JP3949281B2 - ピリジン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、特開平1-6270号公報(実施例32)、特開昭61-50978号公報(実施例2)、特開昭54-141783号公報(実施例21)あるいは特開昭61-22079号公報等に記載されている、胃酸分泌抑制剤・抗潰瘍剤等の医薬あるいは医薬製造中間体として有用なスルホキシドの、高収率かつ安全な製造法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来スルホキシドは、特開平1-6270号公報(EP-268956、US-5045552)、特開昭61-50978号公報(EP-174726、US-4628098)、特開昭54-141783号公報(EP-5129、US-4255431)、特開昭61-22079号公報(EP-166287、US-4758579)等に記載されているように、チオエーテルを、過酸化水素、m-クロロ過安息香酸、ジ亜塩素酸ナトリウム、亜臭素酸ナトリウム等の酸化剤により酸化して製造されてきた。(下記反応式参照、式中R1〜R4は前記と同様の意味を有する。)
【0003】
【化3】
【0004】
上記酸化剤の中でも、秤量容易性、保存安定性、反応活性等の観点から、m-クロロ過安息香酸が多用されている。
【0005】
【本発明が解決しようとする問題点】
例えば特開平1-6270号公報の実施例32では、チオエーテルを 0.96当量(純度換算)のm-クロロ過安息香酸を用いて酸化しているが、スルホキシドの収率は80%であり、工業的製法として十分な収率とはいえなかった。
また特開平1-6270号公報等では、ジクロロメタン(塩化メチレン)中で酸化反応を行っているが、環境対策上、ハロゲン化炭化水素溶媒は工業的には使用できない問題点があった。
加えてm-クロロ過安息香酸は高価であり、製造コスト上極めて不利であった。さらに、m-クロロ過安息香酸は危険物にも指定されてもおり、使用・保管にあたり格段の注意が必要であり、大量に扱いにくい問題点もあった。
【0006】
このように、工業的に優れたスルホキシド(II)の製造方法は、まだ確立されていないのが現状であり、新たな優れたスルホキシド(II)の製造方法が求められていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点の改善を目指して鋭意研究を進めてきた。その結果、下記の方法により、目的とするスルホキシド(II)を高収率かつ安全に、しかもハロゲン化炭化水素溶媒を使用せずに製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
以下に、本発明について詳述する。
まず、本発明にかかるチオエーテル(I)は下記一般式で表される。
【0009】
【化4】
【0010】
(式中R1は水素原子、メトキシ基またはジフルオロメトキシ基を、R2はメチル基またはメトキシ基を、R3は3-メトキシプロポキシ基、メトキシ基または2,2,2-トリフルオロエトキシ基を、R4は水素原子またはメチル基をそれぞれ意味する。)
本化合物はより具体的には、特開平1-6270号公報(実施例31)に記載されている2-{[4-(3-メトキシプロポキシ)-3-メチルピリジン-2-イル]メチルチオ}-1H-ベンズイミダゾール、特開昭61-50978号公報(実施例1)記載の化合物(R1=H、R2=CH3、R3=H、R4=CH2CF3、n=0、化学名;2-{[4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-3-メチルピリジン-2-イル]メチルチオ}-1H-ベンズイミダゾール)、特開昭54-141783号公報(実施例21)記載の化合物の前駆体である5-メトキシ-2-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジル)メチルチオ]-1H-ベンズイミダゾールまたは特開昭61-22079号公報記載の化合物の前駆体である5-ジフルオロメトキシ-2-[(4,5-ジメトキシ-2-ピリジル)メチルチオ]-1H-ベンズイミダゾール等と同一の化合物であり、本発明における出発物質である。いずれの化合物も、それぞれの公報記載の方法により製造することができる。
【0011】
次に、本発明にかかるスルホキシド(II)は下記一般式で表される。
【0012】
【化5】
【0013】
(式中、R1〜R4は前記と同様の意味を有する。)
本化合物はより具体的には、特開平1-6270号公報(実施例32)に記載されている2-{[4-(3-メトキシプロポキシ)-3-メチルピリジン-2-イル]メチルスルフィニル}-1H-ベンズイミダゾール:一般名;ラベプラゾール遊離体(Rabeprazole free base)、特開昭61-50978号公報(実施例2)記載の化合物(R1=H、R2=CH3、R3=H、R4=CH2CF3、n=1):一般名;ランソプラゾール(Lansoprazole):化学名;2-{[4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-3-メチルピリジン-2-イル]メチルスルフィニル}-1H-ベンズイミダゾール、特開昭54-141783号公報(実施例21)記載の5-メトキシ-2-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジル)メチルスルフィニル]-1H-ベンズイミダゾール:一般名;オメプラゾール(Omeprazole)、または特開昭61-22079号公報記載の5-ジフルオロメトキシ-2-[(4,5-ジメトキシ-2-ピリジル)メチルスルフィニル]-1H-ベンズイミダゾール:一般名;パントプラゾール(Pantoprazole)等と同一の化合物であり、本発明の目的化合物である。
【0014】
スルホキシド(II)としてさらに具体的には、例えば以下の化合物を挙げることができる。
【0015】
【化6】
【0016】
続いて、本発明の製造法について詳述する。
本発明は、具体的には、チオエーテル(I)を、酸無水物または金属触媒の存在下に、過ホウ酸塩で酸化することを特徴とするスルホキシド(II)の製造法である。
【0017】
ここで使用する酸化剤である過ホウ酸塩の種類は限定されないが、通常はナトリウム塩が好ましい。また水和物を形成することもありその水和量も限定されないが、通常は4水和物または1水和物が好ましい。なお過ホウ酸ナトリウム・4水和物(NaBO3・4H2O、CAS登録番号:10486-00-7)および過ホウ酸ナトリウム・1水和物(NaBO3・H2O、CAS登録番号:10332-33-9)は、試薬・工業原料等として、一般に市販されている。
【0018】
過ホウ酸塩の使用量も限定されないが、通常はチオエーテル(I)に対して0.8〜1.7当量を、より好ましくは0.85〜1.6当量を、さらに好ましくは0.9〜1.5当量を用いる。
【0019】
次に、本発明においては酸無水物または金属触媒の存在下に反応が行われ、両者のいずれかが存在すればよい。
ここで本発明における酸無水物とは、同一あるいは異なったカルボン酸同士が脱水されて形成されるもの、または2官能性カルボン酸が分子内脱水されたものであれば限定されないが、より具体的には例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水安息香酸または無水フタル酸等を挙げることができ、通常は無水酢酸および無水プロピオン酸がよりよい結果を与える。
酸無水物の使用量も限定されないが、通常はチオエーテル(I)に対して0.8〜1.7当量を、より好ましくは0.85〜1.6当量を、さらに好ましくは0.9〜1.5当量を用いる。
また酸無水物の使用量が、過ホウ酸塩に対して1.0〜2.0当量であり、かつチオエーテル(I)に対して0.9〜1.5当量である場合に、最も好ましい結果が得られる。
【0020】
続いて、本発明における金属触媒とは、具体的には五酸化バナジウム(V2O5)、酸化バナジウムアセチルアセトネート[Vanadyl Acetylacetonate, (CH3COCHCOCH3)2VO]、酸化モリブデンアセチルアセトネート[Molybdenum Oxide Acetylacetonate, (CH3COCHCOCH3)2MoO2]、ヘプタモリブデン酸アンモニウム・4水和物[Ammonium heptamolybdate tetrahydrate, (NH4)6Mo7O24・4H2O]、モリブデン酸アンモニウム[Ammonium molybdate, (NH4)2MoO4]、バナジン酸ナトリウム(Sodium vanadate, NaVO3)、チタンテトライソプロポキシド{Titanium Tetraisopropoxide, Ti[OCH(CH3)2]4}、三塩化チタン(TiCl3)、二酸化テルル(TeO2)、二酸化セレン(SeO2)、メチルトリオキソレニウム(CH3ReO3)または酸化タングステン(WO3)を意味し、酸化バナジウムアセチルアセトネートがより好ましい。
ここで金属触媒の使用量も限定されないが、過ホウ酸塩に対して0.05〜0.15当量の使用が好ましい結果を与える。
【0021】
本反応においては溶媒を用いるが、チオエーテル(I)、スルホキシド(II)あるいは過ホウ酸塩に対して不活性な溶媒であれば限定されず、単独でも混合物でもよい。しかし通常はメタノール、エタノール、プロパノール、メタノール/トルエン、エタノール/トルエン、プロパノール/トルエン、水/メタノール、水/エタノール、水/プロパノール、トルエン/ジメチルホルムアミド混合溶媒または酢酸が好ましい結果を与える。
【0022】
混合溶媒の場合、その混合比は限定されず、任意の割合において実施することができる。
また溶媒の使用量も限定されないが、通常はチオエーテル(I)の1gに対して1〜100mlを、より好ましくは5〜50mlを、さらに好ましくは10〜30mlを使用する。
【0023】
反応温度も限定されないが、通常は-50℃〜室温で、より好ましくは-40℃〜10℃で、さらに好ましくは-30℃〜0℃で実施する。
【0024】
次に、本反応において各試薬(原料)を加える順序も限定されないが、例えば以下の順序にて実施することにより、よりよい結果を与える。
(1) 過ホウ酸塩を溶媒に懸濁し、ここに酸無水物を滴下して均一となるまで攪拌し、必要により溶媒を加える。この溶液をチオエーテル(I)を溶解した溶液中に滴下する。
(2) 過ホウ酸塩を酸無水物と溶媒に加えて溶解し、この溶液をチオエーテル(I)を溶解した溶液中に滴下する。
(3) 過ホウ酸塩を、酸無水物と溶媒の混合液に溶解し、この溶液をチオエーテル(I)を溶解した溶液中に滴下する。
(4) 過ホウ酸塩を溶媒に懸濁し、ここに酸無水物と溶媒の混合液を滴下する。その後、均一となるまで攪拌し、この溶液をチオエーテル(I)を溶解した溶液中に滴下する。
(5) 過ホウ酸塩を溶媒に溶解し、チオエーテル(I)と金属触媒を溶解した溶液中に滴下する。
(6) チオエーテル(I)を溶解した溶液に金属触媒を加え、さらに過ホウ酸塩を溶解した溶液を滴下する。
【0025】
反応時間は、過ホウ酸塩あるいは溶媒の使用量、反応温度等によって異なるが、通常は30分〜6時間程度で終了する。
【0026】
反応終了後の処理も限定されないが、例えばハイドロサルファイトナトリウム等の還元剤を加えて過剰の試薬を分解し、必要により水相のpHを調節し、溶媒で抽出する。
得られたスルホキシド(II)は、結晶化、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の常法により精製することができる。
さらに必要により、公知の方法に従って塩とすることもできる。
【0027】
なお、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters),29(24),2967-2968,1988.には、塩化メチレン中にて無水酢酸の存在下、過ホウ酸ナトリウム・4水和物によりオレフィンを酸化して、エポキシドあるいはα,β-ジオール・モノアセテートを得る反応が開示されているが、本発明にかかるチオエーテルを酸化してスルホキシドを得る反応とは全く別の反応である。
【0028】
続いて本発明を具体的に説明するため、以下に実施例および参考例を掲げるが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0029】
実施例1 2-[{4-(2- メトキシプロポキシ )-3- メチルピリジン -2- イル } メチルスルフィニル ]-1H- ベンズイミダゾール (Rabeprazole free base) の合成
【0030】
【化7】
【0031】
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 3.06g(18.9mmol,97%)を水 8mlに懸濁し、ここに、内温を20℃に保ちながら無水酢酸 1.84ml(18.9mmol,95%)を滴下し、均一となるまで約5分間攪拌した。ここにさらにメタノール 8mlを加えた。この溶液を、2-[{4-(2-メトキシプロポキシ)-3-メチルピリジン-2-イル}メチルチオ]-1H-ベンズイミダゾール(以下、化合物I) 5.0g(14.6mmol)のトルエン/メタノール(10:1) 55ml溶液中に、-20℃にて約30分間かけて滴下し、そのまま同温で攪拌を続けた。約2時間後に反応終了をHPLCで確認し、0.1wt%-ハイドロサルファイトナトリウム水溶液 10mlを加え、そのまま同温で10分間攪拌を続けた。ヨウ化カリウムデンプン紙にて還元性を確認後、2M-水酸化ナトリウム水溶液 10mlを加えてpH8に調節し、水相と有機相を分離後、水相をトルエン 20mlで抽出した。有機相を飽和食塩水 15mlで洗浄した。この有機相をエバポレーターにて全量 25mlまで濃縮し、酢酸エチル 20mlを加えて-20℃で1時間攪拌して結晶化した。析出物を減圧濾過後、-20℃に冷却したトルエン/酢酸エチル(1:1) 5mlで2回洗浄し、1時間減圧乾燥して、白色固体状の標題化合物 4.37gを得た。(収率;83.6%)
【0032】
1H-NMR(400MHz,CDCl3); δ(ppm) 1.83〜2.09(m,2H)、2.13(s,3H)、3.34(s,3H)、3.52(t,J=6.2Hz,2H)、4.05(t,J=6.2Hz,2H)、4.79(s,2H)、6.70(d,J=5.7Hz,1H)、7.07〜7.30(m,2H)、7.30〜7.60(br-s,2H)、8.27(d,J=5.7Hz,1H).
【0033】
実施例2 2-[{4-(2- メトキシプロポキシ )-3- メチルピリジン -2- イル } メチルスルフィニル ]-1H- ベンズイミダゾール (Rabeprazole free base) の合成
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 2.12g(13.8mmol)を、無水酢酸 1.28ml(13.8mmol)を加えた水/メタノール(1:1) 10mlに溶解した。この溶液を、化合物I 3.0g(8.73mmol)のトルエン/メタノール(10:1) 66ml溶液中に、-5℃にて約40分間かけて滴下し、そのまま同温で攪拌を続けた。反応をHPLCで追跡し、滴下後1.5時間で0.1wt%-ハイドロサルファイトナトリウム水溶液 10mlを加え、そのまま同温で10分間攪拌した。ヨウ化カリウムデンプン紙にて還元性を確認後、2M-水酸化ナトリウム水溶液 8.6mlを加えてpH8に調節し、さらに水 40mlを加えた。水相と有機相を分離後、有機相を水 20mlで洗浄した。この有機相をエバポレーターにて全量 15mlまで濃縮し、酢酸エチル 15mlを加えて-20℃で30分間攪拌して結晶化した。析出物を減圧濾過後、-20℃に冷却したトルエン/酢酸エチル(1:1) 10mlで洗浄し、減圧乾燥して、白色固体状の標題化合物 2.55gを得た。(収率;81.3%)
【0034】
実施例3 2-[{4-(2- メトキシプロポキシ )-3- メチルピリジン -2- イル } メチルスルフィニル ]-1H- ベンズイミダゾール (Rabeprazole free base) の合成
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 2.68g(17.42mmol)を、無水酢酸 1.60ml(17.46 mmol)を加えた水/メタノール(1:1) 10ml溶液に溶解した。この溶液を、化合物I 3.0g(8.73mmol)のトルエン/メタノール(10:1) 66ml溶液中に、-5℃にて24分間かけて滴下し、そのまま同温で攪拌を続けた。約30分後にHPLCで反応終了を確認し、以後前実施例と同様に処理して、白色固体状の標題化合物 2.45gを得た。(収率;78.2%)
【0035】
実施例4 2-[{4-(2- メトキシプロポキシ )-3- メチルピリジン -2- イル } メチルスルフィニル ]-1H- ベンズイミダゾール (Rabeprazole free base) の合成
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 3.35g(21.78mmol)を、無水酢酸 4.4ml(45.3mmol)を加えた水/メタノール(1:1) 10ml溶液に溶解した。この溶液を、化合物I 3.0g(8.73mmol)のトルエン/メタノール(10:1) 66ml溶液中に、-5℃にて60分間かけて滴下し、そのまま同温で攪拌を続けた。約2時間後にHPLCで反応終了を確認し、以後前実施例と同様に処理して、白色固体状の標題化合物 2.48gを得た。(収率;79.4%)
【0036】
実施例5 2-[{4-(2- メトキシプロポキシ )-3- メチルピリジン -2- イル } メチルスルフィニル ]-1H- ベンズイミダゾール (Rabeprazole free base) の合成
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 3.06g(18.9mmol)を、無水酢酸 1.84ml(18.9mmol)/水 8ml混合液に溶解した。この溶液を、化合物I 5.0g(14.6mmol)のトルエン/ジメチルホルムアミド(3:1)混合液 67ml中に、-20℃にて60分間かけて滴下し、そのまま同温で攪拌を続けた。約2.5時間にHPLCで反応終了を確認し、以後前実施例と同様に処理して、白色固体状の標題化合物 4.26gを得た。(収率;81.5%)
【0037】
実施例6 2-[{4-(2- メトキシプロポキシ )-3- メチルピリジン -2- イル } メチルスルフィニル ]-1H- ベンズイミダゾール (Rabeprazole free base) の合成
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 3.06g(18.9mmol)を、無水酢酸 1.84ml(18.9mmol)/水 8ml混合液に溶解した。この溶液を、化合物I 5.0g(14.6mmol)のトルエン/エタノール(5:1) 60ml溶液中に、-20℃にて50分間かけて滴下し、そのまま同温で攪拌を続けた。約2時間後にHPLCで反応終了を確認し、以後前実施例と同様に処理して、標題化合物 3.99gを得た。(収率;78.5%)
【0038】
実施例7 2-[{4-(2- メトキシプロポキシ )-3- メチルピリジン -2- イル } メチルスルフィニル ]-1H- ベンズイミダゾール (Rabeprazole free base) の合成
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 30.6g(0.189mol,97%)を水 80mlに懸濁した。ここに、内温を約15℃に保ちながら無水酢酸 18.4ml(0.189mol,95%)とメタノール30mlの混合液を約20分間かけて滴下し、その後、均一となるまで約10分間攪拌した。この溶液を、化合物I 50.0g(0.146mol)のトルエン/メタノール(10:1) 550ml溶液中に、-20℃にて約2.5時間かけて滴下し、そのまま同温で約2時間攪拌を続けた。HPLCで反応終了を確認し、ハイドロサルファイトナトリウム(5.5g)/水(50ml)溶液を加え、そのまま同温で10分間攪拌を続けた。ヨウ化カリウムデンプン紙にて還元性を確認後、2M-水酸化ナトリウム水溶液 110mlを加えてpH8に調節した。酢酸エチル 300ml、水 200mlおよびメタノール 80mlを加え、水相と有機相を分離した。有機相を飽和食塩水 150mlで洗浄後、浴温30℃で減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル 150mlとトルエン 150mlを加えて溶解し、-20℃で1時間撹拌した。析出物を減圧濾過後、t-ブチルメチルエーテル 50mlで3回洗浄し、1時間減圧乾燥して、白色粉末状の標題化合物 48.0gを得た。(収率;91.8%、HPLC純度;95.9%)
【0039】
【0040】
実施例8 2-[{4-(2- メトキシプロポキシ )-3- メチルピリジン -2- イル } メチルスルフィニル ]-1H- ベンズイミダゾール (Rabeprazole free base) の合成
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 3.06g(18.9mmol)を水 8mlに懸濁し、ここに無水プロピオン酸 2.56ml(18.9mmol)を3分間かけて滴下し、均一となるまで約10分間攪拌した。メタノール 8mlを加え(内温;22.6℃〜26.2℃)、この溶液を化合物I 5.00g(14.6mmol)のトルエン/メタノール(10:1)溶液 55ml中に、-20℃にて35分間かけて滴下し、同温でさらに1時間攪拌した。前実施例と同様に処理して、標題化合物 4.19gを得た。(収率;80.1%)
【0041】
実施例9 2-[{3- メチル -4-(2,2,2- トリフルオロエトキシ ) ピリド -2- イル } メチルチオ ] ベンズイミダゾール (Lansoprazole) の合成
【0042】
【化8】
【0043】
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 0.58g(3.68mmol)を、無水酢酸 0.365ml(3.68mmol)と水 8mlの混合液に溶解した。この溶液を、2-[{3-メチル-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリド-2-イル}メチルチオ]ベンズイミダゾール 1.0g(2.83mmol)のトルエン/メタノール(5:1) 30ml溶液中に、0℃にて16分間かけて滴下し、そのまま同温で攪拌を続けた。約1.5時間後にHPLCで反応終了を確認した。さらに1時間攪拌した後、内温10℃まで徐々に昇温し、4時間攪拌を続けた。その後、-15℃まで冷却して20分間攪拌した後、析出した結晶を減圧濾取した。結晶を冷トルエン 10mlで2回洗浄した後減圧乾燥して、白色粉末状の標題化合物 0.82gを得た。(収率;78.4%)
【0044】
融点; 170-172℃(分解)
1H-NMR(400MHz,CDCl3); δ(ppm) 2.20(s,3H)、4.80(s,2H)、4.88(s,2H)、6.98(d,J =5.6Hz,1H)、7.33〜7.36(m,2H)、7.63(br-s,2H)、8.18(d,J=5.6Hz,1H).
【0045】
実施例10 5- メトキシ -2-[(4- メトキシ -3,5- ジメチル -2- ピリジル ) メチルスルフィニル ]-1H- ベンズイミダゾール (Omeprazole) の合成
【0046】
【化9】
【0047】
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 11.2g(73.0mmol)を水 50mlに懸濁し、ここに無水酢酸 6.87ml(73.0mmol)/メタノール(5.75ml)溶液を、15.4℃にて6分間かけて滴下し、均一となるまでさらに約13分間攪拌した(内温;15.4℃〜19.4℃)、この溶液を、5-メトキシ-2-[(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジル)メチルチオ]-1H-ベンズイミダゾール 20.0g(60.8mmol)のトルエン/メタノール(10:1)溶液 220mlに、-20℃で2時間かけて滴下した。同温でさらに1時間攪拌した後、析出した結晶を濾取し、水 20mlで3回、tert-ブチルメチルエーテル 20mlで2回洗浄した。得られた結晶を乾燥して、白色固体状の標題化合物 17.8gを得た。(収率;85%)
【0048】
1H-NMR(400MHz,CDCl3); δ(ppm) 2.20(s,3H)、2.25(s,3H)、3.68(s,3H)、3.86(s,3H)、4.70(Abq,2H,J=13.7Hz)、6.98〜7.00(m,2H)、7.65(br-d,1H,J=8.29Hz)、8.24(s,1H)、11.9(br-s,1H).
【0049】
実施例11 2-[{4-(2- メトキシプロポキシ )-3- メチルピリジン -2- イル } メチルスルフィニル ]-1H- ベンズイミダゾール (Rabeprazole free base) の合成
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 537mg(3.49mmol)を、酢酸 0.40ml(6.99mmol)/水 10ml混合液に溶解し、この溶液を、化合物I 1.00g(2.91mmol)と酸化バナジウムアセチルアセトネート[Vanadyl Acetylacetonate, (CH3COCHCOCH3)2VO] 77.3mg(0.29mmol)のメタノール/トルエン(20:1)混合液 21ml中に、4℃にて40分間かけて滴下し、そのまま同温で攪拌を続けた。約40分後、HPLCで反応終了を確認し、以後前実施例と同様に処理して、標題化合物 2.35gを得た。(収率;75.0%)
【0050】
実施例12 2-[{4-(2- メトキシプロポキシ )-3- メチルピリジン -2- イル } メチルスルフィニル ]-1H- ベンズイミダゾール (Rabeprazole free base) の合成
過ホウ酸ナトリウム・4水和物 1.61g(10.5mmol)を、酢酸 1.20ml(21.0mmol)/水 30ml混合液に溶解し、この溶液を、化合物I 3.00g(2.91mmol)と酸化バナジウムアセチルアセトネート 232mg(0.87mmol)のメタノール/トルエン(20:1)溶液 63ml中に、-5℃にて約1時間かけて滴下し、そのまま同温で攪拌を続けた。約5時間後に、HPLCで反応終了を確認し、以後前実施例と同様に処理して、標題化合物 2.22gを得た。(収率;71.0%)
【0051】
上記結果から、本発明により目的とするスルホキシド(II)が高収率かつ安全に得られることが明らかである。
また過ホウ酸塩、特に過ホウ酸ナトリウム・4水和物の価格は、m-クロロ過安息香酸と比較して約1/10であり、製造コスト上も大変優れている。さらに危険物でもなく、大量の取り扱いも容易であり、本発明が工業的に優れたスルホキシド(II)の製造方法であることが明らかである。
Claims (8)
- 過ホウ酸塩が過ホウ酸ナトリウムである請求項1記載のスルホキシド(II)の製造法。
- 過ホウ酸塩が過ホウ酸ナトリウム・4水和物または過ホウ酸ナトリウム・1水和物である請求項1または2記載のスルホキシド(II)の製造法。
- 過ホウ酸塩の使用量が、チオエーテル(I)に対して0.9〜1.5当量であることを特徴とする請求項1ないし3記載のスルホキシド(II)の製造法。
- 酸化反応をメタノール、エタノール、プロパノール、メタノール/トルエン、エタノール/トルエン、プロパノール/トルエン、水/メタノール、水/エタノー ル、水/プロパノール、トルエン/ジメチルホルムアミド混合溶媒または酢酸中で行うことを特徴とする請求項1ないし4記載のスルホキシド(II)の製造法。
- 酸無水物が無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水安息香酸または無水フタル酸から選ばれた1種以上である請求項1ないし5記載のスルホキシド(II)の製造法。
- 酸無水物の使用量が、チオエーテル(I)に対して0.9〜1.5当量であることを特徴とする請求項1ないし6記載のスルホキシド(II)の製造法。
- 酸無水物の使用量が、過ホウ酸塩に対して1.0〜2.0当量であり、かつチオエーテル(I)に対して0.9〜1.5当量であることを特徴とする請求項1ないし7記載のスルホキシド(II)の製造法。
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