JP3961266B2 - 光増幅装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ラマン増幅媒質である光ファイバを用いた光増幅装置に係り、特に波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing;以下、「WDM」という)信号光の光増幅中継伝送システムに使用される光増幅装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ラマン増幅媒質である光ファイバを用いた光増幅装置としては、従来、例えば特開平11−174504号公報(無損失モジュール、光ファイバ通信システム)に開示されたものが知られている。以下、図5を参照して従来の光増幅装置の概要を説明する。
【0003】
図5において、右向き矢印の方向に進行するWDM信号光(波長λ1〜λn)が入力する光増幅装置500は、波長分散補償光ファイバ(Dispersion Compensation Fiber;以下、「DCF」という)501と、DCF501の入力端に接続される光アイソレータ502と、一方の入力端がDCF501の出力端に接続される光カプラ503と、光カプラ503の他方の入力端に接続される励起光源504と、光カプラ503の出力端に接続される光アイソレータ502とで構成されている。励起光源504は、波長λpの励起光を発生する。
【0004】
次に、動作について説明する。外部から入力される波長λ1〜λn(例えば、1.54〜1.56μm)のWDM信号光は、光アイソレータ502を通過してDCF501の入力端に入力され、DCF501内を出力端に向かって進行する。一方、励起光源504から射出された波長λp(例えば、1.45μm)の励起光は、光カプラ503からDCF501の出力端に入力し、DCF501内をWDM信号光と逆方向に進む。
【0005】
その結果、DCF501内において誘導ラマン散乱現象による増幅作用がもたらされ、WDM信号光がDCF501内で増幅され、光カプラ503の出力端から光アイソレータ505を通過して外部に出力される。なお、光アイソレータ502,505は、増幅信号光の逆進を阻止して増幅動作を安定化させる機能を有している。
【0006】
ところで、DCFは、1.5μm帯で負の波長分散値をもつように設計されたシングルモード光ファイバであり、伝送路として敷設されている光ファイバの正の波長分散を相殺するために使用される。DCFを利用した分散補償により波長分散に起因する伝送光パルス波形劣化が低減され、高速伝送が可能となる。DCFは、コア径が細いので光パワー密度が高くなる。したがって、図5に示すように、DCF501をラマン増幅媒質に用いると、励起効率が高いので、励起光パワーが比較的低くて済むという利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の光増幅装置では、ラマン増幅媒質に用いるDCFの光パワー密度が高いので、相互位相変調や4光波混合といった非線形光学効果に起因してWDM伝送特性の劣化する信号光パワーレベルの制限が低くなり、高い利得が得難いという問題点があった。
【0008】
この発明は上記に鑑みてなされたもので、ラマン増幅媒質にDCFを利用する場合に、比較的高い励起効率が可能で、かつ非線形光レベル制限を高くして高利得が得られ、さらに光伝送路の分散補償が柔軟に行えるラマンアンプである光増幅装置を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明にかかる光増幅装置は、信号光が入力されるラマン増幅媒質である第1分散補償光ファイバ、および前記第1分散補償光ファイバに入力させる励起光を発生する励起光源を備える第1ラマン増幅部と、前記第1ラマン増幅部の出力光を受けるラマン増幅媒質である光ファイバであって、前記第1分散補償光ファイバの相互位相変調または4光波混合としての非線形光学効果に比べて伝送特性に支障を与えない信号光パワーレベルの上限が高い相互位相変調または4光波混合としての非線形光学効果を有する所定光ファイバ、および前記所定光ファイバに入力させる励起光を発生する励起光源を備える第2ラマン増幅部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、前段の第1ラマン増幅部では、ラマン励起効率の高い第1分散補償光ファイバを用いたラマン増幅が行われ、後段の第2ラマン増幅部では、相互位相変調または4光波混合としての非線形光学効果が弱く波長多重伝送特性の劣化する信号光パワーレベル制限の高い所定光ファイバを用いたラマン増幅が行われる。なお、励起方式は、後方励起と前方励起のいずれかである。
【0011】
前記所定光ファイバは、前記第1分散補償光ファイバと比べてコア径が太いことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、後段に用いられる所定光ファイバとして、前段に用いられる第1分散補償光ファイバよりもコア径が太いものを用いることとしたので、後段の光ファイバは、前段の光ファイバよりも光パワー密度が低くなる。
【0013】
つぎの発明にかかる光増幅装置は、上記の発明において、前記第1ラマン増幅部と前記第2ラマン増幅部との間に光アイソレータが介挿されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、光アイソレータによって第2ラマン増幅部から第1ラマン増幅部に向かう雑音光が阻止される。
【0015】
つぎの発明にかかる光増幅装置は、上記の発明において、前記第1ラマン増幅部では、非線形光学効果が伝送特性に支障を与えない光パワーレベルの上限まで信号光を増幅するように前記第1分散補償光ファイバに注入する励起光のレベルが調節されることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、ラマン励起効率の高い前段の第1ラマン増幅部において、可能な限りの利得稼ぎが行われる。
【0017】
つぎの発明にかかる光増幅装置は、上記の発明において、前記第1分散補償光ファイバと前記所定光ファイバは、互いの波長分散量の合計が光伝送路の波長分散量を実質的に相殺するような波長分散量を持つように設定されていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、第1分散補償光ファイバと前記所定光ファイバによって光伝送路の分散補償が行われる。
【0019】
つぎの発明にかかる光増幅装置は、上記の発明において、前記第1分散補償光ファイバと前記所定光ファイバは、互いの波長分散量をほぼ相殺するような波長分散量を持つように設定され、前記第1ラマン増幅部と前記第2ラマン増幅部との間に、光伝送路の波長分散量を実質的に相殺するような波長分散量を有する第2分散補償光ファイバを備えたことを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、第1分散補償光ファイバと前記所定光ファイバでは、波長分散量の合計が実質的に零分散となるように設定され、第2分散補償光ファイバによって光伝送路の分散補償が行われる。
【0021】
つぎの発明にかかる光増幅装置は、上記の発明において、前記第2分散補償光ファイバに入力させる励起光を発生する励起光源を備えたことを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、ラマン励起効率の高い第2分散補償光ファイバ内で信号光のラマン増幅が行われ、第2分散補償光ファイバの挿入損失が補償される。なお、励起方式は、後方励起と前方励起のいずれかである。
【0023】
つぎの発明にかかる光増幅装置は、上記の発明において、前記第2分散補償光ファイバを前記第1ラマン増幅部と前記第2ラマン増幅部との間に着脱可能に介在させる光コネクタを備えたことを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、第2分散補償光ファイバは、第1ラマン増幅部と第2ラマン増幅部との間に着脱可能に光コネクタ接続されている。
【0025】
つぎの発明にかかる光増幅装置は、上記の発明において、前記所定光ファイバは、1.3μm帯零分散シングルモード光ファイバ、または、1.5μm帯零分散シングルモード光ファイバであることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、所定光ファイバとしては、1.3μm帯零分散シングルモード光ファイバ、または、1.5μm帯零分散シングルモード光ファイバが用いられる。
【0027】
つぎの発明にかかる光増幅装置は、上記の発明において、前記励起光は、無偏光であることを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、励起光には、無偏光の光が用いられる。
【0029】
つぎの発明にかかる光増幅装置は、上記の発明において、前記各励起光源は、前記信号光が波長分割多重信号光である場合に、対応する増幅部の相互間で波長分割多重信号光に対する利得の波長依存性を減少させるような波長関係を持つ励起光を発生することを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、各励起光は、利得スペクトルを調整することによって、対応する増幅部の相互間で波長分割多重信号光に対する利得の波長依存性を減少させるような波長関係を持つように設定される。
【0031】
つぎの発明にかかる光増幅装置は、上記の発明において、前記各励起光源は、それぞれ波長が異なる複数の励起光を発生することを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、各励起光は、それぞれ波長が異なる複数の励起光で構成される。
【0033】
つぎの発明にかかる光増幅装置は、前記第1分散補償光ファイバおよび/または前記所定ファイバとして、フォトニック結晶構造を有する光ファイバが適用されることを特徴とする。
【0034】
この発明によれば、第1分散補償光ファイバおよび/または所定ファイバには、フォトニック結晶構造を有する光ファイバが適用される。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる光増幅装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0036】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1である光増幅装置の構成を示すブロック図である。図1において、この光増幅装置100は、右向き矢印の方向に進行するWDM信号光(波長λ1〜λn)を増幅するように、前段に配置される第1ラマン増幅部101と後段に配置される第2ラマン増幅部102とが縦続接続して構成されている。
【0037】
第1ラマン増幅部101は、DCF111と、DCF111の入力端に接続される光アイソレータ112と、一方の入力端がDCF111の出力端に接続される光カプラ113と、光カプラ113の他方の入力端に接続される励起光源114とで構成されている。励起光源114は、波長λpの励起光を発生する。
【0038】
第2ラマン増幅部102は、入力端が光カプラ113の出力端に接続される1.3μm帯零分散シングルモード光ファイバ(以下、「SMF」という)121と、一方の入力端がSMF121の出力端に接続され光カプラ122と、光カプラ122の他方の入力端に接続される励起光源123と、光カプラ122の出力端に接続される光アイソレータ124とで構成されている。励起光源123は、波長λpの励起光を発生する。
【0039】
次に、以上のように構成される光増幅装置100の動作について説明する。図1において、外部から入力される波長λ1〜λn(例えば、1.54〜1.56μm)のWDM信号光は、第1ラマン増幅部101の光アイソレータ112を通過してDCF111の入力端に入力され、DCF111内を出力端に向かって進行する。一方、励起光源114から射出された波長λp(例えば、1.45μm)の励起光は、光カプラ113からDCF111の出力端に入力し、DCF111内をWDM信号光と逆方向に進む。
【0040】
その結果、DCF111内において誘導ラマン散乱現象による増幅作用がもたらされ、WDM信号光がDCF111内で増幅され、光カプラ113の出力端から第2ラマン増幅部102に対して出力される。このとき、光アイソレータ112によってWDM信号光の逆進が阻止され、DCF111内では安定した増幅動作が行われる。
【0041】
ここで、DCF111は、コア径が細いので、DCF111内の光パワー密度は高い。したがって、ラマン励起効率が高く、励起光パワーは比較的低くて済む。反面、非線形光学効果に起因してWDM伝送特性の劣化する信号光パワーレベル制限も低くなり、増幅されたWDM信号光レベルが制限される。
【0042】
次に、第1ラマン増幅部101にて増幅されたWDM信号光は、第2ラマン増幅部102のSMF121の入力端に入力される。一方、励起光源123から射出された波長λp(例えば、1.45μm)の励起光は、光カプラ122からSMF121の出力端に入力し、SMF121内をWDM信号光と逆方向に進む。
【0043】
その結果、SMF121内において誘導ラマン散乱現象による増幅作用がもたらされ、WDM信号光がSMF121内で増幅され、光カプラ122,光アイソレータ124を通過して外部に出力される。このとき、光アイソレータ124によってWDM信号光の逆進が阻止され、SMF121内では安定した増幅動作が行われる。
【0044】
ここで、SMF121は、DCF111と比べてコア径が太く光パワー密度が低い。このため、ラマン励起効率は低いものの、非線形光学効果が弱いので、非線形光学効果に起因してWDM伝送特性の劣化する信号光パワーレベル制限が高くなり、より高いレベルにまでWDM信号光を増幅することができる。
【0045】
以上のように、実施の形態1によれば、前段増幅部においてラマン励起効率の高いDCFを用いてラマン増幅し、後段増幅部において非線形光学効果が弱くWDM伝送特性の劣化する信号光パワーレベル制限の高いSMFを用いてラマン増幅するようにしたので、SMFのみで増幅した場合よりも高い励起効率が得られ、DCFのみで増幅した場合よりも非線形光レベル制限を高くすることが可能となり、高利得が得られるようになる。
【0046】
そして、DCF111で非線形光学効果が伝送特性に支障を与えない光パワーレベル限界ぎりぎりまでWDM信号光を増幅するように励起光レベルを調整して、ラマン励起効率の高い前段増幅部においてできるだけ利得を稼ぎ、ラマン励起効率の低いSMF121を用いている後段増幅部の利得が低くて済むように動作条件を設定することにより、全体を通した励起効率を高めることができる。
【0047】
また、DCF111は、元来光伝送路として敷設されている光ファイバの分散補償に使用するために1.5μm帯で負の波長分散値をもつように設計された光ファイバである。したがって、DCF111の波長分散量とSMF121の波長分散量との合計が、光伝送路の波長分散量を実質的に相殺するように設定することができる。このような各波長分散値の設定を行うことにより、波長分散に起因する伝送光パルス波形劣化が低減され、高速伝送が可能となる。
【0048】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2である光増幅装置の構成を示すブロック図である。この実施の形態2では、低雑音特性の得られる光増幅装置の構成例が示されている。
【0049】
すなわち、図2に示すように、光増幅装置200では、図1に示した構成において、第1ラマン増幅部101と第2ラマン増幅部102との間に、光アイソレータ201が設けられている。その他は、図1に示した構成と同様である。ここでは、実施の形態2に関わる部分を中心に説明する。
【0050】
次に、以上のように構成される光増幅装置200の動作について説明する。図2において、光アイソレータ201によって、雑音光の逆進が阻止されるので、雑音光の増幅が低減され、低雑音特性が得られる。
【0051】
そして、実施の形態1と同様に、DCF111で非線形光学効果が伝送特性に支障を与えない光パワーレベル限界ぎりぎりまで信号光を増幅するように励起光レベルを調整して、ラマン励起効率の高い前段増幅部においてできるだけ利得を稼ぎ、ラマン励起効率の低いSMF121を用いている後段増幅部の利得が低くて済むように動作条件を設定することにより、全体を通した励起効率を高めることができる。
【0052】
また、DCF111は、元来光伝送路として敷設されている光ファイバの分散補償に使用するために1.5μm帯で負の波長分散値をもつように設計された光ファイバである。したがって、実施形態1と同様に、DCF111の波長分散量とSMF121の波長分散量との合計が、光伝送路の波長分散量を実質的に相殺するように設定することができる。このような各波長分散値の設定を行うことにより、波長分散に起因する伝送光パルス波形劣化が低減され、高速伝送が可能となる。
【0053】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3である光増幅装置の構成を示すブロック図である。この実施の形態3では、光伝送路の分散補償を柔軟に行うことができる光増幅装置の構成例が示されている。
【0054】
すなわち、図3に示すように、光増幅装置300では、図2に示した構成において、光アイソレータ201と第2ラマン増幅部102との間に、DCF301と光アイソレータ302とが追加されている。その他は、図2に示した構成と同様である。ここでは、実施の形態3に関わる部分を中心に説明する。
【0055】
次に、以上のように構成される光増幅装置300の動作について説明する。図3において、DCF111の波長分散量とSMF121の波長分散量は、互いにほぼ相殺するように設定されている。そして、DCF301の波長分散量は、光伝送路の波長分散量を実質的に相殺するように設定されている。つまり、光伝送路の波長分散量に応じてDCF301の波長分散量のみを変更することができるようにしている。その結果、より柔軟に分散補償を行うことができるようになる。
【0056】
実施形態4.
図4は、この発明の実施の形態4である光増幅装置の構成を示すブロック図である。この実施の形態4では、実施の形態3にて追加されたDCFの挿入損失を補うことができる光増幅装置の構成例が示されている。
【0057】
すなわち、図4に示すように、光増幅装置400では、図3に示した構成において、DCF301の出力端と光アイソレータ302との間に、光カプラ401と励起光源402とが追加されている。励起光源402は、励起光源114,123と同様に、波長λpの励起光を発生する。その他は、図3に示した構成と同様である。ここでは、実施の形態4に関わる部分を中心に説明する。
【0058】
次に、以上のように構成される光増幅装置400の動作について説明する。図4において、第1ラマン増幅部101にて増幅されたWDM信号光は、アイソレータ201を通過してDCF301の入力端に入力され、DCF301内を出力端に向かって進行する。一方、励起光源402から射出された波長λp(例えば、1.45μm)の励起光は、光カプラ401からDCF301の出力端に入力し、DCF301内をWDM信号光と逆方向に進む。
【0059】
その結果、DCF301内において誘導ラマン散乱現象による増幅作用がもたらされ、WDM信号光がDCF301内で増幅され、光カプラ401の出力端から第2ラマン増幅部102に対して出力される。このとき、光アイソレータ302によってWDM信号光の逆進が阻止され、DCF301内では安定した増幅動作が行われる。
【0060】
このように、実施の形態4によれば、ラマン励起効率の高いDCF301内でWDM信号光をラマン増幅し、DCF301が有する波長分散量に応じた挿入損失が無損失となるようにしたので、ラマン励起効率の低いSMF121では、より低い励起光パワーで所定の増幅信号光出力を得ることが可能となる。
【0061】
すなわち、実施の形態3の構成では、DCF301が有する波長分散量に応じた挿入損失を補償して所定の増幅信号光出力を得るためには、ラマン励起効率の低いSMF121におけるラマン増幅利得を増やす必要があるが、この実施の形態4では、それを回避することができる。
【0062】
実施の形態5.
この発明は、以上説明した実施の形態1〜4に限定されるものではなく、各種の変形態様が可能である。この実施の形態5では、各種の変形態様が示される。
【0063】
(1)実施の形態3,4において、DCF301は、光コネクタ接続とし、容易に着脱できるようにすることができる。その結果、光伝送路に応じた波長分散量をもつDCFに交換することができ、より柔軟に分散補償を行うことができる。
【0064】
(2)実施形態1〜4では、第2ラマン増幅部102におけるラマン増幅媒体として、1.3μm帯零分散シングルモード光ファイバ(SMF)121を用いた例を示したが、その他、例えば1.5μm帯零分散シングルモード光ファイバ、例えば分散シフト光ファイバ(DSF)やノンゼロ分散シフト光ファイバ(NZ−DSF)も同様に使用することができる。
【0065】
(3)励起光源114,123,402の発生する励起光は、無偏光であっても良い。これによれば、利得の偏光依存性を少なくすることができる。
【0066】
(4)励起光源114,123,402の発生する励起光は、対応する増幅部の相互間でWDM信号光に対する利得の波長依存性を減少させるような波長関係を持つ励起光を発生するように利得スペクトルを調整し設定しても良い。これによれば、WDM信号光に対する利得偏差を減少させることができる。その結果、多段光中継時のWDM信号光レベル偏差の累積が少なくなるので、光中継段数を増やすことができ、WDM伝送の長距離化が可能となる。
【0067】
(5)また、励起光源114,123,402は、(4)の場合において、波長の異なる複数の励起光を発生するようにしても良い。これによれば、WDM信号光に対する各増幅部における利得の波長依存性をより良く相殺するように利得スペクトルを調整することができ、利得偏差をさらに低減することが可能となる。
【0068】
(6)実施の形態1〜4では、各ラマン増幅媒質である光ファイバの励起は、出力端から励起光を注入する後方励起による場合を示したが、入力端から励起光を注入する前方励起方式も同様に採用できる。
【0069】
(7)ところで、光波長と同程度の寸法で屈折率が周期的に分布するような格子構造をもつ誘電媒体を「フォトニック結晶(photonic crystal)」と呼び、従来にない光学性能や光制御が実現できる新しい技術として注目されている。このようなフォトニック結晶構造を光ファイバに適用することにより、誘導ラマン散乱現象による光増幅性能を様々に制御することができる。例えば、酸化ゲルマニウムガラス等のラマン利得係数の高い材料を光ファイバの材料として用い、かつフォトニック結晶構造を利用した光導波により光パワー密度を下げて非線形性を弱めれば、高励起効率で高利得のラマン増幅器が実現できる。フォトニック結晶構造により雑音光となる自然放出光の発光を抑制すれば、低雑音のラマン増幅器が実現できる。
【0070】
(8)また、フォトニック結晶構造により、光導波性能、引いてはラマン増幅性能と独立したパラメータとして、いわゆる構造分散を光ファイバに与えることができる。フォトニック結晶構造の設計により構造分散の制御の自由度が増すので、例えば分散補償の精度が上がるといったように、光伝送路の分散補償における柔軟性を高めることができる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、前段の第1ラマン増幅部では、ラマン励起効率の高い第1分散補償光ファイバを用いたラマン増幅が行われ、後段の第2ラマン増幅部では、非線形光学効果が弱く波長多重伝送特性の劣化する信号光パワーレベル制限の高い所定光ファイバを用いたラマン増幅が行われる。なお、励起方式は、後方励起と前方励起のいずれかである。したがって、非線形光学効果が弱い所定光ファイバのみで増幅した場合よりも高い励起率が得られ、しかも第1分散補償光ファイバのみで増幅した場合よりも高い非線形レベルの制限が得られるので、高い利得が得られるようになる。
【0072】
つぎの発明によれば、後段に用いられる所定光ファイバには、前段に用いられる第1分散補償光ファイバよりもコア径が太いものが用いられる。その結果、後段の光ファイバは、前段の光ファイバよりも光パワー密度が低くなるという効果が得られるようになる。
【0073】
つぎの発明によれば、光アイソレータによって第2ラマン増幅部から第1ラマン増幅部に向かう雑音光が阻止される。したがって、雑音光の増幅が低減できるので、低雑音特性が得られるようになる。
【0074】
つぎの発明によれば、ラマン励起効率の高い前段の第1ラマン増幅部において、可能な限りの利得稼ぎが行われる。その結果、励起効率の低い後段の第2ラマン増幅部では、利得が低くて済む設定を行うことができ、全体を通した励起効率を高めることができるようになる。
【0075】
つぎの発明によれば、第1分散補償光ファイバと前記所定光ファイバによって光伝送路の分散補償が行われる。その結果、波長分散に起因する伝送光パルス波形が低減されるので、高速伝送が行えるようになる。
【0076】
つぎの発明によれば、第1分散補償光ファイバと前記所定光ファイバでは、波長分散量の合計を実質的に零分散となるように設定され、第2分散補償光ファイバによって光伝送路の分散補償が行われる。したがって、第2分散補償光ファイバの波長分散量のみを変更することにより、柔軟に光伝送路の分散補償を行うことができるようになる。
【0077】
つぎの発明によれば、ラマン励起効率の高い第2分散補償光ファイバ内で信号光のラマン増幅が行われ、第2分散補償光ファイバの挿入損失が補償される。したがって、ラマン励起効率の低い第2ラマン増幅部では、より低い励起光パワーで所定レベルの増幅信号光が出力できるようになる。
【0078】
つぎの発明によれば、第2分散補償光ファイバは、第1ラマン増幅部と第2ラマン増幅部との間に着脱可能に光コネクタ接続されている。したがって、第2分散補償光ファイバは、光伝送路に応じた波長分散量を持つものに交換できるので、一層柔軟に光伝送路の分散補償を行うことができるようになる。
【0079】
つぎの発明によれば、所定光ファイバとして、1.3μm帯零分散シングルモード光ファイバ、または、1.5μm帯零分散シングルモード光ファイバを用いることができる。
【0080】
つぎの発明によれば、励起光には、無偏光光が用いられる。その結果、利得の偏波依存性を少なくすることができるようになる。
【0081】
つぎの発明によれば、各励起光は、利得スペクトルを調整することによって、対応する増幅部の相互間で波長分割多重信号光に対する利得の波長依存性を減少させるような波長関係を持つように設定される。その結果、波長分割多重信号光に対する利得偏差が減少するので、多段光中継時の波長分割多重信号光レベル偏差の累積が少なくなる。したがって、光中継段数を増加することができ、波長分割多重信号光伝送の長距離化が可能となる。
【0082】
つぎの発明によれば、各励起光は、それぞれ波長が異なる複数の励起光で構成される。その結果、波長分割多重信号光に対する利得偏差を一層減少させることができるようになる。
【0083】
つぎの発明によれば、第1分散補償光ファイバおよび/または所定ファイバには、フォトニック結晶構造を有する光ファイバが適用される。その結果、誘導ラマン散乱現象による光増幅性能を様々に制御することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1である光増幅装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態2である光増幅装置の構成を示すブロック図である。
【図3】 この発明の実施の形態3である光増幅装置の構成を示すブロック図である。
【図4】 この発明の実施の形態4である光増幅装置の構成を示すブロック図である。
【図5】 従来の光増幅装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
100,200,300,400 光増幅装置、101 ラマン第1増幅部、102 ラマン第2増幅部、111,301 分散補償光ファイバ(DCF)、112,124,201,302 光アイソレータ、113,122,401 光カプラ、114,123,402 励起光源、121 1.3μm帯零分散シングルモード光ファイバ(SMF)。

Claims (13)

  1. 信号光が入力されるラマン増幅媒質である第1分散補償光ファイバ、および前記第1分散補償光ファイバに入力させる励起光を発生する励起光源を備える第1ラマン増幅部と、
    前記第1ラマン増幅部の出力光を受けるラマン増幅媒質である光ファイバであって、前記第1分散補償光ファイバの相互位相変調または4光波混合としての非線形光学効果に比べて伝送特性に支障を与えない信号光パワーレベルの上限が高い相互位相変調または4光波混合としての非線形光学効果を有する所定光ファイバ、および前記所定光ファイバに入力させる励起光を発生する励起光源を備える第2ラマン増幅部と、
    を備えたことを特徴とする光増幅装置。
  2. 前記所定光ファイバは、前記第1分散補償光ファイバと比べてコア径が太いことを特徴とする請求項1に記載の光増幅装置。
  3. 前記第1ラマン増幅部と前記第2ラマン増幅部との間に光アイソレータが介挿されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光増幅装置。
  4. 前記第1ラマン増幅部では、非線形光学効果が伝送特性に支障を与えない光パワーレベルの上限まで信号光を増幅するように前記第1分散補償光ファイバに注入する励起光のレベルが調節されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光増幅装置。
  5. 前記第1分散補償光ファイバと前記所定光ファイバは、互いの波長分散量の合計が光伝送路の波長分散量を実質的に相殺するような波長分散量を持つように設定されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の光増幅装置。
  6. 前記第1分散補償光ファイバと前記所定光ファイバは、互いの波長分散量をほぼ相殺するような波長分散量を持つように設定され、
    前記第1ラマン増幅部と前記第2ラマン増幅部との間に、光伝送路の波長分散量を実質的に相殺するような波長分散量を有する第2分散補償光ファイバ、
    を備えたことを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の光増幅装置。
  7. 前記第2分散補償光ファイバに入力させる励起光を発生する励起光源、
    を備えたことを特徴とする請求項に記載の光増幅装置。
  8. 前記第2分散補償光ファイバを前記第1ラマン増幅部と前記第2ラマン増幅部との間に着脱可能に介在させる光コネクタ、
    を備えたことを特徴とする請求項6または7に記載の光増幅装置。
  9. 前記所定光ファイバは、1.3μm帯零分散シングルモード光ファイバ、または、1.5μm帯零分散シングルモード光ファイバであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の光増幅装置。
  10. 前記励起光は、無偏光であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の光増幅装置。
  11. 前記各励起光源は、前記信号光が波長分割多重信号光である場合に、対応する増幅部の相互間で波長分割多重信号光に対する利得の波長依存性を減少させるような波長関係を持つ励起光を発生することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の光増幅装置。
  12. 前記各励起光源は、それぞれ波長が異なる複数の励起光を発生することを特徴とする請求項11に記載の光増幅装置。
  13. 前記第1分散補償光ファイバおよび/または前記所定ファイバとして、フォトニック結晶構造を有する光ファイバが適用されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の光増幅装置。
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