JP3969858B2 - 微細加工装置および微細加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロレンズ,マイクロプリズムなどの基板表面に形成される微細構造を作製する微細加工装置および微細加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体プロセス技術を応用したマイクロ加工技術が急速に進展している。この技術を用いて、従来の研磨加工によっては作成が不可能かもしくは非常に困難で極めて高価になるような微小な光学素子、および、それらを多数配列したいわゆる微小光学素子アレイが、高精度な形状精度でかつ安価に作成できるようになり、多方面に応用されている。その応用の主な例の1つは、プロジェクター用の液晶表示素子の実質的な開口率を向上させる目的で使用されるマイクロレンズアレイの作製,加工である。液晶表示素子では、通常、何も対策がなされない場合は、液晶表示素子に入射する光のおよそ半分は駆動用の配線やTFT部に遮られて画像の形成に寄与せず無駄となってしまうのに対して、液晶の画素ごとに微小な凸レンズを設けて入射光を液晶開口部に集光することにより(すなわち、マイクロレンズアレイを設けることにより)、透過光量の低下を回避することができる。
【0003】
特開平9−258195号には、このような液晶表示素子の例が示されている。上記のような集光の目的に用いるレンズは主に凸レンズであり、その形成には所定の形状にパターニングしたフォトレジスト膜を加熱して流動化させ表面張力により球面を形成する手法が用いられる。フォトレジストが透明である場合は、そのレンズ形状をそのまま用いてもよいが、多くの場合、レンズには耐熱性が要求されるので、ドライエッチングにより凸レンズ形状をガラスなどの基板に転写することが行なわれる。また、このような方法により形成した基板を母型としてガラスや光学プラスチックを材料としてモールディングすることにより、安価に同じ形状の素子を作成することができる。
【0004】
特開平6−194502号には、このような熱可塑性材料の加熱流動化をもとにしたマイクロレンズアレイの製造方法が示されている。この方法により凸レンズ形状の微小光学素子アレイ全般が良好に作成できる。
【0005】
液晶プロジェクタに用いられる液晶表示器の画素ピッチは、近年は20μm程度のものが用いられているが、装置の小型化を図るため、さらに微細化される傾向にあり、最終的には5乃至7μm程度にまで微細化されると予想される。上記の熱変形法によれば、このような微細な凸レンズアレイも高精度に形成することができる。
【0006】
一方、単なる一枚の凸レンズのみでは集光の効果が小さく、これを向上するには凹レンズとの組み合わせ光学系が必要である。画素ピッチが微細化されるに伴なって、より高い効率で光源光量を有効に使うことが重要になるので、組み合わせ光学系の必要性が大きくなる。
【0007】
また、微小光学素子の働きとして、集光のみでなく微小な色分解プリズムを組み合わせてカラーフィルタを用いずに液晶パネルをカラー化することも可能である。このような機能が付加された液晶パネルは、機器の小型化が図れること、およびカラーフィルタを使わないので表示輝度が向上することなどの点から、実用化が望まれる素子である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、これらの組み合わせ光学系を作る際に必要となる凹レンズ形状やプリズム形状は熱可塑性材料を熱変形させることによっては得にくい形状であり、微小な凹レンズや微小なプリズム、およびこれらを多数配列した微小光学素子アレイは、従来主に用いられている熱可塑性材料の熱変形に基づいた加工方法では高精度に製作することが困難であった。
【0009】
従って、凹レンズ形状やプリズム形状を凸レンズ形状と組み合わせて、より高性能な機器を製造しようとしても、その具体的な方法がなかった。
【0010】
特開平7−128502号には、この問題を解決するための種々の微小形状の形成方法として、ゾルゲル法によって凹レンズ形状を形成する技術が開示されている。この方法によれば、種々の屈折率のガラス材料を使用して凹レンズ形状を作成することができる。ただし、一般に、ゾルゲル法ではドライゲルを焼成する段階で、体積が1/2もしくはそれ以下に収縮するので、その分を見越して最初の形状を作成するが、必ずしも均一に収縮が起きるとは限らず、面内で収縮率がわずかに異なるという現象が生じる。作成する微小光学素子のピッチがそれほど小さくない場合は、多少の収縮率の変動があっても形状誤差は問題となるほどではないが、上記のようにピッチが10μm未満と非常に小さくなると収縮の不均一により生じる形状誤差は無視できなくなり、この方法によっては、素子ピッチが数μmに微細化された場合には、高精度の微小光学素子アレイは形成できないという問題がある。また、この方法は、ゾル溶液の重力による変形を利用しているので、その形状は曲面となり、プリズム形状のように断面が直線を含む形状を作成することは、熱変形による方法と同様に困難である。
【0011】
また、特開平7−63904号には、基板上に設けたマスクの開口部から等方性エッチングを行なうことにより凹レンズ形状を作成する方法が開示されている。この方法によれば、凹レンズ形状を得ることができるが、その形状はエッチング中のエッチング液組成の変化や微小な温度変化など制御しにくい因子によって大きな影響を受けるので、素子ピッチが数μmに微細化された場合は高精度な形状は作成できない。また、等方性エッチングを使用した方法であるため、形成される面は球面となり、プリズムのような断面に直線を含む形状を作成することは非常に困難である。
【0012】
また、これとは別な方法として、フォトリソグラフィプロセスを多数繰り返してフォトレジスト膜が階段状に積層された形状を作成して擬似的に傾斜面を形成する方法が考えられ、この方法によれば、プリズム形状も階段状の斜面を使って擬似的に形成することができる。この方法は、作成する微小光学素子の大きさがフォトリソグラフィの設計ルールに比べて非常に大きいときは階段状の形状を相対的に小さくすることができ階段形状の凹凸が無視できるので有効であるが、素子のピッチが5μm程度になると階段状の凹凸が無視できない光学的な影響を生じる。例えば、階段状の凹凸を小さくし、おおむね1μm程度になると、この部分での回折が生じ本来のプリズムとしての機能が果たせなくなる。従って、上記のような微小ピッチの光学素子アレイを形成する方法としては使用できない。
【0013】
以上述べた点をまとめると、従来の微小光学素子作成技術の欠点は、素子ピッチが数μmに微細化された場合は、凹レンズ形状のアレイや直線の斜面をもった微小プリズムのアレイ、いわゆる鋸歯状の形状を高精度に作成できないことである。
【0014】
本発明は、素子ピッチが数μmに微細化された場合であっても、凹レンズ形状のアレイや直線の斜面をもった微小プリズムのアレイ、いわゆる鋸歯状の形状などを高精度に作成することの可能な微細加工装置および微細加工方法を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、エッチングマスク層が形成されているエッチング対象としての基板を保持する基板保持手段と、基板の表面を、イオン化されたエッチングガスによりエッチングするイオンエッチング手段と、基板の被エッチング面の裏面から基板への光照射を行なう光照射手段と、イオンエッチング手段,光照射手段を制御する制御手段とを有し、イオンエッチング手段は、エッチングガスのイオン化を間欠的に行なう機能を備え、また、光照射手段は、間欠的に光を照射する機能を備え、制御手段は、イオンエッチング手段の間欠動作と光照射手段の間欠動作とを、時間的関連を持たせて周期的に制御する機能を有していることを特徴としている。
【0017】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の微細加工装置において、基板保持手段は、導電材料により形成され多数の開口を有するメッシュ板を基板保持部分に有し、基板の裏面からの光照射が可能であるとともに該基板に対して上記メッシュ板によってバイアス電界を印加することが可能に構成されていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の微細加工装置において、エッチングガスとしては、その主な活性成分として三弗化窒素(NF3)と酸素ガスとを含み、必要に応じてヘリウム,アルゴン,窒素から選択されたガスにより希釈された混合ガスが用いられ、光照射手段は、放射エネルギーの70%以上が波長170nmから380nmの間の光を放射することを特徴としている。
【0019】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の微細加工装置において、エッチング時のエッチングガスの圧力が、1.3×10-3Paから0.13Paの間に保持されることを特徴としている。
【0020】
また、請求項5記載の発明は、請求項1または請求項2記載の微細加工装置において、エッチングガスとしては、その主な活性成分としてCF4,C2F6,C3F8,C4F8,CHF3,CH2F2から選択された1つもしくはいくつかのガスを含み、必要に応じて水素,ヘリウム,アルゴン,窒素から選択されたガスにより希釈された混合ガスが用いられ、光照射手段は、放射エネルギーの70%以上が波長400nmから10μmの間の光を放射することを特徴としている。
【0021】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の微細加工装置において、エッチング時のエッチングガスの圧力が、1.3×10-3Paから0.13Paの間に保持されることを特徴としている。
【0022】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細加工装置によって基板表面に微細形状を作成する微細加工方法において、エッチングマスク層の端面の一部に、エッチング速度の小さな材料よりなる層を、基板とエッチングマスク層との間に、もしくは、エッチングマスク層の上部に積層して設けて、基板表面の微細加工を行なうことを特徴としている。
【0023】
また、請求項8記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細加工装置によって基板表面に微細形状を作成する微細加工方法において、エッチングマスク層には、光照射手段より照射される光を吸収しない材料よりなる層を用い、エッチングマスク層と基板との間に、もしくは、エッチングマスク層の上部に、所定の形状にパターニングされ光照射手段より照射される光を吸収する材料よりなる光吸収層を設けて、基板表面の微細加工を行なうことを特徴としている。
【0024】
また、請求項9記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細加工装置によって基板表面に微細形状を作成する微細加工方法において、基板の裏面に遮光パターンを設け、光照射手段からの光が基板裏面に部分的に照射される状態にして、基板表面に微細形状を形成することを特徴としている。
【0025】
また、請求項10記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細加工装置において、さらに、光照射手段と基板との間に、光を所定のパターン状に成形する光学手段が設けられ、光照射手段からの光が基板裏面に所定のパターンとして照射される状態にして、基板表面に形成される微細形状を制御することを特徴としている。
【0026】
また、請求項11記載の発明は、請求項10記載の微細加工装置において、光照射手段と基板との間に設けられた光学手段は、2次元パターンを生成するパターン生成機構と、2次元に配列された複数の画素よりなり、各々の画素が、入力された2次元パターンに従って、その画素ごとに、光を透過する状態および光を遮る状態のいずれかに切り替えられるライトバルブ機構とにより構成されていることを特徴としている。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。従来の微小光学素子アレイ形成法は、熱可塑性樹脂もしくは粘性流体などを基板上の限られた領域に堆積あるいは付着させ、加圧,加熱などにより流動性を増加させて、その表面が表面張力により球面形状となることを利用したり、粘性液体が重力により変形した形状をもとにして必要な形状を得ていた。本願の発明者は、このような手法の改良によってはマイクロプリズムアレイなどの形成に必要な、断面が直線の傾斜となる形状、つまり鋸歯状の形状の創製は非常に難しいと判断し、従来技術とは全く異なる新規な方法により微小な形状を基板表面に形成する微細加工装置および微細加工方法を案出した。
【0028】
図1は本発明の微細加工装置(イオンエッチング装置)の基本的な構成例を示す図である。図1を参照すると、このイオンエッチング装置は、エッチングチャンバ1と、エッチングガスを一定の流量もしくは所定の流量変化を持たせて供給するエッチングガス供給機構2と、該エッチングガス供給機構2により供給されたエッチングガスをイオン化するイオン化機構3と、エッチングマスク層が形成されているエッチング対象としての基板4を保持し、所定の温度に保つ基板保持機構5と、エッチング後の廃ガスを排気する真空排気機構6と、光照射機構7と、これら各機構2,3,5,6,7を制御する制御機構8とを有している。
【0029】
ここで、イオンエッチング装置は、基板4の表面をエッチングするが、基板保持機構5は、光照射機構7からの光を、基板4の被エッチング面の裏面から照射するための光透過領域を有し、基板4をエッチングする過程において光照射機構7により基板4の被エッチング面の裏面から基板4への光照射が可能であるように構成されている。
【0030】
また、前記イオン化機構3は、エッチングガスのイオン化を間欠的に行なう機能を備え、かつ前記光照射機構7は、間欠的に光を照射する機能を備え、制御機構8は、これら両機構3,7の間欠動作を、時間的関連を持たせて周期的に制御する機能を有している。
【0031】
また、基板保持機構5は、導電材料により形成され多数の開口を有するメッシュ板を基板保持部分に有し、基板4の裏面からの光照射が可能であるとともに該基板4に対して上記メッシュ板によってバイアス電界を印加することができるように構成されている。
【0032】
図1のイオンエッチング装置が従来のイオンエッチング装置と異なる最大の点は、エッチング中の基板4は、基板保持機構5により一定の温度に保たれると同時に、エッチング中に基板4の裏面からエッチング反応を補助するための光が照射される点である。このような構成を取ることにより、基板4上に設けられたエッチングマスク層となるレジスト膜の横方向のエッチング速度(エッチングレート)、いわゆる後退する速度と、基板4が深さ方向に削られるエッチング速度とを、広い範囲で、全く独立に制御することができるようになる。これにより、表面張力のような基板材質の物性に頼ることなく、断面が直線の傾斜となるプリズム形状も含めて、オーバーハングのない形状であれば、自由な形状の創製が可能になる。
【0033】
なお、図1のイオンエッチング装置に使用するイオン化機構3としては、ICP(誘導結合プラズマ)方式,ECR(エレクトロンサイクロトロン共鳴)方式などの無電極放電による方式が適しているが、その他、イオン化室内に高周波アンテナを設けて、ガスの電離を行なう方式のイオン化機構も使用することが可能である。
【0034】
また、光照射機構7としては、紫外線領域の光を照射する場合には高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどを使用し、可視光から赤外線領域の光を照射する場合には高圧キセノンランプなどを使用し、必要に応じて、反射鏡とコンデンサレンズ,ディフューザなどからなる照度を均一化する機構を併用することができる。
【0035】
また、光照射機構7の光源としては、種々のガスによるエキシマレーザ装置,アルゴンイオンレーザ,YAGレーザ,炭酸ガスレーザなども使用できる。
【0036】
図2は図1のイオンエッチング装置により基板表面へ微細形状を作成する状況を説明するための図である。なお、図2は、石英ガラス基板(ガラス基板)表面を、ポジレジストをマスクとして、エッチングガスにNF3および酸素(O2)を用い、紫外光(UV光)をガラス基板の裏面から照射して形状創製を行なう例について示したものである。
【0037】
紫外光を照射しない場合には、石英ガラスはNF3+O2ガスのプラズマによって高速にエッチングされるが、フォトレジストのエッチング速度は比較的小さい。これに対し、紫外光を照射する場合には、NF3+O2ガスのプラズマによるエッチング速度は、石英ガラスおよびフォトレジストの双方について増大することが知られている。これは、紫外光のエネルギーによってプラズマの解離度が上昇し、エッチングに寄与する活性種が増加する効果によるところもあるが、むしろ被エッチング材料表面での表面反応が促進される効果によるところが大きいと考えられる。
【0038】
実際、従来の光アシストエッチングのようにプラズマを通して基板に紫外光を照射すると、プラズマでの光吸収により紫外光が基板表面に充分到達せずエッチング速度増大の効果は小さかった。また表面全体のエッチング速度が増大するから紫外光照射を併用すると加工時間が若干短くなるが、そのほかには特段の効果は得られなかった。
【0039】
これに対して、図2に示すように、基板の裏面から紫外光を照射すると、全く異なる優れた利点を有する表面形状加工法が実現できる。すなわち、基板である石英ガラスは紫外光に対して高い透過率を有しているので、石英ガラスの被エッチング面は紫外光の影響でエッチング速度が増大し、またレジストの端面にも石英ガラスを透過した紫外光が照射され紫外光のエネルギーによってアシストされるため、エッチング速度が上昇する。しかし、紫外光はフォトレジスト膜を透過しないので、マスクとなっているフォトレジスト膜表面には紫外光は到達せず、エッチング速度が増大することはない。従って、紫外光を基板の裏面から照射すると、石英ガラスの露出部(被エッチング面)とフォトレジスト膜の端面のみのエッチング速度を増大させることができる。
【0040】
エッチング速度は紫外光の強度に応じて増大するので、紫外光の強度によってフォトレジストの端部がエッチングされる速度、すなわちレジストが後退する速度を制御することができる。一方、基板である石英ガラスの被エッチング面は紫外光によってエッチング速度が上昇するものの、このエッチング速度は主にプラズマの生成条件に影響される。イオン化機構3のプラズマ生成の電力密度などの石英ガラスのエッチング速度に寄与の大きい因子と、紫外光強度すなわちフォトレジスト膜の後退速度に寄与の大きい因子とを適宜調節することにより、基板である石英ガラスが深さ方向に削られる速度と、フォトレジストが横方向に削られ石英ガラスの被エッチング領域が拡大する速度との相対比率を自由に定める(独立に制御する)ことが可能となる。
【0041】
このような本発明のイオンエッチング装置の機能を用いて、基板4である石英ガラスが深さ方向に削られる速度とフォトレジストが横方向に削られ後退する速度とを等しくすれば、断面が直線となる傾斜角が45°の傾斜形状を作成することができる。また、基板4である石英ガラスのエッチング速度をフォトレジストの後退速度に対して小さくすれば、45°よりも緩やかな傾斜角の傾斜面が形成され、一方、基板4である石英ガラスのエッチング速度をフォトレジストの後退速度に対して大きくすれば、45°よりも垂直に近い傾斜角を有する傾斜面が形成できる。さらに、基板である石英ガラスが深さ方向に削られていく過程で上記エッチング速度の相対比率を変化させれば、表面形状を上に凸の曲面,あるいは球面から断面が直線となる形状を経て下に凸の曲面,あるいは球面形状(凹形状)まで自在に変化させることができる。その断面形状は円弧に限らず、エッチング速度の比を所定の関数に従って変化させることにより非球面形状とすることも容易である。
【0042】
このように、本発明のイオンエッチング装置によれば、従来のように、紫外光のエネルギーを補助的に用いて単に加工時間を短くするだけでなく、基板裏面からの紫外光の照射により、従来では基板表面への形成が困難であった微細形状の創製が可能になるという全く新規な効果が得られる。
【0043】
上記の例では、紫外光により化学反応を誘起してレジスト膜端部のエッチング速度を制御する場合を説明したが、可視光から近赤外光の照射によってもエッチング速度の比率を制御することができる。すなわち、可視光から近赤外光を照射すれば、石英ガラスの表面温度を変化させずに、この波長領域の光を吸収するフォトレジスト膜の温度のみを上昇させることができる。フォトレジストのエッチング速度は温度により変化するので、このような波長領域の光によってもエッチング速度の比率を制御することができる。
【0044】
また、イオン化機構3により生成されるイオン流によるエッチング反応の生成物と紫外光による基板表面反応の生成物とが互いの反応に影響を与えると、予期できないエッチング速度の変化を生じるので、形状制御を行なう上での不確定要因となり形状制御の精度を低下させる。これらの反応生成物を真空排気機構6により速やかに除去させる状態とすることにより、それぞれの反応の生成物がもう一方の反応の生成物に影響する恐れをなくすことができる。このようなエッチング状況を実現すれば、各反応が良好に分離されるので形状制御の不確定な要因が除去され、形状制御の精度が向上する。この状況を実現するには、大きな排気速度を有する真空排気機構6を用いればよいが、排気速度が大きくなるに従って、真空排気機構6は非常に高価なものとなり、製造される素子の製造コストの上昇をもたらす。本発明のイオンエッチング装置では、大きな排気速度を有する真空排気機構6を用いることなく、上記のような良好なエッチング状況を実現するため、エッチングガスのイオン化と基板裏面からの光照射とを間欠的に行なう制御機能を制御機構8にもたせている。
【0045】
このような制御機能を設けることにより、それぞれの反応の際に生じた反応生成物は処理の行なわれていない期間に排出されるので、それぞれの反応が影響しあって形状精度を低下させることがない。従って、大容量の排気装置を必要としないので、製造コストの上昇をもたらさずに形状精度を向上させることができる。
【0046】
また、イオン化機構3により生成されるイオン流のみによるエッチングの異方性,すなわち光照射を行なわない状態においての横方向(基板に平行な方向)のエッチング速度に対する縦方向(基板に垂直な方向)のエッチング速度の倍率が高いほど、イオン流による基板材質の縦方向のエッチング速度と紫外光によるレジスト膜の横方向のエッチング速度とがそれぞれより広い範囲で独立に制御できるようになり、作成可能な形状範囲が拡大する。イオン流のみによるエッチングの異方性を高めるには、基板にバイアス用高周波電力を印加して基板に入射するイオンの方向性を揃える必要があるが、基板裏面からの光照射が行なえるように基板保持機構5をガラス等の絶縁体で作製すると、高周波電力の印加は行なえない。
【0047】
そこで、本発明のイオンエッチング装置は、バイアス用高周波電力の印加と基板裏面からの光照射とを同時に行なうことを可能とするため、基板保持機構5の基板保持部分に多数の開口を有する導電性のメッシュ板を設けている。このような構造を取ることにより、メッシュ状の開口部を通して光照射が行なわれ、かつメッシュ板を高周波電極として使用することによりバイアス用高周波電力を印加することができる。
【0048】
次に、本発明のイオンエッチング装置が主に対象とする微小光学部品の材質によく用いられるものの1つに石英ガラスがある。そこで石英ガラスを加工する場合の最適な条件、すなわち高いエッチング速度と良好な形状制御性が得られる条件を探索した。現状で入手できる種々のエッチングガスを用い、その際種々の波長の光を基板の裏面より照射して石英ガラスをエッチングし、最適なエッチング条件を実験により調べた。その結果、エッチングガスは、その主な活性成分として、三弗化窒素(NF3)と酸素ガスとを含み、必要に応じてヘリウム,アルゴン,窒素から選択されたガスにより希釈された混合ガスを用い、また、光照射機構7により放射される光は、その放射エネルギーの70%以上が波長170nmから380nmの間にある条件において、高いエッチング速度と優れた形状制御性が得られることがわかった。
【0049】
上記実験を行なった際、エッチングガスの圧力により、作成した形状の再現性に差異が見られたので、その最適な範囲を実験により調べた。その結果、エッチング時のエッチングガスの圧力は、1.3×10-3Paから0.13Paの間であるときに優れた形状再現性が得られることがわかった。この理由は定かではないが、この圧力範囲では基板近傍の化学反応は種々の条件変化による影響を受け難く、若干の条件変化によってはそのエッチング速度が変化しないため、形状制御の余裕度が大きく、優れた再現性が得られるものと考えられる。
【0050】
前述した微細加工方法では、三弗化窒素(NF3)ガスを使用するが、このガスは反応性が非常に厳しいため、漏洩時の安全対策やエッチング時に排出されるガスの無害処理に比較的高い費用を必要とする場合がある。このことは製造する素子の製造コストを上昇させる要因となる。従って、上述したエッチングガスのかわりに、低コスト化に適したエッチングガスとしては、その主な活性成分としてCF4,C2F6,C3F8,C4F8,CNF3,CH2F2から選択された1つもしくはいくつかのガスを含み、必要に応じて水素,ヘリウム,アルゴン,窒素から選択されたガスにより希釈された混合ガスを用いることもでき、また、この場合、光照射機構7により放射される光は、その放射エネルギーの70%以上が波長400nmから10μmの間にある条件であれば、上記のガスは不活性であり、その排出ガスの無害化処理も容易であるので、低い製造コストで形状を創製できる。ただし、この条件は、三弗化窒素(NF3)と酸素ガスとを用いるエッチングガス条件下で、光照射機構7により放射される光の放射エネルギーの70%以上が波長190nmから380nmの間にある条件に比較して、エッチング速度が小さいため、加工時間が長く必要である。従って、加工時間をなるべく短くしたい場合には、三弗化窒素(NF3)と酸素ガスとを用いるエッチングガス条件下で、光照射機構7により放射される光の放射エネルギーの70%以上が波長190nmから380nmの間にある条件を用いるのが適している。
【0051】
さらに、エッチングガスとして、その主な活性成分がCF4,C2F6,C3F8,C4F8,CNF3,CH2F2から選択された1つもしくはいくつかのガスを含み、必要に応じて水素,ヘリウム,アルゴン,窒素から選択されたガスにより希釈された混合ガスを用い、また、この場合、光照射機構7により放射される光の放射エネルギーの70%以上が波長400nmから10μmの間にある条件を用いる場合においても、実験を行なった際、エッチングガスの圧力により、作成した形状の再現性に差異が見られたので、その最適な範囲を実験により調べた。その結果、エッチング時のエッチングガスの圧力は、1.3×10-3Paから0.13Paの間であるときに優れた形状再現性が得られることがわかった。この理由は定かではないが、この圧力範囲では基板近傍での化学反応は種々の条件変化による影響を受け難く、若干の条件変化によってはそのエッチング速度が変化しないため、形状制御の余裕度が大きく優れた再現性が得られると考えられる。
【0052】
ところで、上述した各方法では、例えば石英ガラスにポジレジスト膜を形成した試料を対象としてイオン化機構のプラズマ生成条件,エッチングガスの流量,裏面より照射する光強度を調節することにより任意の傾斜形状を有する微細構造を作成できるが、レジストの周囲すべてが同様に加工されるから、例えばストライプの一方の端面が傾斜面をもち、他の一方の端面が基板表面に対して垂直であるいわゆる鋸歯形状は形成できない。そこで、本願の発明者は、さらに、鋸歯形状のような非対称な断面形状を有する表面微細形状を形成する方法をも案出した。
【0053】
その第1の方法は、エッチングマスク層の端面の一部にエッチング速度の小さな材料よりなる層を、エッチングマスク層と基板との間に、もしくは、エッチングマスク層の上部に積層して設け、基板表面の微細加工を行なう方法である。
【0054】
この第1の方法では、垂直な断面にしたい場所に、エッチング速度の小さい材料よりなる別のマスクを積層して設ける。例えば、石英ガラス上にポジレジスト膜を設け、CF4ガスプラズマを用い、裏面より光照射を行なって傾斜形状を作成する場合を例にとると、エッチングされにくいマスクとしては、クロム,アルミニウム,ニッケル,チタン,タングステン,金,白金,ポリシリコン,チタンシリサイド,タングステンシリサイドなどの膜が適しており、作成の容易さ,除去の容易さ,エッチング速度の低さなどからアルミニウム膜が特に適している。このようなエッチング速度の低いマスクを、例えば、ストライプ上にパターニングされたポジレジスト膜の一方の端面を覆うように細いストライプ上に積層して形成すると、その箇所は裏面からの光照射によってもエッチング速度が増加せず、ほとんどマスク端面が後退しないので、エッチングされた断面形状はほぼ垂直となる。さらに、エッチングされにくいマスクの膜厚を適宜調節したり、材質を選択することにより、端面の位置に若干の後退が生じるようにもでき、このような手法を取れば、ストライプの異なる端面で異なる傾斜角を持たせた微細形状が作成できる。
【0055】
上述した第1の方法では、垂直もしくは垂直に近い形状にしたい部分に別のマスク層を積層するので、例えば、基板表面の微細形状の端面の大部分を垂直な端面として、ごく一部のみを傾斜形状としたい場合には、積層するマスク層の面積が増加し、特に、これが金属膜である場合などに、基板近傍のバイアス電界の分布が不均一となって、作成する微細形状に予期しない変化を生じさせることがある。
【0056】
そこで、第2の方法として、基板表面のごく一部のみをレジストの後退により形状制御する場合に適したエッチング方法を用いることができる。すなわち、この第2の方法は、エッチングマスク層には光照射機構7より照射される光を吸収しない材料よりなる層を用い、このエッチングマスク層と基板との間、もしくは、このエッチングマスク層の上部に所定の形状にパターニングされ該光照射機構7より照射される光を吸収する材料よりなる光吸収層を設けて、基板表面の微細加工を行なう方法である。この方法は、主に裏面からの光照射の効果が膜の温度を上昇させるものであり、この効果を利用してマスクの後退速度の制御を行なう場合を対象とするものである。この方法では、より穏やかな傾斜を持たせたい箇所に光吸収の大きな膜を積層してこの箇所のみのエッチングマスクの温度を上昇させ、マスクの後退速度を大きくすることにより形状制御を行なう。
【0057】
石英ガラス基板の表面に微細形状を作成する場合を例に取ると、透明なポリイミドレジストによるエッチングマスクを形成して、近赤外領域にエネルギーのピークを有する光を基板裏面より照射した場合、透明なポリイミド膜ではほとんど光エネルギーが吸収されないので、その後退速度は非常に小さく、マスクの端面では石英ガラスはほぼ垂直にエッチングが進行するが、ポリイミド膜端部の一部にこの領域の光を吸収する薄膜,例えば銅薄膜を積層すると、この箇所のみポリイミド膜の温度が上昇して、後退速度が増加し、この箇所に傾斜形状が作成できる。その傾斜角は、銅薄膜の厚さや裏面から照射する光の強度により後退速度を変化させて、制御することができる。
【0058】
この方法によれば、作成形状の大部分の端面が垂直形状となり、ごく一部のみが傾斜を有するような形状を作成する場合も、このために積層しなければならないマスクは面積が小さいから、仮にこのマスクが導電性の材料であってもバイアス電界に与える影響は小さく、予期しない形状の変化を生じることはない。
【0059】
このように、非対称な断面形状を有する表面微細形状を形成する第1の方法および第2の方法では、エッチング速度の遅いマスクを使用するが、エッチング条件によっては、エッチングマスクとして使用することができる条件、すなわち、優れた解像度を有しプロセス終了後は基板材質をいためずに容易に除去できることと充分に遅いエッチング速度とを備えた材質が得られない場合がある。例えば、NF3ガスを含むエッチングガスを使用すると、フロロカーボン系のエッチングガスを使用した場合に比較して、石英ガラス等を高速に加工することができ、製造プロセスの所用時間を短縮する上で利点が大きいが、NF3ガスを含むエッチングガスを使用する場合には、このガスが極めて反応性が高く、ほとんどの材料を高速でエッチングしてしまう。そのため、上記第1の方法,第2の方法に必要なエッチング速度の小さな材質が得にくい。さらに、プロセス終了後に容易に除去できることを前提とすると、エッチング中に端面の位置がほとんど後退しないエッチングマスクなるものが実現しにくくなるため、垂直な断面形状を有する部位を作成することが難しい。従って、表面微細構造の一部のみに傾斜構造を作成したり、部位により傾斜角度を変えて作成したりすることは、その作成可能な形状の範囲が制限されることとなる。
【0060】
そこで、本願の発明者は、さらに、第3の方法として、このような状況においても、基板表面へのより自由度の大きな微細形状創製を可能とするため、基板の裏面に遮光パターンを設け、光照射機構7からの光が基板裏面に部分的に照射される状態として基板表面に微細形状を形成する微細加工方法を案出した。
【0061】
この第3の方法によれば、基板裏面からの光は基板の一部にのみ照射されるので、エッチングマスク端面の後退を部分的に抑制することができ、エッチング速度の遅い材質が得られないような条件であっても、第1の方法,第2の方法と同様な多様な(自由度の大きな)微細形状の創製が可能となる。また、この方法によれば、基板表面には新たなマスク形成は必要ないので、バイアス電界が乱され表面形状に予期しない変化を及ぼすこともない。しかし、基板の両面についてパターンをアライメントしてフォトリソグラフィを実施することが必要となるので、製造プロセスは、基板の片面にマスクを積層する場合に比較して煩雑となる。従って、エッチングマスクとして良質な材質が得られるようなエッチング条件下においては、第1の方法もしくは第2の方法が適している。
【0062】
微細加工領域の部位により傾斜角度を変えた形状創製を行なう場合、第1の方法および第2の方法では、パターンの異なるマスクを積層する工程が必要であり、第3の方法では基板の裏面に遮光パターンを設ける工程が必要であり、どちらの方法においても個々の基板に対するフォトリソグラフィ工程を余分に必要とするので、製造コストの上昇が避けられない。
【0063】
製造コストを抑制し、かつ自由度の高い微細形状の創製を行なうことを可能にするため、本願の発明者は、さらに、光照射機構7と基板4との間に、光を所定のパターン状に成形する光学装置(光学手段)を設け、光照射機構7からの光が基板4の裏面に所定のパターンとして照射される状態にして、該基板表面に形成される微細形状を制御する装置を案出した。
【0064】
前述の第3の方法では、基板の裏面に設けた遮光マスクにより裏面からの光照射を部分的に遮蔽したが、上記の装置では、これと同様の効果を光照射機構と基板との間に設けた光学系(光学装置)により得るものである。このような光学系(光学装置)としては、レチクルに平行光束を照射し光照射領域の形状を変化させる構成、あるいは、拡大光学系あるいは縮小光学系と所望の照射パターンを形成したレチクルとを組み合せ、基板裏面に光照射を部分的に行なう光学系の構成などを用いることができる。
【0065】
図3には、レチクルに平行光束を照射しそのパターン形状に成形された光(UVパターン光)を基板裏面に照射して微細加工を行なう状況が示されている。レチクルには、石英ガラス基板にクロムなどの遮光膜を堆積しパターニングした通常のマスクが利用できる。この場合、加工対象の基板に遮光パターンなどを積層する場合と異なり、マスクは繰り返し使用されるから、製造コストの上昇は極めてわずかである
【0066】
また、入力信号によってパターンを変化できる液晶ライトバルブなどの素子も、照射される光の波長範囲が透過領域に合致し、光強度がライトバルブ素子の許容範囲に収まれば、使用可能である。図4には、このようにして成形した光ビームを基板に照射して微細加工を行なうイオンエッチング装置の構成例が示されている。図4の例では、光源11からの光を集光するコンデンサレンズ12と、ライトバルブ素子13と、2次元パターン生成機構14と、ライトバルブ素子13からの光を、光導入窓16,基板保持機構5を介して基板4の裏面に投射する投射レンズ15とが設けられている。
【0067】
換言すれば、図4のイオンエッチング装置では、光照射機構(光源11,コンデンサレンズ12)と基板4との間に設けた光学系(光学装置)は、2次元パターンを生成する2次元パターン生成機構14と、2次元に配列された複数の画素よりなり、各々の画素は、入力された2次元パターンに従ってその画素ごとに光を透過する状態および光を遮る状態のいずれかに切り替えられるライトバルブ素子13とから構成されている。
【0068】
近年、液晶パネルは、その耐光性が飛躍的に向上しており、これを用いればパーソナルコンピュータなどにより生成したパターンを基板裏面に照射して簡便に微細形状を制御して創製することができ、従って、この場合、遮光用のレチクルの作成は不要である。
【0069】
このような装置によれば、製造コストの上昇をほとんどもたらさずに微細形状の部位により傾斜角度が異なるような多様な微細形状を基板表面に創製することができる。図4に示す装置(ライトバルブ素子を用いる装置)は、多品種を少量製造する場合などに適している。一方、遮光用のレチクルを用いる装置は、1品種の製造数量が多い場合に適している。
【0070】
また、遮光用のレチクルを用いる装置,ライトバルブ素子を用いる装置による微細形状創製法も、エッチング速度の遅い材質が得られず前述の第1の方法,第2の方法が適用できない条件においても、第1の方法,第2の方法と同様な多様な微細形状の創製が可能となるという利点を有している。
【0071】
ただし、これらの装置による微細形状創製は、基板裏面より遮光パターンを光学的に投射することにより形状制御を行なうので、照射光学系の解像度による制限とともに基板保持機構近傍での散乱光などにより、傾斜角度の異なる領域を近接させて形成する場合などに、その位置分解能は、第1の方法,第2の方法,第3の方法のように基板に遮光パターンを直接形成する場合に比べて劣る。従って、製造コストの低減よりも基板表面に形成する微細形状を高い位置分解能で変化させることが重要である場合などには、第1の方法,第2の方法,第3の方法により製造することが適している。
【0072】
従来のイオンエッチング装置においても基板の裏面に赤外線等を照射して基板加熱を行なう方法が用いられているが、この場合は、基板での光エネルギーの吸収を利用するので、基板材質と照射光の波長との関係は、基板材質によりその波長が吸収されるように定められる。すなわち、基板は照射光に対して不透明な材質でなければならなかった。これに対して本発明のイオンエッチング装置では、基板の裏面から照射する光は、基板において吸収されず、ほぼすべてが透過する波長の光を用いる。また、本発明は、その期待する効果も単なる基板加熱等とはまったく異なっており、従来の光基板加熱機構の照射波長を変えたものにはとどまらず、新しい効果を実現するための装置構成と処理方法とを提供するものである。
【0073】
従来から放電プラズマを用いた種々のプロセスに紫外光などの光エネルギーを併用してプラズマのみでは解離しない化学結合を解離させ、新たな反応を起こさせる光アシストエッチングなどの手法が多数研究され、そのいくつかは試行されている。これらは光エネルギーをプラズマに吸収させる方法と光エネルギーで基板表面での表面反応を誘起する方法とに大別される。これらのうちプラズマに光エネルギーを吸収させる方法は、プラズマの解離度を若干上昇させるのでエッチング速度増大などの一定の効果が得られるものの、これ以上の新たな効果はない。
【0074】
一方、光エネルギーにより、プラズマより供給されるイオンやラジカル等の活性種と基板材質との新たな基板表面反応と誘起させようとする光併用プラズマプロセスは、エッチング時の基板近傍の反応の状況を大きく変えることができる。プラズマのみではエッチングが困難な材質も高速でエッチングできる可能性があるため、かなり以前から研究されているが予想したメリットが実際には得られず着想段階にとどまっているものがほとんどである。この第1の原因は、従来の光プラズマプロセスは、プラズマを通して光照射が行なわれるので、照射光はプラズマ中で活性種との相互作用により大部分が吸収され基板表面に光エネルギーが到達しないことである。また、第2の原因は、プロセスチャンバ内に光を導入する窓の近傍で光,プラズマ,窓材料相互の化学反応を生じることが完全には抑制されず、窓が損傷を受けたり、窓内面に堆積した反応生成物による光吸収が生じるといった現象がおきて、長時間安定して動作する量産設備を製作することが困難であること、などの解決しにくい問題点を有しているためである。
【0075】
本発明の裏面照射イオンエッチング装置は、従来の光併用プロセスの問題点を詳細に検討するとともに、透過型の微小光学素子の形成において元来光を透過する材料を基板としている点、また、反射光学素子を形成する場合でも透明材料に形状を作成したのち反射膜を表面に形成すれば素子を完成できる点に着目したものである。
【0076】
従って、本発明は、上述したように、熱変形その他従来の微小形状創製法では高精度に形成できない形状、例えば凹レンズ形状や、断面が直線を含む、例えばプリズム形状などの微小光学素子アレイを高精度かつ安価に作成することが可能なイオンエッチング装置および微細加工方法を提供することができる。
【0077】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0078】
実施例1
実施例1では、図1のイオンエッチング装置において、基板保持機構5が、導電材料により形成され多数の開口を有するメッシュ板を基板保持部分に有し、基板4の裏面からの光照射が可能であるとともに該基板4に対して上記メッシュ板によってバイアス電界を印加することができるように構成されている装置により、石英ガラス板表面に底部の幅が30μm,高さが3μmのプリズムがストライプ状に平行に配列された構造を作製した。
【0079】
より具体的に、実施例1で用いるイオンエッチング装置は、図1に示した構成の装置において、基板保持機構5の基板保持部分に、厚さ2mm,開口部が10mm×10mm,格子部の部材の幅が2mmのステンレスSUS316材よりなるメッシュ板を設置したものとした。このメッシュ板とチャンバーアースとの間に、バイアス用の高周波電力が印加されるようにした。
【0080】
ここで、基板保持機構5は、基板4の裏面の位置に石英ガラスよりなる光導入窓を2重に設け、その間に冷却用のヘリウムガスが流れる構造とした。また、上記メッシュ板は、冷却用のヘリウムガスの通路の中に基板側の窓に沿わせて配置した。また、冷却用のヘリウムガスは、液体窒素に電熱ヒータで加熱して所定の温度に温度調節して供給し、ヘリウムガスの加熱の度合いを変化することにより基板温度を制御した。
【0081】
また、エッチングガスには、NF3ガス,ヘリウムガス,アルゴンガス,酸素ガスの混合ガスを用いた。これらのガスは、各々単独にマスフローコントローラにより流量を調節し、イオン化機構3の前段に設けたミキシングチャンバで混合して均一な組成としてイオン化機構3に供給した。
【0082】
イオン化機構3は、2.45GHzのマイクロ波を共振器に導入し、約800ガウスの磁界を印加して無電極放電を行なわせるECR(エレクトロンサイクロトロンレゾナンス)イオン源を使用した。また、基板4に印加するバイアス用高周波の周波数は13.56MHzとした。
【0083】
また、真空排気機構6には、ターボ分子ポンプおよびロータリーポンプを使用した。すなわち、エッチングチャンバ1の排気口の直下に開口率が変化できるバリアブルオリフィスバルブを設置して排気速度を変化できるようにし、エッチングチャンバ1内の圧力を一定に保つように開口率を制御した。また、ロータリーポンプの排気側に吸着材による除外装置を設置し、未反応のNF3ガス、および反応により生成したガスを除去するようにした。
【0084】
また、光照射機構7には、高圧水銀ランプに放物面鏡と補正レンズを組み合わせて光束の平行度および照度均一性を高めた光源を使用した。光量は水銀ランプに供給する電流を変化させて制御した。また、基板4には、直径が100mm,厚さが0.525mmの石英ガラスウエハを使用した。このウエハにフォトレジストを1.5μmの厚さになるようにスピンコート法により塗布した。フォトレジストは、東京応化工業株式会社製のOFPR−800(粘度40cps)を使用した。フォトレジストのデータシートに指定された通常の処理条件によりプリベークを行なった後、幅10μmの帯状のパターンが1μmの間隔を隔てて平行に配列されたフォトマスクを重ねて露光し、現像,ポストベークを行なった。図5(a)には、これらの処理が終了した状態の試料が示されている。図5(a)において、符号4は石英ガラス基板であり、符号31はレジストマスク(ポジレジスト層)である。
【0085】
次に、この試料をエッチング装置の基板保持機構5に取り付け、基板4の裏面より紫外光を照射し上記ポジレジスト層31をエッチングマスクとして石英ガラス基板4をエッチングした。エッチングガスはNF3ガス,ヘリウムガス,アルゴンガス,酸素ガスをそれぞれ10sccm,5sccm,5sccm,2sccmの流量で供給した。エッチング時のチャンバ1内の圧力は1.33×10E-4(Pa)となるようにバリアブルオリフィスの開度を自動調節した。また、イオン化機構3のマイクロ波供給電力は800Wとした。また、バイアス用の高周波供給電力は120Wとした。また、基板温度は摂氏マイナス40度とした。また、紫外光の照射強度は基板保持機構5の位置で80mW/cm2とした。
【0086】
図5(b)は、エッチング途中の試料の状態を示す図である。エッチング途中で中断した試料を観察することにより、図5(b)中に示したレジスト膜の後退速度と石英ガラスのエッチング速度とをあらかじめ測定しておくことができる。前記の条件は、レジスト膜の後退速度と石英ガラスのエッチング速度とが、それぞれ、300Å/分,1500Å/分となるように定めた条件値である。このようにして、高さと底辺の比が1:5の傾斜を作成した。図5(c)は、傾斜が両側に作成され山形のプリズムとなった完成した試料の表面形状を示す図である。従来このような直線の断面形状を形成する微細加工は困難であったが、本発明の微細加工方法により種々の傾斜を有する断面が自由に形成できるようになった。
【0087】
実施例2
実施例2では、面発光レーザーダイオードアレイの上面に配置し、放射される光の広がり角を成形する目的で、テーパー形状の窪みが多数配列されたマイクロミラーアレイを、実施例1と同様の方法により作製した。すなわち、所定の厚さに研磨した石英基板4を使用し、この表面に、直径が10μmの開口部を42μmの間隔で2次元格子状に配列した形状にフォトレジスト膜をパターニングし、それ以外は実施例1と同様の条件で、ただし紫外線の強度を調節して窪みの壁面の傾斜角が70度となるように条件を定め、基板を貫通するまでエッチングした。図6(a)は、レジストパターンの列の形状(レジストマスク32の形状)を示す図である。
【0088】
しかし、このような条件では、基板4の厚さは15μm程度で浅い窪みの場合には良好に形成できるものの、さらに厚い基板を使用し、窪みの深さが15μmを超えると底部付近の傾斜面が湾曲するようになり、良好な直線形状が得られなかった。
【0089】
光の放射角を良好に制御するには、30μmの基板厚さを貫通したテーパー形状のマイクロミラーアレイを形成する必要があり、前記の形状の悪化は表面反応で生じた反応生成物が基板近傍から速やかに除去されていないためにエッチングの異方性が損なわれていることが原因であると推定されたので、エッチングガスのイオン化と基板裏面からの光照射を間欠的に行なうことにより形状の改善を試みた。
【0090】
すなわち、紫外線の照射とプラズマの生成を断続的に行なえる構成とし、それぞれの動作時間を1秒、互いの動作の間に0.5秒の休止時間を持たせてその他は前記と同様の条件でエッチングを行なった。この素子のエッチング中の断面図を図6(b)に示す。その結果、基板厚さが30μmの場合でも傾斜部には湾曲を生じさせず、設計どおりの形状を有するテーパー形状のマイクロミラーアレイを形成することができた。
【0091】
実施例3
実施例3では、前記第1の方法により、一方の側に傾斜面を有し、他方の側は垂直面となった列が多数配列された形状、いわゆるブレーズ形状を作製した。すなわち、実施例1と同様の試料を形成し、フォトレジスト33の一方の端部に、紫外線照射によってエッチング速度が増加しない膜34として、タングステンシリサイド膜を、スリットが形成されたステンレス製の薄膜を基板上に重ねて、ストライプ状に堆積した。タングステンシリサイド膜は、基板を冷却しながらイオンビームスパッタ法により堆積して、はじめに形成したフォトレジストパターンが温度上昇やプラズマにさらされ悪影響を受けることのないようにした。図7(a),(b)にはこの状態が示されている。なお、図7(b)は図7(a)の拡大図である。
【0092】
この試料を実施例1と同様の条件でエッチングした。この条件においては、タングステンシリサイド膜34のエッチング速度は非常に小さく、紫外線の照射によってもエッチング速度が増加することはなく、この位置には垂直な断面が形成された。他の端面は実施例1と同様に傾斜を形成することができた。図7(c)には、エッチング途中の状態が示され、図7(d)には、エッチングを完了し、完成した状態が示されている。
【0093】
実施例4
実施例4では、実施例3において表面形状を作成する際の紫外線の照射強度をエッチング中に変化させた。エッチング開始時は紫外線の照射強度を大きくし、これを徐々に弱めた場合は、図8(a)に示すように、上に凹の曲面となった傾斜形状が形成できた。また、紫外線強度をエッチング開始時は小さくし、これを徐々に強めた場合には、図8(b)に示すように、上に凸の傾斜形状が形成できた。このようにして、傾斜部の形状を種々変化させことができた。
【0094】
実施例5
実施例5では、前記第3の方法によりブレーズ形状を形成した。すなわち、実施例1と同様の試料を作成し、フォトレジストのストライプ(レジストマスク35)の片側の端部に対応した基板裏面に実施例3と同様の方法でタングステンシリサイド膜のストライプ(UV遮光マスク36)を形成した。この試料の状態を図9(a)に示す。この試料を実施例1と同様の条件でエッチングした。タングステンシリサイドは紫外線を良好に遮蔽するので、この部位に対応したフォトレジスト端面は後退することがなくブレーズ形状が形成された。この効果の模式図を図3に示した。図9(b)には、エッチング途中の試料の状態が示され、図9(c)には、エッチングを完了し、完成した状態が示されている。
【0095】
なお、この方法においても実施例4と同様の方法により図10(a),(b)に示すような種々の傾斜形状を形成することができた。
【0096】
実施例6
実施例6では、エッチングガスとして、その主な活性成分がCF4,C2F6,C3F8,C4F8,CHF3,CH2F2から選択された1つもしくはいくつかのガスを含み、必要に応じて水素,ヘリウム,アルゴン,窒素から選択されたガスにより希釈された混合ガスを用い、光照射機構により放射される光として、その放射エネルギーの70%以上が波長400nmから10μmの間の光を用いた微細加工方法により、厚さ15μmの石英ガラス基板にノズル穴が1200dpi密度で配列されたインクジェットプリントヘッドのノズル板を形成した。
【0097】
ここで、イオンエッチング装置は実施例1に記載の装置と同様の装置を用い、ただし、エッチングガスはCHF3を単独で20sccmの流量で供給し、裏面から照射する光は1μmにピーク波長を有する光をメタルハライドランプに誘電体多層膜フィルタを組み合わせて生成し照射して、その他の条件は実施例1と同様にしてエッチングした。ノズル穴の形状は、アクチュエータの発生した圧力が良好にノズル穴先端に伝達し、安定したインク吐出ができるように単純なテーパー形状や円筒形状ではなく、種々の曲面形状の中からインクの特性等に合わせて実験により選択した最適な形状に形成されていることが求められるが、従来の打ち抜き法や、レーザーアブレーション法などによっては自由な形状でノズルを形成することは困難であった。
【0098】
これに対して、実施例6の方法によれば、実施例4と同様にエッチング途中で裏面から照射する光強度を変化することができ、従って種々の曲面形状を有するノズル穴を自由に形成することができた。図11(a),(b)には、マスクパターン37の形状が示されている。ここで、図11(b)は図11(a)の断面図である。また、図11(c),(d)には、光強度を一定にして形成したテーパー形状の各例が示されている。また、図11(e),(f)には、光の強度をエッチング中に変化させて作成したノズル穴形状の各例の断面が示されている。
【0099】
この実施例6では、NF3ガスを使用した場合に比べてエッチングに要する加工時間は増加したが、エッチングガスに関する保安設備が不要なので、製造設備を安価にすることができる。
【0100】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1記載の発明によれば、エッチングマスク層が形成されているエッチング対象としての基板を保持する基板保持手段と、基板の表面を、イオン化されたエッチングガスによりエッチングするイオンエッチング手段と、基板の被エッチング面の裏面から基板への光照射を行なう光照射手段と、イオンエッチング手段,光照射手段を制御する制御手段とを備えているので、光を基板の裏面から照射して基板表面での化学反応を選択的に制御することが可能になり、光エネルギーを補助的に用いて単に加工時間を短くするだけでなく、従来は基板表面への形成が困難であった直線の断面を持つ傾斜や凹レンズ形状などの微細形状の創製を高精度に容易に行なうことができる。
【0101】
特に、請求項1記載の発明によれば、イオンエッチング手段は、エッチングガスのイオン化を間欠的に行なう機能を備え、また、光照射手段は、間欠的に光を照射する機能を備え、制御手段は、イオンエッチング手段の間欠動作と光照射手段の間欠動作とを、時間的関連を持たせて周期的に制御する機能を有しているので、イオン化機構により生成されるイオン流によるエッチング反応の生成物と、裏面からの照射光による基板表面反応の生成物とをエッチングの行なわれていない期間に排出でき、それぞれの反応が影響しあって形状精度を低下させることがない。従って、製造コストの上昇をもたらす大容量の排気装置を用いることなく、形状精度を向上させることができる。
【0102】
また、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の微細加工装置において、基板保持手段は、基板保持部分に導電材料により形成され多数の開口を有するメッシュ板を有し、基板の裏面からの光照射が可能であるとともに該基板に対して上記メッシュ板によってバイアス電界を印加することができるように構成されており、基板の裏面から光を照射しながら、かつ基板に高周波バイアス電力を印加することができるので、イオン流による基板材質の縦方向のエッチング速度と紫外光によるレジスト膜の横方向のエッチング速度がそれぞれより広い範囲で独立に制御できるようになり、作成可能な形状範囲が拡大する。
【0103】
また、請求項3記載の発明によれば、石英ガラスを加工する場合に適したNF3ガスを用い、それに適したエッチング条件が設定されるので、高いエッチング速度、すなわち加工時間の短縮と優れた形状制御性が得られる。
【0104】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の方法を実施する上で最適な圧力範囲が設定されるので、最も効率の良い加工工程が実現できる。
【0105】
また、請求項5記載の発明によれば、反応性の低い安全なガスを使用するエッチング条件が設定されるので、エッチング工程の安全性を重視する場合に適したエッチング工程が実現できる。
【0106】
また、請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の方法を実施する上で最適な圧力範囲が設定されるので、最も効率の良い加工工程が実現できる。
【0107】
また、請求項7記載の発明によれば、部分的にエッチング速度の小さなマスクを併用したことにより、ストライプや穴形状の異なる部位で異なる傾斜角を持たせた微細形状が作成できる。
【0108】
また、請求項8記載の発明によれば、基板表面のごく一部のみをレジストの後退により形状制御するので、ごく一部のみを傾斜形状としたい場合にも、基板近傍のバイアス電界の分布が不均一となって形状に予期しない変化を生じさせることがない。
【0109】
また、請求項9記載の発明によれば、基板の裏面からの光は基板の一部にのみ照射されるので、エッチングマスク端面の後退を部分的に制御することができ、エッチング速度の遅い材質が得られないような条件においても請求項7および請求項8記載の発明と同様な多様な微細形状の創製が可能となる。
【0110】
また、請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の発明において基板の裏面に設けた遮光マスクにより裏面よりの光照射を部分的に遮蔽した場合と同様の効果を光照射機構と基板との間に設けた光学系により得るので、加工対象の基板に遮光パターンなどを積層する場合と異なり、マスクを繰り返し使用できて、製造低コストの加工工程が実現できる。
【0111】
また、請求項11記載の発明によれば、入力信号によってパターンを変化できる液晶ライトバルブなどの素子を使用してパーソナルコンピュータなどにより生成したパターンを基板裏面に照射して簡便に微細形状を創製することができ、遮光用のレチクルの作成は不要であるから、少量多品種の製造に適した加工工程が実現できる。
【0112】
また、本発明の別な特徴として、従来のレジストの熱変形による方法では凸形状など作成可能な形状であっても、表面張力など材質の物性で決められる性質にその形状創製の基礎をおいているから、形状制御の幅が小さいという制約があり、また良好な作成条件を得るまでには多大な試行錯誤が必要であったが、本発明の加工方法は、エッチング条件を変化することにより、設計した通りの形状が得られ、不確定要素が極めて小さいので、試行錯誤が不要となり、作成できる形状の範囲が大きく形状精度が向上するとともに製造コストの全体的な抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るイオンエッチング装置の基本的な構成例を示す図である。
【図2】図1のイオンエッチング装置により基板表面へ微細形状を作成する状況を説明するための図である。
【図3】レチクルに平行光束を照射しそのパターン形状に成形された光(UVパターン光)を基板裏面に照射して微細加工を行なう状況を示す図である。
【図4】成形した光ビームを基板に照射して微細加工を行なうイオンエッチング装置の構成例を示す図である。
【図5】実施例1の試料の作成過程を示す図である。
【図6】実施例2の試料の作成過程を示す図である。
【図7】実施例3の試料の作成過程を示す図である。
【図8】実施例4において作成された試料形状例を示す図である。
【図9】実施例5の試料の作成過程を示す図である。
【図10】実施例5において作成された試料形状例を示す図である。
【図11】実施例6の試料の作成過程と実施例6において作成された試料形状例とを示す図である。
【符号の説明】
1 エッチングチャンバ
2 エッチングガス供給機構
3 イオン化機構
4 基板
5 基板保持機構
6 真空排気機構
7 光照射機構
8 制御機構
11 光源
12 コンデンサレンズ
13 ライトバルブ素子
14 2次元パターン生成機構
15 投射レンズ
16 光導入窓
Claims (11)
- エッチングマスク層が形成されているエッチング対象としての基板を保持する基板保持手段と、基板の表面を、イオン化されたエッチングガスによりエッチングするイオンエッチング手段と、基板の被エッチング面の裏面から基板への光照射を行なう光照射手段と、イオンエッチング手段,光照射手段を制御する制御手段とを有し、前記イオンエッチング手段は、エッチングガスのイオン化を間欠的に行なう機能を備え、また、前記光照射手段は、間欠的に光を照射する機能を備え、前記制御手段は、イオンエッチング手段の間欠動作と光照射手段の間欠動作とを、時間的関連を持たせて周期的に制御する機能を有していることを特徴とする微細加工装置。
- 請求項1記載の微細加工装置において、前記基板保持手段は、導電材料により形成され多数の開口を有するメッシュ板を基板保持部分に有し、基板の裏面からの光照射が可能であるとともに該基板に対して上記メッシュ板によってバイアス電界を印加することが可能に構成されていることを特徴とする微細加工装置。
- 請求項1または請求項2記載の微細加工装置において、前記エッチングガスとしては、その主な活性成分として三弗化窒素(NF3)と酸素ガスとを含み、必要に応じてヘリウム,アルゴン,窒素から選択されたガスにより希釈された混合ガスが用いられ、前記光照射手段は、放射エネルギーの70%以上が波長170nmから380nmの間の光を放射することを特徴とする微細加工装置。
- 請求項3記載の微細加工装置において、エッチング時のエッチングガスの圧力は、1.3×10-3Paから0.13Paの間に保持されることを特徴とする微細加工装置。
- 請求項1または請求項2記載の微細加工装置において、前記エッチングガスとしては、その主な活性成分としてCF4,C2F6,C3F8,C4F8,CHF3,CH2F2から選択された1つもしくはいくつかのガスを含み、必要に応じて水素,ヘリウム,アルゴン,窒素から選択されたガスにより希釈された混合ガスが用いられ、前記光照射手段は、放射エネルギーの70%以上が波長400nmから10μmの間の光を放射することを特徴とする微細加工装置。
- 請求項5記載の微細加工装置において、エッチング時のエッチングガスの圧力は、1.3×10-3Paから0.13Paの間に保持されることを特徴とする微細加工装置。
- 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細加工装置によって基板表面に微細形状を作成する微細加工方法において、エッチングマスク層の端面の一部に、エッチング速度の小さな材料よりなる層を、基板とエッチングマスク層との間に、もしくは、エッチングマスク層の上部に積層して設けて、基板表面の微細加工を行なうことを特徴とする微細加工方法。
- 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細加工装置によって基板表面に微細形状を作成する微細加工方法において、エッチングマスク層には、光照射手段より照射される光を吸収しない材料よりなる層を用い、エッチングマスク層と基板との間に、もしくは、エッチングマスク層の上部に、所定の形状にパターニングされ光照射手段より照射される光を吸収する材料よりなる光吸収層を設けて、基板表面の微細加工を行なうことを特徴とする微細加工方法。
- 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細加工装置によって基板表面に微細形状を作成する微細加工方法において、基板の裏面に遮光パターンを設け、光照射手段からの光が基板裏面に部分的に照射される状態にして、基板表面に微細形状を形成することを特徴とする微細加工方法。
- 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の微細加工装置において、さらに、光照射手段と基板との間に、光を所定のパターン状に成形する光学手段が設けられ、光照射手段からの光が基板裏面に所定のパターンとして照射される状態にして、基板表面に形成される微細形状を制御することを特徴とする微細加工装置。
- 請求項10記載の微細加工装置において、光照射手段と基板との間に設けられる光学手段は、2次元パターンを生成するパターン生成機構と、2次元に配列された複数の画素よりなり、各々の画素が、入力された2次元パターンに従って、その画素ごとに、光を透過する状態および光を遮る状態のいずれかに切り替えられるライトバルブ機構とにより構成されていることを特徴とする微細加工装置。
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