JP3967728B2 - 複合磁性材料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複合磁性材料に係り、特に、常温域において永久磁石で比較的簡便に生成可能な磁場を用いて磁気冷凍サイクルを実現することが可能な複合磁性材料及びその製造方法に係る。
近年、常温域における磁気冷凍技術の研究が活発化している。磁気冷凍では、磁気熱量効果(磁性物質に対して断熱状態で外部磁場を変化させると、その温度が変化する現象)を利用して、以下のように低温を生成している。
磁性物質では、磁場印加時の状態と磁場除去時の状態の間で、電子磁気スピン系の自由度の相違に起因してエントロピーが変化する。このようなエントロピーの変化に伴い、電子磁気スピン系と格子系との間でエントロピーの移動が起こる。磁気冷凍では、大きな電子磁気スピンを持った磁性物質を作業物質として使用し、磁場印加時と磁場除去時の間での大きなエントロピーの変化を利用して、電子磁気スピン系と格子系との間でエントロピーの授受を行わせ、これによって低温を生成している。
1997年、米国の Zimm らは、細かい球形のGd(ガドリニウム)が充填された充填筒を用いてAMR方式(“Active Magnetic Refrigeration”)の磁気冷凍機を試作し、超伝導磁石によって磁場を印加することにより、室温域における磁気冷凍サイクルを1年以上、連続定常運転することに成功した(非特許文献1)。
また、米国特許第5743095号(特許文献1)には、室温領域においてガドリニウムよりも大きなエントロピー変化が得られる磁性物質として、ガドリニウム−ゲルマニウム−シリコンからなる金属間化合物であるGd(Ge,Si)系物質が記載されている。例えば、Gd(Ge0.5Si0.5では、277K近傍でエントロピー変化が最大となり、約277Kにおいて、外部印加磁場を0から5テスラに変化させた場合に約20(J/kg・K)のエントロピー変化(ΔS)を示し、また、0から2テスラに変化させた場合に約15(J/kg・K)のエントロピー変化(ΔS)を示す。このエントロピー変化は、Gdのエントロピー変化の最大値(約294K近傍において観測される)と比較して2倍以上大きい。但し、2〜5テスラ程度の大きな外部磁場を発生させるためには、通常、超電導磁石を使用する必要がある。しかし、超電導磁石を使用するシステムを冷凍や空調などの日常的な用途へ適用することは非現実的である。
更に、室温領域で、永久磁石を用いて比較的簡便に生成できる磁場の強度範囲内(例えば、1テスラ以下)において、大きなエントロピー変化が得られる磁性物質として、ランタン−鉄−シリコンからなる金属間化合物であるLa(Fe,Si)13系物質が提案されている(特許文献2、非特許文献2〜5)。
ところで、これらの磁性材料を、磁気冷凍システムにおいて温度サイクルを生じさせるための作業物質(以下、磁気冷凍作業物質と呼ぶ)として用いる場合、磁気熱量効果によって大きな温度差が発生することに加えて、熱交換媒体との間での十分な熱交換を可能にする必要がある。そのためには、これらの磁性材料を、比表面積が大きく且つ熱交換媒体の流路が十分に確保されるような形状に加工する必要がある。具体的には、これらの磁性材料を、薄板状に加工した後に蛇腹状に折り曲げてハニカム状の構造にしたり、メッシュ状に加工した後に積層したり、あるいは、球状の粒子に加工して容器内に充填することなどが考えられる。
更に、これらの磁性材料には、下記の理由で、十分な機械的強度を有していることが要求される。即ち、磁気冷凍システムにおいて温度サイクルを生じさせたとき、磁気冷凍作業物質は、熱交換媒体であるガスまたは液体の流れによる圧力及び熱衝撃に曝される。仮に、磁気冷凍作業物質が脆弱である場合には、圧力や熱衝撃を繰り返し受けることによってクラックや割れが生ずる。このようなクラックや割れに伴い微粉が発生すると、その微粉が熱交換媒体の流路を塞いで、冷凍システムの能力を低下させる。特に、磁気冷凍作業室として、容器内に球状の粒子を充填したものを使用する場合には、相互の衝突や容器内壁との接触などによって粒子の形状が変化して、粒子間の空隙を安定して保つことが困難になるおそれがある。その結果、熱交換媒体の圧力損失が増大すると、冷凍システムの能力の低下を招く。
しかしながら、上記のガドリニウム−ゲルマニウム−シリコン系や、ランタン−鉄−シリコン系の金属間化合物は、他の一般的な希土類元素を含む金属間化合物と同様に、非常に脆弱であり、Gd単体と比べても格段に機械的強度が低い。更に、上記のガドリニウム−ゲルマニウム−シリコン系や、ランタン−鉄−シリコン系の金属間化合物は、他の希土類元素を含む金属間化合物と同様に延性や展性に乏しい。このため、Cu、Al、Gdなどの単元素金属や、真鍮、ステンレス、パーマロイ等のCu基、Fe基、Gd基などの様々な種類の合金材料と比べて、圧延、線引き、折り曲げ、切削等の機械的な加工が困難である。
また、希土類元素は一般に化学的に活性が高いので、GdまたはLaを含有する上記の金属間化合物は、他の希土類元素を含む金属間化合物と同様に比較的酸化され易い。特に、1500℃を超えるような高温では酸素及び窒素との間の反応性が高く、酸化及び窒素化の何れに対しても活性である。なお、酸化活性は軽希土類元素ほど高い。
上述のように、ガドリニウム−ゲルマニウム−シリコン系や、ランタン−鉄−シリコン系の金属間化合物は、延性及び展性に乏しい。このため、メッシュやシートなどの形状への機械的な加工が困難である。一方、球状の粒子を形成する方法として、一般的に、以下のような方法が知られている:
(a)材料を適当な大きさに細断した後、衝突や研磨により角を落として球状化する;
(b)材料を坩堝内で溶融した後、坩堝の先端に設けられたノズルから、充分に容量の大きい気体浴(または液体浴)内に溶融物を射出し、その表面張力により球状化させ、気体(または液体)との熱交換により冷却して凝固させる(アトマイズ法);
(c)材料を坩堝内で溶融した後、高速で回転しているディスクの上に溶融物を滴下し、粒子状に凝固させる(回転ディスク法);
(d)材料の破砕片をプラズマジェットを用いて溶融すると同時に噴霧し、次いで、凝固させて粉末化する(プラズマスプレー法);
(e)材料からなる電極棒を高速で回転させながら、プラズマアーク放電によって電流を流し、電極棒の表面を溶融させると同時に遠心力で溶融物を噴霧し、凝固させて粉末化する(回転電極法)。
しかしながら、上記のガドリニウム−ゲルマニウム−シリコン系や、ランタン−鉄−シリコン系の金属間化合物は、非常に脆弱であり、機械的強度に劣るため、(a)のような機械的な加工による球状化は困難である。
また、上記の金属間化合物は、融点が1500℃程度以上と非常に高く、且つ、融点以上の高温では酸化や窒化に対して活性が極めて高くなるため、石英、アルミナ、ジルコニア、BN、AlN製などの坩堝を用いるアトマイズ法(b)、回転ディスク法(c)による球状化も容易ではない。
これに対して、プラズマスプレー法(d)は、坩堝を使用しないので、上記のような問題が生じない。この方法では、材料の砕片がプラズマジェットに乗って勢いよく噴射されるため、砕片が高熱に曝される時間が短い。このため、この方法は、比較的小さな球状粒子の製造には適しているが、比較的大きな球状粒子の製造には適していない。即ち、径の比較的大きな粒子を製造しようとすると、砕片が充分に溶融する前に凝固してしまうため、噴射直後の形状に近いままの異形状であったり、多くの角が残ったりする傾向があり、真球に近い形状を得ることは困難である。上記の金属間化合物の場合、プラズマスプレー法(d)では、0.01mm以下の小さな粒子径の場合には球状の粉末を得ることは可能である。しかし、0.2mm以上2mm以下程度の比較的大きな粒子径を製造しようとすると、異形状の粒子の割合が増え、真球に近い粒子の収率が著しく低くなる。
その他、坩堝を使用しない方法として回転電極法(e)がある。この方法では、電極棒を高速で回転させるため、電極棒として使用される材料に対して機械的強度が要求される。即ち、溶融の際、電極棒を回転軸に強固に固定する必要がある。そのような固定方法として、旋盤で用いられているようなチャックを用いて固定する方法や、電極棒に回転方向とは逆方向のネジを加工し、そのネジを用いて固定する方法などがある。しかしながら、上記の金属間化合物は、非常に脆弱であり機械的強度に劣るため、チャックを用いて高速回転に耐えられる強さで固定することは困難であり、更に、延性や展性に乏しいため、ネジ加工を施すことも困難である。従って、上記の金属間化合物に代表される脆弱な材料では、回転電極法(e)を用いた球状化も困難である。
以上のように、上記のガドリニウム−ゲルマニウム−シリコン系や、ランタン−鉄−シリコン系の金属間化合物は、大きな磁気熱量効果を有するという優れた性質を備えているが、磁気冷凍システムでの使用を考えた場合、磁気冷凍作業物質として適した形状への加工が困難であるという実用上の問題がある。
米国特許第5743095号明細書 特開2002−356748公報 C. Zimm, et al., Advances in Cryogenic Engineering, Vol.43 (1998), p.1759 F.X.Hu, et al., J. Phys. Condens. Matter, 12(2000), L691 X.X.Zhang, et al., Appl. Phys. Lett., Vol.77 No.19 (2000), p.3072 S.Fujieda, et al., Appl. Phys. Lett., Vol.81 No.7,(2002), p.1276 藤田麻哉ら, まてりあ, Vol.41 No.4,(2002), p.269
本発明は、磁気冷凍システムにおいて作業物質として使用される磁性材料に関する以上のような問題点に鑑み成されたものである。本発明の目的は、常温域(例えば、ドライアイスの温度−78℃から湯の温度+80℃程度までの範囲)において比較的低い磁場を用いて磁気冷凍サイクルを実現することが可能であり、且つ、磁気冷凍システムで使用する際に磁気冷凍作業物質に対して要求される充分な機械的強度を備え、且つ適切な形状に加工可能な磁性材料を提供することにある。更に、本発明の目的は、そのような磁性材料を製造するための方法及びそのような磁性材料を使用する磁気冷凍システムを提供することにある。
本発明の複合磁性材料は、
磁気冷凍システムで作業物質として使用され、少なくとも二つの相で構成される複合磁性材料であって、
第一の相は、一般式:La(Fe,(Co,Ni),Si)13で表され、NaZn13型の結晶構造を備えた金属間化合物からなり、且つ、その平均広がり大きさが100μm以下であり、
第二の相は、Siを含有する鉄合金からなることを特徴とする。
本発明の複合磁性材料は、金属組織で見たとき、少なくとも二つの相から構成される。第一の相は、NaZn13型の立方晶の結晶構造を備えた金属間化合物であって、“Na”のサイトにLaが入り、“Zn”のサイトにFe及びSiが入ったものである。なお、Feの一部はCoおよび/またはNiと置換可能であり、Feの上限を“Zn”のサイト中の12%程度とすることで、常温域において優れた磁気熱量効果を得ることができる。
このような金属間化合物は、先に説明したように、大きな磁気熱量効果を備えているが、それ自体では脆く、機械強度が低い。第二の相は、Siを含有する鉄合金からなり、機械的強度が高く、延性に富んでいる。従って、このように、前記金属間化合物からなる相の中に延性に富む鉄合金相を分散させることによって、前記金属間化合物に起因する大きな磁気熱量効果を維持しながら、複合磁性材料の全体としての機械的強度を改善することができる。また、この第二の相は、透磁率が高く軟磁性である。このため、外部から印加された磁場が比較的低い場合においても、磁場を、損失無く、上記のNaZn13型の金属間化合物に伝えることができる。
更に、本発明の複合磁性材料では、前記金属間化合物からなる相(第一の相)の「平均広がり大きさ」を100μm以下に抑える。このように、前記金属間化合物からなる相の広がりの範囲を100μm以下に抑えることによって、前記金属間化合物に亀裂が生じたとき、延性に富む鉄合金相によって亀裂が捕捉され、亀裂の伝播が阻止される。その結果、複合磁性材料の全体としての機械的強度を確保することが可能になる。
ここで、「平均広がり大きさ」は、下記の方法により求められる値として定義される。即ち、上記の複合磁性材料の断面組織を観察し、その断面において第一の相の中にランダムに10点を選ぶ。各々の点について、その点自身を含み、且つ副相を含まない最大径の円を描く。このようにして得られた10個の円の直径の平均値を計算する。このような作業(セット)を5〜6回程度繰り返し、各セットで求められる上記平均値が安定した(一定の範囲内に収まる)値として得られたとき、その平均値を「平均広がり大きさ」とする。各セットで求められる上記平均値の値がバラつく場合には、5〜6セットの値で最大値と最小値をカットして、他のセットの値を平均することによって、その値を「平均広がり大きさ」とする。
好ましくは、上記の複合磁性材料は、Feを主要成分として含有し、Laを4原子%以上12原子%以下、Siを2原子%以上21原子%以下、Co及びNiを合計で0原子%以上11原子%以下含有し、且つ、Fe、Co及びNiの含有量の合計が75原子%以上92原子%以下である。
Laの割合を4原子%以上、12原子%以下とすることにより、NaZn13型の結晶構造を有する第一の相の構成比率が高まり、それにより、常温域で優れた磁気熱量効果を得ることができる。Siを2原子%以上とすることにより、第二の相として形成される鉄合金相中にSiが適度に含有され、それにより、この第二の相に良好な軟磁気特性を付与することができる。一方、Siを21原子%以下とすることにより、第二の相として形成される鉄合金相の機械的強度が高まり、複合材料全体としての機械的強度を確保することができる。
本願発明者による試験の結果によれば、第二の相であるSiを含有する鉄合金が軟磁気特性を有し、且つ、十分な機械的強度を備えるために適切なSiの含有量は、0.5〜5原子%であり、好ましくは、1〜3原子%である。このような条件に適合する第二の相を得るためには、好ましくは、複合材料全体のSi含有量を13原子%以下とする。
Fe、Co及びNiの含有量の合計を75原子%以上とすることにより、常温域で優れた磁気熱量効果を得ることができる。一方、NaZn13型の結晶構造を有する第一の相の構成比率を高く保ち、それにより、常温域で優れた磁気熱量効果を得るためには、好ましくは、Fe、Co及びNiの含有量の合計を92原子%以下とする。
更に、NaZn13型の結晶構造を有する第一の相において、“Zn”のサイトを占める磁性元素(即ち、Fe、Co及びNi)中で、Co及びNiの含有量を調整することによって、大きな磁気熱量効果が現れる温度領域をコントロールすることができる。そのような含有量として、好ましくは、Co及びNiを合計で11原子%以下とする。
好ましくは、前記第二の相は、体心立方または面心立方の結晶構造を備える。
このように、前記第二の相が前記第一の相と同様に立方晶系の結晶構造を備えていれば、当該複合磁性材料が温度サイクルに曝されたとき、何れの相も温度変化に伴う結晶格子の寸法変化が等方的に生ずるので、その歪を全体で効果的に吸収することができる。それにより、クラック発生の要因が大きく取り除かれ、長期間に渡って機械的な強度を維持することができる。
なお、本発明の複合磁性材料は、前記第二の相に加えて、Laを主なる構成元素とする金属間化合物からなる第三の相を備えていることがある。
本発明の複合磁性材料を、磁気冷凍システムにおいて作業物質として使用する場合、熱交換媒体との間で充分な熱交換を行わせるために、例えば、粒子状に成形する必要がある。また、粒子の形状を表面に突起がない滑らかなものにすることによって、粒子の破壊に伴う微粉の発生を防止して、熱交換媒体の流路内での圧力損失の増大を抑えることができる。そのために、好ましくは、上記の複合磁性材料を、短径が0.2mm以上、長径が2mm以下の球状または回転楕円体状の粒子に成形する。
球状または回転楕円体状の形状の複合磁性材料において、粒子径が小さ過ぎる場合には、熱交換媒体の圧力損失が高くなるので発熱の要因となり、その結果、冷凍能力の低下を招く。逆に、粒子径が大き過ぎる場合には、複合磁性材料の比表面積が小さくなるので、複合磁性材料と熱交換媒体との間の熱交換の効率が低下し、冷凍能力の低下を招く。従って、短径を0.2mm以上とすることにより、熱交換媒体の圧力損失を小さくすることが可能となり、一方、長径を2mm以下とすることにより、高い熱交換効率を得ることができる。
なお、熱交換媒体としては、磁気冷凍システムの運転温度域に合わせて、鉱物油、溶剤、水、あるいはそれらの混合物を選択することができる。複合磁性材料からなる粒子の径も、使用される熱交換媒体の粘性やその背圧(即ち、ポンプまたはモータのキャパシティなど)に応じて、上記の範囲内で最適な粒子径を選ぶことができる。
上記の磁性材粒子は、磁気冷凍システムにおいて、磁気冷凍作業室の中に、熱交換媒体の流路となる空間が確保されるような状態で充填される。ここで、磁気冷凍作業室内での磁性材粒子の充填率が低い場合には、熱交換媒体との間での熱交換の際、熱交換媒体の流れによって磁性材粒子が踊ってしまい、磁性材粒子同志の衝突が起こる。このような衝突は、磁性材粒子にクラックを生じさせ、更にその破壊を招く。磁性材粒子の破壊に伴う微粉の発生は、熱交換媒体の圧力損失を高め、冷凍能力を低下させる要因となる。
なお、上記の磁性材粒子を焼結により結合して多孔質体にすることによって、上記のような問題を解決することもできる。その場合、前記粒子を、前記複合磁性材料の融点より低い温度で焼結して拡散により結合する。また、好ましくは、この焼結体中の前記粒子の含有率を70重量%以上とし、空隙率を25%以上60%以下とする。
また、本発明の複合磁性材料の製造方法は、
Feを主要成分として含有し、Laを4原子%以上12原子%以下、Siを2原子%以上21原子%以下、Co及びNiを合計で0原子%以上11原子%以下含有し、且つ、Fe、Co及びNiの含有量の合計が75原子%以上92原子%以下である原料を溶解して、Siを含有する体心立方構造の鉄合金を主相とするインゴットを製造する第一工程と、
このインゴットから、Siを含有する鉄合金からなる主相と、Laを主成分とする副相とを含む少なくとも二つの相から構成され、粒状、平板状または線状の中間体を製造する第二工程と、
この中間体を熱処理することによって中間体の構成元素を相互に拡散させ、前記主相の中から、一般式:La(Fe,(Co,Ni),Si)13で表され、NaZn13型の結晶構造を備えた金属間化合物を析出させる第三工程と、
を有することを特徴とする。ここで、前記構成元素の相互の拡散は、例えば、固相拡散による。
好ましくは、前記第二工程において、前記インゴットから電極棒を加工し、次いで、この電極棒を回転電極法を用いて溶融することにより、粒状の中間体を製造する。
好ましくは、前記粒状の中間体を分級して、短径が0.2mm以上、長径が2mm以下の球状または回転楕円体状の粒子を集め、この粒子に上記の熱処理を施す。
なお、前記中間体として、平板状または線状のものを用いることもできる。平板状の中間体は、前記インゴットを圧延することにより製造することができる。線状の中間体は、前記インゴットから引抜き加工によって製造することができる。
本発明に基づく磁性材料を用いる磁気冷凍システムは、主要な構成要素として、磁気冷凍作業室、導入配管、排出配管及び永久磁石を備える。磁性材料は磁気冷凍作業室の内部に充填される。熱交換媒体は、導入配管を介して磁気冷凍作業室の中に導入され、排出配管を介して排出される。永久磁石は、磁気冷凍作業室の近傍に配置される。磁気冷凍作業室に対する永久磁石の相対位置を変化させることによって、磁性材料に対する磁場の印加及び除去を行う。磁性材料は、磁場を除去した時に冷却される。熱交換媒体は、このようにして冷却された磁性材料との熱交換によって冷却される。
好ましくは、上記の排出配管は二つの系統に分けられる。第一の排出配管は、磁気冷凍作業室から内部の予冷に使用された熱交換媒体を取り出す際に使用される。第二の排出配管は、磁気冷凍作業室から内部で冷却された熱交換媒体を取り出す際に使用される。磁気冷凍作業室に対する永久磁石の相対位置を変化させるため、駆動装置が設けられ、この駆動装置に永久磁石が取り付けられる。永久磁石の相対位置の変化に同期させて、磁気冷凍作業室からの熱交換媒体の排出経路を、第一排出配管と第二排出配管の間で切替えることによって、磁気冷凍サイクルが構成される。
本発明の複合磁性材料によれば、常温域において比較的低い磁場を用いて磁気冷凍サイクルを実現することができる。更に、本発明の複合磁性材料は、機械的強度に優れているので、産業的または家庭的用途に適用可能な磁気冷凍システムを設計する際、磁気冷凍作業物質に対して要求される基本的な性能を兼ね備えている。また、本発明の製造方法によることで、実用形状に加工された複合磁性材料を得ることが可能になる。
次に、本発明に基づく複合磁性材料及びその製造方法について、例を用いて説明する。
<母合金の鋳造>
Fe:Co:Si:Laの元素構成比が約82:5:6:7となるように原料を配合し、これを不活性ガス雰囲気中で高周波溶解炉を用いて溶解し、この雰囲気中で寸法形状及び冷却の条件を変えて鋳造した。それにより、金属組織が互いに異なる5種類の母合金A〜Eのインゴットを作製した。なお、不活性ガスとして、A、B、D及びEではArガスを、CではArとHeの混合ガスを用いた。鋳造時の溶湯温度は、1500℃〜1600℃であった。各インゴットの形状は、円柱状で、径または長さが互いに異なっている。D及びEのインゴットについては、更に、真空炉を用いて1050℃で一週間の熱処理を施した。表1に、これらの母合金A〜Eの諸元及びその評価試験の結果を示す。
Figure 0003967728
母合金A〜Cの断面の金属組織を光学顕微鏡を用いて観察した。図1〜図3に、それぞれ、各母合金の金属組織の光学顕微鏡写真を示す。母合金A〜Cでは、主相と副相が微細に入組んだ金属組織となっていることが分かる。ここで、主相の繊維径は、母合金Aでは数μm〜15μm程度、母合金Bでは10μm〜30μm程度、母合金Cでは数μm〜20μmとなっている。一方、母合金D及びEでは、主相の中に副相が島状にところどころ析出した金属組織が得られた。副相の大きさは、3μm程度の小さいものもあるが、大部分は数10から100μm程度の大きな島状となっていた。
各母合金の主相の結晶構造をX線回折によって同定した。また、インゴットの断面のSEMによる元素分析(EDX)を行い、各母合金の主相及び副相の構成元素を調べた。その結果、母合金A〜Cでは、主相は体心立方(bcc)の結晶構造を有する鉄合金であって、主相中のSiの含有量は2.2〜3.2原子%程度、Coの含有量は3.9〜4.5原子%程度であった。また、母合金A〜Cの何れにおいても、副相中のLaの含有量は30原子%以上であった。一方、母合金D及びEでは、主相はNaZn13型の立方晶の結晶構造を有していた。
これら5種類の母合金のインゴットの一方の端部に切削によりネジを加工した。その結果、母合金A〜Cでは、割れが生ずることなくネジ山を加工することができたが、母合金D及びEでは、加工面が脆く崩れてしまい、ネジ山を加工することはできなかった。
次に、コレットタイプのチャックを用いて、各母合金のインゴットのもう一方の端部を徐々に締め付けて行った。母合金A〜Cでは、破損することなく強く固定することができたが、母合金D及びEでは、インゴットの表面に欠けや割れが生じて強く固定することができなかった。更に、チャックを緩めて母合金を取り外し、各母合金の外観を観察したところ、母合金A〜Cでは、コレットの痕跡が残っていたものの、表面に欠けや割れは認められなかった。
このように、母合金A〜Cは、ネジを用いて固定すること、及びコレットタイプのチャックを用いて固定することが可能であることが分かった。これに対して、母合金D及びEは、脆弱であるためにネジ加工を施すことができず、また、コレットタイプのチャックを用いて固定することも困難であった。
以上のように、Fe:Co:Si:Laの元素構成比がLa(Fe,T,Si)13で表される金属間化合物とほぼ同様な母合金であっても、主相が体心立方(bcc)構造の鉄合金である複合組織を持つように金属組織を調整することによって、切削性及び機械的強度に優れた材料を得ることができることが判明した。このような材料は、10,000rpmの高速回転にも十分に耐え得るので、回転電極法を用いて粒子を作製する際の電極棒として使用することができる。
更に、Fe:Co:Si:Laの元素構成比が、約72:9:11:8の場合(母合金F)、約82:5:5:8の場合(母合金G)、約82:6:5:7の場合、約82:7:4:7の場合、約83:6:4:7の場合、約83.5:7:2.5:7の場合、約71:5:19:5の場合、約75:5:15:5の場合、約83:3:9:5の場合、約82:5:7:6の場合(母合金K)、約84:6:5:5の場合、Fe:Si:Laの元素構成比が、約75:18:7の場合、約82:11:7の場合、Fe:Co:Ni:Si:Laの元素構成比が約81:3:3:6:7の場合(母合金H)、及び、Fe:Ni:Si:Laの元素構成比が約82:2:9:7の場合(母合金I)、約83:5:5:7の場合の各場合について、上記と同様な条件で母合金を鋳造した。なお、これらの母合金A〜Iの配合比は、溶解時のLaの蒸発や酸化による減量を考慮して、Laについては予め3〜10%程度多めにして調合した。
その結果、主相がbcc型結晶構造の鉄合金であって、Siを2〜4.5原子%程度含有し、副相がLaを30原子%以上含有する場合に、切削性及び機械的強度に優れた材料を得ることができることが判明した。そのような材料は、ネジ切りが可能であることに加えて、コレットチャックを用いて固定することも可能であり、従って、回転電極法の電極棒として使用することができる。
更に、母合金B、F及びGから切り出された10mmX10mm角で厚さ3mmの素材を用いて、圧延試験を行ったところ、容易に1mm以下の厚さに延ばすことができることが確認された。
<回転電極法による粒子の製造>
次に、上記の母合金の内のB及びCから、回転電極法を用いて、下記のように粒子を製造した。先ず、上述のように、母合金のインゴットの一方の端部に切削によりネジを加工して、電極棒を作製した。このネジ部を介して電極棒を回転軸に固定し、不活性ガス雰囲気のチャンバー内で、電極棒をネジ締め方向に対して逆方向に高速回転させ、電極棒の先端部と対向電極との間でプラズマアーク放電を発生させた。母合金からなる電極棒は、先端部から徐々に溶融され、溶融した部分は遠心力により液滴となってチャンバー内に勢い良く飛散し、不活性ガスとの熱交換により冷却されて凝固し、略球状の粒子が得られた。
なお、飛散した液滴は、不活性ガス雰囲気を飛行中、液体の状態で形状を整え、次いで凝固する。このとき、遠心力により飛散する力と表面張力によって球に近い形状を形成しようとする力とのバランスによってその液滴の形状が決まる。また、液滴の凝固が不完全な内にチャンバーの壁に到達すると、衝突の力が加わって形状が変形され、チャンバー壁により急激に冷却され凝固する。従って、放電のパワーや、電極棒の径、及び回転速度を変化させることによって、製造される粒子の形状及びサイズを調整することができる。この試験では、回転速度を1,000〜10,000rpmの間で変化させたところ、長径が2.0mm以下でアスペクト比が2以下の粒子が大きな収率で得られた。
<回転電極法により得られた粒子の組織>
母合金B及びCについて、上記の方法を用いて得られたそれぞれの粒子から任意に0.3g程度の粒子を取り出し、各々のサンプルについてX線回折により構造解析を行った。その結果、何れのサンプルにおいても、主相は体心立方(bcc)構造であることが分かった。また、粒子の断面の金属組織をSEMで観察したところ、何れのサンプルも、主に二相からなる複合組織を備えていることが分かった。図4及び図5に、それぞれ、母合金B及びCから製造された粒子の断面の金属組織の模式図及びSEMによる組成像を示す。
主相は、Siを2.2〜3.2原子%程度、Coを4.1〜4.5原子%程度、Feを92〜94原子%程度含有する鉄合金であった。副相は、Laを主たる構成元素とし、次いでSiとCoを多く含む面心立方(fcc)の結晶構造を備えていた。
また、母合金Bから製造された粒子では、fcc構造のLa化合物からなる副相の格子定数が、bcc構造の鉄合金からなる主相の格子定数の約2倍であって、ほぼ格子整合していることが分かった。そのズレは約3%以内であった。
<拡散のための粒子の熱処理>
母合金B及びCについて、上記の方法を用いて得られた粒子に各種の条件で熱処理を施して、主相と副相及びそれ以外の相との間で原子の相互の拡散を促進させた。
具体的には、母合金B及びCについて、先ず粒子径に基づきそれぞれ4〜5種類のクラスに選別し、各粒子径のクラスから10〜50g程度のサンプルを取り出し、各サンプルに更に幾つかの異なる条件で熱処理を施した。なお、この熱処理は、次のようにして行った。先ず、石英管の中に各サンプルを入れ、1×10−6Torr程度の真空度のAr雰囲気中で200℃程度の温度でベーキングを行った後、この雰囲気中で石英管の口を封じ、次いで、800〜1250℃の温度で1.5〜16日間保持した。
熱処理後、各サンプルの粒子について、X線回折による構造解析を行った。具体的には、各サンプルから任意に0.3g程度の粒子を採取し、それをエポキシ系の樹脂に埋め込んだ後、#800の研磨紙を用いて湿式研磨を行って球状粒子の中央付近の断面を出現させ、このバルク断面についてX線回折測定を行った。
表2及び表3に、各サンプルの粒子についてのX線回折による構造解析の結果を示す。なお、これらの表で、第一の相に対する第二の相の相対比は、X線回折による各相のメインピークの強度比を用いて表わされている。適切な熱処理条件を選択することによって、NaZn13型の立方晶の結晶構造を有する金属間化合物相を析出させることができることが分かる。即ち、この方法を用いて、NaZn13型の結晶構造を有する金属間化合物相を高い割合で析出させれば、磁気熱量効果の高い球状粒子を作製することができる。
なお、熱処理温度を900℃程度とした粒子サンプル9〜11では、X線回折パターンによる調査結果において、第一の相及び第二の相の他に、第三の相としてNaZn13型の立方晶のパターンが観測された。また、熱処理温度を1150℃程度とした粒子サンプル36と39についても、同様に第三の相としてNaZn13型の立方晶のパターンが観測され、第三の相の第一の相に対するピーク強度比は第二の相と近い値であった。
以上の結果から、熱処理温度として、900℃〜1120℃が特に好ましいことが判明した。
Figure 0003967728
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以上のように、NaZn13型の結晶構造を有する脆弱な金属間化合物相を主相とはせずに、機械的強度及び加工性に優れた鉄合金相を主相とする母合金を用いることによって、10,000rpm程度までの高速回転に耐える電極棒を作製することができる。次に、この電極棒から、回転電極法を用いて球状粒子を作製する。更に、この球状粒子を作製した後に、適切な熱処理条件で原子を拡散を促進することによって、NaZn13型の結晶構造を有する金属間化合物相を析出させることができることが確認された。この方法によれば、磁気熱量効果の高いNaZn13型の結晶構造を有する金属間化合物相を高い割合で析出させた球状粒子を作製することができる。
更に、La含有量の適切な範囲を定めるために試験を行った。Laの比率を大きく変化させて、前記と同様の方法で母合金を鋳造し、これらを球状粒子に加工し、次いで、熱処理を施して試料を作成した。それらの試料について、機械的特性及び磁気的特性を調べた。その結果、Laの元素構成比が4から12原子%の範囲にあるとき、大きな磁気熱量効果を有し、且つ、機械的強度の高い複合磁性材料が得られることが分かった。
即ち、Laの元素構成比が6原子%以下の場合では、Laの元素構成比の低下に伴い、鉄合金相の割合が急激に増加し、磁気熱量効果の高いNaZn13型の結晶構造を有する相の割合が減少した。種々の熱処理条件で、具体的には、熱処理温度を800℃から1200℃の間で変化させ、熱処理期間を1.5日から16日の間で変化させて、調査を行った。その結果、Laの元素構成比が4原子%以下の場合では、いずれの条件でも、主相はbcc型結晶構造の鉄合金相であり、NaZn13型の結晶構造を有する相の割合は半分に満たないことが判明した。
一方、Laの元素構成比を8原子%以上に増加させて行った場合には、6原子%以下に低下させて行った場合のような、著しい組織変化は見られなかった。しかし、磁気熱量効果が大きいNaZn13型の結晶構造を有する相の割合が、徐々に減少する傾向が見られた。
具体的には、Fe:Co:Si:Laの元素構成比が、約74:2:13:11の場合(母合金L)、約73:3:9:15の場合、約77:3:9:11の場合、約75:5:6:14の場合、約79:5:7:9(母合金M)の場合、約76:9:4:11の場合、約79:9:3:9の場合、の各場合について、前記と同様な条件で母合金を鋳造し、それを所定の形状に加工した後に、熱処理を施した。熱処理温度を800℃から1200℃の間で変化させ、熱処理期間を1.5日から16日の間で変化させた。その結果、約73:3:9:15の場合と約75:5:6:14の場合には、何れの熱処理条件でも、主相はbcc型結晶構造の鉄合金相であり、NaZn13型の結晶構造を有する相の割合は3分の1以下であった。
磁気熱量効果の高いNaZn13型の結晶構造を有する相の析出割合は、熱処理条件によって大きく変化する。それに加えて、上記の相の析出割合は、Laの含有量に依存して大きく変化する。これは、光学顕微鏡観察及びX線回折による測定から明らかとなったことである。そこで、種々の組成及び熱処理条件で作成された試料について、NaZn13型の結晶構造を有する相の析出割合をLaの元素構成比で整理した。その結果を、図6に示す。但し、この図では、種々の熱処理条件によって得られた試料の中で、各組成毎に上記の相の析出割合の最も多いものを抜き出して、それをプロットしている。この図から、Laの元素構成比は、4から12%程度の範囲が好ましいことが分かる。
なお、上記の相の析出割合は、下記のように、磁化の温度依存性から見積った。即ち、各試料から針状の試料片(反磁場の影響を無視できるようにするためである)を切り出し、磁場:H=1KOe(oersteds)(=0.1tesla)のもとで、低温域から高温域までの範囲で磁化の温度依存性を測定した。上記のNaZn13型の結晶構造を有する相が析出した試料では、殆どの場合、NaZn13型の結晶構造を有する相と鉄合金相が主たる構成相であることが認められた。ここで、これら二つの相は、ともに磁性を示すが、Tc(キュリー温度)の値が互いに大きく異なる。従って、低温域から高温域までの範囲で磁化の温度依存性を測定することによって、異なる磁化状態の磁化比からNaZn13型の結晶構造を有する相と鉄合金相との構成比を見積もることができる。但し、ここでは、Tcを厳密なキュリー温度(i.e. その温度以下で自発磁化が発現する温度)の意味ではなく、低磁化状態から高磁化状態へ変化するクリティカルな温度を意味するものとして用いている。
図7に、磁化の温度依存性の曲線の模式図を示す。ここで、NaZn13型の結晶構造を有する相のTcは、温度領域IIに存在し、鉄合金相のTcは、温度領域IIIと比べて充分に高い。従って、温度領域IIIでは、鉄合金相は、磁気スピンが外部磁場の方向にある程度揃った高磁化状態をとる。これに対して、NaZn13型の結晶構造を有する相では、磁気スピンはほぼバラバラの方向を向き、外部磁場の方向を向く磁気スピンが僅かに多いと言う低磁化状態をとる。温度領域Iでは、これら二つの相は、ともに、磁気スピンが外部磁場の方向にある程度揃った高磁化状態をとる。従って、温度領域I及び温度領域IIIにおける磁化の比率から、これら二つの相の構成比を見積もることができる。このような方法による構成比の見積もりは、厳密な意味での正確さには欠けているが、NaZn13型の結晶構造を有する相の構成比を、異なるLa元素構成比を持つ試料間で比較する場合には、充分に妥当性があると考えられる。
<球状粒子の機械的強度について>
次に、上記の方法によりNaZn13型の金属間化合物相を析出させた球状粒子について、実用上の観点から、機械的強度の検討を行った。その結果、球状粒子の機械的強度が、粒子内部の金属組織構造と大きな関連があることが見出された。以下に、具体的な機械的強度試験の結果について示す。
先ず、長径が2.0mm以下であり、NaZn13型の金属間化合物相を多く析出させた球状粒子を、母材、粒子径範囲、熱処理条件の同一なもの毎にサンプルに分けた。それぞれのサンプルからアスペクト比が2以下のものを選別して、約30g程度の粒子を採取した。次に、内径12.5mm、高さ50mmのシリンダに、各サンプルの粒子を充填した。このとき、粒子がほぼ最密充填となるように注意し、さらに充填された粒子の高さが45mmとなるように、即ち、高さ方向の上部に5mmの空隙ができるように充填して密封した。その理由は、加振試験の効果を高めるためである。それぞれについて、このときの充填された粒子の重量(Wo)を測定した。
次に、図8に示すように、それぞれのシリンダを水平に寝かした状態で加振機に固定して、加振試験を行った。1週間加振した後、シリンダを開封して粒子を調べると、何れのサンプルにおいても微粉の発生が認められた。そこで、これらの微粉を純水で洗い、ろ紙で回収し、その重量(Wp)を測定した。更に、機械的強度と金属組織の間の関係を調べるため、各サンプルの残りの球状粒子について、その断面をX線回折及びSEMを用いて観察した。
サンプル101〜111では、何れも、NaZn13型の金属間化合物相及びbcc結晶構造の鉄合金相が観察された。SEMによる断面観察の結果、サンプル101〜111では、104を除いて、第一の相はNaZn13型のFe−Co−Si−La金属間化合物相であり、第二の相はbcc結晶構造のSi及びCoを含む鉄合金相であった。サンプル104では、NaZn13型の金属間化合物相と、bcc結晶構造のSi及びCoを含む鉄合金相がほぼ同程度の割合であった。鉄合金相の割合は、サンプルにより大きく異なり、特に、サンプル106及び107では、それぞれ、図12及び図13(模式図)に示すように鉄合金相の割合が極端に少ない構造となっていた。また、金属組織も複雑で、その様子はサンプルにより大きく異なっていた。
サンプル112及び113では、NaZn13型のFe−Co−Ni−Si−La金属間化合物相、及び、bcc結晶構造とfcc結晶構造の鉄合金相が観察された。サンプル114、115では、NaZn13型の金属間化合物相、及び、bcc結晶構造の鉄合金相が観察された。サンプル112〜115で観察された全ての鉄合金相にはSiが含有されていた。サンプル116〜120では、NaZn13型のFe−Co−Si−La金属間化合物相、及び、bcc結晶構造の鉄合金相が観察された。サンプル116〜120で観察された全ての鉄合金相にはSiが含有されていた。
何れのサンプルも、金属組織は複数の相が析出したものであり、各々異なる構成となっている。
例えば、サンプル101及び105では、それぞれ、図10及び図9(模式図)に示すように、主相のNaZn13型結晶構造のFe−Co−Si−La金属間化合物相(a)の中に、第二の相であるbcc結晶構造のSi及びCoを含む鉄合金相(b)が微細に分散して存在し、更に、Laを主たる構成元素として、Si、Coを含む金属間化合物相(c)が観察された。サンプルによっては(例えば、104)、図11(模式図)のように、第二の相であるbcc結晶構造のSiを含む鉄合金相(b)が偏在しているものも認められた。
サンプル118及び120では、サンプル101及び105と同様の金属組織が観察された。サンプル116では、主相のNaZn13型結晶構造のFe−Co−Si−La金属間化合物相(a)の中に、第二の相であるbcc結晶構造のSi及びCoを含む鉄合金相(b)と、第三の相であるLaを主たる構成元素とし次いでSiを多く含む金属間化合物相(c)が観察された。
そこで、脆弱なNaZn13型の金属間化合物相の“平均広がり大きさ”を、先に定義した方法によって計測した。先の図9、11及び13に示した特徴的な例について、金属間化合物相(第一の相)の平均広がり大きさの計測方法を図14〜16に示す。表4に、サンプル101〜120について、金属間化合物相の平均広がり大きさを測定した結果を示す。
Figure 0003967728
図17は、表4に示したNaZn13型の金属間化合物相の平均広がり大きさをパラメータに取って、加振試験による微粉発生率“Wp/Wo”をプロットしたものである。このように、粒子径0.2〜2mm程度の球状粒子の機械的強度は、粒子内部の金属組織構造と大きな相関があり、特に、NaZn13型の脆弱な金属間化合物相の平均広がり大きさを100μm以下に抑えたとき、機械的強度を比較的高く保つことができることが判明した。
なお、このような構造の場合には、NaZn13型の金属間化合物(第一の相)や鉄合金相(第二の相)に加えて、前述のような、Laを主たる構成元素とし、Si、CoまたはNiを含む金属間化合物相(第三の相)が必ず観察された。
<球状の磁気冷凍用の複合磁性材料の例>
次に、実用化の観点から、簡易な試験装置を用いて冷凍動作の試験を行った。
先ず、Fe:Co:Si:Laの元素構成比が約81:6:5:8の母合金Jを鋳造した。この母合金から電極棒を加工し、その電極棒から回転電極法を用いて、回転速度を800〜12,000rpmの間で変化させて、球状粒子を作製した。このようにして得られた球状粒子を、温度1050℃で11日間、熱処理を施し、NaZn13型の金属間化合物相を多く析出させた。
このようにして製造された球状粒子を、メッシュで、0.1〜0.2mm、0.2〜0.43mm、0.43〜0.6mm、0.5〜0.71mm、0.71〜0.85mm、0.85〜1mm、1〜1.4mm、1.4〜2mm、2mm以上の、9つのクラスに選別した。
次に、各クラスの球状粒子を非磁性材からなる内径8mmのパイプに充填し、その両端をメッシュで固定して、粒子が動かないようにした。このとき、粒子の充填長を70mmとし、粒子がほぼ最密充填となるように充分に注意した。
図18に、試験装置の概略を示す。上記の球状粒子が充填されたパイプは、略U字形状の底辺部分に配置される。図に示したように、略U字形状の一方の端は開放され、他方の端にはピストンが取り付けられる。上記のパイプの中を、熱交換用の媒体としてエタノールと純水の混合液で充分な量満たした。更に、上記のパイプの外側に、水平方向に移動可能な一対の永久磁石を配置し、パイプ内に充填された球状粒子に対して磁場の印加及び除去が可能なようにした。
冷凍動作の試験は、パイプ内に充填された球状粒子に対して磁場の印加及び除去を繰り返し、この動作に同期させて、ピストンを上下に往復させて熱交換媒体の液体を移動させた。即ち、ステップ1:球状粒子に磁場を印加、ステップ2:熱交換媒体を順方向に移送、ステップ3:球状粒子から磁場を除去、ステップ4:熱交換媒体を逆方向に移送、からなるサイクルを繰り返し行った。この試験において、球状粒子が充填されたパイプの両端部の温度を温度計でモニターした。繰り返しサイクル数は50回であった。
この結果、球状粒子のサイズ;0.2〜0.43mm、0.43〜0.6mm、0.5〜0.71mm、0.71〜0.85mm、0.85〜1mm、1〜1.4mm、1.4〜2mmのクラスでは、何れも、サイクルの繰り返しに伴って、両端部の温度差が拡大して行く様子が観察された。図19に、粒径0.71〜0.85mmの場合の温度変化の測定結果を示す。特に、0.43〜0.6mm、0.5〜0.71mm、0.71〜0.85mm、0.85〜1mmのクラスで、冷却の効果が大きかった。
球状粒子のサイズが2mm以上の場合には、温度変化が安定せず、試験毎に異なる結果が現われた。図20に、粒径が2mm以上の場合の温度変化の測定結果の一例を示す。他方、0.1〜0.2mmのクラスの場合には、図21に示したように、サイクルの繰り返しに伴い、全体の温度が上昇してしまう傾向が認められた。
なお、上記の冷凍動作の試験に先立つ予備段階の試験において、熱交換媒体として純水を用いて試験を行ったところ、球状粒子の表面に薄い錆が発生した。このため、上記の冷凍動作の試験では、純水とエタノールの混合溶液とするとともに、球状粒子の表面にBN(boron nitride)の溶射により緻密な保護層を形成したものを使用した。その結果、錆の発生は全く認められなかった。
更に、球状粒子の表面のコーティングとして、BN溶射の他に、AlN溶射、Auメッキ、及び塗料による被覆についても調査を行った。保護層がBN溶射、AlN溶射、及びAuメッキの場合には、熱交換媒体が純水の場合、及び熱交換媒体が純水とエタノールの混合液の場合のいずれの場合にも、保護層無しの場合と比較して明らかな効果が認められた。他方、塗料による被覆の場合には、熱交換媒体が純水の場合には効果が認められたが、純水とエタノールの混合液の場合には、効果が小さかった。
<球状粒子の焼結体の磁気冷凍用磁性材料の例>
回転電極法により作製された球状粒子に熱処理を施して、NaZ13型の結晶構造を有する金属間化合物相を析出させる際、所定の形状を備えたケースに球状粒子を充填してその熱処理を行うことにより、球状粒子からなる焼結体を得ることができる。Ta箔をケースとして用いた試験では、球状粒子が互いに接合された多孔質の焼結体が得られた。なお、Ta箔は、熱処理後に焼結体から容易に剥がすことができた。
また、別の母合金から回転電極法により作製された球状粒子に熱処理を施して、NaZ13型の結晶構造を有する金属間化合物相を析出させた後に、所定の形状を備えたケースに充填して、約800℃で2日間熱処理を施したところ、上記の場合と同様に、球状粒子が接点で互いに接合された焼結体が得られた。なお、母合金中のLaの元素構成比が比較的高い場合(即ち、7〜12原子%)には、このような低温での焼結によっても、充分な機械的強度を備えた焼結体が得られることが判明した。
上記の焼結体の空隙率は、球状粒子をケースに充填する際の充填率により調整することが可能である。充填される球状粒子の粒子径、アスペクト比、粒子径の分布、充填の方法などを調整することによって充填率を変化させ、空隙率が25%以上60%以下の焼結体を製造できる。
このように、予め球状粒子を焼結により互いに結合させておくと、磁気冷凍システム内において、熱交換用媒体の流れにより球状粒子が動いて互いに衝突したり、充填容器の壁面と衝突したりすることがない。従って、球状粒子に衝撃が加えられることがないので、球状粒子の損傷を防止することができる。これによって、NaZ13型の結晶構造を有する比較的脆い金属間化合物相を主相とする磁性材料であっても、微粉の発生が防止され、圧力損失の増大により冷凍性能が低下するおそれが減少し、熱交換器の性能を長期間に渡って維持することができる。
<磁気冷凍システムの例>
図22に、本発明に基づく磁性材料が使用される磁気冷凍システムの概略構成を示す。図23に、この磁気冷凍システムにおける熱交換用媒体の循環系統の概略構成を示す。図中、1は磁性材料、2は磁気冷凍作業室、3は導入配管、4は排出配管、5a及び5bは永久磁石、6a及び6bは回転盤、25は低温消費施設、26は放熱器を表す。
図23に示すように、磁気冷凍作業室2は、矩形断面の筒型の形状を備えている。磁気冷凍作業室2の両端部の近傍には、それぞれ、メッシュグリッド11、12が取り付けられ、それらの間に、本発明に基づく磁性材料1が充填されている。磁性材料1は、例えば、平均径0.6mmの球状であり、磁気冷凍作業室2内に62%の容積充填率で充填されている。また、メッシュグリッド11、12のメッシュサイズは#80、Cuの線径0.14mmである。磁気冷凍作業室2の一方の端には、熱交換用媒体の導入配管3が接続され、もう一方の端には、熱交換用媒体の排出配管4が接続されている。なお、この例では、同一形状の二つの磁気冷凍作業室2が設けられ、互いに平行に並べられて配置されている。
二つの磁気冷凍作業室2を間に挟むように、一対の回転盤6a、6bが設けられている。回転盤6a、6bは共通の軸7で支持されている。この軸7は二つの磁気冷凍作業室2の中央に位置している。回転盤6a、6bの周縁近傍の内側には、それぞれ永久磁石5a、5bが保持されている。永久磁石5a、5bは、互いに対向するとともに、ヨーク(図示せず)を介して互いに結合されている。これによって、互いに対を成す永久磁石5a、5bの間隙部分に、強い磁場空間が形成される。なお、この例では、二つの磁気冷凍作業室2にそれぞれ対応するように、二対の永久磁石5a、5bが設けられ、軸7を中央に挟んで配置されている。
回転盤6a、6bを90度回転させる毎に、永久磁石5a、5bが磁気冷凍作業室2に対して接近及び離反を繰り返す。各一対の永久磁石5a、5bが各磁気冷凍作業室2の側壁に最も接近した状態では、永久磁石5a、5bの間に形成された磁場空間の中に磁気冷凍作業室2が入り、その中に収容されている磁性材料1に磁場が印加される。
磁性材料1に対して磁場が印加された状態から、除去された状態に切り替わる際、電子磁気スピン系のエントロピーが増加し、格子系と電子磁気スピン系の間でエントロピーの移動が起こる。それによって、磁性材料1の温度が低下し、それが熱交換用媒体に伝達され、熱交換用媒体の温度が低下する。このようにして温度が低下した熱交換用媒体は、磁気冷凍作業室2から排出配管4を通って排出され、外部の低温消費施設(25:図23)に冷媒として供給される。
図23に示すように、導入配管3の上流側には、熱交換用媒体が貯えられるタンク21が設けられ、導入配管3の途中にはポンプ22が設けられている。排出配管4は、磁気冷凍作業室2から出た後に二つの系統に分けられ、二つの循環ラインが構成されている。一方の循環ライン(冷却ライン23)の途中には、バルブV1、低温消費施設25及びバルブV3が設けられ、冷却ライン23の末端はタンク21に接続されている。もう一方の循環ライン(予冷ライン24)の途中には、バルブV2、放熱器26及びバルブV4が設けられ、予冷ライン24の末端はタンク21に接続されている。
次に、この磁気冷凍システムの運転について説明する。この磁気冷凍システムは、予冷工程及び冷却工程を交互に繰り返すことによって運転される。
先ず、予冷工程では、バルブV1及びバルブV3を閉じた状態で、バルブV2及びV4を開き、熱交換用媒体を予冷ライン24内で循環させる。この状態で、磁気冷凍作業室2に永久磁石(5a、5b:図22)を近付ける。磁性材料1に磁場が印加されると、磁性材料1の温度が上昇し、それが熱交換用媒体に伝達され、熱交換用媒体の温度が上昇する。このようにして暖められた熱交換用媒体は、磁気冷凍作業室2から排出配管4を通って排出され、バルブV2を通って放熱室26に導入され、そこで冷却される。冷却された熱交換用媒体は、バルブV4を通ってタンク21内へ戻る。
磁気冷凍作業室2内の磁性材料1の温度が、導入配管3を通って磁気冷凍作業室2に供給される熱媒体の温度の近傍まで低下したところで、バルブV2及びV4を閉じ、予冷工程を終了させて冷却工程に移る。
冷却工程では、先ず、磁気冷凍作業室2から永久磁石(5a、5b:図22)を遠ざける。次いで、バルブV1及びバルブV3を開き、熱交換用媒体を冷却ライン23内で循環させる。磁性材料1から磁場が除去されると、磁性材料1の温度が低下し、それが熱交換用媒体に伝達され、熱交換用媒体の温度が低下する。このようにして冷却された熱交換用媒体は、磁気冷凍作業室2から排出配管4を通って排出され、バルブV1を通って低温消費施設25に導入される。熱交換用媒体は、低温消費施設25内で使用されて温度が上昇した後、バルブV3を通ってタンク21内へ戻る。
磁気冷凍作業室2内の磁性材料1の温度が、導入配管3を通って磁気冷凍作業室2に供給される熱媒体の温度の近傍まで上昇したところで、バルブV1及びV3を閉じ、冷却工程を終了させて、再び予冷却工程に移る。
この磁気冷凍システムの制御装置(図示せず)は、永久磁石5a、5bの動きに同期させてバルブV1〜V4を制御し、上記の予冷工程及び冷却工程を交互に繰り返す。
母合金Aの光学顕微鏡による金属組織の写真。 母合金Bの光学顕微鏡による金属組織の写真。 母合金Cの光学顕微鏡による金属組織の写真。 母合金B及びCから回転電極法によって製造された粒子の断面の金属組織を表す模式図。 母合金Bから回転電極法によって製造された粒子の断面のSEMによる組成像。 Laの含有率とNaZn13型の立方晶からなる主相の生成量との間の関係を示す図。 NaZn13型の結晶構造を有する相と鉄合金相を主たる構成相とする試料における磁化の温度依存性を説明するための模式図。 加振試験の方法を示す模式図。 サンプル105の断面の金属組織を表す模式図。 サンプル101の断面の金属組織を表す模式図。 サンプル104の断面の金属組織を表す模式図。 サンプル106の断面の金属組織を表す模式図。 サンプル107の断面の金属組織を表す模式図。 サンプル105の断面の金属組織から第一の相の平均広がり大きさを計測する方法を示す図。 サンプル104の断面の金属組織から第一の相の平均広がり大きさを計測する方法を示す図。 サンプル107の断面の金属組織から第一の相の平均広がり大きさを計測する方法を示す図。 第一の相の平均広がり大きさと微粉発生率の関係を示す図。 冷凍動作試験装置の概略構成を示す図。 冷凍動作試験の結果を示す模式図(粒径0.71〜0.85mm)。 冷凍動作試験の結果を示す模式図(粒径2mm以上)。 冷凍動作試験の結果を示す模式図(粒径0.1〜0.2mm)。 本発明に基づく磁性材料が使用される磁気冷凍システムの概略構成を示す図。 本発明に基づく磁性材料が使用される磁気冷凍システムにおける熱交換用媒体の循環系統の概略構成を示す図。
符号の説明
1・・・磁性材料、2・・・磁気冷凍作業室、3・・・導入配管(第一の流路)、4・・・排出配管(第二の流路)、5a、5b・・・永久磁石、6a、6b・・・回転盤(駆動装置)、7・・・軸、11、12・・・メッシュグリッド、21・・・タンク、22・・・ポンプ、23・・・冷却ライン、24・・・予冷ライン、25・・・低温消費施設、26・・・放熱器。

Claims (13)

  1. 磁気冷凍システムで作業物質として使用される複合磁性材料であって、
    Fe、La、Si、Coおよび/またはNi、及び不可避的不純物からなり、Laを4原子%以上12原子%以下、Siを2原子%以上21原子%以下、Co及びNiを合計で0原子%以上11原子%以下、且つ、Fe、Co及びNiを合計で75原子%以上92原子%以下含有し、
    少なくとも二つの相で構成され、
    第一の相は、一般式:La(Fe,(Co,Ni),Si)13で表され、NaZn13型の結晶構造を備えた金属間化合物からなり、且つ、その平均広がり大きさが100μm以下であり、
    第二の相は、Siを含有する鉄合金からなることを特徴とする複合磁性材料。
  2. 前記第二の相は、体心立方または面心立方の結晶構造を備えていることを特徴とする請求項1に記載の複合磁性材料。
  3. 更に、Laを主なる構成元素とする金属間化合物からなる第三の相を有することを特徴とする請求項1に記載の複合磁性材料。
  4. 磁気冷凍システムで作業物質として使用される複合磁性材料からなる粒子であって、
    Fe、La、Si、Coおよび/またはNi、及び不可避的不純物からなり、Laを4原子%以上12原子%以下、Siを2原子%以上21原子%以下、Co及びNiを合計で0原子%以上11原子%以下、且つ、Fe、Co及びNiを合計で75原子%以上92原子%以下含有し、
    少なくとも二つの相で構成され、
    前記複合磁性材料の第一の相は、一般式:La(Fe,(Co,Ni),Si)13で表され、NaZn13型の結晶構造を備えた金属間化合物からなり、且つ、その平均広がり大きさが100μm以下であり、
    前記複合磁性材料の第二の相は、Siを含有する鉄合金からなり、
    前記粒子は、短径が0.2mm以上、長径が2mm以下の球状または回転楕円体状であることを特徴とする磁性材粒子。
  5. 前記第二の相は、体心立方または面心立方の結晶構造を備えていることを特徴とする請求項4に記載の磁性材粒子。
  6. 前記複合磁性材料は、更に、Laを主なる構成元素とする金属間化合物からなる第三の相を有することを特徴とする請求項4に記載の磁性材粒子。
  7. 磁気冷凍システムで作業物質として使用され、少なくとも二つの相で構成される複合磁性材料からなる粒子が、当該複合磁性材料の融点より低い温度で焼結されて拡散により結合された焼結体であって、
    Fe、La、Si、Coおよび/またはNi、及び不可避的不純物からなり、Laを4原子%以上12原子%以下、Siを2原子%以上21原子%以下、Co及びNiを合計で0原子%以上11原子%以下、且つ、Fe、Co及びNiを合計で75原子%以上92原子%以下含有し、
    少なくとも二つの相で構成され、
    前記複合磁性材料の第一の相は、一般式:La(Fe,(Co,Ni),Si)13で表され、NaZn13型の結晶構造を備えた金属間化合物からなり、且つ、その平均広がり大きさが100μm以下であり、
    前記複合磁性材料の第二の相は、Siを含有する鉄合金からなり、
    前記粒子は、短径が0.2mm以上、長径が2mm以下の球状または回転楕円体状であることを特徴とする磁性材焼結体。
  8. 前記第二の相は、体心立方または面心立方の結晶構造を備えていることを特徴とする請求項7に記載の磁性材焼結体。
  9. 前記複合磁性材料は、更に、Laを主なる構成元素とする金属間化合物からなる第三の相を有することを特徴とする請求項7に記載の磁性材焼結体。
  10. 前記複合磁性材料からなる粒子を70重量%以上含有し、空隙率が25%以上60%以下であることを特徴とする請求項7に記載の磁性材焼結体。
  11. 磁気冷凍システムで作業物質として使用される複合磁性材料を製造する方法であって、
    Feを主要成分として含有し、Laを4原子%以上12原子%以下、Siを2原子%以上21原子%以下、Co及びNiを合計で0原子%以上11原子%以下含有し、且つ、Fe、Co及びNiの含有量の合計が75原子%以上92原子%以下である原料を溶解して、Siを含有する体心立方構造の鉄合金を主相とするインゴットを製造する第一工程と、
    このインゴットから電極棒を加工し、次いでこの電極棒を回転電極法を用いて溶融することにより、Siを含有する鉄合金からなる主相と、Laを主成分とする副相とを含む少なくとも二つの相から構成され、短径が0.2mm以上、長径が2mm以下の球状または回転楕円体状の中間体を製造する第二工程と、
    この中間体を熱処理することによって中間体の構成元素を相互に拡散させ、前記主相の中から、一般式:La(Fe,(Co,Ni),Si)13で表され、NaZn13型の結晶構造を備えた金属間化合物を析出させる第三工程と、
    を有することを特徴とする複合磁性材料の製造方法。
  12. 内部に磁性材料が充填された磁気冷凍作業室と、
    磁気冷凍作業室の中に熱交換媒体を導入するための導入配管と、
    磁気冷凍作業室の中から熱交換媒体を排出するための排出配管と、
    可動式の永久磁石と
    前記磁気冷凍作業室に対する前記永久磁石の相対位置を変化させることによって、前記磁性材料に対する磁場の印加及び除去を行う駆動装置と、
    を備えた磁気冷凍システムにおいて、
    前記磁性材料は、Fe、La、Si、Coおよび/またはNi、及び不可避的不純物からなり、Laを4原子%以上12原子%以下、Siを2原子%以上21原子%以下、Co及びNiを合計で0原子%以上11原子%以下、且つ、Fe、Co及びNiを合計で75原子%以上92原子%以下含有する複合磁性材料であり、
    少なくとも二つの相で構成され、
    第一の相は、一般式:La(Fe,(Co,Ni),Si)13で表され、NaZn13型の結晶構造を備えた金属間化合物からなり、且つ、その平均広がり大きさが100μm以下であり、
    第二の相は、Siを含有する鉄合金からなること、
    を特徴とする磁気冷凍システム。
  13. 内部に磁性材料が充填された磁気冷凍作業室と、
    磁気冷凍作業室の中に熱交換媒体を導入する導入配管と、
    磁気冷凍作業室の中から内部の予冷に使用された熱交換媒体が排出される第一排出配管と、
    磁気冷凍作業室の中から内部で冷却された熱交換媒体が排出される第二排出配管と、
    可動式の永久磁石と
    前記磁気冷凍作業室に対する前記永久磁石の相対位置を変化させることによって、前記磁性材料に対する磁場の印加及び除去を行う駆動装置と、
    前記永久磁石の相対位置の変化に同期させて、前記磁気冷凍作業室の中からの前記熱交換媒体の排出経路を前記第一排出配管と前記第二排出配管の間で切替える流路制御装置と、
    を備えた磁気冷凍システムであって、
    前記磁性材料は、Fe、La、Si、Coおよび/またはNi、及び不可避的不純物からなり、Laを4原子%以上12原子%以下、Siを2原子%以上21原子%以下、Co及びNiを合計で0原子%以上11原子%以下、且つ、Fe、Co及びNiを合計で75原子%以上92原子%以下含有する複合磁性材料であり、
    少なくとも二つの相で構成され、
    第一の相は、一般式:La(Fe,(Co,Ni),Si)13で表され、NaZn13型の結晶構造を備えた金属間化合物からなり、且つ、その平均広がり大きさが100μm以下であり、
    第二の相は、Siを含有する鉄合金からなること、
    を特徴とする磁気冷凍システム。
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