JP3965611B2 - 一体ブレード付きロータのエアフォイルの機械加工に用いる取付具及び該エアフォイルの表面を機械加工する方法 - Google Patents

Description

【０００１】
【技術分野】
本発明は、一体ブレード付きロータ（Integral Bladed Rotor：ＩＢＲ）に関し、より詳細には、ＩＢＲを機械加工する方法及びこの機械加工方法に用いられる取付具に関する。
【０００２】
【背景技術】
航空技術の当業者であれば認識できるように、超合金材料から形成されている一体ブレード付きロータ（時々、ブリスク（Blisk)又はＩＢＲと称されている）は、軸流タービン及び／又はガスタービンエンジンに用いられる圧縮機のロータを製作するための比較的新しい発明である。すなわち、従来、ロータのブレード及びディスクはそれぞれ独立して形成され、ブレードは典型的によく知られているばち形又はクリスマスツリー形の根元取り付け構造でもって、ディスクのリムに取り付られている。これに対し、ＩＢＲは、ブレード及びディスクを荒い仕上げの形で鋳造し、それからブレードのエアフォイルを最終の形状に機械加工することにより、形成される。ＩＢＲのブレードは、ディスクと一体に鋳造されるか、又はディスクに金属結合される。
【０００３】
ＩＢＲを製作し、又は修繕する方法の例が、１９８４年１０月３０日にミラー等に付与された「一体ブレード付きのバイメタルロータを製作する方法」と題する米国特許第４，４７９，２３７号、１９９２年５月１９日にジェンケル等に付与された「一体ブレード付きロータの製作」と題する米国特許第５，１１３，５８３、及び１９９２年５月５日にデミカエル等に付与された米国特許第５，１０９，６０６号に開示されており、これらの米国特許のすべては本特許出願と同じ譲受人に譲渡されていると共に、その技術的内容は本明細書中にも織り込まれている。
【０００４】
ブレード及びディスクが一体に形成されるとしても、又はブレードがディスクに金属結合により取り付られるとしても、又はＩＢＲを荒く、すなわち未仕上げの形に形成する方法とは無関係な問題として、最終の機械加工作業中に問題が発生している。すなわち、ブレードのエアフォイル区域に用いられている金属及びその薄さのために、構造体は機械加工作業中に歪むくせを有する。典型的に、エアフォイルはコンピュータ化したフライス盤により最終形状に機械加工される。この場合の多切削作業中において、切削工具又はカッタは機械加工されるブレードに力を及ぼし、この力はブレードを歪めることを生じさせる傾向を有するものである。この歪みは、カッタが半径方向外向きの方向に動くときの妨げとなるものである。明らかに、機械加工作業中におけるいかなる歪みも、エアフォイルの最終寸法に悪影響を及ぼし、したがって要求される公差にも悪影響が及ぼされる。これらエンジン構成部品の公差、特にガスタービンエンジンにより動力が供給される航空機に用いられるときのこれらエンジン構成部品の公差が最小に維持されることは、絶対に必要なものである。
【０００５】
これらの機械加工作業のために、各々のブレード間の空所又は空間内に例えばプラスター又はプラスチックなどの低温鋳造材料を鋳造して、ブレードに剛性を加え、これにより機械加工作業中におけるエアフォイルの歪みを減少して最小にすることはよく知られている普通の実施である。
【０００６】
そこで、本発明は、上述した歪みの問題を、このような鋳造方法に、エアフォイルの剛性を増強せしめ、したがって従来仕上げ機械加工作業により発生していた歪みを最小又は排除せしめる取付具を用いることにより除去するものである。すなわち、本発明によれば、取付具はエアフォイルの先端を囲繞すると共にこの先端から間隔を置いているリングを包含し、このリングに複数の周方向に間隔を置いたピンが取り付けられ、これらのピンがブレード間の空間に挿入される。そして、適当なプラスター又はプラスチックの材料が前記空間内に鋳造され、これによりリングとピンと鋳造材料との結合体がエアフォイルの形状の最終切削の間中ロータをしっかりと支持する。本発明において考えられた方法によれば、ピンは大型の頭部と、ねじシャンク部分と、テーパシャンク部分とを有するように形成されている。そして、ピンはリングに固定され、そのテーパシャンク部分は鋳造材料中に埋設される。最初の機械加工作業の準備において、ブレード間の一つ置きの空間にピンが配設される。次に、鋳造材料がブレード間の空間のすべてに注入され、それから硬化される。それから、硬化した鋳造材料とリング／ピンとの構造体を包含する組立体又はユニットの全体が、ピンが設けられていないエアフォイルの表面の切削のために、フライス盤上に装架される。次に、ピンが取り除かれ、それからこれらのピンがブレード間の他の一つ置きの空間内に配設される。それから、ユニットがプラスター又はプラスチックの媒体で鋳造されて、硬化され、その結果硬化した媒体が取付具をＩＢＲに支持し、それからフライス盤に戻され、ここで残りのエアフォイル表面が最終形状に切削される。次に、取付具と仕上げの機械加工されたエアフォイルを持つロータとは切削機械、すなわちフライス盤から取り除かれ、それから鋳造材料がピン及び取付具をＩＢＲから解放するほどに溶融されるような温度にまで加熱される。
【０００７】
本発明を利用してＩＢＲをその最終形状に機械加工した実際のテストによれば、チタン合金から作られたＩＢＲを機械加工作業中に毎分１３．３３５ｃｍ（５．２５インチ）の速度で送ることが可能であることが判った。従来の機械加工作業中の送り速度は、毎分７．６２ｃｍ（３．０インチ）であった。したがって、本発明によれば、送り速度が７５％増大された。そして、ＩＢＲを仕上げる機械加工には１６８時間を要し、これは１１．２％の時間減少であった。これにより、明らかに、機械加工時間のかなりの節約が得られた。生産費は１時間につき１００ドルがかかるので、本発明を用いれば、従来公知の方法を比較して、ひとつのＩＢＲにつき１６，８００，００ドルの節約が得られた。また、重要なこととして、機械加工作業中における構造一体性をしっかりと維持せしめ、その結果最終製品がその特定の公差を達成できた。
【０００８】
【発明の概要】
本発明の目的は、ガスタービンエンジンに用いられるロータのブレードのエアフォイル形状の最終切削の間中、ＩＢＲの剛性を増強せしめて歪みを最小又は排除せしめる取付具を提供することによる。
【０００９】
この目的を達成するために、本発明の特徴は、ロータを囲繞するような寸法とされたリングと、このリングに螺着されて、ブレード間の空間内に取り付られるようにされたテーパ延長部分を有するピンとを用いることにある。
【００１０】
本発明の他の目的は、ブレードのエアフォイル区域の最終機械加工作業の前に、ＩＢＲの構造一体性を増強せしめる方法を提供することにある。
【００１１】
この他の目的を達成するために、本発明による方法は、
１）ロータを囲繞するような寸法とされて、エアフォイルの先端を囲繞すると共にこの先端から間隔を置いているリングを包含する取付具を設ける段階と、
２）複数の通し穴を隣接するブレード間の空間の中心に整列するように前記リングの円周部にかつ互いに間隔を置いて穿設する段階と、
３）頭部と、ねじシャンクと、このねじシャンクの端のテーパ部分とを有するピンを前記取付具に取り付ける段階と、
４）前記ブレード間に形成された空間の一つ置きの空間内に前記テーパ部分が位置するように前記ピンを前記リングの通し穴に挿入する段階と、
５）前記ブレードのすべての間の空間を部分的に充填するように前記取付具とＩＢＲとから成るユニットを鋳造すると共に、その鋳造媒体を凝固して前記取付具をＩＢＲに結合するように該鋳造媒体を硬化する段階と、
６）前記エアフォイルをその最終形状にするよう前記鋳造媒体を取り除くと共に、隣接するエアフォイルの表面の材料を取り除くように前記ブレード間の空間を機械加工する段階と、
７）前記ピンを前記リングから取り除く段階と、
８）この取り除いたピンを先に機械加工した前記空間内に位置させるように前記リングの通し穴に挿入する段階と、
９）前記ブレード間の空間のすべてを充填するようにＩＢＲを鋳造すると共に、その鋳造媒体を凝固して前記取付具をＩＢＲに結合するように該鋳造媒体を硬化する段階と、
１０）ピン接続していない前記空間内の鋳造媒体及び残りのエアフォイル表面を機械加工する段階と、
１１）ＩＢＲを前記鋳造媒体の溶融点以上の温度に加熱することにより前記鋳造媒体を取り除く段階と、
を包含することを特徴とする。
【００１２】
本発明の以上述べた特徴は、添付図面を参照して詳述する下記の本発明の好適な実施例についての説明から一層明らかになるであろう。
【００１３】
【好適な実施例の詳細な説明】
当業者であれば認識できるように、ＩＢＲの機械加工は、“パンケーキ”鋳造物又は“精密”鋳造物から円筒形形状に機械加工することにより始まり、それから鋳造物のフープ応力を除去するために外径からブレード根元の近くまで半径方向切削（連続して又は中断して）が行われる。それから、ＩＢＲがその仕上げ形状になるまで、エアフォイルの両側から材料を機械加工する（通常は多機械加工作業で行われる）。本発明は、エアフォイル上に切削工具により及ぼされる荷重がエアフォイルを歪めることを生じせしめることがある最終機械加工作業に関するものである。
【００１４】
本発明によれば、図１に最も良く見られるように、参照符号１０により総括的に示されている取付具は、適当な金属材料から作られて、ＩＢＲ１４を囲繞する寸法とされている剛性リング１２と、参照符号１６により総括的に示されているピン装置とを包含する。ＩＢＲ１４は、ディスク１８と、周方向に設けられて半径方向に延びる複数のブレード２０とから成ると共に、図２に示されるように、荒仕上げに形成されている。ピン装置はピン１６から成り、このピン１６はテーパシャンク部分２２の形に形成された細長いシャンクと、ねじ部分２４と、工具及び止めナット２８を受け入れる拡大頭部２６とを有する。ピン１６の各々は、リング１２に形成したねじ穴３０を通して延びて適所に設けられ、その結果ピン１６は隣接するブレード２０間の一つ置きの空間の中心に位置する。
【００１５】
次に、ＩＢＲをその最終形状に機械加工する方法について、図２、図３、図４、図５及び図６を参照して詳述する。上述した取付具１０が設けられ、そのピン１６が図３に示されるようにブレード間の一つ置きの空間ａ，ｂ，ｃ，ｄ・・・に設けられ、それから止めナット２８が締付けられてピン１６を適所に固定する。ブレード間の他の一つ置きの空間ｗ，ｘ，ｙ，ｚ・・・には、ピン１６が設けられない。それから、すべての空間ａ，ｂ，ｃ，ｄ，ｗ，ｘ，ｙ，ｚ・・・がプラスター又はプラスチックの材料で鋳造される。鋳造材料が固くなってピン１６のシャンク部分２２をＩＢＲに結合せしめると、“鋳造した”ＩＢＲを備える取付具１０が、それから、切削作業のための機械加工センター上に置かれ、機械加工処理が始められる。すなわち、図４に示されるように、空間ｗ，ｘ，ｙ・・・内の鋳造媒体の材料がブレードの表面及び根元の先端から取り除かれる。これにより、明らかなように、一つ置きのブレードがそれぞれ最終形状に切削されたそれらの前縁１９及び後縁２１を交互に有するようになる。すなわち、以下説明を簡略にするために、便宜上、２つのブレード２０′，２０″及び空間ｗ，ａ，ｘ，ｂについてのみ説明するが、この説明がすべてのブレードを代表するものであることを理解されよう。注目されるように、根元から先端までの前縁１９におけるブレード２０′の表面は、空間ｗ内の鋳造媒体の材料と同じく切削される。同様に、他のブレード２０″の根元から先端までの後縁２１におけるブレード表面も、空間ｘ内の鋳造材料と同じく切削される。空間ａ及びｂは仮付けのままであり、ピン１６はまだ残っている。
【００１６】
仕上げ作業の次の段階は、取付具及び“鋳造した”ＩＢＲを切削機械から取り除き、それからピン装置を取り除くことである。この場合、ピン１６のシャンク部分２２がテーパされているので、ピンの取り除きが、ピンが他の形状とされている場合よりも比較的容易で、困難さも少なくとも小さいことに注目されよう。また、鋳造材料が取り除いたピンにより残された空所を除いて残っていることを注目されよう。
【００１７】
次の段階において、図５に最も良く見られるように、剛性リング１２は、そのねじ穴３０（図１参照）の各々が先に機械加工された一つ置きの空間ｗ，ｘに整列するように配置される。この場合、剛性リング１２は、ブレード間の空間のすべてに整列するように形成した穴を有してもよいし、又は、選択的に、先に使用した穴を次にピン接続しようとする空間に整列させるように１空間分だけ回転させるようにすることもできる。そして、ピン１６がそれから取り付けられ、そのテーパ部分２２が空間ｗ及びｘ内に延びる。それから、空の空間が再鋳造され、空間ａ及びｂはピン無しのままとされる。（空間ａ及びｂ内の鋳造媒体は、図５に示されていない。その理由は、この図５は機械加工作業後のＩＢＲ及び取付具を示しているのである。）それから、鋳造媒体が凝固し、ピンをＩＢＲに結合せしめた後、取付具とＩＢＲとから成るユニットは機械センターに再び戻され、ブレード２０′の後縁２３及びブレード２０″の前縁２５が切削される。この切削は、空間ａ内の鋳造媒体を取り除き、またブレードの先端から根元まで行われることを留意すべきである。
【００１８】
取付具とＩＢＲとから成るユニットは、それから、切削機械から取り除かれ、その後、ユニットを鋳造媒体の溶融点にまで加熱することにより、鋳造媒体が取り除かれる。これにより、図６に示されるような最終仕上げ形状のＩＢＲが製作される。
【００１９】
以上本発明をその実施例に関し図示し詳述してきたけれども、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、その形態及び詳部においてさまざまな変更ができることは当業者にとって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図１】機械加工作業の最終段階の間中ＩＢＲの剛性を増大せしめる取付具を示す一部断面図である。
【図２】未仕上げのＩＢＲの一部側面図である。
【図３】ブレード間の一つ置きの空間内に充填した鋳造媒体中に埋設したピンの設置を示す一部側面断面図である。
【図４】機械加工がピン無しの空間の材料に行われた後の状態を示す、図３と同一の一部側面図である。
【図５】図３及び図４と同一の一部側面図であるが、先に機械加工された空間に次の組みのピンを挿入し、これらのピン有りの空間を鋳造媒体で再鋳造した状態と、先のピンが取り除かれたピン無しの空間が、再鋳造媒体が取り除かれてそのエアフォイル表面が機械加工により切削された状態を示す。
【図６】ＩＢＲの最終仕上げ形状を示す一部断面図である。
【符号の説明】
１０ 取付具
１２ 剛性リング
１４ 一体ブレード付きロータ（ＩＢＲ）
１６ ピン（ピン装置）
１８ ディスク
１９ 前縁
２０，２０′，２０″ ブレード
２１ 後縁
２２ テーパシャンク部分
２３ 後縁
２４ ねじ部分
２５ 前縁
２６ 頭部
２８ 止めナット
３０ ねじ穴（通し穴）
ａ，ｂ，ｃ，ｄ，ｗ，ｘ，ｙ，ｚ 空間

Claims (9)

1. 一体ブレード付きロータのエアフォイルの機械加工に用いる取付具において、前記一体ブレード付きロータの外周を囲繞する寸法とした剛性リングと、この剛性リングに形成した穴を通して半径方向に延びるテーパピンと、このテーパピンを適所に固定する手段とを包含することを特徴とする取付具。
2. 請求項１記載の取付具において、前記リングが金属材料から作られている取付具。
3. 請求項２記載の取付具において、前記ピンがシャンクを包含し、前記シャンクの下部分がテーパされていると共に、前記シャンクの上部分がねじ切りされている取付具。
4. 請求項３記載の取付具において、前記ピンを固定する手段が止めナットから成り、この止めナットが前記ピンのねじ部分に螺合可能であり、これにより前記ピンを所定の半径方向位置に固定することができる取付具。
5. 一体ブレード付きロータのエアフォイルの表面を機械加工する方法において、
   前記一体ブレード付きロータの外周を囲繞する寸法とした剛性リングを設ける段階と、
   複数のテーパピンを用意し、これらのテーパピンを前記一体ブレード付きロータの隣接するブレード間の一つ置きの空間内に半径方向に突出をするように前記剛性リングに取り付ける段階と、
   前記隣接するブレード間の空間を充填するように前記一体ブレード付きロータを鋳造して、前記ピンのテーパ部分を埋設する段階と、
   その鋳造媒体が凝固して前記リングと前記ピンとから成る取付具を前記鋳造した一体ブレード付きロータに固定するまで、前記鋳造した一体ブレード付きロータを硬化する段階と、
   ピン無しの前記空間内の鋳造媒体を取り除いて、前記ブレード表面の半分の形状を仕上げるように、前記ピン無しの空間を機械加工する段階と、
   前記ピンを残りの一つ置きの空間に前記取付具を通して挿入する段階と、
   前記ブレード間の空間のすべてを充填するように前記一体ブレード付きロータを鋳造して、前記ピンのテーパ部分を埋設する段階と、
   その鋳造媒体が凝固して前記取付具を前記鋳造した一体ブレード付きロータに固定するまで、前記鋳造した一体ブレード付きロータを硬化する段階と、
   ピン無しの前記空間内の鋳造媒体を取り除いて、前記ブレード表面の残りの半分の形状を仕上げるように、前記ピン無しの空間を機械加工する段階と、
   前記鋳造媒体及び前記取付具を前記一体ブレード付きロータから取り除く段階と、
   を包含することを特徴とする方法。
6. 請求項５記載の方法において、前記ピンを取り付ける段階が前記ピンを所定の半径方向位置に固定するように止めナットを締付けることから成る方法。
7. 請求項６記載の方法において、前記剛性リングが金属材料から作られていると共に、その外周まわりに複数の通し穴が間隔を置いて形成されている方法。
8. 請求項７記載の方法において、前記鋳造媒体がプラスチックから成る一群から選択される方法。
9. 請求項７記載の方法において、前記鋳造媒体がプラスターから成る一群から選択される方法。

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