JP3950199B2 - ヘリコプタロータのための最適化された複合フレックスビーム - Google Patents

ヘリコプタロータのための最適化された複合フレックスビーム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘリコプタ用のベアリングレスロータに関し、特にベアリングレスロータ用の改良された構造特性を有する最適化された複合フレックスビームに関する。
【0002】
【従来の技術】
ヘリコプタのロータ設計では、ヘリコプタロータブレードをトルク駆動のハブ部に保持するために、フレックスビームやフレックスビームコネクタと呼ばれる弾性構造部材を使用することが多くなっている。ロータ翼飛行の基本操作において、ロータブレードの多方向への変位、つまりフラップ方向及びエッジ方向での曲げ、ねじり及びピッチ変動等を正確に制御する必要性からロータのフレックスビームの機能は実質的に複雑になる。このような構成は、ロータブレードの根端でヒンジやジャーナルタイプのベアリングによって変位に対応する、ベアリングを構成要素とする旧タイプのロータを代替することから、ベアリングレスロータと呼ばれる。このフレックスビームは、一般的に繊維強化樹脂マトリックス材で構成され、ロータアッセンブリの軽量化、簡略化及びそのメンテナンスの単純化に結び付き、更に、その信頼性及び損傷に対する耐性を向上させる。
【0003】
ヘリコプタテールのロータ装置において、フレックスビームは、中央トルク駆動ハブ部とテールロータブレードアッセンブリとの間に配置され、それらの部材と組合さって固定される。フレックスビームは、一般に、トルクチューブアッセンブリによって包囲され、このトルクチューブアッセンブリは、フレックスビームの外側端と組合さって固定され、フレックスビーム/テールロータアッセンブリへピッチ運動を伝達することができる。このようなピッチ運動は、星形形状のピッチビームによってトルクチューブへ伝達される。このピッチビームは、その直線変位がトルクチューブの回転変位をもたらすようにトルクチューブの機体側端と組合さって設置される。
【0004】
フレックスビームの設計は、一般的に、選択された複合マトリックス材、それらの繊維方向、設計エンベロープ及び製造上の制約を考慮した上で、互いに関連する多様な設計基準を繰り返し検討することを伴う。互いに関連する設計基準は、特に以下のフレックスビームの要件を含む。
【0005】
1)例えば、遠心荷重30,000〜35,000lbs(133,500N〜155,750N)、スラスト負荷4,000lbs(17,800N)ピッチ運動±18度、フラップ運動±5度等、予め定義された範囲の負荷や動作に耐え得る。
【0006】
2)軸方向の及び曲げ、座屈、ねじり等の安定及び振動の応力/歪みの値を、選択された材料の静的及び疲労による応力/歪みの最大寛容値以下の値に保つ。
【0007】
3)ピッチ制御ロッドへかかり、または、それによって伝達されるインプット制御負荷を寛容値に保つ。
【0008】
4)共振による不安定性を回避するために、所望の剛性特質を提供する。
【0009】
5)最低限の設計エンベロープを満たし、
6)低コストでの製造を容易にする。
【0010】
以上の設計基準は、競合する、つまり、互いに両立しないので、フレックスビームを最適化するためには、トレードオフに関する検討を繰り返し行う必要がある。
【0011】
フレックスビームは、一般的に、負荷及び運動に対応するために種々の領域に区分されており、各領域は、その領域における主要な機能を果たすように設計されている。通常、フレックスビームは、ハブ接続部、機体側遷移部、ピッチ部、機外側遷移部及びブレード接続部を含むこのような領域を最低5つ有する。以下で説明するように、フレックスビームの特定領域、即ち機体側遷移部及びピッチ部は、他の領域よりも負荷が高く、運動が激しい。従って、これらの領域は、フレックスビームの設計においてより重要である。
【0012】
ハブ接続部は、一般的に、中央ハブ保持部材の上下クレビスプレートの間に配置されてこれらのプレートに固定された厚みのある長方形断面を特徴とする。ハブ接続部は、機能的には、フラップ方向及びエッジ方向の遠心荷重及び曲げによるモーメント負荷に反作用するように、またはそれを伝達するように主として設計されている。ハブ接続部がハブ保持部材に堅く取り付けられている限りにおいては、曲げ運動に関しては設計時に考慮する必要はない。即ち、設計要件ではない。
【0013】
フラップ曲げ部とも呼ばれる機体側遷移部は、フラップ方向及びエッジ方向の曲げモーメント負荷に反作用するように、また、ハブ接続部からピッチ部へと幅及び厚みが遷移していくように、主に設計されている。後者に関して、翼幅方向におけるこのような幅や厚みの遷移に要する長さは、通常比較的短くすることが望ましい。なぜならば、そのことによってフレックスビームの全長は最小化され、ピッチ部の有効な長さは最大になるからである。更に、テールロータ装置では、一般的に、実質的なヒンジオフセットを最小化することが望ましい。ヒンジオフセットとは、テールロータアッセンブリの回転軸から、フレックスビームの曲げ/剛性特性によって決まる実質的なフラッピングヒンジまでの距離である。ヒンジオフセットが小さくなると、ハブ接続部/ハブ保持部材に働くハブモーメントも小さくなる。
【0014】
通常、フレックスビームが柔軟となるように機体側遷移部の幅及び厚さを最小化し、その結果、ヒンジオフセットを最も機体側の位置にシフトさせることによってヒンジオフセットが最小化される。上記の目的に対しては、応力が大きく集中する点が制限となる。即ち、フレックスビームの自由端に沿って、応力即ち層間応力が集中する結果、フレックスビームの層剥離または裂けが起こるおそれがあり、この点が制限要因となっている。
【0015】
ピッチ部は、主に、ロータブレードアッセンブリで必要なピッチ運動に対応し、ピッチ制御を行うための制御負荷を最小化し、必要なエッジ方向での座屈安定を提供し、フレックスビーム/ロータブレードシステムの翼弦方向の振動数を決定するように設計されている。テールロータ装置のピッチ部では、一般的に、トルクチューブアッセンブリによって伝達される約14度から約18度のピッチ運動に対応しなければならない。上記に付随して、ピッチ部は、制御負荷を最小化するために、ねじれに対して柔軟でなければならない。フレックスビームをねじるのに必要な力を生み出すのに必要な動力は、フレックスビームのピッチ部のねじれ剛性の関数である。更に、このピッチ部は、空気力学的な抗力及び/またはコリオリの力によって引き起こされる安定及び振動の機体内曲げモーメントに耐えるために必要なエッジ方向の剛性を有する必要がある。
【0016】
負荷や運動に関する要件に加え、ピッチ部は、フレックスビームの翼弦方向の一次周波数属性を左右する。つまり、フレックスビームのピッチ部は、所望の翼弦方向の周波数レスポンスを発生させるためのエッジ方向の剛性特性を有しなければならない。通常、負荷増幅による共振不安定性を回避するために、翼弦方向の一次周波数が1.0、2.0または3.0サイクル/回転等に対応する調波周波数の間の値となるように調整することが必要である。
【0017】
機外側遷移部及びブレード接続部には、主に遠心荷重による張力によって負荷がかかり、機体側フレックスビーム部に比較して負荷が軽い。更に、機体側遷移部及びピッチ部がフレックスビーム/ロータブレードアッセンブリのフラップ方向、エッジ方向及びピッチのたわみに主に対応できる限り、柔軟な運動即ち柔軟性に関しては、設計時には問題とはならない。また、機外側遷移部では、ピッチ及びブレード接続部の間での幅及び厚さの遷移が行われるが、機外遷移部の応力は、機体側遷移部の応力レベルの約1/3と比較的低いので、このような幅及び厚さの遷移は、高い層間せん断応力を引き起こさずに短距離で行うことができる。
【0018】
従来のフレックスビームは、複合フレックスビームを強化するために自由端に被せた外部複合オーバラップ(ベノ等による米国特許第4,898,515号参照)またはエッジキャップ(シュマリング等による米国特許第5,431,538号)の使用によって、機体側遷移部における層剥離またはささくれに関する問題に対応する。更に、これらの特許に開示される機体側遷移部は、幅遷移の角度即ちピッチ部及び機体側遷移部の側面端によって決定される角度が約1.5から約3度の間と浅い直線形の幅遷移部を用いている。このような浅い幅遷移角度は、オーバラップやエッジキャップとの組合せにより、層間応力を減少させて複合フレックスビームの層間剥離やささくれを回避することができる。これにより構成上の問題は解決されるが、この構成は、フレックスビームが重くなり、製造も複雑となる点で不利である。更に、浅い遷移角度を有する直線型遷移部を設けるためには、機体側遷移部の翼幅方向の長さを延長する必要がある。このように機体側遷移部を長くすると、翼幅方向の全体が長くなる。逆に言えば、ピッチ部の有効な長さが短縮されるといった不利な影響がもたらされる。上記のピッチ部の有効な長さの短縮により、翼弦方向一次周波数の必要なレスポンスを得るための性能は複雑になり、ピッチ部で要求されるねじれ率は増加する。ピッチ部のねじれ率の増加によって、より高い応力/歪みが引き起こされ、それにより、ピッチ部の設計が更に複雑になる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
従って、層間せん断応力を減少させ、翼弦方向の一次周波数要件を満たし、複合フレックスビームのねじり剛性を最小にするように、設計を最適化した複合フレックスビームが必要とされている。
【0020】
本発明の目的は、フレックスビームの互いに関連のある複数の設計要件を満たし、かつ層間せん断応力を減少させるために独自の形状及び素材の組合せを有する機体側遷移部を含む最適化複合フレックスビームを提供することである。
【0021】
本発明のもう一つの目的は、高品質の複合ラミネートを製造することができる製造工程を簡略化することが可能である、上記のような最適化複合フレックスビームを提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記及びその他の本発明の目的は、ハブ接続部、ブレード接続部、ブレード接続部と隣接する機体側遷移部、ブレード接続部に隣接する機外側遷移部、機体側及び機外側遷移部の間に配置されてそれらの部分に隣接するピッチ部を含む複数の隣接部分を有する最適化複合フレックスビームによって達成される。
【0023】
機体側遷移部は、厚さ遷移によって定義される第一遷移小域と、幅及び厚さ遷移によって定義される第二遷移小域と、を有する。第二遷移小域は、円錐曲線部及び臨界幅遷移小域を形成する。臨界幅遷移小域は、円錐曲線部によって決定される0度から約10度の間の円錐曲線の傾斜角に対応する。更に、第一及び第二機体側遷移部は、単方向及び軸外し複合材の組合せによって構成され、該軸外し複合材によって軸外し複合材の割合が決定し、その臨界遷移小域における割合は、最適化曲線によって表される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下の詳細な説明は、ヘリコプタテールロータアッセンブリのための最適化複合フレックスビームを開示している。しかし、ここで説明する様々な教示は、ベアリングレスメインロータアッセンブリ等、どのようなベアリングレスロータ用のフレックスビーム構造にも適用することができる。更に、好適実施例では、テールロータアッセンブリの構造的及び機能的な要件を満たすために寸法が規定されているが、フレックスビームに様々な改良を加えて、他のヘリコプタロータ装置に適用することもできる。
【0025】
図1は、ベアリングレスヘリコプタテールロータアッセンブリ2の部分分解説明図である。尚、対応部及び相当部には、同一番号を付している。テールロータアッセンブリ2は、回転軸8を軸に複数のロータブレード6を駆動する中央ハブ保持部材4を有する。より詳細に説明すると、本発明による最適化複合フレックスビーム10は、ハブ保持部材4と各テールロータブレード6との間に配置されて、これらの部材と組合さって固定される。最適化フレックスビーム10の機外側すなわち外周側の10OEと、個々のテールロータブレード6とは、接続ボルト12によって固定され、フレックスビーム10の機体側すなわち内周側の10IE 、ハブ保持部材4の上下のクレビスアーム4a及び4bと、それぞれ接続ボルト16によって固定される。
【0026】
最適化した各フレックスビーム10は、トルクチューブ20内に配置される。このトルクチューブは、フレックスビームと組合さって、フレックスビーム/テールロータブレードの接続に使用されるものと同じ接続ボルト12によって取り付けられる。更に、トルクチューブ20は、スナッバーベアリングアッセンブリとも呼ばれるエラストマーベアリングアセッンブリ22によって機体側端20IEに関節を形成するように取り付けられる。このエラストマーベアリングアセンブリ22は、トルクチューブ20を最適化フレックスビーム10を中心にその周囲に固定し、トルクチューブ20と最適化フレックスビームとの間で起こる相対的なピッチ、フラップ及びリードラグ運動に対応し、それらの部材間でピッチ制御及びその他の負荷を伝達する機能を果たす。このようなスナッバーベアリングアッセンブリ22は、周知であり、米国特許第5,092,738号及び第5,499,903号に更に詳しく説明されている。
【0027】
トルクチューブ20は、対応するテールロータブレードアッセンブリ6にピッチ運動を伝達することができ、このピッチ運動は、ブレードの他のたわみとともに最適化フレックスビーム10のねじり弾性によって調節される。より具体的には、各トルクチューブ20の機体側端20IEと組合さってピッチ制御ロッド26及びピッチホーンフィッティング28によって取り付けられる星形のピッチビーム24によって、ピッチ運動は、トルクチューブ20に伝達される。作動時には、ピッチビーム24の直線変位により各トルクチューブ20に回転変位が起こり、この回転変位によって、対応するテールロータブレード6にピッチ制御インプットが伝達される。
【0028】
最適化複合フレックスビーム10を詳細に説明する前に、以下で説明する実施例は、予め定義された付加及び運動要件を備えるテールロータアッセッブリに基づいていることを確認しておきたい。ここで説明する最適化フレックスビーム10は、
a)各テールロータブレードアッセッブリによって生じる遠心荷重33,000lbs(146,784N)に反作用し、
b)ロータブレードスラストによって発生する安定フラップ方向曲げ負荷約15,000in-lbs(1,695N−m)及び振動フラップ方向曲げ負荷約±38,000in-lbs(4,293N−m)に反作用し、
c)ロータトルクに関連する安定エッジ方向曲げ負荷約8,000in-lbs(904N−m)及び振動エッジ方向曲げ負荷約±21,000in-lbs(2,373N−m)を伝達し、
d)±5度の機外側フラップ方向運動に対応し、
e)ピッチ制御負荷を±200lbs(±890N)以下に維持しながら±18度のピッチ運動に対応し、
f)1,250ft-lbs/deg(97,106N−m/rad)のハブモーメント定数を生じさせ、
g)約1.7サイクル/回転の翼弦方向一次周波数を生じさせる。
【0029】
最適化した複合フレックスビーム10の長さ、断面積、幅及び/または厚さの遷移の程度等の種々の改良は、本発明の趣旨及び範囲内で行うことができる。
【0030】
最適化フレックスビーム10の形状に更に影響を与える可変要素には、材料の選択及びその材料の力学的性質がある。これらの力学的性質には、繊維の強さを示す弾性係数、その繊維方向、樹脂マトリックスのせん断弾性係数、複合材の応力及び歪みの許容値等がある。説明する実施例では、最適化した複合フレックスビームは、繊維強化樹脂マトリックス材料より構成される。この材料の強化繊維は、黒鉛繊維及びファイバーグラス繊維の両方を含み、また、樹脂マトリックスは、強化されたエポキシドマトリックスである。
【0031】
より詳しくは、最適化フレックスビーム10は、複数の黒鉛及びファイバーグラスの複合層より構成される。これらの層は、積み重なって、異方性/直交異方性強度特性を有する積層複合構造を形成するように配置される。異方性/直交異方性強度特性を有する構造とは、即ち、繊維強化の方向の関数として、直交軸に沿って予め定義された剛性特性を有する構造である。このような強度特性は、単方向及び/または軸外し(off-axis)複合材の選択された組合せによって決まる。ここでいう単方向材料とは、繊維方向が最適化複合フレックスビームの縦軸10Lに実質的に平行即ち縦軸との相対的角度が約0度であることを特徴とする。
【0032】
また、軸外し複合材は、繊維方向と縦軸10Lとの相対的角度が+45度または−45度であることを特徴とする。更に、単方向及び/または軸外し材料に関して、複合ラミネートの直接的な強度を示すために、材料という表現に代えて繊維または層を使用することもある。結果としてできる黒鉛/ファイバーグラス複合ラミネートの相対的配置及び繊維方向は、とりわけ本発明の重要な形態であるが、同様の力学的性質を有する他の複合マトリックス材料を使用することもできる。力学的性質とは、例えば弾性係数及びせん断弾性係数、応力/歪み許容等である。
【0033】
図2a及び図2bでは、本発明に係るフレックスビーム10は、特定の構造属性及び機能属性を有する領域を区分して明示するために、複数の隣接領域にセグメント化されている。詳しく説明すると、複合フレックスビーム10は、ハブ接続部HAR、ブレード接続部BAR、ピッチ部PR、機体側及び機外側遷移部ITR及びOTRを含む。以下の説明は、各部分の主要な機能、構造属性及び複合構成についてである。最適化フレックスビーム10即ちその全部分の主要機能は、ブレードによって引き起こされる遠心荷重に対して反作用することであるが、以下では各部分の個別な主要機能に関して説明する。
【0034】
ハブ接続部HARは、ハブ保持部材と組合さって複合フレックスビーム10を固定する形状となっている。詳細には、図1で示されているボルト接続部を形成する取付開口部40の離間パターンを含む。バブ接続部HARは、機能的には第一にフレックスビームのモーメント即ちフラップ方向曲げモーメント、エッジ方向の曲げモーメント及び遠心荷重をハブ保持部材へ伝達するように設計される。ハブ接続部HARがハブ保持部材に堅く固定される限り、実質的な曲げ運動は設計要件ではない。ハブ接続部HARは、一定の幅及び厚さ寸法WHAR及びTHARを特徴とし、主に50対50の軸外し及び単方向黒鉛材料の混合材であるが、ピッチ部PR及び機体側遷移部ITRで所望の複合レイアップが容易に得られるように、単方向及び軸外し材料の両方のファイバーグラス材料が数パーセント含まれる。軸外し及び単方向複合材は、フレックスビーム負荷を接続ボルトに最適に伝達する異方性複合ラミネートを形成する。
【0035】
ブレード接続部BARは、図1に示される機外側ボルト接続部を形成する取付開口部42によって、最適化した複合フレックスビーム10を各テールロータアッセンブリに固定する形状となっている。フレックスビームの固定に伴って、トルクチューブ20も固定される。機能的には、ブレード接続部BARは、第一に遠心負荷に反作用してロータブレードアッセンブリにトルクを伝達するように設計されている。曲げモーメントが小さい限り、ブレード接続部BARは、最適化された複合フレックスビーム10の他の部分に比較して負荷は小さい。ブレード接続部の複合構造即ちその幅及び厚さWBAR及びTBAR、混合材における軸外し及び単方向複合材の割合等は、ハブ接続部HARと同様である。
【0036】
ピッチ部は、ハブ接続部HAR及びブレード接続部BARの間に位置し、構造的に
(i)テールロータアッセンブリで必要なピッチ運動即ちピッチインプットによる弾性ねじり変位に対応し、
(ii)ピッチを制御するために必要な制御負荷を最小化し、
(iii)必要な座屈安定を提供し、
(iv)フレックスビーム/テールロータブレードシステムの翼弦方向一次周波数レスポンスを決定する形状となっている。
【0037】
より具体的には、ピッチ部PRは、上記の設計要件を満たすために複合材の選択された組合せ及び固有の断面形状を有する。
【0038】
ピッチ部PRは、その長さLPRに沿って実質的に一定の断面形状寸法であることを特徴とする。図3では、ピッチ部は、単方向ファイバーグラス材料のコアラミネート50及びコアラミネートによって形成される上下のはめあい面50Mに接合された単方向黒鉛のフェースラミネート52を有する。黒鉛材料のフェースラミネートは、望ましくはコアラミネート50の側面50Lによって規定されるピッチ部の実質的全長にわたって伸びる。更に、フェースラミネート52の上下面52Fの間を計測した幅TPRは、以下でピッチ部34のアスペクト比として言及する幅及び厚さ率WPR/TPRを決定する。アスペクト比は、10以上であることが望ましく、更に10から20の間の範囲であることが望ましい。説明する実施例では、アスペクト比は約16.2である。このような複合材及びアスペクト比の重要性は、以下で説明する。
【0039】
コア及びフェースラミネート50及び52それぞれのファイバーグラス及び黒鉛材料が単方向に方向づけられていることで、直交特性を有するラミネートが形成される。ねじり剛性は、主に樹脂マトリックのせん断係数(G)の関数であり、軸方向即ち曲げ剛性は、主に繊維の弾性係数(E)の関数であるので、ピッチ部PRは、樹脂マトリックの比較的低いせん断係数(G)による複合フレックスビームの縦軸10Lに沿う低いねじり剛性と、単方向繊維(特に黒鉛繊維)の高い弾性係数(EG)による高い軸方向剛性と、を特徴とする。前者に関して、低いねじり剛性は、制御負荷を最小化する、ねじりに素直な(ねじれやすい)ピッチ部PRを形成する。制御負荷の最小化とは、即ち縦軸10Lに沿って最適化フレックスビームをねじるのに必要な力の減少をいう。後者に関して、円で囲まれた領域RCを参照すると、その部分に含まれる黒鉛繊維は、フラップ方向中立軸及び曲げ中立軸XA及びYAから離れて配置されている。その結果、フラップ方向及びエッジ方向の曲げ剛性を提供するのに大変効果的である。このようなフラップ方向及びエッジ方向での高い曲げ剛性は、エッジ方向中立軸YAに沿って面内座屈安定を提供する。
【0040】
黒鉛フェースラミネート52、特にそのエッジ方向剛性の構成要素は、最適化フレックスビーム10の翼弦方向一次周波数レスポンスに主に影響し、ファイバーグラスコアラミネート50の低い弾性係数(E)は、黒鉛フェースラミネート52の剛性作用の改善に寄与する。具体的には、ピッチ部PRにおけるファイバーグラス材料の割合は、全材料の約50%から約70%の範囲の間であることが望ましく、更に、全材料の約50%から60%の間であることがより望ましい。説明する実施例に関しては、ファイバーグラスの割合は、約59%である。
【0041】
ラミネート50及び52の幅寸法WPRが本質的に等しい限りにおいて、コアの厚さ寸法TCからピッチ部厚さ寸法TPRへの比率によってもファイバーグラス材料の割合が決まる。このような材料または厚みの範囲は、上記で説明したアスペクト比とともに約1.7サイクル/回転の翼弦方向一次周波数レスポンスを発生させる。規定した範囲以下即ち50%以下の材料、つまり厚さによって決まる割合は、約1.9サイクル/回転の一次翼弦方向周波数レスポンスを発生し、従来の技術で述べたように、例えば2.0サイクル/回転である負荷増幅値の近くに配置された場合、共振による不安定性に結び付くおそれがある。また、例えば2,0及び3.0サイクル/回転の間等の負荷増幅値間に配置された場合には、高い制御負荷を生じるおそれがある。材料即ち厚み割合の範囲の上限、即ち70%は、ファイバーグラスによって許容される機内疲労せん断応力によって決定される。
【0042】
上記で説明した、材料の組合せ、材料の厚さ及びアスペクト比に加えて、ピッチ部PRは、コアラミネートの側面50Lに沿った層間せん断応力を減少させるための面取り端部面54Sを有することを特徴とする。このような層間せん断応力は、ピッチ部PRのアスペクト比及び黒鉛フェースラミネート52のフェース面52Fに沿って発達する最大面内せん断応力の結果生じる。面取り端部面54Sによって得ることができる構造的な利点についての詳細な説明は、本出願人が共有する係属中の米国出願番号第08/683,490号「ヘリコプタテールロータのための最適化された複合フレックスビーム」に記載してある。
【0043】
図4は、複合層レイアップ及びその厚さ変動を示す、最適化フレックスビーム10の部分断面側面図である。図示を容易にするため、フレックスビーム10の上半分のみ即ちその中央平面から下半分が実質的に確認できる領域までを示している。よって、厚さ寸法に関しては、実際に図示されている寸法の2倍即ち2Xと考える必要がある。更に、実線間の間隙は、単方向複合材Uを示しており、実線と点線との間隙は、軸外し複合材Oを示している。
【0044】
単方向複合材U即ちフェース及びコアラミネート50及び52のファイバーグラス層UF及び黒鉛層UGは、ピッチ部PRの全長Lにわたって伸び(図2b参照)、最適化複合フレックスビーム10の翼幅方向長さLFの全長にわたって伸びることが望ましい。説明する実施例では、これらの層Uには、機体側及び機外側遷移部ITR及びOTRで必要な厚さの遷移が行われるように、隣接する領域に付加的な単方向及び軸外し材料O及びUが差し込まれる。
【0045】
図4、5a及び5bでは、機体側遷移部ITRでハブ接続部HAR及びピッチ部PRの間での幅と厚さの遷移が行われる。このような幅及び厚みの遷移は、(i)ピッチ部PRの低いねじり剛性及び一次翼弦方向周波数要件と、(ii)ハブ接続部HARでの負荷伝達要件によって通常決定される。前者に関して、ピッチ部PRの剛性及び周波数における要求を満たすため、特に、ピッチ部PRのねじり剛性(1/3WPRPR 3*G)及びエッジ方向曲げ剛性(1/12WPR 3PR*E)を減少させるために、ピッチ部の幅及び厚さ寸法WPR及びTPRを最小化することが必要である。そして、後者に関しては、フレックスビームの全負荷を差動曲げ(differential bending)によってハブ接続部HARが接続ボルトを通じて伝達する必要があることから、端部長さを予め定められた最低値以上に維持する必要がある。ここでいう端部長さとは、ハブ接続部HARの取付開口部40からその自由端までの長さのことである。
【0046】
従って、ハブ接続部HARの厚さTHAR、そして特にその幅寸法WHARは、通常ピッチ部PRの比較寸法WPR及びTPRよりも大きい。説明される実施例では、3.8in(9.7cm)から6.0in(15.2cm)への遷移である幅遷移(遷移量58%)及び.234in(0.59cm)から1.410in(3.58cm)への遷移である厚さ遷移(遷移量503%)がピッチ部PRからハブ接続部HARの間で起こる。
【0047】
その形状及び機能をより正確に規定するために、機体側遷移部ITRは、第一及び第二遷移小域ITR−1及びITR−2を含む複数の小域にさらに分割される。第一遷移小域ITR−1では、厚さの遷移が起こるが、第二小域ITR−2では、幅及び厚さの両者ともに遷移が起こる。第一遷移小域ITR−1は、スラストによって引き起こされるフラップ方向の変位に対応し、フラップ方向及びエッジ方向の曲げ負荷に反作用し、最適化フレックスビームのピッチ変位の一部(ピッチ部PRに比較して少ない)を負担する、という複数の機能を有する。その機能性は、単方向複合材Uの漸進的な付加によって影響を受ける。
【0048】
この複合材Uは、ねじり及びエッジ方向での剛性を実質的に増加させることなく、フレックスビーム10の厚さが増加するように、ピッチ部PRの幅寸法WPRと等しい一定幅を有している。従って、漸進的な厚さの遷移により、フラップ方向の変位が調節され、一方、曲げ負荷に反作用するためのフラップ方向の曲げ剛性も増加する。更に、複合材Uが単方向の方向性を有することから、幅が制約されていることとあいまって、小さい角度のピッチ運動が可能となるので、ピッチ部PRのねじれ率に対する要求が緩和される。説明する実施例では、単方向複合材Uは、ピッチ部PRの単方向黒鉛層UG及びファイバーグラス層UFを間に挿入した複数の単方向黒鉛層UGを含む。
【0049】
第二遷移小域ITR−2は、第一に、フラップ方向及びエッジ方向の曲げ負荷に反作用し、スラストによって誘発されるテールロータブレードのフラップ方向の変位に対応するように設計されている。これらの機能要件に加えて、第二小域ITR−2は、最適化フレックスビームの自由端に沿う領域でのせん断応力を減少させる。より具体的には、第二遷移小域ITR−2は、曲線部、例えばそれぞれ実質的に円錐曲線形状である側面60Lを画定する。この円錐曲線形状は、放物線形状、双曲線形状、楕円形状、円形状など多様な湾曲形状を有することができる。どちらの側面60Lに関しても、以下で円錐曲線部(width conic)といっているこの円錐曲線の一部となっている幅の部分は、点ALから始まり、点BLで終わる。点ALは、第一及び第二遷移小域ITR−1及びITR−2の接続部に対応し、点BLは、第二遷移小域とハブ接続部HARの接続部に対応する。更に、図5bを参照すると、円錐曲線部は、その傾斜に沿う点で円錐曲線の傾斜角θWCが決定され、この傾斜角は、標準的な超越関数で表される。
【0050】
【数2】
θWC=Tan-1(DY/DX)
ここでは、DY/DXは、XY座標のある特定点での円錐曲線傾斜である。そのX軸は、最適化フレックスビーム10(図5bでは図示省略)の縦軸に平行であり、Y軸は、点ALで円錐曲線部と交差している。円錐曲線の点ALでの傾斜角θWCは、0度であり、終点BLで約30度から約50度までに増える。
【0051】
発明者は、上記の円錐曲線の傾斜角θWCの関数として、軸外し複合材Oを単方向複合材Uと組合せて使用することで、層間せん断応力が格段に減少することを発見した。この関係は、黒鉛やファイバーグラス等といった繊維構成とは無関係であるが、実施例では、熱によって誘発される応力を緩和するために軸外し黒鉛層OG及びファイバーグラス層OFが使用される。このような応力は、硬化処理する過程で、単方向ファイバーグラス及び黒鉛の層UF及びUGと、軸外し黒鉛層OGと、の間での温度のずれによって発生するおそれがある。従って、単方向層UF及びUGと軸外し黒鉛層OGとの適合性が高い熱膨張係数を有する軸外しファイバーグラス層OGを挿入することが望ましい。
【0052】
これらの関係を決定する際に、軸外し材料Oの割合は、ピッチ部PRからハブ接続部HARまでの間で最低50%増加する必要がある。この増加の割合は、上記で説明したように、ピッチ部が単方向複合材Uのみによって構成され、一方、ボルト取付部を通して最適に負荷を伝達するようにハブ接続部が軸外し及び単方向の材料O及びUの50対50の混合材であることを要する場合に必要である。更に、軸外し複合材Oの積層が第一遷移小域ITR−1から始まり、第二遷移小域ITR−2で最大即ち50%であるが、軸外し複合材Oの割合は、浅い円錐曲線の傾斜角θWC即ち円錐曲線の傾斜の約0度から約10度に対応する部分CRwtで最も臨界的で重要である。第二遷移小域ITR−2の機外側部に対応するこの部分CRwtは、以下では臨界幅遷移小域と呼ぶ。
【0053】
図6では、上下の境界70U及び70Lを有する最適化曲線70は、円錐曲線の傾斜角θWCの関数として、特定の断面での全材料構成の内の軸外し層OG及びOFの総量の割合である軸外し複合材Oの割合%Oを表している。最適化曲線70は、臨界遷移小域CRwtの層間せん断応力が最大である、0度から10度の間の傾斜角θWCに対応する値を示している。軸外し複合材Oの積層は、臨界幅遷移小域の機体側及び機外側で重要性が低いが、幾何学的に誘発される即ち急な形状変化によって生じる高い軸方向での歪みを回避するように、漸進的に積層されることが望ましい。
【0054】
最適化した曲線70は次の式によって表される。
【0055】
【数3】
%O=C+√{900−[kθWC−30]2
ここでは、定数Cは、約14.4から約21.6の間であり、最適化された曲線70のY切片の範囲を決定している。また、傾斜角θWCの単位は度数であり、式の単位を統一するために定数kは、1.0度-1である。また、定数Cが上下の境界70U及び70Lを決定することは、上記の式より明らかである。
【0056】
また、上記の式から、傾斜角0度に対応する軸外し複合材Oの割合%Oは、約14.4%から21.6%であり、円錐曲線傾斜角10度では、約35.4%から約42.6%である。最適化した曲線70のY切片で表される臨界遷移小域CRwtにおいてこのような割合が生じるために必要な軸外し複合材の積層は、第一遷移小域ITR−1の軸方向機外側翼幅位置IBU(図5a参照)から始まる。翼幅方向位置IBUは、第一及び第二遷移小域ITR−1及びITR−2の接合部寸法DSに対応することが望ましく、DSの値は第一遷移小域ITR−1の翼幅方向L1の約15%から約25%である。このIBUの位置は、ねじり率が確実に悪影響を受けず、また、軸外し材料Oが漸進的に増加して、臨界遷移小域CRwtが最低限の軸外し材料Oを確実に含むことができるように設けられている。
【0057】
層間せん断応力が比較的良性であり、結果的にその部分での厚さ遷移の正確さはそれほど重要でない限り、臨界遷移小域を越えた即ちその小域より機体側の軸外し複合材Oの積層は、より急激であってもよい。最適化曲線70及びその境界70U及び70Lは、なめらかな曲線関数として表されるが、実際には、曲線70は個々の軸外し層OG及びOFの個々の厚さを単位として増加することから、ステップ関数となっている。
【0058】
図7では、機体側遷移部ITRの形状及び構成の利点を示すために、本発明の最適化複合フレックスビーム10上に重なるように従来のフレックスビーム80が点線で示されている。従来のフレックスビーム80は、直線状の幅及び厚さ遷移部TR80と、軸外し複合材の均一積層を特徴とする。後者に関して、このような積層は、通常、点A80で示される幅遷移の起点の軸方向機体側である翼幅位置I80で起こる。このような軸外し複合材の初期配置は、ピッチ部PR80の有効な長さを最長にすることに貢献する。分析によって、従来フレックスビーム80の点A80での層間せん断応力は、比較対象となる最適化フレックスビーム10の点Aの層間せん断応力よりも二倍から三倍高くなってしまっている。従来のフレックスビームにおけるこのような高い応力レベルは、急な傾斜角及び軸外し複合材の機体側位置への配置の結果生じる。
【0059】
従来の技術で説明したように、層間せん断応力を許容レベルまで減少させるために、エッジキャップC80または複合オーバラップ(図示省略)が使用される。最適化フレックスビーム10の機体側遷移部ITRにおける円錐曲線部及び軸外し複合材の最適化積層による構造効果の組合せによって、このような付加構造による重量、コスト及び複雑さを回避することができる。円錐曲線部は、漸進的な幅遷移を可能にし、軸外し複合材は、第二遷移小域ITR−2の側面60Lに沿う層間せん断応力を減少させるのに必要なせん断強度を提供する。
【0060】
これらの構造上の利点に加えて、機体側遷移部ITRの形状及び構造は、最適化フレックスビームのエッジ方向及びねじり剛性を減少させ、同時にピッチ運動を調整する部分/小域即ちピッチ部PR及び第一遷移小域ITR−1の有効な長さを延長する。従来のフレックスビーム80の平均幅寸法W80と最適化フレックスビームの平均幅寸法W10及びそれぞれの個々の位置とを比較すると、断面慣性モーメント及び慣性極モーメント(I及びJ)は、明らかに減少しており、それにより、最適化フレックスビーム10のエッジ方向及びねじり剛性の総量は最小で済む。そのため、機体側遷移部ITRによって、(i)最適化フレックスビーム10の所望の翼弦方向一次周波数を決定し、(ii)最適化フレックスビーム10にピッチ運動を伝達するために必要な制御負荷を減少させ、及び/または、(iii)その長さ及び/または重量を減少させることに関して、より柔軟な設計が可能となる。
【0061】
最適化フレックスビーム10のエッジ方向及びねじり剛性を更に減少させるには、厚さ遷移部の終点である厚さ接合部TTの軸方向機体側まで円錐曲線部が続くように、円錐曲線部をできる限りハブ接続部HAR取付開口部40の近くに配置することが望ましい。より具体的には、円錐曲線部に沿った点CLを、S/DAが約1.60から約1.85範囲内に保つことが望ましい。ここでは、Sは、点CLから最も近い取付開口部40の幾何学的中心点40Cまでの距離であり、DAは、個々の取付開口部40の直径である。このような状態によって、円錐曲線部の空間位置は、取付開口部40に向かって内側に移動し、それにより、平均幅寸法W10は最も軸方向機体側に位置する。
【0062】
図8では、ピッチ部PRとブレード接続部BARとの間に位置する機外側遷移部OTRで幅及び厚さ遷移が行われている。機外側遷移部OTRは、主に遠心荷重に反作用するように設計されており、機体側遷移部に比較して負荷が軽いことが特徴であるということができる。即ち、機外側遷移部OTRにかかる負荷は、機体側遷移部にかかる負荷の1/3である。負荷が軽度である限り、高い層間せん断応力を引き起こさずに急な幅及び厚さ遷移を行うことができる。説明する実施例では、軸外し黒鉛層OGが、ピッチ部の単方向ファイバーグラス及び黒鉛層UF及びUGに差し込まれて配置されており、急な円錐曲線形状の厚さ遷移を可能にしている。更に、ブレード接続部BARで単方向及び軸外し複合材U及びOの50対50の混合材を形成するように、十分な軸外し黒鉛層OGが挿入されている。
【0063】
図9では、機外側遷移部は、機体側遷移部ITRと多くの同様の特徴を有している。例えば、機外側遷移部OTRの側面90Lは、円錐曲線形状を形成し、その円錐曲線形状は、ブレード接続部BARの取付開口部42に隣接して即ち厚さ接合部TTの機体側に配置される。上記で述べたように、これらの特徴は、とりわけピッチ部PRの有効な長さを延長し、層間せん断応力及び重量を減少させる。
【0064】
本発明の最適化複合フレックスビーム10は、真空成形、プレス成形及び樹脂トランスファー成形を含む従来の製造技術で製造することができる。好適実施例では、最適化フレックスビームの複合材U及びOの硬化処理に真空成形工程が使用される。より具体的には、図10及び図11を参照すると、複合レイアップCLは、人手により、または、数値制御されたテープレイアップヘッドによって、硬化処理されていない樹脂含単方向及び軸外し複合材を、最適化フレックスビーム10のフェース面102を形成するベース金型100に配置することによって形成される。更に、単方向及び軸外し素材は、最適化複合材の厚さ寸法を決定するように配置される。幅寸法WCLは、フレックスビーム10の最終ネットシェープよりも相対的に大きく、また、幅寸法WCLは、ハブ接続部の幅寸法WHARよりも約30%から約50%大きいことが望ましい。
【0065】
半剛性あて板(caul)104(図11参照)は、露出した複合レイアップCLの上面CLSに被さるように配置されており、バキュームバックと呼ばれる不浸透性弾性膜106は、あて板104に被さって配置されてベース型100にシールされている。オートクレーブ硬化処理の準備としてバキュームバッグ及び半剛性あて板がレイアップCLを圧縮するように、真空状態供給手段108は、複合レイアップCLが配置される型穴を真空排気する。型アッセンブリ110全体は、オートクレーブ(図示省略)内に配置され、その中で複合レイアップCLを硬化処理するための熱及び付加的な圧力がレイアップCLに加えられる。
【0066】
硬化処理された複合レイアップCLは、高速及び多軸ミリングマシン等による従来の機械加工装置を使用して幅が寸法出しされる。最終的な形成ステップは、上記で説明した面取り端部面を形成するために、最適化フレックスビームの端部を機械にかける工程を含む。
【0067】
最適化フレックスビーム10の好適実施例は、複数の部分及び小域の組合せを有しているが、例えば機体側遷移部ITR等の一部分のみに関する具体的な教示を他のフレックスビーム形状に使用することもできる。即ち、機体側遷移部ITRに関する教示は、従来の技術または使用状況に応じて変更された従来形状を有する部分と組合せて使用することができる。例えば、機体側遷移部ITRは、直角端部形状及び/または単方向材料複合ラミネート即ち単方向黒鉛のみまたは単方向ファイバーグラス材料のみを有するピッチ部と組合せて使用することもできる。更に、機体側遷移部ITRは、他のハブ接続装置に適合させることができるように、一定でない幅及び厚さ寸法を有するハブ接続部と組合せて使用することができる。
【0068】
具体的な実施例に基づいて本発明を開示及び説明してきたが、当業者によって理解されるように、上記及びその他の変更、省略及び追加は、本発明の趣旨及び範囲から離れない範囲で行うことができる。
【0069】
また、本発明を要約すると、最適化複合フレックスビーム10は、ハブ接続部HAR、ブレード接続部BAR、ピッチ部PR、ピッチ部PRとブレード接続部BARとの間に配置されてそれらの部分に隣接する機外側遷移部OTR、及びピッチ部PRとハブ接続部HARとの間に配置されてそれらの部分に隣接する機体側遷移部ITRをそれぞれ含む複数の隣接領域を有する。
【0070】
機体側遷移部ITRは、第一及び第二遷移小域ITR−1及びITR−2を含む。第二遷移小域ITR−2は、円錐曲線部及び臨界幅遷移小域Crwtを形成する。更に、第一及び第二遷移小域ITR−1及びITR−2は、単方向及び軸外し複合材U及びOの組合せによって構成される。上記に関して、軸外し材料Oは、軸外し複合材の割合%Oを決定し、臨界幅移行小域CRwtでの%Oの割合は、最適化曲線70によって表される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の最適化複合フレックスビームを含むヘリコプタテールロータアッセンブリの部分分解説明図である。
【図2】図2a及び図2bは、ハブ接続部、機体側遷移部、ピッチ接続部、機外側遷移部、ブレード接続部を含む複数の隣接部を示す最適化複合フレックスビームの平面図及び側面図である。
【図3】図3は、ピッチ部の内部構造及び断面形状を示す図2aの実質的3−3断面図である。
【図4】図4は、特に複合層レイアップ及び厚さ変位を示す、最適化フレックスビームのピッチ部、機体側遷移部、ハブ接続部の部分切り欠き側面説明図である。
【図5】図5aは、特に機体側遷移部の側面によって形成される円錐曲線部を示す最適化複合フレックスビームのピッチ部、機体側遷移部、ハブ接続部の部分平面図である。図5bは、円錐曲線部及び円錐曲線の傾斜角によって決定される臨界幅遷移小域の部分説明図である。
【図6】図6は、円錐曲線の傾斜角の機能を決定する臨界幅遷移小域内の軸外し複合材の割合のグラフである。
【図7】図7は、両者の種々の特徴を比較対照するために、従来の複合フレックスビームを本発明に係る最適化複合フレックスビーム上に重ねて示した部分切り欠き平面説明図である。
【図8】図8は、特に複合層レイアップ及び厚さ変位を示した、最適化フレックスビームのピッチ部、機外側遷移部、ブレード接続部の部分切り欠き側面説明図である。
【図9】図9は、最適化複合フレックスビームのピッチ部、機外側遷移部、ブレード接続部の部分平面図である。
【図10】図10は、最適化複合フレックスビームを製造するために使用される型アッセンブリの部分切り欠き平面図である。
【図11】図11は、図10の実質的な11−11断面図である。
【符号の説明】
HAR…ハブ接続部
BAR…ブレード接続部
PR…ピッチ部
ITR…機体側遷移部
OTR…機外側遷移部
HAR…ハブ接続部の幅
HAR…ハブ接続部の厚さ
BAR…ブレード接続部の幅
BAR…ブレード接続部の厚さ
PR…ピッチ部の長さ
10…フレックスビームの長さ
10…フレックスビーム
40,42…取付開口部

Claims (5)

  1. ハブ接続部(HAR)、ブレード接続部(BAR)、ピッチ部(PR)、及び前記ピッチ部(PR)と前記ブレード接続部(BAR)との間に配置されてそれらの部分に隣接する外周側遷移部(OTR)をそれぞれ含む複数の隣接領域を有する最適化したフレックスビーム(10)であって、
    前記ピッチ部(PR)とハブ接続部(HAR)との間に配置されてそれらの部分に隣接する内周側遷移部(ITR)を有し、前記内周側遷移部は、単方向複合材(U)及び軸外し複合材(O)の組合わさった構成を有し、前記単方向複合材及び前記軸外し複合材の組合せによって総材料構成及びそれに関連した軸外し複合材(O)の割合%Oが決定され、
    前記内周側遷移部(ITR)は、厚さの遷移によって定義される第一遷移小域(ITR−1)を有し、
    前記内周側遷移部(ITR)は、幅及び厚さの両方の遷移によって定義され、円錐曲線部を形成する第二遷移小域(ITR−2)を有し、前記第二遷移小域(ITR−2)は、臨界幅遷移小域(CRwt)を含み、
    前記円錐曲線部は、円錐曲線の傾斜角θWCを決定し、
    前記臨界幅遷移小域(CRwt)は、0度から約10度までの間の円錐曲線の傾斜角θWCに対応し、
    前記軸外し複合材(O)の割合%Oは、最適化曲線(70)によって定められ、前記臨界幅遷移小域(CRwt)における前記最適化曲線(70)は、
    Figure 0003950199
    ただし、Cは約14.4から約21.6までの間の定数
    kは1.0度-1の定数
    によって表され、
    前記臨界幅遷移小域における軸外し複合材の割合が最適化曲線に従って変化していることを特徴とするヘリコプタロータのための最適化複合フレックスビーム。
  2. 前記第一遷移小域(ITR−1)及び前記第二遷移小域(ITR−2)は、それらの間に接合部を有し、前記第一遷移小域(ITR−1)は、翼幅方向長さ寸法(L1)を決定し、前記軸外し複合材(O)積層の始点によって決まる翼幅位置(IBU)を含み、前記翼幅位置(IBU)は、前記接合部の軸方向外周側であることを特徴とする請求項1記載の最適化複合フレックスビーム(10)。
  3. 前記翼幅位置(IBU)は、前記接合部より距離(DS)に設けられており、前記距離(DS)は、前記翼幅方向長さ寸法(L1)の約15%から約25%までの間であることを特徴とする請求項2記載の最適化複合フレックスビーム(10)。
  4. 前記第二遷移小域(ITR−2)は、厚さ接合部(TT)を決定し、前記円錐曲線部は、前記厚さ接合部(TT)の軸方向内周側まで続くことを特徴とする請求項1記載の最適化複合フレックスビーム(10)。
  5. 前記ハブ接続部(HAR)は、取付開口部(40)を有し、前記取付開口部は、直径寸法(DA)及び幾何学的中心点(40C)を有し、前記円錐曲線部は、該円錐曲線部に沿う点(CL)を決定し、前記点(CL)は、前記幾何学的中心点(40C)からの距離寸法Sを決定し、前記距離寸法S及び前記直径寸法Dは、S/D比率を決定し、前記S/D比率は、約1.60から約1.85までの間であることを特徴とする請求項4記載の最適化複合フレックスビーム(10)。
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