JP3957374B2 - マイクロ波プラズマ処理装置 - Google Patents

マイクロ波プラズマ処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波を用いて生成したプラズマによって、半導体基板又は液晶ディスプレイ用ガラス基板等にエッチング又はアッシング等の処理を施す装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
反応ガスに外部からエネルギを与えて生じるプラズマは、LSI又はLCD等の製造プロセスにおいて広く用いられている。特に、ドライエッチングプロセスにおいて、プラズマの利用は不可欠の基本技術となっている。一般にプラズマを生成させる励起手段には2.45GHzのマイクロ波を用いる場合と、13.56MHzのRF(Radio Frequency )を用いる場合とがある。前者は後者に比べて高密度のプラズマが得られるとともに、プラズマ発生のために電極を必要とせず、従って電極からのコンタミネーションを防止できるという利点がある。ところが、マイクロ波を用いたプラズマ処理装置にあっては、プラズマ生成領域の面積を広くし、且つ密度が均一になるようにプラズマを発生させることが困難であった。しかしながら、マイクロ波プラズマ処理装置には前述した如く種々の利点があるため、該装置によって大口径の半導体基板,LCD用ガラス基板等の処理を実現することが要求されていた。この要求を満たすため、本願出願人は、特開昭62−5600号公報、特開昭62−99481 号公報等において次のような装置を提案している。
【0003】
図7は、特開昭62−5600号公報及び特開昭62−99481 号公報に開示した装置と同タイプのマイクロ波プラズマ処理装置を示す側断面図であり、図8は図7に示したプラズマ処理装置の平面図である。矩形箱状の反応器31は、その全体がアルミニウムで形成されている。反応器31の上部にはマイクロ波導入窓が開設してあり、該マイクロ波導入窓は封止板34で気密状態に封止されている。この封止板34は、耐熱性及びマイクロ波透過性を有すると共に誘電損失が小さい、石英ガラス又はアルミナ等の誘電体で形成されている。
【0004】
反応器31には、該反応器31の上部を覆う長方形箱状のカバー部材40が連結してある。このカバー部材40内の天井部分には誘電体線路41が取り付けてあり、該誘電体線路41と封止板34との間にはエアギャップ43が形成されている。誘電体線路41は、テフロン(登録商標)といったフッ素樹脂,ポリエチレン樹脂又はポリスチレン樹脂等の誘電体を、矩形と三角形とを組み合わせた略五角形の頂点に凸部を設けた板形状に成形してなり、前記凸部をカバー部材40の周面に連結した導波管21に内嵌させてある。導波管21にはマイクロ波発振器20が連結してあり、マイクロ波発振器20が発振したマイクロ波は、導波管21によって誘電体線路41の凸部に入射される。
【0005】
前述した如く、誘電体線路41の凸部の基端側は、平面視が略三角形状のテーパ部41a になしてあり、前記凸部に入射されたマイクロ波はテーパ部41a に倣ってその幅方向に拡げられ誘電体線路41の全体に伝播する。このマイクロ波はカバー部材40の導波管21に対向する端面で反射し、入射波と反射波とが重ね合わされて誘電体線路41に定在波が形成される。
【0006】
反応器31の内部は処理室32になっており、処理室32の周囲壁を貫通する貫通穴に嵌合させたガス導入管35から処理室32内に所要のガスが導入される。処理室32の底部壁中央には、試料Wを載置する載置台33が設けてあり、載置台33にはマッチングボックス36を介して高周波電源37が接続されている。また、反応器31の底部壁には排気口38が開設してあり、排気口38から処理室32の内気を排出するようになしてある。
【0007】
このようなマイクロ波プラズマ処理装置を用いて試料Wの表面にエッチング処理を施すには、排気口38から排気して処理室32内を所望の圧力まで減圧した後、ガス導入管35から処理室32内に反応ガスを供給する。次いで、マイクロ波発振器20からマイクロ波を発振させ、これを導波管21を介して誘電体線路41に導入する。このとき、テーパ部41a によってマイクロ波は誘電体線路41内で均一に拡がり、誘電体線路41内に定在波を形成する。この定在波によって、誘電体線路41の下方に漏れ電界が形成され、それがエアギャップ43及び封止板34を透過して処理室32内へ導入される。このようにして、マイクロ波が処理室32内へ伝播する。これにより、処理室32内にプラズマが生成され、そのプラズマによって試料Wの表面をエッチングする。これによって、大口径の試料Wを処理すべく反応器31の直径を大きくしても、その反応器31の全領域へマイクロ波を均一に導入することができ、大口径の試料Wを均一にプラズマ処理することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来のマイクロ波プラズマ処理装置では、誘電体線路41にマイクロ波を均一に拡がらせるために、封止板34及び反応器31の縁部から水平方向へ突出させたテーパ部41a を設けてあり、このテーパ部41a は、誘電体線路41の面積、即ち処理室32の直径に応じて所定の寸法に定めてある。そのため、従来のマイクロ波プラズマ処理装置を設置する場合、反応器31周縁から突出させたテーパ部41a を格納するための水平方向のスペースを余分に確保しなければならない。ところで、試料Wの大口径化に伴って、反応器31の直径が更に大きいマイクロ波プラズマ処理装置が要求されている。このとき、装置の設置場所を手当てする必要がないこと、即ち、可及的に狭いスペースで設置し得ることも要求されている。しかしながら、従来の装置にあっては、テーパ部41a の寸法は反応器31の直径に応じて定めるため、前述した両要求を共に満足することができない。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは一端からマイクロ波を入射する管状部材の他端を閉塞部材で塞止し、管状部材の前記封止部材に対向する部分にスリットを開設してなるアンテナを、容器(反応器)の一部を封止する封止部材の表面に対向して設け、該アンテナにマイクロ波を入射し、前記スリットから前記封止部材へマイクロ波を放射する構成にすることによって、反応器の直径が大きくても、装置全体のサイズが可及的に小さくでき、小さなスペースに設置し得るマイクロ波プラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、一部を封止部材で封止してなる容器内へ、前記封止部材を透過させてマイクロ波を導入し、該マイクロ波によってプラズマを生成し、生成したプラズマによって被処理物を処理する装置において、管状のアンテナ部材の一端からマイクロ波を入射する該管状のアンテナ部材の他端を閉塞部材で閉塞し、前記封止部材を外嵌するようにカバー部材が配置され、該カバー部材上に前記管状のアンテナ部材を固定し、該管状のアンテナ部材に対向する前記カバー部材にスリットを設けてあり、前記管状のアンテナ部材の一端からアンテナ内へマイクロ波を入射し、前記カバー部材に開設された前記スリットから前記封止部材を介してマイクロ波を放射するようになしてあり、前記スリットは、前記閉塞部材端部から所定の間隔で複数開設してあり、前記間隔Lは、マイクロ波が前記アンテナ部材を伝搬し、前記閉塞部材によって反射し、入射波と反射波とが重なり合って定在波が形成され、該定在波によって所定の間隔で極大になる電流を通流すべく、次式に基づいて定めてあることを特徴とする。
L=λg/2
但し、λg:アンテナ内を伝播するマイクロ波の波長
【0011】
容器の開口を封止する封止部材の表面に設けたアンテナにマイクロ波を入射する。このマイクロ波はアンテナの管状部材内を伝播し、該管状部材の一端を閉塞する閉塞部材によって反射し、入射波と反射波とが重なり合って定在波が形成される。この定在波によって、管状のアンテナ部材の壁面に所定の間隔で極大になる電流が通流する。管状のアンテナ部材の前記封止部材に対向する部分にはスリットが開設してあり、前述した電流によって、スリットを挟んで管状のアンテナ部材の内外で電位差が生じ、この電位差によってスリットから封止部材へ電界が放射される。即ち、アンテナから封止部材へマイクロ波が伝播する。このマイクロ波は封止部材を透過して容器内へ導入され、そのマイクロ波によってプラズマが生成される。
【0012】
このようにアンテナの管状部材内へ直接的にマイクロ波を入射することができるため、アンテナは容器から突出することがなく、従ってマイクロ波プラズマ処理装置の水平方向の寸法を可及的に小さくすることができる。一方、マイクロ波はアンテナの管状部材によって容器上の適宜の位置へ導かれ、スリットから放射されるため、容器内へマイクロ波を均一に導入することができる。更に、管状のアンテナ部材の内径を所要の寸法になすことによって、アンテナ内に単一なモード(基本モード)の定在波を形成することができ、これによってエネルギ損失を可及的に少なくすることができる。
【0013】
発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、前記管状のアンテナ部材は、C字状又は渦巻き状に成形してあることを特徴とする。
【0014】
C字状又は渦巻き状に成形した管状のアンテナ部材にあっては、容器の略全域にマイクロ波を導くことができ、それによって容器内へマイクロ波を均一に導入することができる。
【0016】
アンテナの管状部材によって容器上の適宜の位置へ導かれたマイクロ波を、適宜の間隔で開設した複数のスリットから封止部材へ放射するため、容器内へマイクロ波が均一に導入される。
【0018】
アンテナの管状部材内に形成された定在波によって管状部材の壁面に通流する電流は、閉塞部材から間隔L=λg/2の位置毎に極大になる。そのため、それらの位置にスリットを開設した場合、エネルギ損失を可及的に抑制して、スリットからマイクロ波を放射することができる。
【0019】
発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、前記管状のアンテナ部材内に誘電体が装入してあることを特徴とする。
【0020】
アンテナに入射されたマイクロ波は誘電体によってその波長が1/√(εr)(εrは誘電体の比誘電率)だけ短くなる。従って同じ長さの管状のアンテナ部材を用いた場合、誘電体が装入してあるときの方が、誘電体が装入していないときより、管状のアンテナ部材の壁面に通流する電流が極大になる位置が多く、その分、スリットを多く開設することができる。そのため、容器内へマイクロ波を更に均一に導入することができる。
【0021】
発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、前記閉塞部材は、管状のアンテナ部材にその長手方向へ摺動自在に内嵌してあることを特徴とする。
【0022】
プラズマが生成される容器とアンテナとの間の距離が短い場合、容器内に生成されたプラズマが高密度になると、アンテナとプラズマとの結合によって、アンテナ内を伝播するマイクロ波の波長が短くなるため、管状のアンテナ部材の壁面に通流する電流が極大になる位置が変化する。このとき、管状のアンテナ部材に、該管状のアンテナ部材の長手方向へ摺動自在に内嵌してある閉塞部材の位置を調整して、電流が極大になる位置をスリットの位置に合わせる。これによって、プラズマが生成される容器とアンテナとの間の距離が短い場合でも、アンテナからマイクロ波を高効率に放射することができる。
【0023】
発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、前記アンテナを支持する支持部材と、アンテナと封止部材との間の距離を調整すべく、該支持部材を進退駆動する駆動装置とを具備することを特徴とする。
【0024】
容器内に生成されたプラズマが高密度になるに従って、駆動装置によって支持部材を後退させ、アンテナと封止部材との間の距離を長くする。これによって、アンテナとプラズマとの結合が弱まり、アンテナ内を伝播するマイクロ波にプラズマが影響することが防止される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置の構造を示す側断面図であり、図2は図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置の平面図である。有底円筒形状の反応器1は、その全体がアルミニウムで形成されている。反応器1の上部にはマイクロ波導入窓が開設してあり、該マイクロ波導入窓は封止板4で気密状態に封止されている。この封止板4は、耐熱性及びマイクロ波透過性を有すると共に誘電損失が小さい、石英ガラス又はアルミナ等の誘電体で形成されている。
【0026】
前述した封止板4には、導電性金属を円形蓋状に成形してなるカバー部材10が外嵌してあり、該カバー部材10は反応器1上に固定してある。カバー部材10の上面には、反応器1内へマイクロ波を導入するためのアンテナ11が設けてある。アンテナ11は、カバー部材10の上面に固定してあり、断面視がコ字状の導波管型アンテナ部12と、カバー部材10の導波管型アンテナ部12に対向する部分に開設した複数のスリット15,15,…とを備えている。
【0027】
導波管型アンテナ部12の一端は、マイクロ波発振器20に連接した導波管21が連結してあり、導波管型アンテナ部12の他端は閉塞してある。導波管型アンテナ部12の一端側は直線状であり、他端側は円弧状(C字状)又は一巻き渦巻き状等(図1にあっては円弧状)、適宜の曲率に成形した曲成部12a になしてある。そして、導波管型アンテナ部12は、曲成部12a の中心とカバー部材10の中心とが一致するようにカバー部材10上面に固定してある。
【0028】
前述したマイクロ波発振器20が発振したマイクロ波は、導波管21を経てアンテナ11の導波管型アンテナ部12へ入射される。この入射波は、導波管型アンテナ部12の閉塞した端部からの反射波と重ね合わされ、導波管型アンテナ部12内に定在波が発生する。これによって、導波管型アンテナ部12の周壁に、導波管型アンテナ部12の閉塞した端部からn・λg/2(nは整数、n≧0、λgはアンテナ内を伝播するマイクロ波の波長)毎に極大値を示す電流が通流する。
【0029】
このとき、導波管型アンテナ部12内を伝播するマイクロ波のモードを基本伝播モードである矩形TE10にすべく、マイクロ波の周波数2.45GHzに応じて、導波管型アンテナ部12の寸法を、高さ27mm,幅96mmになしてある。このモードのマイクロ波は、エネルギを殆ど損失することなく導波管型アンテナ部12を伝播する。また、直径が380mmの封止板4を用いた場合、曲成部12a の中心から導波管型アンテナ部12の幅方向の中央部までの寸法は、120mm程度になしてある。
【0030】
図3は、図1及び図2に示したスリット15,15,…を説明する説明図である。図3に示したように、スリット15,15,…は、カバー部材10(図2参照)の曲成部12a に対向する部分に、曲成部12a の中心軸16に直交するように開設してあり、各スリット15,15,…の開設位置は、導波管型アンテナ部12の閉塞した端部からn・λg/2の位置に定めてある。このように、各スリット15,15,…は導波管型アンテナ部12の周壁に通流する電流の極大値を示す位置に開設してあり、各スリット15,15,…を挟んで生じる電位差によって各スリット15,15,…から電界が放射され、該電界は封止板4を透過して反応器1(共に図1参照)内へ導入される。つまり、反応器1内へプラズマを生成するマイクロ波が導入される。前述した寸法の導波管型アンテナ部12を用いた場合、各スリット15,15,…は、例えば80mm×20mmの寸法で、導波管型アンテナ部12の閉塞した端部からスリット15,15,…の中央までの距離が79.2mmの整数倍になるように開設する。
【0031】
なお、本実施の形態では、スリット15,15,…は、曲成部12a の中心軸16に直交するように開設してあるが、本発明はこれに限らず、中心軸16に斜めに交わるようにスリットを開設してもよく、また、中心軸16と並行に開設してもよい。後述する如く、反応器1内に生成されたプラズマによって、アンテナ11内を伝播するマイクロ波の波長が変化して、導波管型アンテナ部12の周壁に通流する電流の極大値を示す位置が変化する場合があるが、中心軸16に斜めに開設したスリット又は中心軸16と並行に開設したスリットにあっては、電流の極大値を示す位置の変化をスリットの領域内に取り込むことができる。
【0032】
前述したように各スリット15,15,…は、カバー部材10に略放射状に設けてあるため、マイクロ波は反応器1内の全領域に均一に導入される。一方、図1に示したように、アンテナ11は反応器1の直径と同じ直径のカバー部材10上に、該カバー部材10の周縁から突出することなく設けてあるため、反応器1の直径が大きくても、マイクロ波プラズマ処理装置のサイズを可及的に小さく、従って小さなスペースに設置し得る。
【0033】
反応器1には処理室2の周囲壁を貫通する貫通穴が開設してあり、該貫通穴に嵌合させたガス導入管5から処理室2内に所要のガスが導入される。処理室2の底部壁中央には、試料Wを載置する載置台3が設けてあり、載置台3にはマッチングボックス6を介して第1高周波電源7が接続されている。また、反応器1の底部壁には排気口8が開設してあり、排気口8から処理室2の内気を排出するようになしてある。
【0034】
このようなマイクロ波プラズマ処理装置を用いて試料Wの表面にエッチング処理を施すには、排気口8から排気して処理室2内を所望の圧力まで減圧した後、ガス導入管5から処理室2内に反応ガスを供給する。次いで、マイクロ波発振器20からマイクロ波を発振させ、それを導波管21を経てアンテナ11に導入し、そこに定在波を形成させる。この定在波によって、アンテナ11のスリット15,15,…から放射された電界は、封止板4を透過して処理室2内へ導入され、処理室2内にプラズマが生成され、このプラズマによって試料Wの表面をエッチングする。
【0035】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2を示す側断面図であり、アンテナ11内に誘電体13が装入してある。なお、図中、図1に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。誘電体13には、テフロン(登録商標)といったフッ素樹脂、ポリエチレン樹脂又はポリスチレン樹脂等から所要の比誘電率εrのものを選択する。誘電体13を伝播するマイクロ波の波長は、誘電体13を装入していないアンテナ11内を伝播するマイクロ波の波長の1/√(εr)と短い。そのため、前述した如く、導波管型アンテナ部12の閉塞した端部からn・λg/2の位置に開設したスリット15,15,…の個数を、誘電体13を装入していないときより多くすることができる。これによって、エネルギ損失を抑制しつつ、反応器1内へマイクロ波を更に均一に導入することができる。
【0036】
(実施の形態3)
図5は実施の形態3を示す部分平面図であり、アンテナ11の実効長を調整し得るようになしてある。アンテナ11に備えられた導波管型アンテナ部12の端面には貫通穴が開設してあり、該貫通穴にはプランジャ18が進退自在に挿入してある。プランジャ18の基端には貫通穴の直径より大きい直径の止め部19が設けてあり、該止め部19によってプランジャ18の導波管型アンテナ部12内への進入が停止される。また、導波管型アンテナ部12の端面より少し内側には、導波管型アンテナ部12の内径と同じ外径であり、導電性の移動板(閉塞部材)17が摺動自在に内嵌してあり、移動板17の周縁部はテーパになしてある。この移動板17にはプランジャ18の先端が連結してあり、プランジャ18を進退させることによって、移動板17の導波管型アンテナ部12の長手方向の位置を調整する。
【0037】
導波管型アンテナ部12内に入射されたマイクロ波は、移動板17で反射されて定在波が形成される。スリット15,15,…は、導波管型アンテナ部12に入射されるマイクロ波の波長λgに基づいて、導波管型アンテナ部12の端面に当接させた状態の移動板17から、n・λg/2の位置に開設してある。
【0038】
このようなマイクロ波プラズマ処理装置にあっては、移動板17を導波管型アンテナ部12の端面に当接させた状態でプラズマを生成し、処理室2(図1参照)内のプラズマが高密度になるにつれて、移動板17と導波管型アンテナ部12の端面との間の距離を増大させる。
【0039】
プラズマが生成される処理室2とアンテナ11とが近い場合、処理室2内に生成されたプラズマが高密度になるに従って、アンテナ11に導入されたマイクロ波の波長が短くなり、それに伴って、導波管型アンテナ部12の周壁に通流する電流の極大値を示す間隔が短くなる。しかしながら本実施の形態にあっては、前述した如く、処理室2内のプラズマが高密度になるにつれて、移動板17と導波管型アンテナ部12の端面との間の距離を増大させて、移動板とスリット15,15,…との間の距離を短くすることによって、導波管型アンテナ部12の周壁に通流する電流の極大値の位置がスリット15,15,…の位置になるように調整される。これによって、処理室2内にマイクロ波を均一に導入すると共に、処理室2内のプラズマが高密度になっても、高強度のマイクロ波を導入することができる。
【0040】
(実施の形態4)
図6は実施の形態4を示す側断面図であり、アンテナ11と封止板4との間のエアギャップ9の寸法を調節するようになしてある。なお図中、図1に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。カバー部材10の周縁には、昇降部10a が設けてあり、昇降部10a には、カバー部材10を昇降駆動する昇降駆動装置14が連結してある。そして、昇降駆動装置14の駆動によりカバー部材10、該カバー部材10に設けたアンテナ11を昇降して、カバー部材10と封止板4との間のエアギャップ9の厚さ寸法を調整するようになしてある。
【0041】
このようなマイクロ波プラズマ処理装置を用いて試料Wの表面にエッチング処理を施すには、エアギャップ9の寸法を零にしておき、排気口8から排気して処理室2内を所望の圧力まで減圧した後、ガス導入管5から処理室2内に反応ガスを供給する。次いで、マイクロ波発振器20からマイクロ波を発振させ、それを導波管21を経てアンテナ11に導入し、そこに定在波を形成させる。この定在波によって、アンテナ11のスリット15,15,…から電界を放射させ、封止板4を透過した電界によって処理室2内にプラズマを生成させる。生成したプラズマの密度が高くなるにつれて、昇降駆動装置14をしてカバー部材10を上昇せしめ、エアギャップ9の寸法を大きくして、試料Wの表面をエッチングする。
【0042】
処理室2内に生成されたプラズマが高密度になると、アンテナ11とプラズマとの結合によって、アンテナ11内を伝播するマイクロ波の波長が短くなり、これによってアンテナ11内の壁面に通流する電流が極大になる位置が変化する。本実施の形態にあっては、処理室2内のプラズマの密度が高くなるにつれて、昇降駆動装置14をしてカバー部材10を上昇せしめ、エアギャップ9の寸法を大きくするため、アンテナ11と処理室2内のプラズマとの結合が弱まり、アンテナ11内を伝播するマイクロ波の波長が短くなることが防止される。なお、処理室2内のプラズマの密度は、例えばプラズマ発生の際の発光を光ファイバーにて検知することによって検出することができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態1〜4では、スリット内は空になしてあるが、本発明はこれに限らず、スリットに誘電体を内嵌させてもよい。アンテナ内に導入するマイクロ波のパワーが高い場合、スリットの角部でマイクロ波の電界が局所的に集中し、スリットと封止板との間で異常放電が生じる虞がある。この異常放電により、プラズマが不安定・不均一になり、プラズマ処理に支障を来す場合、又はスリット若しくは封止板が損傷する場合がある。しかし、スリット内に誘電体を挿入した場合、スリットの角部への電界の集中を抑制することができると共に、放電が起こり得る空間を誘電体によって塞ぐことができるため、前述した異常放電が発生せず、安全性が向上すると共に、高パワーのマイクロ波を用いて、安定・均一に試料をプラズマ処理することができる。スリットに内嵌させる誘電体としては、マイクロ波を吸収しないテフロン(登録商標),石英,アルミナ等を用いることができるが、アルミナは局所的な電界の集中を抑制することができるため好適である。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述した如く、発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置にあっては、管状のアンテナ部材内へ直接的にマイクロ波を入射することができるため、アンテナは容器から突出することがない。そのため、容器の直径が大きくても、マイクロ波プラズマ処理装置のサイズが可及的に小さく、従って小さなスペースに設置し得る。一方、マイクロ波は管状のアンテナ部材によって容器上の適宜の位置へ導かれ、スリットから放射されるため、容器内へマイクロ波を均一に導入することができる。
【0045】
発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置にあっては、管状のアンテナ部材をC字状又は渦巻き状に成形してあるため、容器の略全域にマイクロ波を導くことができ、それによって容器内へマイクロ波を均一に導入することができる。
【0046】
発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置にあっては、管状のアンテナ部材によって容器上の適宜の位置へ導かれたマイクロ波を、適宜の間隔で開設した複数のスリットから封止部材へ放射するため、容器内へマイクロ波が均一に導入される。
【0047】
発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置にあっては、エネルギ損失を可及的に抑制して、スリットからマイクロ波を放射することができる。
【0048】
発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置にあっては、誘電体が装入していないときよりスリットを多く開設することができるため、容器内へマイクロ波を更に均一に導入することができる。
【0049】
発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置にあっては、プラズマが生成される容器とアンテナとの間の距離が短い場合でも、アンテナからマイクロ波を高効率に放射することができる。
【0050】
発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置にあっては、容器内に生成されたプラズマが高密度になるに従って、アンテナと封止部材との間の距離を長くしてアンテナとプラズマとの結合を弱めることによって、アンテナ内を伝播するマイクロ波にプラズマが影響することを防止することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置の構造を示す側断面図である。
【図2】図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置の平面図である。
【図3】図1及び図2に示したスリットを説明する説明図である。
【図4】実施の形態2を示す側断面図である。
【図5】実施の形態3を示す部分平面図である。
【図6】実施の形態4を示す側断面図である。
【図7】従来の装置と同タイプのマイクロ波プラズマ処理装置を示す側断面図である。
【図8】図7に示したプラズマ処理装置の平面図である。
【符号の説明】
1 反応器
2 処理室
3 載置台
4 封止板
10 カバー部材
11 アンテナ
12 導波管型アンテナ部
12a 曲成部
15 スリット
21 導波管
W 試料

Claims (5)

  1. 一部を封止部材で封止してなる容器内へ、前記封止部材を透過させてマイクロ波を導入し、該マイクロ波によってプラズマを生成し、生成したプラズマによって被処理物を処理する装置において、管状のアンテナ部材の一端からマイクロ波を入射する該管状のアンテナ部材の他端を閉塞部材で閉塞し、前記封止部材を外嵌するようにカバー部材が配置され、該カバー部材上に前記管状のアンテナ部材を固定し、該管状のアンテナ部材に対向する前記カバー部材にスリットを設けてあり、前記管状のアンテナ部材の一端からアンテナ内へマイクロ波を入射し、前記カバー部材に開設された前記スリットから前記封止部材を介してマイクロ波を放射するようになしてあり、
    前記スリットは、前記閉塞部材端部から所定の間隔で複数開設してあり、
    前記間隔Lは、マイクロ波が前記アンテナ部材を伝搬し、前記閉塞部材によって反射し、入射波と反射波とが重なり合って定在波が形成され、該定在波によって所定の間隔で極大になる電流を通流すべく、次式に基づいて定めてあることを特徴とするマイクロ波プラズマ処理装置。
    L=λg/2
    但し、λg:アンテナ内を伝播するマイクロ波の波長
  2. 前記管状のアンテナ部材は、C字状又は渦巻き状に成形してある請求項1記載のマイクロ波プラズマ処理装置。
  3. 前記管状のアンテナ部材内に誘電体が装入してある請求項1または2に記載のマイクロ波プラズマ処理装置。
  4. 前記閉塞部材は、管状のアンテナ部材にその長手方向へ摺動自在に内嵌してある請求項1乃至3の何れかに記載のマイクロ波プラズマ処理装置。
  5. 前記アンテナを支持する支持部材と、アンテナと封止部材との間の距離を調整すべく、該支持部材を進退駆動する駆動装置とを具備する請求項1乃至4の何れかに記載のマイクロ波プラズマ処理装置。
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