JP3972502B2 - 飛しょう体用レドーム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体のレドームに関するものであり、特に、飛しょう体の内部の電子機器にかかる空力的な熱環境を軽減する飛しょう体用レドームを提案するものである。
【0002】
【従来の技術】
図9は従来の飛しょう体用レドームを示す構成図であり、図9(a)は飛しょう体全体を示す構成図、図9(b)は飛しょう体用レドームの断面図をそれぞれ示す。図において、1は所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体、2は飛しょう体1の内部に搭載した電子機器のひとつであり所定の目標までの距離および方位を計測するアンテナ、3はアンテナ2によって送受信される電波ビーム範囲の境界、4は飛しょう体1の先端に設けられ飛しょう体1のアンテナ2等の内部に搭載した電子機器を空力環境から保護するレドーム、5はレドーム4を構成し電波を透過するセラミックを材料としたセラミックレドーム、6はレドーム4を構成するセラミックレドーム5に接着されたCFRP(炭素繊維強化複合材料)等の複合材料で成形されたレドームリング、7はセラミックレドーム5とレドームリング6を結合している接着部、8はレドームリング6表面に配置された、例えば耐熱性の有機もしくは無機の繊維を母材としフェノールあるいはエポキシのレジン等に含浸させた複合材よりなるアブレーション材、9はアンテナ2等の電子機器を内蔵または支持しレドーム4と結合している飛しょう体1のシェル、10は飛しょう体1の後方に位置し飛しょう体1の推進力を発生させる推進装置、11は推進装置10の発生する推進力により飛しょう体1が高速で飛しょうする際に飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流、12は高温の気流11が前記アブレーション材8の表面を流れるために生じる熱分解ガス、13は熱分解ガス12が形成する保護境界層である。
【0003】
飛しょう体1はアンテナ2を所定の目標に向け、電波ビームを発信あるいは受信することで所定の目標までの距離および方位の計測を行う。したがって電波ビームの有効範囲の境界3より前方の範囲内では、アンテナ2によって送受信される電波ビームはレドーム4を通過するため、レドーム4には電波透過性が要求される。電波透過性の要求を満たす材料としてはセラミック(アルミナ等)がある。セラミックを材料とするセラミックレドーム5と、金属を材料とするシェル9では線膨張率の差が大きく、飛しょう体1が高速で飛しょうする場合、飛しょう体1は高温の気流11にさらされて加熱されるため、レドーム5とシェル9を直接接合するとセラミックと金属の接合部に熱応力が発生し破壊に至る。このため、レドーム4は、セラミックを材料とするセラミックレドーム5と金属材料からなるシェル9の中間程度の線膨張率をもつCFRP等の複合材料で成形されるレドームリング6を接着して構成し、レドームリング6を仲介してシェル9と結合する方法が一般的である。
【0004】
飛しょう体1が発射されると、飛しょう体1の推進装置10が推進力を発生し、飛しょう体1は所定の目標に向かって高速で飛しょうを開始する。高速で飛しょう中の飛しょう体1は空力加熱をうける。空力加熱とは飛しょう体1が高速で飛しょうすることにより飛しょう体1の表面を大気が高速で流れ、飛しょう体1の表面と大気との間で摩擦がおき、摩擦熱により大気および飛しょう体1が加熱される現象のことである。すなわち、飛しょう体1は高温の気流11にさらされながら飛しょうしていることになる。レドームリング6の表面に配置されたアブレーション材8は、高温の気流11にさらされた時、最初ヒートシンクのように働くが、熱伝導率が低いため表面温度が急激に上昇し数百Kで吸熱反応による分解を始め多孔質の炭化層と熱分解ガス12となりながら徐々に侵食される。熱分解ガス12は熱流入と逆方向に炭化層を通ってアブレーション材8の表面にしみだしてゆく。しみだした熱分解ガス12はアブレーション材8の表面と高温の気流11との間を流れるが、熱分解ガス12は高温の気流11よりも相対的に温度が低く、熱の流入に対する保護境界層13として働く。すなわち、飛しょう体1のレドームリング6の表面に設けられたアブレーション材8は、高温の気流11の下に相対的に温度の低い熱分解ガス12による保護境界層13を形成することによりレドームリング6への熱の流入量を減少させ、耐熱性の低い複合材料で成形されたレドームリング6を空力加熱から保護する。
【0005】
近年の飛しょう体は高速化されると同時に、飛しょう距離の延伸の方向に開発が進んでいる。飛しょう体が高速化されると空力加熱による単位時間あたりの流入熱量が増大し、飛しょう体の機体、特に先頭に位置するレドームに流入する熱量が増加する。また、飛しょう体の飛しょう距離が延伸されると、飛しょう時間が延伸され、したがって空力加熱をうける時間も延長されることになり、高速化の時と同様に飛しょう体の機体やレドームに流入する熱量が増加する。
【0006】
図10は接着部7の接着強度と温度の関係を示す図である。図において、横軸は接着部7の温度であり、縦軸は接着部7の接着強度を示す。図によれば、接着部7の温度が上昇すると、ある温度で急激に接着強度が失われる温度、すなわちガラス転移温度Tgが存在するのが一般的である。接着部7の温度は、空力加熱をうけてレドーム4に加えられた熱が、レドーム4を構成するセラミックレドーム5を伝導し、あるいはレドーム4を構成するレドームリング6を伝導することで上昇する。飛しょう体の高速化および飛しょう距離の延伸がなされた場合、従来のレドームリング6の表面にアブレーション材8を設ける構造ではレドーム4に流入する熱、特にアブレーション材8を設けていないセラミックレドーム5から流入する熱量が増加するため、接着部7の温度がガラス転移点Tgを越える可能性がある。セラミックレドーム5とレドームリング6を接着する接着部7は温度上昇にともなって接着強度が低下し、特にガラス転移点Tgを越えてしまうとセラミックレドーム5とレドームリング6間の固定ができなくなり、その結果セラミックレドーム5が脱落しアンテナ2等の内部の電子機器が破壊されてしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
飛しょう体1が所定の目標に向かって高速で飛しょうする際には空力加熱が生じ、飛しょう体1の機体に熱が流入するが、特に飛しょう体1の先頭に位置するレドーム4内部には多大な熱量が流入する。飛しょう体を従来のものよりも高速化し、飛しょう距離を延伸する場合、従来のレドーム4の構造ではセラミックレドーム5から伝導により流入する熱量が増加するため、レドーム4を構成するセラミックレドーム5とレドームリング6を接着する接着部7の温度が上昇しガラス転移点Tgを越えてしまい、それにともなって接着部7の接着強度が低下する。接着部7の接着強度の低下のためにセラミックレドーム5とレドームリング6間の固定ができなくなり、その結果セラミックレドーム5が脱落するという問題があった。また、セラミックレドーム5が脱落するとアンテナ2等の内部の電子機器が破壊され、飛しょう体1は所定の目標位置を計測することが不可能となり、所定の目標に向けての誘導が不可能となる。また、セラミックレドーム5が脱落すると飛しょう体1の空力抵抗が増大し、飛しょう制御が不可能となる。すなわち、所定の目標に到達することが不可能となるという問題があった。
【0008】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、飛しょう体の飛しょう時に生じる空力加熱による熱のセラミックレドームからの伝導を抑制することで、セラミックレドームとレドームリングの接着部の温度上昇を抑制し、セラミックレドームの脱落を防ぐ断熱性の高い飛しょう体用レドームを提案するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明による飛しょう体用レドームは、所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体に設けられ、内部に設置されたアンテナの送信もしくは受信電波ビームを透過する飛しょう体用レドームにおいて、前記レドーム表面における前記電波ビームの範囲外に設けられ、前記飛しょう体が飛しょうする際に自身が熱分解し保護境界層を形成するアブレーション材を備えたものである。
【0010】
第2の発明による飛しょう体用レドームは、所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体に設けられ、内部に設置されたアンテナの送信もしくは受信電波ビームを透過する飛しょう体用レドームにおいて、前記レドーム表面における前記電波ビームの範囲外に設けられ、前記飛しょう体が飛しょうする際に自身が熱分解し保護境界層を形成するアブレーション材と、前記アブレーション材と前記レドーム表面との間に設けられた間隙と、前記間隙内部に封入され前記アブレーション材の熱分解に応じて自身が気化し保護境界層を形成する液状の物質とを備えたものである。
【0011】
第3の発明による飛しょう体用レドームは、所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体に設けられ、内部に設置されたアンテナの送信もしくは受信電波ビームを透過する飛しょう体用レドームにおいて、前記レドーム表面における前記電波ビームの範囲外に多層重ねて設けられ、前記飛しょう体が飛しょうする際に自身が熱分解し保護境界層を形成するアブレーション材と、前記多層のアブレーション材の間に設けられた間隙と、前記間隙内部に封入され前記アブレーション材の熱分解に応じて自身が気化し保護境界層を形成する液状の物質とを備えたものである。
【0012】
第4の発明による飛しょう体用レドームは、所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体に設けられ、内部に設置されたアンテナの送信もしくは受信電波ビームを透過する飛しょう体用レドームにおいて、前記レドーム表面における前記電波ビームの範囲外に設けられ、前記飛しょう体が飛しょうする際に自身が熱分解し保護境界層を形成するアブレーション材と、前記アブレーション材に設けたとまり穴と、前記とまり穴に嵌合してそのとまり穴をふさぐふたと、前記とまり穴と前記ふたの内部に封入され前記ふたの剥離に応じて自身が気化し保護境界層を形成する液状の物質とを備えたものである。
【0013】
第5の発明による飛しょう体用レドームは、所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体に設けられ、内部に設置されたアンテナの送信もしくは受信電波ビームを透過する飛しょう体用レドームにおいて、前記レドーム表面における前記電波ビームの範囲外に設けられ、前記飛しょう体が飛しょうする際に自身が熱分解し保護境界層を形成するアブレーション材と、前記アブレーション材の表面に設けられた噴射口と、前記噴射口から噴射され自身が気化し保護境界層を形成する液体と、前記液体を蓄えるタンクと、前記タンクから前記液体を前記噴射口へ移送する手段とを備えたものである。
【0014】
第6の発明による飛しょう体用レドームは、所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体に設けられ、内部に設置されたアンテナの送信もしくは受信電波ビームを透過する飛しょう体用レドームにおいて、前記レドーム表面における前記電波ビームの範囲外に設けられ、前記飛しょう体が飛しょうする際に自身が熱分解し保護境界層を形成するアブレーション材と、前記アブレーション材の内部に設けられた噴射口と、前記噴射口から噴射され自身が気化し保護境界層を形成する液体と、前記液体を蓄えるタンクと、前記タンクから前記液体を前記噴射口へ移送する手段とを備えたものである。
【0015】
第7の発明による飛しょう体用レドームは、所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体に設けられ、内部に設置されたアンテナの送信もしくは受信電波ビームを透過する飛しょう体用レドームにおいて、前記レドーム表面における前記電波ビームの範囲外に設けられ、前記飛しょう体が飛しょうする際に自身が熱分解し保護境界層を形成するアブレーション材と、前記アブレーション材に設けたとまり穴と、前記とまり穴に嵌合してそのとまり穴をふさぐふたと、前記とまり穴に設けられた噴射口と、前記ふたの剥離に応じて前記噴射口から噴射され自身が気化し保護境界層を形成する液体と、前記液体を蓄えるタンクと、前記タンクから前記液体を前記噴射口へ移送する手段とを備えたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1を示す部分構成図であり、図1(a)は、飛しょう開始時のレドームの断面図、図1(b)は飛しょう時のレドームの断面図である。図において、1は所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体、2は飛しょう体1の内部に搭載した電子機器のひとつであり所定の目標までの距離および方位を計測するアンテナ、3はアンテナ2によって送受信される電波ビームの有効範囲の境界、4は飛しょう体1の先端に設けられ飛しょう体1のアンテナ2等の内部の電子機器を空力環境から保護するレドーム、5はレドーム4を構成し電波を透過するセラミックを材料としたセラミックレドーム、6はレドーム4を構成するセラミックレドーム5に接着されたCFRP(炭素繊維強化複合材料)等の複合材料で成形されたレドームリング、7はセラミックレドーム5とレドームリング6を結合している接着部、9はアンテナ2等の電子機器を内蔵または支持しレドーム4と結合している飛しょう体1のシェル、14はレドーム4表面でかつ飛しょう体1のアンテナ2の送受信する電波ビームの境界3より外に設けられ、例えば耐熱性の有機もしくは無機の繊維を母材としフェノールあるいはエポキシのレジン等に含浸させた複合材よりなるアブレーション材、11は飛しょう体1が高速で飛しょうする際に飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流、12は高温の気流11が前記アブレーション材14の表面を流れるために生じる熱分解ガス、13は熱分解ガス12が形成する保護境界層である。
【0017】
所定の目標に向かって高速で飛しょうを開始した飛しょう体1は、アンテナ2を所定の目標に向け、電波ビームを発信あるいは受信することで所定の目標までの距離および方位を計測しつつ飛しょうする。飛しょう体1の先頭のレドーム4の表面に設けられたアブレーション材14はアンテナ2の送受信する電波ビームの範囲外、すなわち境界3より外に設けられているため、電波の透過には影響を与えず、したがってアンテナ2による距離および方位計測性能には影響を与えない。
【0018】
飛しょう体1は高速で飛しょうすることにより空力加熱をうけ、高温の気流11にさらされながら飛しょうする。したがって、高速で飛しょうする飛しょう体1の先端に位置するレドーム4の表面に設けられたアブレーション材14は、飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11にさらされる。高温の気流11にさらされるアブレーション材14は最初ヒートシンクのように働くが、熱伝導率が低いため、表面温度が急激に上昇し、数百Kで吸熱反応による分解を始め多孔質の炭化層と熱分解ガス12となりながら徐々に侵食される。熱分解ガス12は熱流入と逆方向に炭化層を通ってアブレーション材14の表面にしみだしてゆく。しみだした熱分解ガス12はアブレーション材14の表面と高温の気流11との間を流れ、熱の流入に対する保護境界層13を形成する。形成された保護境界層13は高温の気流11よりも相対的に温度が低いため、レドーム4への熱流入量を抑制する。アブレーション材14はセラミックレドーム5のアンテナ2の送受信する電波ビームの境界3より外の部分、すなわち接着部7の近傍にもうけられているため、アブレーション材14により形成される保護境界層13はセラミックレドーム5の表面の接着部7の近傍より形成される。接着部7の温度上昇には、セラミックレドーム5の接着部7近傍からの熱伝導が大きな影響を与えるが、保護境界層13はセラミックレドーム5表面の接着部7の近傍から形成されているため、セラミックレドーム5の接着部7の近傍への熱の流入を抑制し、したがって接着部7への熱の伝導を抑制できるので、接着部7の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0019】
図2は接着部7の温度履歴を示す図であり、図2(a)はこの発明の接着部の温度履歴を示す図である。図において、15は従来の接着部7の温度履歴であり、16aはこの発明の実施の形態1の接着部7の温度履歴である。図に示すように、従来の接着部7の温度履歴15と比較して、この発明による接着部7の温度履歴16aの方が温度上昇を低く抑えられる。これはセラミックレドーム5への熱流入量が減少した結果であり、これにより、セラミックレドーム5とレドームリング6の接着部7の温度上昇にともなう強度低下を防止することができ、セラミックレドーム5の脱落やアンテナ2等の内部の電子機器の破壊を防止することができる。
【0020】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2を示す部分構成図であり、図3(a)は、飛しょう開始時のレドームの断面図、図3(b)は飛しょう時のレドームの断面図である。図において、1は所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体、2は飛しょう体1の内部に搭載した電子機器のひとつであり所定の目標までの距離および方位を計測するアンテナ、3はアンテナ2によって送受信される電波ビームの有効範囲の境界、4は飛しょう体1の先端に設けられ飛しょう体1のアンテナ2等の内部の電子機器を空力環境から保護するレドーム、5はレドーム4を構成し電波を透過するセラミックを材料としたセラミックレドーム、6はレドーム4を構成するセラミックレドーム5に接着されたCFRP等を材料とするレドームリング、7はセラミックレドーム5とレドームリング6を結合している接着部、9はアンテナ2等の電子機器を内蔵または支持しレドーム4と結合している飛しょう体1のシェル、14はレドーム4表面でかつ飛しょう体1のアンテナ2の送受信する電波ビームの境界3より外に設けられ、例えば耐熱性の有機もしくは無機の繊維を母材としフェノールあるいはエポキシのレジン等に含浸させた複合材よりなるアブレーション材、17は前記アブレーション材14と前記レドーム4間に設けられた間隙、18は間隙17の内部に設けられたアブレーション材14の熱分解する温度よりも低温で気化する例えば水や高級アルコール等の液体、11は飛しょう体1が高速で飛しょうする際に飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流、12は高温の気流11が前記アブレーション材14の表面を流れるために生じる熱分解ガス、13は熱分解ガス12が形成する保護境界層、19は前記液体18が高温の気流11および熱分解ガス12にさらされ気化したガス、20は前記液体18の気化したガス19が形成する熱分解ガス12よりも低温の保護境界層である。
【0021】
所定の目標に向かって高速で飛しょうを開始した飛しょう体1は、アンテナ2を所定の目標に向け、電波ビームを発信あるいは受信することで所定の目標までの距離および方位を計測しつつ飛しょうする。飛しょう体1の先頭のレドーム4の表面に設けられたアブレーション材14はアンテナ2の送受信する電波ビームの範囲外、すなわち境界3より外に設けられているため、電波の透過には影響を与えず、したがってアンテナ2による距離および方位計測性能には影響を与えない。
【0022】
飛しょう体1は高速で飛しょうすることにより空力加熱をうけ、高温の気流11にさらされながら飛しょうする。したがって、高速で飛しょうする飛しょう体1の先端に位置するレドーム4の表面に設けられたアブレーション材14は、飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11にさらされる。高温の気流11にさらされるアブレーション材14は最初ヒートシンクのように働くが、熱伝導率が低いため、表面温度が急激に上昇し、数百Kで吸熱反応による分解を始め多孔質の炭化層と熱分解ガス12となりながら徐々に侵食される。熱分解ガス12は熱流入と逆方向に炭化層を通ってアブレーション材14の表面にしみだしてゆく。しみだした熱分解ガス12はアブレーション材14の表面と高温の気流11との間を流れ、熱の流入に対する保護境界層13を形成する。形成された保護境界層13は高温の気流11よりも相対的に温度が低いため、レドーム4への熱の流入を抑制する。
【0023】
アブレーション材14の熱分解および侵食が進行すると、多孔質の炭化層中の熱分解ガス12の流出路がアブレーション材14とセラミックレドーム5間に設けられた間隙17の位置まで達し、間隙17内部の液体18は飛しょう体1の表面へとしみだすことができるようになる。飛しょう体1の表面へしみだした液体18は飛しょう体1の表面を流れながら熱分解ガス12および飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11から気化熱を奪って気化してガス19となり、熱分解ガス12の形成する保護境界層13よりも低温の保護境界層20を形成する。飛しょう体1は、アブレーション材14の形成する熱分解ガス12の形成する保護境界層13と、液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20という2重の断熱がなされることになり、この発明の実施の形態1のようにアブレーション材14単体で断熱する場合以上にレドーム4への熱流入量を下げることができる。
【0024】
アブレーション材14および液体18を内部にもつ間隙17はセラミックレドーム5のアンテナ2の送受信する電波ビームの境界3より外の部分、すなわち接着部7の近傍に設けられているため、アブレーション材14の熱分解ガス12の形成する保護境界層13および液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20はセラミックレドーム5の表面の接着部7の近傍より形成される。接着部7の温度上昇には、セラミックレドーム5の接着部7近傍からの熱伝導が大きな影響を与えるが、保護境界層13および保護境界層20はセラミックレドーム5表面の接着部7の近傍から形成されているため、セラミックレドーム5の接着部7の近傍への熱の流入を抑制し、したがって接着部7への熱の伝導を抑制できるので、接着部7の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0025】
図2は接着部7の温度履歴を示す図であり、図2(b)は、この発明の接着部の温度履歴を示す図である。図において、15は従来の接着部7の温度履歴であり、16bはこの発明の実施の形態2の接着部7の温度履歴である。図に示すように、従来の接着部7の温度履歴15と比較して、この発明による接着部7の温度履歴16bの方が温度上昇を低く抑えられる。また、飛しょう時間がある程度経過したところで再に接着層の温度上昇を抑えるため、実施の形態1より温度上昇の抑制効果が大きい。これはセラミックレドーム5への熱流入量が減少した結果であり、これにより、セラミックレドーム5とレドームリング6の接着部7の温度上昇にともなう強度低下をさらに防止することができ、セラミックレドーム5の脱落やアンテナ2等の内部の電子機器の破壊を防止することができる。
なお、液体18はゼリー状やゲル状の液体状物質でも良い。
【0026】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3を示す部分構成図であり、図4(a)は、飛しょう開始時のレドームの断面図、図4(b)は飛しょう時のレドームの断面図である。図において、1は所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体、2は飛しょう体1の内部に搭載した電子機器のひとつであり所定の目標までの距離および方位を計測するアンテナ、3はアンテナ2によって送受信される電波ビームの有効範囲の境界、4は飛しょう体1の先端に設けられ飛しょう体1のアンテナ2等の内部の電子機器を空力環境から保護するレドーム、5はレドーム4を構成する電波を透過するセラミックを材料としたセラミックレドーム、6はレドーム4を構成するセラミックレドーム5に接着されたCFRP等を材料とするレドームリング、7はセラミックレドーム5とレドームリング6を結合している接着部、9はアンテナ2等の電子機器を内蔵または支持しレドーム4と結合している飛しょう体1のシェル、14aはレドーム4表面でかつ飛しょう体1のアンテナ2の送受信する電波ビーム3の範囲外に2層に設けられた、例えば耐熱性の有機もしくは無機の繊維を母材としフェノールあるいはエポキシのレジン等に含浸させた複合材よりなるアブレーション材のうち外側に位置するアブレーション材上層、14bはレドーム4表面でかつ飛しょう体1のアンテナ2の送受信する電波ビーム3の範囲外に2層に設けられたアブレーション材のうち内側に位置するアブレーション材下層、17は前記アブレーション材上層14aとアブレーション材下層14bの間に設けられた間隙、18は間隙17の内部に設けられたアブレーション材上層14aおよびアブレーション材下層14bの熱分解する温度よりも低温で気化する液体、11は飛しょう体1が高速で飛しょうする際に飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流、12は高温の気流11が前記アブレーション材上層14aおよびアブレーション材下層14bの表面を流れるために生じる熱分解ガス、13は熱分解ガス12が形成する保護境界層、19は前記液体18が高温の気流11および熱分解ガス12にさらされ気化したガス、20は前記液体18の気化したガス19が形成する熱分解ガス12よりも低温の保護境界層である。
【0027】
所定の目標に向かって高速で飛しょうを開始した飛しょう体1は、アンテナ2を所定の目標に向け、電波ビームを発信あるいは受信することで所定の目標までの距離および方位を計測しつつ飛しょうする。飛しょう体1の先頭のレドーム4の表面に設けられたアブレーション材上層14aおよびアブレーション材下層14bはアンテナ2の送受信する電波ビームの範囲外、すなわち境界3より外に設けられているため、電波の透過には影響を与えず、したがってアンテナ2による距離および方位計測性能には影響を与えない。
【0028】
飛しょう体1は高速で飛しょうすることにより空力加熱をうけ、高温の気流11にさらされながら飛しょうする。したがって、高速で飛しょうする飛しょう体1の先端に位置するレドーム4の表面に設けられたアブレーション材上層14aは、飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11にさらされる。高温の気流11にさらされるアブレーション材上層14aは最初ヒートシンクのように働くが、熱伝導率が低いため、表面温度が急激に上昇し、数百Kで吸熱反応による分解を始め多孔質の炭化層と熱分解ガス12となりながら徐々に侵食される。熱分解ガス12は熱流入と逆方向に炭化層を通ってアブレーション材上層14aの表面にしみだしてゆく。しみだした熱分解ガス12はアブレーション材上層14aの表面と高温の気流11との間を流れ、熱の流入に対する保護境界層13を形成する。形成された保護境界層13は高温の気流11よりも相対的に温度が低いため、レドーム4への熱流入量を抑制する。
【0029】
アブレーション材上層14aの熱分解および侵食が進行すると、多孔質の炭化層中の熱分解ガス12の流出路がアブレーション材上層14aとアブレーション材下層14b間に設けられた間隙17の位置まで達し、間隙17内部の液体18は飛しょう体1の表面へとしみだすことができるようになる。飛しょう体1の表面へしみだした液体18は飛しょう体1の表面を流れながら熱分解ガス12および飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11から気化熱を奪って気化してガス19となり、熱分解ガス12の形成する保護境界層13よりも低温の保護境界層20を形成する。飛しょう体1は、アブレーション材上層14aの形成する熱分解ガス12の形成する保護境界層13と、液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20という2重の断熱がなされることになる。さらに、液体が全て気化した後も、アブレーション材下層14bが熱分解し生成される熱分解ガス12が保護境界層13を形成するので、この発明の実施の形態1のようにアブレーション材14単体で断熱する場合以上にレドーム4への熱の流入を下げることができる。
【0030】
アブレーション材上層14a、アブレーション材下層14bおよび液体18を内部にもつ間隙17はセラミックレドーム5のアンテナ2の送受信する電波ビームの境界3より外の部分、すなわち接着部7の近傍に設けられているため、アブレーション材上層14a、アブレーション材下層14bの熱分解ガス12の形成する保護境界層13および液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20はセラミックレドーム5の表面の接着部7の近傍より形成される。接着部7の温度上昇には、セラミックレドーム5の接着部7近傍からの熱伝導が大きな影響を与えるが、保護境界層13および保護境界層20はセラミックレドーム5表面の接着部7の近傍から形成されているため、セラミックレドーム5の接着部7の近傍への熱の流入を抑制し、したがって接着部7への熱の伝導を抑制できるので、接着部7の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0031】
図2は接着部7の温度履歴を示す図であり、図2(b)はこの発明における接着部の温度履歴を示す図である。図において、15は従来の接着部7の温度履歴であり、16bはこの発明における接着部7の温度履歴である。図に示すように、従来の接着部7の温度履歴15と比較して、この発明による接着部7の温度履歴16bの方が温度上昇を低く抑えられる。これはセラミックレドーム5への熱流入量が減少した結果であり、これにより、セラミックレドーム5とレドームリング6の接着部7の温度上昇にともなう強度低下を防止することができ、セラミックレドーム5の脱落やアンテナ2等の内部の電子機器の破壊を防止することができる。
【0032】
この発明の実施の形態3においては、アブレーション材上層14aおよびアブレーション材下層14b間に設けた間隙17内に液体18を設けているため、加工の困難なセラミックレドーム5に間隙17を設けるための加工が不要となり、セラミックレドーム5の加工が必要な実施の形態2と比較して、より安価なレドームを得ることが可能となる。
【0033】
ここではアブレーション材が2層の場合について説明したが、層の数は2層に限定されず、3層以上になった場合にも適用される。
【0034】
実施の形態4.
図5はこの発明の実施の形態4を示す部分構成図であり、図5(a)は、飛しょう開始時のレドームの断面図、図5(b)は飛しょう時のレドームの断面図である。図において、1は所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体、2は飛しょう体1の内部に搭載した電子機器のひとつであり所定の目標までの距離および方位を計測するアンテナ、3はアンテナ2によって送受信される電波ビームの有効範囲の境界、4は飛しょう体1の先端に設けられ飛しょう体1のアンテナ2等の内部の電子機器を空力環境から保護するレドーム、5はレドーム4を構成する電波を透過するセラミックを材料としたセラミックレドーム、6はレドーム4を構成するセラミックレドーム5に接着されたCFRP等を材料とするレドームリング、7はセラミックレドーム5とレドームリング6を結合している接着部、9はアンテナ2等の電子機器を内蔵または支持しレドーム4と結合している飛しょう体1のシェル、14はレドーム4の表面でかつ飛しょう体1のアンテナ2の送受信する電波ビーム3の範囲外に設けられた、例えば耐熱性の有機もしくは無機の繊維を母材としフェノールあるいはエポキシのレジン等に含浸させた複合材よりなるアブレーション材、21は前記アブレーション材14に設けられたとまり穴、22は前記とまり穴21に圧入されてとまり穴21をふさぐふた、18は前記アブレーション材14に設けられたとまり穴21とふた22の内部に設けられたアブレーション材14の熱分解する温度よりも低温で気化する液体、11は飛しょう体1が高速で飛しょうする際に飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流、12は高温の気流11が前記アブレーション材14の表面を流れるために生じる熱分解ガス、13は熱分解ガス12が形成する保護境界層、19は前記液体18が高温の気流11および熱分解ガス12にさらされ気化したガス、20は前記液体18の気化したガス19が形成する熱分解ガス12よりも低温の保護境界層である。
【0035】
所定の目標に向かって高速で飛しょうを開始した飛しょう体1は、アンテナ2を所定の目標に向け、電波ビームを発信あるいは受信することで所定の目標までの距離および方位を計測しつつ飛しょうする。飛しょう体1の先頭のレドーム4表面に設けられたアブレーション材14はアンテナ2の送受信する電波ビームの範囲外、すなわち境界3より外に設けられているため、電波の透過には影響を与えず、したがってアンテナ2による距離および方位計測性能には影響を与えない。
【0036】
飛しょう体1は高速で飛しょうすることにより空力加熱をうけ、高温の気流11にさらされながら飛しょうする。したがって、高速で飛しょうする飛しょう体1の先端に位置するレドーム4の表面に設けられたアブレーション材14は、飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11にさらされる。高温の気流11にさらされるアブレーション材14は最初ヒートシンクのように働くが、熱伝導率が低いため、表面温度が急激に上昇し、数百Kで吸熱反応による分解を始め多孔質の炭化層と熱分解ガス12となりながら徐々に侵食される。熱分解ガス12は熱流入と逆方向に炭化層を通ってアブレーション材14の表面にしみだしてゆく。しみだした熱分解ガス12はアブレーション材14の表面と高温の気流11との間を流れ、熱の流入に対する保護境界層13を形成する。形成された保護境界層13は高温の気流11よりも相対的に温度が低いため、レドーム4への熱の流入を抑制する。
【0037】
ふた22は、通常ではアブレーション材14に設けられたとまり穴21に圧入されて摩擦力によりアブレーション材14中に保持されるが、アブレーション材14の熱分解および侵食が進行すると、ふた22はアブレーション材14との摩擦を失ってアブレーション材14の侵食の早い進行方向前方より順次外れていく。ふた22が外れることにより、とまり穴21の内部の液体18は飛しょう体1の表面へ流出する。飛しょう体1の表面を流れる液体18は飛しょう体1の表面を流れながら熱分解ガス12および飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11から気化熱を奪って気化してガス19となり、熱分解ガス12の形成する保護境界層13よりも低温の保護境界層20を形成する。飛しょう体1は、アブレーション材14の形成する熱分解ガス12の形成する保護境界層13と、液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20という2重の断熱がなされることになり、この発明の実施の形態1のようにアブレーション材14単体で断熱する以上にレドーム4への熱流入量を下げることができる。
【0038】
アブレーション材14、液体18を内部に設けたとまり穴21およびとまり穴21をふさぐふた22はセラミックレドーム5のアンテナ2の送受信する電波ビームの境界3より外の部分、すなわち接着部7の近傍に設けられているため、アブレーション材14の熱分解ガス12の形成する保護境界層13および液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20はセラミックレドーム5の表面の接着部7の近傍より形成される。接着部7の温度上昇には、セラミックレドーム5の接着部7近傍からの熱伝導が大きな影響を与えるが、保護境界層13および保護境界層20はセラミックレドーム5表面の接着部7の近傍から形成されているため、セラミックレドーム5の接着部7の近傍への熱の流入を抑制し、したがって接着部7への熱の伝導を抑制できるので、接着部7の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0039】
図2は接着部7の温度履歴を示す図であり、図2(b)はこの発明における接着部の温度履歴を示す図である。図において、15は従来の接着部7の温度履歴であり、16bはこの発明における接着部7の温度履歴である。図に示すように、従来の接着部7の温度履歴15と比較して、この発明による接着部7の温度履歴16bの方が温度上昇を低く抑えられる。これはセラミックレドーム5への熱流入量が減少した結果であり、これにより、セラミックレドーム5とレドームリング6の接着部7の温度上昇にともなう強度低下を防止することができ、セラミックレドーム5の脱落やアンテナ2等の内部の電子機器の破壊を防止することができる。
【0040】
この発明の実施の形態4においては、ふた22のサイズを調整することにより液体18のしみだすタイミングすなわち低温の保護境界層20を形成するタイミングを調整することができるため、実施の形態2および3と比較して、より少ない液体18の量で同等の断熱効果を得ることが可能となり、レドーム4、ひいては飛しょう体1の軽量化が可能となる。また、ふた22の配置を調整することにより液体18のしみだす位置すなわち低温の保護境界層20を形成する位置を調整することができるため、実施の形態2および3と比較して、より少ない液体18の量で同等の断熱効果を得ることが可能となり、飛しょう体全体の軽量化が可能となる。
【0041】
実施の形態5.
図6はこの発明の実施の形態5を示す部分構成図であり、図6(a)は、飛しょう開始時のレドームの断面図、図6(b)は飛しょう時のレドームの断面図である。図において、1は所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体、2は飛しょう体1の内部に搭載した電子機器のひとつであり所定の目標までの距離および方位を計測するアンテナ、3はアンテナ2によって送受信される電波ビームの有効範囲の境界、4は飛しょう体1の先端に設けられ飛しょう体1のアンテナ2等の内部の電子機器を空力環境から保護するレドーム、5はレドーム4を構成する電波を透過するセラミックを材料としたセラミックレドーム、6はレドーム4を構成するセラミックレドーム5に接着されたCFRP等を材料とするレドームリング、7はセラミックレドーム5とレドームリング6を結合している接着部、9はアンテナ2等の電子機器を内蔵または支持しレドーム4と結合している飛しょう体1のシェル、14はレドーム4の表面でかつ飛しょう体1のアンテナ2の送受信する電波ビーム3の範囲外に設けられた、例えば耐熱性の有機もしくは無機の繊維を母材としフェノールあるいはエポキシのレジン等に含浸させた複合材よりなるアブレーション材、23は前記アブレーション材14の表面に設けられた噴射口、18は前記噴射口23から噴射されるアブレーション材14の熱分解する温度よりも低温で気化する液体、24は前記液体18を蓄えるためにレドーム4内部に設けられたタンク、25は前記液体18を前記タンク24から噴射口23方向へ移送するためにレドーム4内部に設けられたポンプ、11は飛しょう体1が高速で飛しょうする際に飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流、12は高温の気流11が前記アブレーション材14の表面を流れるために生じる熱分解ガス、13は熱分解ガス12が形成する保護境界層、19は前記液体18が高温の気流11および熱分解ガス12にさらされ気化したガス、20は前記液体18の気化したガス19が形成する熱分解ガス12よりも低温の保護境界層である。
【0042】
所定の目標に向かって高速で飛しょうを開始した飛しょう体1は、アンテナ2を所定の目標に向け、電波ビームを発信あるいは受信することで所定の目標までの距離および方位を計測しつつ飛しょうする。飛しょう体1の先頭のレドーム4の表面に設けられたアブレーション材14はアンテナ2の送受信する電波ビームの範囲外、すなわち境界3より外に設けられているため、電波の透過には影響を与えず、したがってアンテナ2による距離および方位計測性能には影響を与えない。
【0043】
飛しょう体1は高速で飛しょうすることにより空力加熱をうけ、高温の気流11にさらされながら飛しょうする。したがって、高速で飛しょうする飛しょう体1の先端に位置するレドーム4の表面に設けられたアブレーション材14は、飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11にさらされる。高温の気流11にさらされるアブレーション材14は最初ヒートシンクのように働くが、熱伝導率が低いため、表面温度が急激に上昇し、数百Kで吸熱反応による分解を始め多孔質の炭化層と熱分解ガス12となりながら徐々に侵食される。熱分解ガス12は熱流入と逆方向に炭化層を通ってアブレーション材14の表面にしみだしてゆく。しみだした熱分解ガス12はアブレーション材14の表面と高温の気流11との間を流れ、熱の流入に対する保護境界層13を形成する。形成された保護境界層13は高温の気流11よりも相対的に温度が低いため、レドーム4への熱の流入を抑制する。
【0044】
一方、飛しょう体1の飛しょう開始と同時に、ポンプ25が作動し、液体18はタンク24から噴射口23方向に移送される。移送された液体18は飛しょう体1表面を流れながら熱分解ガス12および飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11から気化熱を奪って気化してガス19となり、熱分解ガス12の形成する保護境界層13よりも低温の保護境界層20を形成する。飛しょう体1は、アブレーション材14の形成する熱分解ガス12の形成する保護境界層13と、液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20という2重の断熱がなされることになり、この発明の実施の形態1のようにアブレーション材14単体で断熱する以上にセラミックレドーム5への熱流入量を下げることができる。
【0045】
アブレーション材14および液体18を噴射する噴射口23はセラミックレドーム5のアンテナ2の送受信する電波ビーム範囲の境界3より外の部分、すなわち接着部7の近傍に設けられているため、アブレーション材14の熱分解ガス12の形成する保護境界層13および液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20はセラミックレドーム5の表面の接着部7の近傍より形成される。接着部7の温度上昇には、セラミックレドーム5の接着部7近傍からの熱伝導が大きな影響を与えるが、保護境界層13および保護境界層20はセラミックレドーム5表面の接着部7の近傍から形成されているため、セラミックレドーム5の接着部7の近傍への熱の流入を抑制し、したがって接着部7への熱の伝導を抑制できるので、接着部7の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0046】
図2は接着部7の温度履歴を示す図であり、図2(a)はこの発明における接着部の温度履歴を示す図である。図において、15は従来の接着部7の温度履歴であり、16aはこの発明における接着部7の温度履歴である。図に示すように、従来の接着部7の温度履歴15と比較して、この発明による接着部7の温度履歴16aの方が温度上昇を低く抑えられる。これはセラミックレドーム5への熱流入量が減少した結果であり、これにより、セラミックレドーム5とレドームリング6の接着部7の温度上昇にともなう強度低下を防止することができ、セラミックレドーム5の脱落やアンテナ2等の内部の電子機器の破壊を防止することができる。
【0047】
この発明の実施の形態5においては、液体18が気化して失われる分はタンク24からポンプ25を通じて供給されるため、飛しょう中を通じて低温の保護境界層20が安定して形成でき、実施の形態1,2,3,4よりも断熱効果の高いレドームを得ることが可能となる。
【0048】
実施の形態6.
図7はこの発明の実施の形態6を示す部分構成図であり、図7(a)は、飛しょう開始時のレドームの断面図、図7(b)は飛しょう時のレドームの断面図である。図において、1は所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体、2は飛しょう体1の内部に搭載した電子機器のひとつであり所定の目標までの距離および方位を計測するアンテナ、3はアンテナ2によって送受信される電波ビームの有効範囲の境界、4は飛しょう体1の先端に設けられ飛しょう体1のアンテナ2等の内部の電子機器を空力環境から保護するレドーム、5はレドーム4を構成する電波を透過するセラミックを材料としたセラミックレドーム、6はレドーム4を構成するセラミックレドーム5に接着されたCFRP等を材料とするレドームリング、7はセラミックレドーム5とレドームリング6を結合している接着部、9はアンテナ2等の電子機器を内蔵または支持しレドーム4と結合している飛しょう体1のシェル、14はレドーム4の表面でかつ飛しょう体1のアンテナ2の送受信する電波ビームの境界3より外に設けられた、例えば耐熱性の有機もしくは無機の繊維を母材としフェノールあるいはエポキシのレジン等に含浸させた複合材よりなるアブレーション材、23は前記アブレーション材14の内部に設けられた噴射口、18は前記噴射口23から噴射されるアブレーション材14の熱分解する温度よりも低温で気化する液体、14は前記液体18を蓄えるためにレドーム4の内部に設けられたタンク、25は前記液体18を前記タンク24から噴射口23方向に移送するためにレドーム4内部に設けられたポンプ、11は飛しょう体1が高速で飛しょうする際に飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流、12は高温の気流11が前記アブレーション材14の表面を流れるために生じる熱分解ガス、13は熱分解ガス12が形成する保護境界層、19は前記液体18が高温の気流11および熱分解ガス12にさらされ気化したガス、20は前記液体18の気化したガス19が形成する熱分解ガス12よりも低温の保護境界層である。
【0049】
所定の目標に向かって高速で飛しょうを開始した飛しょう体1は、アンテナ2を所定の目標に向け、電波ビームを発信あるいは受信することで所定の目標までの距離および方位を計測しつつ飛しょうする。飛しょう体1の先頭のレドーム4の表面に設けられたアブレーション材14はアンテナ2の送受信する電波ビームの範囲外、すなわち境界3より外に設けられているため、電波の透過には影響を与えず、したがってアンテナ2による距離および方位計測性能には影響を与えない。
【0050】
飛しょう体1の飛しょう開始と同時に、ポンプ25が作動し、液体18はタンク24から噴射口23方向に移送されるが、発射直後の噴射口23はアブレーション材14により密封されているため漏れることはなく、液体18の移動はそこで停止する。
【0051】
飛しょう体1は高速で飛しょうすることにより空力加熱をうけ、高温の気流11にさらされながら飛しょうする。したがって、高速で飛しょうする飛しょう体1の先端に位置するレドーム4の表面に設けられたアブレーション材14は、飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11にさらされる。高温の気流11にさらされるアブレーション材14は最初ヒートシンクのように働くが、熱伝導率が低いため、表面温度が急激に上昇し、数百Kで吸熱反応による分解を始め多孔質の炭化層と熱分解ガス12となりながら徐々に侵食される。熱分解ガス12は熱流入と逆方向に炭化層を通ってアブレーション材14の表面にしみだしてゆく。しみだした熱分解ガス12はアブレーション材14の表面と高温の気流11との間を流れ、熱の流入に対する保護境界層13を形成する。形成された保護境界層13は高温の気流11よりも相対的に温度が低いため、レドーム4への熱の流入を抑制する。
【0052】
アブレーション材14の熱分解および侵食が進行すると、多孔質の炭化層中の熱分解ガス12の流出路がアブレーション材14内部に設けられた噴射口23の位置まで達し、飛しょう開始直後にアブレーション材14で密封されているために流出できなかった液体18は、噴射口23を通じて、飛しょう体1表面へと流れ出すことができるようになる。飛しょう体1表面へ流れだした液体18は飛しょう体1表面を流れながら熱分解ガス12および飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11から気化熱を奪って気化してガス19となり、熱分解ガス12の形成する保護境界層13よりも低温の保護境界層20を形成する。飛しょう体1は、アブレーション材14の形成する熱分解ガス12の形成する保護境界層13と、液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20という2重の断熱がなされることになり、この発明の実施の形態1のようにアブレーション材14単体で断熱する以上にセラミックレドーム5への熱流入量を下げることができる。
【0053】
アブレーション材14および液体18を噴射する噴射口23はセラミックレドーム5のアンテナ2の送受信する電波ビームの境界3より外の部分、すなわち接着部7の近傍に設けられているため、アブレーション材14の熱分解ガス12の形成する保護境界層13および液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20はセラミックレドーム5の表面の接着部7の近傍より形成される。接着部7の温度上昇には、セラミックレドーム5の接着部7近傍からの熱伝導が大きな影響を与えるが、保護境界層13および保護境界層20はセラミックレドーム5表面の接着部7の近傍から形成されているため、セラミックレドーム5の接着部7の近傍への熱の流入を抑制し、したがって接着部7への熱の伝導を抑制できるので、接着部7の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0054】
図2は接着部7の温度履歴を示す図であり、図2(b)はこの発明における接着部の温度履歴を示す図である。図において、15は従来の接着部7の温度履歴であり、16bはこの発明における接着部7の温度履歴である。図に示すように、従来の接着部7の温度履歴15と比較して、この発明による接着部7の温度履歴16bの方が温度上昇を低く抑えられる。これはセラミックレドーム5への熱流入量が減少した結果であり、これにより、セラミックレドーム5とレドームリング6の接着部7の温度上昇にともなう強度低下を防止することができ、セラミックレドーム5の脱落やアンテナ2等の内部の電子機器の破壊を防止することができる。
【0055】
この発明の実施の形態6においては、液体18が気化して失われる分はタンク24からポンプ25を通じて供給されるため、飛しょう中を通じて低温の保護境界層20が安定して形成でき、実施の形態1,2,3,4よりも断熱効果の高いレドームを得ることが可能となる。また、噴射口23の深さを調整することにより液体18のしみだすタイミングすなわち低温の保護境界層20を形成するタイミングを調整することができるため、実施の形態5と比較して、少ない液体18の量で同等の断熱効果を得ることが可能となり、飛しょう体全体の軽量化が可能となる。
【0056】
実施の形態7.
図8はこの発明の実施の形態7を示す部分構成図であり、図8(a)は、飛しょう開始時のレドームの断面図、図8(b)は飛しょう時のレドームの断面図である。図において、1は所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体、2は飛しょう体1の内部に搭載した電子機器のひとつであり所定の目標までの距離および方位を計測するアンテナ、3はアンテナ2によって送受信される電波ビームの有効範囲の境界、4は飛しょう体1の先端に設けられ飛しょう体1のアンテナ2等の内部の電子機器を空力環境から保護するレドーム、5はレドーム4を構成する電波を透過するセラミックを材料としたセラミックレドーム、6はレドーム4を構成するセラミックレドーム5に接着されたCFRP等を材料とするレドームリング、7はセラミックレドーム5とレドームリング6を結合している接着部、9はアンテナ2等の電子機器を内蔵または支持しレドーム4と結合している飛しょう体1のシェル、14はレドーム4の表面でかつ飛しょう体1のアンテナ2の送受信する電波ビームの境界3より外に設けられた、例えば耐熱性の有機もしくは無機の繊維を母材としフェノールあるいはエポキシのレジン等に含浸させた複合材よりなるアブレーション材、21は前記アブレーション材14に設けられたとまり穴、22は前記とまり穴21をふさぐふた、23は前記とまり穴21と前記ふた22の内部に設けられた噴射口、18は前記噴射口23から噴射されるアブレーション材14の熱分解する温度よりも低温で気化する液体、24は前記液体18を蓄えるためにレドーム4内部に設けられたタンク、25は前記液体18を前記タンク24から噴射口23方向へ移送するためにレドーム4内部に設けられたポンプ、11は飛しょう体1が高速で飛しょうする際に飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流、12は高温の気流11が前記アブレーション材14の表面を流れるために生じる熱分解ガス、13は熱分解ガス12が形成する保護境界層、19は前記液体18が高温の気流11および熱分解ガス12にさらされ気化したガス、20は前記液体18の気化したガス19が形成する熱分解ガス12よりも低温の保護境界層である。
【0057】
所定の目標に向かって高速で飛しょうを開始した飛しょう体1は、アンテナ2を所定の目標に向け、電波ビームを発信あるいは受信することで所定の目標までの距離および方位を計測しつつ飛しょうする。飛しょう体1の先頭のレドーム4の表面に設けられたアブレーション材14はアンテナ2の送受信する電波ビームの範囲外、すなわち境界3より外に設けられているため、電波の透過には影響を与えず、したがってアンテナ2による距離および方位計測性能には影響を与えない。
【0058】
飛しょう体1の飛しょう開始と同時に、ポンプ25が作動し、液体18はタンク24から噴射口23方向に移送されるが、発射直後の噴射口23はとまり穴21内部にあり、とまり穴21はふた22により密封されているため漏れることはなく、液体18の移動はそこで停止する。
【0059】
飛しょう体1は高速で飛しょうすることにより空力加熱をうけ、高温の気流11にさらされながら飛しょうする。したがって、高速で飛しょうする飛しょう体1の先端に位置するレドーム4の表面に設けられたアブレーション材14は、飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11にさらされる。高温の気流11にさらされるアブレーション材14は最初ヒートシンクのように働くが、熱伝導率が低いため、表面温度が急激に上昇し、数百Kで吸熱反応による分解を始め多孔質の炭化層と熱分解ガス12となりながら徐々に侵食される。熱分解ガス12は熱流入と逆方向に炭化層を通ってアブレーション材14の表面にしみだしてゆく。しみだした熱分解ガス12はアブレーション材14の表面と高温の気流11との間を流れ、熱の流入に対する保護境界層13を形成する。形成された保護境界層13は高温の気流11よりも相対的に温度が低いため、レドーム4への熱の流入を抑制する。
【0060】
アブレーション材14の熱分解および侵食が進行すると、アブレーション材14に設けられたとまり穴21をふさぐふた22はアブレーション材14との摩擦を失ってアブレーション材14の侵食の早い進行方向前方より順次外れていく。ふた22が外れることにより、飛しょう開始直後は噴射口23をふさいでいたふた22で密封されているために流出できなかった液体18は、噴射口23を通じて、飛しょう体1表面へと流れだすことができるようになる。飛しょう体1表面へ流れだした液体18は熱分解ガス12および飛しょう体1の表面に沿って流れる高温の気流11から気化熱を奪って気化してガス19となり、熱分解ガス12の形成する保護境界層13よりも低温の保護境界層20を形成する。飛しょう体1は、アブレーション材14の形成する熱分解ガス12の形成する保護境界層13と、液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20という2重の断熱がなされることになり、この発明の実施の形態1のようにアブレーション材14単体で断熱する以上にセラミックレドーム5への熱流入量を下げることができる。
【0061】
アブレーション材14、液体18を噴射する噴射口23を内部に設けたとまり穴21およびとまり穴21をふさぐふた22はセラミックレドーム5のアンテナ2の送受信する電波ビームの境界3より外の部分、すなわち接着部7の近傍に設けられているため、アブレーション材14の熱分解ガス12の形成する保護境界層13および液体18の気化したガス19の形成する低温の保護境界層20はセラミックレドーム5の表面の接着部7の近傍より形成される。接着部7の温度上昇には、セラミックレドーム5の接着部7近傍からの熱伝導が大きな影響を与えるが、保護境界層13および保護境界層20はセラミックレドーム5表面の接着部7の近傍から形成されているため、セラミックレドーム5の接着部7の近傍への熱の流入を抑制し、したがって接着部7への熱の伝導を抑制できるので、接着部7の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0062】
図2は接着部7の温度履歴を示す図であり、図2(b)はこの発明における接着部の温度履歴を示す図である。図において、15は従来の接着部7の温度履歴であり、16bはこの発明における接着部7の温度履歴である。図に示すように、従来の接着部7の温度履歴15と比較して、この発明による接着部7の温度履歴16bの方が温度上昇を低く抑えられる。これはセラミックレドーム5への熱流入量が減少した結果であり、これにより、セラミックレドーム5とレドームリング6の接着部7の温度上昇にともなう強度低下を防止することができ、セラミックレドーム5の脱落やアンテナ2等の内部の電子機器の破壊を防止することができる。
【0063】
この発明の実施の形態7においては、液体18が気化して失われる分はタンク24からポンプ25を通じて供給されるため、飛しょう中を通じて低温の保護境界層20が安定して形成でき、実施の形態1,2,3,4よりも断熱効果の高いレドームを得ることが可能となる。また、ふた22のサイズを調整することにより液体18のしみだすタイミングすなわち低温の保護境界層20を形成するタイミングを調整することができるため、実施の形態5と比較して、少ない液体18の量で同等の断熱効果を得ることが可能となり、飛しょう体全体の軽量化が可能となる。また、ふた22の配置を調整することにより液体18のしみだす位置すなわち低温の保護境界層20を形成する位置を調整することができるため、実施の形態5および実施の形態6と比較して、より少ない液体18の量で同等の断熱効果を得ることが可能となり、飛しょう体全体の軽量化が可能となる。
【0064】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成されているため、以下に記載されるような効果を奏する。
【0065】
第1から3の発明によれば、飛しょう体の内部の電子機器を保護するレドームにおいて、アンテナによる距離および方位計測性能には影響を与えずに断熱効果を向上させることができる。その結果、空力加熱によってレドームを構成するセラミックレドームとレドームリングの接着部の温度が上昇し、接着部の温度上昇にともなう接着強度の低下からセラミックレドームが脱落してしまい、所定の目標への飛しょうが不可能になることを防止することができる。
【0066】
第4の発明によれば、飛しょう体の内部の電子機器を保護するレドームにおいて、アンテナによる距離および方位計測性能には影響を与えずに断熱効果を向上させることができる。また、ふたを飛しょう体進行方向前方より順次外れていくように調整することにより、飛しょう体の飛しょう時の間液体が順次供給されるため、安定した断熱効果を得ることができる。その結果、空力加熱によってレドームを構成するセラミックレドームとレドームリングの接着部の温度が上昇し、接着部の温度上昇にともなう接着強度の低下からセラミックレドームが脱落してしまい、所定の目標への飛しょうが不可能になることを防止することができる。
【0067】
第5の発明によれば、飛しょう体の内部の電子機器を保護するレドームにおいて、アンテナによる距離および方位計測性能には影響を与えずに断熱効果を向上させることができる。また、前記液体を前記タンクから前記ポンプを通じて供給するため、低温の保護境界層を長時間形成することが可能となる。断熱効果が長時間保持されるため、飛しょう体の飛しょう時間が延長された場合も飛しょう時を通じた断熱が可能となる。その結果、空力加熱によってレドームを構成するセラミックレドームとレドームリングの接着部の温度が上昇し、接着部の温度上昇にともなう接着強度の低下からセラミックレドームが脱落してしまい、所定の目標への飛しょうが不可能になることを防止することができる。
【0068】
第6の発明によれば、飛しょう体の内部の電子機器を保護するレドームにおいて、アンテナによる距離および方位計測性能には影響を与えずに断熱効果を向上させることができる。また、前記液体を前記タンクから前記ポンプを通じて供給するため、低温の保護境界層を長時間形成することが可能となる。断熱効果が長時間保持されるため、飛しょう体の飛しょう時間が延長された場合も飛しょう時を通じた断熱が可能となる。その結果、空力加熱によってレドームを構成するセラミックレドームとレドームリングの接着部の温度が上昇し、接着部の温度上昇にともなう接着強度の低下からセラミックレドームが脱落してしまい、所定の目標への飛しょうが不可能になることを防止することができる。また、噴射口の深さを調整することにより液体のしみだすタイミングすなわち低温の保護境界層を形成するタイミングを調整することができるため、より少ない液体の量で十分な断熱効果を得ることが可能となり、飛しょう体全体の軽量化が可能となる。
【0069】
第7の発明によれば、飛しょう体の内部の電子機器を保護するレドームにおいて、アンテナによる距離および方位計測性能には影響を与えずに断熱効果を向上させることができる。また、前記液体を前記タンクから前記ポンプを通じて供給するため、低温の保護境界層を長時間形成することが可能となる。断熱効果が長時間保持されるため、飛しょう体の飛しょう時間が延長された場合も飛しょう時を通じた断熱が可能となる。その結果、空力加熱によってレドームを構成するセラミックレドームとレドームリングの接着部の温度が上昇し、接着部の温度上昇にともなう接着強度の低下からセラミックレドームが脱落してしまい、所定の目標への飛しょうが不可能になることを防止することができる。また、ふたのサイズを調整することにより液体のしみだすタイミングすなわち低温の保護境界層を形成するタイミングを調整することができるため、より少ない液体の量で十分な断熱効果を得ることが可能となり、飛しょう体全体の軽量化が可能となる。また、ふたの配置を調整することにより液体のしみだす位置すなわち低温の保護境界層を形成する位置を調整することができるため、より少ない液体の量で同等の断熱効果を得ることが可能となり、飛しょう体全体の軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1の部分構成図である。
【図2】 接着部の温度履歴を示す図である。
【図3】 この発明の実施の形態2の部分構成図である。
【図4】 この発明の実施の形態3の部分構成図である。
【図5】 この発明の実施の形態4の部分構成図である。
【図6】 この発明の実施の形態5の部分構成図である。
【図7】 この発明の実施の形態6の部分構成図である。
【図8】 この発明の実施の形態7の部分構成図である。
【図9】 従来の飛しょう体用レドームを説明する図である。
【図10】 接着部の接着強度と温度の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 飛しょう体、2 アンテナ、3 境界、4 レドーム、5 セラミックレドーム、6 レドームリング、7 接着部、8 アブレーション材、9 シェル、10 推進装置、11 気流、12 熱分解ガス、13 保護境界層、14 アブレーション材、14a アブレーション材上層、14b アブレーション材下層、15 温度履歴、16a 温度履歴、16b 温度履歴、17 間隙、18 液体、19 ガス、20 保護境界層、21 とまり穴、22 ふた、23噴射口、24 タンク、25 ポンプ。
Claims (3)
- 所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体に設けられ、内部に設置されたアンテナの送信もしくは受信電波ビームを透過する飛しょう体用レドームにおいて、前記レドーム表面における前記電波ビームの範囲外に設けられ、前記飛しょう体が飛しょうする際に自身が熱分解し保護境界層を形成するアブレーション材と、前記アブレーション材と前記レドーム表面との間に設けられた間隙と、前記間隙内部に封入された液状の物質とを備え、
前記アブレーション材の熱分解による侵食が進行すると、前記空隙が表面に露出し、前記空隙内部に封入された液状の物質が飛しょう体表面にしみだして気化し、前記アブレーション材の分解により形成される保護境界層よりも低温の保護境界層を形成することを特徴とする飛しょう体用レドーム。 - 所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体に設けられ、内部に設置されたアンテナの送信もしくは受信電波ビームを透過する飛しょう体用レドームにおいて、前記レドーム表面における前記電波ビームの範囲外に多層重ねて設けられ、前記飛しょう体が飛しょうする際に自身が熱分解し保護境界層を形成するアブレーション材と、前記多層のアブレーション材の間に設けられた間隙と、前記間隙内部に封入された液状の物質とを備え、
前記アブレーション材の熱分解による侵食が進行すると、前記空隙が表面に露出し、前記空隙内部に封入された液状の物質が飛しょう体表面にしみだして気化し、前記アブレーション材の分解により形成される保護境界層よりも低温の保護境界層を形成することを特徴とする飛しょう体用レドーム。 - 所定の目標に向けて飛しょうする飛しょう体に設けられ、内部に設置されたアンテナの送信もしくは受信電波ビームを透過する飛しょう体用レドームにおいて、前記レドーム表面における前記電波ビームの範囲外に設けられ、前記飛しょう体が飛しょうする際に自身が熱分解し保護境界層を形成するアブレーション材と、前記アブレーション材に設けたとまり穴と、前記とまり穴に嵌合してそのとまり穴をふさぐふたと、前記とまり穴と前記ふたの内部に封入される液状の物質とを備え、
前記アブレーション材の熱分解による侵食が進行すると、前記ふたが剥離し、前記ふたの内部に封入された液状の物質が飛しょう体表面に流出して気化し、前記アブレーション材の分解により形成される保護境界層よりも低温の保護境界層を形成することを特徴とする飛しょう体用レドーム。
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