JP3967246B2 - 内燃機関の燃料供給制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸入空気量センサにより内燃機関に吸入される空気量を検出し、検出した吸入空気量に応じて内燃機関に供給する燃料量を制御する内燃機関の燃料供給制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱線式流速計を用いて内燃機関の吸入空気量を検出する方法は従来より知られている。その熱線式流速計の特性は、経年変化するため、使用期間が長くなると、吸入空気量の検出誤差が増加するという問題がある。そのため、特許文献1には、熱線式流速計の特性変化に応じて学習補正値を算出する手法が示されている。
【0003】
この手法によれば、内燃機関の排気系に設けられる空燃比センサの出力に応じて空燃比が目標値と一致するように空燃比負帰還量CFBが算出され、熱線式流速計の特性変化を代表する複数の流量点QL1,QL2,QL3における空燃比負帰還量の値CL1,CL2,CL3がメモリに格納され、メモリに格納されたデータと、熱線式流速計により検出される吸入空気量Qとに基づいて、補間演算または外挿演算により学習補正値CLが算出される。
【0004】
また内燃機関の空燃比センサ、スロットル弁開度センサ及び機関回転数センサの検出値に基づいて、吸入空気量センサの特性劣化あるいは異常を検出する手法も従来より知られている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公平7−23702号公報
【特許文献2】
特公平8−6623号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に示された方法では、所定の流量点QL1〜QL3における空燃比負帰還量CFBの値CL1〜CL3がメモリに格納され、学習補正値の算出に使用されるため、機関運転状態の変化によって、メモリに格納される空燃比帰還量の値が変動すると、それがそのまま学習補正値CLに反映されてしまうという問題がある。また、この方法では複数の流量点において特性変化を監視するようにしているが、その数を増やせばメモリの容量が増加するので、特性変化を監視する流量点をあまり多くすることはできない。
【0007】
一方、近年のエミッション(有害ガス排出)規制の強化に伴い、部品の劣化や特性変化が排気特性に悪影響を与える点が重要視されるようになっているため、吸入空気量センサの特性変化に対応して、より精度の高い学習補正値を得ることが望まれている。
【0008】
また特許文献2に示された吸入空気量センサの特性劣化判定手法(異常判定手法)は、センサ検出値に対して何ら統計処理を施すことなく、センサ検出値をそのまま用いて判定を行うものであるため、判定頻度を増加させた場合、判定精度が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は上述した点を考慮してなされたものであり、吸入空気量センサの特性変化の影響を補償する精度の高い学習補正値を得、空燃比制御の良好な制御性を維持することができる内燃機関の燃料供給制御装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関の吸入空気量(QAIR)を検出する吸入空気量検出手段と、該吸入空気量検出手段により検出される吸入空気量(QAIR)に応じて前記機関に供給する基本燃料量(TIM)を算出する基本燃料量算出手段と、前記機関の排気系に設けられた空燃比センサと、該空燃比センサにより検出される空燃比が目標空燃比に一致するように前記機関に供給する燃料量を補正する空燃比補正係数(KAF)を算出する空燃比補正係数算出手段と、前記基本燃料量(TIM)及び前記空燃比補正係数(KAF)を用いて前記機関に供給する燃料量(TOUT)を制御する燃料量制御手段とを備える内燃機関の燃料供給制御装置において、前記空燃比補正係数(KAF)と、前記吸入空気量検出手段により検出される吸入空気量(QAIR)との相関関係を定義する複数の相関パラメータベクトル(θ1,θ2)を逐次型統計処理アルゴリズムを用いて算出する相関パラメータ算出手段と、前記複数の相関パラメータベクトル(θ1,θ2)を用いて前記吸入空気量検出手段の特性変化に関わる学習補正係数(KREFG)を算出する学習手段とを備え、前記相関パラメータ算出手段は、前記空燃比補正係数(KAF)を前記学習補正係数(KREFG)により修正することにより修正空燃比補正係数(KAFMOD)を算出し、該修正空燃比補正係数(KAFMOD)を用いて、前記機関の複数の運転領域に対応させて前記複数の相関パラメータベクトル(θ1,θ2)を算出し、前記燃料量制御手段は、前記基本燃料量(TIM)、空燃比補正係数(KAF)及び学習補正係数(KREFG)を用いて前記燃料量を制御することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、空燃比センサにより検出される空燃比が目標空燃比に一致するように内燃機関に供給する燃料量を補正する空燃比補正係数と、吸入空気量検出手段により検出される吸入空気量との相関関係を定義する複数の相関パラメータベクトルが、逐次型統計処理アルゴリズムを用いて算出され、その相関パラメータベクトルを用いて吸入空気量検出手段の特性変化に関わる学習補正係数が算出される。そして、吸入空気量検出手段により検出される吸入空気量に応じて算出される基本燃料量、前記空燃比補正係数及び学習補正係数を用いて、前記機関に供給する燃料量が制御される。すなわち、多くの検出データに基づく統計処理により相関パラメータベクトルが算出され、その相関パラメータベクトルを用いて学習補正係数が算出されるので、変動する機関運転状態の平均的な状態に対応した精度の高い学習補正係数を得ることができる。また、逐次型統計処理アルゴリズムを用いることにより、特別な演算装置(CPU)を必要とせず、比較的小さなメモリ容量で統計処理演算を実行することができる。さらに、複数の機関運転領域に対応して複数の相関パラメータベクトルが算出されるので、機関運転状態が変化しても学習補正係数の高い精度を維持することができる。また、空燃比補正係数をそのまま用いて相関パラメータベクトルを算出すると、学習補正係数による学習制御がハンチング状態となるおそれがあるが、修正空燃比補正係数を用いることによりそのような不具合を回避することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料供給制御装置において、前記相関パラメータ算出手段は、前記相関関係を一次式で定義する複数の相関パラメータベクトル(θ1,θ2)を算出し、前記学習手段は、前記複数の相関パラメータベクトルから求まる一次式に対応する複数の直線の交点において、前記学習補正係数(KREFG)の算出に使用する相関パラメータベクトル(θ1またはθ2)を切り換えることを特徴とする。
この構成によれば、相関関係を一次式で定義する複数の相関パラメータベクトルが算出され、前記複数の相関パラメータベクトルから求まる一次式に対応する複数の直線の交点において、学習補正係数の算出に使用する相関パラメータベクトルが切り換えられる。これにより、相関パラメータベクトルの切換に伴って学習補正係数が急変することが防止され、円滑な切換が可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の燃料供給制御装置において、前記相関パラメータ算出手段は、前記機関が所定運転状態にあるとき、前記複数の相関パラメータベクトル(θ1,θ2)の算出を行うことを特徴とする。
この構成によれば、前記機関が所定運転状態にあるとき、相関パラメータベクトルの算出が行われるので、相関パラメータの精度を向上させ、学習補正の精度をより向上させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図であり、例えば4気筒のエンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3にはスロットル弁開度(THA)センサ4が連結されており、当該スロットル弁3の開度に応じた電気信号を出力して電子制御ユニット(以下「ECU」という)5に供給する。
【0017】
吸気管2のスロットル弁3の上流側には、吸入空気量(吸入空気流量)QAIRを検出する吸入空気量センサ19が設けられており、吸入空気量センサ19の出力信号は、ECU5に供給される。
燃料噴射弁6はエンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気管2の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されて当該ECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間が制御される。
【0018】
一方、スロットル弁3の直ぐ下流には吸気管内の圧力を検出する吸気管内絶対圧(PBA)センサ7が設けられており、この絶対圧センサ7により電気信号に変換された絶対圧信号は前記ECU5に供給される。また、その下流には吸気温(TA)センサ8が取付けられており、吸気温TAを検出して対応する電気信号を出力してECU5に供給する。
【0019】
エンジン1の本体に装着されたエンジン水温(TW)センサ9はサーミスタ等から成り、エンジン水温(冷却水温)TWを検出して対応する温度信号を出力してECU5に供給する。
エンジン1の図示しないカム軸周囲又はクランク軸周囲には、エンジン回転数(NE)センサ10及び気筒判別(CYL)センサ11が取り付けられている。エンジン回転数センサ10は、エンジン1の各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)より所定クランク角度前のクランク角度位置で(4気筒エンジンではクランク角180゜毎に)TDC信号パルスを出力し、気筒判別センサ11は、特定の気筒の所定クランク角度位置で気筒判別信号パルスを出力するものであり、これらの各信号パルスはECU5に供給される。
【0020】
排気管12には、排気中のNOx、HC、COの浄化を行う三元触媒16が設けられ、三元触媒16の上流位置には、比例型空燃比センサ14(以下「LAFセンサ14」という)が装着されており、このLAFセンサ14は排気中の酸素濃度(空燃比)にほぼ比例した電気信号を出力し、ECU5に供給する。
【0021】
吸気管2のスロットル弁3の下流側と、排気管12の三元触媒16の上流側との間には、排気還流通路21が設けられており、排気還流通路21の途中には排気還流量を制御する排気還流弁(以下「EGR弁」という)22が設けられている。EGR弁22は、ソレノイドを有する電磁弁であり、その弁開度はECU5により制御される。EGR弁22には、その弁開度(弁リフト量)LACTを検出するリフトセンサ23が設けられており、その検出信号はECU5に供給される。排気還流通路21及びEGR弁22より、排気還流機構が構成される。
【0022】
図示しない燃料タンクに接続され、該燃料タンク内で発生する蒸発燃料を貯蔵するキャニスタ32が設けられている。キャニスタ32は、蒸発燃料を吸着する吸着材を内蔵している。キャニスタ32は、パージ通路31を介して、吸気管2の、スロットル弁3の下流側に接続されている。パージ通路31には、パージ制御弁33が設けられている。パージ制御弁33は、その制御信号のオン−オフデューティ比を変更することにより流量を連続的に制御することができるように構成された電磁弁であり、パージ制御弁33の作動はECU5により制御される。なお、パージ制御弁33はその弁開度を連続的に変更可能な電磁弁を使用してもよく、上記オン−オフデューティ比は、このような弁開度連続可変型の電磁弁における弁開度に相当する。パージ通路31、キャニスタ32及びパージ制御弁33により、蒸発燃料処理装置が構成される。
【0023】
ECU5には、大気圧PAを検出する大気圧センサ17及びエンジン1により駆動される車両の車速VPを検出する車速センサ18が接続されており、これらのセンサの検出信号がECU5に供給される。
ECU5は、上述したセンサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路、前記燃料噴射弁6、EGR弁22及びパージ制御弁33に駆動信号を供給する出力回路を備えている。
【0024】
ECU5は、上述したセンサの出力信号に基づいてエンジン運転状態を判別し、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて設定されるEGR弁22の弁開度指令値LCMDと、リフトセンサ23によって検出される実弁開度LACTとの偏差を零にするようにEGR弁22のソレノイドに制御信号を供給する。
【0025】
ECU5のCPUは、上述したセンサの出力信号に基づいてエンジン運転状態を判別するとともに、エンジン運転状態に応じて下記式(1)により、前記TDC信号パルスに同期して開弁作動する燃料噴射弁6の燃料噴射時間TOUTを演算する。
TOUT=TIM×KAF×KREFG
×KPURGE×K1+K2 (1)
ここに、TIMは燃料噴射弁6の基本燃料噴射時間(基本燃料量)であり、吸入空気量QAIRに応じて設定されたTIテーブルを検索して決定される。TIテーブルは、エンジンに供給する混合気の空燃比がほぼ理論空燃比になるように設定されている。
【0026】
KAFは、空燃比補正係数であり、LAFセンサ14により検出される空燃比が目標空燃比と一致するように設定される。なお、LAFセンサ出力に応じたフィードバック制御を実行しないときは、「1.0」に設定される。
KREFGは、吸入空気量センサ19の特性ばらつきまたは経時変化によって、吸入空気量の検出特性が予め想定されている平均的な特性と異なる場合に、空燃比補正係数KAFによるフィードバック制御の偏倚を補償するために導入された学習補正係数である。具体的な算出手法は、後述する。
【0027】
KPURGEは、パージ制御弁33を閉弁しているときは、「1.0」に設定され、パージ制御弁33を開弁して蒸発燃料を、吸気管2に供給するときは、蒸発燃料供給量の増加に対応して燃料噴射量を減少させるべく設定されるパージ補正係数である。
【0028】
K1及びK2は、それぞれエンジン運転状態に応じて演算される他の補正係数および補正変数であり、エンジン運転状態に応じた燃費特性、エンジン加速特性等の諸特性の最適化が図れるような所定値に決定される。
ECU5のCPUは上述のようにして求めた燃料噴射時間TOUTに基づいて燃料噴射弁6を開弁させる駆動信号を燃料噴射弁6に供給する。
【0029】
本実施形態では、式(1)に適用される学習補正係数KREFGの新しい算出手法が採用されている。以下この算出手法を説明する。
吸入空気量センサ19が正常(劣化していない状態)である場合には、検出される吸入空気量QAIRと、空燃比補正係数KAFとの関係は、図2に示すようになる。図2においては、横軸の吸入空気量QAIRに対応する空燃比補正係数KAFの値の範囲がハッチングを付した領域で示されており、吸入空気量QAIRが変化しても、空燃比補正係数KAFは、「1.0」近傍のほぼ一定値を維持する。図に示す吸入空気量QAIRは、実際の吸入空気量ではなく、吸入空気量センサ19により検出される吸入空気量である。実吸入空気量は、これと区別するために「QAIRA」とする。
【0030】
ところが、吸入空気量センサ19の劣化(例えば熱線式センサにおける熱線への塵埃の付着)が発生すると、検出吸入空気量QAIRと、実吸入空気量QAIRAとの誤差が増加し、空燃比が目標値よりリッチ方向またはリーン方向に変化し、それを補正すべく空燃比補正係数KAFが減少または増加する。ここで、検出誤差ERR=QAIRA−QAIRで定義すると、吸入空気量センサ19が劣化していくと、実吸入空気量QAIRAが小さい範囲では、検出誤差ERRがマイナスとなり(検出吸入空気量QAIRが実吸入空気量QAIRAに比べて大きくなり)、実吸入空気量QAIRAが大きい範囲では、検出誤差ERRがプラスとなる(検出吸入空気量QAIRが実吸入空気量QAIRAに比べて小さくなる)傾向を示す。その結果、吸入空気量QAIRと空燃比補正係数KAFの相関特性が、図3に示すような右上がりの特性となる。すなわち、実吸入空気量QAIRAが小さい範囲では、検出吸入空気量QAIRが実吸入空気量QAIRAより大きくなり、基本燃料噴射時間TIMが最適値より大きくなるため、これを補正すべく空燃比補正係数KAFが「1.0」より小さくなるが、実吸入空気量QAIRAが大きい範囲では、検出吸入空気量QAIRが実吸入空気量QAIRAより小さくなり、基本燃料噴射時間TIMが最適値より小さくなるため、これを補正すべく空燃比補正係数KAFが「1.0」より大きくなる。
ただし、劣化の態様によっては、吸入空気量QAIRと空燃比補正係数KAFの相関特性が、図3とは逆に右下がりの特性となる可能性もある。
【0031】
吸入空気量QAIRと空燃比補正係数KAFの相関特性は、上述したような吸入空気量センサ19の劣化だけでなく、吸入空気量センサ19の特性ばらつきに起因する基本燃料噴射時間TIMのずれの影響も反映する。したがって、この相関特性に基づいて学習補正係数を算出し、式(1)に適用することによって、吸入空気量センサ19の劣化のみならず、吸入空気量センサ19の特性ばらつきの影響も補償することができる。
【0032】
本実施形態では、以上の点に着目し、検出吸入空気量QAIRと、空燃比補正係数KAFとの相関特性に基づいて、吸入空気量センサ19の異常(劣化度合が進んだ状態)を判定することとした。さらに、学習補正係数KREFGを空燃比影響パラメータQAIR及び空燃比補正係数KAFの相関特性に基づいて算出し、異常と判定されない程度の劣化度合に応じて空燃比を適切に補正するとともに、吸入空気量センサ19の特性ばらつきの影響を補償することとした。
【0033】
図3に示す相関特性は、図4に示すように直線LSTに対応する近似式で表すことができる。すなわち下記式(2)で定義することができる。
KAF(k)=A×QAIR(k-d)+B (2)
ここで、A,Bは、最小2乗法によって算出され、相関特性を定義する相関パラメータである。より具体的には、図4に示すように、Aは直線LSTの傾きに相当し、Bは検出吸入空気量QAIRが0であるときの空燃比補正係数KAFに相当する。またkは制御周期で離散化した時刻であり、dは検出吸入空気量QAIRの変化の影響が、空燃比補正係数KAFに反映されるまでのむだ時間である。
【0034】
一般に最小2乗法によって信頼性の高い相関パラメータA,Bを算出するためには、多数の検出吸入空気量QAIR(k)及び空燃比補正係数KAF(k)のデータが必要である。そのため、相関パラメータ演算のために多数のデータをメモリに蓄積する必要がある。
【0035】
さらに最小2乗法の実行には、逆行列演算が必要となり、エンジン制御用のCPUの演算能力では演算時間が長くなって、車両走行中(エンジン作動中)に演算を終えることができないといった問題や、他のエンジン制御のための演算が実行できなくなるといった問題が発生する。そのような問題を避けるためには、逆行列演算のための専用のCPUを設けることが考えられるが、コストが大幅に上昇することとなる。
【0036】
そこで本実施形態では、適応制御やシステム同定に用いられる逐次型同定アルゴリズムを相関パラメータA,Bの算出に応用することとした。逐次同定型アルゴリズムは、漸化式を用いるアルゴリズムである。より具体的には、逐次型同定アルゴリズムは、時系列で得られる処理対象データの今回値(最新値)QAIR(k)及びKAF(k)と、相関パラメータの前回値A(k-1),B(k-1)とに基づいて、相関パラメータの今回値A(k)及びB(k)を算出するアルゴリズムである。
【0037】
相関パラメータA,Bを要素とする相関パラメータベクトルθ(k)を下記式(3)で定義すると、逐次型同定アルゴリズムによれば、相関パラメータベクトルθ(k)は下記式(4)により算出される。
θ(k)T=[A(k) B(k)] (3)
θ(k)=θ(k-1)+KP(k)×eid(k) (4)
式(4)のeid(k)は、下記式(5)及び(6)で定義される同定誤差である。またKP(k)は、下記式(7)で定義されるゲイン係数ベクトルであり、式(7)のP(k)は、下記式(8)により算出される2次の正方行列である。
eid(k)=KAF(k)−θ(k-1)Tζ(k) (5)
ζT(k)=[QAIR(k-d) 1] (6)
【数1】
Figure 0003967246
【0038】
式(8)の係数λ1,λ2の設定により、式(4)〜(8)による同定アルゴリズムは、以下のような4つの同定アルゴリズムのいずれかになる。
λ1=1,λ2=0 固定ゲインアルゴリズム
λ1=1,λ2=1 最小2乗法アルゴリズム
λ1=1,λ2=λ 漸減ゲインアルゴリズム(λは0,1以外の所定値)
λ1=λ,λ2=1 重み付き最小2乗法アルゴリズム(λは0,1以外の所定値)
【0039】
本実施形態では、係数λ1を0と1の間の所定値λに設定し、係数λ2を1に設定する重み付き最小2乗法アルゴリズムを採用しているが、他のアルゴリズムを採用してもよい。統計処理に適しているのは、最小2乗法アルゴリズム及び重み付き最小2乗法アルゴリズムである。
【0040】
式(4)〜(8)の逐次型同定アルゴリズムによれば、前述した一括演算型最小2乗法の演算で必要とされる逆行列演算は不要であり、メモリに記憶すべき値はA(k)、B(k)及びP(k)(2列2行の行列)のみである。したがって、逐次型重み付き最小2乗法を用いることにより、統計処理演算を簡略化することができ、特別なCPUを用いることなく、エンジン制御用CPUにより演算することが可能となる。
【0041】
また逐次型重み付き最小2乗法では、同定誤差eidの算出に係わるパラメータ(ζ、KAF)の変動中心を「0」とした方が、より精度の高い相関パラメータを算出することができる。よって、本実施形態では同定誤差eid(k)を前記式(5)に代えて、下記式(5a)により算出するようにした。
eid(k)=(KAF(k)−1)−θ(k-1)Tζ(k) (5a)
【0042】
式(5a)を用いることにより、図4の直線LSTを求める演算は、図5の直線LSTaを求める演算に変換され、パラメータ(KAF(k)−1)の変動中心が「0」となるので、より精度の高い相関パラメータを得ることができる。
【0043】
さらに本実施形態では、相関パラメータA(k)及びB(k)の値を、それぞれ下記式(9)及び(10)を満たすように制限することにより、より安定した相関パラメータの算出を行えるようにしている。
AL<A(k)<AH (9)
BL<B(k)<BH (10)
ここで、AL及びAHは、相関パラメータA(k)の下限値及び上限値である。またBL及びBHは、相関パラメータB(k)の下限値及び上限値である。
【0044】
次に相関パラメータを用いた吸入空気量センサ19の異常判定について説明する。
既に説明したように、吸入空気量センサ19が正常であるときは、図6(a)に示すような相関特性が得られるが、塵埃の付着などに起因する劣化の度合が大きい異常が発生すると、同図(b)に示すような相関特性となる。すなわち、直線LST0の傾きAが変化し、直線LST0が直線LST1に変化する。したがって、上述した手法により算出される相関パラメータA(k)の絶対値が、判定閾値XQXNGより小さいときは(|A(k)|<XQXNG)、吸入空気量センサ19が正常であると判定し、判定閾値XQXNG以上であるときは(|A(k)|≧XQXNG)、吸入空気量センサ19が異常であると判定するようにした。判定閾値XQXNGは実験により適当な値に設定される。
【0045】
次に学習補正係数KREFGの算出手法について説明する。
図5に示した直線LSTaを表す式は、下記式(11)のようになる。
KAF−1=A(k)×QAIR+B(k) (11)
これを変形すると下記式(12)が得られる。
KAF=A(k)×QAIR+B(k)+1 (12)
この式(12)は、相関パラメータA(k)及びB(k)が、重み付き最小2乗法によって算出されるため、統計処理によって求められた、検出吸入空気量QAIRと空燃比補正係数KAFとの相関関係を示している。したがって、検出吸入空気量QAIRが与えられたときに、統計的に予測される空燃比補正係数KAFEが、式(12)の右辺により求められる。そこで、この予測空燃比補正係数KAFEを学習補正係数KREFGとすると、学習補正係数KREFGは、下記式(12a)により算出される。
KREFG=A(k)×QAIR(k)+B(k)+1 (12a)
【0046】
この学習補正係数KREFGを式(1)に適用して燃料噴射時間TOUTの算出に使用することにより、吸入空気量センサ19が劣化した場合でも空燃比補正係数KAFによる補償は不要となり、空燃比補正係数KAFは正常時と同様に「1.0」近傍の値に維持される。すなわち、空燃比フィードバック制御の制御中心が偏倚するのを防止することができる。
【0047】
ところが式(12a)により算出される学習補正係数KREFGを式(1)に適用すると、下記のような制御のハンチングが発生する。
1)直線LSTの傾きが0からより大きな値に増加(相関パラメータA(k)の増加)
→ 2)学習補正係数KREFGが1.0より増加
→ 3)相関パラメータA(k)の減少(0に漸近)
→ 4)学習補正係数KREFGが1.0に戻る(直線LSTの傾きが0に戻る)
→ 1)直線LSTの傾きが0からより大きな値に増加(相関パラメータA(k)の増加)
【0048】
そこでこのハンチングを防止するために、相関パラメータA(k)及びB(k)を算出するときには、空燃比補正係数KAFをそのまま用いずに、下記式(13)により算出される修正空燃比補正係数KAFMOD(k)を用いることとした。
KAFMOD(k)=KAF(k)×KREFG(k-d) (13)
式(13)は、学習補正係数KREFGの増加による吸気側での空燃比変化が、LAFセンサ14を介して空燃比補正係数KAFに反映されるまでのむだ時間dを考慮したものである。
【0049】
そして前記式(11)に代えて下記式(11a)で示すように、パラメータ(KAFMOD−1)と、検出吸入空気量QAIRとの相関を示す相関パラメータA(k)及びB(k)を,前述した逐次型最小2乗法で求めるようにした。すなわち、図7に示すような直線LSTaを定義する相関パラメータA(k)及びB(k)を求めるようにした。
KAFMOD−1=A(k)×QAIR+B(k) (11a)
【0050】
この場合には、前記式(5a)に代えて下記式(5b)を用いて同定誤差eid(k)が算出され、式(5b)とともに式(4)及び(6)〜(8)を用いて相関パラメータベクトルθ(k)が算出される。
eid(k)=(KAFMOD(k)−1)−θ(k-1)Tζ(k) (5b)
【0051】
このように先ず検出吸入空気量QAIRとパラメータ(KAFMOD−1)との相関特性を示す相関パラメータA(k)及びB(k)を算出し、次いで下記式(12a)により学習補正係数KREFGを求める。
KREFG=A(k)×QAIR+B(k)+1 (12a)
【0052】
これにより、制御のハンチングを防止しつつ精度のよい学習補正係数KREFGを得ることができる。そして学習補正係数KREFGを式(1)に適用することにより、空燃比の制御精度を向上させ良好な排気特性を維持することができる。
【0053】
図8は、検出吸入空気量QAIRと、空燃比補正係数KAFとの相関特性の他の例を示している。この例において、検出吸入空気量QAIRが小さい領域では、例えば2次曲線LCによって相関特性を表した方が、より正確な相関特性が得られるが、検出吸入空気量QAIRが大きい領域では、大きく外れてしまい、正確な相関特性を表さない。
【0054】
そこで本実施形態では、図9に示すように、エンジン運転領域を吸入空気量に応じて第1の運転領域R1と、第2の運転領域R2とに分割し、それぞれに領域における相関特性を示す直線LR1及びLR2を求めるようにした。換言すれば、第1及び第2の運転領域R1,R2にそれぞれ対応する第1の相関パラメータベクトルθ1(k)及び第2の相関パラメータベクトルθ2(k)(下記式(15)、(16)参照)が求められる。
θ1T(k)=[A1(k) B1(k)] (15)
θ2T(k)=[A2(k) B2(k)] (16)
【0055】
第1の運転領域R1と、第2の運転領域R2とは、重複するように設定されており、図9における所定吸入空気量QAIR1及びQAIR2は、例えばそれぞれ20g/sec及び40g/secに設定される。
【0056】
このように2つの相関パラメータベクトルθ1及びθ2(2つの直線LR1及びLR2)によって検出吸入空気量QAIRと、空燃比補正係数KAFとの相関特性を表し、学習補正係数KREFGの算出に使用する相関パラメータベクトルは、図10に示すように、直線LR1とLR2の交点PXにおいて切り換えるようにした。これにより、相関パラメータベクトルの変更によって、学習補正係数KREFGが急変することがなく、滑らか切換が可能となる。
【0057】
図10(a)は、交点PXが第1の運転領域R1と第2の運転領域R2の重複範囲にある例を示し、同図(b)は、交点PXが第2の運転領域R2にある例を示す。同図(b)から明らかなように、交点PXが第2の運転領域R2にある場合には、第2の運転領域R2においても、吸入空気量QAIRが交点PXに対応する吸入空気量QAIRX以下であるときは、第1の相関パラメータベクトルθ1が使用される。
【0058】
図11は、上述した手法により相関パラメータベクトルθ1(k)及びθ2(k)を算出し、学習補正係数KREFGを算出し、これを用いて燃料噴射時間TOUTを算出する処理のフローチャートである。またこの処理では、相関パラメータA1(k)及びA2(k)に基づいて吸入空気量センサ19の異常判定が行われる。図11の処理は、TDC信号パルスの発生に同期してECU5のCPUで実行される。
【0059】
ステップS1では、エンジン1の始動が完了しているか否かを判別する。完了していないときは、吸気管内絶対圧PBA及びエンジン回転数NEに応じて設定されたTISマップを検索し、始動用の基本燃料量TISを算出する(ステップS2)。次いで始動用の補正係数K1S及び補正変数K2Sを算出し(ステップS3)、下記式(17)により始動時の燃料噴射時間TOUTSを算出して(ステップS4)、本処理を終了する。
TOUTS=TIS×K1S+K2S (17)
【0060】
エンジン1の始動が完了しているときは、ステップS1からステップS13に進み、吸入空気量センサ19により検出される吸入空気量QAIR(k)を読み込む。
【0061】
ステップS14では、下記式(18)により検出車速VPにローパスフィルタ処理を行い、車速フィルタリング値Vflt(k)を算出する。
Figure 0003967246
式(18)においてaf1〜afn,bf0〜bfmは、予め定められたローパスフィルタ係数である。
【0062】
続くステップS15では、車速フィルタリング値の今回値Vflt(k)と前回値Vflt(k-1)との差の絶対値が、所定車速変化量XDVLM(例えば0.8km/h)より小さいか否かを判別し、その答が否定(NO)であるときはステップS22に進む。ステップS15の答が肯定(YES)であるときは、エンジン回転数NEが所定上限値XNEH(例えば、4000rpm)と所定下限値XNEL(例えば、400rpm)の範囲内にあるか否かを判別する(ステップS16)。その答が否定(NO)であるときはステップS22に進み、ステップS16の答が肯定(YES)であるときは、吸気管内絶対圧PBAが所定上限値XPBH(例えば、88kPa)と所定下限値XPBL(例えば、28kPa)の範囲内にあるか否かを判別する(ステップS17)。その答が否定(NO)であるときはステップS22に進み、肯定(YES)であるときは、上述した式(4)、(5b)、(6)〜(8)及び(11a)により、第1の運転領域R1おいては、第1の相関パラメータベクトルθ1(k)(相関パラメータA1(k)及びB1(k))の算出を行う一方、第2の運転領域R2においては、第2の相関パラメータベクトルθ2(k)(相関パラメータA2(k)及びB2(k))の算出を行う(ステップS18)。
【0063】
続くステップS20では、相関パラメータA1(k)及びA2(k)に応じて、異常判定を行う。すなわち、相関パラメータA1(k)の絶対値が、判定閾値XQXNG1以上であるか否かの判別、及び相関パラメータA2(k)の絶対値が、判定閾値XQXNG2以上であるか否かの判別を行い、|A(k)1|≧XQXNG1または|A(k)2|≧XQXNG2であるときは、吸入空気量センサ19が異常であると判定する。異常と判定した場合には、警告ランプの点灯により当該車両の運転者への警告を行う。
【0064】
ステップS21では、相関パラメータA1(k)及びB1(k)、並びにA2(k)及びB2(k)が、それぞれ式(9)または(10)の条件を満たすように、制限処理を行う。すなわち、式(9)及び/または(10)の条件が満たされないときは、その条件を満たさない相関パラメータの値を、式(9)または(10)の条件を満たすように修正する。
【0065】
ステップS22では、図12に示すKREFG算出処理を実行し、学習補正係数KREFGを算出する。
ステップS23では、LAFセンサ14の出力に応じた空燃比フィードバック制御により、空燃比補正係数KAFを算出する。すなわち空燃比補正係数KAFは、検出空燃比が目標空燃比に一致するように算出される。
ステップS24では、パージ補正係数KPURGE、並びに式(1)に適用される他の補正係数K1及び補正変数K2を算出し、次いで式(1)により、燃料噴射時間TOUTを算出する(ステップS25)。
【0066】
図12は、図11のステップS22において学習補正係数KREFGを算出する処理のフローチャートである。
ステップS31では、下記式(19)により、空燃比補正係数KAFの移動平均値KAFAVEを算出する。なお、式(19)のNは例えば「10」に設定される。
【数2】
Figure 0003967246
【0067】
ステップS32では、下記式(20)により、吸入空気量QAIRの移動平均値QAIRAVEを算出する。
【数3】
Figure 0003967246
【0068】
ステップS33では、下記式(21)及び(22)に、吸入空気量の移動平均値QAIRAVE、第1及び第2の相関パラメータベクトルθ1(k)及びθ2(k)を適用し、第1運転領域補正係数KREFG1及び第2運転領域補正係数KREFG2を算出する。
KREFG1=A1(k)×QAIRAVE+B1(k)+1.0 (21)
KREFG2=A2(k)×QAIRAVE+B2(k)+1.0 (22)
【0069】
ステップS34では、相関パラメータB1(k)が相関パラメータB2(k)より小さいか否かを判別し、B1(k)<B2(k)であるとき(図10(a)に示すような場合)は、第1運転領域補正係数KREFG1及び第2運転領域補正係数KREFG2のうち、小さい方を選択することにより、学習補正係数KREFGを算出する(ステップS35)。
【0070】
一方、B1(k)≧B2(k)であるとき(図10(b)に示すような場合)は、第1運転領域補正係数KREFG1及び第2運転領域補正係数KREFG2のうち、大きい方を選択することにより、学習補正係数KREFGを算出する(ステップS36)。
ステップS34〜S36により、学習補正係数KREFGの算出に使用する相関パラメータベクトルを、直線LR1とLR2の交点PXで切り換える処理が実行される。
【0071】
ステップS37では、下記式(23)に空燃比補正係数の移動平均値KAFAVE及びむだ時間dだけ前の学習補正係数KREFG(k-d)を適用し、修正空燃比補正係数KAFMODを算出する。
KAFMOD=KAFAVE×KREFG(k-d) (23)
【0072】
以上のように本実施形態によれば、空燃比補正係数KAFと、検出吸入空気量QAIRとの相関関係を定義する相関パラメータベクトルθ1及びθ2が逐次型統計処理アルゴリズムを用いて算出される。逐次型統計処理アルゴリズムを用いることにより、その演算のための特別なCPUを必要とせず、比較的小さなメモリ容量で統計処理演算により相関パラメータベクトルθ1及びθ2を算出することができる。
【0073】
さらにエンジン運転領域を第1の運転領域R1と、第2の運転領域とに分割し、第1及び第2の運転領域R1及びR2に対応させて、相関パラメータベクトルθ1及びθ2が算出される。すなわち、検出吸入空気量QAIRと、パラメータ(KAFMOD−1)との相関特性が、2つの直線LR1及びLR2で近似されるので、1つの直線で近似する場合に比べて、エンジン運転領域全体に亘って、より正確な相関特性を得ることができる。
【0074】
さらに学習補正係数KREFGが、第1及び第2の相関パラメータベクトルθ1及びθ2を用いて算出されるので、吸入空気量センサ19の特性変化に対応した精度の良い学習補正係数KREFGを、機関運転状態の広い範囲に亘って得ることができる。そして、空燃比補正係数KAF及び学習補正係数KREFGを用いて燃料噴射時間TOUTが算出されるので、空燃比補正係数KAFの制御中心を「1.0」近傍に維持して良好な制御性を維持することができる。
【0075】
さらに相関パラメータA1(k)及びA2(k)に基づいて吸入空気量センサ19の異常判定が行われるので、吸入空気量センサ19の検出精度を常時監視し、異常判定の精度を向上させることができる。
また車速の変動が少なく、かつエンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAが所定上下限値の範囲内にある運転状態で相関パラメータベクトルθ1及びθ2を算出するようにしたので、相関パラメータの精度を向上させ、学習補正の精度をより向上させることができる。
【0076】
本実施形態では、ECU5が、基本燃料量算出手段、空燃比補正係数算出手段、燃料量制御手段、相関パラメータ算出手段、及び学習手段を構成する。具体的には、図11のステップS23が空燃比補正係数算出手段に相当し、ステップS18が相関パラメータ算出手段に相当し、ステップS22(図12の処理)が学習手段に相当し、ステップS25が基本燃料量算出手段及び燃料量制御手段に相当しに相当する。
【0077】
なお、上述した実施形態では、検出吸入空気量QAIRとパラメータ(KAFMOD−1)との相関特性を直線で近似したが、例えば図8に示したように、一部の運転領域では、直線でなく2次曲線や3次曲線で近似することも可能である。例えば2次曲線の場合には、下記式(24)により相関特性を近似することとする。
KAFMOD−1=A1(k)QAIR2+B1(k)QAIR+C1(k)(24)
【0078】
ここで近似曲線の傾きFは下記式(25)で与えられる。
F=2A(k)QAIR+B(k) (25)
2次曲線で近似した場合も、吸入空気量センサ19の異常時には、曲線の傾きの絶対値が増大する。したがって、吸入空気量QAIRが平均的な値QAIRMであるときの傾きFが所定閾値以上のとき、吸入空気量センサ19が異常と判定することができる。
【0079】
また上述した実施形態では、エンジン運転領域を、検出吸入空気量QAIRに応じて2つの運転領域R1及びR2に分割したが、3以上の運転領域に分割し、分割された各運転領域に対応する相関パラメータベクトルを算出するようにしてもよい。また、検出吸入空気量QAIRではなく、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて、エンジン運転領域を分割するようにしてもよい。
【0080】
また上述した実施形態では、2つの直線LR1及びLR2の交点で、学習補正係数KREFGの算出に使用する相関パラメータベクトルを切り換えるようにしたが、これに限るものではなく、例えば図13(a)及び(b)に示すように、第1の運転領域R1と第2の運転領域R2が重複する範囲では、2つの直線LR1とLR2を滑らかに接続する過渡直線LTRに対応する相関パラメータベクトルθTRを算出し、この相関パラメータベクトルθTRを用いて学習補正係数KREFGを算出するようにしてもよい。
【0081】
また、同図(c)に示すように、第1の運転領域R1と第2の運転領域R2が重複する範囲では、2つの直線LR1とLR2を平均化することにより得られる平均化直線LAVに対応する相関パラメータベクトルθAVを算出し、この相関パラメータベクトルθAVを用いて学習補正係数KREFGを算出するようにしてもよい。
【0082】
また、上述した図11のステップS15では、車速VPのフィルタリング値Vfltの変化量が所定車速変化量XDVLMより小さいか否かを判別するようにしたが、これに代えて、エンジン回転数NEのローパスフィルタリング値の変化量が所定変化量より小さいか否か、及び/または吸気管内絶対圧PBAのローパスフィルタリング値の変化量が所定変化量より小さいか否かを判別するようにしてもよい。
【0083】
その場合には、エンジン回転数NEのローパスフィルタリング値の変化量が所定変化量より小さいとき、吸気管内絶対圧PBAのローパスフィルタリング値の変化量が所定変化量より小さいとき、あるいはエンジン回転数NEのローパスフィルタリング値の変化量が所定変化量より小さく、かつ吸気管内絶対圧PBAのローパスフィルタリング値の変化量が所定変化量より小さいとき、図11のステップS15からステップS16に進む。
【0084】
また本発明は、クランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンなどの制御にも適用が可能である。
【0085】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1に記載の発明によれば、空燃比センサにより検出される空燃比が目標空燃比に一致するように内燃機関に供給する燃料量を補正する空燃比補正係数と、吸入空気量検出手段により検出される吸入空気量との相関関係を定義する複数の相関パラメータベクトルが、逐次型統計処理アルゴリズムを用いて算出され、その相関パラメータベクトルを用いて吸入空気量検出手段の特性変化に関わる学習補正係数が算出される。そして、吸入空気量検出手段により検出される吸入空気量に応じて算出される基本燃料量、前記空燃比補正係数及び学習補正係数を用いて、前記機関に供給する燃料量が制御される。すなわち、多くの検出データに基づく統計処理により相関パラメータベクトルが算出され、その相関パラメータベクトルを用いて学習補正係数が算出されるので、変動する機関運転状態の平均的な状態に対応した精度の高い学習補正係数を得ることができる。また、逐次型統計処理アルゴリズムを用いることにより、特別な演算装置(CPU)を必要とせず、比較的小さなメモリ容量で統計処理演算を実行することができる。さらに、複数の機関運転領域に対応して複数の相関パラメータベクトルが算出されるので、機関運転状態が変化しても学習補正係数の高い精度を維持することができる。また、空燃比補正係数をそのまま用いて相関パラメータベクトルを算出すると、学習補正係数による学習制御がハンチング状態となるおそれがあるが、修正空燃比補正係数を用いることによりそのような不具合を回避することができる。
【0086】
請求項2に記載の発明によれば、相関関係を一次式で定義する複数の相関パラメータベクトルが算出され、前記複数の相関パラメータベクトルから求まる一次式に対応する複数の直線の交点において、学習補正係数の算出に使用する相関パラメータベクトルが切り換えられる。これにより、相関パラメータベクトルの切換に伴って学習補正係数が急変することが防止され、円滑な切換が可能となる。
【0087】
請求項3に記載の発明によれば、前記機関が所定運転状態にあるとき、相関パラメータベクトルの算出が行われるので、相関パラメータの精度を向上させ、学習補正の精度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその燃料供給制御装置の構成を示す図である。
【図2】空燃比補正係数(KAF)と吸入空気量センサにより検出される吸入空気量(QAIR)との関係(正常時)を示す図である。
【図3】空燃比補正係数(KAF)と吸入空気量センサにより検出される吸入空気量(QAIR)との関係(異常時)を示す図である。
【図4】空燃比補正係数(KAF)と吸入空気量センサにより検出される吸入空気量(QAIR)との相関関係を近似する直線(LST)を示す図である。
【図5】空燃比補正係数に応じたパラメータ(KAF−1)と吸入空気量センサにより検出される吸入空気量(QAIR)との関係を示す図である。
【図6】空燃比補正係数に応じたパラメータ(KAF−1)と吸入空気量センサにより検出される吸入空気量(QAIR)との関係(正常時と異常時)を対比して示す図である。
【図7】修正空燃比補正係数に応じたパラメータ(KAFMOD−1)と吸入空気量センサにより検出される吸入空気量(QAIR)との関係を示す図である。
【図8】エンジン運転領域全体に亘って1つの相関関係を適用する場合の問題点を説明するための図である。
【図9】相関関係を2つの直線で近似する例を説明するための図である。
【図10】2つの直線で近似する例における直線の選択方法を説明するための図である。
【図11】燃料噴射時間(TOUT)を算出する処理のフローチャートである。
【図12】学習補正係数(KREFG)を算出する処理のフローチャートである。
【図13】図10に示した選択方法の変形例を示す図である。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 吸気管
5 電子制御ユニット(基本燃料量算出手段、空燃比補正係数算出手段、燃料量制御手段、相関パラメータ算出手段、学習手段)
6 燃料噴射弁
19 吸入空気量センサ(吸入空気量検出手段)

Claims (3)

  1. 内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、該吸入空気量検出手段により検出される吸入空気量に応じて前記機関に供給する基本燃料量を算出する基本燃料量算出手段と、前記機関の排気系に設けられた空燃比センサと、該空燃比センサにより検出される空燃比が目標空燃比に一致するように前記機関に供給する燃料量を補正する空燃比補正係数を算出する空燃比補正係数算出手段と、前記基本燃料量及び前記空燃比補正係数を用いて前記機関に供給する燃料量を制御する燃料量制御手段とを備える内燃機関の燃料供給制御装置において、
    前記空燃比補正係数と、前記吸入空気量検出手段により検出される吸入空気量との相関関係を定義する複数の相関パラメータベクトルを逐次型統計処理アルゴリズムを用いて算出する相関パラメータ算出手段と、
    前記複数の相関パラメータベクトルを用いて前記吸入空気量検出手段の特性変化に関わる学習補正係数を算出する学習手段とを備え、
    前記相関パラメータ算出手段は、前記空燃比補正係数を前記学習補正係数により修正することにより修正空燃比補正係数を算出し、該修正空燃比補正係数を用いて、前記機関の複数の運転領域に対応させて前記複数の相関パラメータベクトルを算出し、
    前記燃料量制御手段は、前記基本燃料量、空燃比補正係数及び学習補正係数を用いて前記燃料量を制御することを特徴とする内燃機関の燃料供給制御装置。
  2. 前記相関パラメータ算出手段は、前記相関関係を一次式で定義する複数の相関パラメータベクトルを算出し、前記学習手段は、前記複数の相関パラメータベクトルから求まる一次式に対応する複数の直線の交点において、前記学習補正係数の算出に使用する相関パラメータベクトルを切り換えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料供給制御装置。
  3. 前記相関パラメータ算出手段は、前記機関が所定運転状態にあるとき、前記複数の相関パラメータベクトルの算出を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の燃料供給制御装置。
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