JP3970028B2 - 弾薬ケース - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分離装填弾の発射装薬、固定弾薬あるいは半固定弾薬、弾丸、ロケット弾等の弾薬の「弾薬ケース」に関するものである。例えば、電球は、薄い紙のダンボールでできた「スリーブ」に入れて市販されているが、スリーブとは、「さや」のように内容物を保護する管状体である。本発明は、弾薬を貯蔵、運搬、取り扱い時における外部衝撃から保護するためのスリーブを金属製ケースに巻いた弾薬ケースに関するものである。本発明は、特に突起物等に対して衝突した場合に受ける局所衝撃から弾薬を保護するための弾薬ケースに関する。本発明の弾薬ケースは、落下衝撃から弾薬を保護するバンパーを付属して有するものであってよい。
【0002】
分離装填弾とは、薬きょうがなく、重量・容積が大きく、信管付弾丸や発射装薬、火管が別々に火砲に装填される弾薬のことである。固定弾薬とは、弾丸と薬きょうが一体として固定されているもののことである。発射装薬とは、発射薬と点火薬を組み合わせて、実用容器に組み込んだもののことである。
【0003】
【従来の技術】
固定弾薬、分離装填弾の発射装薬等の弾薬を貯蔵し、運搬し、取り扱う容器として、円筒状の金属あるいはファイバーを基材とするケースが用いられている。これらのケースは取り扱い時の落下等の衝撃に対しては内部の弾薬を保護するのに十分な強度を有しているが、突起物等に対して衝突した場合に受ける局所衝撃に対しては強度が十分でなく、内部の弾薬が取り出せなくなったり、部分的に弾薬の一部を損傷したりする恐れがあった。また、円筒状である為、転がりを防止できず、また、複数のケースを積載することがしばしば困難であった。
【0004】
固定弾薬、ロケット、弾丸等を貯蔵、運搬、取り扱うケースの他の例として、以下のものも知られている。固定弾薬、あるいは弾丸用のケースの例として、米国特許第4733773号、ドイツ国特許第19954651号及びドイツ国特許第19514988号には、ケース内側に固定装弾、あるいは弾丸を固定する為のサポート、あるいはピンを設ける構造が開示されている。この構造は、ケースが落下した場合においても、様々な形状の固定弾薬、あるいは弾丸を固定でき、ケース内部の固定弾薬、あるいは弾丸の移動に伴う損傷を防止するのには有効であるが、ケース取り扱い時の突起物等との接触による内部の固定弾薬、あるいは弾丸の損傷を必ずしも防止できなかった。
【0005】
更に他の例として、米国特許第4733773号及び米国特許第3939967号には、ケース側面の強度を強めるための補強用の骨が入った構造のケースが示されている。更に他の例として、米国特許第4733773号及び米国特許第6290087号には、ケース側面に、他のケースと積載可能な部品を有するケースが開示されている。これらは、落下等の強い衝撃に対しては十分な強度を持つと考えられるが、それでもケース取り扱い時の突起物等との接触によって受ける内部の固定弾薬、あるいは弾丸の損傷を防止できない恐れがある。また、取り扱い時に考えられる衝撃に対し、内部の弾薬を保護する機能を持ちつつ、弾薬と弾薬用ケースを含めたトータルの重量を抑える為の適正な弾薬用ケースの材質等に関しての記載は一切開示されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、貯蔵、運搬、取扱時の弾薬の安全性を確保し、かつ、トータル重量を抑え、複数積載の容易な弾薬ケースを提供することを目的とする。
【0007】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、弾薬ケース等について鋭意研究した結果、弾薬または弾薬ケースを局所衝撃から保護するために、JISデュロメータ硬さ試験タイプAの硬度30〜80のスリーブを用いることによって前記目的が達成されることを見出して本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、以下の態様を有するものである。
(1)弾薬が装填される金属製ケースと装填された弾薬を局所衝撃から保護するためのスリーブを弾薬が装填される金属製ケースに巻いてなり、前記スリーブが、JISデュロメータ硬さ試験タイプAの硬度30〜80、かさ密度が0.03〜2.0g/cm3 の材料からなることを特徴とする弾薬ケース。
(2)内容物を落下衝撃から保護するバンパーを付属して有し、前記バンパーとしてJISビッカ−ス硬度30以上の材料を用いたことを特徴とする(1)の弾薬ケース。
(3)バンパー同士を接合する面に一組以上の凹凸部があり、複数の弾薬ケースを上下方向及び横方向に接合し得るように構成したことを特徴とする(2)の弾薬ケース。
【0008】
(4)スリーブ及び/又はバンパーが金属製ケースに対して着脱自在である(1)〜(3)のいずれかの弾薬ケース。
(5)スリーブ及び/又はバンパーが長手方向の正中断面によって縦割り分離と嵌合が自在である(1)〜(4)のいずれかの弾薬ケース。
【0009】
本願発明の態様について、更に詳細に説明する。スリーブの硬度は、JISデュロメータ硬さ試験タイプAの硬度35〜65であることがより好ましい。また、スリーブの密度は、0.04〜1.6g/cm3 であることがより好ましい。スリーブの具体的な材料の例としては、低発泡スポンジ、NBRゴム、発泡ポリプロピレン、天然ゴム、シリコンゴムスポンジ、ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
【0010】
スリーブの形状は、円筒状であってもよいし、多角形筒状でもよい。スリーブに付属して用いられ、内容物を落下等の衝撃から保護するバンパーの具体的な材料としては、冷間圧延鋼板、ポリプロピレン、ガラス繊維強化ポリプロピレン、ポリスチレン、ステンレス鋼、一般構造用圧延鋼材、機械構造用炭素鋼、アルミニウムまたはその合金、チタンまたはその合金、銅またはその合金等が挙げられる。
【0011】
バンパーの材料のJISビッカ−ス硬度は45以上がより好ましく、60以上が更に好ましい。ポリマーを基材とする材料は軽量である点で好ましい。また、金属材料は硬度を確保する上で好ましい。このバンパーの端部の形状は、金属製ケースまたはスリーブの長軸に垂直な横断面の形状が三角以上の多角形状のものから選定される。部分的に丸い形状になっていてもよい。
【0012】
スリーブが内容物を外部から視認するための手段を有し、その手段として窓を設ける場合、窓のトータル面積は全体の外側表面積に対して0.5〜15%の範囲が好ましい。バンパーの外側表面積を除いたのスリーブの外側表面積は、バンパーの外側表面積を合わせた全体の外側表面積の80〜90%であることがより好ましい。スリーブとバンパーの一方又は両方は、長手方向の正中断面によって縦割りに分離したり相互に嵌め合わせたりできるように設計してよい。この場合には、特に比較的硬質の材料からなるバンパーのみに嵌合の機能をもたせるようにしてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれらの具体例によって技術的範囲を何ら限定されるものではない。図1は、本発明の前記(1)の態様の実施の形態の例である弾薬ケースの長手方向の正中断面図である。図2は、図1の弾薬ケースの上面図である。図1において、弾薬ケースは、金属製ケース1(符号1は図示せず)を有している。弾薬ケースは、ケース全体が落下した場合等の衝撃から弾薬を保護する部分Aと、ケースが突起物等と接触した場合に受ける局所的な衝撃から弾薬を保護する部分Bを有している。また、部分Bは、前記(1)の態様の、弾薬または弾薬ケースを局所衝撃から保護するためのバンパーを除いた部分のスリーブを有している。
【0014】
部分Aは、長手方向の両端部3、4とその両端部をつなぐ骨部から構成されている。一端または両端部は、弾薬を出し入れする為、開閉可能な蓋を有する。弾薬ケースが長い場合に、中央部等に内部突部を設けることは落下等の大きな衝撃に対して弾薬を保護する上で好ましい。部分Aの一部には、複数の弾薬ケースを直列に接合するかみ合わせ手段を有している。
【0015】
また、部分Aの一部には、複数の弾薬ケースを並列に接合するかみ合わせ手段を有している。このかみ合わせ手段は、複数の弾薬ケースを並列にかみ合わせて置いたとき相互に適合して固定されるものが良く、図3は、複数のケースを並列に置いて積載したときの接合部のかみ合わせの例を図示したものである。図3では、一方の弾薬ケースの凸部が他方の弾薬ケースの凹部とかみ合う構成となっている。このかみ合わせの凹凸部は、互いに接合する面に1組ずつあってもよく、複数組あってもよい。他の形態としては、それぞれの接合部どうしをボルトや留め具で固定してもよい。弾薬ケースの内側には、用いる弾薬の形状に合わせて、固定用サポート、あるいはクッション材等を入れても良い。
【0016】
図4は、本発明の前記(2)の態様の実施の形態の例であり、従来の金属製弾薬ケース(図6)から取り外したスリーブの例を示す長手方向の正中断面図である。図5は、図4のスリーブの上面図である。ここで、図6は、金属製弾薬ケースの例を示す外観図である。図4において、部分Aは、両端部3、4を構成している。両端部3、4は前記バンパーを構成している。両端部3、4の横断面の最大径は、部分Bの最大径より長くしてある。部分Bには、内容物を外部から視認するための手段として窓2を設けてある。窓は1つでも良いし、複数あっても良い。
【0017】
本発明の弾薬ケースはスリーブを用いることで、トータル重量を抑え、弾薬の貯蔵、運搬、取り扱い時の安全性を確保し、弾薬用ケースとして複数を積載することが容易となる。また、本発明の弾薬ケースを用いることで、従来から弾薬を運搬する際に使用されている弾薬ケースの貯蔵、運搬、取り扱い安全性を向上させ、複数のケースを積載することが容易となる。
【0018】
【実施例1】
材質として、冷間圧延鋼板の直径156mm、長さ1126mm、厚さ1.2mm、前記ビッカ−ス硬度95の金属製ケースに、スリーブとして厚さ15mm、前記デュロメータ硬度33、かさ密度0.54g/cm3 の低発泡ポリマースポンジシートを巻いた。衝突器として材質SS400、高さ50mm、長さ300mmの角度90度のアングル材1個を用いた。
【0019】
スリーブを巻いた金属製ケースに直径155mm、高さ180mmの分離型装弾用のダミー発射装薬(重量を実際の装薬に合わせたもの)を6個装填し、総重量が27kgになるように調整した。そのケースを用いて落下位置を低い位置からだんだん高くしていき、落下させた。その際、金属製ケースのスリーブの部位に衝突器が当たるように自然落下させた。このときに落下高さによってどれだけ金属製ケースが変形したか、また、ダミー発射装薬がケースから取り出せるかどうかを確認した。その結果を表1に示す。表1は、落下高さと金属ケースからのダミー発射装薬取り出しの可否の関係を示す表である。
【0020】
【実施例2】
実施例1と同様の条件で、ただし、金属製ケースにスリーブとして、厚さ15mm、前記デュロメータ硬度69、密度1.56g/mm3 のNBRゴムシートを巻いたものを使用し、実施例1と同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0021】
【実施例3】
実施例1と同様の条件で、ただし、金属製ケースにスリーブとして、厚さ17mm、前記デュロメータ硬度59、密度0.04g/mm3 の20倍発泡ポリプロピレンを巻いたものを使用し、実施例1と同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0022】
【実施例4】
前述した部分Aのバンパーの材質が冷間圧延鋼板であり、直径が156mm、長さ1100mm、厚さ1.2mm、前記ビッカ−ス硬度95の両端に落下の衝撃から弾薬を保護するための部分を有する円柱に、スリーブとして厚さ15mm、前記デュロメータ硬度33、密度0.54g/cm3 の低発泡ポリマースポンジシートを用いた。弾薬ケースを試験サンプルとして用いた以外は実施例1と同じ方法で試験した。結果を表1に示す。
【0023】
【比較例1】
スリーブを用いないで、金属製ケースのみで、実施例1と同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0024】
【比較例2】
金属製ケースにスリーブとして、厚さ15mm、前記デュロメータ硬度85、密度1.37g/cm3 の塩化ビニルを用い、実施例1と同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0025】
【比較例3】
金属製ケースにスリーブとして、厚さ17mm、前記デュロメータ硬度37、密度0.02g/cm3 の45倍発泡ポリプロピレンを用い、実施例1と同様に試験を実施した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003970028
【0027】
表1において、ダミー発射装薬が金属製ケースから容易に取り出せた場合の金属製ケースの変形深さは5.0mm未満であり、ダミー発射装薬が金属製ケースから取り出せなかった場合の金属製ケースの変形深さは5.0mm以上であった。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明では次の効果を有する。
(1)ケース取り扱い時に突起物等との接触した場合に受ける局所衝撃に対して内部の弾薬を保護することが可能である。
(2)弾薬ケースを積み重ねたり束ねたりすることが容易である。
(3)ケースが適性な材質、厚みで構成されているため、弾薬と弾薬ケースのトータル重量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の前記(1)の態様の実施の形態の例である弾薬ケースの長手方向の正中断面図である。
【図2】 図1の弾薬ケースの上面図である。
【図3】 図1の弾薬用ケースを複数並列に置いて積載したときの接合部のかみ合わせの例を図示したものである。
【図4】 本発明の前記(2)の態様の実施の形態の例であり、従来の金属製弾薬ケースに装着するための本発明のスリーブの例を示す長手方向の正中断面図である。
【図5】 図4のスリーブの上面図である。
【図6】 金属製ケースの例を示す外観図である。
【符号の説明】
A 部分A
B 部分B
2 窓
3 部分Aの端部
4 部分Aの端部

Claims (5)

  1. 弾薬が装填される金属製ケースと装填された弾薬を局所衝撃から保護するためのスリーブを弾薬が装填される金属製ケースに巻いてなり、前記スリーブが、JISデュロメータ硬さ試験タイプAの硬度30〜80、かさ密度が0.03〜2.0g/cm3 の材料からなることを特徴とする弾薬ケース。
  2. 内容物を落下衝撃から保護するバンパーを付属して有し、前記バンパーとしてJISビッカ−ス硬度30以上の材料を用いたことを特徴とする請求項1記載の弾薬ケース。
  3. バンパー同士を接合する面に一組以上の凹凸部があり、複数の弾薬ケースを上下方向及び横方向に接合し得るように構成したことを特徴とする請求項2記載の弾薬ケース。
  4. スリーブ及び/又はバンパーが金属製ケースに対して着脱自在である請求項1〜3のいずれかに記載の弾薬ケース。
  5. スリーブ及び/又はバンパーが長手方向の正中断面によって縦割り分離と嵌合が自在である請求項1〜4のいずれかに記載の弾薬ケース。
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