JP3967786B2 - 薄膜音響共振子用共振音響アイソレータ - Google Patents
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Description
【発明の分野】
この発明は、高周波無線部品としてよく利用される共振音響装置に関し、かつ特に酸化ハフニウムから形成される高インピーダンス層を有する共振音響アイソレータに関する。
【0002】
【発明の背景】
電気で駆動する圧電音響共振子の用途は無線周波数での用途において多岐にわたる。圧電音響共振子は共振周波数で音響波長の2分の1の厚さを有する圧電材料の層を含む。駆動電極をこの圧電層の上下表面上に形成する。個別の圧電共振子をたとえば発振器回路内の周波数基準として使用してもよい。複数の共振子を梯子型回路網に組合せて帯域フィルタを構成することができる。
【0003】
共振子について、重要な性能指数は特性値(Q)であり、以下の式により定義される。
【0004】
【数1】
【0005】
ここでf0 は中心周波数であり、かつΔは共振の周波数幅である。平行板共振子の場合には、以下のように定義される。
【0006】
【数2】
【0007】
ここでQmは共振子の材料の固有のQ値であり、R1 およびR2 は2つの表面の反射率である。自由空気(または真空)界面では、反射率Rはほとんど1である。したがって、圧電薄膜共振子を空中に自由に浮遊させると非常に高いQ値が得られる。このような共振子については個別の形で、また統合されたフィルタとして過去に実証されている。
【0008】
しかしながら、薄膜共振子は製造が難しく、応力に対して大変敏感でかつ壊れやすいものである。代替的な方法としては固体の支持基板上に薄膜共振子を製造するやり方がある。この場合、R1 は上の空気との界面については本質的に1になるが、R2 は共振子の材料と支持基板との間の音響インピーダンス不整合によって決まり、以下のように定義される。
【0009】
【数3】
【0010】
ここで、ρは材料の密度であり、かつCはその材料における音響速度である。共振子の材料と支持基板との間の音響インピーダンスの不整合が大きければ大きいほど反射も大きくなる。残念ながら、現在使用可能な材料における音響インピーダンス値の範囲は単一界面について非常に高いQ値を生じさせるほど大きくない。ただし、高および低インピーダンス材料が交互になった連続する層を用い、各層の厚さを共振周波数の音響波長の4分の1にすれば、各対の層(高および低インピーダンス材料の)からの反射は共振周波数で同相に合成される。垂直入射については1次元の場合生じる総反射率は以下のとおりである。
【0011】
【数4】
【0012】
ここでR′は各対の層の反射率であり、かつNは対の数である。したがって、このような共振子音響アイソレータ上に装着される共振子のQ値は以下のとおり表わすことができる。
【0013】
【数5】
【0014】
材料損失が低ければ、十分な数の層を使用することによってほとんど任意の反射率を得ることができる。ただし、対になった層の数を最小限にするためには、音響不整合の大きい材料を選ぶ必要がある。音響アイソレータの支持層上に直接的に薄膜圧電共振子(上下電極を含む)を容易に製造するためには、反射器の材料に電気絶縁体を含んでいることが非常に好ましい。つまり、音響アイソレータの支持層をパターン処理しなくても、駆動電極をパターン処理することによって素子を分離できるからである。
【0015】
二酸化シリコン(SiO2 )は、共振子音響アイソレータにおける低インピーダンス層(Za≒13)に有効に使用できる。その理由は、二酸化シリコンが損失の低い材料であり、さまざまな技術によって堆積が可能であり、また半導体業界において使用頻度が高い材料だからである。しかしながら、高音響インピーダンス材料については、多層共振子音響アイソレータを作る際にSiO2 の堆積法と両立する技術を用いて堆積させることが容易な材料が求められている。
【0016】
【発明の要約】
本発明は、薄膜音響共振子を支持するために用いることができる多層共振子音響アイソレータを含む。この音響共振子は、典型的には上下電極接点を有する圧電材料の膜を含む。この共振子は共振子音響アイソレータ上に形成することができ、同アイソレータは、少なくとも1対の、異なる音響インピーダンスの材料からなる層を含む。この対になった層を高および低インピーダンス材料の交互の層の形で基板上に形成し、各層の厚さは共振周波数の音響波長の4分の1である。層の各対からの反射は、共振周波数で合成されて同相になるので、対になった層を用いることによってアイソレータの反射率は向上する。低インピーダンス材料に二酸化シリコン(SiO2 )の使用が好ましいのは、二酸化シリコンが半導体産業において簡単に手に入る材料だからであり、また固有の音響損失が非常に低く比較的音響インピーダンスが低く(およそ13)、またさまざまな好都合な方法で堆積させることができるからである。酸化ハフニウム(HfO2 )を高音響インピーダンス材料に使用するのが好ましいのは、堆積させて比較的高い音響インピーダンス(およそ40)を有する硬質な密度の高い誘電体を形成することができるからである。この構造は、複数のウェハを一度にコーティングでき、SiO2 とHfO2 の層が交互になった積層物全体を電子ビーム堆積技術によって同じチャンバ内に堆積させることができるため、低コストの製造を実現するという利点がある。
【0017】
本発明の基本的な目的は、薄膜音響共振子を支持することができる有効な共振子音響アイソレータを実現することである。本発明の特徴の1つは、低音響インピーダンス材料の層と酸化ハフニウムからなる高音響インピーダンスの層とを含む少なくとも1対の4分の1音響波長層にある。本発明の利点の1つは一般に使用される低インピーダンス材料との関連において高インピーダンスの酸化ハフニウムの堆積が簡単に行なえる点である。
【0018】
【好ましい実施例の詳細な説明】
本発明は、多層共振子音響アイソレータを含む。薄膜音響共振子と組合せた音響アイソレータ10の実施例を図1の模式断面図に示す。音響アイソレータ10は基板11上に形成され、同基板はたとえばガラス等の絶縁体を含み得る。高および低音響インピーダンスの音響絶縁材料を、たとえば層12および層13等(ならびに任意の層14および15等)の交互の層で対にして基板11上に堆積させる。
【0019】
図1に示すとおり、音響アイソレータ10は、上下電極接点17および19それぞれを有する圧電材料18の層を含む音響共振子を支持する。この圧電材料層18は典型的には共振周波数の音響波長の2分の1の厚さを有する。音響アイソレータ10の層12および13は、高および低インピーダンス材料の層が交互になって基板11上に形成され、各層が共振周波数の音響波長の4分の1の厚さを有する。少ない数の層の対で高反射率および低音響損失を実現するためには、音響インピーダンスにおいてかなりの差があり、低インピーダンス材料が音響共振子にほとんど近い材料を含む、対になった層(層12および層13等)を使用することが有利である。好ましい実施例においては、高インピーダンス材料(たとえば図1の層12および層14)は酸化ハフニウム(HfO2 )を含み、かつ低インピーダンス材料(たとえば図1の層13および層15)は二酸化シリコン(SiO2 )を含む。
【0020】
図2は、さまざまな数の対の4分の1音響波長層(上記のとおり)を含む共振子音響アイソレータ10上に装着された薄膜圧電音響共振子(上部自由空気表面を有する)の有効Q値(上に定義したとおり)を示すグラフである。二酸化シリコンは全曲線について低インピーダンス材料であると仮定し、高インピーダンス材料はZa =25から40の範囲である。基板はシリコンで、かつ薄膜圧電共振子自体がZa =35のインピーダンスを有すると仮定する。図2からわかるとおり、より少ない数の対の音響アイソレータ層でより高いQ値が実現され得るのは、高および低インピーダンス材料のインピーダンスの差が最大の場合である。
【0021】
二酸化シリコンを低インピーダンス材料に使用することが好ましい理由は、二酸化シリコンが半導体産業で簡単に手に入る材料であり、固有の音響損失が非常に低く、比較的低い音響インピーダンス(Za はおよそ13)で、かつさまざまな好都合な方法で堆積させることができるからである。酸化ハフニウムは、この交互の層において特に高音響インピーダンス材料の方への使用に適しており、その理由はたとえばイオンボンバードメントと同時にスパッタリングまたは電子ビーム蒸着により堆積させ比較的高い音響インピーダンス(Za がおよそ40)の硬質な密度の高い誘電体を形成することができるからである。
【0022】
代替的高音響インピーダンス材料としては、TiO2 およびZrO2 等がHfO2 とほとんど同じ音響インピーダンスを有しかつ蒸着させることができるが、これらの材料は密度が低くかつ音響速度が高いため、1/4音響波長を実現するにはより厚い膜が必要である。より音響インピーダンスが高い材料にはさまざまな金属が挙げられるが、薄膜音響共振子はエリア内に封じ込める必要があるので、多層の音響アイソレータをパターン処理して圧電共振子18の電気接点17および19からこれらを電気的に絶縁する必要が生じると考えられる。窒化アルミニウムと酸化亜鉛(Za がおよそ35)を高インピーダンス材料として使用することも可能だが、これらの材料のインピーダンスが酸化ハフニウムに比べて低いため、図2に示すとおり、同じ反射率を実現するにはより多い数の層の対を必要とする。さらに、窒化アルミニウムと酸化亜鉛は蒸着法によって有効に堆積させることができない。これら材料の層はレーザ(補助による)堆積法やスパッタリングで形成することができるが、そのような一括して行なうことができない処理は本質的にコストがより高くなる。
【0023】
共振子音響アイソレータ10を製造する場合、低温で蒸着するHfO2 膜は音響的に損失があることがわかっている。基板温度を400℃より上に上げれば密度が上がるが、この場合膜は粗い表面の多結晶になり、許容でなきい音響散乱を生じる。しかしながら、イオン(補助による)電子ビーム蒸着法(つまり先行技術ではイオンボンバードメントと同時に電子ビーム蒸着を行なう方法として公知である)を使用して必要なバルク密度と硬度とを達成し、一方で滑らかな表面を維持する方法が使用されている。この方法による膜は音響損失が低いことがわかっている。非常に反射率の高い層がこの方法によって製造されており、高性能の共振音響アイソレータが得られる。
【0024】
本発明は、特定の実施例に関連して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく当業者はさまざまに変更修正を加えることができるであろう。したがって、そのような変更および修正は特許請求の範囲内に包含されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の音響共振子の模式断面図である。
【図2】Za の値が25から40の範囲の高インピーダンス材料を使用する層対の数に対する限界Q値を指すグラフである。
【符号の説明】
10 音響アイソレータ
11 基板
Claims (7)
- 薄膜音響共振子用共振音響アイソレータであって、
基板と、
前記基板上に形成された少なくとも1対の層とを含み、
前記1対の層が酸化ハフニウムを含む高音響インピーダンス材料からなる第1の層と、前記高音響インピーダンス材料よりも低い音響インピーダンスを有する低音響インピーダンス材料からなる第2の層とを含み、
前記1対の層の上に形成された薄膜音響共振子をさらに含む、共振音響アイソレータ。 - 前記低音響インピーダンス材料からなる第2の層が二酸化シリコンを含む、請求項1に記載の共振音響アイソレータ。
- 前記基板上に前記高音響インピーダンス材料および低音響インピーダンス材料の層を交互に積層したものを形成する前記第1および第2の層の複数の対をさらに含む、請求項1に記載の共振音響アイソレータ。
- 前記第1および第2の層の各々が前記音響共振子の共振周波数の音響波長の4分の1の厚さを有する、請求項1に記載の共振音響アイソレータ。
- イオンボンバードメントと同時に行なう電子ビーム蒸着によって前記第1の層が形成される、請求項1に記載の共振音響アイソレータ。
- 前記酸化ハフニウムからなる第1の層をスパッタリングにより蒸着させる、請求項1に記載の共振音響アイソレータ。
- 前記薄膜共振子が上部および下部電気接点を有する圧電材料の層を含む、請求項1に記載の共振音響アイソレータ。
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