JP3963099B2 - 内燃機関の運転状態判別装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の運転状態を判別する内燃機関の運転状態判別装置に関し、例えば、燃料噴射量に反映することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関に吸入される空気量を調節するスロットルバルブのスロットル開度の変化量を検出することにより内燃機関の運転状態を判別し、例えば、燃料噴射量を補正するものが知られている。このときのスロットル開度は、スロットルバルブのスロットル軸に接続されたスロットル開度センサによって検出されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のように、スロットル開度がスロットル開度センサを用いて検出されるシステム構成であれば、そのスロットル開度の変化量に基づき、内燃機関の運転状態を知ることができる。ここで、高価なスロットル開度センサを省いた簡素化されたシステム構成によって内燃機関の運転状態を知ることができれば、当然のことながら、相当なコストダウンを達成することができる。
【0004】
しかし、従来、スロットル開度センサは必須の構成要素であり、スロットル開度センサからの信号入力がないと、内燃機関の運転状態を速やか、かつ正確に判別することができないという不具合があった。
【0005】
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、スロットル開度センサを有しない簡素化されたシステム構成において、内燃機関の運転状態を速やか、かつ正確に判別可能な内燃機関の運転状態判別装置の提供を課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の内燃機関の運転状態判別装置によれば、吸気圧検出手段で内燃機関の運転状態に応じて所定クランク角毎に吸気通路内の吸気圧が検出され、運転状態判別手段により吸気圧の変化量の絶対値を考慮した大きさと所定の閾値とが比較されることで、内燃機関の加減速状態または定常状態が正確に判別される。
【0007】
このように、所定クランク角が内燃機関の吸気行程中のクランク角とされることで、吸気圧が大きく変化するタイミングを捉えることができるため、吸気圧の変化量に基づく内燃機関の運転状態がより正確に判別される。
【0008】
特に、所定クランク角が内燃機関の吸気行程中に吸気圧検出手段により検出された吸気圧が最低となるクランク角とされることで、吸気圧の最低となるクランク角が内燃機関の負荷によって変動するものにあっては、その変化が顕著に検出される。
【0009】
請求項2の内燃機関の運転状態判別装置では、内燃機関が単気筒であることで、吸気圧の変化が比較的単純な曲線にて表されるため、内燃機関の運転状態の判別精度が向上される。
【0010】
請求項3の内燃機関の運転状態判別装置によれば、吸気圧検出手段で単気筒からなる内燃機関の運転状態に応じて1燃焼サイクル毎に吸気通路内の最低吸気圧が検出され、運転状態判別手段により最低吸気圧の変化量の絶対値を考慮した大きさと所定の閾値とが比較されることで、内燃機関の加減速状態または定常状態が正確に判別される。
【0011】
請求項4の内燃機関の運転状態判別装置では、前記吸気圧検出手段における最低吸気圧を検出する際、前回の燃焼サイクルでの最低吸気圧に対応するクランク角の±90〔°CA〕の範囲にて検出するだけでよいこととなる。これにより、内燃機関の運転状態に応じた1燃焼サイクル毎の最低吸気圧を検出する際の無駄をなくすことができ、結果的に、システムにおける演算負荷を少なくできる。
【0012】
請求項5の内燃機関の運転状態判別装置では、前記吸気圧検出手段における最低吸気圧を検出する際、内燃機関が加速状態にあるときには、前回の燃焼サイクルでの最低吸気圧に対応するクランク角の±90〔°CA〕の範囲を、所定補正値分だけ前に移動させた範囲にて検出するだけでよいこととなる。これにより、内燃機関の運転状態に応じた1燃焼サイクル毎の最低吸気圧を検出する際の無駄をなくすことができ、結果的に、システムにおける演算負荷を少なくできる。
【0013】
また、前記吸気圧検出手段における最低吸気圧を検出する際、内燃機関が減速状態にあるときには、前回の燃焼サイクルでの最低吸気圧に対応するクランク角の±90〔°CA〕の範囲を、所定補正値だけ後に移動させた範囲にて検出するだけでよいこととなる。これにより、内燃機関の運転状態に応じた1燃焼サイクル毎の最低吸気圧を検出する際の無駄をなくすことができ、結果的に、システムにおける演算負荷を少なくできる。
【0014】
このように、前記吸気圧検出手段における最低吸気圧を検出する際、内燃機関の運転状態に応じて、前回の燃焼サイクルでの最低吸気圧に対応するクランク角の±90〔°CA〕の範囲を、所定補正値だけ前後に移動させた範囲にて検出するだけでよいこととなる。これにより、内燃機関の運転状態に応じた1燃焼サイクル毎の最低吸気圧を検出する際の無駄をなくすことができ、結果的に、システムにおける演算負荷を少なくできる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関の運転状態判別装置が適用された内燃機関及びその周辺機器を示す概略構成図である。
【0017】
図1において、1は単気筒の水冷式内燃機関(エンジン)であり、内燃機関1の吸気通路2にはエアクリーナ3からの空気が導入される。この吸気通路2途中には、図示しないアクセルペダルの操作に連動して開閉されるスロットルバルブ11が設けられている。このスロットルバルブ11が開閉されることにより、吸気通路2への吸気量(吸入空気量)が調節される。また、この吸気量と同時に、内燃機関1には吸気ポート4の近傍で吸気通路2に設けられたインジェクタ(燃料噴射弁)5から燃料が噴射供給される。そして、所定の燃料量及び吸気量からなる混合気が吸気バルブ6を介して燃焼室7内に吸入される。 また、吸気通路2途中に設けられたスロットルバルブ11の下流側には、吸気通路2内の吸気圧PMを検出する吸気圧センサ21が設けられている。そして、内燃機関1のクランクシャフト12にはその回転に伴うクランク角〔°CA〕を検出するクランク角センサ22が設けられている。このクランク角センサ22で検出されるクランク角に応じて内燃機関1の機関回転数NEが算出される。更に、内燃機関1には、冷却水温THWを検出する水温センサ23が設けられている。
【0018】
また、内燃機関1の燃焼室7内に向けて点火プラグ13が配設されている。この点火プラグ13にはクランク角センサ22で検出されるクランク角に同期して後述のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)30から出力される点火指令信号に基づき点火コイル/イグナイタ14からの高電圧が印加され、燃焼室7内の混合気に対する点火燃焼が行われる。このように、燃焼室7内の混合気が燃焼(膨張)され駆動力が得られ、この燃焼後の排気ガスは、排気バルブ8を介して排気マニホールドから排気通路9に導出され外部に排出される。
【0019】
ECU30は、周知の各種演算処理を実行する中央処理装置としてのCPU31、制御プログラムを格納したROM32、各種データを格納するRAM33、B/U(バックアップ)RAM34、入出力回路35及びそれらを接続するバスライン36等からなる論理演算回路として構成されている。このECU30には、吸気圧センサ21からの吸気圧PM、クランク角センサ22からのクランク角、水温センサ23からの冷却水温THW等が入力されている。これら各種センサ情報に基づくECU30からの出力信号に基づき、燃料噴射時期及び燃料噴射量に関連するインジェクタ5、点火プラグ13の点火時期に関連する点火コイル/イグナイタ14等が適宜、制御される。
【0020】
次に、本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関の運転状態判別装置で使用されているECU30内のCPU31における内燃機関の運転状態に応じた燃料噴射補正係数演算の処理手順を示す図2のフローチャートに基づき、図3及び図4を参照して説明する。ここで、図3は内燃機関の加速状態における吸気圧〔Pa(パスカル)〕の遷移状態を示すタイムチャート、図4は内燃機関の減速状態における吸気圧〔Pa〕の遷移状態を示すタイムチャートである。なお、この内燃機関の運転状態に応じた燃料噴射補正係数演算ルーチンは所定時間毎にCPU31にて繰返し実行される。
【0021】
図2において、まず、ステップS101で、吸気圧PMの検出タイミングであるかが判定される。ステップS101の判定条件が成立せず、即ち、吸気圧PMの検出タイミングとする所定クランク角〔°CA〕以外であるときには何もすることなく、本ルーチンを終了する。一方、ステップS101の判定条件が成立、即ち、吸気圧PMの検出タイミングとする所定クランク角〔°CA〕であるときにはステップS102に移行し、吸気圧PMが読込まれる。次にステップS103に移行して、ステップS102で読込まれた今回の吸気圧PMからRAM33内に格納されている前回の吸気圧PMOが減算され吸気圧偏差ΔPMが算出される。
【0022】
次にステップS104に移行して、ステップS103で算出された吸気圧偏差ΔPMが加速判定のためのプラス側の閾値A以上であるかが判定される。つまり、図3に示すように、このときの吸気圧偏差ΔPMがプラス側の閾値A以上とプラス側に大きく変化しているかが判定される。ステップS104の判定条件が成立、即ち、吸気圧偏差ΔPMがプラス側の閾値A以上とプラス側に大きく変化しているときにはステップS105に移行し、後述の加速状態に応じた燃料噴射補正係数演算処理が実行される。
【0023】
一方、ステップS104の判定条件が成立せず、即ち、吸気圧偏差ΔPMがプラス側の閾値A未満であるときにはステップS106に移行し、吸気圧偏差ΔPMが減速判定のためのマイナス側の閾値B以下であるかが判定される。つまり、図4に示すように、このときの吸気圧偏差ΔPMがマイナス側の閾値B以下とマイナス側に大きく変化しているかが判定される。ステップS106の判定条件が成立、即ち、吸気圧偏差ΔPMがマイナス側の閾値B以下とマイナス側に大きく変化しているときにはステップS107に移行し、後述の減速状態に応じた燃料噴射補正係数演算処理が実行される。
【0024】
一方、ステップS106の判定条件が成立せず、即ち、吸気圧偏差ΔPMがマイナス側の閾値Bよりプラス側であり、つまり、吸気圧偏差ΔPMがプラス側の閾値Aとマイナス側の閾値Bとの間で変化しているときにはステップS108に移行し、後述の定常状態に応じた燃料噴射補正係数演算処理が実行される。ステップS105またはステップS107またはステップS108による処理ののちステップS109に移行し、今回の吸気圧PMがRAM33内に格納され前回の吸気圧PMOが更新され、本ルーチンを終了する。
【0025】
なお、本ルーチンによる処理ののち、図示しないメインルーチンにて周知のように、内燃機関1の機関回転数NE及び負荷としての吸気圧PMに基づき算出された基本燃料噴射量が、後述の内燃機関1の加減速状態や定常状態に応じた各燃料噴射補正係数を用いて補正され、実際にインジェクタ5から噴射供給される燃料噴射量が調節される。
【0026】
次に、本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関の運転状態判別装置で使用されているECU30内のCPU31における内燃機関の加速状態に応じた燃料噴射補正係数演算の処理手順を示す図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0027】
図5において、ステップS201では、所定の変換ゲインCと機関回転数NEや冷却水温THW等のパラメータによって設定される補正値Dとが吸気圧偏差ΔPMに乗算され加速増量補正係数FACCが算出される。次にステップS202に移行して、所定の変換ゲインEと機関回転数NEや冷却水温THW等のパラメータによって設定される補正値Fとが吸気圧偏差ΔPMに乗算され非同期噴射補正係数TIASYが算出され、本ルーチンを終了する。
【0028】
次に、本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関の運転状態判別装置で使用されているECU30内のCPU31における内燃機関の減速状態に応じた燃料噴射補正係数演算の処理手順を示す図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0029】
図6において、ステップS301では、吸気圧偏差ΔPMがマイナス側の閾値G以下であるかが判定される。このマイナス側の閾値Gは、図2のステップS106におけるマイナス側の閾値Bよりマイナス側に大きく設定されている。ステップS301の判定条件が成立、即ち、吸気圧偏差ΔPMがマイナス側の閾値G以下とマイナス側に大きく変化しているときにはステップS302に移行し、内燃機関1が極端な減速状態にあるとして燃料カットが実行され、本ルーチンを終了する。
【0030】
一方、ステップS301の判定条件が成立せず、即ち、吸気圧偏差ΔPMがマイナス側の閾値Gよりプラス側であり、それほどマイナス側に大きく変化していないときにはステップS303に移行し、通常の減速状態にあるとして所定の変換ゲインHと機関回転数NEや冷却水温THW等のパラメータによって設定される補正値Iとが吸気圧偏差ΔPMに乗算され減速減量補正係数FDECが算出され、本ルーチンを終了する。
【0031】
次に、本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関の運転状態判別装置で使用されているECU30内のCPU31における内燃機関の定常状態に応じた燃料噴射補正係数演算の処理手順を示す図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
図7において、まず、ステップS401で、燃料カット中であるかが判定される。ステップS401の判定条件が成立、即ち、このとき燃料カット中であれば燃料カットからの復帰処理が実行される。一方、ステップS401の判定条件が成立せず、即ち、燃料カット中でないときにはステップS402がスキップされる。
【0033】
次にステップS403に移行して、このときRAM33内に格納されている加速増量補正係数FACCが「0(零)」より大きいかが判定される。ステップS403の判定条件が成立、即ち、加速増量補正係数FACCが「0」より大きいときにはステップS404に移行し、所定のゲインJが加速増量補正係数FACCに乗算され、更に機関回転数NEや冷却水温THW等のパラメータによって設定される補正係数Kが減算され、加速増量補正係数FACCが更新される。一方、ステップS403の判定条件が成立せず、即ち、加速増量補正係数FACCが「0」であるときにはステップS404がスキップされる。
【0034】
次にステップS405に移行して、このときRAM33内に格納されている減速減量補正係数FDECが「0(零)」より大きいかが判定される。ステップS405の判定条件が成立、即ち、減速減量補正係数FDECが「0」より大きいときにはステップS406に移行し、所定のゲインLが減速減量補正係数FDECに乗算され、更に機関回転数NEや冷却水温THW等のパラメータによって設定される補正係数Mが減算され、減速減量補正係数FDECが更新されたのち、本ルーチンを終了する。一方、ステップS405の判定条件が成立せず、即ち、減速減量補正係数FDECが「0」であるときにはステップS406がスキップされ、本ルーチンを終了する。
【0035】
このように、本実施例の内燃機関の運転状態判別装置は、内燃機関1の運転状態に応じて所定クランク角〔°CA〕毎に吸気通路2内の吸気圧PMを検出する吸気圧センサ21及びECU30内のCPU31にて達成される吸気圧検出手段と、前記吸気圧検出手段で検出された吸気圧PMの変化量である吸気圧偏差ΔPMに基づき、内燃機関1の加減速状態または定常状態を判別するECU30内のCPU31にて達成される運転状態判別手段とを具備するものである。また、所定クランク角を内燃機関1の吸気行程中におけるクランク角とするものである。そして、内燃機関1を単気筒とするものである。
【0036】
つまり、内燃機関1の運転状態に応じて所定クランク角毎に検出される吸気通路2内の吸気圧PMに基づく吸気圧偏差ΔPMの絶対値を考慮した大きさと所定の閾値とを比較するだけであるため、スロットル開度センサを有しない簡素化されたシステム構成であっても、内燃機関1が加減速状態または定常状態にあるかを正確に判別することができる。
【0037】
このとき、所定クランク角を内燃機関1の吸気行程中のクランク角とすると、吸気圧PMが大きく変化するタイミングを捉えることができるため、吸気圧偏差ΔPMに基づく内燃機関1の運転状態の判別をより正確なものとすることができる。また、単気筒からなる内燃機関1では、図3及び図4に示したように、吸気圧PMの変化が比較的単純な曲線にて表されるため、内燃機関1の運転状態の判別精度を向上することができる。
【0038】
ところで、上記実施例では、内燃機関1の吸気行程中における所定クランク角毎に検出される吸気圧の変化量に基づき内燃機関1の運転状態を判別するとしたが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、内燃機関1の吸気行程中における最低吸気圧の変化量に基づき内燃機関1の運転状態を判別するようにしてもよい。
【0039】
このような内燃機関の運転状態判別装置は、所定クランク角を内燃機関1の吸気行程中に吸気圧センサ21及びECU30内のCPU31にて達成される吸気圧検出手段で検出される吸気圧が最低となるクランク角とするものである。つまり、吸気圧PMが最低となるクランク角が内燃機関1の負荷によって変動するようなシステム構成にあっては、上述の実施例における所定クランク角毎の吸気圧PMに替えて、吸気圧PMが最低となるクランク角が採用されることでその変化が顕著に検出できることとなる。これにより、上述の実施例と同様の作用・効果が期待できる。
【0040】
また、上記実施例では、単気筒からなる内燃機関1の吸気行程中における所定クランク角毎に検出される吸気圧の変化量に基づき内燃機関1の運転状態を判別するとしたが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、単気筒からなる内燃機関1の運転状態に応じて1燃焼サイクル毎の吸気通路2内の最低吸気圧を検出し、その最低吸気圧の変化量に基づき内燃機関1の運転状態を判別するようにしてもよい。
【0041】
このような内燃機関の運転状態判別装置は、単気筒からなる内燃機関1の運転状態に応じて1燃焼サイクル毎の吸気通路2内の最低吸気圧を検出する吸気圧センサ21及びECU30内のCPU31にて達成される吸気圧検出手段と、前記吸気圧検出手段で検出された最低吸気圧の変化量に基づき、内燃機関1の加減速状態または定常状態を判別するECU30内のCPU31にて達成される運転状態判別手段とを具備するものである。
【0042】
つまり、最低吸気圧が検出されるクランク角が内燃機関1の負荷によって変動するようなシステム構成にあっては、上述の実施例における所定クランク角毎の吸気圧PMに替えて、内燃機関1の運転状態に応じて1燃焼サイクル毎の最低吸気圧が検出されることで、その吸気圧の変化量が顕著に検出できることとなる。これにより、上述の実施例と同様の作用・効果が期待できる。
【0043】
また、上記実施例では、単気筒の内燃機関における運転状態判別について述べたが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、多気筒の内燃機関における運転状態判別においても、吸気圧の変化量に基づき、同様に、内燃機関の運転状態を判別して補正係数を求めることができ、上述の実施例と同様の作用・効果が期待できる。
【0044】
更に、上記実施例では、内燃機関の運転状態を判別して燃料噴射量の補正への反映について述べたが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、この他、点火時期の補正等に反映することもできる。
【0045】
次に、本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関の運転状態判別装置で使用されているECU30内のCPU31における内燃機関1の運転状態に応じて最低吸気圧を検出するクランク角範囲を移動させるための所定補正値演算の処理手順を示す図8のフローチャートに基づき、図9を参照して説明する。ここで、図9は内燃機関1の運転状態として加速状態における吸気圧〔Pa〕の遷移状態を示すタイムチャートであり、都合上、その他の減速状態や定常状態における吸気圧〔Pa〕の遷移状態は省略されている。なお、この所定補正値演算ルーチンは所定時間毎にCPU31にて繰返し実行される。
【0046】
図8において、まず、ステップS501で、吸気圧PMの検出タイミングであるかが判定される。ステップS501の判定条件が成立、即ち、吸気圧PMの検出タイミングとする所定クランク角〔°CA〕であるときにはステップS502に移行し、吸気圧PMが読込まれる。次にステップS503に移行して、最低吸気圧の初期値PMMINからステップS502で読込まれた吸気圧PMが減算された値が「0(零)」を越えているかが判定される。ステップS503の判定条件が成立、即ち、PMMIN−PM>0の不等号が成立し最低吸気圧の初期値PMMINの方が吸気圧PMより大きいときにはステップS504に移行し、ステップS502で読込まれた吸気圧PMが最低吸気圧の初期値PMMINとして更新される。
【0047】
次にステップS505に移行して、このときのクランク角CAが読込まれる。次にステップS506に移行して、ステップS505で読込まれたクランク角CAがステップS504で更新された最低吸気圧の初期値に対応するクランク角の初期値BTMCA(図9に示す「丸黒塗」記号位置参照)として更新される。次にステップS507に移行して、ステップS506で更新されたクランク角の初期値BTMCAに所定補正値KADJCAが加算され差圧検出クランク角JDGCA(図9に示す最初の「三角白抜」記号位置参照)が算出され、本ルーチンを終了する。なお、所定補正値KADJCAは±90〔°CA〕以内で、内燃機関1の運転状態に応じて加速時にはマイナス(−)側、減速時にはプラス(+)側に設定される。この差圧検出クランク角JDGCAを中心として前後90〔°CA〕の範囲にて吸気圧PMが最低となる最低吸気圧が検出される。
【0048】
一方、ステップS501の判定条件が成立せず、即ち、吸気圧PMの検出タイミングとする所定クランク角〔°CA〕以外であるとき、またはステップS503の判定条件が成立せず、即ち、PMMIN−PM≦0の不等号が成立しステップS502で読込まれた吸気圧PMの方が最低吸気圧の初期値PMMINより大きいときには何もすることなく、本ルーチンを終了する。
【0049】
以下、同様に順次、図9に「三角白抜」記号位置、「三角黒塗」記号位置にて示す差圧検出クランク角JDGCAが算出される。そして、これら差圧検出クランク角JDGCAの位置に基づき検出される今回の最低吸気圧と前回の最低吸気圧との吸気圧偏差ΔPM(図9参照)に基づき、上述の燃料噴射補正係数演算処理が実行される。
【0050】
このように、本実施例の内燃機関の運転状態判別装置の吸気圧センサ21及びECU30内のCPU31にて達成される吸気圧検出手段は、所定クランク角毎の吸気圧PMを順次比較し、その吸気圧PMが最低となる最低吸気圧PMMINを検出する際、内燃機関1の運転状態、即ち、内燃機関1の加減速状態または定常状態に応じて、前回の燃焼サイクルでの最低吸気圧PMMINに対応するクランク角の±90〔°CA〕の範囲を所定補正値KADJCA分だけ前後に移動した範囲にて検出するものである。
【0051】
つまり、最低吸気圧PMMINを検出する際、前回の燃焼サイクルでの最低吸気圧PMMINに対応するクランク角の±90〔°CA〕の範囲を、内燃機関1の運転状態に応じて所定補正値KADJCA分だけ前後に移動させた範囲にて検出するだけでよいこととなる。これにより、内燃機関1の運転状態に応じた1燃焼サイクル毎の最低吸気圧PMMINを検出する際の無駄をなくすことができ、結果的にECU30内のCPU31における負荷を少なくすることができる。
【0052】
ところで、上記実施例では、所定クランク角毎の吸気圧PMを順次比較し、その吸気圧PMが最低となる最低吸気圧PMMINを検出する際、内燃機関1の運転状態に応じて、前回の燃焼サイクルでの最低吸気圧PMMINに対応するクランク角の±90〔°CA〕の範囲を所定補正値KADJCA分だけ前後に移動した範囲にて検出するとしたが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、内燃機関1の運転状態によって最低吸気圧PMMINの検出位置がそれほど変動しないときには、前回の燃焼サイクルでの最低吸気圧PMMINに対応するクランク角の±90〔°CA〕に固定された範囲にて最低吸気圧PMMINを検出するようにしてもよい。
【0053】
このような内燃機関の運転状態判別装置の吸気圧センサ21及びECU30内のCPU31にて達成される吸気圧検出手段は、所定クランク角毎の吸気圧PMを順次比較し、その吸気圧PMが最低となる最低吸気圧PMMINを検出する際、前回の燃焼サイクルでの最低吸気圧PMMINに対応するクランク角の±90〔°CA〕の範囲にて検出するものであり、上述の実施例と同様の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関の運転状態判別装置が適用された内燃機関及びその周辺機器を示す概略構成図である。
【図2】 図2は本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関の運転状態判別装置で使用されているECU内のCPUにおける内燃機関の運転状態に応じた燃料噴射補正係数演算の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】 図3は図2の処理に対応する内燃機関の加速状態における吸気圧の遷移状態を示すタイムチャートである。
【図4】 図4は図2の処理に対応する内燃機関の減速状態における吸気圧の遷移状態を示すタイムチャートである。
【図5】 図5は図2における内燃機関の加速状態に応じた燃料噴射補正係数演算の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】 図6は図2における内燃機関の減速状態に応じた燃料噴射補正係数演算の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】 図7は図2における内燃機関の定常状態に応じた燃料噴射補正係数演算の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】 図8は本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関の運転状態判別装置で使用されているECU内のCPUにおける内燃機関の運転状態に応じて最低吸気圧を検出するクランク角範囲を移動させるための所定補正値演算の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】 図9は図8の処理に対応する内燃機関の加速状態における吸気圧の遷移状態を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 内燃機関
21 吸気圧センサ
22 クランク角センサ
30 ECU(電子制御ユニット)
Claims (5)
- 内燃機関の運転状態に応じて所定クランク角毎に吸気通路内の吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、前記吸気圧検出手段で検出された吸気圧の変化量に基づき、前記内燃機関の加減速状態または定常状態を判別する運転状態判別手段とを具備し、
前記所定クランク角は、前記内燃機関の吸気行程中に前記吸気圧検出手段で検出される吸気圧が最低となるクランク角とすることを特徴とする内燃機関の運転状態判別装置。 - 前記内燃機関は、単気筒とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の運転状態判別装置。
- 単気筒からなる内燃機関の運転状態に応じて1燃焼サイクル毎の吸気通路内の最低吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、
前記吸気圧検出手段で検出された最低吸気圧の変化量に基づき、前記内燃機関の加減速状態または定常状態を判別する運転状態判別手段と
を具備することを特徴とする内燃機関の運転状態判別装置。 - 前記吸気圧検出手段は、所定クランク角毎の吸気圧を順次比較し、その吸気圧が最低となる最低吸気圧を検出する際、前回の燃焼サイクルでの前記最低吸気圧に対応するクランク角の±90〔°CA(Crank Angle)〕の範囲にて検出することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の内燃機関の運転状態判別装置。
- 前記吸気圧検出手段は、所定クランク角毎の吸気圧を順次比較し、その吸気圧が最低となる最低吸気圧を検出する際、前記内燃機関の運転状態に応じて、前回の燃焼サイクルでの前記最低吸気圧に対応するクランク角の±90〔°CA〕の範囲を所定補正値分だけ前後に移動した範囲にて検出することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の内燃機関の運転状態判別装置。
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