JP3957094B2 - 文字データ入力装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、コンピュータ等の機械に文字データを入力する能率を向上し、また文字データ入力装置を小型化する手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、機械に文字データを入力する目的に使用されてきたキーボードでは、キーには一種類の操作(押し込む操作)しか加えることができない。そのため、複数操作の組み合わせで文字種を指定することができず、文字種毎に別個のキーが必要であった。文字種毎に別個のキーがある場合、異なる文字を入力しようとする度に、指をキーから離す必要があり、ブラインドタッチを行うためには、指をホームポジションに戻すことに常に注意を払う必要があった。更に、使い易いキーサイズ、キーピッチを確保しようとすると、キーボードサイズが大きくなり、必要とするキーに到達するために指の動きが大きくなり、入力の能率が落ちた。またキーボードサイズが大きくなることが機器の小型化を妨げていた。一部のキーボードでは、人差し指のホームポジションキーの上面に小さな突起が出ており、それが指の腹に刺激パターンを与えることから、触覚を通じて指がホームポジションに復帰したことを確認できるようになっている。しかしながら、この刺激パターンは、指が復帰するまで与えられないため、復帰の事後確認には有効であっても、指を事前誘導するための情報として機能しなかった。複数キーの組み合わせで文字種を指定する方式も提案されているが、それは、例えば、キー位置を行と列の組み合わせにより指定する等、人にとって心理的に受入れ難い方式であり、実用化には至らなかった。特開平7−111119、及び特開平7−334282では、一つのキーに複数の文字種を割り振り、キーの押し方により、文字を指定する方式が記載されている。この方式によれば、キー数が減る反面、ブラインドタッチは困難となった。従来キーボードでは、以上に加え、カーソル位置指定のためにマウスを使用する時に、キーボードから手を放してマウスを握る必要があり、作業が中断されることが問題であった。特開昭59−123916、及び特開平8−221182には、キーボードそのものをスライド移動できるように構成し、そのスライド移動量によりカーソル位置指定を行う方式が記載されている。この方式によれば、キーボードに指を置いたまま、カーソル位置指定を行うことが可能であるが、キーボードの移動には、大きな力を必要とし、カーソルを精密に制御することは困難であった。特開平8−137592では、キーボードを二つに分け、小さい方のキーボードのスライド移動量でカーソル位置を指定するようにしているが、従来のキーボードとキー配置の互換性を保てないことが問題であった。特開平8−202481では、キー側面に加える力を利用して、カーソルを移動する方式が提案されているが、自然な操作感が得られないことが問題であった。従来のキーボードでは、こうした各種の要因によって、文字データ入力の能率は低下していた。
【0003】
従来使用されてきた別の種類の文字データ入力方式として、かな漢字表の上でスライド移動するカーソルで文字を選択してタイプを行なう、和文タイプライタ、あるいはマウスを使ってモニター装置画面上に表示されるキーボード画像のキー部分をクリックする、ソフトウェアキーボードと呼ばれる方式がある。これらの方式では、カーソルの移動と一つのキーの打鍵を組み合わせて入力文字種を指定している。この意味では、複数操作の組み合わせにより文字種を指定しているが、次に述べる欠点のために入力効率が低かった。まず、一つのキーを用いて多数の文字の中から目的の文字を指定するため、カーソル移動量が大きくなった。また、かな漢字表、あるいはキーボード画像上で、視覚によってカーソル位置を確認しながら、入力文字を探す必要があり、ブラインド入力ができなかった。特開平7−21028では、回転するか、スライド移動するように構成されたキートップを押し込むときに、回転量、あるいはスライド位置に応じて異なる文字種が入力する方式が提案されているが、基本的にはソフトウェアキーボードと同様の問題を有し、表示画面を見て、入力すべき文字種が選定されたことを確認してから、キートップを押す必要があるため、文字データをブラインド入力することはできなかった。また複数の指で同時に複数のキートップを操作することは想定されておらず、複数の指を使うキーボードに比べて文字入力効率は低かった。カーソル座標を入力する操作部を振動させたり、操作者が加える力に対して対抗力を発生することで、カーソルの表示画面上における位置を視覚に依らずに認識する方式が、特開平8−95693に記載されている。しかしながら、この方式では、操作部位の触感は、振動、または対抗力によるものに限られ、カーソルの上下左右の位置変化を区別できるほど豊富な情報を持たず、カーソル位置が画面内の特定位置に一致するか否かを区別することしかできなかった。そのため、このカーソル位置指定方式を使っても、ソフトウェアキーボードで、文字データをブラインド入力することはできなかった。また特開平8−95693の方式は、画面上のカーソル位置を認識する(カーソル位置が画面上の特定位置に一致したことを操作部位を振動させて知らせる)ための方式であって、手元の操作部位の位置を認識する方式ではないことを強調しておきたい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上述した従来の文字データ入力方式の問題点を解決し、従来以上に高速、容易に、また心理的、肉体的疲労を軽減して、機械に文字データを入力するための装置を提供すること、及び文字データ入力装置を小型化することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発朋の文字データ入力装置の一つは、以下の(イ)から(ニ)までの機構を兼ね備えるように構成される。
(イ)手指または手の平が接する部位を備え、その一部が隆起、没入または振動することにより操作者の触覚または力覚を刺激する機構。
(ロ)指または手の運動に追随してその姿勢(位置または角度)を変えるように、装置の全体または一部を可動とする機構。
(ハ)(イ)の機構が生成する刺激の時空間的形態を(ロ)に記載の姿勢の種別に応じて変えることにり、姿勢の種別を操作者の触覚または力覚を通じて通知する機構。
(ニ)操作者が装置に加える作用が同一であっても、(ロ)に記載の姿勢の種別が異なる時にそれを異なる文字種を指定する作用として解釈し、姿勢の種別に応じて異なる文字種を入力する機構。
【0006】
上記目的を達成するため、この発朋の文字データ入力装置の他の一つは、上述の機構を兼ね備えた文字データ入力装置において、操作者の触覚または力覚を刺激する機構の駆動力として、手または指から装置に加えられる力を利用することを特徴とするように構成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の文字データ入力装置では、キーやボタン、パネル等の操作部位に、押し込みと位置移動の二つの独立な操作が加えられる。位置移動の操作により、操作部位の位置が変わると、同じ操作部位が押し込まれる場合であっても異なる文字種が入力する。この方式によれば、どの操作部位が押し込まれるかという情報と、操作部位がどの位置にいるかという情報の組み合わせによって文字種を指定できるから、少数の操作部位を使って多種類の文字を入力することができる。
【0008】
従来の方式では文字種毎に専用のキーを用いており、入力する文字種に応じて異なるキーを押す必要があった。ブラインドタッチを行なうためには、入力文字種に対応するキーを押した後、指はホームポジションと呼ばれる特定キーに復帰する必要があった。
【0009】
本発明では、操作部位の数が少数で済むため、主たる操作部位の数を手の指の数と同程度とし、各指を指毎に対応する操作部位の上に置き続けるようにして、文字データを入力する。このような方式を取るから、指をホームポジションに復帰する必要がなくなる。また操作部位の僅かな位置変化で操作部位の指示文字種が切り替わるようにすると、文字データ入力の間に指が動く範囲が狭くて済み、文字データ入力速度が向上し、疲労も減る。更に装置の小型化も可能になる。操作部位の位置に応じて変化する刺激パターンが、手の触覚や圧力感覚に与えられるため、手元を見なくとも、操作部位の位置を把握することができ、ブラインドタッチで文字を入力することが可能になる。指は常にキーの上に乗っているので、キーの移動中にも刺激パターンを指に加え続けることができ、刺激パターンをキーの移動を誘導するための情報として利用することができる。
【0010】
更に、本発明の文字データ入力装置では、文字データ入力装置の操作部位の移動量を、ディスプレイ画面上のカーソル位置の座標量を指定するために利用することができる。そうすると、指を文字データ入力用の操作部位に置いたまま、カーソル位置を指定できるようになるので、文字データ入力とカーソル位置指定の作業切り替え時に、指をキーボードから離す必要がなくなり、操作時間が短縮すると共に労力を軽減することができる。
【0011】
【実施例】
比較のため、まず従来方式について説明する。従来方式では、特定の文字を入力しようとする場合、文字種毎に別個のキーがあったため、指が入力文字に対応するキーへ移動して、そのキーを押す必要があった。またブラインドタッチにおいては、指がキーの上をなぞって移動し、目的のキーを打った後、元の場所、すなわちホームポジションに復帰する必要があった。従来のキーボードのキー配置、及び各指の担当範囲を図2に示す。ここで、1が人差し指の担当範囲、2が中指の担当範囲、3は薬指の担当範囲、そして4は小指の担当範囲である。キーボードの左半分が左手の担当範囲、右半分が右手の担当範囲である。ブラインドタッチを行うためには、各指は、打鍵後、ホームポジションである図中斜線で塗られたキーに戻らなければならない。ある種のキーボードでは、人差し指のホームポジションのキー表面に小さな突起が出ており、この突起の刺激によって、指の復帰を確認できるようになっている。、従来、カーソル位置を指定する装置であるマウスは、キーボードと別にあり、カーソル位置の指定の都度、指はキーボードを離れて、マウスを握って操作する必要があった。
【0012】
一方、本発明の実施例の一つでは、各指に対応する専用キーを用意し、指を対応するキー上に常時固定して乗せたまま、キー位置のスライド移動と打鍵の組み合わせにより、入力する文字種を指定する方式を採用する。このような方式に基づく、本発明の文字データ入力装置の実現例を図1に示す。キーボードの左半分のキーを左手が担当し、右半分のキーを右手が担当する。図中7は、装置本体の中に埋め込まれ、図のように装置上に設定されたx−y座標平面内で自由に水平移動(スライド移動)する板である。この板を本発明では可動台と呼ぶ。可動台は左右の手に対して用意され、それぞれに6つのキーが付いている。ここで、1’は人差し指を乗せるキー、2’は中指を乗せるキー、3’は薬指を乗せるキー、そして4’は小指を乗せるキーである。また5’、6’は親指が押すキーである。
手を台の上に乗せる時、親指の腹は横を向くため、親指の腹を使って押すキーは押しやすくなるように横を向いている。これらのキーは、手や指の動きに追随して位置を変える可動台の上で押されることになる。
【0013】
1’、2’、3’の各キーの上面には穴が開いており、その中で棒が上下に運動する。上に動くと、棒の先端はキー上面から出て、キーの上に乗っている指を刺激する。この仕組みを拡大して図3に示す。可動台は装置の底に置かれたボールの上に乗っており、ボールの回転により、平面内の任意の方向にスライド移動する。1’、2’、3’の各キーの下には支持台8があって、可動台が動く時、各キーは支持台8の上を滑って左右方向にスライド移動する。また支持台8自身は、前後方向に設けられたスライドレール上を滑って、可動台の前後方向の動きに追随して、前後方向にスライド移動する。5’のキーの右側には支持台9があって、キーは支持台9の左側面を滑って前後方向にスライド移動する。また支持台9自身は、左右方向に設けられたスライドレール上を滑って、可動台の左右方向の動きに連動して、左右方向にスライド移動する。
【0014】
1’、2’、3’の各キーには、表面から内部へ貫く穴が設けられている。穴の中には上下に動く指刺激棒があって、その下端は支持台8に回転軸により結ばれている。キーが支持台上で左右方向にスライドすると、これらの棒の傾きが変り、棒の上端部がキー表面から出る長さが変化する。棒が垂直に立つ時、棒の上端がキー表面から最も長く出て指を強く刺激する。各棒を支持台上に接続する回転軸の位置は、各棒が可動台の異なる位置で垂直に立つように、設定されている。三本の指刺激棒は、それぞれ可動台の異なる位置でキー表面から突き出て、指を刺激するので、操作者は、どの指が刺激されるかということにより、可動台の左右のスライド量を把握することができる。支持台8は、各キーが押される時、キーと共に上下に動くので、キーの押され具合に依らず、指刺激棒の上端がキー表面から突き出る量は一定に保たれる。一方、親指が押すキー5’の表面には、二つの穴が開いており、これらの穴から一端を出して指を刺激する指刺激棒が、それぞれの穴に対して一本、合計二本設けられている。これらの棒の他端は、T字状部品に回転軸でつながれている。また、このT字状部品は、支持台9に回転軸でつながれている。二つの棒がキー表面から突き出る長さは、可動台の前後方向のスライド量により変化する。キー表面の二つの穴の間には、恒常的に指を刺激する突起があり、操作者は、この突起を基準にして、どちらの穴から出た棒が指を刺激しているのか、判断することができる。操作者は、このように親指の腹に加えられる刺激を通じて、可動台の前後のスライド量を把握することができる。ここでも、キー5’が押される時に、支持台がそれに合せて動くため、キーが押された時に棒のキー表面からの突出量が変わることはない。以上に述べた仕組みによって、可動台の前後左右の移動によってキー表面からの棒の出方が変わるので、操作者は、指の触覚を通じて可動台の位置を把握することができる。
【0015】
以上の方式で、例として、可動台の各移動位置に対して、その位置で各キーが押される場合にどのような文字種が入力するか、またその時に表面から出て指を刺激する棒の突出パターンがどのようになっているかということを図4に示す。
【0016】
他の実施例では、可動台のスライド移動の方向が前後一方向に限定され、可動台上に設置された人差し指を乗せるキー1’のみが左右方向に動く。この場合も各キーには穴があいており、その中で棒を上下させることにより、各指に刺激を与え、操作者がその刺激パターンを通じて、可動台、及びキー1’の移動位置を把握できるように工夫されている。
【0017】
以上の実施例には、更に、次のような工夫を加えることができる。可動台、またはキーをスライド移動させようと力を加えるときに、装置が発生する反発力の生じ方を、可動台、またはキーの位置によって変化するように工夫する。指はこの反発力を圧力感覚を通じて感じ取ることができる。この圧力感覚は、棒の刺激の触覚感覚と併せて、操作者が、可動台、及びキーの移動量を把握する上で有効な手掛かりを与えるものである。この仕組みを図5に示す。図5には可動台が動いて、キー1’が指示する文字種がAからBへ切り替わる場合を例に説明している。図にはキーが各位置にある場合に、可動台に働く力の方向が示されている。このように力が働く場合、可動台は、キーが文字Aの入力範囲の中心位置、または文字Bの入力範囲の中心位置に来る場合に、安定となって落ち着く。可動台がこれら以外の位置にあるときには、可動台を、これらの中心位置の近い方に引き付けるように力が加わる。このような引力と反発力を手掛かりとして、可動台、またはキーを動かして安定となる位置を決めれば、曖昧な二つの文字の境界部分で文字データの入力が行われることはない。また位置移動の間に何回反発力のピークがあったか数えることで、可動台の位置を把握することもできる。あるいは可動台を安定位置に戻そうとする力の方向を圧力感覚により感じて、可動台の移動位置を把握することもできる。具体的にこのような力を生じる手段として、磁石の引力を用いる方式、凹凸のある面にボールを押し付けるときの安定点を利用する方式等がある。
【0018】
別の実施例として、マウスの形状をした装置も考えられる。この装置を図6を用いて説明する。ここで、図1の場合と同様に、1’は人差し指を乗せるキー、2’は中指を乗せるキー、3’は薬指を乗せるキー、そして4’は小指を乗せるキーである。また5’、6’は親指が押すキーである。左右の手のそれぞれに対して装置が用意され、それらにおいてキー配置は鏡像の関係にある。装置を握る時、各指が自然にキー表面に乗るように、キーの位置とキー表面の方向が設定される。装置は机などの上でスライド移動するが、この時の移動量はマウスと同様のメカニズムにより検出する。装置を握る時、装置表面で掌が接する部分に、掌の触覚を刺激する図7の機構を設置する。この図は図6の装置のA−Bに沿った切断面を示すものである。この機構では、検出した装置の移動量に基づき、どのソレノイドに電流を流すのかを決める。電流の流れたソレノイドは磁力によって装置表面の穴から棒を押し出し、押し出された棒が掌の適当位置を刺激するようにする。操作者は、この刺激を頼りに装置の移動位置を把握することができる。掌が接する装置表面の中心部に、可動棒よりかなり大きく、常に掌を刺激する突起が出ており、可動棒はその周辺に配置されている。人の掌の触覚は刺激の絶対位置を知覚する能力が低いが、大きさによって可動棒と区別される中心の突起による刺激に対して、可動棒の刺激の相対位置を知覚する能力は高く、可動棒刺激の相対位置から装置自体の水平移動量を感じ取ることができる。例として、装置の各移動位置に対して、その位置で各キーが指示する文字種、更にその時に表面から出て皮膚を刺激する棒の位置の対応関係を図8に示す。以上、ソレノイドを利用して電気的に刺激棒を動かす方式を述べたが、装置に電力を供給しなければならないことが欠点となる。これを避けるためには、図3に示したものと似た機構で、装置移動時のボールの回転から、機械的方式により、刺激棒を動かす動力を取り出すようにすれば良い。
【0019】
装置の移動位置と押されるキーの組み合わせから文字種を決める機構は、マウス状装置内部に設置するか、または機械側に設置する。前者の場合、マウス状装置から機械に文字種を送信する。また後者の場合には、マウス状装置から機械にマウス状装置の移動位置と押されたキーの種類に関する情報を送信する。この場合、マウス状装置上のどの棒を押し出すかということを機械側で決定し、それをマウス状装置へ送信し、マウス状装置はその信号に基づいて棒を押し出すようにすることができる。後者の方式は、機械内のソフトウェアの変更で仕様を変えられるため、自由度が高い。またこの方式による機械は、文字入力以外の目的、例えば操作者の注意を喚起する等の目的に、刺激棒の動きを制御することができる。これは、電気的に刺激棒を動かす方式の別の利点である。
【0020】
図4、及び図8には、各移動位置で各キーが押されたときに、どの文字種が入力されるかということに関する規則が、図1、及び図6の実施例に対して示されている。各移動位置でキーが指示する文字種を、これら以外の規則によって定めることもできる。図4、及び図8の方式では、使用者が既に従来のキーボードのキー配置に慣れていることを前提として、その経験を生かせるような規則を採用している。過去の方式との互換性を無視し、全く新しくキー配置を考えるのであれば、より合理的で能率の良い方式がある。そのような方式については後で述べることにする。
【0021】
経験を積んだ使用者でも、図2のキーボード配置を視覚的なイメージとして思い浮かべることはできない。しかしながら、キーの空間位置の情報は脳の中に何等かの形体で記憶されており、必要とするキー位置へ指を無意識的に運ぶことができる。このキー空間配置に関する記憶を利用するために、次のような規則で、各位置で各キーが指示する文字種を決める。図1の装置の可動台をスライドさせた時に、指は実際にはキー上に乗ったままであるが、可動台のスライド量に応じて、指が図2のキー配置の上を滑っているものと想定し、この想定に従って、各位置で各キーが指定する文字種を定めるようにする。すなわち、図1の装置の可動台を図2のキー配置上に重ねて、その上でスライドさせてたとき、各スライド位置で、可動台上の各キーの下に来る図2のキー(その位置にて各指が図2のキー配置上で叩くことになるのキー)の文字種を、図1の装置の各キーが各スライド位置で指定する文字種とするのである。なお、可動台、あるいはマウス状装置上のキーの配置は一直線上に並んではいないが、人は、指の配置にこのような歪みがあることを意識しないので、キーが一直線上に並んでいると見なして、図2のキー配置に重ねあわせ、キーが指定する文字種を決める。また図2の各指の分担範囲を見ると、文字配列を二列に渡って担当しているのは人差し指だけであるので、人差し指以外についてはキーの位置が変わってもキーが指示する文字種は変化しないようにすることもできる。ただし、図4では、そうせずに、このような場合に、適当な記号が入力するように設定されている。これらの図にはアルファベットと代表的な記号しか示されていないが、数字や他の各種記号を入力するためには、数字記号入力モードを用意する。数字記号入力モードでは、文字データ入力モードの各キーの役割は解除され、各キーが各位置で指示する記号種は再度割り当てられる。なお記号のキー配置まで記憶することは困難であるので、数字記号入力モードでは、可動台を動かす度に、その時点の可動台位置で各キーに割り当てられている文字種が機械のモニター画面に表示され、使用者はその表示を見ながら可動台の位置を決め、打鍵できるようにする。
【0022】
以上に述べた方式では、従来方式で一つの指を動かせば済む場合に、全ての指を同時に動かすことになる。それでも、キーの指示文字を切り替えるために必要なスライド量が小さくなれば、入力効率は従来以上に向上すると期待される。
【0023】
親指は、従来のスペースキー、変換キー、シフトキー、ALTキー、コントロールキーに相当する特殊データを入力するために用いる。これらのキーのうち、シフトキー、ALTキー、コントロールキーは他のキーと同時に押さなければならない特殊なキーである。位置により各キーの役割が変わる本装置においては、これらのキーの扱いには特別な配慮が必要である。これらの特殊キーに関しても、押し込みと位置変更の二つの操作の組み合わせによってキー種を指定するようにすると、従来のように二つのキーを同時に押す操作を行なおうとする時に、一つの可動台に異なる二つの位置にいることが要求される事態が起り得る。この問題を解決するための一つの方法として、親指担当キーを可動台に置かず、位置固定にすることが考えられる。そうすれば、可動台の移動位置に依存せずに、親指担当キーの役割は一定であるので、他の指が可動台の位置を適宜に決めて目的の文字を入力するのと同時に、親指は特殊キーを押すことができる。この場合、スペースキー、変換キーを左手親指担当とし、シフトキー、ALTキー、コントロールキーを右手親指担当とすれば、スペースキーとコントロールキーを同時に押すこともできる。このような方式を取ると、次のような別の利点も生じる。操作者が、指、手首の屈曲の程度に関する感覚を通じて、可動台の位置を把握するためには、手の一部を可動台以外に置き、それを動かさずに固定した方が良い。
こうすると可動台を動かすとき、指、または手首が、屈曲、伸長するようになり、その程度から可動台の位置を把握できるようになる。したがって、上述したように、親指が押すキーを、可動台の上に設けずに固定しておけば、親指と他の指の離れ具合に関する感覚によって、可動台の位置を把握することができるのである。
【0024】
別の対策としては、他のキーと同時に押す可能性のあるキー、例えば、シフトキー、ALTキー、コントロールキーを左手と右手の担当キーの中に重複して割り当てておけば、両手を使うことによって、これらの特殊キーと他の任意のキーを同時に押すことができる。この場合には、親指担当キーも可動台上に置き、可動台の位置に依存してその役割を変えるようにすることができる。
【0025】
図1の実施例では、親指担当のキーは可動台上に設置されており、可動台と共に動く。そして可動台の位置と共にその役割を変える。したがって、シフトキー、ALTキー、コントロールキー等の特殊キーは左右の可動台に重複して割り当てられている。可動台の各位置におけるキー5’の役割を図4に示す。この実施例では、キー6’も親指が押すキーであるが、このキーは、装置をカーソル位置指定モードに移行するためのものである。カーソル位置指定モードにおける装置の機能を次に述べる。
【0026】
カーソル位置指定モードでは、可動台の移動量を、カーソル位置を指定するための座標量として使用する。このモードでは、指刺激棒の動作、可動台を動かそうとするときに働く反発力は解除される。キー6’を押しながら可動台を動かすとその移動量、移動方向に応じて機械のモニター画面上のカーソルが移動する。
キー6’から指を離すと、カーソルはその時の位置に固定する。そして次にキー6’が押されるとき、前回の終了位置を初期値として、カーソルは可動台の動きに従って移動する。カーソル位置指定モードでは、人差し指が押すキー1’、中指が押すキー2’はそれぞれマウスの左ボタン、右ボタンに対応する役割を果たす。文字データ入力時とカーソル位置指定時で同じキーを用いるため、両作業の切り替えの際に、指をキーボードからポインティングデバイスに移動する必要がなく、作業が中断されずに済む。マウス状装置を用いる場合も、同様の方法で文字データ入力モードとカーソル位置指定モードを切り替え、装置の移動量をカーソル位置の指定に利用することができる。なお図1の実施例で、可動台の移動量は、可動台下のボールの回転量として、ロータリエンコーダ等を用いて計測する。
また図6の実施例では、装置の移動量は、従来のマウスと同様の機構により計測される。
【0027】
本発明の文字データ入力装置においては、キーの水平移動量を知らせるために、指や掌に、触覚、及び圧力感覚を刺激するパターンを加え、操作者がこの刺激パターンと、指、手首の屈曲の程度に関する感覚を通じて、視覚によらずにキー位置を知り、入力文字を把握できるように補助する機構が本質的役割を果たしている。この機構が、ブラインドタッチを可能にし、文字データ入力の能率を向上する。この機構に関しては、上記の実施例に述べた方式以外にも各種の方式が考えられる。代表的な例を以下に示す。
【0028】
(1)キーを水平移動する時に、キーが支持する文字種が変わる境界地点で、キー自身、またはキー表面の突起が上下に動くようにし、その動きからキーが指示する文字種が変わったことを把握できるようにする。
【0029】
(2)可動台の動きを阻む壁を想定して、可動台の移動量に応じて、その仮想上の壁に台がぶつかる場合に生じる衝撃に相当する刺激を発生し、その衝撃を指が感じて、可動台が仮想上の壁にぶつかる位置に来たことを把握できるようにする。
【0030】
(3)仮想台が、その下に置かれた凹凸の上をスライドする際に指が感じることになる感触を、指、あるいは掌に加える。例えば、可動台の位置に応じて、キー、または可動台自体の高さが変わり、可動台の位置を把握できるようにする。簡単な方式としては、可動台下で転がるボール自身、あるいはボールの下の面、またはマウス状装置のボールの適当な位置にイボを設けておけば、ボールが転がり、イボを踏んだ時に可動台、またはマウス状装置の高さが変わるので、その感触によって、可動台、またはマウス状装置の位置を把握することができる。ボール下の面をイボを持つ領域と、イボを持たない領域に分け、前者で文字データ入力を行い、後者でカーソル座標を指定するようにすることもできる。
【0031】
(4)操作部位の表面から、操作部位の移動と共に転がるボールの一部が顔を出すようにし、ボール表面にイボ状の突起を幾つか設ける。指はボール表面を常に触っており、操作部位の移動と共に転がるボール表面の感触の変化から、操作部位の位置変化の方向を知ることができる。この実施例を図9に示す。この実施例では、位置変更に要する力も同時に変化するようにしている。
【0032】
(5)可動台上で掌の当たる部分に穴を開けておき、可動台の位置に応じて、穴から異なる形態の刺激が掌に加わるようにし、位置の把握を可能とする。この実施例を図10に示す。この実施例では、位置変更に要する力も同時に変化するようにしている。
【0033】
次に、文字入力効率を更に向上するために、従来のキーボードのキー配置と互換性のない入力方式について述べる。従来のキーボードのキー配置との互換性を犠牲にすることにより、より能率の良いキー入力を行うことができる。ここで提案する方式では、利き手(通常は右手)のみを文字データ入力に使用し、左手は、文字データ入力モード、記号数字入力モード、カーソル位置指定モード等の入力モードの切り替え、及び、変換キー、シフトキー、ALTキー、コントロールキーなどを入力する目的に使用する。このように入力方式を定めた場合に用いるキー配置を図11に示す。先に、従来と互換性のある場合について、可動台の各移動位置で各キーが指定する文字種を定める方法を述べたが、それと同様の方法で、図11のキー配置に基づいて、可動台の各移動位置で各キーが押されたときに入力する文字種を決める。図中には、各指の担当範囲が示されている。可動台は前後左右にスライドし、合計9通りの位置を取る。したがって、各指は9種類の文字を入力することができる。それぞれのスライド位置で各キーが指示する文字を図12に示す。他の記号の入力には、別の入力モードで、これと異なる仮想キー配置を設定して対応することができる。
【0034】
例えば、ひらがな等の入力では、五本の指であいうえおの母音の区別を入力し、可動台の位置により子音の区別を入力することもできる。右手だけで合計45種の文字種の指定が可能になる。更に左手で入力モードの切り替えを行うようにすれば、より多種の文字、記号を入力することができる。
【0035】
なお、本発明の文字データ入力装置に追加可能な機能として、タイピング訓練機能がある。本発明の文字データ入力装置は、従来と異なる方式で文字を入力するため、習熟するために特別な訓練が必要となる。しかしながら、タイピング訓練機能を導入できるので、この欠点を補うことができる。従来のキーボードでは、指が乗っているキー位置を機械の側で検出することができなかったため、訓練用の機能を導入できなかった。本発明の方式では、指毎に専用のキーがあり、各指が同じキー上に乗り続けるため、可動台の水平移動位置から、各時点で各指が指示している文字種を割り出すことができ、機械の側でそれを検出することができる。この検出結果に基づき、習熟するまでの間は、キー配置の絵と、各指が指示している文字を画面に表示し、使用者の文字データ入力を補助し、タイピングを訓練することができる。また習熟のレベルに応じて、画面に表示する情報を適宜隠し、学習が短時間に進むように訓練プロセスを工夫することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明には以下の効果がある。この効果の全てが実現されていない場合であっても、請求項の要件に触れる場合、本発明の権利範囲に含まれるものとする。
(1)文字データ入力時の指の運動範囲を狭め、入力速度を向上し、疲労を軽減する。また装置を小型化する。
(2)指を特定キーに置き続けるようにし、また、指、及び掌の触覚、圧力感覚を積極的に活用することで、ブラインドタッチによる文字データ入力を容易にする。
(3)文字データ入力とカーソル位置指定の両作業を、同一の操作部位により実施することで、指を操作部位から離さずに両作業を連続して行なえる。
(4)機械の側で各指が各時点で指示している文字種を検出できるため、訓練用の補助情報を機械のモニター装置の画面に提示することができる。
【0037】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の文字データ入力装置の一実施例の全体像を示す図である。
【図2】 従来の文字データ入力装置(キーボード)とカーソル位置指定装置(マウス)、及びキーボード上の文字配置、各指の担当範囲、ホームポジションを示す図である。
【図3】 図1の実施例において、本発明の請求項1(ハ)に述べた指の触覚を刺激するパターンを生成する機構の一実施例を示す図である。
【図4】 図1に示す実施例において、各水平移動位置で各キーが指示する文字種、及び皮膚を刺激する棒の出方を示す図である。
【図5】 本発明の請求項1(ハ)に述べた、指、及び手の圧力感覚を刺激する力を生成する機構の一実施例を示す図である。
【図6】 本発明の文字データ入力装置の一実施例(マウス状装置)の全体像を示す図である。
【図7】 図6の実施例において、本発明の請求項1(ハ)に述べた指の触覚を刺激するパターンを生成する機構の一実施例を示す図である。
【図8】 図6に示す実施例において、各水平移動位置で各キーが指示する文字種、及び皮膚を刺激する棒の出方を示す図である。
【図9】手や指に、操作部位の位置変化の方向を知らせる刺激の与え方の一実施例を示す図である。
【図10】 手や指に、操作部位の位置変化の方向を知らせる刺激の与え方の一実施例を示す図である。
【図11】 従来のキー配置との互換性を無視し、効率を追求する場合の文字配列(文字データ入力モード)を示す図である。
【図12】 図11の文字配置の場合に、各水平移動位置で各キーが指示する文字種、及び皮膚を刺激する棒の出方を示す図である。
【符号の説明】
1 人差し指の担当範囲
2 中指の担当範囲
3 薬指の担当範囲
4 小指の担当範囲
1’人差し指の担当キー
2’中指の担当キー
3’薬指の担当キー
4’小指の担当キー
5’親指の担当キー(文字入力用)
6’親指の担当キー(モード切り替え用)
7 可動台
8 支持台(人差し指、中指、薬指用)
9 支持台(親指用)
Claims (7)
- 装置本体の移動を検出する移動検出手段を有し、装置本体を移動しながらボタンを操作する際に、前記移動検出手段が検出する装置本体の移動量および移動方向と、前記ボタン操作の検出結果とに基づき、コンピュータ等の機械に文字や記号等のデータあるいはカーソル位置指定に関するデータを入力する文字データ入力装置であって、
前記装置本体の移動の最中にその端部が手指または掌に接触しながら手指または掌に対する相対位置を変化させて手指または掌の触覚を刺激し続ける刺激提示手段を備え、
前記刺激提示手段は、前記移動量に連動させて前記端部の前記相対位置を変化させ、前記相対位置の変化量によって前記移動量を通知することを特徴とする文字データ入力装置。 - 装置本体に対して相対的に移動する操作部位と、前記操作部位の移動を検出する移動検出手段を有し、前記操作部位を移動しながらボタンを操作する際に、前記移動検出手段が検出する前記操作部位の移動量および移動方向と、前記ボタン操作の検出結果とに基づき、コンピュータ等の機械に文字や記号等のデータあるいはカーソル位置指定に関するデータを入力する文字データ入力装置であって、
前記操作部位の移動の最中にその端部が手指または掌に接触しながら手指または掌に対する相対位置を変化させて手指または掌の触覚を刺激し続ける刺激提示手段を備え、
前記刺激提示手段は、前記移動量に連動させて前記端部の前記相対位置を変化させ、前記相対位置の変化量によって前記移動量を通知することを特徴とする文字データ入力装置。 - 前記刺激提示手段は、前記端部の傾きを変えて手指または掌に対する相対位置を変化させ、前記端部が傾く角度は、前記移動量に連動して定まり、前記角度によって、前記移動量を通知することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の文字データ入力装置。
- 前記刺激提示手段は、装置本体表面から突き出ることによって手指または掌を刺激する端部を有し、前記端部が表面から突出する長さは、前記移動量に連動して定まり、この突出する長さによって、前記移動量を通知することを特徴とする請求項1に記載の文字データ入力装置。
- 前記刺激提示手段は、前記端部の前記相対位置を変化させるのに電力を使用せずに、手指で前記装置本体を移動する際に加わる人力から、機械的方式により、前記相対位置を変化させるための動力を取り出すことを特徴とする請求項1記載の文字データ入力装置。
- 前記刺激提示手段は、前記操作部位表面から突き出ることによって手指または掌を刺激する端部を有し、前記端部が表面から突出する長さは、前記移動量に連動して定まり、この突出する長さによって、前記移動量を通知することを特徴とする請求項2に記載の文字データ入力装置。
- 前記刺激提示手段は、前記端部の前記相対位置を変化させるのに電力を使用せずに、手指で前記操作部位を移動する際に加わる人力から、機械的方式により、前記相対位置を変化させるための動力を取り出すことを特徴とする請求項2に記載の文字データ入力装置。
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