JP3965483B2 - エレクトレット繊維シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルタ、マスク、ワイピング材、防塵衣料などに利用できるエレクトレット繊維シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、エレクトレット繊維シートとしては、特公平3−54620号公報や特公平4−8539号公報に開示されているように、例えば図3に示される如く、不織布などの繊維シート3を水電極またはスチールドラムなどからなる接地極5と接触させた状態で、ワイヤー電極や針状電極などの放電極6から直流高電圧を印加することによりエレクトレット化したものが知られている。
【0003】
また特開平6−264361号公報に示されているように、電気的に正のコロナイオンを用いてエレクトレット不織布を製造するに際して、コロナ発生機まわりの雰囲気中の絶対水分量を0.006(kg水蒸気/kg乾きガス)以上に制御してエレクトレット化することで、エレクトレット効果を高めたエレクトレット繊維シートも知られている。
【0004】
しかしながら、上述の直流高電圧を印加する従来法では、ワイヤー電極や針状電極を使用しないとコロナ放電が発生し難く、これらワイヤー電極や針状電極を使用した場合には不平等電界を形成するために、高電圧を印加したときにスパークが発生し易いという不具合があった。
【0005】
このため、スパークが発生しないように印加する直流高電圧を制限した場合には、十分な電荷を繊維シートに付与することができず、エレクトレット効果の高いエレクトレット繊維シートを得ることができなかった。
【0006】
本発明者は、このような事情に鑑み鋭意研究の結果、交流沿面放電を利用して繊維シートをエレクトレット化するに際し、そのエレクトレット化に先だって、エレクトレット化する繊維シートを、特定の温度条件下で加熱するか、或いは特定の温度条件下に特定の時間放置することによって、スパークの発生がなく、エレクトレット効果も高くすることができることを見い出した。
【0007】
また、加えて単極性イオンの発生雰囲気中の絶対水分量を制御することで、スパークの発生がなく、エレクトレット効果をさらに高くすることができることを見い出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0008】
本発明は、繊維シートをエレクトレット化するに際し、スパークの発生がなく、安定した生産を行うことができ、しかもエレクトレット効果が高いエレクトレット繊維シートの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するため、請求項1記載の発明は、交流沿面放電から引抜かれた単極性イオンを繊維シートに作用させることによりエレクトレット化するエレクトレット繊維シートの製造方法において、
60℃以上で、且つ前記繊維シートを構成する繊維の融点未満の温度で加熱処理することで、該繊維シートから発生する有機質のガス状物質の量(アウトガス量)を0.45ppm以下とした繊維シートを用いることを特徴とするエレクトレット繊維シートの製造方法をその要旨とした。
【0010】
請求項2記載の発明は、誘電体の一方表面に放電極が他方表面に誘導電極が設けられ、該放電極と該誘導電極との間に交流高電圧を印加することにより該放電極から該誘電体表面に沿って沿面放電を発生させるための交流沿面放電素子と、該放電極と対向する位置に設けられ、直流高電圧を印加することにより該交流沿面放電素子で発生した沿面放電から単極性イオンを引抜くための引抜き電極との間に、60℃以上で、且つ繊維シートを構成する繊維の融点未満の温度で加熱処理することで、該繊維シートから発生する有機質のガス状物質の量(アウトガス量)を0.45ppm以下とした繊維シートを配置すると共に、前記単極性イオンを繊維シートに作用させることによりエレクトレット化することを特徴とする請求項1記載のエレクトレット繊維シートの製造方法をその要旨とした。
【0011】(削除)
【0012】
請求項3記載の発明は、交流沿面放電から引抜かれた単極性イオンを、前記単極性イオンの発生雰囲気の温度を60℃以下に制御した状態で繊維シートに作用させることによりエレクトレット化することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のエレクトレット繊維シートの製造方法をその要旨とした。
【0013】
請求項4記載の発明は、単極性イオンの発生雰囲気の温度を30℃以下に制御することを特徴とする請求項3記載のエレクトレット繊維シートの製造方法をその要旨とした。
【0014】
請求項5記載の発明は、交流沿面放電から引抜かれた単極性イオンを、前記単極性イオンの発生雰囲気中の絶対水分量を0.013(kg水蒸気/kg乾きガス)以下に制御した状態で繊維シートに作用させることによりエレクトレット化することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のエレクトレット繊維シートの製造方法をその要旨とした。
【0015】
請求項6記載の発明は、単極性イオンの発生雰囲気中の絶対水分量を0.006(kg水蒸気/kg乾きガス)以下に制御することを特徴とする請求項5記載のエレクトレット繊維シートの製造方法をその要旨とした。
【0016】
請求項7記載の発明は、繊維シートと引抜き電極とを接触させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエレクトレット繊維シートの製造方法をその要旨とした。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエレクトレット繊維シートの製造方法を図面に示した一実施の形態に従ってさらに詳しく説明する。図1は本発明のエレクトレット繊維シートの製造方法に使用する装置の一例を示す断面模式図であり、図2は本発明のエレクトレット繊維シートの製造方法に使用する装置の他の例を示す断面模式図である。
【0018】
図1において交流沿面放電を発生させる交流沿面放電素子1は、誘電体11の一方表面に放電極12を、他方表面に誘導電極13を配置することにより形成される。放電極12と誘導電極13とは交流電源14と接続され、さらに放電極12は直流電源21に接続されていて、交流高電圧を印加することによって放電極12から放電極12が配置された側の誘電体11表面に沿って電離が生じて正負両極性のイオンが生成する。印加する交流の電圧は0.1KV以上、より好ましくは1KV以上であるのがよく、周波数は102 〜105 Hz、より好ましくは103 〜2×104 Hzであるのがよい。
【0019】
誘電体11には、ガラス、セラミック、プラスチックなどの板またはシートが用いられる。誘電体11の厚さはとくに限定されないが、あまり厚いと放電させるのに非常に高い電圧が必要となり、あまり薄いと放電極と誘導電極との間の静電容量が上がり交流高電圧の印加が難しくなるので0.1〜5mm程度のものが好適である。また放電極12には、プラスチックなどの表面に導電性塗料を塗布したり金属層や導電性樹脂層を形成したもの、またはアルミニウム、銅などの金属などから形成される格子状電極やメッシュ状電極が適している。なお、放電極12は誘電体11が表面に露出するように開孔を有する構造となっていることが望ましい。
【0020】
誘導電極13には、プラスチックなどの表面に導電性塗料を塗布したり金属層や導電性樹脂層を形成したもの、またはアルミニウム、銅などの金属などから形成される平板電極やあみ状電極が適している。なお、交流沿面放電素子1の形状は、通常は図のように平板状であるが、引抜き電極の形状に合わせて変形してもよく、例えば引抜き電極2がスチールドラムなどのロール形状の場合、このロール形状に沿うように湾曲していてもよい。
【0021】
この交流沿面放電素子1においては、該交流沿面放電素子1の端部で放電極12と誘導電極13の間で直接放電が生じないように誘電体11の長さは放電極12及び誘導電極13より長いことが望ましい。また、放電極12の上にはセラミック薄膜、高分子薄膜などの誘電体薄膜が被覆されていてもよく、このようにすると沿面放電による放電極の消耗が防止できる。
【0022】
この交流沿面放電素子1の放電極12側と間隔をあけて対向する位置に引抜き電極2が設置される。引抜き電極2はアースされており、放電極12に直流高電圧を印加することにより、印加した直流高電圧と同じ極性の単極性イオンを交流沿面放電から引き出す働きをする。例えば、直流高電圧として正の電荷が印加された場合には、正極性のイオンのみが交流沿面放電から引き出され、交流沿面放電素子1から引抜き電極2へと移動する。放電極12へかける直流電圧はあまり大きすぎると引き抜き電極2との間でスパーク放電を起こすおそれがあり、あまり小さいと荷電量が不足するので、繊維シートの状態や雰囲気ガスの種類によっても異なるが、例えば空気中では絶対値(印加電圧は正負両方のケースがあるため)で1〜15KV/cm、より好ましくは3〜10KV/cmであるのがよい。
【0023】
引抜き電極2には、プラスチックなどの表面に導電性塗料を塗布したり金属層や導電性樹脂層を形成したもの、またはアルミニウム、銅などの金属などから形成される平板状電極、網状電極、ロール状電極などが好適である。この引抜き電極2と交流沿面放電素子1との距離は、エレクトレット化する繊維シートの厚みや密度、放電極12に印加する直流高電圧の大きさ、または放電極12と誘導電極13とに印加する交流の電圧や周波数などによって適宜決定されるが、あまりにこの距離が離れていると、効果的な荷電を行うために非常に高い電圧が必要となるので安全上の問題がある。一方、あまり近いと短絡の危険があるので、大体3〜50mm、好ましくは5〜30mmの範囲にあることが望ましい。
【0024】
本方法では、上述のように交流沿面放電素子1において発生させた交流沿面放電から、引抜き電極2によって単極性イオンを引抜いて、交流沿面放電素子1から引抜き電極2へと単極性イオンを移動させるので、交流沿面放電素子1と引抜き電極2との間の空間に繊維シート3を配置しておけば、繊維シート3は単極性のイオンにより作用を受けてエレクトレット化される。
【0025】
なお、図1のように引抜き電極2と繊維シート3を接触させた状態でエレクトレット化を行うと、接触させずにエレクトレット化を行った場合と比べて、より大きな電荷量を繊維シート3に与えることができる。
【0026】
また、図2のように引抜き電極2と繊維シート3との間にセラミック、プラスチック、ガラスなどの誘電体4を介した状態でエレクトレット化を行ってもよい。
【0027】
また本方法に使用する繊維シート3としては、乾式不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、水流絡合不織布、湿式不織布などの不織布や、織物、編み物などの布帛、繊維状ポーラスフィルムなどが適している。とくに、繊維油剤や接着剤の付着がないメルトブロー不織布や水流絡合不織布などの繊維シートはエレクトレット化しやすいのでよい。
【0028】
また、これらの繊維シートを構成する繊維には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリ塩化ビニル系などの誘電性の繊維が適しているが、その体積固有抵抗は1014 Ωcm以上であることが望ましい。構成繊維の体積固有抵抗がこの範囲にあると単極性イオンを繊維に付与しやすく、繊維を長期に安定にエレクトレット化できる。
【0029】
本発明の方法では、前述の如く交流沿面放電から引抜かれた単極性イオンを繊維シートに作用させてエレクトレット化するに際し、そのエレクトレット化に先だって、エレクトレット化する繊維シートを、繊維シートから発生する有機質のガス状物質の量(アウトガス量)を0.45ppm以下としている。ガス状物質の量(アウトガス量)を0.45ppm以下とする方法としては、60℃以上、好ましくは65℃以上で、且つ繊維シートを構成する繊維の融点未満の温度で加熱処理する方法を用いる。
【0030】
繊維シートを60℃以上で、且つ繊維シートを構成する繊維の融点未満の温度で加熱処理する方法としては、例えば繊維シートを形成した後、繊維シートを巻き取らないでコンベアベルトに載せたまま、直ちに加熱室に搬送する。加熱室では、60℃以上で、且つ繊維シートを構成する繊維の融点未満の温度に加熱した加熱空気を繊維シートの上方から吹き付けて処理する方法がある。
【0031】
また、例えば加熱室において、開孔部を有するコンベアベルトやドラムなどの開孔支持体上に繊維シートを載せ、開孔支持体側から吸引しつつ繊維シートの上方から加熱空気を吹き付けて処理する、いわゆるエアースルー型の加熱処理方法もある。このように繊維シートの形成ライン上で加熱処理を行うようにしたならば、より効率的な処理が可能となる。
【0032】(削除)
【0033】(削除)
【0034】
また本発明の方法において、交流沿面放電から引き抜かれた単極性イオンを、繊維シートに作用させてエレクトレット化するに際し、前記単極性イオンの発生雰囲気中の絶対水分量を0.013(kg水蒸気/kg乾きガス)以下に制御するのが望ましい。
【0035】
尚、発生雰囲気中の絶対水分量とは、数1および数2から求まる値をいう。
【0036】
式中psは、気体中の飽和水蒸気圧(mmHg)、RH%は、気体の相対湿度である。
【0037】
好ましくは単極性イオンの発生雰囲気中の絶対水分量を0.013(kg水蒸気/kg乾きガス)以下、より好ましくは0.010(kg水蒸気/kg乾きガス)以下、最適には0.006(kg水蒸気/kg乾きガス)以下に制御して単極性イオンを繊維シートに作用させることで、高レベルのエレクトレット化を実現することができるのである。0.013〜0.010の絶対水分量は、通常の大気では常に得ることはできないので、常時一定以上のエレクトレット効果を得るためには該発生雰囲気の除湿を時々行うようにする。0.010〜0.006の絶対水分量は、通常の大気では得ることができない場合が多いので、該発生雰囲気の除湿を頻繁に行うようにする。0.006以下の絶対水分量は、通常の大気ではほとんど得ることができないので、該発生雰囲気の除湿を常時行うようにする。
【0038】
尚、単極性イオンの発生雰囲気とは、具体的には交流沿面放電素子1と引抜き電極2との間の空間における雰囲気をいい、この空間の雰囲気中の絶対水分量を0.013(kg水蒸気/kg乾きガス)以下に制御するのである。
【0039】
エレクトレット化する繊維シートを、エレクトレット化に先だって、60℃以上で、且つ繊維シートを構成する繊維の融点未満の温度で加熱処理することで、高レベルのエレクトレット化を実現することができる詳細なメカニズムは不明ではあるが、繊維シートを構成する繊維中に含まれる有機質ガスの発生原因となる有機質物質(例えばオリゴマーや分解生成物としてのC6〜C20のパラフィン類やオレフィン類、BHC、フェノール類)の量が減少することに関係しているのではないかと考えられる。
【0040】
また、さらに単極性イオンの発生雰囲気中の絶対水分量を0.013(kg水蒸気/kg乾きガス)以下に制御することで、高レベルのエレクトレット化を実現することができる詳細なメカニズムは不明ではあるが、単極性イオンの発生雰囲気をこのように制御することで、誘電体表面上の電離が促進されて、正負両電極のイオンの発生量が多くなるからではないかと考えられる。
【0041】
また発明者は、高レベルなエレクトレット効果を得るための発生雰囲気の研究を通して、単極性イオンの発生雰囲気の温度がエレクトレット効果に深く関与していることを見い出した。すなわち、発生雰囲気中の温度を60℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは10〜30℃の範囲に制御して、単極性イオンを繊維シートに作用させるすることで、高レベルのエレクトレット化を実現することができるのである。具体的な制御方法としては、例えば放電極12及び誘電体11表面が交流沿面放電により過熱され温度が上昇して、単極性イオンの発生雰囲気の温度が上昇するのを防ぐため、また発生するオゾンを排出するため、除湿した60℃以下の空気を送風して、該発生雰囲気中の空気と置き換える方法を挙げることができる。
【0042】
上記単極性イオンの発生雰囲気の温度制御による高レベルのエレクトレット化についても、詳細なメカニズムは不明ではあるが、絶対水分量を制御した場合と同じく、誘電体表面上の電離が促進されて、正負両電極のイオンの発生量が多くなるからではないかと考えられる。
【0043】
【実施例】
実施例1
図1に示すように誘電体11として厚さ1mmのガラス板を用い、この誘電体11の一方表面に幅が5mm、間隔が5mmのアルミニウム箔製の格子状電極12を貼り付け、他方表面にはアルミニウム箔製の平板状電極13を貼り付け、前記格子状電極12と平板状電極13をそれぞれ交流電源14に接続し、さらに前記格子状電極12を直流電源21に接続して交流沿面放電素子1を作製した。
【0044】
この交流沿面放電素子1の格子状電極12側表面と対向し、かつ格子状電極12との距離が15mmとなるように、銅板からなる引き抜き電極2を配置し、これをアースした。これら格子状電極12と引き抜き電極2の間であって、前記引き抜き電極2に接触させて繊維シート3を配置した。
【0045】
繊維シート3には、面密度20g/m2 、厚さ0.15mmのポリプロピレン製メルトブロー不織布と、アクリル樹脂の接着剤で繊維相互を接着した面密度70g/m2 、厚さ0.6mmのポリエステル繊維不織布とを部分的に熱融着した複合不織布を用いた。
【0046】
次に、この複合不織布をコンベアベルトに載せて加熱室に搬送し、加熱室で69℃で3分間加熱処理を行った。そして、処理後の繊維シートを上記装置に移し、上記装置により、5秒間、帯電させて繊維シート3をエレクトレット化した。尚、格子状電極12と平板状電極13との間には30kHz、4.2KVの交流高電圧をかけ、さらに格子状電極12に+9.0KVの直流高電圧をかけた。また、格子状電極12と引き抜き電極2の間に、大気を冷却して除湿した温度が10℃、絶対水分量が0.0100(kg水蒸気/kg乾きガス)の空気を送風して、交流沿面放電素子1の発生雰囲気の温度と絶対水分量を制御した。
【0047】
加熱処理後の繊維シートから発生する有機質のガス状物質の量(アウトガス量)は、0.2ppmであった。またこのガス状物質の主成分は、2,4ジメチルペンテンであった。得られた複合不織布をエアフィルタとして用いる場合の捕集効率を測定し、その結果を表1に示した。
【0048】
捕集効率の測定
エレクトレット化された複合不織布を用いて、直径0.3〜0.5ミクロンの大気塵について、パーティクルカウンタを用いて、面速度10cm/secにて集塵効率を測定し、複合不織布の集塵効率の評価としてr値を用いた。このr値は、文献(1996、Non-wovens Conference TAPPI Proceedings, p15-19)に記載された手順によって得られる値を次式によって計算処理することにより得られる値である。このr値が高ければ高いほど、当該複合不織布の集塵効率が優れていることを意味する。 r=−ln η/p
ここで、ηは、粒子の透過比率=(複合不織布通過後の大気集塵粒子数)/(複合不織布通過前の大気集塵粒子数)を意味し、pは、複合不織布の圧力損失(Pa)を意味している。そして、帯電量が多ければ多いほど(エレクトレット効果が高ければ高いほど)、集塵効率が高くなるため、このr値を複合不織布の帯電量の評価の目安とした。
【0049】
有機質のガス状物質量(アウトガス量)の測定
1m角の大きさの繊維シートを折り畳み、これを臭気測定用の袋(容量10リットルの袋)に入れた後、袋中の空気を押し出す。次いで、この袋中に窒素ガス5リットルを注入し、密閉したままで2週間放置する。次に、袋中のガスをマイクロシリンジで50ミリリットル採取し、これをTenax GR(商標名)(米国SUPELCO社製の2,6−ジフェニル−p−フェニレンオキサイドとグラファイトカーボンを主成分とする粉状体)を充填した筒状容器中に注入して、Tenax GR(商標名)に有機質のガス状物質のみを吸着させる。この後、筒状容器を加熱脱着装置(ATD−400、米国パーキンエルマー社製)に装着してTenax GR(商標名)から有機質のガス状物質を分離し、このガスをGC/MS測定器(QP−5050A、株式会社島津製作所製)で測定した。
【0050】
実施例2
エレクトレット化前の複合不織布の加熱温度を表1に示す温度にした以外は、実施例1と同様にしてエレクトレット化した複合不織布を作製し、エレクトレット化前の複合不織布の有機質のガス状物質量を測定すると共に、エレクトレット化後の複合不織布の集塵効率を測定した。その結果を表1に示す。
【0051】
比較例1〜2
エレクトレット化前の複合不織布の加熱温度を表1に示す温度にした以外は、実施例1と同様にしてエレクトレット化した複合不織布を作製し、エレクトレット化前の複合不織布の有機質のガス状物質量を測定すると共に、エレクトレット化後の複合不織布の集塵効率を測定した。その結果を表1に示す。
【0052】
参考例1
エレクトレット化前の複合不織布を1m角の大きさとし、これを0℃〜25℃の温度に設定された室内に3ヶ月間放置した以外は、実施例1と同様にしてエレクトレット化した複合不織布を作製し、エレクトレット化前の複合不織布の有機質のガス状物質量を測定すると共に、エレクトレット化後の複合不織布の集塵効率を測定した。その結果を表1に示す。
【0053】
参考例2〜4
放置時間を表1に示す時間にした以外は、参考例1と同様にしてエレクトレット化した複合不織布を作製し、エレクトレット化前の複合不織布の有機質のガス状物質量を測定すると共に、エレクトレット化後の複合不織布の集塵効率を測定した。その結果を表1に示す。
【0054】
比較例3〜5
放置時間を表1に示す時間にした以外は、参考例1と同様にしてエレクトレット化した複合不織布を作製し、エレクトレット化前の複合不織布の有機質のガス状物質量を測定すると共に、エレクトレット化後の複合不織布の集塵効率を測定した。その結果を表1に示す。
【0055】
参考例5〜12
放置時間と放電極6の雰囲気温度と絶対水分量とを表1に示す時間、温度、水分量とした以外は、参考例1と同様にしてエレクトレット化した複合不織布を作製し、エレクトレット化前の複合不織布の有機質のガス状物質量を測定すると共に、エレクトレット化後の複合不織布の集塵効率を測定した。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
表1の実施例1〜2に示すように、加熱温度が60℃以上でγ値が高い値となっている。これに対して、比較例1〜2のように、加熱温度が60℃未満では加熱温度が低くなるに従って、γ値も低い値となっている。
【0057】(削除)
【0058】
また参考例1〜12に示すように、絶対水分量が0.013(kg/kg)以下でr値が高い値となっている。特に絶対水分量が0.0060(kg/kg)以下で、0.0055、0.0047、0.0035と低くなるに従って、r値が高い値となっている。
【0059】
このように本方法を用いることで、スパークの発生がなく、しかも高レベルなエレクトレット化を実現することができることが確認できた。
【0060】
また、エレクトレット化の雰囲気が60℃以下において、特に30℃以下において高い値のr値を得ることができることが確認された。
【0061】
【発明の効果】
本方法によれば、繊維シートをエレクトレット化するに際し、スパークの発生がなく、安定した生産を行うことができ、しかもエレクトレット効果が高いエレクトレット繊維シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本方法に使用する装置の一例を示す断面模式図。
【図2】本方法に使用する装置の他の例を示す断面模式図。
【図3】従来のエレクトレット繊維シートの製造装置の一例を示す断面模式図。
【符号の説明】
1・・・交流沿面放電素子
2・・・引き抜き電極
3・・・繊維シート
11・・・誘電体
12・・・放電極
13・・・誘導電極
14・・・交流電源
21・・・直流電源
Claims (7)
- 交流沿面放電から引抜かれた単極性イオンを繊維シートに作用させることによりエレクトレット化するエレクトレット繊維シートの製造方法において、
60℃以上で、且つ前記繊維シートを構成する繊維の融点未満の温度で加熱処理することで、該繊維シートから発生する有機質のガス状物質の量(アウトガス量)を0.45ppm以下とした繊維シートを用いることを特徴とするエレクトレット繊維シートの製造方法。 - 誘電体の一方表面に放電極が他方表面に誘導電極が設けられ、該放電極と該誘導電極との間に交流高電圧を印加することにより該放電極から該誘電体表面に沿って沿面放電を発生させるための交流沿面放電素子と、該放電極と対向する位置に設けられ、直流高電圧を印加することにより該交流沿面放電素子で発生した沿面放電から単極性イオンを引抜くための引抜き電極との間に、60℃以上で、且つ繊維シートを構成する繊維の融点未満の温度で加熱処理することで、該繊維シートから発生する有機質のガス状物質の量(アウトガス量)を0.45ppm以下とした繊維シートを配置すると共に、前記単極性イオンを繊維シートに作用させることによりエレクトレット化することを特徴とする請求項1記載のエレクトレット繊維シートの製造方法。
- 交流沿面放電から引抜かれた単極性イオンを、前記単極性イオンの発生雰囲気の温度を60℃以下に制御した状態で繊維シートに作用させることによりエレクトレット化することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のエレクトレット繊維シートの製造方法。
- 単極性イオンの発生雰囲気の温度を30℃以下に制御することを特徴とする請求項3記載のエレクトレット繊維シートの製造方法。
- 交流沿面放電から引抜かれた単極性イオンを、前記単極性イオンの発生雰囲気中の絶対水分量を0.013(kg水蒸気/kg乾きガス)以下に制御した状態で繊維シートに作用させることによりエレクトレット化することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のエレクトレット繊維シートの製造方法。
- 単極性イオンの発生雰囲気中の絶対水分量を0.006(kg水蒸気/kg乾きガス)以下に制御することを特徴とする請求項5記載のエレクトレット繊維シートの製造方法。
- 繊維シートと引抜き電極とを接触させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエレクトレット繊維シートの製造方法。
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