JP3962636B2 - 貝の中腸腺除去方法とそれに使用される中腸腺除去装置 - Google Patents

貝の中腸腺除去方法とそれに使用される中腸腺除去装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は貝、例えば帆立貝の中腸腺(通称「ウロ」)を除去するのに使用される中腸腺除去方法と、それに使用される中腸腺除去装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
帆立貝は殻の中に貝柱、鰓、外套膜(通称ヒモ)、生殖巣、心臓、中腸腺(通称ウロ)等の内臓がある。中腸腺は肝臓、すい臓の働きをし、内部に胃がある。中腸腺は被膜によって被覆されている。中腸腺には下痢性貝毒が蓄積される時期があるため通常は除去され、廃棄されている。被膜付き中腸腺を取り除くには、従来は、貝ベラ、洋食ナイフ等の器具を用いて帆立貝を開いてから、手で殻から取り除く方法や、殻から貝柱を取り外し、貝柱に付着している中腸腺を手で取り除く方法等があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
手で被膜付き中腸腺を取り除く従来方法は以下のような課題があった。
(1)被膜付き中腸腺は貝柱にも殻にも強固に付着しているため、貝柱から引き剥がしにくいとか、貝柱から引き剥がしても殻から引き剥がしにくいため、いずれの順序であっても引き剥がしにくい。
(2)被膜付き中腸腺を力まかせに引き剥がすと被膜が破れて色の黒い中腸腺が外に流れ出て、被膜付き中腸腺の付近の貝柱や外套膜(通称「ヒモ」)が汚れたり、中腸腺に含まれる貝毒が貝柱やヒモに付着するといったこともある。
(3)被膜が破損しないようにしながら被膜付き中腸腺を取り除くと時間がかかりコスト高になる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、容易に、迅速に、衛生的に、且つ貝の他の部分を汚したりすることなく中腸腺を取り除くことができる貝の中腸腺除去方法と、それに使用される中腸腺除去装置を提供することにある。
【0005】
本件出願の請求項1の貝の中腸腺除去方法は、貝の被膜付き中腸腺の被膜を吸引装置の吸引具で破り、又は前記被膜に吸引装置の吸引具を刺し込み、その吸引具を通して吸引装置により被膜内の中腸腺を吸引除去するものである。
【0006】
本件出願の請求項2の貝の中腸腺除去方法は、貝の被膜付き中腸腺の被膜を破損具で破ってから、その破損具とは別の吸引装置によって被膜内の中腸腺を吸引除去するものである。
【0007】
本件出願の請求項3の貝の中腸腺除去方法は、請求項1又は請求項2記載の貝の中腸腺除去方法において、中腸腺の吸引除去と共に又は中腸腺の吸引除去後に、被膜を吸引装置によって吸引して貝の殻から分離除去するものである。
【0008】
本件出願の請求項4の貝の中腸腺除去装置は、二枚の殻のうち一方の殻が取外された片側殻付きの貝の被膜付き中腸腺の被膜に刺し込み可能であるか、又は前記被膜を破ることが可能であるか、又は前記被膜の一部又は全部に傷をつけることが可能である吸引具と、被膜付き中腸腺の被膜に刺し込むか押し当てるかして被膜を破るか傷つけるかした吸引具内を吸引して被膜内の中腸腺を吸引する吸引装置と、吸引装置によって吸引具内を通して吸引された中腸腺を貯蔵するタンクとを備えたものである。
【0009】
本件出願の請求項5の貝の中腸腺除去装置は、二枚の殻のうち一方の殻が取外された片側殻付きの貝の被膜付き中腸腺の被膜を破る破損具と、破損具で破られた被膜内の中腸腺を吸引する吸引装置と、吸引装置によって吸引された中腸腺を貯蔵するタンクとを備えたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下、本発明の貝の中腸腺除去方法と中腸腺除去装置の実施形態の一例を説明する。図1に示すように、中腸腺除去装置1は、吸引装置としてのサクションガン2と、そのサクションガン2の先に取付けられた吸引具7と、吸引具7を通してサクションガン2に吸引された中腸腺が貯められるタンク11を備えている。
【0011】
前記サクションガン2は、円筒状の本体3と、その本体3の側面に設けられたハンドル5及びスイッチ6と、本体の先に連接されたサクションマウス4とを備えている。このサクションガン2では、前記スイッチ6を押すと、前記サクションマウス4内及び該マウス4の先に取付けられた吸引具7内が負圧となり、これらの内部に吸引力が生じる。具体的には、前記スイッチ6を押すと本体3内の弁が開かれる。すると、エアーホース9を介して外部コンプレッサー10から供給される圧縮エアーがサクションマウス4内に導入され、導入された圧縮エアーが本体3とタンク11とを繋ぐホース8内に流入する。これによって、サクションマウス4内及び吸引具7内が減圧されて負圧状態となり、吸引力が生じる。従って、図2(a)に示すように、吸引具7の先端を被膜付き中腸腺30の被膜22に突き刺した状態で前記スイッチ6を押すと、サクションマウス4内及び吸引具7内に生じた吸引力によって被膜22内の中腸腺21が吸引されて殻24から剥離され、吸引された中腸腺21は吸引具7を通して本体3内に取り込まれる。さらに、本体3内に取り込まれた中腸腺21は、ホース8内に流入した圧縮エアーの流れによってホース8内を移送され、タンク11まで運ばれる。尚、スイッチ6を離せば、前記弁が閉じられ、圧縮エアーの導入が途絶え、吸引力はなくなる。
【0012】
前記吸引具7は細長の金属パイプからなり、その先端は被膜付き中腸腺30の被膜22に刺し込み易くするために鋭利に尖らせてある。
【0013】
サクションガン2の本体3とタンク11とを繋ぐ前記ホース8はゴム製のホースを用いてあるが、ホース8の素材や構造には特に限定はない。もっとも、作業性の観点からは、ホース8が自由に曲がることが望ましく、ゴム製ホースの他には、樹脂製ホースや可撓性のある構造の金属製パイプ等をホース8として用いることが望ましい。尚、本実施形態に示す中腸腺除去装置1では、前記ホース8内が真空又は減圧状態となることはないため、ホース8が耐圧構造を備えている必要はない。
【0014】
前記ホース8、本体3、サクションマウス4、吸引具7、タンク11は夫々分解して掃除することができる。
【0015】
本実施形態に示す中腸腺除去装置1は、単独で使用することも、貝の自動処理機に組み込んで使用することもできる。単独使用する場合、作業者は前記サクションガン2のハンドル5を握って手作業で中腸腺21を除去することになる。従って、この場合は、ハンドル5を作業者が握り易い太さや形状とすることが望ましい。一方、貝の自動処理機に組み込んで使用する場合は、前記のような考慮は必要なく、ハンドル5を任意の太さ、長さ、形状にすることが可能である。
【0016】
(実施形態2)
本発明の中腸腺除去装置の実施形態の他例を図3に基づいて説明する。本実施形態に示す中腸腺除去装置1の基本構成は、前記実施形態1に示す中腸腺除去装置1のそれと同一である。異なるのは、吸引装置にバキュームポンプ13を用い、そのバキュームポンプ13から引出されたホース8の先に連結具12を取付け、その連結具12の先に吸引具7を連結したことである。さらに、前記連結具12に、スイッチ6を設け、そのスイッチ6の操作によって吸引が開始又は停止されるようにしたことである。具体的には、スイッチをONすると、連結具12内の通路が開いてバキュームポンプ13によってホース8内及び吸引具7内が吸引される。すると、これらホース8内及び吸引具7内が負圧状態又は真空状態となり、吸引力が発生する。従って、実施形態1に示した中腸腺除去装置1と同様に、吸引具7の先端を被膜付き中腸腺30の被膜22に突き刺した状態で前記スイッチ6を押すと、被膜22内の中腸腺21が吸引されて殻24から剥離され、吸引された中腸腺21が吸引具7及びホース8内を通してタンク11内に送り込まれる。尚、一方、スイッチ6をOFFすれば、前記通路が閉じられて吸引力がなくなる。
【0017】
前記バキュームポンプ13と連結具12とを繋ぐホース8も、作業性の観点から自由に曲がることが望ましく、具体的には実施形態1に例示した素材や構造を有するホースが適する。但し、本実施形態に示す中腸腺除去装置1では、ホース8内が減圧状態又は真空状態となるため、耐圧構造を備えているか、耐圧性の高い素材で作られている必要がある。
【0018】
本実施形態に示す中腸腺除去装置1も実施形態1に示すそれと同様に、単独で使用することも、貝の自動処理機に組み込んで使用することもできる。単独使用する場合は、実施形態1で説明した理由と同様の理由から、連結具12を作業者が握り易い太さや形状とすることが望ましい。一方、貝の自動処理機に組み込んで使用する場合は、連結具12を任意の太さ、長さ、形状にすることが可能である。
【0019】
(実施形態3)
実施形態1及び実施形態2に示した中腸腺除去装置の吸引具は、図2(b)に示す構造とすることもできる。図2(a)に示す吸引具7は、図1又は図3に示す吸引具7に比べて径を大きくすると共に、その下端周縁に刃14を設けたものである。この吸引具7を用いる場合は、前記刃14を被膜付き中腸腺30の被膜22に押し付けて該膜22を切り裂いて破ってから、被膜22内の中腸腺21を吸引除去する。この場合、被膜22の破れ方によっては、中腸腺21の吸引と同時に被膜22も吸引除去されることがある。また、貝柱23及び殻24への被膜22の付着が弱いときも被膜22が同時に吸引除去されることがある。
【0020】
実施形態1及び実施形態2に示した中腸腺除去装置の吸引具は、図2(c)に示す構造とすることもできる。図2(c)に示す吸引具7は、図1又は図3に示す吸引具7に比べて径を大きくして、被膜付き中腸腺30の被膜22の全体を包むように被せることができるようにしたものである。この吸引具7を用いると、吸引によって被膜22が破れて中の中腸腺21が吸引除去される。また、吸引力を強くすれば中腸腺21が吸引除去された後に、被膜22をも吸引除去される。さらに、被膜付き中腸腺30の被膜22を包むように被せた吸引具7を横に数回往復移動させて、貝柱23及び殻24に付着している被膜22の一部または全部を貝柱23及び殻24から引き剥がすと、中腸腺21を被膜22に被覆されたまま吸引除去することもできる。なお、図示は省略するが、図2(c)に示す吸引具7の下端周縁に、前記図2(b)に示す刃14と同様の刃を設けることができる。かかる吸引具7によれば、これを被膜付き中腸腺30の被膜22を包むように被せた際に、前記刃によって被膜の一部又は全部に切れ目を入れられるので、貝柱23及び殻24に付着している被膜22の一部または全部を貝柱23及び殻24から容易に引き剥がすことができる。
【0021】
実施形態1及び実施形態2に示した中腸腺除去装置の吸引具は、図2(d)に示す構造とすることもできる。図2(d)に示す吸引具7は、その内側に破損具15を設け、その破損具15の先端を吸引具7よりも下方に突出させると共に、突出した先端を鋭利に尖らせたものである。この吸引具7によれば、該吸引具7を被膜付き中腸腺30の被膜22に被せると、破損具15の先端によって被膜22が自動的に破損され、破損された被膜22内の中腸腺21が吸引除去される。
【0022】
もっとも、図示した吸引具7は一例であり、図示された形状、構造以外の形状、構造の吸引具を用いることもできる。
【0023】
【発明の効果】
本件出願の貝の中腸腺除去方法は次のような効果を有する。
(1)中腸腺を吸引除去するので、貝柱等を傷つけることなく中腸腺を除去できる。また、中腸腺除去の際に貝毒が飛び出て貝柱等を汚す虞もない。
(2)被膜を破ってから中腸腺を吸引除去するので、被膜内に中腸腺の一部が除去されずに残る虞がない。
(3)中腸腺を被膜ごと一時に吸引除去するため、これらを別々に除去する場合に比べて作業工程が減り、短時間で被膜及び中腸腺を除去することができる。
(4)使用する吸引具を適宜選択する事によって、より効果的に中腸腺を除去することができる。
(5)中腸腺や被膜の吸引除去に本願発明の貝の中腸腺除去装置を用いれば、連続して大量の貝の中腸腺を簡易且つ迅速に除去することができる。
【0024】
本件出願の貝の中腸腺除去装置は次のような効果を有する。
(1)貝の被膜付き中腸腺の被膜に刺し込み可能であるか、前記被膜を破ることが可能であるか、又は前記被膜の一部又は全部に傷をつけることが可能である吸引具と、吸引具内を吸引して中腸腺を吸引除去可能な吸引装置とを備えるため、中腸腺の貝毒を周囲の貝柱等に飛散させることなく中腸腺を簡易、迅速且つ清潔に除去することができる。
(2)貝の被膜付き中腸腺の被膜を破る破損具と、破られた被膜内の中腸腺を吸引除去可能な吸引装置とを備えるため、前記(1)と同様の効果を有することはもちろん、さらに確実に中腸腺を除去することができる。
(3)吸引除去された中腸腺をまとめて貯めるタンクを備えるため、多数の中腸腺を連続して除去することができる。また、除去された中腸腺の廃棄その他の事後処理が容易である。
(4)形態の異なる複数の吸引具を用意しておき、貝の形態に応じてこれら吸引具を使い分けることができる。また、貝の形態に応じて吸引具を適宜設計変更することもできる。いずれにしても、貝の形態に応じた好適な吸引具を使用することによって、中腸腺を確実、容易、迅速に除去することができる。
(5)吸引装置にバキュームポンプよりも安価なサクションガンを用いれば、製品コストを低減できる。また、バキュームポンプを用いた場合に比べてタンク容量を小さくしても十分な吸引力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の中腸腺除去装置の実施形態の一例を示す説明図。
【図2】 (a)は図1に示す中腸腺除去装置の吸引具を被膜に刺し込んだ状態を示す説明図、(b)〜(d)は、吸引具の異なる例を示す説明図。
【図3】 本発明の中腸腺除去装置の実施形態の他例を示す説明図。
【符号の説明】
1 中腸腺除去装置
2 サクションガン
3 本体(サクションガン)
4 サクションマウス
5 ハンドル
6 スイッチ
7 吸引具
8 ホース
9 エアーホース
10 コンプレッサー
11 タンク
12 連結部
13 バキュームポンプ
14 刃
15 破損具
21 中腸腺
22 被膜
23 貝柱
24 殻
30 被膜付き中腸腺

Claims (5)

  1. 貝の被膜付き中腸腺の被膜を吸引装置の吸引具で破り、又は前記被膜に吸引装置の吸引具を刺し込み、その吸引具を通して吸引装置により被膜内の中腸腺を吸引除去することを特徴とする貝の中腸腺除去方法。
  2. 貝の被膜付き中腸腺の被膜を破損具で破ってから、その破損具とは別の吸引装置によって被膜内の中腸腺を吸引除去することを特徴とする貝の中腸腺除去方法。
  3. 請求項1又は請求項2記載の貝の中腸腺除去方法において、中腸腺の吸引除去と共に又は中腸腺の吸引除去後に、被膜を吸引装置によって吸引して貝の殻から分離除去することを特徴とする貝の中腸腺除去方法。
  4. 二枚の殻のうち一方の殻が取外された片側殻付きの貝の被膜付き中腸腺の被膜に刺し込み可能であるか、又は前記被膜を破ることが可能であるか、又は前記被膜の一部又は全部に傷をつけることが可能である吸引具と、被膜付き中腸腺の被膜に刺し込むか押し当てるかして被膜を破るか傷つけるかした吸引具内を吸引して被膜内の中腸腺を吸引する吸引装置と、吸引装置によって吸引具内を通して吸引された中腸腺を貯蔵するタンクとを備えたことを特徴とする貝の中腸腺除去装置。
  5. 二枚の殻のうち一方の殻が取外された片側殻付きの貝の被膜付き中腸腺の被膜を破る破損具と、破損具で破られた被膜内の中腸腺を吸引する吸引装置と、吸引装置によって吸引された中腸腺を貯蔵するタンクとを備えたことを特徴とする貝の中腸腺除去装置。
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