JP3955942B2 - リボソーム不活性化タンパク質(rip)遺伝子およびそれを導入したイネ科植物 - Google Patents

リボソーム不活性化タンパク質(rip)遺伝子およびそれを導入したイネ科植物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物に病害抵抗性を付与するDNA、このDNAを含む発現カセット、該発現カセットを含むベクター、このベクターを保持する植物細胞、この植物細胞を再生して得られた植物体に関する。
【0002】
【従来の技術】
イネは日本を含むアジアの主作物であり、そのためアジア諸国では古くからイネの収量増加のための研究を行ってきた。イネの収量を減少させる原因の一つとしては病害が挙げられ、その中でもいもち病(Pyricularia oryzae)と白葉枯病(Xanthomonas campestris)は深刻な被害をもたらす病害として恐れられてきた。いもち病は日本で最も恐れられている病害であり、主に日本の中部から北部にかけて長雨、冷害に伴って発生する。 いもち病菌は糸状菌の一種である。いもち病に冒されたイネは黒色の斑点型病斑を生じ、イネの成長が停止する。
【0003】
白葉枯病は細菌病の一種であり、九州から東南アジアにかけて深刻な被害をもたらす病害である。白葉枯病に冒されたイネは白褐色の病斑が葉縁に沿って拡大し、葉全体が枯死する(Ohata,1989,Zenkoku Noson Kyoiku Kyokai Co.Ltd.pp.563)。
【0004】
植物は、病原菌の侵入シグナルを認識すると、植物体を防御するために感染特異的タンパク質(PRタンパク質)を誘導発現し、防御応答を行う(Bowles,1990,Annu.Rev.Biochem.59,873)。病原菌の感染によって誘導された抗菌性タンパク質は、病原菌に直接作用することによって植物の防御機構に関わっている(VanLoon,1994,Plant Mol.Biol.Report.12,245;VanLoon,1999,Physio1.Mol.PlantPath.55,85)。また、グルカナーゼやキチナーゼ遺伝子を遺伝子組換えする事によって、植物に病害抵抗性をもたらしたことが報告されている(Nishizawa,1999,Kagaku to Sheibutsu 37,295)。
【0005】
リボソーム不活性化タンパク質(RIP)は、真核生物のrRNAに対してN−グリコシダーゼ活性を持ち、アデニン残基を特異的に切断する塩基性タンパク質である。RIPは作物を含む植物のほとんど全ての組織で発現しており、植物の病原菌に対して抗菌活性がある(Barbieri,1993,Biochim.Biophys.Acta 1154,237;Yun,1997,Plant Breeding Reviews 14,39)。これまでに、オオムギ、コムギ、トウモロコシなどに由来するリボソーム不活性化タンパク質が単離されている(例えば、J.Biol.Chem.266(3):1564−73(1991);Plant Mol.Biol.22(1):171−6(1993);J.Biol.Chem.266(34):23422−7(1991);Biosci.Biotech.Biochem.(1998)62(6):1152−1156;およびPlant Physiol.107(2),661−662を参照のこと)。リボソーム不活性化タンパク質の総説については、Bio/Technology 10:405−412(1992)およびCellular and Molecular Biology(1996)42(4):461−471を参照のこと。オオムギから精製されたRIPはrRNAに対して特異性を持ち、カビのrRNAに対して哺乳動物のrRNAよりも10倍以上のN−グリコシダーゼ活性を持つことが明らかになっている(Endo,1988,Bichim.Biophys.Acta 954,224)。また、オオムギRIPは植物のrRNAに対してN−グリコシダーゼ活性を持たないので、RIPは植物の病害抵抗性機構に関与していると推測されている(Taylor,1994,Plant J.5,827)。
【0006】
このRIPの抗菌性を利用し、これまでRIP遺伝子の導入によって植物に病害抵抗性を付与させる試みが行われてきた。例えば、オオムギRIPに創傷誘導性(wound inducible)プロモーターを用いてタバコに形質転換させた場合では、形質転換個体はタバコ腰折れ病菌(Rhizoctonia solani)に対する病害抵抗性が向上したことが報告されている(Logemann,1992,BIO/Technology 10,305)。さらに、オオムギのキチナーゼ遺伝子とRIP遺伝子をともに恒常的に発現する形質転換タバコは、それぞれの遺伝子の単独導入の場合よりも、腰折れ病に対して強い抵抗性を示すことが報告された。これは、溶菌酵素の作用によって、RIPの菌体内への浸透性が高められたためと考えられている(Jach,1995,Plant J.8,97)。ヤマゴボウRIPが導入されたタバコは、タバコモザイクウイルス(TMV)に対する抵抗性が付与された(Moon,1997,Mol.Cells 7,807)。しかしながら、このように、RIP遺伝子を単独で導入した研究はタバコ、ジャガイモでしか行われていない。特に、主要作物の中に含まれるイネ科植物において、病害に対する抵抗性を付与する遺伝子が望まれているが、イネ科植物でRIP遺伝子の発現を強化した場合の病害抵抗性に及ぼす効果は未知である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決するためのものであり、その目的とするところは、種々の病原性生物に対する抵抗性を与える遺伝子、この遺伝子を含む発現カセット、この発現カセットを含むベクター、このベクターを保持する植物細胞、この植物細胞を再生して得られた植物体を提供し、さらに病原性生物に対して抵抗性の植物を作出する方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意努力した結果、イネから2種類、ライ麦、エンバクからそれぞれ1種類のRIP cDNAをクローニングした。また、これらのRIP cDNAをアグロバクテリウム形質転換法を用いてイネに形質転換を行い、植物体内で発現させることに成功した。本発明者らは、さらに、この遺伝子の解析を進めた結果、この遺伝子の発現と植物の病害抵抗性との間に顕著な相関関係が認められることを見いだし、これにより発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、以下のリボソーム不活性化タンパク質(RIP)をコードするポリヌクレオチドを提供する:
(a)配列番号1の146〜955位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド; または
(b)該(a)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
である、ポリヌクレオチド。
【0010】
1つの実施形態において、上記ポリヌクレオチドは、配列番号1の146〜955位に記載のヌクレオチド配列、配列番号3の54〜899位に記載のヌクレオチド配列、配列番号5の35〜877位に記載のヌクレオチド配列、および配列番号7の37〜843位に記載のヌクレオチド配列を含み得る。
【0011】
別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドは、配列番号1の146〜955位に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも72.5%の相同性を有し、かつリボソーム不活性化タンパク質活性を有するタンパク質をコードし得る。
【0012】
本発明はさらに、以下のリボソーム不活性化タンパク質(RIP)をコードするポリヌクレオチドを提供する:
(c)配列番号2の1〜270位に記載されるアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;または
(d)(c)に示すアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド。
【0013】
1つの実施形態において、上記タンパク質は、配列番号2の1〜270位に記載のアミノ酸配列、配列番号4の1〜282位に記載のアミノ酸配列、配列番号6の1〜281位に記載のアミノ酸配列、配列番号8の1〜269位に記載のアミノ酸配列およびそれらのフラグメントを含み得る。
【0014】
別の実施形態において、上記タンパク質は、配列番号2の1〜270位に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも62%の相同性を有し、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質を含み得る。
【0015】
本発明はまた、上記ポリヌクレオチドを含む発現カセット、この発現カセットを含む発現ベクター、およびこのベクターが導入された植物細胞を含み得る。
【0016】
本発明は、上記植物細胞を再生して得られた植物もまた含み得る。
【0017】
本発明は、植物病原性生物に対して抵抗性を有する植物を作出するための方法を提供し、この方法は、上記発現ベクターを植物細胞に導入する工程を包含する。
【0018】
1つの実施形態において、上記方法は、上記植物細胞を、リボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現し、そして植物病原性生物に対して抵抗性を有する植物体に再生する工程をさらに包含し得る。
【0019】
別の実施形態において、上記植物病原性生物は、病原性細菌、真菌類、および病原性ウイルスを含み得る。
【0020】
さらに別の実施形態において、上記病原性細菌は、白葉枯病細菌(Xanthomonas campestris)を含み得る。
【0021】
さらに別の実施形態において、上記真菌類は、いもち病菌(Pyricularia oryzae)を含み得る。
【0022】
なお別の実施形態において、上記抵抗性を有する植物は、少なくとも2つの植物病原性生物に対する複合病害抵抗性を示し得る。
【0023】
他の実施形態において、上記少なくとも2つの病原性生物は、真菌類と病原性細菌との組み合わせを含み得る。
【0024】
他の実施形態において、上記少なくとも2つの病原性生物は、いもち病菌(Pyricularia oryzae)と白葉枯病菌(Xanthomonascampestris)との組み合わせを含み得る。
【0025】
さらなる実施形態において、上記植物は、単子葉植物または双子葉植物である。
【0026】
1つの実施形態において、上記植物は単子葉植物であり得る。別の実施形態において、上記単子葉植物はイネ科植物であり得る。また、このイネ科植物はイネであり得る。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明は、植物に病害抵抗性を付与するタンパク質の発見に関する。「病害抵抗性」とは、以下に説明するような病原性生物によって引き起こされる病気を防ぐ、または最小限にとどめる性質をいう。
【0028】
本発明のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質は、エリシター処理またはサリチル酸によって植物においてその発現が誘導され、植物に病害抵抗性を付与し得る。エリシターとは、植物の病害抵抗反応に関与するフィトアレキシン産生を誘導する物質である。サリチル酸は、植物の病害抵抗性を引き起こすシグナル物質の1つである。本発明のポリヌクレオチドは、リボソーム不活性化タンパク質(RIP)をコードし得る。
【0029】
リボソーム不活性化タンパク質(RIP)は、原核生物/真核生物のrRNAに対してN−グリコシダーゼ活性を持ち、アデニン残基を特異的に切断する塩基性タンパク質である。このタンパク質は、原核生物/真核生物のタンパク質合成を触媒的に著しく不活化し得る。また、このタンパク質は、植物細胞のrRNAに対してはN−グリコシダーゼ活性がほとんどない。
【0030】
本発明のリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチドはさらに、本発明のリボソーム不活性化タンパク質(例えば、図1に示したアミノ酸配列を有するリボソーム不活性化タンパク質(RIP1))のアミノ酸配列(配列番号2)またはポリヌクレオチド配列(配列番号1)に対して実質的な同一性を有する改変体をコードするポリヌクレオチドを含む。本明細書中で使用される場合、本発明のリボソーム不活性化タンパク質のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に対して実質的な同一性を有する改変体とは、このタンパク質のN末端および/またはC末端に対する1つ以上のアミノ酸の欠失(すなわち、短縮化)または付加;このタンパク質中の1つ以上の部位のアミノ酸の欠失または付加;あるいはこのタンパク質中の1つ以上の部位のアミノ酸の置換によりネイティブタンパク質から誘導されたタンパク質を意図する。
【0031】
リボソーム不活性化タンパク質の改変体において、目的のタンパク質の生物学的活性に影響しない適当なアミノ酸置換に関する指針は、Dayhoffら(1987)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.Washington、D.C.、これは、参考として本明細書中に援用される)のモデルに見出され得る。保存的置換(例えば、1つのアミノ酸を同様の特性を有する別のものと交換する置換)が好ましいとされ得る。このような置換としては、疎水性アミノ酸(Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Tyr、Val);親水性アミノ酸(Arg、Asp、Asn、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Lys、Ser、Thr);脂肪族側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro);水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(Ser、Thr、Tyr);硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(Cys、Met);カルボン酸およびアミド含有側鎖を有するアミノ酸(Asp、Asn、Glu、Gln);塩基含有側鎖を有するアミノ酸(Arg、Lys、His);芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(His、Phe、Tyr、Trp)同士の置換が挙げられる。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換」とは、本発明で使用され得るポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が有する機能を発現し得る限りにおいて、任意の数(1または数個)のアミノ酸が上記アミノ酸配列において欠失、付加、および/もしくは置換していることを意味する。アミノ酸の置換、欠失および/もしくは付加のような改変が活性に与える影響は、改変されるアミノ酸の位置、程度、種類などに依存し得ることは当業者には明らかである。本発明で使用され得るポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質が有する機能を発現し得る限りにおいて、好ましくは以下のアミノ酸配列同一性を満たす個数で欠失、置換および/もしくは付加された改変体をコードする。
【0033】
さらに、本発明で使用される「リボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド」とは、縮重異性体をすべて含むものである。ここで、「縮重異性体」とは、縮重コドンにおいてのみ異なっていて、同一のポリペプチドをコードすることのできる遺伝子を意味する。例えば、図1の塩基配列を有するDNAに対して、そのアミノ酸のどれかに対応するコドン、例えばAsnに対応するコドン(AAC)が、これと縮重関係にあるコドン例えばAATに変わったものを縮重異性体と呼ぶこととする。また、pBluescriptSK+(Stratagene)などのプラスミドに組み込まれたリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いても良い。
【0034】
本発明のポリヌクレオチドは、病害抵抗性を付与し得る限り、配列表の配列番号2の1位のMetから270位のAsnまでのアミノ酸配列と、少なくとも62%、好ましくは70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを包含する。
【0035】
本発明のポリヌクレオチドは、病害抵抗性を付与し得る限り、配列表の配列番号2の1位のMetから270位のAsnまでのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(好ましくは、配列番号1の146〜955位までに示されるヌクレオチド配列)と、少なくとも72.5%、好ましくは75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも90%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを包含する。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドの1つの好ましい実施形態としては、配列番号4の1〜282位に記載のアミノ酸配列、配列番号6の1〜281位に記載のアミノ酸配列、配列番号8の1〜269位に記載のアミノ酸配列またはそれらのフラグメントをコードするポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「参照配列」とは、配列比較の基準として使用される規定の配列である。参照配列は、記載された配列のサブセットまたは全体であり得る;例えば、全長cDNAもしくは遺伝子配列のセグメント、または完全DNAもしくは遺伝子配列としてである。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、ポリヌクレオチド配列の連続しかつ特定化されたセグメントについて言及し、ここで比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(これは、付加または欠失を含まない)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。一般的に、比較ウィンドウは、少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり、そして必要に応じて、30、40、50、100以上の長さであり得る。当業者は、ポリヌクレオチド配列中にギャップを含むことにより、参照配列に対して高い類似性となることを避けるために、典型的には、ギャップペナルティーを導入し、そしてこれを、一致の数から差し引くことを理解する。
【0039】
比較のための配列のアラインメントの方法は、当該分野において周知である。参照配列(本発明の配列)と対象配列との間の最適な全体の整合を決定するための好ましい方法として、例えば、BLAST(Altshulら、1997、Nucleic Acids Res.、25、3389−3402)を利用した相同性解析が用いられる。配列整列において、参照配列および対象配列は、両方ともDNA配列である。RNA配列は、UをTに変換することによって比較され得る。上記の全体的配列整列の結果が、同一性%である。同一性%を算定するためにDNA配列のBLAST整列において、一般的には、デフォルトパラメーターが使用され得る。
【0040】
本明細書中で使用される場合、2つの核酸配列または2つのポリペプチド配列の文脈において「配列同一性」または「同一性」は、特定化された比較ウインドウにわたって最大に一致するように整列された場合に同一である2つの配列中の残基に対して言及される。タンパク質に関して配列同一性%が使用される場合、しばしば、保存的アミノ酸置換によって同一ではない残基位置は異なることが理解される。上述したように、保存的アミノ酸置換では、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基で置換されるため、分子の機能的特性を変化させない。配列が保存的置換において異なる場合、配列同一性パーセントは、置換の保存的性質について矯正するように上方に調整され得る。このような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有するといわれる。この調整をするための手段は、当業者には周知である。代表的には、これは、完全なミスマッチではなく、部分的なものとして保存性置換を点数付けすることを含み、それによって配列同一性パーセントを増加させる。従って、例えば、同一のアミノ酸が1のスコアを与えられ、そして非保存的置換が0のスコアを与えられる場合、保存的置換は、0と1との間のスコアを与えられる。保存的置換の点数付けは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics,Mountain View,California)において実行されるように計算される。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「配列同一性%」は、比較ウィンドウにわたって最適にアラインされた2つの配列を比較することによって決定された値を意味し、ここで比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(これは、付加または欠失を含まない)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。この割合(%)は、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列に存在して一致した位置の数を生じる、位置の数を決定すること、一致した位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で除算すること、およびその結果に100をかけて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
【0042】
用語、ポリヌクレオチドの「実質的な同一性」は、ポリヌクレオチドが、標準的なパラメーター(例えば、デフォルトパラメーター)を使用して、記載されるかさもなくば公知のアラインメントプログラムの1つを用いて参照配列と比較して、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。当業者は、コドンの縮重、アミノ酸の類似性、リーディングフレームの位置などを考慮に入れることによって、2つのヌクレオチド配列によってコードされる対応するタンパク質の同一性を決定するために、これらの値が適切に調整され得ることを理解する。これらのために、対応するアミノ酸配列の実質的な同一性は、通常、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、90%、および最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を意味する。
【0043】
ペプチドの文脈における用語「実質的同一性」は、ペプチドが、特定化された比較ウィンドウにわたって、参照配列に対して、より好ましくは少なくとも60%の配列同一性、好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは85%、最も好ましくは少なくとも90%または95%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。好ましくは、最適なアラインメントは、Needlemanら(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性アラインメントアルゴリズムを使用して行われる。例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合に、ペプチドは、第2のペプチドと実質的に同一である。「実質的に類似の」ペプチドは、同一ではない残基の位置が保存的アミノ酸変化によって異なり得るということ以外は、上記に示したような配列同一性を共有する。
【0044】
本発明においては、GENETYXソフトウェア(ソフトウェア開発株式会社、東京)を使用することにより、アミノ酸配列/ヌクレオチド配列の同一性または類似性を決定した。しかし、同一性または類似性の%は、使用されるソフトウェアに依存して異なり得ることは当業者により理解される。また、例えば、AおよびBの2つのアミノ酸配列/ヌクレオチド配列を比較する場合、アミノ酸配列/ヌクレオチド配列Aの長さが、アミノ酸配列/ヌクレオチド配列Bの長さと等しくない場合には、Bに対するAの%アミノ酸配列/ヌクレオチド配列同一性は、Aに対するBの%アミノ酸配列/ヌクレオチド同一性とは等しくない場合もあることは明らかである。
【0045】
本明細書中で使用される場合、病害抵抗性を与えるリボソーム不活性化タンパク質の生物学的に活性な部分をコードするフラグメントは、少なくとも15、25、30、50、100、125、150、175、200、225の連続するアミノ酸、または本発明で使用されるリボソーム不活性化タンパク質の全長タンパク質に存在するアミノ酸の総数まで(例えば、配列番号2の270アミノ酸)をコードする。ハイブリダイゼーションプローブ(例えば、PCRプライマーについて)として用いるための、病害抵抗性を付与するリボソーム不活性化タンパク質のフラグメントは、一般に、病害抵抗性を付与するリボソーム不活性化タンパク質をコードする遺伝子により発現されるタンパク質の生物学的に活性な部分をコードする必要はない。
【0046】
イネ以外の他の植物に由来する、病害抵抗性を与えるリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチドホモログもまた、本願発明において使用され得る。そのようなポリヌクレオチドホモログは、例えば、公知のリボソーム不活性化タンパク質(例えば、図1に記載されたイネのリボソーム不活性化タンパク質(RIP1))の全長または一部のヌクレオチド配列に基づいて設計したプライマーを用いて、選択した植物のゲノミックDNAを鋳型としてPCRを行い、その後、得られた増幅DNAフラグメントをプローブとして用いて同じ植物のゲノミックDNAまたはcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより単離され得る。このようにして、PCR、ハイブリダイゼーションなどのような方法が、公知のリボソーム不活性化タンパク質(例えば、図1に記載されたイネのリボソーム不活性化タンパク質(RIP1))の配列に対するそれらの配列同一性に基づいてこのような配列を同定するために使用され得る。とりわけ、図1に記載の配列全体に対する、またはそれらのフラグメントに対する、それらの配列同一性に基づいて単離された配列は、本発明によって特に好ましく使用される。
【0047】
ハイブリダイゼーション技術において、公知のリボソーム不活性化タンパク質をコードするヌクレオチド配列の全てまたは部分が、選択された生物由来のクローン化されたゲノムDNAフラグメントまたはcDNAフラグメントの集団(すなわち、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー)中に存在する他の対応するヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするプローブとして使用される。このハイブリダイゼーションプローブは、ゲノムDNAフラグメント、cDNAフラグメント、RNAフラグメント、または他のオリゴヌクレオチドであり得、そして検出可能な基(例えば、32P)または任意の他の検出可能なマーカーで標識され得る。従って、例えば、ハイブリダイゼーションのためのプローブは、本発明の病害抵抗性を付与するリボソーム不活性化タンパク質のヌクレオチド配列に基づいて合成されたオリゴヌクレオチドを標識することによって作製され得る。ハイブリダイゼーションのためのプローブの調製およびcDNAライブラリーおよびゲノムライブラリーの構築の方法は、一般に、当該分野で公知であり、そしてSambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold SpringHarbor Laboratory Press、Plainview、New York、(これは、本明細書中に参考として援用される))において開示される。
【0048】
例えば、本明細書中に示された病害抵抗性を付与するリボソーム不活性化タンパク質をコードするヌクレオチド配列全体、またはそれらの1つ以上の部分が、対応する病害抵抗性を付与するリボソーム不活性化タンパク質の遺伝子配列およびメッセンジャーRNAに特異的にハイブリダイズし得るプローブとして使用され得る。種々の条件下で特異的なハイブリダイゼーションを達成するために、このようなプローブは、病害抵抗性を付与するリボソーム不活性化タンパク質をコードする遺伝子配列間で独特であり、そして好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド長、最も好ましくは少なくとも約20ヌクレオチド長である配列を包含する。このようなプローブは、選択された生物から対応する病害抵抗性を付与するリボソーム不活性化タンパク質をコードする遺伝子配列をPCRによって増幅するために使用され得る。PCR増幅の方法は、当該分野で周知である(PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification、HA Erlich編、Freeman Press、NewYork、NY(1992);PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications、Innis、Gelfland、Snisky、およびWhite編、Academic Press、San Diego、CA(1990);Mattilaら(1991) Nucleic Acids Res. 19: 4967;Eckert、K.A.およびKunkel、T.A.(1991)PCR Methods and Applications 1: 17;PCR、McPherson、Quirkes、およびTaylor、IRL Press、Oxford、これらは、本明細書中で参考として援用する)。この技術は、所望の生物からさらなるコード配列を単離するために使用され得る。ハイブリダイゼーション技術は、プレート化したDNAライブラリーのハイブリダイゼーションスクリーニングを包含する(プラークまたはコロニーのいずれか;例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、ColdSpring Harbor Laboratory Press 、Plainview、New York)を参照のこと)。
【0049】
このような配列のハイブリダイゼーションは、ストリンジェントな条件下で実施され得る。「ストリンジェントな条件」または「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブが、他の配列に対するよりも、検出可能により大きな程度(例えば、バックグラウンドよりも少なくとも2倍)で、その標的配列に対してハイブリダイズする条件を意図する。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、そして異なる環境下で異なる。ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件のストリンジェンシーを制御することにより、プローブに対して100%相補的である標的配列が同定され得る。あるいは、ストリンジェンシー条件は、より低い程度の類似性が検出され得るように、配列中にいくらかミスマッチとなることが可能になるように調整され得る。一般に、プローブは、約1000ヌクレオチド長未満であり、好ましくは500ヌクレオチド長未満である。
【0050】
代表的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.5M Naイオン未満であり、代表的には約0.01〜1.0M Naイオン濃度(または他の塩)(pH7.0から8.3)であり、そして温度が、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃であり、そして長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドより大きい)については少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、脱安定剤(例えば、ホルムアミド)の添加によって達成され得る。例示的な高ストリンジェントな条件としては、50%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS中の37℃におけるハイブリダイゼーション、そして60〜65℃における0.1× SSC中の洗浄が挙げられる。例示的な中程度のストリンジェントな条件としては、40〜45%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS中の37℃におけるハイブリダイゼーション、そして55〜60℃における0.5×〜1× SSC中の洗浄が挙げられる。例示的な低ストリンジェントな条件としては、30〜35%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝溶液を用いた37℃におけるハイブリダイゼーション、そして50〜55℃における1×〜2× SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3M クエン酸三ナトリウム)中の洗浄が挙げられる。
【0051】
特異性は、代表的には、ハイブリダイゼーション後の洗浄の関数であり、決定的な要因は、最終洗浄溶液のイオン強度および温度である。DNA−DNAハイブリッドについては、Tmは、MeinkothおよびWahl(1984)Anal.Biochem.138:267−284の式:Tm=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%form)−500/Lから概算され得;ここでMは、1価カチオンのモル濃度であり、%GCは、DNA中のグアノシンヌクレオチドおよびシトシンヌクレオチドのパーセンテージであり、%formは、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージであり、そしてLは、塩基対中のハイブリッドの長さである。Tmは、相補的な標的配列の50%が完全に一致するプローブにハイブリダイズする温度(規定されたイオン強度およびpHで)である。Tmは、1%のミスマッチにつき約1℃低下する;従って、Tm、ハイブリダイゼーション、および/または洗浄条件は、所望の同一性の配列にハイブリダイズするために調整され得る。例えば、90%以上の同一性を有する配列が求められる場合、Tmは、10低下し得る。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHでの特定の配列およびその相補物に対する熱融点(Tm)よりも約5℃低く選択される。しかし、厳しいストリンジェントな条件は、熱融点(Tm)よりも1、2、3、または4℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用し得;中程度のストリンジェントな条件は、熱融点(Tm)よりも6、7、8、9、または10℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用し得;低いストリンジェントな条件は、熱融点(Tm)よりも11、12、13、14、15、または20℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用し得る。この式、ハイブリダイゼーションおよび洗浄組成物、ならびに所望されるTmを使用して、当業者は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーおよび/または洗浄溶液におけるバリエーションが固有に記載されることを理解する。所望されるミスマッチの程度が45℃(水溶液)または32℃(ホルムアミド溶液)よりも低いTmを生じる場合、より高い温度が使用され得るようにSSC濃度を増加させることが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションについての広範なガイドは、Tijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic AcidProbes、第1部、第2章(Elsevier,New York);およびAusubelら編(1995)Current Protocols in Molecular Biology、第2章(Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York)に見出される。Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)を参照のこと(これらは本明細書中に参考として援用される)。
【0052】
本発明で使用され得るポリヌクレオチドは、代表的には、本発明のリボソーム不活性化タンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号2に記載されるイネのリボソーム不活性化タンパク質(RIP1)のアミノ酸配列)の情報またはそれをコードするヌクレオチド配列情報に従って得られるが、それらの既知の配列情報を基に、化学合成によっても得られ得る。例えば、本発明で使用され得るポリヌクレオチドは、Applied BioSystems(現Perkin Elmer社)のポリヌクレオチド合成機を用いて製造業者によって提供される仕様書に従って合成され得る。
【0053】
さらに他の実施形態では、本発明で使用されるリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチドを取得する1つの方法としては、核酸合成の手法に従ってそのポリヌクレオチドの少なくとも一部を化学合成し、これをプローブとして使用して、適当なcDNAライブラリー、ゲノムライブラリー、BACクローンライブラリー、PACクローンライブラリー、YACクローンライブラリーなどから、慣用されている方法(例えば、免疫学的方法あるいはハイブリダイゼーション法など)により取得する方法を挙げることができる。上記の方法に用いるいくつかのプラスミド類、様々な制限酵素やT4DNAリガーゼ、その他の酵素類としては市販のものを使用し得る。また、DNAのクローニング、各プラスミドの構築、宿主の形質転換、形質転換体の培養および培養物からのDNA,RNA等の回収は文献記載の方法(Molecular Cloning、第2版(Sambrook,1989 Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York)およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel,1987,John Wiley&Sons))に準じて行い得る。
【0054】
さらに別の実施形態では、以下の様にして、リボソーム不活性化タンパク質をコードするDNAを取得することができる。まず、本発明のリボソーム不活性化タンパク質(例えば、図1に記載されるイネのリボソーム不活性化タンパク質)中の2種類のアミノ酸部分配列を選択し、これらのアミノ酸配列のC末端をコードすると考えられるあらゆる塩基の組み合わせのプライマーと上記アミノ酸配列のN末端側をコードすると考えられるあらゆる塩基の組み合わせのプライマーとを作製し、これらをミックスプライマーとして用い、適当なライブラリーおよびRNAを鋳型としてPCR反応(Saiki,1988,Science 239,487)(例えば、RT−PCR反応(Berchtold,1989,Nucl.Acid Res.17,453))を行う。その後、PCR反応生成物の中から、増幅が予想される特定の長さの増幅フラグメントを取り出し、これらの塩基配列を決定する。得られた増幅フラグメントをプローブとしてハイブリダイズさせることにより、上記のライブラリーからリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチドを獲得する。
【0055】
得られたポリヌクレオチドの塩基配列は、当該分野で公知のヌクレオチド配列解析法マキサム−ギルバート法(Maxam−Gilbert,1980,Methods Enzymol.65,499)やジデオキシ法(Messing1982,Gene 19,269))、または市販されている自動シーケンサーにより決定し得る。
【0056】
また、得られたポリヌクレオチドを適切な発現ベクターに挿入すること、そして適切な宿主においてポリペプチドを発現させることによって、コードされるタンパク質を容易に組換え的に発現させ得る。当業者に公知の任意の種々の発現ベクターを用いて、組換えタンパク質を発現させ得る。組換えタンパク質の発現は、取得されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた任意の適切な宿主細胞において達成され得る。適切な宿主細胞としては、原核生物細胞(例えば、大腸菌)、下等真核生物細胞(例えば、酵母細胞)および高等真核生物細胞などが挙げられる。用いられる宿主細胞としては、植物細胞、E.coli細胞、酵母細胞、哺乳動物の細胞株(例えば、COS細胞またはCHO細胞)、昆虫細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。この様式で発現されるポリペプチドは、天然に存在するポリペプチド、天然に存在するポリペプチドの一部分、またはそれらの他の改変体をコードし得る。組換えポリペプチドを分泌する適切な宿主/ベクター系由来の上清は、まず、市販のフィルターを用いて濃縮され得る。次いで、この濃縮物は、タンパク質の性質に応じて、塩析や有機溶媒による沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、免疫吸着体によるカラムクロマトグラフィー、ゲル濾過、SDS−PAGE、等電点電気泳動などを適宜組み合わせて行うことが可能である。また、本発明の組換えタンパク質をヒスチジンタグやグルタチオンS−トランスフェラーゼなどの標識との融合タンパク質として発現させた場合には、該標識に対するアフィニティークロマトグラフィーなどにより精製することも可能である。最後に、1回以上の逆相HPLCの工程が用いられ、組換えポリペプチドは、さらに精製され得る。
【0057】
上記のように取得されたポリヌクレオチドが、N−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするか否かを、当業者は容易に確認し得る。N−グリコシダーゼ活性は、例えば、Taylor,1994,Plant J.5,827またはEndo,Y.ら、Biochim.Biophys.Acta.954:224−226(1988)に記載の方法を用いて容易に測定され得る。詳細には、取得されたポリヌクレオチドがコードするタンパク質を、上記のように組換え生成することにより獲得し、この組換え生成タンパク質を病原性生物のrRNAと反応させ、電気泳動によってrRNAの分解を確認し得る。
【0058】
また、上記のように取得されたポリヌクレオチドが、抗菌活性を有するタンパク質をコードするか否かを、当業者は容易に確認し得る。例えば、タンパク質の抗菌活性を測定する方法としては、阻止円法(佐藤昭二ら、植物病理学実験法、第219−223頁、講談社を参照のこと)が挙げられる。詳細には、取得されたポリヌクレオチドがコードするタンパク質を、上記のように組換え生成することにより獲得し、病原菌胞子などを混合した寒天培地上に、この組換え生成タンパク質を染み込ませた濾紙ディスクを載せて、所定時間培養する。組換え生成タンパク質が、使用された病原菌に対して抗菌性を有している場合、この濾紙の周りに生育阻止円が形成される。さらに、タンパク質濃度に応じて阻止円の大きさを測定することによって、抗菌性の強さを測定し得る。
【0059】
本発明のリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチドの代表的形態は、プラスミドまたはファージDNAなどの中に構成員の一部としてこのポリヌクレオチドが挿入された形態、並びに、ゲノムDNAの中にこのポリヌクレオチドが挿入された形で微生物またはファージ粒子あるいは植物の中に存在する形態である。本明細書中で使用される微生物の一例として、大腸菌やアグロバクテリウムを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明のリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、3’−末端側に接して少なくとも1個の停止コドン(例えばTAG)を有することが望ましい。
【0061】
さらに本発明のリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、所望により5’−側上流に翻訳フレームと合わせて翻訳開始のメチオニンをコードするATG配列、その5’−側上流および3’−側下流に非翻訳領域として適当な長さの他のポリヌクレオチドが結合しても良い。
【0062】
組換えタンパク質を発現させるためのベクターとしては、例えば、植物、酵母細胞に関しては、プラスミドpBI121,pBI101(Clontech)、大腸菌等の細菌細胞に関しては、プラスミドpET Expression system(Stratagene)、pPZP202(Hajdukiewicz,1994,Plant Mol.Biol.25,989)、哺乳動物細胞に関しては、プラスミドpMAM(Clontech)、昆虫細胞に関しては、プラスミドpBacPAK8.9(Clontech)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明における使用に有用な発現ベクターとしては、例えば、プラスミドpBI121,pBI221,pBI101(Clontech)、pPZP202(Hajdukiewicz,1994,Plant Mol.Biol.25,989)などが挙げられる。リボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチドが植物中で安定に発現し得るように、このポリヌクレオチドに、種々のプロモーター、エンハンサー、翻訳開始コドンをコードするDNA(ATG)またはターミネーターを、適宜組み合わせて付加することが好ましい。
【0064】
上記のプロモーターとしては、本発明のタンパク質を恒常的あるいは誘導的に発現させるためのプロモーターが挙げられる。
【0065】
恒常的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Langridge,1985,Plant CellRep.4,355)、カリフラワーモザイクウイルス19S−RNAを生じるプロモーター(Guilley,1982,Cell 30,763)、カリフラワーモザイクウイルス35S−RNAを生じるプロモーター(Odell,1985,nature 313,810)、イネのアクチンプロモーター(Zhang,1991,Plant Cell 3,1155)、トウモロコシユビキチンプロモーター(Cornejo 1993,Plant mol.Biol.23,567)、CaMV35S改良型REXφプロモーター(Mitsuhara,1996,Plant Cell Physiol.37,49)などを用い得る。特に好ましい実施形態では、CaMV35S改良型REXφプロモーターを使用し得る。
【0066】
誘導的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば、病原性生物の感染や侵入、光、傷害、低温、高温、乾燥、紫外線の照射、特定の化合物の散布などの外因によって発現を誘導することが知られているプロモーターなどが挙げられる。この様なプロモーターの例としては、例えば、光照射によって発現を誘導するリブロース−1,5−2リン酸カルボキシラーゼ小サブユニットをコードする遺伝子のプロモーター(Fluhr,1986,Pro.Natl.Acad.Sci.USA 83,2358)、糸状菌・細菌・ウイルスなどの病原性生物の感染や侵入によって発現を誘導するイネキチナーゼ遺伝子のプロモーター(Xu,1996,Plant Mol.Biol.30,387)およびタバコのPRタンパク質をコードする遺伝子のプロモーター(Ohshima,1990,Plant Cell2,95)、低温によって発現を誘導するイネのlip19遺伝子のプロモーター(Aguan,1993,Mol.Gen.Genet.240,1)、高温によって発現を誘導するイネのhsp72,hsp80遺伝子のプロモーター(Van Breusegem,1994,Planta193,57)、乾燥によって発現を誘導するシロイヌナズナのrab16遺伝子のプロモーター(Nundy,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,1406)、紫外線の照射によって発現を誘導するトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター(Schulze−Lefert,1989,EMBO J.8,651)などが挙げられる。また、上記のイネキチナーゼ遺伝子のプロモーターおよびタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーターは、サリチル酸またはジャスモン酸などの特定の化合物によって、rab16遺伝子のプロモーターは植物ホルモンのアブシジン酸の散布によっても誘導されることが公知である。
【0067】
本発明で使用され得るターミネーターとしては、ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター(Depicker,1982,J.Mol.Appl.Gen.1,561)、オクトピン合成酵素遺伝子のターミネーター(Gielen,1984,EMBO J.3,835)などを用い得る。
【0068】
用語「植物」とは、他に特に示さない限り、完全な植物体のみではなく、その植物体を構成する植物細胞、組織、および器官をも含み得る。本明細書中に出てくる植物の構成要素を示す用語(例えば、根、茎、葉、塊茎、花粉、種子胚、種子、プロトプラスト、カルス、および芽条原基など)は、当業者が通常理解し得る通りの構成物を表す。
【0069】
植物細胞および植物体への遺伝子導入法としては、通常公知の方法、例えば「Plant genetic transformation and gene expression;a laboratory manual,Draper,Blackwell Scientific Publications,19」記載の方法を用いて行うことができる。その例としては、生物的方法(例えば、ウイルスを用いる方法またはアグロバクテリウム(Agrobacterium)を用いる方法(Hood,1993,Transgenic Res.2,218、Toki S,Plant Mol.Biol.Reporter 15,16.)など)、物理・化学的方法(例えば、エレクトロポレーション法(Tada,1990,Theor.Appl.Genet.80,475)、ポリエチレングリコール法(Lazzeri,1991,Theor.Appl.Genet.81,437)、パーティクル・ガン法(sanford,1987,J.Part.Sci.Tech.5,27)など)などが挙げられる。
【0070】
ポリヌクレオチド導入に使用するための植物材料としては、導入法などに応じて、葉、茎、根、塊茎、プロトプラスト、カルス、花粉、種子胚、苗条原基などから適当なものを選択し得る。植物細胞としては特に制限はないが、植物体への再分化の系が確立されている、例えば、イネ、トウモロコシ、ジャガイモ、タバコなどの植物細胞が特に好ましい。適当な導入法および植物材料を選択することは、当業者によって容易になされ得る。
【0071】
植物培養細胞へポリヌクレオチドを導入する場合、材料として代表的にはプロトプラストを用いて、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法などの物理・化学的方法によってポリヌクレオチドの導入が行われる。植物組織へポリヌクレオチドを導入する場合、材料としては葉、茎、根、塊茎、カルス、花粉、種子胚、苗条原基など(好ましくは葉、茎、カルス)を用いて、ウイルスもしくはアグロバクテリウムを用いた生物学的方法またはパーティクルガン法などの物理・化学的方法、好ましくはアグロバクテリウムを用いた生物学的方法によって、ポリヌクレオチドの導入が行われる。
【0072】
上記方法により、リボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列が導入された植物組織または植物細胞から完全な植物を再分化させるには、このような形質転換植物組織または形質転換植物細胞を、再分化培地またはホルモンフリーのMS培地などにおいて培養すればよい。発根した幼植物体は、土壌に移植して栽培することにより植物体とすることができる。再分化の方法は、使用される植物組織または植物細胞の種類により異なり、適切な再分化方法の選択は、当業者によって容易になされ得る。様々な文献において、各種の植物(例えば、イネ(Fujimura,1995,Plant Tissue Culture Lett.2,74)、トウモロコシ(Shillito,1989,Bio/Technol.7,581、Gorden−Kamm,1990,Plant Cell 2,603)、ジャガイモ(Visser,1989,Theor.Appl.Genet.78,594)、タバコ(Nagata,1971,Planta 99,12)など)の再分化の方法が記載されている。
【0073】
本発明の方法によって作出された遺伝子組換え植物が、病原性生物に対する抵抗性を有しているか否かは、例えば、Methods for Isolation,Cultivation,Inoculation of Plant Pathogens,Japan Plant Protection Associationに記載されている試験方法により容易に確認し得る。例えば、イネいもち病の場合は、実施例8−1に実質的に記載のように、特定のイネ品種にその品種に罹病性のイネいもち病菌のレースを接種した場合の病斑形成や病斑面積率の程度を、原品種と組換え体とを比較することによって検定することが可能であるが、これに限定されることはない。例えば、イネいもち病の抵抗性検定については、今回の実験で使用した噴霧接種法の他に、イネの葉に接種用パンチで穴を開け、その上にいもち病菌胞子のペーストをのせて感染させるパンチ接種法、針の先にいもち病菌胞子ペーストを付けて葉を突き刺す針接種法が挙げられる。これらの接種法では、病斑は葉の傷口から広がるように発病するので、病斑の伸展長を測定することによって、抵抗性強度の検定を行い得る(例えば、K.Ohataら、Methods for Isolation,Cultivation,Inoculation of Plant Pathogens、第37−41頁、Japan Plant Protection Association(1995)を参照のこと)。また例えば、白葉枯病の場合は、実施例8−2に実質的に記載のような、白葉枯病細菌懸濁液中に抵抗性を検定する植物の組織(例えば、成葉)を浸漬し、病斑の進行距離を測定する方法、または噴霧接種法、針接種法が挙げられる。いずれの方法においても、葉全体の病斑面積率を測定することによって、発病程度を評価する(例えば、K.Ohataら、Methods for Isolation,Cultivation,Inoculation of Plant Pathogens、第37−41頁、Japan Plant Protection Association(1995)を参照のこと)。
【0074】
上記のような方法でリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を導入し、発現させることにより、病原性生物に対する抵抗性を付与または増強することができる「植物」としては、病原性生物に感染するあらゆる植物を挙げることができる。特定の実施形態では、本発明の方法に従って形質転換される植物は、単子葉植物または双子葉植物である。より詳細には、本発明の方法に従って形質転換される植物の例としては、例えば、イネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、ライムギ、パンコムギ、ジャガイモ、タバコ、ナス、トマトなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本発明の方法に従って得られる植物、またはその植物器官もしくは植物組織が抵抗性を示す「病原性生物」としては、植物に感染可能なあらゆる病原性生物、例えば、真菌類(糸状菌を含む)、細菌、ウイルスなどを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0076】
真菌類としては、イネいもち病菌、イネ紋枯病菌、イネ苗腐病菌、イネ苗立枯病菌、イネばか苗病菌、イネ黄化萎縮病菌、イネごま葉枯病菌、ムギ類さび病類菌、ムギ類うどんこ病菌、ジャガイモ疫病菌、タバコ疫病菌、タバコ灰色かび病菌、タバコ舞病菌、シバ類さび病類菌、立枯病類菌、雪腐病類菌、野菜類の疫病菌、べと病菌、うどんこ病菌、灰色かび病菌、炭そ病菌、苗立枯病菌、根こぶ病菌、カーネーション萎ちょう病菌、キク白さび病菌、ウリ類べと病菌、オオムギ黒穂病菌、ナシ赤星病菌などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
病原性細菌としては、イネ白葉枯病細菌、イネ苗立枯細菌病細菌、イネもみ枯細菌病細菌、イネゴマ葉枯病細菌、タバコ空洞病細菌、タバコ野火病細菌、各種野菜類の軟腐病細菌、斑点細菌病細菌、青枯病細菌、インゲンマメかさ枯病細菌、核果類かいよう病細菌、クワ縮葉細菌病細菌、アブラナ科植物黒腐病細菌、カンキツかいよう病細菌、トマトかいよう病細菌、ジャガイモ輪腐病細菌、ジャガイモそうか病細菌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
病原性ウイルスに起因する病害としては、イネ萎縮病ウイルス、イネ縞葉枯病ウイルス、ムギ斑葉モザイクウイルス病ウイルス、タバコモザイク病ウイルス、タバコ輪点ウイルス病ウイルス、タバコ条斑ウイルス病ウイルス、カリフラワーモザイクウイルス病ウイルス、ジャガイモモザイク病ウイルス、ジャガイモ葉巻病ウイルス、ジャガイモXウイルス病ウイルス、ジャガイモYウイルス病ウイルス、キュウリモザイク病ウイルス、キュウリ緑斑モザイク病ウイルス、トマト黄化えそ病ウイルス、ダイズ矮化病ウイルス、エンドウ茎えそ病ウイルス、ビート萎縮病ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明の方法に従って得られる植物が示す「少なくとも2つの病原性生物に対する複合病害抵抗性」とは、真菌類、細菌、ウイルスなどの分類群から選択される少なくとも2つの異なる分類に属する少なくとも2つの病原性生物に対する抵抗性を意味する。例えば、少なくとも2つの病原性生物に対する抵抗性としては、病原性真菌類と病原性細菌との組み合わせに対する抵抗性、病原性細菌と病原性ウイルスとの組み合わせに対する抵抗性、真菌類と病原性ウイルスとの組み合わせに対する抵抗性などが挙げられる。
【0080】
本発明により、植物に導入されたリボソーム不活性化タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、植物体から植物体へ種子を媒介として後代へと遺伝され得る。このため、本発明の植物体の花粉あるいは子房から形成される種子においても導入したヌクレオチド配列が存在し、遺伝形質が子孫へと受け継がれ得る。従って、本発明のリボソーム不活性化タンパク質をコードするヌクレオチド配列が導入された植物は、例えば、種子による増殖によって、病原性生物に対する抵抗性が失われることなく、増殖が可能である。また、植物組織細胞を用いた大量培養法や従来から行われている挿木、接木、株分けなどによっても、病害抵抗性が失われることなく、増殖が可能である。このような増殖によって得られた後代または子孫もまた、本発明によって包含される。
【0081】
本発明の方法に従って作出された病害抵抗性を有する植物は、各種病原性生物に対する抵抗性を有するために生産性の向上、収量の安定化、品質の向上、農薬使用量の低減化とそれによる生産コストと労働時間の低減化や環境に対する負荷の軽減に効果があると期待される。また、病害抵抗性の性質から、有機栽培農法や農薬使用が困難な発展途上国においても高い収量が確保できると考えられる。また、本発明のリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、病原性生物に対する抵抗性の機能解明、病害抵抗性を誘導するエリシターの誘導体の開発、およびリボソーム不活性化タンパク質に対する抗体を調製するための抗原を作製するために有用である。
【0082】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0083】
【実施例】
(実施例1.cDNAライブラリーの作製)
本発明のRIP cDNAを単離するためにcDNAライブラリーの作製を試みた。イネ「日本晴」のカルスをエリシター処理したcDNAライブラリーは、農業生物資源研究所より供与された(Minami,1996,PlantcellPhysiol.37,563)。ライ麦、エンバク由来のcDNAライブラリーは、サリチル酸処理を行った葉から単離したmRNAから作製した。
【0084】
ライ麦「初春」、エンバク「太豊」種子を育苗箱に播種し、温室内で発芽させた。第3葉まで生育したときに、第3葉を切り取り、0.5mMサリチル酸の入ったバットにリーフディスクにして浮かべた。3日後、サリチル酸で誘導した葉12枚(1.2g)からRNeasy Plant Mini Kit(Milipore)を用いて、200μgの総RNAを調製した。この総RNAからOligotex−dT30<Super>mRNA Purificationkit(TAKARA)を用いて17μgのmRNAを精製した。このうち10μgをcDNAライブラリーの作製に用いた。キットはZAP cDNA Synthesis Kit(Stratagene)を用いた。cDNA合成後、800bp以上のフラグメントを回収し、リンカーを結合させ、Gigapack III Gold(Stratagene)にパッケージを行い、大腸菌XL1 Blue MRF’で増幅させた。作製したライブラリーには、ライ麦、エンバクそれぞれ1.2×105pfu/ml、1.1×105pfu/mlのファージが含まれていた。
【0085】
(実施例2.イネRIP cDNAに対するプローブの作製とPCR)
既知のRIP遺伝子の塩基配列および翻訳されるアミノ酸配列を独自に解析したところ、RIP遺伝子には塩基配列が保存されている領域が存在することが明らかになった。その共通配列を元にして10個のプライマーを作製した。今回の研究に用いたプライマーはすべてO1igoExpress(AmershamPharmacia)を用いた。
【0086】
これらのプライマーを用いて、イネ「日本晴」のカルスをエリシター処理したcDNAライブラリーからPCR反応を行った。0.5μlのcDNAライブラリー中の全DNAを31μlの蒸留水に溶解し、5μlの10×PCRバッファー(ロシュ)、8μ1の2.5mM dNTP、5μlの50pmol/μl 各種プライマー、0.5μlのTaqDNAポリメラーゼ(ExpandTM High Fidelity PCR System;ロシュ)を加え、最終量50μlとし、以下のようにPCR反応を行った。反応装置はTaKaRa PCR Thermal Cycler 480(宝酒造)を用いた。反応は、1)変性95℃;1分、2)再生44℃;1分、3)伸長72℃;1分の操作を30サイクル繰り返して行った。このPCR反応を2回行い、反応液15μlを1.2% TAEアガロースゲルで電気泳動を行った。電気泳動後のゲルを0.5μg/mlの臭化エチジウム溶液で10分間染色し、紫外線下で観察して、増幅したフラグメントを全て回収した。回収したフラグメントの塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS ReadyReaction Kit(パーキンエルマージャパン)と蛍光自動DNAシークエンサー373A(パーキンエルマージャパン)を用いて決定した。
【0087】
この様にして数十のDNA増幅フラグメントの塩基配列を決定した結果、以下のプライマーを用いてPCRを行ったときに増幅される300bpのDNAフラグメントが、RIPと相同性を持っていることが判明した。
【0088】
5’プライマー 5’−GACAACMTSTACYKSGWGGGCTTCA−3’
3’プライマー 5’−CSVGACACSGTSTKGAACCGC−3’(M:A/C,S:C/G,Y:C/T,K:G/T,W:A/T,V:A/C/G)
(実施例3.イネRIP cDNAのクローニング)
エリシター処理を行ったイネカルス由来のcDNAライブラリーから、RIPcDNAのスクリーニングを行った。スクリーニングの際の基本的実験操作は、実験書Molecular Cloning第2版(Sambrook,1989 Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York)およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel,1987,John Wiley&Sons)に準じて行った。角型シャーレに大腸菌XL1 Blue MRF’で溶菌させた約2×104個のファージプラークを培養し、ナイロンメンブレン(Hybond−N+、Amersham pharmacia biotech社)にファージを転写した。ファージが転写されたナイロンメンブレンを80℃で2時間ベーキングしてDNAを固定した後、実施例2の方法に基づいて増幅させたDNAフラグメントをプローブとして用いてプラークハイブリダイゼーションを行った(Southern,1975,J.Mol.Biol.98,503)。プラークハイブリダイゼーションの検出には、AlkPhos Direct(Amersham pharmaciabiotech)を用いた。得られたシグナルに対応するプラークをSM溶液に懸濁し、さらに2次スクリーニングを行い、単独の陽性クローンを単離した。このクローンのインサート領域の塩基配列を決定すると、PCR増幅フラグメントの配列を含む既知のRIP遺伝子と類似した塩基配列を持つことが判明した(図1)。このcDNAをRIP1 cDNAと名付けた。さらにRIP1 cDNAをプローブとして用いて、エリシター処理を行ったイネカルス由来のcDNAライブラリーからRIP cDNAのスクリーニングを行った結果、RIP1とは異なる配列を持ったcDNAが単離された(図2)。このcDNAをRIP2 cDNAと名付けた。
【0089】
(実施例4)
(実施例4−1.ライムギ、エンバクRIPcDNAのクローニング)
実施例1で作製したライムギ、エンバク由来のcDNAライブラリーからRIP cDNAのスクリーニングを行った。角形シャーレに大腸菌XL1 Blue MRF’で溶菌させた約2×104個のファージプラークを培養し、ナイロンメンブレン(Hybond−N+、Amersham pharmacia biotech社)にファージを転写した。ファージが転写されたナイロンメンブレンを80℃で2時間べーキングしてDNAを固定した後、イネRIP1 cDNAをプローブとして用いてプラークハイブリダイゼーションを行った(Southern,1975,J.Mol.Bio1.98,503)。プラークハイブリダイゼーションの検出にはAlkPhos Direct(Amersham pharmacia biotech)を用いた。得られたシグナルに対応するプラークをSM溶液に懸濁し、さらに2次スクリーニングを行い、それぞれ単独の陽性クローンを単離した。これらのクローンのインサート領域の塩基配列を決定すると、イネ科RIPに相同性のある配列を有していた。ライムギ由来のRIP cDNAの塩基配列を図3に、エンバク由来のRIP cDNAの塩基配列を図4に示す。
【0090】
(実施例4−2.リボソーム不活性化タンパク質の塩基配列および推定アミノ酸配列における相同性決定)
実施例3および4−1において得られたイネRIP1、RIP2、ライムギRIPおよびエンバクRIPのcDNA、ならびに既知のリボソーム不活性化タンパク質をコードする塩基配列(オオムギRIP:Leah,R.ら,J.BIol.Chem.266,1564−1573(1991);コムギRIP:Habuka,N.ら,Plant Mol.Biol.22(1):171−176(1993);トウモロコシRIP1:Walsh,T.A.ら,J.BIol.Chem.266,23422−23427(1991);およびトウモロコシRIP2:Bass,H.W.ら,Plant Physiol.107(2):661−662(1995))を用いて、GENETYXソフトウェア(ソフトウェア開発株式会社、東京)を使用することにより、塩基配列間および推定アミノ酸配列間の相同性を決定した。塩基配列間および推定アミノ酸配列間の相同性決定の結果を、それぞれ以下の表1および2に示す。
【0091】
【表1】
Figure 0003955942
【0092】
【表2】
Figure 0003955942
(実施例5.RlP遺伝子を発現させる発現ベクターの構築)
実施例1〜4の方法でイネから2種類(RIP1,RIP2)、ライムギ、エンバクからそれぞれ1種類(ライムギRIP、エンバクRIP)のRIP cDNAを単離した。これらのRIP cDNAをイネ「どんとこい」に遺伝子導入し、イネの中でRIPを発現させるため、発現ベクターを構築した。形質転換用バイナリーベクターは、pPZP202(Hajdukiewicz,1994,Plant Mol.Bio1.25,989)を用いた。発現ベクター作製の際の基本的実験操作は、実験書Molecular Cloning第2版(Sambrook,1989 Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York)およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel,1987,John Wiley&Sons)に準じて行った。形質転換の際に用いたプラスミドは、pBluescriptSK+(Stratagene)を、大腸菌はDH5α(東洋紡)を用いた。
【0093】
pPZP202をHindII一BamHI(宝酒造)で処理し、Ligation high(東洋紡)を用いて CaMV35S改良型REXφプロモーター(Mitsuhara,1996,Plant Cell Physiol.37,49)または松由来のPSIIのクロロフィルa/b結合タンパク質(cab)をコードする遺伝子のプロモーター(cab1プロモーター)(Yamamoto,1994,Plant Cell Physiol.35,773)をライゲーションした。SacI−EcoRI(宝酒造)で処理し、Ligation high(東洋紡)を用いて、NOSターミネーター(Depicker,1982,J.Mol.Appl.Gen.1,561)をライゲーションした。BamHI−KpnI(宝酒造)で処理し、Ligation high(東洋紡)を用いて、それぞれのRIPのcDNAをセンスに組み込んだ。最後にHindII−BamHI(宝酒造)で処理し、Ligation high(東洋紡)を用いて、ハイグロマイシン耐性遺伝子(HPT:hygromycin B phosphotransferase,Gritz,1983,gene 25,179)にCaMV35Sプロモーター(Odel,1985,Nature 313,810)とNOSターミネーターを連結させた遺伝子を選抜マーカーとして導入した。以上の方法でRIPが高発現する発現ベクターを構築した(図5)。
【0094】
(実施例6.RIP遺伝子導入イネ系統の作出)
イネ、ライムギ、エンバクのリボソーム不活性化タンパク質(RIP)を高発現させる形質転換植物の作出は、アグロバクテリウムによる方法を用いた(Toki S,Plant Mol.Biol.Reporter 15,16.Hiei,1994,Plant J.6,271)。アグロバクテリウムの系統は、EHA101(Hood,1986,J.Bacteriol.168,1291)を用いた。
【0095】
実施例5で構築した発現ベクターを、エレクトロポーレーション法でアグロバクテリウムEHA101に形質転換した。エレクトロポーレーション装置はGENE PULSER(登録商標)II(BIO−RAD)を用い、導入条件を200Ω、25μF、2.5kV、0.2cmキュベットに設定した。エレクトロポーレーションを行ったアグロバクテリウムをSOC培地に懸濁し、28℃で2時間振盪培養した。この培養液を20mg/l カナマイシン、100mg/lスペクチノマイシンを含むLBプレート培地(10g/l トリプトン、5g/l 酵母エキス、10g/l 塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムでpH5.8に調整)上に拡散し、増殖した形質転換個体を選抜した。
【0096】
遺伝子導入したアグロバクテリウムを水稲品種「どんとこい」種子、または胚盤由来カルス(4週間)に感染させた。「どんとこい」種子から穎を除いて玄米とし、これを70%エタノールで1分間殺菌し、滅菌蒸留水で2回洗浄した。さらに、2.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で40分間殺菌し、滅菌蒸留水で2回洗浄した。この玄米を、カルス誘導培地(30g/l シュクロース、0.3g/l カザミノ酸、2.8g/l プロリン、2mg/l 2,4−Dを添加し、pH5.8に調整し、4g/lのゲルライトで固化させたN6培地(Chu,1974,Sci.Sinica 18,659))上に置床した。玄米を28℃明所で生育させてカルスを得た。このカルスをアグロバクテリウム感染に用いた。さらにカルス誘導培地に3日間置床した「どんとこい」種子もアグロバクテリウム感染に用いた。
【0097】
20mg/l カナマイシン、100mg/l スペクチノマイシンを含むLBプレート培地上に28℃で培養したアグロバクテリウム0.5cm四方をミクロスパテルでかき取り、10mg/l アセトシリンゴンを含むAAM培地(Toriyama,1985,Plant Sci.41,179)に懸濁した。この懸濁液をカルスに注ぎ、2分間浸漬させた。このカルスを水切りした後、10mg/l アセトシリンゴンを含むカルス誘導培地上で、28℃で3日間培養した。感染後のカルスを滅菌蒸留水で5回洗浄し、余分なアグロバクテリウムを除去した。
【0098】
アグロバクテリウムを除去したカルスを、選抜培地(50mg/l ハイグロマイシン、300mg/l カルベニシリンを含むカルス誘導培地)に28℃で2週間培養し、再び同じ培地に移し替え、さらに2週間培養した。その結果、遺伝子組換えされたカルスがハイグロマイシン耐性になり、選抜培地上で増殖した。
【0099】
増殖したカルスを50mg/l ハイグロマイシン、200mg/l カルベニシリンを含む再分化培地(30g/l シュクロース、30g/l ソルビトール、2g/l カザミノ酸、20μg/l NAA、2.2mg/l カイネチンを添加し、pH5.8に調整し、4g/lのゲルライトで固化させたMS培地(Murashige,1962,Physiol.Plant 15,473))上に移植した。再分化培地では28℃で2週間の培養を2回行い、再分化個体を選抜した。
【0100】
再分化したイネを鉢上げし、50〜100系統の再分化個体(T0)を隔離温室内で生育させた。これを図6に示す。AおよびBともに、左側が原品種「どんとこい」(WT)であり、右側がリボソーム不活性化タンパク質遺伝子導入系統(それぞれ、RIP26およびRIP52)の生育個体である。生育したRlP遺伝手組換え系統では一部に不稔、矮性化などが生じた。これらの個体は消却し、外見上は原品種とほとんど変わらない個体を耐病性検定に用いた。これらの組換え系統からT1種子を採種した。なお、これ本実施例以降、代表としてイネRIP1遺伝手組換え系統について例示するが、イネRIP2、ライムギRIP、エンバクRIPでも同等の結果が観察された。
【0101】
(実施例7.T1世代の非組換え個体の除去)
遺伝の法則からT1種子には組換え個体と非組換え個体が、3:1の割合で混合していることが示唆された。このうち、組換え個体はハイグロマイシンに対して抵抗性を有することが推測された。そこで採種したT1種子と原品種の「どんとこい」種子を50mg/l ハイグロマイシンを含み、4g/l のゲルライトで固化させたMS培地(Murashige,1962,Physiol.Plant 15,473)上で発芽させ、28℃で1週間培養した。培養後のT1種子および原品種「どんとこい」種子を図7に示す(A:原品種「どんとこい」(WT)、BおよびC:組換え系統(それぞれ、RIP26およびRIP52))。実験に使用したハイグロマイシン濃度において、原品種「どんとこい」種子はすべて、ハイグロマイシンの影響を受けて、発芽後黒変し枯死した(図7A)。T1種子は正常に生育した個体と枯死した個体に分離した。その比率は約3:1であった(図7BおよびC)。
【0102】
以上の結果から、この選抜方法によってT1世代の非組換え個体を除去できたと考えられる。また後に行ったゲノミックサザン法による分析の結果、正常に生育したT1個体にはイネ、ライムギ、エンバク由来のRIP遺伝子が導入されていることが確認できた。正常に生育したT1世代系統をシードリングケースに鉢上げし、4.5葉期になるまで生育させた。
【0103】
(実施例8)
(実施例8−1.いもち病菌の接種と耐病性検定)
いもち病菌の接種は噴霧接種法を用いた(Yaegashi,1995,Methods for Isolation,Cultivation,Inoculation of Plant Pathogens,Japan Plant Protection Association,37)。
【0104】
いもち病菌(Pyricularia oryzae Cav.:レース007)を粉末オートミール培地に移植し、26℃で培養した。菌叢がシャーレ全面を覆った段階で殺菌水を加え、絵筆で培地表面をこすり、気中菌糸を取り除いた。その後シャーレの蓋を外し、近紫外光を照射して胞子形成を行った(Furuta,1967,Plant Protection 21,160)。
【0105】
4.5葉期まで生育した原品種個体と組換え体(T1)の幼苗に、いもち病菌胞子の懸濁液(胞子数5×108/ml)を噴霧し、接種箱内で26℃で24時間接種した。接種後の原品種および組換え系統を隔離温室に移動し、病斑を観察した。この噴霧接種検定の結果を、図8(イネRIP1)、14(イネRIP2)、18(ライムギRIP)、および22(エンバクRIP)に示す。図8の写真中、AおよびBともに、左側の植物群が圃場抵抗性強の品種(トドロキワセ)、中央の植物群が圃場抵抗性中の品種(どんとこい)(WT)、右側の植物群がイネRIP1遺伝子組換え系統(それぞれ、RIP26およびRIP52)(いずれも接種3週間後)を示す。図14の写真中、14Aが圃場抵抗性強の品種(トドロキワセ)、14Bが圃場抵抗性中の品種(どんとこい)(WT)、14CがイネRIP2遺伝子組換え系統(いずれも接種3週間後)を示す。図14BおよびCは、それぞれWTおよびRIP2遺伝子組換え系統の拡大写真である。図18の写真中、AおよびBともに、左側の植物群が圃場抵抗性強の品種(トドロキワセ)、中央の植物群が圃場抵抗性中の品種(どんとこい)(WT)、右側の植物群がライムギRIP遺伝子組換え系統(それぞれ、RRIP7およびRRIP26)(いずれも接種3週間後)を示す。図22の写真中、AおよびBともに、左側の植物群が圃場抵抗性強の品種(トドロキワセ)、中央の植物群が圃場抵抗性中の品種(どんとこい)(WT)、右側の植物群がエンバクRIP遺伝子組換え系統(それぞれ、ORIP11およびORIP34)(いずれも接種3週間後)を示す。耐病性検定は病斑の形状の判定と、病斑面積率の測定を行い、以下に示す病斑指数を用いて解析を行った(Asaga,1981,J.Cent.Agric.Exp.Stn.35,51)。
【0106】
Figure 0003955942
この耐病性検定の結果を図9、15、19および23に示す。各図において、横軸は接種後日数、縦軸は病斑指数を表す。図9中、黒菱形は組換え体(1−26)、白四角は組換え体(1−49)、黒三角は組換え体(1−52)、白丸は原品種どんとこい(WT)、黒四角はトドロキワセ(T)を示す。図15中、白丸は原品種どんとこい(WT)、黒四角はトドロキワセ(T)、黒菱形は組換え体(RIP2)を示す。図19中、白菱形は原品種どんとこい(WT)、黒四角はトドロキワセ(T)、黒三角は組換え体(RRIP7)および×は組換え体(RRIP26)を示す。図23中、白丸は原品種どんとこい(WT)、黒四角はトドロキワセ(T)、黒三角は組換え体(ORIP11)および×は組換え体(ORIP34)を示す。
【0107】
この結果、組換え体では原品種と変わらない罹病性病斑が認められた。また、組換え体の中にいもち病の進行が遅延する系統が見つかった。これらの個体はいもち病の罹病性病斑が認められるものの、病斑面積率は非常に小さかった。従って、イネ、ライムギ、エンバク由来のRIP遺伝子細換え系統はいもち病に対して圃場抵抗性型の抵抗性をもたらすことが明らかになった。
【0108】
(実施例8−2.白葉枯病菌の接種と耐病性検定)
いもち病菌に対して抵抗性が確認されたイネ、ライムギ、エンバク由来のRIP遺伝手組換え系統(T0)の成苗に対して白葉枯病の接種検定を行った。白葉枯病菌(Xanthomonas campestris pv.oryzae:レース3−A)を、馬鈴薯半合成培地(馬鈴薯300g、硝酸カルシウム0.5g、リン酸水素ニナトリウム・12水和物2g、ペプトン5g、ショ糖15g、寒天20g、蒸留水1l)で増殖させた。試験管の中に蒸留水10mlを入れ、白葉枯病菌0.5cm四方を懸濁させ、接種用の懸濁液を作製した。原品種及びRlP遺伝子組換え系統(T0)の成葉の先端を白葉枯病菌の懸濁液に浸したハサミで切り取り、白葉枯病の接種を行った(Tsushima,1995,Methods for isolation,Cultivation,Inoculation of Plant Pathogens,Japan Plant Protection Association,28)。20日後、葉の先端から白葉枯病が進行した距離を測定することによって、白葉枯病に対する抵抗性を検定した。この結果を図10、16、20および24に示す。図10中、WTは原品種(どんとこい)の葉であり、RIP1−26およびRIP1−52は、それぞれ組換え系統(T0)(接種後20日)の葉である。図16中、WTは原品種(どんとこい)の葉であり、Rice RIP2−30は、組換え系統(T0)(接種後20日)の葉である。図20中、WTは原品種(どんとこい)の葉であり、Rye RIP20は、組換え系統(T0)(接種後20日)の葉である。図24中、WTは原品種(どんとこい)の葉であり、Oat RIP16は、組換え系統(T0)(接種後20日)の葉である。原品種に比べてRIP遺伝子組換え系統(T0)は白葉枯病斑の進展が遅れた(図10、16、20および24)。この耐病性検定の結果を図11、17、21および25に示す。図11において、WTは、原品種(どんとこい)、1−20、1−26、1−34および1−52は、RIP1遺伝子組換え系統である。図17において、WTは、原品種(どんとこい)、2−10、2−18、2−30および2−46は、RIP2遺伝子組換え系統である。図21において、WTは、原品種(どんとこい)、Rye4、Rye6、Rye7、Rye8、Rye10、Rye12、Rye14、Rye16、Rye18およびRye20は、ライ麦RIP遺伝子組換え系統である。図25において、WTは、原品種(どんとこい)、Oat1、Oat4、Oat5、Oat10、Oat11、Oat16、Oat22、Oat29、Oat32、Oat33はエンバクRIP遺伝子組換え系統である。これらの結果により、イネ、ライムギ、エンバク由来のRIP遺伝子組換え系統は白葉枯病に対して抵抗性をもたらすことが明らかになった。
【0109】
(実施例9.ゲノミックサザン法によるRIP遺伝子導入の確認)
原品種及び病害抵抗性が確認されたRIP遺伝手組換え系統(T0)の葉身からCTAB(Cetyltrimethylammonium bromide)法(Murray,1980,Nucleic Acids Res.8,4321)を用いてゲノミックDNAを抽出した。イネ地上部10gを液体窒素で凍結させた後、乳鉢で粉砕した。粉末状となったイネを1.5×CTAB液(1.5% CTAB,75mM Tris−HCl pH8.0,15mM EDTA pH8.0,1.05M 塩化ナトリウム)と混合し、56℃で20分間軽く浸透してDNAを溶出させた後、クロロホルム抽出を2回行ってタンパク質を除去した。この溶液に1/10容の10% CTAB、1.5容の沈殿溶液(1% CTAB,50mM Tris−HCl pH8.0,10mM EDTA pH8.0)を加えDNAを析出した。このDNAを、1M 塩化ナトリウムに溶解し、RibonucleaseAでRNAを分解した後、エタノール沈殿を行ってゲノミックDNAを抽出した。
【0110】
抽出したゲノミックDNA(10μg)を制限酵素BglII、EcoRV、NdeI、EcoRIで処理し、1.2%アガロースゲルで18時間電気泳動を行った。泳動後のゲルを加水分解液(0.25M HCl溶液)に10分間、アルカリ変性溶液(1.5M NaOH、0.5M NaCl)に30分間浸漬して軽く振盪した。その後、アルカリ転写溶液(0.4M NaOH)を用いてDNAをナイロンメンブレン(Hybond−N+、Amersham pharmacia biotech社)に転写した。ゲノミックDNAが転写されたナイロンメンブレンを80℃で2時間べ一キングしてDNAを固定した後、それぞれのRIP cDNAをプローブとして用いてゲノミックサザンハイブリダイゼーションを行った(Southern,1975,J.Mol.Biol.98,503)。サザンハイブリダイゼーションの検出には、AlkPhos Direct(Amersham pharmacia biotech)を用いた。洗浄条件は、ECL(Enhanced Chemiluminescence)の場合には、0.2×SSC濃度の洗浄液を使用し、Alkphos(アルカリホスファターゼ)の場合には、供給業者の推奨するプロトコールに記載された洗浄液を用いて、55〜60℃で洗浄を行った。
【0111】
この結果を図12(A〜C)に示す。図12A〜C中、それぞれ、レーンMは1kb DNA ladder、レーン1はBglII処理、レーン2はEcoRV処理、レーン3はNdeI処理、レーン4はEcoRI処理を示す。
【0112】
サザンハイブリダイゼーションの結果、原品種からはRIPプローブとハイブリダイゼーションしたバンドが1つ(イネRIP1、RIP2)もしくは全く確認されなかった(ライムギ、エンバクRIP)のに対し、組換え個体からは1〜2本のバンドが検出された。従って、これらの組換え系統には少なくとも1コピーのRIP遺伝子が導入されていることが明らかになった。
【0113】
(実施例10.ノーザン法によるRIP mRNA発現の確認)
原品種及びRIP遺伝子組換え系統(T0)の葉身から、CTAB/LiCl法で総RNAを抽出した(Chang,1993,Plant Mol.Biol.Report 11,113)。イネ地上部2gを液体窒素で凍結させた後、乳鉢で粉砕した。粉末状となったイネを10容の2×CTAB液(2% CTAB,100mM Tris−HCl pH9.5,20mM EDTA,1.4M 塩化ナトリウム,1% メルカプトエタノール)と混合し、60℃で10分間軽く浸透してRNAを溶出させた後、クロロホルム抽出を2回行ってタンパク質を除去した。この溶液に1/4容の10M 塩化リチウムを加えRNAを析出した。RNAをTE(10mM Tris−HCl pH8.0,1mM EDTA pH8.0)に溶解させ、フェノール/クロロホルム抽出処理を行った後、上記方法で塩化リチウム抽出をもう一度行い、総RNAを単離した。
【0114】
単離した総RNA(30μg)を6.3% ホルムアルデヒドを含む1.2%アガロース変性ゲルで電気泳動し、20×SSC(3M 塩化ナトリウム、300mM クエン酸三ナトリウム二水和物)を用いて総RNAをナイロンメンブレン(Hybond−N+,Amersham pharmacia biotech社)に転写した。総RNAが転写されたナイロンメンブレンに、導入したそれぞれのRIP cDNAをプローブとして用いて、ノーザンハイブリダイゼーションを行った(Alwine,1977,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 74,5350)。ノーザンハイブリダイゼーションの検出には、AlkPhos Direct(Amersham pharmacia biotech)を用いた。
【0115】
これらの結果を、図13(A〜D)に示す。AおよびCは、総RNA像であり、BおよびDはノーザンハイブリダイゼーション像を示す。A〜Dのいずれも、レーンの左から右の順に、M:1kb DNA ladder、W:原品種、26および52:それぞれ、イネRIP1遺伝子導入系統を示す。
【0116】
ノーザンハイブリダイゼーションの結果、原品種からはRIPプローブとハイブリダイゼーションしたバンドが確認されなかったのに対し、いもち病、白葉枯病に対する抵抗性を示した組換え系統から約1,500bpのバンドが確認できた(図13:矢印)。従って、これらの組換え系統にはRIP mRNAが発現していることが明らかになった。
【0117】
【発明の効果】
本発明により、種々の病原性生物に対する抵抗性を与える遺伝子、この遺伝子を含む発現カセット、この発現カセットを含むベクター、このベクターを保持する植物細胞、この植物細胞を再生して得られた植物体が提供され、さらに病原性生物に対して抵抗性の植物を作出する方法が提供される。
【0118】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、イネのリボソーム不活性化タンパク質(RIP1)cDNAの塩基配列及び翻訳されるアミノ酸配列である。
【図2】図2は、イネのリボソーム不活性化タンパク質(RIP2)cDNAの塩基配列及び翻訳されるアミノ酸配列である。
【図3】図3は、ライムギのリボソーム不活性化タンパク質(RIP)cDNAの塩基配列及び翻訳されるアミノ酸配列である。
【図4】図4は、エンバクのリボソーム不活性化タンパク質(RIP)cDNAの塩基配列及び翻訳されるアミノ酸配列である。
【図5】図5は、RIP遺伝子の発現ベクター(pPZP202)の構築を示す模式図である。
【図6】図6は、RIP遺伝子組換え系統(イネRIP1組換え系統)の形態を示す生物形態写真である。
【図7】図7は、組換え系統T1種子のハイグロマイシン選抜(イネRIP1組換え系統)の形態を示す生物形態写真である。
【図8】図8は、いもち病(レース007)の噴霧接種検定(イネRIP1組換え系統)の結果を示す生物形態写真である。
【図9】図9は、組換え系統のいもち病に対する抵抗性程度(イネRIP1組換え系統)の結果を示すグラフである。
【図10】図10は、白葉枯病の接種検定(イネRIP1組換え系統)の結果を示す生物形態写真である。
【図11】図11は、白葉枯病の接種検定(イネRIP1組換え系統)の結果を示すグラフである。
【図12】図12は、ゲノミックサザン法による導入遺伝子の確認(イネRIP1組換え系統)を示す電気泳動図である。
【図13】図13は、ノーザン法によるRIPmRNAの発現調査(イネRIP1組換え系統)を示す電気泳動図である。
【図14】図14は、いもち病(レース007)の噴霧接種検定(イネRIP2組換え系統)の結果を示す生物形態写真である。
【図15】図15は、組換え系統のいもち病に対する抵抗性程度(イネRIP2組換え系統)の結果を示すグラフである。
【図16】図16は、白葉枯病の接種検定(イネRIP2組換え系統)の結果を示す生物形態写真である。
【図17】図17は、白葉枯病の接種検定(イネRIP2組換え系統)の結果を示すグラフである。
【図18】図18は、いもち病(レース007)の噴霧接種検定(ライムギRIP組換え系統)の結果を示す生物形態写真である。
【図19】図19は、組換え系統のいもち病に対する抵抗性程度(ライムギRIP組換え系統)の結果を示すグラフである。
【図20】図20は、白葉枯病の接種検定(ライムギRIP組換え系統)の結果を示す生物形態写真である。
【図21】図21は、白葉枯病の接種検定(ライムギRIP組換え系統)の結果を示すグラフである。
【図22】図22は、いもち病(レース007)の噴霧接種検定(エンバクRIP組換え系統)の結果を示す生物形態写真である。
【図23】図23は、組換え系統のいもち病に対する抵抗性程度(エンバクRIP組換え系統)の結果を示すグラフである。
【図24】図24は、白葉枯病の接種検定(エンバクRIP組換え系統)の結果を示す生物形態写真である。
【図25】図21は、白葉枯病の接種検定(エンバクRIP組換え系統)の結果を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 白葉枯病細菌(Xanthomonas campestris)に対して抵抗性を有する植物を作出するための方法であって、以下からなる群より選択されるリボソーム不活性化タンパク質(RIP)をコードするポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1の146〜955位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (b)該(a)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (c)配列番号3の54〜899位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (d)該(c)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (e)配列番号5の35〜877位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (f)該(e)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (g)配列番号7の37〜843位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (h)該(g)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (i)配列番号2の1〜270位に記載されるアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (j)(i)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
    (k)配列番号4の1〜282位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (l)(k)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
    (m)配列番号6の1〜281位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (n)(m)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
    (o)配列番号8の1〜269位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;または
    (p)(o)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド、
    を含む発現カセットを含む発現ベクターを、植物細胞に導入する工程を包含する、方法。
  2. いもち病菌(Pyricularia oryzae)に対して抵抗性を有する植物を作出するための方法であって、以下からなる群より選択されるリボソーム不活性化タンパク質(RIP)をコードするポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1の146〜955位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (b)該(a)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (c)配列番号3の54〜899位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (d)該(c)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (e)配列番号5の35〜877位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (f)該(e)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (g)配列番号7の37〜843位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (h)該(g)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (i)配列番号2の1〜270位に記載されるアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (j)(i)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
    (k)配列番号4の1〜282位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (l)(k)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
    (m)配列番号6の1〜281位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (n)(m)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
    (o)配列番号8の1〜269位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;または
    (p)(o)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド、
    を含む発現カセットを含む発現ベクターを、植物細胞に導入する工程を包含する、方法。
  3. 白葉枯病細菌(Xanthomonas campestris)といもち病菌(Pyricularia oryzae)との組み合わせに対して抵抗性を有する植物を作出するための方法であって、以下からなる群より選択されるリボソーム不活性化タンパク質(RIP)をコードするポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1の146〜955位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (b)該(a)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (c)配列番号3の54〜899位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (d)該(c)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (e)配列番号5の35〜877位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (f)該(e)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (g)配列番号7の37〜843位に記載のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (h)該(g)に示すポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、かつ植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド
    (i)配列番号2の1〜270位に記載されるアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (j)(i)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
    (k)配列番号4の1〜282位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (l)(k)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
    (m)配列番号6の1〜281位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (n)(m)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド;
    (o)配列番号8の1〜269位に記載のアミノ酸配列を有するイネのリボソーム不活性化タンパク質をコードするポリヌクレオチド;または
    (p)(o)に示すアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の挿入、欠失、および/もしくは置換を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、ここで該タンパク質は植物病原性生物のrRNAに対するN−グリコシダーゼ活性を有する、ポリヌクレオチド、
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