JP3950689B2 - 血液プール信号抑制により心筋梗塞検出を改良するための方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の背景】
本発明は、全般的には磁気共鳴イメージング法(MRI)に関し、さらに詳細には、梗塞を起こした心筋組織を検出する際の感度上昇を達成するための新規のパルスシーケンスを含む方法及び装置に関する。
【0002】
MRIでは、強い磁場内で被検体に対して印加する無線周波数パルス及び磁場傾斜を利用して観察可能な画像を作成している。人体組織内のプロトンなど、正味で核磁気モーメントを有する原子核を含む物質に均一な磁場(偏向磁場B0)をかけると、組織内のスピンの個々の磁気モーメントは、この偏向磁場(z方向に向いていると仮定している)と整列しようして、この磁場方向の周りをラーモア周波数として知られる特性周波数で歳差運動することになる。この物質(または組織)にラーモア周波数に等しい周波数で時間変化する磁場(励起磁場B1)がかけられると、正味の整列モーメント(すなわち、「縦方向磁化」)Mzは、xy平面内に来るように倒され(すなわち、「傾けられ(tipped)」)、正味の横方向磁気モーメントMtが生成される。励起信号B1を停止させた後(励起したスピンが基底状態まで戻るに連れて)励起したスピンにより信号が放出され、さらにこの信号を受信し処理して画像を形成することができる。
【0003】
これらの信号を用いて画像を作成する際には、磁場傾斜(Gx、Gy及びGz)が利用される。典型的には、画像化しようとする領域は、使用する具体的な位置特定方法に従ってこれらの傾斜を変更させている一連の計測サイクルによりスキャンしている。得られたMR信号はディジタル化され処理され、よく知られている多くの再構成技法のうちの1つを用いて画像が再構成される。
【0004】
心筋梗塞は心臓の一部分から酸素が奪われるような心臓症状の一種である。心筋梗塞の大きさは患者の転帰/回復と強い相関を有していることが証明されている。心筋潅流イメージングは、心筋組織を通るトレーサまたは造影剤の通過を追跡することにより心臓への血流が異常である(すなわち、障害された)領域を検出している一技法である。血流が障害された領域、すなわち潅流が悪い領域は造影剤またはトレーサが存在しないように描出され、また潅流が正常な組織は、造影剤またはトレーサが存在するように描出される。
【0005】
組織(血液)潅流のイメージングは、MRアンギオグラフィ(MRA)などの血管構造内の血流に関するイメージングと密接な関連がある。MRAの場合と同様に、MR潅流イメージングは、ガドリニウム・キレートなどの造影剤をある量(従来の場合では、静脈内注射により)血流内に注入することにより実施される。投与する造影剤の体積または質量は、造影剤が比較的大きな体積送出率(通常は、1〜5ml/sec)で厳密な量で送出されるため、典型的にはボーラスと呼ばれている。様々な薬剤により、血液のT1を低下させて検出したMR信号を強調させることや、血液のT2を低下させて検出したMR信号を減衰させることがある。ボーラスが体内を通過すると、強調(または、減衰)を受けた信号により、潅流がある組織で観測される信号強度が上昇(または、低下)するが、潅流がない組織では上昇(または、低下)が起こらない。造影剤の到達前に収集した基準画像と比較したときの観測された組織での信号変化の程度を用いると組織潅流の程度を決定することができる。潅流計測は造影剤の第1通過中の基準間での組織信号強度の変化に基づいているため、そのMR信号強度は、潅流による信号強度変化の主要メカニズムに関係しない他の要因からの変動を受けないようにすることが重要である。こうした変動要因の1つは、MRパルスシーケンスのRF励起パルスにより横方向面まで傾けられている縦方向磁化Mzの大きさである。各励起の後に、縦方向磁化は低下し、画像化している具体的なスピンの定数T1により決まる速度でその大きさが回復する。縦方向磁化が完全に回復する前に別のパルスシーケンスを送出すると、縦方向磁化を完全に回復させるような十分な長さだけ遅延させた場合のパルスシーケンスで生成される信号と比べ収集したMR信号の大きさが小さくなってしまう。さらに、この遅延時間は患者の心拍数の変動により様々となるため、利用可能な縦方向磁化の量は心拍動ごとに変動することになる。これにより潅流と無関係に心筋組織の信号強度にゆらぎ(すなわち、変動)が生じることになる。フリップ角が90度の飽和RFパルスを使用することにより縦方向磁化がゼロに設定されることが知られている。したがって、飽和RFパルス後で画像化の前に事前に定めたある一定時間だけ待機させることにより、縦方向磁化の再生成を組織のスピン−格子緩和時間T1に依存させるようにしている。造影剤はT1に影響を及ぼすため、飽和RFパルスを使用することにより、心筋組織の領域内に存在する造影剤濃度には依存するが患者心拍数の変動には依存しないような信号強度が得られる。同じ技法はT2やT2 *を短縮させる薬剤にも利用することができる。
【0006】
典型的には、潅流イメージングは、綿密に最適化したパルスシーケンス・パラメータを用いて血流を通る造影剤/ボーラスの第1通過中に画像を迅速に収集するために使用される一技法である。心筋潅流イメージングの目的は、心筋血流の分布異常を検出しかつ特徴付けすることである。潅流の欠損は、血流が十分でない部位を表している。こうした潅流欠損では、この心筋組織の領域はまだ生きており血液の供給を幾らか受け続けているような一過性である場合や、この領域への血流が心筋組織に対する細胞損傷(すなわち、心筋梗塞)を起こさせる程に低下しているような急性の場合がある。死んでいる梗塞組織は細胞変化を受け、心筋組織や筋肉が収縮する能力に障害を及ぼす。したがって、心筋梗塞の領域は心臓壁の動きが異常な静止状態にあることにより特徴付けられることが多い。組織がまだ生きているような状態では、この領域への血流を増やせば、心筋組織は正常な収縮運動を開始する。この種の特徴は、その組織がまだ生きているが極めて潅流が低下している仮死状態(すなわち、休眠状態)の心筋層に起因する。
【0007】
患者の取り扱い方針をより適正に決定するためには、この細胞損傷や心筋梗塞の部位が評価されることが多い。幾つかの場合では、梗塞組織の周囲において、何らかの機能の回復が可能である。しかし、損傷により微小血管閉塞を起こしている領域では、回復は不可能である。心筋梗塞領域の画像化を使用することにより心臓障害の範囲の評価が可能となり、またある具体的な治療措置に対する患者の応答をモニタリングすることができる。
【0008】
心筋梗塞が存在するか否かを評価するためには、ルーチンとして、反転回復パルスシーケンスを利用してコントラスト・ボーラス(典型的には、0.1から0.2mmol/kgのガドリニウム造影剤)の投与に続いて正常な心筋組織を抑制させている。この利用法では、ボーラスは血液のT1時間を短縮させる作用がある。
【0009】
造影剤の第1通過中に静止状態下で、潅流が異常な領域により梗塞領域を特定することができる。すなわち、血液の潅流が極めて少ない梗塞の部分は正常で健全な心筋層と比較してより低強度となる。造影剤の再循環に伴って、患部領域への限られた血流や細胞外の部分への拡散により心筋梗塞の場所に造影剤が搬送される。したがって、梗塞組織による造影剤の取り込みは、正常で健全な心筋組織と比べてより低速度で起こる。造影剤の取り込みが遅いため、梗塞部分からの造影剤の排出も遅くなる。このため梗塞領域が造影剤の第1通過の間では低強度であり、ある時点では等強度に達し、さらに最初の造影剤投与に続いて十分な時間経たある時点(遅延時間)において、正常で健全な心筋層と比べてより高強度になるという現象が起こる。
【0010】
ガドリニウム造影剤は梗塞組織に集中することになるため、反転回復磁化準備パルスシーケンスは、正常で健全な心筋組織からの信号を抑制し梗塞部分で大きな信号強度を有する領域を生じさせるような反転時間TIをもつように設計している。しかし、血液内の造影剤濃度は梗塞組織内よりも低いがまだ比較的高いため、心室血液プールは梗塞組織と比較して依然として高い信号強度を示すことになり、心筋の心室血液プール洞との境界の描出は困難である。すなわち、高速傾斜エコー・パルスシーケンスや同様の技法を使用して収集した血液のMR画像は、その血管構造と隣接する静止組織に対して大きな信号強度をもつ血液を表示することになる。しかし、心筋梗塞の範囲の診断においては、梗塞組織の辺縁(特に心内膜部分)と心室血液洞との間の識別が可能であることは重要である。
【0011】
したがって、正常な心筋組織や左心室内の血液の低信号強度バックグラウンドに対して心筋境界を正確に画定するためには、血液プール信号を抑制した心筋梗塞の検出が可能な方法及び装置があることが望ましい。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、梗塞心筋組織を検出するように画像を収集するための、上述の問題を解決した技法に関する。
【0013】
本発明は、梗塞心筋層の心室血液プールからの描出を改良するために、ゲート制御式の分割式k空間傾斜エコー収集で反転回復パルスと連携して用いられる血液抑制パルスを使用することを含む。本技法は、画像化スライスを覆うように位置させた阻止帯域を有する切込み付き反転RFパルスを使用している。この方式では、画像化スライスのコントラストは血液抑制パルスにより影響を受けない。反転時間は、切込み付きRFパルスの通過帯域で反転させた血液が傾斜エコー読み出しセグメントの時点でヌル点にあるかまたはヌル点の近くに来るように選択される。梗塞部分での造影剤濃度は、造影剤の投与後約5〜15分で正常で健全な心筋層と比べてより高濃度になると予測される。血液内の造影剤濃度は正常で健全な心筋層の濃度より高いため、心室血液の信号強度は正常な心筋層の強度より大きい。梗塞組織と血液の間での造影剤濃度の比は、幾つかの生理学的要因により影響を受けるためあまり良好に規定されない。心室血液内の造影剤の濃度は梗塞組織の濃度と少なくとも同程度の高さであり、この両組織が同じT1緩和時間と同じ信号強度を有するものと仮定するのが安全である。
【0014】
したがって、心室の血液からの信号は抑制し梗塞領域からの信号は抑制しないような技法を利用することが望ましい。従来のスライス選択反転パルスでは血液からの信号も梗塞組織からの信号もヌルにしてしまうことになる。この問題に対する解決法の1つでは、血液を抑制させ、梗塞部分からの信号は比較的抑制を受けないままにした新規の方式が必要である。
【0015】
切込み付き反転パルスは、画像化スライスの外部の血液のスピンを反転させ、一方画像化スライス内のスピンには影響を与えないようにしている。切込み付き反転パルスを印加した後の、コントラスト強調した血液からの信号をヌルにするのに必要な時間に対して選択したある時点において、画像化スライス範囲内の血液はこのスライスの外部からのスピンで置き換えられることになり、これにより、梗塞部分からの信号に影響を及ぼさずに血液抑制を達成することができる。
【0016】
本発明の一態様では、血液プール抑制によりMR画像を収集する方法は、患者の血流内に造影剤を投与すること、次いである時間経過後に、スライス選択反転パルス及び切込み付き反転パルスを含んだパルスシーケンスを印加すること、を含む。スライス選択反転パルスは、心筋組織を抑制するように設計しており、この後に、関心領域の周りの血液プールを抑制するように設計した切込み付き反転パルスが続いている。次いで、関心領域内でMRデータを収集することができ、さらに収集したデータから心筋梗塞の存在を評価するためのMR画像を再構成することができる。切込み付き反転RFパルスのために、画像化スライスの外部領域にある血液からの縦方向磁化は、MRデータを収集した時点では画像化スライスの外部にあってこの特定の関心領域に流入する血液からの信号が抑制されるような方式で影響を受けるようにすることが好ましい。
【0017】
本発明の別の態様では、少なくとも1つの主要スライス選択反転RFパルスと、1つの切込み付き反転RFパルスと、少なくとも1つのイメージングRFパルスと、を有するMRパルスシーケンスを開示する。この主要スライス選択反転RFパルスは画像スライスパルスと比べてより広い通過帯域幅を有している。切込み付き反転RFパルスは、主要スライス選択反転RFパルスの後に送信されると共に、主要スライス選択反転RFパルスに一致した阻止帯域を有している。血液の縦方向磁化がヌル点に近づいて画像化スライス内の血液からの信号が実質的に低下した時点で、通過帯域からの励起された血液が画像化スライス領域に流入できるように、イメージングRFパルスを切込み付き反転RFパルスから反転時間TIBSPだけ離間させているような分割式k空間傾斜エコー・イメージングの分割収集が使用されている。
【0018】
本発明のさらに別の態様では、スライス選択反転パルスを送信し正常な心筋組織からの信号を抑制すること、次いで所望のイメージング・スライスに流入する血液からの信号が抑制されるように所望のイメージング・スライスの外部領域が反転するように選択した反転時間を有する切込み付き反転RFパルスを送信すること、を実行するようにプログラムされたコンピュータを有するMRI装置で使用されるコンピュータ・システムを開示する。次いで、励起RFパルスの送信後に所望のイメージング・スライスから、正常な心筋組織及び血液の両者からの信号を抑制しているデータを収集し、梗塞した心筋組織を強調している。
【0019】
本発明のその他の様々な特徴、目的及び利点は、以下の詳細な説明及び図面より明らかとなろう。
【0020】
【発明の実施の形態】
図面では、本発明を実施するように目下のところ企図されている好ましい実施の一形態を図示している。
【0021】
図1を参照すると、本発明を組み込んでいる好ましいMRIシステム10の主要コンポーネントを表している。本システムの動作は、キーボードその他の入力デバイス13、制御パネル14及びディスプレイ16を含むオペレータ・コンソール12から制御を受けている。コンソール12は、オペレータが画像の作成及びスクリーン16上への画像表示を制御できるようにする独立のコンピュータ・システム20と、リンク18を介して連絡している。コンピュータ・システム20は、バックプレーン20aを介して互いに連絡している多くのモジュールを含んでいる。これらのモジュールには、画像プロセッサ・モジュール22、CPUモジュール24、並びに当技術分野でフレーム・バッファとして知られている画像データ・アレイを記憶するためのメモリ・モジュール26が含まれている。コンピュータ・システム20は、画像データ及びプログラムを記憶するためにディスク記憶装置28及びテープ駆動装置30とリンクしており、さらに高速シリアル・リンク34を介して独立のシステム制御部32と連絡している。入力デバイス13は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチスクリーン、光学読取り棒、音声制御器、その他同様のデバイスを含むことができ、また入力デバイス13は、対話式の幾何学的指定をするために使用することができる。
【0022】
システム制御部32は、バックプレーン32aにより互いに接続させたモジュールの組を含んでいる。これらのモジュールには、CPUモジュール36や、シリアル・リンク40を介してオペレータ・コンソール12に接続させたパルス発生器モジュール38が含まれる。システム制御部32は、実行すべきスキャン・シーケンスを指示するオペレータからのコマンドをリンク40を介して受け取っている。パルス発生器モジュール38は、各システム・コンポーネントを動作させて所望のスキャン・シーケンスを実行させ、発生したRFパルスのタイミング、強度及び形状、並びにデータ収集ウィンドウのタイミング及び長さを指示しているデータを発生させている。パルス発生器モジュール38は、スキャン中に発生させる傾斜パルスのタイミング及び形状を指示するために、1組の傾斜増幅器42と接続させている。パルス発生器モジュール38はさらに、患者に接続した多数の異なるセンサからの信号(例えば、患者に装着した電極からのECG信号)を受け取っている生理学的収集制御器44から患者データを受け取っている。また最終的には、パルス発生器モジュール38はスキャン室インタフェース回路46と接続させており、スキャン室インタフェース回路46はさらに、患者及びマグネット系の状態に関連する様々なセンサからの信号を受け取っている。このスキャン室インタフェース回路46を介して、患者位置決めシステム48はスキャンのために患者を所望の位置に移動させるコマンドを受け取っている。
【0023】
パルス発生器モジュール38が発生させる傾斜波形は、Gx増幅器、Gy増幅器及びGz増幅器を有する傾斜増幅器システム42に加えられる。各傾斜増幅器は、収集した信号の空間的エンコーディングに使用する磁場傾斜を生成させるように全体として指定されているアセンブリ内の対応する物理的傾斜コイル50を励起させている。傾斜磁場コイル・アセンブリ50は、偏向用マグネット54及び全身用RFコイル56を含んでいるマグネット・アセンブリ52の一部を形成している。システム制御部32内の送受信器モジュール58は、RF増幅器60により増幅を受け送信/受信スイッチ62によりRFコイル56に結合しているパルスを発生させている。患者内の励起された原子核が放出して得た信号は、同じRFコイル56により検知し、送信/受信スイッチ62を介して前置増幅器64に結合させることができる。増幅されたMR信号は、送受信器58の受信器部分で復調され、フィルタ処理され、さらにディジタル化される。送信/受信スイッチ62は、パルス発生器モジュール38からの信号により制御し、送信モードではRF増幅器60をコイル56と電気的に接続させ、受信モードでは前置増幅器64を電気的に接続させる。送信/受信スイッチ62によりさらに、送信モードと受信モードのいずれに関しても同じ単独のRFコイル(例えば、表面コイル)を使用することが可能となる。
【0024】
RFコイル56により取り込まれたMR信号は送受信器モジュール58によりディジタル化され、システム制御部32内のメモリ・モジュール66に転送される。スキャンが完了すると、未処理のk空間データのアレイがメモリ・モジュール66に収集されている。以下でより詳細に説明することにするが、この未処理のk空間データは、各画像を再構成させるように別々のk空間データ・アレイの形に配列し直している。さらに、これらの各々は、データをフーリエ変換して画像データのアレイにするように動作するアレイ・プロセッサ68に入力される。この画像データはシリアル・リンク34を介してコンピュータ・システム20に送られ、コンピュータ・システム20において画像データはディスク記憶装置28内に記憶される。この画像データは、オペレータ・コンソール12から受け取ったコマンドに応じて、テープ駆動装置30上にアーカイブしたり、画像プロセッサ22によりさらに処理してオペレータ・コンソール12に伝達したりディスプレイ16上に表示させたりすることができる。
【0025】
本発明は、MR画像を取得するための上記で参照したNMRシステム、あるいは同様の任意のシステムや同等のシステムでの使用に適した方法及びシステムを含む。
【0026】
図2を参照すると、ECGサイクル102のR−R間隔を基準として各種のRFパルスの相対的な時間位置を示している、パルスシーケンス100の無線周波数(RF)セクションを表している。送出される第1のRFパルスはスライス選択反転パルス104であって、このスライス選択反転パルス104のピークから画像収集108のための第1の励起RFパルス106のピークまでで計測した反転時間TIを有している。スライス選択反転パルス104は、画像化スライスのセクション厚の1.0〜3倍のセクション厚をもつように設計されている(これについては、図3を参照しながら説明することにする)。スライス選択反転パルスは、実施の一形態では、概ね100〜450msecの反転時間をもつように送出することが好ましい。この反転時間は正常な心筋層からの信号をヌルにするように選択されると共に、使用する造影剤濃度(正常で健全な心筋層内の残留造影剤濃度に影響を及ぼす)、並びに最初の造影剤投与からの遅延時間に応じて様々な値となる。
【0027】
スライス選択反転パルス104を送信した後、画像化する関心対象スライスの外部にある血液からの縦方向磁化を反転させるための切込み付きRF反転パルス110を送信する。切込み付きRF反転パルスは血液抑制パルスともいい、概ね120〜150msec(実施の一形態の場合)の反転時間TIBSPを有することが好ましい。この方式では、画像化する関心対象スライスの外部にある血液の縦方向磁化はゼロ(すなわち、ヌル)を通過して反転状態から復帰する。このTIBSP時間内で血流は、画像化する関心対象スライスの外部の血液が画像スライスを収集する時点でこの領域に流入し血液の縦方向磁化がヌル点近くに来るような十分な血流であると予測される。この拡張領域により画像スライス内の血液からの信号がかなり低減される。
【0028】
上で言及したように、パルスシーケンス100は、データ108を収集するために少なくとも1つの(しかし、好ましくは多数の)励起RFパルス112も含んでいる。データの収集は心拡張期の途中の領域で実施することが好ましい。さらに、データは患者の単一の呼吸停止の間に収集することが好ましい。パルスシーケンス100の励起RFパルス112は、周知の分割式k空間傾斜エコー・イメージング技法に属する。上述の技法は2次元収集方式を参照しながら説明したが、複数の心拍周期に及ぶ分割式収集による3次元画像収集シーケンスにも利用可能である。
【0029】
ここで図3を参照すると、主要スライス選択反転パルス104、切込み付き血液抑制パルス110及び画像化スライス106の相対的な空間位置とセクション厚を表している。先ず、スライス選択反転RFパルス104の通過帯域116の幅114は、反転時間TIの間での画像化スライスの心臓及び呼吸運動に対応できるように選択することに留意されたい。したがってこの通過帯域116は、画像化セクション厚118の概ね1〜3倍、またはこれ以上となるように選択する。切込み付きRF抑制パルス110は、主要スライス選択反転RFパルス104の通過帯域116と一致した阻止帯域120を有している。切込み付きRFパルス110の阻止帯域120の幅122は、スライス選択反転パルス104の通過帯域116の幅とほぼ同じ大きさとする。切込み付きRFパルス110の通過帯域124は、データ収集中に画像化スライスの関心領域に流れ込むことができる血液を含むように画像化スライス106の外部領域を反転させるのに十分な大きさとする。血液抑制のための反転時間は正常な心筋組織抑制で使用する反転時間より短いため、血液抑制パルス110の反転時間はスライス選択反転RFパルス104の反転時間より短くなる。血液抑制パルス110の反転時間ではさらに、最初の造影剤投与後の時間、並びに投与量を考慮に入れる必要がある。さらに、この切込み付きRF血液抑制パルス110は180度のフリップ角を有しているが、実施の一形態では、90度〜180度のフリップ角を有することも可能であることにも留意されたい。
【0030】
血液抑制のために切込み付きRFパルス110を印加することにより正常な心筋組織抑制のための主要スライス選択反転パルス104が影響を受けることはない。したがって、コントラスト強調した血液と正常な心筋層の両者に対して必要な各反転時間を決定するのに使用する式同士は分離されており独立している。正常で健全な心筋層のヌル化を達成させるのに必要な式はよく知られており、次式で与えられる。
【0031】
Mz(t)=MZ,EQcosα exp(−t/T1)+M0(1−exp(−t/T1)) (式1)
ここで、Mz(t)は画像収集の時点の縦方向磁化、MZ,EQは画像収集後で反転回復RFパルス印加直後の平衡縦方向磁化、αは反転回復RFパルスのフリップ角、M0は熱平衡縦方向磁化、T1はスピン−格子緩和時間、またtは反転パルス後の時間である。上述した技法では心筋の式と血液抑制の式が分離しているため、式1は一般式であり心筋抑制と血液抑制の両方に適用可能であることに留意されたい。
【0032】
本発明は梗塞を起こした心筋組織の存在を検出するのに有効な血液抑制技法となるように示してきた。血液抑制RFパルスを用いないと、強調した梗塞心筋組織と心室血液腔とを識別するのが困難である。この血液抑制技法を用いると、梗塞が起きた組織の心内膜境界を明瞭に描出することができ、これにより心筋梗塞の範囲をより適正に評価することが可能となる。
【0033】
したがって、本発明は、血液プール抑制を伴うMRイメージングの方法であって、患者の血流内に造影剤を投与すること、次いでスライス選択反転RFパルス及び切込み付き反転RFパルスを有するパルスシーケンスを印加することを含んでいる方法を含む。ガドリニウム造影剤のコントラスト・ボーラスで0.1〜0.2mmol/kgの投与量では、正常心筋層の抑制のためには造影剤投与後5〜15分の間待機することが好ましい。このスライス選択RFパルスは心筋組織を抑制するように設計しており、さらに血液プールを抑制するように設計した切込み付き反転RFパルスが後に続く。血液プール信号の抑制は、データを収集する領域よりもより大きな領域で実施し、MRデータの収集時にこの領域に流入した血液をヌルにすることが好ましい。次いで、心筋梗塞の存在を評価するためのMR画像を収集したMRデータから再構成することができる。この技法は、梗塞が起きた心筋組織を検出する感度を上昇させるだけではなく、梗塞が起きた組織の心内膜境界と心室腔との識別を大幅に改善することができる。
【0034】
本発明はさらに、図1を参照しながら開示したようなMRIシステムを制御するようにプログラムされていると共に、図2及び3を参照しながら開示したようなパルスシーケンスを印加するようにプログラムされているコンピュータを含む。すなわち、このコンピュータは、正常な心筋組織からの信号を抑制するようにスライス選択反転パルスを送信し、次いで所望のイメージング・スライスに流入する血液からの信号も抑制されるように所望のイメージング・スライスの内部と外部にある領域を反転させるように選択した反転時間を有する切込み付き反転RFパルスを送信するようにプログラムされている。このコンピュータはさらに、励起RFパルスを送信し、次いで正常な心筋組織と血液の両方からの信号が抑制されているデータを所望のイメージング・スライスから収集させるようにプログラムされている。反転遅延時間(TI及びTIBSP)を短縮させるためには、90度から180度までのフリップ角を有する部分的反転RFパルスを効果を失うことなく使用することができる。
【0035】
提示した本技法を使用した実験データでは、血液抑制を伴わない画像に対して著しい改善が得られた。概ね4分の間をおいて同じ対象から2組の画像を収集した。第1組の画像は血液抑制を行わず、一方第2組の画像には本発明の血液抑制技法を利用した。得られた両画像から、血液信号の大幅な低下が見られ、また血液抑制画像では梗塞が起きた組織の心内膜境界が明瞭に識別可能であったが、血液プール抑制を用いずに収集した画像では境界が明瞭に示されず、また梗塞部位もほぼ同様に明瞭に示されていなかった。収集パラメータは、32cmFOV、9mmセクション厚、256×192マトリックス、2NEX、TR/TE/flip=6.6/1.7/20、TI=200msec、TIBSP=150msecとした。
【0036】
本発明を好ましい実施形態について記載してきたが、明示的に記述した以外に、本特許請求の範囲の域内で等価、代替及び修正が可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明と共に使用するNMRイメージング・システムのブロック概要図である。
【図2】R−R間隔を基準として各種のRFパルスの相対的な時間位置を示した本発明によるパルスシーケンスの図である。
【図3】図2に示すRFパルスの範囲及び位置を相対的な空間及び頻度で表した図である。
【符号の説明】
10 MRIシステム
12 オペレータ・コンソール
13 入力デバイス
14 制御パネル
16 スクリーン、ディスプレイ
18 リンク
20 コンピュータ・システム
20a バックプレーン
22 画像プロセッサ・モジュール
24 CPUモジュール
26 メモリ・モジュール
28 ディスク記憶装置
30 テープ駆動装置
32 システム制御部
32a バックプレーン
34 高速シリアル・リンク
36 CPUモジュール
38 パルス発生器モジュール
40 シリアル・リンク
42 傾斜増幅器
44 生理学的収集制御器
46 スキャン室インタフェース回路
48 患者位置決めシステム
50 傾斜コイル、傾斜磁場コイル・アセンブリ
52 マグネット・アセンブリ
54 偏向用マグネット
56 RFコイル
58 送受信器モジュール
60 RF増幅器
62 送信/受信スイッチ
64 前置増幅器
66 メモリ・モジュール
68 アレイ・プロセッサ
100 パルスシーケンス
102 ECGサイクル
104 スライス選択反転パルス
106 画像化スライス、励起RFパルス
108 データ
110 切込み付きRF反転パルス
112 励起RFパルス
114 スライス選択反転RFパルスの通過帯域幅
116 スライス選択反転RFパルスの通過帯域
118 画像化セクション厚
120 切込み付きRFパルスの阻止帯域
122 切込み付きRFパルスの阻止帯域幅
124 切込み付きRFパルスの通過帯域
Claims (7)
- MRパルスシーケンス(100)を印加するようにMRIシステムを制御するプログラムであって、
該MRパルスシーケンス(100)は、
画像スライスパルス(106)と比べて幅がより大きな通過帯域(116)を有する主要スライス選択反転RFパルス(104)と、前記主要スライス選択反転RFパルス(104)に続くと共に、主要スライス選択反転RFパルス(104)と一致する阻止帯域(120)を有している切込み付き反転RFパルス(110)と、切込み付き反転RFパルス(110)から反転時間TIBSPだけ離間している、分割式k空間傾斜エコー・イメージングの分割収集のための少なくとも1つの画像スライスパルス(106)と、を備えるプログラム。 - 前記主要スライス選択反転RFパルス(104)はMR検査において正常な心筋組織を抑制するように設計されている、請求項1に記載のプログラム。
- 心筋梗塞検出を改良したMRI装置であって、偏向磁場を印加するためにマグネット(54)のボアの周りに配置した複数の傾斜コイル(50)、RF送受信装置システム(58)、並びにMR画像を収集するためにRF信号をRFコイル(56)アセンブリに送信するようにパルスモジュール(38)により制御を受けているRFスイッチ(62)を有する磁気共鳴イメージング(MRI)システム(10)と、コンピュータであって、正常な心筋組織からの信号を抑制するためにスライス選択反転パルス(104)を送信すること、所望のイメージング・スライス(106)に流入する血液からの信号を抑制するように該所望のイメージング・スライス(106)の内部と外部の領域を反転させるように反転時間を選択して切込み付き反転RFパルス(110)を送信すること、励起RFパルス(112)を送信すること、正常な心筋組織と血液の両者からの信号を抑制したデータ(108)を所望のイメージング・スライス(106)から収集すること、を実行するようにプログラムされたコンピュータと、を備えるMRI装置。
- 前記コンピュータがさらに、造影剤投与を示す入力を受け取ること、パルス送信前の梗塞領域の造影剤濃度を許容すること、を実行するようにプログラムされている、請求項3に記載のMRI装置。
- 前記スライス選択反転パルス(104)は主要反転時間TIの間の心臓及び呼吸運動を考慮に入れるように設計した通過帯域(116)を有している、請求項3に記載のMRI装置。
- 前記スライス選択反転RFパルス(104)は、画像化スライス(106)のセクション厚の1〜3倍の大きさのセクション厚を有しており、かつ正常な心筋組織からの信号をヌルにするように選択した概ね100〜450msecの反転時間を有している、請求項3に記載のMRI装置。
- 前記切込み付き反転RFパルス(110)はスライス選択反転パルス(104)と空間的に一致した阻止帯域(120)を有している、請求項3に記載のMRI装置。
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