JP3959431B2 - 部位特異的療法及び手段 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、部位特異的療法(site-directed therapy)の分野に関する。今日、不必要な細胞または感染した有機体を、哺乳類被験者の体から除去することを示唆した多くの部位特異的療法がある。
【0002】
前記方法が適用される療法には多くの分野がある。
【0003】
最も重要な分野は、免疫疾患(自己免疫疾患または獲得免疫疾患)、癌及びウイルスまたは微生物感染であると考えられる。
【0004】
部位特異的療法は、細胞毒化合物をターゲット細胞または感染した有機体のすぐ近傍に送達する方法である。これは通常、細胞毒化合物とターゲット部分を結合させることにより実施する。
【0005】
このターゲット部分は、ターゲットの中、その上またはその近くにある構造を識別する。公知のターゲット部分としては、抗体、特にモノクローナル抗体、好ましくはヒトモノクローナル抗体、核酸、レセプター特異的リガンド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0006】
細胞毒化合物としては、薬剤、例えば、アドリアマイシン、トキシン(例えば、リシンA)及び放射性同位体が挙げられる。
【0007】
放射性同位体は、療法で使用するだけでなく、部位またはターゲット部位(site)を識別(イメージング)するためにも使用する。本発明は、ターゲット部分(moiety)と少なくとも1種の放射性同位体との結合体を使用する療法及びイメージング方法を提供する。
【0008】
ターゲット部分を用いる療法は広く知られている。ターゲット化は、所望の部位に直接ターゲット部分で狙いをつけることにより実施されるが、所望の部位に特異的なもう一つのターゲット部分に特異的でもあってもよい(所謂、プレターゲット化)。プレターゲット化は、ターゲット部分の特異性が不十分な場合直接ターゲット化よりも都合がよい。第1の局在化部分を使用し、次いで細胞毒化合物に結合した第2の局在化部分を使用することにより、非-ターゲット部分に送達される細胞毒化合物量をかなり減少させることができる。
【0009】
公知のターゲット部分(例えば、抗体)は、そのターゲット特異性を妨害せずに多量の細胞毒化合物と共に使用できないこともある。
【0010】
従って、多くの細胞毒化合物と一緒に充填でき、且つターゲット分子と結合し得るキャリヤ分子(例えば、HSAまたは核酸)またはポリマーを使用することが示唆されてきた。
【0011】
部位特異的療法及び/またはイメージングの主題に於ける上記の変更は総て本発明により好都合に使用され得る。
【0012】
イメージング及び部位特異的放射線療法(radio-therapy)の分野に於いて決まって出てくる問題とは、好適な放射性同位体を探すことである。治療の際に、ターゲットに対して十分に致死的であり、且つイメージングする際に被験者の外部で十分に測定可能でなければならない壊変(decay)時に放出されるエネルギー量の問題以外に、好適な半減期を有する同位体を見付ける問題もある。
【0013】
半減期の長い放射性同位体は、ターゲット部分の生物学的半減期の理由により選択され得ない。これは、殆どの同位体は結合体の崩壊(deintegration)後に壊変することを意味する。結合体の崩壊後のこの壊変は、ターゲット以外の他の細胞または組織にとって細胞毒性となる。
【0014】
さらに、局在化しない結合体は総て体から分泌されるので、放射活性化合物の廃棄問題も発生する。
【0015】
包装及び運搬の遅延のため、並びに療法を実施する機関は結合体を製造し、これを患者まで運び、非常に短い期間でこれを投与しなければならず、そうでなければ、殆どの放射性同位体が体に入ってターゲット部位に局在化する前に壊変してしまうので、半減期が短すぎる放射性同位体を選択するのも実用的でない。
【0016】
通常イメージングに使用される同位体は、γ-放射性同位体、治療用オーガー電子放射α,β-放射性同位体、またはα-放射性同位体が使用され得る。
【0017】
本発明で最も好ましいのは、α-放射性同位体である。
【0018】
α-粒子の短距離(short range)細胞-死滅効果は甚大である。約600,000個の癌細胞を含む直径1mmの腫瘍に600ラドの線量を送達するには、細胞1個当たり6MeVの約6 α-粒子が必要である。これにより細胞-死滅率は99.9%になる。これは特に、ヒット-アンド-キル(hit and kill)機構の確率論的な性質による。
【0019】
しかしながら、同じ確率論的な性質により、α-放射線量が1/10倍であると細胞-生存率[細胞(またはこの場合、同様のモルフォロジー中の非-腫瘍細胞)の50%以上がα-放射線量60ラド(細胞1個当たり0.6α-粒子に等しい)で生存する。]が係数500に増加する。
【0020】
同位体-抗体結合に関する「線質係数;quality factor」が10以上であれば、この特性により効果的なα-放射線免疫療法(ラジオイムノセラピー;radioimmunotherapy)が可能になる。本発明の目的は、最も本質的な方法でこの目的に寄与することである。
【0021】
線質係数とは、他の組織に対して「くっついている;sticking」抗体で割ったターゲット部位で局在化した抗体間の比である。
【0022】
腫瘍細胞を死滅させるための試薬としてα-粒子を放出する放射性同位体を使用する説は、既に1950年代中頃に文献に報告された。以来、他の有力な候補-同位体が提案されてきたが、中でもFisher(1)及びWilbur(2)により良い結果が報告されている。以下にそのリストと、括弧内にその半減期を記載する。223Ra(11.4d),225Ac(10d),224Ra(3.6d),225Fm(20h),211At(7.2h),212Bi(60m)及び213Bi(47m)。
【0023】
微量線量計測(microdosimetry)、抗体-同位体結合技術、前-診断in vitro及びin vivo実験に関する文献には重要な発表があったものの、明らかに限定的な、ラージスケールでの臨床実験は、以下の種々の理由により今日まで為されていない。
【0024】
a.十分な品質であると保証されたヒトモノクローナル抗体が未だ入手可能でないこと。
【0025】
b.抗体結合剤(放射性同位体の結合)の組み合わせに関して、生物学的安全性データが間に合っていないこと。
【0026】
c.数種の同位体(225Fm)は、許容可能なコスト価でラージスケール用途に利用できないこと。
【0027】
d.必要な調達段階[サイクロトロン中での(α,2n)反応による209Biから221At、続く単離及び精製]で同位体を入手するには困難且つ高価すぎること。
【0028】
e.他の同位体はその崩壊に於いて第1の娘核としてRn-同位体を有するので、壊変前に娘核が再分配(redistribution)し(224Ra,223Ra)、気密(ガス-タイト)反応条件が必要になること。
【0029】
f.数種の同位体(224Ra,223Ra,225Ac)はその壊変に於いて比較的半減期の長い娘核を有するが、その娘核は壊変前に再分配する場合もあること。
【0030】
g.数種の同位体(223Ra,224Ra,225Ac)の放射活性半減期は非常に長く、活性が殆ど壊変せず患者内に残存するので、廃棄問題が発生すること。
【0031】
h.同位体(212Bi,213Bi)の半減期は非常に短いので、同位体は殆どその最終ターゲットに到達する前に壊変すること。
【0032】
i.1人の患者の治療に関して必要量の同位体(212Bi,213Bi)を同時に抽出するために十分量の前駆体材料が入手できないこと。及び
j.その壊変に於いて硬(hard)γ-線を放出する同位体には、技術者及び看護人に対して放射性障害を防ぐために遮蔽設備が必要であること。
【0033】
上記に挙げた一つ以上の議論は、もし数種の同位体に関しα-放射線免疫療法をラージスケールで使用するのが不可能でないとしても、特にもし他の1種以上の同位体が、技術、論理的及び経済的に許容可能な条件で使用可能な場合でも、非常に困難である。
【0034】
本発明の最も最近の技術(フランス特許出願第FR-A-2 527 928号)では、抗体と212Biの結合体の製造法を開示している。しかしながらこれらの結合体には、上記条件e、h、i及びjの欠点がある。
【0035】
本発明は、患者のベッド際または近くに於けるターゲット部分と少なくとも1種の放射性同位体の結合体の製造法であって、その娘核が壊変時に主にα-及び/またはβ-線を放出する比較的半減期の長い放射性同位体を好適な媒質に充填し、その媒質から比較的半減期の短い同位体を溶出し、ターゲット部分と結合することを特徴とする該方法を提供する。
【0036】
本明細書中で「比較的半減期の長い;relatively long lived」ということは、放射性同位体の壊変時間が数日間の範囲であり、包装及び輸送に十分な時間がとれることを意味する。本明細書中で「比較的半減期が短い」ということは、放射性同位体の壊変時間が分または時間のオーダーであることを意味する。
【0037】
主にα-及び/またはβ-線が放出される壊変とは、保護遮蔽を適用する負担なく、化合物を取り扱う人間にγ-線により生じる放射性障害に対する危険性を与えない壊変を意味する。
【0038】
本発明の重要な態様は、放射性結合体が療法部位で製造し得るとういことである。主にα-及び/またはβ-線を放出する壊変なので、放射に対する保護は必要でない。γ-線を放出しないため、患者に放射線遮蔽装置を適用したり、隔離する必要なく、ベッド際または近くで結合体の製造が可能になるため、非常に有用である。これは、放射線障害の観点から好ましいだけでなく、半減期の短い同位体の利用性に関しても都合が良い。この同位体は、患者の近くで製造できるので、迅速に投与でき、且つ同位体の迅速な壊変により生じる療法作用の損失を防ぐことができる。このように、半減期の短い放射性同位体を療法に使用することができる。
【0039】
半減期の長い同位体を充填したもう1種の好適な基質またはイオン交換カラムはベッド際または近くに設置でき、例えば、半減期の短い同位体は好適な溶液で基質を洗浄することにより溶出し得る。溶出後、半減期の短い同位体はターゲット部分に結合し、(場合により、点滴溶液と一緒に)結合体を投与し得る。これは総て、図1若しくは図3に示されている本発明の装置を使用する連続モードまたは、通常の実験室のガラス容器を使用する間欠モードで実施し得る。
【0040】
無論、カラム内で結合を実施するためにターゲット部分を溶離液に添加することも可能である。
【0041】
本発明は、上記のリストから半減期の短い同位体213Biの使用を最初に提案する。本発明は、当業者にとって、患者のベッド際または近くの病院の研究室の施設で、その前駆体の1種225Acから連続または間欠抽出法によりこの同位体を流し出し、ターゲット部分と連続または間欠法で213Biとを結合し、点滴液と結合体溶液を混合するかまたはしないで、この混合物を例えば、図1に図式的に示したように、患者に静脈注射で投与することは容易である。
【0042】
一見したところ、本方法は、非常に不経済に見える。というのも、図2に記載の如く、それ自体はα-放射性同位体である225Acは213Bi-同位体を産生する前に、3回も潜在的に療法的に有用なα-粒子を放出するためである。しかしながら、225Ac、229Th源物質及びそれ故225Ac自身は、十分に低コストで入手し得るので、経済的に条理の立つ目的の方法で使用し得る。
【0043】
213Biの使用は、放射性障害の点に於いて好ましいだけではない。その前駆体の壊変に於いては気体の同位体が発生しないので好ましい。これは、取り扱い及び反応環境が気密でなければならない気体同位体を発する壊変を有する他の同位体を使用するよりも都合が良い。213Biの流出(milking)、結合及び投与は、気密条件を必要とすることにより妨害されず、反応は通常条件下で実施し得る。
【0044】
ターゲット部分は、好ましくはモノクローナル抗体であるか、またはフラグメント若しくはその誘導体であってもよい。このような抗体は、抗体に対する免疫反応を防ぐためにヒトまたはヒト化抗体であると好ましい。非-ヒト抗体は、殆どがネズミ由来である。他の総ての外来蛋白質と同様に、これらは、ヒトに於いて非常に免疫的である。HAMA(ヒト抗-マウス抗体)の現象は、当業界では公知であり、ヒトでの診断及び、特に療法用途に於けるマウス誘導抗体の使用は厳しく制限している。ネズミ抗体の単独適用は、通常、次の適用を効果的にしない免疫応答を増加するのに十分である。
【0045】
無論、ターゲット部分のフラグメント及び/または誘導体も、ターゲット特異性を実質的に保持する限り使用し得る。従って、本発明に関しては、ターゲット部分が記載される場合、本発明の一部としてフラグメントまたはその誘導体も考慮すると理解すべきである。
【0046】
抗体は、腫瘍関連抗原、例えばCEA[胎生期癌抗原]、AFP(α-フェトプロテイン)、FHAP(速いホモアルギニン-感受性アルカリ性ホスファターゼ)、p97(メラノーマ特異性)及びEL-1[遅延(elongation)因子1]に特異的であるのが好ましい。
【0047】
もう1種の好ましいターゲット部分は、細胞表面レセプター若しくはそのようなリガンドのフラグメント、またはそのようなリガンドの誘導体により形成される。このようなリガンドの例としては、医薬的に許容可能なレセプターのアゴニスト及び/またはアンタゴニストが挙げられるが、T細胞レセプターに結合し得るT細胞エピトープも好ましい。
【0048】
本発明のもう1つの特徴では、同位体を充填した1つのイオン交換カラムで多くの患者を治療する方法を提供する。充填した同位体量は、治療すべき患者数に依存する。所望の同位体を、壊変連鎖(decay chain)の半減期に依存して好適な間隔でカラムから間欠的に溶離し得る。
【0049】
関連する腫瘍または感染性微生物に関しては、同一ターゲット部分(またはターゲット部分の混合物)を種々の患者に使用し得る。関連しない疾病に関しては、ターゲット部分製剤を変更する手段が必要である。
【0050】
ターゲット部分に対する同位体の結合は、ターゲット部分のターゲット特異性がかなり妨害されない限り、任意の好適な方法で実施し得る。
【0051】
結合は、今日公知の種々のキレート試薬の1種により実施するのが好ましい。既に記載の如く、無論、キレート試薬によっても実施し得る、キャリヤ(例えば、HSA)に同位体を結合させると都合が良い。キャリヤの都合の良い点は、非常に多数の放射性同位体をターゲット細胞に対し連れてくることができるということである。1個のターゲット細胞の分解にはα-粒子が数個必要であると考えられるので、ターゲット細胞のすぐ近くの同位体の数は多い方が好ましい。
【0052】
本発明は、本発明の方法により製造した結合体並びに、このような結合体を含む医薬製剤も提供する。
【0053】
本発明により、ターゲット部分及び放射性同位体の結合体を製造し、これを臨床医の任意に必要な行動または遅延なく患者に投与できる方法を提供する。
【0054】
本発明のもう1つの態様では、部位特異的療法またはイメージング用装置を提供する。
【0055】
本発明の方法及び装置、目的を記載する最も簡単な方法を、図1を参照として以下に記載する。
【0056】
例えば、キャピラリーカラムは、患者に投与する1回分(a single patient dose)の213Biに必要な前駆体225Acの2倍量を含む。この場合、患者への線量は、10日間で213Bi 30mCi(2×10-9gに等しい)に対応し、キャピラリーカラム(3)は225Ac 200μCi(4×10-9gに等しい)を含む。
【0057】
225Acは、好適なイオン交換基質中に3+形で存在する。その(連続的に発生する)壊変時には、同位体と結合し得る好適なターゲット部分を含むフラスコ(1)に、特定の過量(overdose)溶離液によりカラムからストリップされる。ターゲット部分の結合部位及び溶離液-イオン交換システムの他の化学平衡条件は、総ての実際の目的に関して、213Biがターゲット部分に定量的に結合するように選択する。225Acの次の娘核である221Frは、4.8分の放射活性壊変半減期を有する。これは、113Biの直前の前駆体として非常に短命の217Atを介して作用する同位体である。この場合、221Frは、それ自身またはイオン交換基質により保持されず、221Fr-半減期を遅延させるには、キャピラリーカラムでの及びキャピラリーカラムからのストリッピングでの225Acの崩壊と、ターゲット部分との213Biの結合の間に特定の時間が必要である。このような遅延に関する最適値は、221Fr同位体の半減期と213Bi同位体の半減期の間である。
【0058】
この遅延は、キャピラリー(3)と患者(4)の間のチューブの長さにより調節し得、必要により図1(5)で示されるように、余分の長さの中間チューブにより促進し得る。フラスコ(2)からの点滴液は図1の継手(6)に示されるようにカラム(3)から同位体含有溶離液と混合され患者に入る。
【0059】
キャピラリーカラム(3)で最適ストリッピング及び結合条件を得るために、フラスコ(1)内の溶離液の組成は患者に投与するためには最適(例えば、そのpH値)ではない。点滴液の容量速度(volume rate)が溶離液以上に大きいオーダーである場合、点滴液のオフ-バランス(緩衝させた)pH値を補償することにより容易に阻止し得る。
【0060】
ターゲット部分の結合は、溶離液の物理-化学特性により妨害されない。従って、本発明の他の態様は、放射性同位体がカラムからストリッピングされるように溶離液がイオン交換カラム(3)を介して容器(7)から導かれている図3に示されている。同位体を含む溶離液は、同位体がターゲット部分と結合するように、ターゲット部分を含む容器(1)からの液体と混合される。得られた液体を継手(6)で容器(2)からの点滴液と混合し、患者(4)に投与する。場合により同位体を含む溶離液は、中間体の娘核の半減期を修正するために、追加の長さのチューブ(5)を介して導かれ得る。
【0061】
本発明が、活性細胞-死滅剤として213Biを使用する場合にα-放射線免疫療法の臨床使用及び開発に於いて可能になったことを以下に列記する。
【0062】
−包装、輸送などの操作時の放射活性壊変による活性物質の損失の最少化、
−長距離輸送及び病院内での取り扱い時の安全性、
の点に関し論理的に扱い得る半減期の前駆体の形態での「1回分の患者用キット」;
−難しいモニター装置を全く使用することのない、患者の治療に関する物質の取り扱い及び適用方法、
−(尿)廃棄物に関する収集及び取り扱いの容易さ
に関する特別な注意の必要なく、多くの病院でラージスケールでの実際的な利用性;
−前駆体の同位体から製造後、213Biを最大(連続抽出の場合、殆ど全部)に使用できること、
−治療時間を変更することができ、1回分の患者用キット前駆体の濃度標準を最小範囲とすることにより、投与する線量の適応性が最大となる。
【0063】
これらの態様は総て、
−(直径1mm未満の)種々の癌の微少転移
−白血病などの細胞癌及び
−非常に局在化した特定の種類の自己免疫疾患
などの、短距離のα-粒子がその有用な療法使用に最も合っている分野に対して的確に適合する。これらは総て本質的に血液循環系または、最適目的地を見付けるために細胞内空間を介して抗体-リガンド-同位体をゆっくりと拡散するプロセスの必要がなく局所的に直接適用し得る。
【0064】
療法的放射性結合体の間欠投与の特に都合の良い点は、線量分別法(dose fractionation)により実施し得ることである。統計的に、放射性結合体の線量で腫瘍細胞99.9%を死滅するのに必要な線量を計算できる。1kgの白血病性(単細胞、血液及び骨髄)腫瘍重量(大体1012個の細胞)がある場合、1つの細胞を死滅させるのに10α-粒子(6eV)、即ち全部で1013α-粒子が必要であり、これは50mCi 213Biに相当する。従って腫瘍細胞の99.9%を死滅する1回分の線量に関しては、50mCi 213Biが必要である。6MeVのα-粒子でのこの細胞モルフォロジーに関する「生存に対する線量:dose versus survival」は、式:
D/D0 = − ln S
[式中、S=生存部分、D=投与線量及びD0=37%生存に対する参照線量である]から誘導し得る。この式から、以下の表の値を計算し得る。
【0065】
【表1】
Figure 0003959431
【0066】
この表から、間欠、分別線量、投与の効果を読み取ることができる。
【0067】
Aに於いて5mCiの213Biを順に投与した細胞生存効果は以下の通りである。
【0068】
−最初の線量の5mCiは、細胞1個当たり1α-粒子に等しく、これは50%の生存率で、0.5×1012細胞が残ることを意味する
−2回目の線量の5mCiは、細胞1個当たり2α-粒子に等しく、これは20%の生存率で、0.1×1012細胞が残ることを意味する
−3回目の線量の5mCiは、細胞1個当たり10α-粒子に等しく、これは0.1%の生存率で、0.1×109細胞が残ることを意味する
−4回目の線量の5mCiは、細胞1個当たり10,000α-粒子に等しく、これは完全に死滅したことを意味する。
【0069】
従って、5mCiずつ4回の全線量=20mCiの213Biを間欠的に投与することにより、腫瘍細胞を完全に死滅するのに十分であることが知見できる。はっきりさせるために、腫瘍細胞に於けるターゲット部分の数の最大化及び中間体腫瘍生長の効果は省略した。間欠的に投与することにより、放射性活性物質の全重量を少なくすることができたことは明らかである。
【0070】
生存率に対しより好ましくない線量のBの場合に於いても、好都合な効果が知見される。
【0071】
−1回目の線量 → 1α/細胞 → 75% 生存率 → 0.75×1012細胞
−2回目の線量 → 1.3α/細胞 → 70% 生存率 → 0.5×1012細胞
−3回目の線量 → 2α/細胞 → 60% 生存率 → 0.30×1012細胞
−4回目の線量 → 3α/細胞 → 50 %生存率 → 0.15×1012細胞
−5回目の線量 → 6α/細胞 → 25 %生存率 → 0.04×1012細胞
−6回目の線量 → 25α/細胞 → 0.3% 生存率 → 0.1×109細胞
−7回目の線量 → 10,000α/細胞 → 35mCi投与後に全部死滅した。
【0072】
225Ac-源-同位体の前駆体として229Thを得るには現在2つの方法が公知である。
【0073】
一つは、その天然α-壊変により備蓄した233Uから得る方法である。233Uのバッチは、約30年前、核ブリーダー反応器中で製造されたが、核燃料として使用されたことはなかった。233Uの幾つかは、バルク-233Thから分離し、これから今日入手可能な229Thが非常に高純度で得られる。
【0074】
もう一つの方法では、中間生成物としての227Acを含む天然226Raから高速中性子放射により得る。さらにこの227Acから放射して、大体等量の229Thと228Thが産生する。228Thは229Thよりもずっと短い半減期(2年)であった。一方、225Acの抽出がかなり複雑になるが、他方正しく装備した装置に於いては、224Raを産し、これは半減期3.7日のα-線放出系である。Raが正しく単離されると、212Pbの源として使用し得る。212Pbの10.5時間という半減期により、取り扱いがかなり複雑になる。しかしながら、正しく取り扱うと、α-粒子の目的に関し半減期1.0時間のα-放出として作用するベッド際でも使用し得る212Bi源として本発明の225Acと同様の方法で212Pb同位体を使用できると考えられる。
【0075】
【実施例】
実施例1
明細書に記載した種々の放射性活性元素の分離化学は、10年前に秩序立てられ、文献に詳細に記載された[例えば、文献(3)及び(4)]。225Acは、Dowex 50イオン交換器で、4N HNO3でストリッピングすることにより229Thから分離し得る。酸を蒸発させた後、225Acは一定の濃度で0.5N HNO3に再び溶解し、Dowex 50に適量で吸着し、これを図3のミニカラム(3)で中で材料とする。
【0076】
実施例2
225Ac 0.68±0.07 mCiは、欧州ジョイントリサーチセンターから得た。これをMP-50 カチオン交換樹脂(Bio-Rad製)に充填した。形成した213Biを、pH6.75の50:50の10% NH4Ac:MeOHの混合物で溶離した。自動ビュレットを使用して1分当たり溶離液35μlを送った。あるいは、1分当たり溶離液50μlの量でマニュアルで溶離してもよい。
【0077】
幾つかの実験に於いて、213Biの精製が必要であった。これは、濃HNO3 0.5mlを含む10mlビーカー中乾涸するまで溶離液を加熱することにより実施した。IRランプ下で蒸発後、ビスマス活性をMP-50樹脂(2×30cm,0.1M HNO3で予備平衡させたもの)のカラムに移した。樹脂を0.2ml水で洗浄した。次いで、213Biを0.5mlのHCl及びHIで溶出した。種々の濃度のHCl及びHIを試みた。図4は、213Biの溶離パターンを示す。総ての場合に於いて、溶離は迅速且つ定量的であった。総ての同位体が、溶離開始後5〜10分内に得られた。
【0078】
実施例3
pH4.0〜5.0とするために213Biストックに対して十分量の3M NH4Acを添加して放射性標識した。次いで、(5)に記載の方法に従ってキレート試薬CHX-DTPA(シクロヘキシルジエチレントリアミンペンタ酢酸)と結合させたモノクローナル抗体B3の4.7mg/ml溶液53μlまたは106μlを、溶液中に緩やかに混合した。15分の反応時間後、0.1M EDTA 1.5μlを添加した。溶液を0.2mlの洗浄液で1mlシリンジに移した。溶液をTSK 3000カラムを有するHPLC(高圧液体クロマトグラフィー)に注入した。緩衝液は、0.02M MES/Cl-(MES=モルフォリノエタンスルホン酸)、0.15M NaCl(pH6.5)であった。B3抗体の溶離は7.5分であった。抗体中に含まれる213Biの量を、イン-ライン放射性化学検出器(Beckman製)でモニターした。213Biの全活性測定は、壊変に対して修正した(t1/2=45.6分)。結果を表2に記載する。225Ac、221Frまたは217Arの活性は、どの213Bi溶離生成物からも検出できなかった。
【0079】
【表2】
Figure 0003959431
【0080】
実施例4
実施例2及び3と同一方法で、213Biを225Acから溶離し、ターゲット部分と結合させた。この実験に関しては、モノクローナル抗体M195とキレート試薬CHX-DTPAの結合体を使用した。結果を表3にまとめた。
【0081】
【表3】
Figure 0003959431
【0082】
【参考文献】
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【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置を示す図である。ターゲット部分を含む溶離液は、放射性同位体がターゲット部分と結合するイオン交換カラム(3)を介して容器(1)から導かれる。RCは、継手(6)で容器(2)からの点滴液と混合され、患者(4)に投与される。場合により、カラム(3)と継手(6)との間には追加の長さのチューブを挿入し、中間体の娘核の半減期を修正する。
【図2】225Acの崩壊連鎖を示す。
【図3】本発明のもう1つの装置を示す図である。溶離液は、イオン交換カラム(3)を介して容器(7)から導かれ、放射性同位体はカラムからストリップされる。同位体を含む溶離液は、ターゲット部分を含む容器(1)からの液体と混合され、同位体はターゲット部分と結合される。得られた液体を継手(6)で容器(2)からの点滴液と混合し、患者(4)に投与する。場合により、同位体を含む溶離液を、中間体の娘核の半減期を修正するために追加の長さのチューブ(5)を介して導いてもよい。
【図4】数種のHCl及びHI濃度に於ける213Biの溶離挙動を示す図である。
【符号の説明】
1 ターゲット部分を含む液体の容器
2 点滴液の容器
3 イオン交換カラム
4 患者
5 追加のチューブ
6 継手
7 溶離液の容器

Claims (7)

  1. 患者のベッド際または近くに於いて少なくとも1種の放射性同位体とターゲット部分の結合体を製造する方法であって、放射性同位体225Acをイオン交換樹脂に充填し、そこから放射性同位体213Biを溶出し、ターゲット部分と結合させることを特徴とする該方法。
  2. ターゲット部分がモノクローナル抗体または、そのフラグメント若しくは誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. ターゲット部分がヒト若しくはヒト化抗体または、そのフラグメント若しくは誘導体であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
  4. モノクローナル抗体が腫瘍に関連する抗原に対し特異的であることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
  5. ターゲット部分が、細胞表面レセプターに対するリガンドまたはそのようなリガンドのフラグメントまたは誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 患者のベッド際または近くに置く、特定部位の放射線治療用装置であり、該装置はターゲット部分と放射性同位体213Biの結合体を製造するための製造手段を含み、該ターゲット部分は細胞表面レセプターに対する抗体またはリガンドから選択され、該製造手段は放射性同位体225Acをイオン交換樹脂に充填し、そこから放射性同位体213Biを溶出する手段、および溶出した213Biを前記ターゲット部分と結合させる手段を含放射線治療用装置。
  7. ターゲット部分と放射性同位体213Biの結合体を製造するための装置であり、該ターゲット部分は細胞表面レセプターに対する抗体またはリガンドから選択され、該装置は患者のベッド際または近くに置かれ、該装置は放射性同位体225Acをイオン交換樹脂に充填し、そこから放射性同位体213Biを溶出する手段、および溶出した213Biを前記ターゲット部分と結合させる手段を含装置。
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