JP3972580B2 - 刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色材を分散し、外部刺激によって可逆的な体積変化を起こすことが可能な刺激応答性の色材含有高分子ゲルおよびその製造方法に関し、特に、発色材料、調光材料、スマート材料、センサー材料、医療用材料、ケモメカニカル材料、高吸水性材料や高分子電解質等として広く利用可能な刺激応答性の色材含有高分子ゲルおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子ゲルは、pH、イオン強度、物質の吸着、溶液組成の変化、熱、光、電流、電界、磁界等の外部刺激による可逆的な体積変化(膨潤、収縮)を起すことが知られており、種々の機能材料としての応用が期待されている。これらの材料は、例えば、「機能性高分子ゲル」(シーエムシー出版)等に総説として記載されている。この刺激応答性高分子ゲルの用途としては、ドラッグデリバリーシステム等の薬の担持体、医療材料、インクの添加材、人工筋肉、表示素子、記録素子、アクチュエータ、ポンプ等が検討されている。
【0003】
また、我々は、特開平11−236559号公報において、高濃度の顔料を内部に分散した着色高分子ゲルからなる新規な調光材料を提案した。この調光材料は、高濃度の顔料を含有した着色高分子ゲルの、pH、イオン強度、物質の吸着、溶液組成の変化、熱、光、電流、電界、磁界等の外部刺激による可逆的な体積変化(膨潤、収縮)により大きな光学濃度差を示すものである。
【0004】
このような刺激により体積変化する高分子ゲルに要求される特性としては、外部刺激に対して示される変化の速度および変化量と共に、高分子ゲルの強度が重要である。これらの要求特性のうち、変化の速度に関しては、ゲルの大きさや架橋密度の調整等による改良が図られている。また、変化量を大きくする手段としては、架橋密度を調整する;高分子ゲルの形状に異方性を与える;等の方法が提案されている。
また、特開平7−216244号公報では、高分子ゲルに活性光線を照射して低架橋点密度部分と高架橋点密度部分とを形成させ、膨潤・収縮に異方性を与えることが提案されている。
【0005】
高分子ゲルの強度については、強度向上が図れる成分を導入する、ゲル繊維を延伸処理する(鈴木誠、高分子論文集、第46巻603〜611頁、1989年)、主鎖高分子として液晶高分子を用いる(岸良一ら、POLYMER PREPRINTS,JAPAN 第40巻4135頁、1991年)、等による改善策も提案されている。
【0006】
特開平11−236559号公報における高濃度の顔料を内部に分散した着色高分子ゲルからなる新規な調光材料は、液体中における体積変化(膨潤または収縮)により、「光を吸収する面積が変化する」、「顔料の分散状態の変化により顔料の光吸収能が変化する」ことの相乗作用により大きな光学濃度差を得ることができる。このような特性を得るため、材料に求められる要件としては、「高分子ゲル中に顔料が保持されていて高分子ゲル外部に流出しないこと」、「高分子ゲル中の顔料濃度が飽和吸収濃度となるような高いものであること」、「膨潤した高分子ゲル中の顔料分散状態が良好なこと」、「膨潤・収縮速度が速いこと」、「膨潤・収縮量が大きいこと」、「高分子ゲルの強度が大きいこと」等が挙げられる。
【0007】
上記のうち、高分子ゲル中の顔料の分散性が低く凝集体を形成していると、高分子ゲルの膨潤時において所望の光学濃度が得られない、透過光の散乱により色純度が低下する等の問題が生じてしまう。前記した代表的な刺激応答性高分子ゲルである酸性あるいはイオン性高分子ゲルを用いる場合、顔料の分散性が非常に悪いという問題がある。これは、高分子ゲルを構成する前駆体モノマー中に存在する高い極性をもつ酸性あるいはイオン性基により、顔料の凝集が引き起こり易いためである。
【0008】
また、顔料分散を分散剤等で向上させたり、反応溶媒として極性をもつ酸性あるいはイオン性基の影響がでない有機溶媒を使用した場合であっても、極性をもつ酸性あるいはイオン性基の種類や組み合わせによっては高分子ゲルを作製中に相分離を起こす等して顔料の分散性が悪くなる。
【0009】
さらに、高分子ゲル中に顔料が保持されているためには、ある程度の架橋密度が必要であるが、架橋密度は、刺激により高分子ゲルが体積変化する変化速度、変化量、高分子ゲルの強度と密接に関係してくる。また、前記した刺激により体積変化する高分子ゲルに対する変化速度、変化量および高分子ゲルの強度等の要求特性に関する改善方法は、高分子ゲルの種類、形状、使用目的等により展開が困難な場合があり、十分な効果が得られているとはいえない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、刺激により体積変化する高分子ゲル中に顔料等の色材を分散し、刺激による高分子ゲルの体積変化速度および変化量が大きく、高分子ゲルの強度が高い色材含有高分子ゲルおよびその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下に示す本発明により解決される。すなわち、本発明は、
<1> 少なくとも、内部に分散状態で含まれる複数の色材と、疎水性成分と、親水性成分と、からなることを特徴とする刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルである。
【0012】
<2> 前記親水性成分が、アニオン成分であることを特徴とする<1>に記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルである。
<3> 前記親水性成分が、カチオン成分であることを特徴とする<1>に記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルである。
<4> 前記親水性成分が、アニオン成分およびカチオン成分であることを特徴とする<1>に記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルである。
【0013】
<5> 前記色材が均一に分散していることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルである。
<6> 親水性を有することを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルである。
【0014】
<7> 前記色材が微粒子であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルである。
<8> 前記色材の濃度が、3〜90重量%であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルである。
【0015】
<9> <1>〜<8>のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルの製造方法であって、少なくとも、色材と、疎水性成分および親水性成分を有する共重合体と、を混合し架橋させることを特徴とする刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルの製造方法である。
【0016】
<10> <1>〜<8>のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルの製造方法であって、少なくとも、色材と、疎水性成分および親水性成分を有する共重合体と、を混合して分散溶液を調製し、該分散溶液を分散媒に添加し懸濁させて、架橋させることを特徴とする刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルの製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
<<刺激により体積変化する色材含有高分子ゲル>>
本発明の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲル(以下、単に「高分子ゲル」ということがある)は、少なくとも、内部に分散状態で含まれる複数の色材と、疎水性成分と、親水性成分と、からなる。このような刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルは親水性であるのが好ましい。以下、これらの成分について説明する。
【0018】
<色材>
色材としては、染料や、有機粒子および無機粒子等の微粒子が使用できる。特に、顔料や光散乱粒子等の微粒子であって調光特性を有するものが好ましい。
例えば、黒色顔料の各種カーボンブラック(チャンネルブラック、ファーネスブラック等)や黒色染料のニグロシン系化合物、そしてカラー顔料、例えば、ベンジジン系のイエロー顔料、キナクリドン系、ローダミン系のマゼンタ顔料、フタロシアニン系のシアン顔料等を挙げることができる。
【0019】
より詳しくは、イエロー顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、例えば、顔料としては、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0020】
また、マゼンタ顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、例えば、顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0021】
そして、シアン顔料としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば、顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0022】
また染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、157;C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、19、23、25、29、38、44、79、127、144、245;C.I.ベイシックイエロー1、2、ll、34;C.I.フードイエロー4;C.I.リアクティブイエロー37;C.I.ソルベントイエロー6、9、17、31、35、100、102、103、l05;C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231;
【0023】
C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、85、87、89、92、97、106、111、114、115、118、134、158、186、249、254、289;C.I.ベイシックレッド1、2、9、12、14、17、18、37;C.I.フードレッド14;C.I.リアクティブレッド23、180;C.I.ソルベントレッド5、16、17、18、19、22、23、143、145、146、149、150、151、157、158;C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、78、86、87、90、98、163、165、199、202;C.I.アシッドブルー1、7、9、22、23、25、29、40、41、43、45、78、80、82、92、93、127、249;
【0024】
C.l.ベイシックブルー1、3、5、7、9、22、24、25、26、28、29;C.I.フードブルー2;C.I.ソルベントブルー22、63、78、83〜86、191、194、195、104;C.I.ダイレクトブラック2、7、19、22、24、32、38、51、56、63、71、74、75、77、108、154、168、171;C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、52、94;C.I.ベイシックブラック2、8;C.I.フードブラック1、2;C.I.リアクティブブラック31;C.I.フードバイオレット2;C.I.ソルベントバイオレット31、33、37;C.I.ソルベントグリーン24、25;C.I.ソルベントブラウン3、9等が挙げられる。これらの顔料および染料は、単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
一方、光散乱粒子としては、酸化チタン、チタンブラック、シリカ、タルク、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0025】
また、色材として微粒子を使用する場合の該微粒子の粒径は、1次粒子の体積平均粒径で0.001〜5μmが好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましい。体積平均粒径が0.001μm未満では、高分子ゲルからの流出が起こりやすく、また、5μmを超えると、発色性や光散乱性が低下する恐れが生じる。
【0026】
微粒子の流出を防止するためには、高分子ゲルの架橋密度を最適化し、微粒子を高分子網目中に物理的に閉じ込めること、高分子ゲルとの電気的、イオン的、その他物理的な相互作用が高い微粒子を用いること、表面を化学修飾した微粒子を用いること、等が好ましい。例えば、表面を化学修飾した微粒子としては、表面にビニル基等の不飽和基や不対電子(ラジカル)等の高分子ゲルと化学結合する基を導入したものや、高分子材料をグラフトした微粒子等が挙げられる。このような微粒子を含む高分子ゲルは、架橋前の高分子に微粒子を均一に分散、混合した後に架橋する方法や重合時に高分子前駆体モノマ組成物に微粒子を添加して重合する方法によって製造することができる。重合時において微粒子を添加する場合には重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ微粒子を使用し、化学結合することも好ましい。
【0027】
さらに、色材は、高分子ゲル中で均一に分散しているのが好ましい。均一に分散していないと、調光素子等に応用した場合にヘイズの問題が生じたり、目的とする光学濃度が得られなかったり、色純度、色階調等の光学濃度の調整や制御が困難になってしまうことがある。
ここで、「均一に分散している」とは、色材が微粒子である場合、当該微粒子がほぼその一次粒子として分散している状態を指し、顕微鏡観察で高分子ゲル中の微粒子の凝集がなく、色純度、色階調等の光学濃度が、膨潤状態での高分子ゲル中の微粒子濃度と同じ濃度の微粒子分散液の色純度、色階調等の光学濃度と同等であるのような状態を意味する。
【0028】
<疎水性成分>
疎水性成分としては、疎水性基を有するモノマーから構成されるのが好ましい。疎水性成分(疎水性基)を導入することで、高分子ゲルの強度を向上させることができ、含水率を制御しやすくすることができる。
【0029】
疎水性基を有するモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチスチレン等のスチレン誘導体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体;フッ素化アルキル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。これらは代表的な材料例であるため、これらに限定されるものではない。また、上記各モノマーは複数種類用いてもよい。
【0030】
<親水性成分>
親水性成分としては、アニオン成分および/またはカチオン成分が好ましい。アニオン成分とは、カルボン酸基、スルフォン酸基、硫酸基、リン酸基等の酸基およびこれらの塩を有する成分を意味し、カチオン成分とは、アミノ基、4級アミノ基等のイオン性基を有する成分を意味する。
【0031】
これらの各成分は下記のモノマーを用いて合成できる。
酸基やその塩を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸あるいはその塩;マレイン酸あるいはその塩;フマル酸あるいはその塩;イタコン酸あるいはその塩;クロトン酸あるいはその塩;ビニルスルホン酸あるいはその塩;ビニルベンゼンスルホン酸あるいはその塩;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のようなアクリルアミドアルキルスルホン酸あるいはその塩;2−アクリロイルエタンスルホン酸、2−アクリロイルプロパンスルホン酸、2−メタクロイルエタンスルホン酸等のような(メタ)アクリロイルアルキルスルホン酸あるいはその塩;等が挙げられる。
【0032】
一方、アミノ基や4級アミノ基等のイオン性基を有するモノマーの具体例としては、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとその4級化物;ジエチルアミノプロピル(メタ)クリルアミドとその4級化物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートやその4級化物;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやその4級化物;等が挙げられる。
【0033】
なお、上記具体例の中で「(メタ)アクリルアミド」なる記述は、「(メタ)アクリルアミド」および「アクリルアミド」のいずれをも含むことを意味する。
【0034】
<<色材含有高分子ゲルの製造方法>>
本発明の色材含有高分子ゲルは、少なくとも、色材と、疎水性成分および親水性成分を有する共重合体と、を混合し架橋させることにより製造されるのが好ましい。
【0035】
具体的には、まず、疎水性成分および親水性成分(アニオン成分および/またはカチオン成分)のモノマーを用いて高分子ゲルの主鎖を構成する共重合体を合成し、この共重合体に前記微粒子を均一に分散、混合した後に架橋して製造するのが好ましい。
【0036】
酸基やイオン性基といった親水性成分の含有量は、50〜99.9mol%が好ましく、60〜99.5mol%がより好ましい。50mol%未満だと疎水性基の効果が強くなり、高分子ゲルの含水率が低下したり、刺激応答性が低下することがあり、99.9mol%を超えると目的とする疎水性基の効果が発現しないことがある。
【0037】
親水性成分として、カチオン性成分およびアニオン性成分を使用する場合は、カチオン性成分とアニオン性成分とのモル比(カチオン性成分/アニオン性成分)は、0.1/99.9〜99.9/0.1が好ましく、1/99〜99/1がより好ましい。カチオン性成分とアニオン性成分とモル比は、使用する酸基やイオン性基の種類によって選択されるが、0.1/99.9〜99.9/0.1の範囲外だと、目的とする酸基やイオン性基の相互作用、高分子ゲルの刺激応答性が得られなくなることがある。
【0038】
疎水性成分の含有量は、0.1〜50mol%が好ましく、0.5mol%〜40mol%がより好ましい。疎水性成分の含有量が0.1mol%未満では、目的とする疎水性成分の効果が発現されず、50mol%を超えると、高分子ゲルの刺激応答性が低下する。
【0039】
また、粒子等の形状を有する色材含有高分子ゲルを製造するには、少なくとも、色材と、疎水性成分および親水性成分を有する共重合体と、を混合して分散溶液を調製し、該分散溶液を分散媒に添加し懸濁させて、架橋させるのが好ましい。
このとき、乳化法、懸濁法、分散法、機械的粉砕法等の方法を適宜併用し、粒子等の形状に加工することができる。
【0040】
例えば、懸濁法の一つである逆相懸濁重合で用いられる有機溶媒としては、基本的に水に溶けにくく油中水滴型の分散液を形成することができるものであって、かつ重合に不活性なものであれば、いかなるものも使用できる。このような有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、または芳香族炭化水素があり、脂肪族炭化水素としては、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン等が、脂環族炭化水素としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が適し、これらの二種以上を混合して用いることもできる。特に、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、シクロヘキサンは工業的に品質が安定していて、入手が容易であり、かつ安価なため好ましい。
【0041】
逆相懸濁重合を行う際、分散安定化剤を併用するのが好ましい。逆相懸濁重合で用いられる分散安定化剤は、色材と、疎水性成分および親水性成分を有する共重合体と、を混合し、均一分散した水溶液を油相(有機溶媒)中に分散安定化させるために使用されるものであり、油溶性界面活性剤であるHLB1〜9のショ糖脂肪酸エステル、ソルビタンエステルおよびこれらのポリオキシアルキレン付加物から選ばれる1種または2種以上が使用される。
【0042】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、脂肪酸がステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸等の飽和または不飽和の脂肪酸からなるショ糖エステルが好ましい。そのエステル個数はショ糖1単位当り1〜6個であり得る。具体的なショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖モノステアレート、ショ糖ジステアレート、ショ糖トリステアレート、ショ糖モノパルミテート、ショ糖ジパルミテー卜、ショ糖トリパルミテート、ショ糖モノラウレート、ショ糖ジラウレート、ショ糖トリラウレート、ショ糖モノオレート、ショ糖ジオレート、ショ糖トリオレート、ショ糖ポリステアレート、ショ糖ポリパルミテート、ショ糖ポリラウレート、ショ糖ポリオレート等が挙げられる。
【0043】
ソルビタンエステルとしては、脂肪酸がステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸等の飽和または不飽和の脂肪酸からなるソルビタンエステルが好ましく、そのエステル個数はソルビタン1単位当り1〜4個であり得る。具体的にはソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレー卜、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレート、ソルビタントリオレート等が挙げられる。また、これらのポリオキンアルキレン付加物としては、ポリオキシエチレン付加物、ポリオキンプロピレン付加物が挙げられ、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等が挙げられる。また、これらの分散安定化剤は1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
懸濁方法としては、所望の平均粒径が得られるような懸濁方法であれば特に限定されないが、例えば強力な水流を利用したホモジナイサー、回転羽根と機壁あるいは回転羽根同士のギャップにかかる高シェアーを利用した連続乳化分散機、超音波分散機等を用いて懸濁する方法等が好ましい。
【0045】
上記共重合体の種類は、ブロック型、ランダム型およびグラフト型のいずれであってもよい。
高分子ゲルの強度を向上させたり、膨潤量の容易な制御をする観点からは、ランダム型が好ましく、親水性領域、疎水性領域等のドメイン形成を制御することにより(例えば、pH変化で膨潤する高分子ゲルに温度変化によっても膨潤収縮する等)、新たな特性を付与する観点からは、ブロック型またはグラフト型が好ましい。
【0046】
共重合体の分子量としては、重量平均分子量で1000以上が好ましく、3000以上がより好ましい。共重合体の重量平均分子量が1000未満だと、架橋しても高分子ゲルにならなかったり、高分子ゲルとなっても所望の特性が得られない場合がある。
また、重量平均分子量の上限は色材の分散に問題がないかぎり限定されない。つまり、分散装置の性能と分散溶液粘度によって、満足な分散状態を得られる範囲内で重量平均分子量を高くすることができる。
【0047】
共重合体の架橋方法としては、グルタルアルデヒド等のアルデヒド類、WSC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)等のカルボジイミド類、デナコール(商品名)等の多官能エポキシ、多官能イソシアネート等の架橋剤を用いたり、活性光線であるγ線、X線、電子線等を用いることができる。
【0048】
色材を均一に分散するには、機械的混練法、攪拌法や超音波分散法を用い、適宜、分散剤等を利用することが好ましい。
高分子ゲル中に含有される色材として、前述した調光特性を有する材料(以下、「調光用材料」ということがある)を使用する場合は、当該色材は、高分子ゲルの収縮時に、少なくとも飽和吸収濃度以上(光散乱粒子の場合には、飽和散乱濃度以上)の濃度で、高分子ゲルに含有されているのが好ましい。具体的には、その濃度は3〜90重量%が好ましく、5〜80重量%がより好ましい。
ここで、「飽和吸収濃度以上(飽和散乱濃度以上)」とは、特定の光路長のもとにおける調光用材料濃度と光学濃度(あるいは光吸収量や光散乱量)との関係が一次直線の関係から大きくかい離するような高い調光用材料濃度の領域をいう。
【0049】
本発明の色材含有高分子ゲルの利用形態としては、特に制限はなく、粒子状、ブロック状、フイルム状、不定形状、繊維状等、種々ものが適用可能である。なかでも、粒子状の形態は、種々の用途への応用範囲が広いことから好ましい。粒子状における形態にも特に限定はないが、球体、楕円体、多面体、多孔質体、星状、針状、中空状等が適用できる。
【0050】
本発明の色材含有高分子ゲルには、公知の酸化防止、紫外線吸収、防腐剤、抗菌剤等の耐候安定剤等を添加しても構わない。
【0051】
本発明の色材含有高分子ゲルは、該色材含有高分子ゲルに吸収可能で、膨潤および収縮に寄与する液体と組み合わせることで、体積変化に基づく調光用材料として用いることができる。また、それ以外にも種々の色に着色した高吸水性樹脂、芳香剤の徐放性樹脂、インクジェット用紙のコーティング剤等として広く利用可能なものである。
【0052】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
−共重合体の合成−
重合容器内にアクリル酸5.92g(81.43mol%)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド2.33g(13.57mol%)、n−ブチルメタクリレート0.72g(5mol%)、トルエン36mlを投入し、これを窒素置換した後に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.015gを添加し、60℃、20時間、重合を行ってポリマーを生成させた。
【0054】
生成したポリマーは白色沈澱しており、ろ過後、大量のアセトンで洗浄し乾燥した。乾燥したポリマーに1mol/リットル(1N)の水酸化ナトリウム水溶液を加え溶解し、大量のアセトン中に滴下し再沈精製して目的のアクリル酸−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド−n−ブチルメタクリレート共重合体を8.7g得た。ゲルパーミエーション(GPC)の測定結果から得られた共重合体の重量平均分子量は4万であった。また、元素分析結果をもとに計算から共重合率はほぼ仕込み比と同等であった。
【0055】
−着色高分子ゲルの調製−
得られたアクリル酸−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド−n−ブチルメタクリレート共重合体8gを蒸留水12.6mlに溶解した後、含有する微粒子としてフタロシアニン系青色カプセル顔料(大日本インキ社製、顔料濃度13.5wt%)27gを添加し、遊星ミルで1時間分散させた後、デナコールEX−810(ナガセ化成工業(株)社製エチレングリコールジグリシジルエーテル)を0.4g添加し、再度遊星ミルで5分間、分散することで反応溶液を調製した。
【0056】
該反応溶液中で顔料の凝集はなく分散性は良好であった。反応溶液を、ソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン30)16gをシクロヘキサン2リットルに溶解した溶液に加え、ウルトラトラックスを用いて5000rpmで10分間攪拌して安定した懸濁状態を得た後、懸濁液を70℃に昇温し300rpmで攪拌しながら6時間反応させ着色高分子ゲル粒子を得た。
静置して着色高分子ゲル粒子を沈降させ分散媒と分離させたが分散媒には顔料が流出していなかった。
【0057】
得られた着色高分子ゲル粒子を、蒸留水による膨潤、アセトンによる収縮を繰り返し、精製した。この操作中では顔料の流出は確認されなかった。得られた粒子をメッシュを用いて篩分することで、膨潤時の体積平均粒径が100μmの着色高分子ゲル粒子を得た。
【0058】
膨潤した高分子ゲル中の顔料の分散状態を顕微鏡および光散乱法により評価した結果、ほぼ一次粒子として均一に分散されていた。また、蒸留水の吸水量を測定した結果、吸水量は160g/g(自重の160倍)と非常に高いものであった。
これらの結果から、高分子ゲル粒子は高い吸水性と優れた顔料分散性(着色性)を兼ね備えた優れたものであることがわかった。
【0059】
(実施例2)
−共重合体の合成−
重合容器内にアクリル酸5.44g(77.14mol%)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド2.14g(12.86mol%)、n−ブチルメタクリレート1.39g(10mol%)、トルエン36mlを投入し、これを窒素置換した後にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.015gを添加し、60℃、20時間、重合を行って、ポリマーを生成させた。
【0060】
生成したポリマーは白色沈澱しており、ろ過後、大量のアセトンで洗浄し乾燥した。乾燥した共重合体に1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加え溶解し、大量のアセトン中に滴下し再沈精製して目的のアクリル酸−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド−n−ブチルメタクリレート共重合体を8.6g得た。ゲルパーミエーション(GPC)の測定結果から得られた共重合体の重量平均分子量は4.3万であった。また、元素分析結果をもとに計算から共重合率はほぼ仕込み比と同等であった。
【0061】
−着色高分子ゲルの調製−
得られたアクリル酸−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド−n−ブチルメタクリレート共重合体を用いて、デナコールEX−810を0.2gとした以外は実施例1と同様の条件で架橋反応を行い、着色高分子ゲル粒子を得た。
静置して着色高分子ゲル粒子を沈降させ分散媒と分離させたが分散媒には顔料が流出していなかった。
【0062】
着色高分子ゲル粒子は蒸留水で膨潤、アセトンで収縮を繰り返し精製した。この操作中では顔料の流出は確認されなかった。得られた粒子をメッシュを用いて篩分することで、膨潤時の体積平均粒径が100μmの着色高分子ゲル粒子を得た。
【0063】
膨潤した高分子ゲル中の顔料の分散状態を顕微鏡および光散乱法により評価した結果、ほぼ一次粒子として均一に分散されていた。また、蒸留水の吸水量を測定した結果、吸水量は250g/g(自重の250倍)と非常に高いものであった。
実施例2では、実施例1に比べ架橋剤(デナコールEX−810)の量を半分に減らしているが、疎水性成分を増やすことにより強度を維持し吸水量を増やすことができていると考えられる。
【0064】
(実施例3)
−着色高分子ゲルの調製−
微粒子としてのフタロシアニン系青色顔料(大日精化工業(株)社製、No.26)3.66gをソルビタンエステル型界面活性剤ノニオンOP−85R(日本油脂(株)社製)1.2g、トルエン36mlに分散させこれにアクリル酸5.92g(81.43mol%)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド2.33g(13.57mol%)、n−ブチルメタクリレート0.72g(5mol%)および開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.015gを添加し遊星ミルで1時間分散させた。
【0065】
その後、架橋剤としてデナコールEX−810(ナガセ化成工業(株)社製エチレングリコールジグリシジルエーテル)を0.4g添加し、再度遊星ミルで5分間分散することで反応溶液を調製した。反応溶液中で顔料の凝集はなく分散性は良好であった。
【0066】
次に、ポリビニルピロリドン(和光純薬工業(株)社製:K90)16gを蒸留水2リットルに溶解した溶液に、調製した反応溶液を加え、ウルトラトラックスを用いて5000rpmで10分間攪拌して安定した懸濁状態を得た後、300rpmで攪拌し充分窒素置換した後、懸濁液を70℃に昇温し8時間反応させ着色高分子ゲル粒子を得た。静置して着色高分子ゲル粒子を沈降させ分散媒と分離させると分散媒に顔料が流出していた。
【0067】
着色高分子ゲル粒子は水酸化ナトリウム水溶液でナトリウム化を行った後、蒸留水で膨潤、アセトンで収縮を繰り返し精製をしたがこの操作を行うたびに顔料の流出が確認された。得られた粒子をメッシュを用いて篩分することで、膨潤時の体積平均粒径が100μmの着色高分子ゲル粒子を得た。
【0068】
膨潤した高分子ゲル中の顔料の分散状態を顕微鏡により評価した結果、粒子中で顔料が凝集したものや顔料の含まれていない粒子が少量確認された。また、蒸留水の吸水量を測定した結果、吸水量は170g/g(自重の170倍)であった。
【0069】
(比較例1)
−共重合体の合成−
重合容器内にアクリル酸6.44g(85.71mol%)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド2.54g(14.29mol%)、トルエン36mlを投入し、これを窒素置換した後にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.015gを添加し、60℃、20時間、重合を行ってポリマーを生成させた。
【0070】
生成したポリマーは白色沈澱しており、ろ過後、大量のアセトンで洗浄し乾燥した。乾燥した共重合体に1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加え溶解し、大量のアセトン中に滴下し再沈精製して目的のアクリル酸−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体を8.5g得た。ゲルパーミエーション(GPC)の測定結果から得られた共重合体の重量平均分子量は3.8万であった。また、元素分析結果をもとに計算から共重合率はほぼ仕込み比と同等であった。
【0071】
−着色高分子ゲルの調製−
得られたアクリル酸−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体8gを蒸留水12.6mlに溶解した後、含有する微粒子としてフタロシアニン系青色カプセル顔料(大日本インキ社製、顔料濃度13.5wt%)27gを添加し、遊星ミルで1時間分散させた後、デナコールEX−810(ナガセ化成工業(株)社製エチレングリコールジグリシジルエーテル)を0.4g添加し再度遊星ミルで5分間分散することで反応溶液を調製した。反応溶液中で顔料の凝集はなく分散性は良好であった。
【0072】
次に、ソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン30)16gをシクロヘキサン2リットルに溶解した溶液に、調製した反応溶液を加え、ウルトラトラックスを用いて5000rpmで10分間攪拌して安定した懸濁状態を得た後、懸濁液を70℃に昇温し300rpmで攪拌しながら6時間反応させ着色高分子ゲル粒子を得た。静置して着色高分子ゲル粒子を沈降させ分散媒と分離させたが分散媒には顔料が流出していなかった。
【0073】
着色高分子ゲル粒子は蒸留水で膨潤、アセトンで収縮を繰り返し精製した。この操作を行うたびに僅かながら顔料の流出が確認された。得られた粒子をメッシュを用いて篩分することで、膨潤時の体積平均粒径が100μmの着色高分子ゲル粒子を得た。
【0074】
膨潤した高分子ゲル中の顔料の分散状態を顕微鏡により評価した結果、ほぼ一次粒子として均一に分散されていたが崩壊した粒子が数多く確認された。実施例1および2と同じ操作を行っているにもかかわらず崩壊した粒子が確認されたことは比較例1の粒子が実施例1および2に比べ、ゲル強度が低いことを示している。また、蒸留水の吸水量を測定した結果、吸水量は170g/g(自重の170倍)であった。
【0075】
(比較例2)
−着色高分子ゲルの調製−
微粒子としてのフタロシアニン系青色カプセル顔料(大日本インキ社製、顔料濃度13.5wt%)27gに水酸化ナトリウム3.3g、蒸留水12.6mlを加え溶解した後、アクリル酸5.92g(81.43mol%)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド2.33g(13.57mol%)、n−ブチルメタクリレート0.72g(5mol%)を添加し遊星ミルで1時間分散させた。その後、架橋剤としてデナコールEX−810(ナガセ化成工業(株)社製エチレングリコールジグリシジルエーテル)を0.4g添加し再度遊星ミルで5分間分散することで反応溶液を調製した。
【0076】
反応溶液中で顔料は凝集しており、さらにn−ブチルメタクリレートと思われる分離相が確認された。実施例1に用いられた共重合体の組成と同様にもかかわらず、顔料が凝集するのは、高分子体(共重合体)と単量体であるモノマーの形態の違いによると思われ、共重合体を用いる方が顔料分散性の点で有用なことがわかる。
【0077】
次に、ソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン30)16gを2リットルのシクロヘキサンに溶解した溶液に、調製した反応溶液を加え、ウルトラトラックスを用いて5000rpmで10分間攪拌して安定した懸濁状態を得た後、300rpmで攪拌し充分窒素置換した後、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.5gを添加し、懸濁液を70℃に昇温し8時間反応させ着色高分子ゲル粒子を得た。静置して着色高分子ゲル粒子を沈降させ分散媒と分離させると分散媒に顔料が流出していた。
【0078】
着色高分子ゲル粒子は蒸留水で膨潤、アセトンで収縮を繰り返し精製をしたがこの操作を行うたびに僅かながら顔料の流出が確認された。得られた粒子をメッシュを用いて篩分することで、膨潤時の体積平均粒径が100μmの着色高分子ゲル粒子を得た。
【0079】
膨潤した高分子ゲル中の顔料の分散状態を顕微鏡により評価した結果、粒子中で顔料が凝集したものや顔料の含まれていないもの、崩壊した粒子が数多く確認された。また、蒸留水の吸水量を測定した結果、吸水量は140g/g(自重の140倍)であった。また、反応溶液の調製段階で、疎水性成分であるn−ブチルメタクリレートが分離してしまったため、当該高分子ゲルは、疎水性成分(疎水性基)を含まないものとなっていた。
【0080】
−色材含有高分子ゲルの強度比較−
実施例1〜3と比較例1および2で作製した乾燥後の色材含有高分子ゲルに、蒸留水を加えゲル濃度0.2g/リットルの高分子ゲル含有液を調製した。調製したそれぞれの高分子ゲル含有液20mlを、各々、30mlのサンプル管びんに入れ、振とう機に設置し振とうスピードを50,150,200,250min-1でそれぞれ1時間振とうさせ、色材含有高分子ゲルの形状変化の確認を顕微鏡を用いて行った。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例1と比較例1とは、色材含有高分子ゲルを形成する架橋剤量、重量平均分子量等が同等にもかかわらず、高分子ゲルの強度に大きな差が確認された。また、実施例2は比較例1に比べ架橋剤量が半分にもかかわらず、ゲル強度に大きな差が確認された。実施例3も良好なゲル強度が示された。この強度の差は疎水性成分の添加効果によると考えられ、架橋剤量を低減させることによるゲル強度の低下を疎水性成分を添加することにより抑制できることを示している。また、比較例2が比較的ゲル強度が強いのは、水中でのラジカル重合で合成したゲルであることからゲル中の主鎖の分子量が他の実施例および比較例に比べ大きく分子の絡み合い効果によるものと考えられる。
【0083】
−色材含有高分子ゲルの刺激応答性評価−
実施例1〜3と比較例1および2で作製した色材含有高分子ゲル粒子はpH変化で膨潤収縮することが知られている。乾燥させたそれぞれの色材含有高分子ゲル粒子に、1mMのKOH溶液を加え高分子ゲル濃度0.2g/リットルの調整液を調製した。高分子論文集,Vol.46,No.11,pp.703−708記載のポリピロール導電性高分子電極を作製し、該電極表面に調整液を設け、電極間距離を300μmに固定した。印加電圧を1.3Vとして、飽和膨潤状態から完全収縮状態となるのに要した時間(体積変化速度)を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
実施例1と比較例1および2を比較すると、疎水性成分を含む実施例1の方が収縮する時間が速いことが確認された。実施例2の体積変化速度が一番良好だったのは、架橋剤量が一番少なく、疎水性成分も含有しているため、これらの相乗効果が良好に発揮されたためと考えられる。
【0086】
以上の評価結果から、顔料が均一に分散されている実施例1および2は、体積変化速度が速く、変化量が大きく、高分子ゲルの強度が高い色材含有高分子ゲルといえる。
【0087】
【発明の効果】
本発明の高分子ゲルは、疎水性成分と親水性成分とを用いて高分子ゲルの主鎖を構成する共重合体を合成し、この共重合体に色材である顔料等の微粒子を分散、混合し、架橋して製造しているため、顔料等の微粒子が分散し、刺激による高分子ゲルの体積変化速度および変化量が大きく、かつ、高分子ゲルの強度が高い。
Claims (10)
- 少なくとも、内部に分散状態で含まれる複数の色材と、疎水性成分と、親水性成分と、からなることを特徴とする刺激により体積変化する色材含有高分子ゲル。
- 前記親水性成分が、アニオン成分であることを特徴とする請求項1に記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲル。
- 前記親水性成分が、カチオン成分であることを特徴とする請求項1に記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲル。
- 前記親水性成分が、アニオン成分およびカチオン成分であることを特徴とする請求項1に記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲル。
- 前記色材が均一に分散していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲル。
- 親水性を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲル。
- 前記色材が微粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲル。
- 前記色材の濃度が、3〜90重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲル。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルの製造方法であって、少なくとも、色材と、疎水性成分および親水性成分を有する共重合体と、を混合し架橋させることを特徴とする刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルの製造方法であって、少なくとも、色材と、疎水性成分および親水性成分を有する共重合体と、を混合して分散溶液を調製し、該分散溶液を分散媒に添加し懸濁させて、架橋させることを特徴とする刺激により体積変化する色材含有高分子ゲルの製造方法。
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