JP3946990B2 - マンホールの蓋受枠引き抜き装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マンホールの蓋受枠引き抜き装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のマンホールの蓋受枠引き抜き装置として、例えば、登録実用新案第3010469号公報に開示されているように、リング状の基枠の上部に複数の油圧ジャッキを配設し、この油圧ジャッキの上端に昇降枠を担持し、昇降枠には下端に爪が付いた複数のねじ棒を上下位置調整自在でかつ揺動自在に設け、ねじ棒の下端に、放射状に配設した三又の油圧シリンダを連結したものがある。
この引き抜き装置を用いて蓋受枠を引き抜く場合、基枠をマンホールの周囲に設置し、ねじ棒を下方に下げて爪を蓋受枠内に配設し、油圧シリンダの作動により爪を放射方向に進出させてマンホールの蓋受枠の内周部に係合する。そして、この状態より油圧ジャッキを作動することで蓋受枠ごと昇降枠を持ち上げるものとなっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の引き抜き装置は、複数の爪や油圧シリンダが周方向に等間隔に配設されていて相互の位置関係が固定の状態とされていた。
一方、マンホールの蓋受枠は、その内周部に前記爪を係合させるための突起のほか、ズレ止めやステップ等のその他の突起物が突出していることがあり、かかる蓋受枠に対して上記引き抜き装置を用いた場合、前記突起物が障害となって適切に爪を係合できないことがあった。これは、複数の爪の相対位置が等間隔に固定されているため、障害物を避けるように或る爪の位置を設定しても、他の爪の位置もこれに準じて設定されることとなり、これら全ての爪位置に爪係合用の突起が適合するとは限らないからである。
【0004】
したがって、このような蓋受枠に対しては他の方法や機器を用いて引き抜き作業を行わざるを得ず、また、予め障害物を避けるような爪配置で特定の蓋受枠専用の引き抜き装置を製作することも可能であるが、コストが嵩み不経済である。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓋受枠の内周部に障害物がある場合であっても、この障害物を避けて引き上げ爪を蓋受枠に係合できるようにすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を講じている。
すなわち、複数の駆動シリンダを略水平の姿勢で放射状に配設し、各駆動シリンダに対して引き上げ爪を設け、この引き上げ爪を前記駆動シリンダによって放射方向に進出してマンホールの蓋受枠に係合させるようにしたマンホールの蓋受枠引き抜き装置において、
少なくとも1つの駆動シリンダが、他の駆動シリンダとの間隔を可変とするように放射中心位置を中心として周方向に位置調整自在に設けられていることを特徴とするものである。
【0006】
このような構成を採用することにより、駆動シリンダの位置を調整することによって障害物を避けた状態で引き上げ爪を蓋受枠に係合できるようになる。
なお、上記引き上げ爪は、各駆動シリンダに直接的に設けられていてもよいし、例えば、図1に示す支持杆13等を介して間接的に設けられていてもよい。
位置調整自在な前記駆動シリンダは、放射中心位置で水平方向に変位可能に支持されていることが推奨される。
これによって当該駆動シリンダと他の駆動シリンダとの放射配置関係が崩れることがなく、当該駆動シリンダに対応する引き上げ爪を好適に放射方向に進出させて蓋受枠に係合することが可能となる。
【0007】
前記駆動シリンダが支持杆の下部に連結され、この支持杆の上部が球面受け座を有する支持部材を介して揺動自在に支持されている場合、駆動シリンダを位置調整するとその分支持杆が揺動するため、球面受け座による受圧面積が減少することがある。このため、この支持部材を、前記駆動シリンダの放射中心位置を中心として周方向に位置調整自在に設け、駆動シリンダの位置調整に応じて支持部材の位置も調整することによって、受圧面積を確保して確実に支持杆及び駆動シリンダを支持することが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態にかかる引き抜き装置1は、マンホールMの蓋受枠Wの周囲に接地するベース部材2と、蓋受枠Wの内周面から突出した突部W1に係合する引き上げ爪3と、引き上げ爪3を突部W1に向けて出退移動させる出退駆動部5と、引き上げ爪3を上昇させる引き上げ駆動部4とを有している。
【0009】
なお、本実施形態における蓋受枠Wは、上部にマンホールMの蓋が嵌合される受け部を形成した筒形の胴部W2と、この胴部W2から径方向外側に突出するフランジ部W3と、胴部W2の下端から径内方向に突出する前記突部W1とを有し、該突部W1は、胴部W2の周方向全周に渡り連続して又は周方向複数箇所に部分的に形成されたものとなっている。なお、上記突部W1は、胴部W2の下端に設けられたものに限らず上下中途位置から突設されたものであってもよい。
ベース部材2は、下部側に配設された平面視リング状の下フレーム8と、この下フレーム8上に設けられ、平面視3角形の枠形状を呈した上フレーム9とを有している。
【0010】
引き上げ駆動部4は、上フレーム9上に設けられた油圧ジャッキよりなる駆動体11と、この駆動体11の上部に設けられ、該駆動体11により上下に昇降する昇降枠12と、該昇降枠12から下方に吊り下げ状で且つ上下位置調整自在に設けられた複数の支持杆13とを有し、この支持杆13の下端部に引き上げ爪3及び出退駆動部5が設けられている。
本実施形態では、前記駆動体11は3つ設けられ、それぞれ上フレーム9の頂部に設けられており、ハンドル11Aの操作によって上下に伸縮するようになっている。
【0011】
昇降枠12は、平面視三角形の枠形状を呈し、その各頂部が駆動体11の上端に揺動可能に連結されている。
支持杆13は、昇降枠12の各頂部の内側に支持部材14を介して揺動自在に取り付けられており、その上部側が外周全体にねじ溝を形成したねじ軸16として構成されている。そして、このねじ軸16における支持部材14の上側にはハンドル付きの調整ナット17が螺合され、該調整ナット17を回すことによって支持杆13が上下に位置調整される。
【0012】
上記支持部材14は、図5に示すように、昇降枠12の頂部上に備えられた台板部27上に固定され、上面が球形に凹設された球面受け座14Aと、下面が球面受け座14Aに適合する球形に形成された球面台14Bとを有し、この球面台14Bが球面受け座14Aに摺動自在に面接触し、球面台14Bの上側には調整ナット17が当接して支持杆13の下方移動が規制されている。
出退駆動部5は、図3及び図4にも示すように、複数の油圧シリンダよりなる駆動シリンダ20を備えている。本実施形態では3つの駆動シリンダ20が備えられ、各駆動シリンダ20は、蓋受枠Wの径方向に向いて放射状に配設され、その下側に配置された円板状の基板21によって互いの位置関係が保持されるようになっている。また、各駆動シリンダ20のシリンダロッドの先端はそれぞれ支持杆13の下部に連結されている。
【0013】
図に示す例では、各駆動シリンダ20は周方向に等間隔(θ=120°)に配設されている。また、各駆動シリンダ20は、ベース部材2上に設けられた油圧ポンプ22(図2参照)からの圧油によって伸縮動作する。
引き上げ爪3は、各支持杆13の下部に取り付けられている。したがって、本実施形態では合計3つの引き上げ爪3が備えられ、それぞれ駆動シリンダ20の放射中心位置X回りに等間隔に配設され、前記駆動シリンダ20の伸縮動作によって放射方向に出退移動するようになっている。そして、外方へ進出したときに蓋受枠Wの突部W1に係合する。
【0014】
なお、本実施形態では引き上げ爪3は先端先細り状に形成され、進出したときに蓋受枠Wの接地部分の下側に挿入されるようになっている。
前記出退駆動部5において、3つの駆動シリンダ20はそれぞれ装着ブラケット24に装着され、この装着ブラケット24が基板21に対してボルト25によって固定されるようになっている。
具体的には、装着ブラケット24の底板部24Aに複数のボルト孔24Bが貫通され、基板21にはボルト孔24Bに対応する位置に複数の雌ねじ孔が形成されており、ボルト孔24Bから挿通したボルト25を雌ねじ孔に螺合することで基板21に装着ブラケット24が固定される。
【0015】
上記ボルト孔24Bは、放射配置された各駆動シリンダ20の中心(放射中心)位置Xを中心とした円弧状の長孔に形成され、他方、装着ブラケット24は、基板21上の放射中心位置Xに立設したセンターピン26に連結バー24Cを介して水平方向変位可能(回動可能)に支持されている。
このため、装着ブラケット24は、ボルト孔24Bの長さの範囲での位置調整が可能であり、位置調整によって各駆動シリンダ20の間隔(相対角度θ)が調整でき、これに伴う支持杆13の揺動で引き上げ爪3の位置も調整されるようになっている。
【0016】
このように個々の駆動シリンダ20の位置を調整することによって、蓋受枠W内に突部W1以外の突起物がある場合であっても、この突起物と引き上げ爪3との干渉を回避することが可能となる。よって、引き上げ装置1の利用範囲が拡大し、特定の蓋受枠専用に引き上げ爪3を配置した引き上げ装置を新たに製作する必要もなく、コストがかからず経済的である。
また、各駆動シリンダ20は、センターピン26によって支持されているので、位置調整を行ったとしても放射方向に向いた姿勢は維持される。このため、引き上げ爪3を確実に放射方向に出退移動することができ、引き上げ爪3が傾いて突部W1に係合されてしまうようなことが防止される。
【0017】
等間隔に配置された標準の状態(図3の実線位置)からの駆動シリンダ20の最大調整角度αは、左右両側にそれぞれ5°〜10°程度とするのが好ましい。これは、上記範囲より大きく設定したとすれば、駆動シリンダ20の位置調整による支持杆13の揺動で、支持部材14の球面台14Bに対する球面受け座14Aの受圧面積が大きく減少してまい、支持部分における面圧が増大するためである。
なお、本実施形態では、上記のような球面受け座14Aの受圧面積の減少を可及的に防止するため、昇降枠12に対する球面受け座14Aの位置をも調整可能に構成している。
【0018】
具体的には、球面受け座14Aは、そのフランジ部分がボルト28によって台板部27に固定されており、台板部27に形成したボルト挿通孔27Aは、駆動シリンダ20の放射中心位置Xを中心とした円弧状の長孔に形成されている。したがって、ボルト挿通孔27Aの範囲で球面受け座14Aを放射中心位置Xを中心として周方向に位置調整でき、かかる調整により球面受け座14Aによる受圧面積を最大に確保する(標準状態に戻す)ことが可能となっている。
また、支持部材14の位置を調整した場合、昇降枠12に対する支持杆13の位置も変わることとなるが、この際、支持杆13の揺動範囲を確保するようにするため、昇降枠12(台板部27)には、支持杆13が挿通する貫通孔29が長孔状に形成されている。
【0019】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、全ての駆動シリンダ20を位置調整自在として設けているが、少なくとも1つ(1又は2)の駆動シリンダ20を位置調整自在とすることによって、他の駆動シリンダ20との相対間隔(角度)を変更できる。
また、上記実施形態においては、支持杆13の下部に引き上げ爪3と駆動シリンダ20とをそれぞれ連結したものとなっているが、支持杆13の下端部に基板21を連結し、引き上げ爪3を駆動シリンダ20に直接的に取り付けた構成であってもよい。
【0020】
駆動シリンダ20としては、エアシリンダ、機械式シリンダ等を利用することができ、駆動シリンダ20、支持杆13、引き上げ爪3の数量は、適宜変更可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、駆動シリンダを調整可能とすることによって蓋受枠内の障害物と引き上げ爪との干渉を防止し、適切に引き上げ爪を蓋受枠に係合できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる引き上げ装置の全体正面図である。
【図2】同引き上げ装置の全体平面図である。
【図3】駆動シリンダの平面図である。
【図4】駆動シリンダの側面図である。
【図5】(a)は、支持部材の平面図、(b)は、支持部材の正面断面図である。
【符号の説明】
1 引き上げ装置
3 引き上げ爪
13 支持杆
14 支持部材
14A 球面受け座
20 駆動シリンダ
21 基板
26 センターピン
Claims (3)
- 複数の駆動シリンダ(20)を略水平の姿勢で放射状に配設し、各駆動シリンダ(20)に対して引き上げ爪(3)を設け、この引き上げ爪(3)を前記駆動シリンダ(20)によって放射方向に進出してマンホール(M)の蓋受枠(W)に係合させるようにしたマンホールの蓋受枠引き抜き装置において、
少なくとも1つの駆動シリンダ(20)が、他の駆動シリンダ(20)との間隔を可変とするように放射中心位置(X)を中心として周方向に位置調整自在に設けられていることを特徴とするマンホールの蓋受枠引き抜き装置。 - 位置調整自在な前記駆動シリンダ(20)が、放射中心位置(X)にて水平方向変位可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のマンホールの蓋受枠引き抜き装置。
- 前記駆動シリンダ(20)が支持杆(13)の下部に連結され、この支持杆(13)の上部が球面受け座(14A)を有する支持部材(14)により揺動自在に支持されており、この支持部材(14)が、前記駆動シリンダ(20)の放射中心位置(X)を中心として周方向に位置調整自在に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマンホールの蓋受枠引き抜き装置。
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