JP3963157B2 - ゴルフクラブ - Google Patents

Description

本発明は、ゴルフクラブに関するものである。

従来、金属製外殻部材と繊維強化樹脂製外殻部材とを接合して中空構造のゴルフクラブヘッドを構成するものとして、金属製外殻部材の接合部の両面に前記繊維強化樹脂製外殻部材の接合部を接着したものや、さらには前記金属製外殻部材の接合部に貫通孔を設けて、金属製外殻部材と繊維強化樹脂製外殻部材との接合強度が得られるようにしたものが知られている。

しかし、このようなゴルフクラブヘッドにおいては、繊維強化樹脂製外殻部材により軽量化を図られるものであるが、強度においては樹脂を繊維で強化した繊維強化樹脂であっても限界がある。

このような問題を解決する手段としては、比重が小さく強度の強度の異なる金属を複数組み合せてゴルフクラブヘッドを形成することが考えられる。例えば比重がいずれも小さい純チタン又はチタン合金と、マグネシウム合金を用い、耐強度の大きい箇所には純チタン又はチタン合金を設けると共に、耐強度の小さな箇所にはマグネシウム合金を設けるというものである。

しかし、このような異種金属を溶接によって接合しようとしても、異種金属の溶接を良好に行なうことはできない。また従来技術のように異種金属を接着によって接合しようとしても、さらには貫通孔を設けて接着しようとしても、接着時において大きい密着力を発揮できず、この結果異種金属間の接合強度を十分に得られないという問題がある。
特開２００３−２０５０５５号公報

解決しようとする問題点は、金属製の枠部と、この枠部の内側に設けられる前記枠部よりも比重が小さい素材からなる金属製等の殻本体とを備えた外殻部材により形成したゴルフクラブヘッドにおける前記枠部と殻本体との接合強度を向上する点である。

請求項１の発明は、外殻部材により中空に形成した中空構造のゴルフクラブヘッドにシャフトを接続したゴルフクラブにおいて、前記外殻部材は、金属製の枠部と、前記枠部よりも比重が小さい素材からなる殻本体と、前記枠部の内縁と前記殻本体の外縁との間に介在すると共にこれら内縁と外縁を鋳くるんだ樹脂製の接合部からなり、
前記枠部の内縁と前記殻本体の外縁を重ね、前記枠部の内縁に該内縁の表面及び裏面を貫通する第１の貫通孔を形成すると共に、前記殻本体の外縁に該外縁の表面及び裏面を貫通する第２の貫通孔を形成し、前記内縁と前記外縁との重ね部を前記樹脂製の接合部により鋳くるむと共に、該接合部は前記第１及び第２の貫通孔に挿入しており、
前記枠部の内縁は下向きの第１の段部17を介してやや下方にほぼ横向きとなって配置されると共に、その横向きに形成された内縁に前記第１の貫通孔が形成され、
前記殻本体部の外縁の表面は下向きの第２の段部を介してやや下方にほぼ横向きとなって配置されると共に、その横向きに形成された外縁に前記第２の貫通孔が形成され、
前記内縁と外縁が隙間をおいて重なっていると共に、前記隙間にも樹脂が充填して固化していることを特徴とするゴルフクラブである。

請求項１の発明によれば、枠部の内縁と殻本体の外縁とを樹脂製の接合部により鋳くるむことにより、異なる種類の金属からなる枠部と殻本体とを強力に接合することができる。また、接合部は前記第１及び第２の貫通孔に軸状に挿入することにより、該貫通孔に挿入した樹脂によって強力な抜け止め力を発揮することができ、さらに溶融した樹脂が第１及び第２の貫通孔を通って充填することができる。

本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。例えば外殻部材としては、クラウン部分割部材の他にフェース部分割部材やソール並びに側周部分割部材でもよく、ゴルフクラブヘッドの中空部に発泡材等を充填してもよく、さらに実施例では枠部の内縁を殻本体部の外縁の下方に配置したが、上方に配置するようにしてもよい。この場合には樹脂の接合面の裏面は前記外縁の下方に設ける。

図１〜図４に示す第１実施例はウッド形ゴルフクラブを示しており、このゴルフクラブは前面にフェース１を有するゴルフクラブヘッド２（以下ヘッドという）の一側に形成したネック３に二点鎖線で示したシャフト４の下端を接続したものであり、シャフト４の上部にはグリップ５が設けられている。ヘッド２は、一点鎖線で示すようにフェース１を形成するフェース部分割部材６、ソール７と左右両側と後部を形成するソール並びに側周部分割部材８、クラウン部９を形成するクラウン部分割部材10及びヘッド２の一側に突設する筒状のネック部材３ａとを備えるように複数の外殻分割部材を接合して形成した中空構造であって、それぞれの縁等をレーザ溶接等溶接によって結合し一体化したものである。

前記フェース部分割部材６とソール並びに側周部分割部材８は、それぞれ純チタン又はチタン合金等の板状金属を加工しものである。一方、クラウン部分割部材10は、純チタン又はチタン合金からなる金属製の枠部たる縁枠11と、この縁枠11の内側に設けられる前記縁枠11よりも比重が小さい素材たるマグネシウム合金からなる金属製板状の殻本体部12とを備える。縁枠11はクラウン９の縁を形成するものであり、該縁枠11に囲まれた内側の窓孔13には樹脂（プラスチック）製の接合部14を介して殻本体部12が設けられている。

内側に窓孔13を形成した縁枠11はほぼ同一の厚みを有する金属板をプレス加工等によって加工したものであり、その内縁15の表面16側は下向きの第１の段部17を介して外縁18側の表面16側よりやや下方にほぼ横向きとなって配置されている。そして、横向きに形成された内縁15には、該内縁15に沿って表面16と裏面16ａを貫通するように上下方向に第１の貫通孔19が形成されている。窓孔13を覆うように設けられる殻本体部12の表面20を縁枠11の表面16とほぼ同一面状に設けられるものであって、その外縁21は縁枠11の内縁15に重なるように設けられている。さらに、殻本体部12は、ほぼ同一の厚みを有する金属板をプレス加工等によって加工したものであり、その外縁21の表面は下向きの第２の段部22を介して中央側の表面20よりやや下方にほぼ横向きとなって配置されている。そして、横向きに形成された外縁21には、該外縁21に沿って表面20と裏面20ａを貫通して上下方向に第２の貫通孔19ａが形成されている。尚、第１の段部17の高さ、すなわち内縁15の表面16側と縁枠11の中央側の表面16との厚み方向の段差長さｍは、第２の段部22の高さ、すなわち外縁21の表面20側と中央側の表面20との厚み方向の段差長さｎに、殻本体部12の厚みｐを加えた寸法より大きく形成している。

さらに、前記接合部14は、前記内縁15及び外縁21を鋳くるむように設けられ、接合部14は内縁15及び外縁21に沿って平面環状に配置されるものであって、その表面23は縁枠11の表面16及び殻本体部12の表面20とほぼ同一面状に設けられ、裏面23ａは内縁15の下方を覆うように設けられ、また、接合部14の両側面24は、第１の段部17及び第２の段部22をそれぞれほぼ覆うように設けられている。さらに、接合部14においては前記第１及び第２の貫通孔19,19ａがほぼ同軸状に内縁15と外縁21が隙間ｘをおいて重なっており、そして、貫通孔19,19ａ及び隙間ｘにも樹脂が充填して固化している。尚、第１及び第２の貫通孔19,19ａがほぼ同軸状に設けられるとは、第１の貫通孔19に対して第２の貫通孔19ａが一部分でも重なっていればよいことをいう。

そして、前記各寸法としては例えば段差長さｍを２ｍｍ、段差長さｎを０．８ｍｍ、縁枠11の厚みを１．０ｍｍ、殻本体部12の厚みＰを０．８ｍｍ、内縁15の長さ６ｍｍ、外縁21の長さ５ｍｍ、貫通孔19,19ａの直径３ｍｍ、内縁15と外縁21との隙間ｘ０．４ｍｍ、内縁15と裏面23ａとの隙間１．０ｍｍ、外縁21と表面23との隙間０．８ｍｍとなっており、各寸法はヘッドのサイズにより変更するが、おおむねそれぞれプラスマイナス５０％程度の変更が可能である。

尚、樹脂としては炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維に、例えば樹脂としてはポリブチレンテレフタレート等エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等のマトリックス樹脂を含浸させてなる繊維強化樹脂を使用することができる。これらの樹脂の性質としては、吸水率（２３℃水中で１４時間）が０．１％以下であること等が好ましい。また樹脂を例えば耐熱エポキシ樹脂やポリアミド樹脂として、それを単独或いは繊維強化樹脂として使用してもよい。

次に製造方法について説明する。縁枠11を一方の成形用金型25のキャビティ用凹部26に載置した後に、内縁15に外縁21を重ねるようにして殻本体部12を凹部26に載置した後、他方の成形用金型27を一方の成形用金型25に閉じると、他方の成形用金型27のキャビティ用凸部28が縁枠11と殻本体部12を押え付けるようになって、成形用金型25,27内に縁枠11と殻本体部12をインサート状態とする。尚、この型閉じ時において内縁15と外縁21の重なり箇所において空洞状の接合部用キャビティ29が形成されると共に、この接合部用キャビティ29には溶融樹脂通路30が接続されている。この溶融樹脂通路30はその先端31が第１及び第２の貫通孔19,19ａに対向するように成形用金型25,27に複数設けられる。

そして、溶融樹脂通路に矢印32で示すように溶融樹脂を所定圧で充填する。実施例では樹脂通路30を介して溶融樹脂を射出成形する場合を示している。これにより樹脂は、成形圧が加わった状態で接合部用キャビティ29に充填され、前記内縁15及び外縁21を鋳くるむと共に、第１及び第２の貫通孔19,19ａを通って該第１及び第２の貫通孔19,19ａ及び隙間ｘにも溶融樹脂が充填し固化する。この後型開きして縁枠11と殻本体部12が接合部14を介して接合したクラウン部分割部材10を取り出し、さらにクラウン部分割部材10の外縁18をフェース部分割部材６、ソール並びに側周部分割部材８等と溶接してヘッドを形成するものである。

以上のように、前記第１実施例ではクラウン部分割部材10は、金属製の縁枠11と、該縁枠11の内側に設けられる金属製の殻本体12と、前記縁枠11の内縁15と前記殻本体12の外縁21との間に介在すると共にこれら内縁15と外縁21を鋳くるんだ樹脂製の接合部14からなるので、鋳くるみにより異なる種類の金属からなる縁枠11と殻本体12とを強力に接合することができる。

また、前記縁枠11の内縁15と前記殻本体12の外縁21を重ね、前記縁枠11の内縁15に該内縁15の表面16及び裏面16ａを貫通する第１の貫通孔19を形成すると共に、前記殻本体12の外縁21に該外縁21の表面20及び裏面20ａを貫通する第２の貫通孔19ａ形成し、前記内縁15と前記外縁21との重ね部を前記樹脂製の接合部14により鋳くるむと共に、該接合部14は前記第１及び第２の貫通孔19,19ａに挿入していることにより、貫通孔19,19ａに挿入した樹脂によって強力な抜け止め力を発揮することができる。

さらに、クラウン部分割部材10の製造は、一対の成形金型25,27に縁枠11と殻本体12をインサートした後、該成形金型25,27を閉じて前記縁枠11の内縁15と前記殻本体12の外縁21との間に溶融樹脂を充填して両者を樹脂で鋳くるんで接合することにより、溶融樹脂を充填する圧力により樹脂と内縁15、外縁21との密着力を向上して接合することができる。

しかも、前記インサート時に前記縁枠11の内縁15と前記殻本体12の外縁21を重ねると共に、前記第１及び第２の貫通孔19,19ａをほぼ同軸状に配置することによって、接合部14における溶融樹脂を充填する圧力により接合部14は前記第１及び第２の貫通孔19,19ａに軸状に密着して挿入し、強力な抜け止め力を発揮することができる。さらに、溶融した樹脂がほぼ同軸状に配置された第１及び第２の貫通孔19,19ａを通って接合部用キャビティ29に満遍なく充填できるので、溶融樹脂の流れやすさを確保し、十分充填させることができる。

以上のように本発明にかかるゴルフクラブはアイアン型等の用途にも適用できる。

本発明の第１実施例を示す全体斜視図である。 本発明の第１実施例を示すクラウン部分割部材の平面図である。 本発明の第１実施例を示すクラウン部分割部材の断面図である。 本発明の第１実施例を示す成形金型の断面図である。

符号の説明

２ ゴルフクラブヘッド
４ シャフト
10 クラウン部分割部材（外殻分割部材）
11 縁枠（枠部）
12 殻本体部
14 接合部
15 内縁
16 表面
16ａ 裏面
17 第１の段部
19 第１の貫通孔
19ａ 第２の貫通孔
20 表面
20ａ 裏面
21 外縁
22 第２の段部
25,27 成形用金型
ｘ 隙間

Claims (1)

1. 外殻部材により中空に形成した中空構造のゴルフクラブヘッドにシャフトを接続したゴルフクラブにおいて、前記外殻部材は、金属製の枠部と、前記枠部よりも比重が小さい素材からなる殻本体と、前記枠部の内縁と前記殻本体の外縁との間に介在すると共にこれら内縁と外縁を鋳くるんだ樹脂製の接合部からなり、
   前記枠部の内縁と前記殻本体の外縁を重ね、前記枠部の内縁に該内縁の表面及び裏面を貫通する第１の貫通孔を形成すると共に、前記殻本体の外縁に該外縁の表面及び裏面を貫通する第２の貫通孔を形成し、前記内縁と前記外縁との重ね部を前記樹脂製の接合部により鋳くるむと共に、該接合部は前記第１及び第２の貫通孔に挿入しており、
   前記枠部の内縁は下向きの第１の段部17を介してやや下方にほぼ横向きとなって配置されると共に、その横向きに形成された内縁に前記第１の貫通孔が形成され、
   前記殻本体部の外縁の表面は下向きの第２の段部を介してやや下方にほぼ横向きとなって配置されると共に、その横向きに形成された外縁に前記第２の貫通孔が形成され、
   前記内縁と外縁が隙間をおいて重なっていると共に、前記隙間にも樹脂が充填して固化していることを特徴とするゴルフクラブ。

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