また、この光反射型偏光子5をプロジェクタに適用すれば、プロジェクタを小型化することが可能となる。
なお、図17では、2つの部分偏光子5a,5bの光射出面側の第2のプリズム40は、別個のプリズムで構成されているが、1つのプリズムを用いて構成するようにしてもよい。
また、図17の光反射型偏光子5では、部分偏光子として、図13の偏光子1’が利用されているが、他の偏光子1〜4を利用するようにしてもよい。さらに、図17の光反射型偏光子5では、部分偏光子1’が2つ組み合わされているが、他の部分偏光子1〜4を4つ組み合わせて、図9(B)に示すように、各偏光子の光反射型偏光板20がW字状に配置されるようにしてもよい。こうすれば、さらに小型化された光反射型偏光子を得ることができ、これをプロジェクタに適用すれば、プロジェクタをさらに小型化することができるという利点がある。一般には、複数の部分偏光子は、それぞれの第1のプリズムの光入射面がほぼ同一面内に配置されるように接続されていればよい。
図18は、第5実施例におけるプロジェクタPJ5の要部を平面的に見た概略構成図である。なお、図18は、X方向から見たときの平面図を示している。
このプロジェクタPJ5は、第2実施例のプロジェクタPJ2(図7(B))とほぼ同じであるが、液晶装置300の光射出面側に配置される偏光子が変更されている。具体的には、プロジェクタPJ5では、図15に示す光反射型偏光子3の第1のプリズム10を、図13に示す第1のプリズム10’に変更した光反射型偏光子3’が用いられている。また、プロジェクタPJ5では、偏光変換光学系150’の重畳レンズ180’は、凸面が光入射面となるように配置されている。
図19は、図18の液晶装置300の光射出面側に配置された光反射型偏光子3’の配置の仕方を示す説明図である。一般に、液晶装置300の表示領域は、長方形である場合が多い。光反射型偏光子3’は、その光入射面S1iと光射出面S1oとによって形成される交線11の方向が液晶装置300の表示領域の長辺301の方向(X方向)と略平行となるように、配置されている。
図19に示すように光反射型偏光子3’を配置すれば、光入射面S1iと光射出面S1oとによって形成される交線11の方向を液晶装置300の表示領域の短辺の方向(Y方向)と略平行となるように配置する場合と比べて、光反射型偏光子3’の照明光軸Lに沿った方向(Z方向)における寸法を比較的小さくすることができる。これは、光反射型偏光子3’のZ方向の寸法は、図12で説明したように、第1のプリズム10の光入射面S1iの寸法ABの tanα倍で決定されるためである。したがって、図18,図19に示すように配置すれば、液晶装置300と投写光学系500間の距離を短くすることができ、この結果、プロジェクタと投写レンズの小型化低およびコスト化を実現することができる。
以上説明したように、プロジェクタPJ5では、光反射型偏光子3’が用いられているので、偏光子の耐光性および耐熱性を向上させることができるとともに、偏光度の高い偏光光を生成し、コントラストの高い画像を表示することができる。また、不要な偏光光が液晶装置300に戻ることを防止できる。これにより、液晶装置300の誤動作を防止でき、偏光子に入射する光の強度が大きくなった場合にも、高画質な画像を安定して表示することができる。
また、プロジェクタPJ5では、液晶装置300の光射出面側のみに光反射型偏光子3’が配置されているが、偏光変換光学系150’の有無によって、換言すれば、前述したような偏光子にかかる熱的負荷によって、液晶装置300の光入射面側のみに設けるようにしてもよい。具体的には、偏光変換光学系150’を搭載しない場合(すなわち、図1に示すようなインテグレータ光学系を搭載する場合)には、液晶装置300の少なくとも光入射面側に光反射型偏光子3’を配置し、偏光変換光学系150’を搭載する場合には、液晶装置300の少なくとも光射出面側に光反射型偏光子3’を配置するようにしてもよい。なお、光反射型偏光子3’が配置されない側には、上記のように、光吸収型偏光板400を単独で用いればよい。このようにすれば、プロジェクタの小型化と高性能化と低コスト化とを同時に実現することができる。
プロジェクタPJ5では、光反射型偏光子3’が用いられているが、これに代えて、他の光反射型偏光子1,1’,2,3,4,5を用いるようにしてもよい。
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
(1)図2,図16では、構造複屈折型偏光板200,21は、微細構造体211が形成された面側から光が入射するように配置されているが、微細構造体211が形成された面と反対の面側、すなわち、透明基板210側から光が入射するように配置されていてもよい。ただし、図2,図16に示すように配置すれば、構造複屈折型偏光板における偏光分離特性を比較的高くすることができる。
(2)上記実施例では、液晶装置を1つだけ用いたいわゆる単板式のプロジェクタを説明したが、本発明は複数の液晶装置を用いたプロジェクタにも適用可能である。また、上記実施例では、透過型の液晶装置が用いられているが、本発明は、反射型の液晶装置を用いたプロジェクタにも適用可能である。さらに、フロント投写型のプロジェクタのみならず、透過型のスクリーンに画像を投写表示するリア投写型のプロジェクタにも適用可能である。
産業上の利用可能性:この発明は、偏光子を用いる光学装置、例えば、プロジェクタに適用可能である。