JP3945594B2 - 車両の制動液圧制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、少なくとも車両の後輪の制動用シリンダの液圧をアクチュエータで調整して、理想制動力配分を達成するように制動用シリンダの液圧を制御する車両の制動液圧制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
前記した理想制動力配分とは、制動に伴って前輪側の輪荷重が増加し、逆に後輪側の輪荷重が減少することから、夫々の車輪の摩擦力が変化することに着目したものであり、例えば車両に作用する前後加速度をパラメータとして、前後各輪がロックしない限界制動力をプロットして得られるものである。そして、このような理想制動力配分を達成するための車両の制動液圧制御装置としては、例えば特開平5−278585号公報に記載されるものがある。
【0003】
この従来例では、前記したような理想制動力配分が、前後輪で同等の車輪速度となることを前提としていることから、前後輪の回転速度を検出し、後輪の回転速度が前輪の回転速度より小さいと判定されたときに、後輪の制動用シリンダの液圧を減圧又は保持する制御信号をアクチュエータに出力し、後輪の回転速度が前輪の回転速度より大きいと判定されたときに、後輪の制動用シリンダの液圧を復圧(増圧)する制御信号をアクチュエータに出力し、結果的に後輪が前輪と同等の速度で減速されるようにしている。これにより、例えば空車時や車載時等での車両重量の変化やそれに伴う輪荷重の変化から発生する路面との摩擦力又はその路面反力トルクの変化に係わらず、前後輪の制動力を前記理想制動力配分に近づけることを可能としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、停止距離を最短とするための必要にして十分な条件とは、前後輪がロックしない限界の減速度で且つ同じ車輪速度,つまり回転速度で減速することなのであるから、前述の従来例は、原理的にはこれを達成する可能性を有している。
【0005】
しかしながら、車輪の回転速度を検出しながら各車輪の制動力を制御する,或いはその制動液圧を制御するのは、所謂フィードバック制御であって、例えば制動液圧を制御し、その結果、制動力が変化し、それが車輪の回転速度として発現して始めて制御の正当性が評価される。そのため、どうしても制動液圧制御の応答性に劣り、例えば後輪の回転速度が目標値の近傍で増減するハンチングに似た現象が発生し易い。また、車輪の回転速度を検出するには、例えば車輪の回転角速度から演算によって求めるのが一般的であるが、このようにして検出される回転速度には比較的多くの誤差が含まれている。その要因としては、例えばタイヤの空気圧変動や輪荷重変動に伴うタイヤの転がり動半径の変化や、旋回軌跡に応じた車輪回転角速度の変化、或いは低回転から高回転まで回転する車輪の回転速度に応じたノイズの影響などが挙げられる。従って、このような影響を抑制して高精度な車輪の回転速度を得るためには、例えば所定時間内における移動平均値やノイズ除去のフィルタリングを施した値等を用いる必要があり、しかしながら、そのような値をもって車輪の回転速度とするには、車輪の回転速度として検出するまでに時間を要し、その結果制御のタイミングが遅くなってしまうという問題もある。
【0006】
本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発されたものであり、マスタシリンダの作動液圧又は前輪の制動用シリンダの作動液圧から直接的に前輪の制動力を算出し、これに対して目標とする後輪の制動力を設定して、その後輪の目標制動力が達成されるように当該後輪の制動用シリンダの作動液圧を制御することで、制御の応答性を向上すると共に、車輪の回転角加速度や車両に作用する前後加速度から車両重量及び輪荷重を算出し、これらを用いて後輪の目標制動力を設定することにより、そのときの車両状態に応じた理想制動力配分を確実に達成可能とする車両の制動液圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記諸問題を解決するために、本発明のうち請求項1に係る車両の制動液圧制御装置は、少なくとも車両の後輪の制動用シリンダの作動液圧を指令信号に応じて調整可能なアクチュエータと、マスタシリンダの作動液圧を検出するマスタシリンダ作動液圧検出手段と、少なくとも前後各輪の回転角加速度を検出する車輪回転角加速度検出手段と、前記マスタシリンダ作動液圧検出手段で検出されたマスタシリンダの作動液圧に基づいて前輪の制動力を算出すると共にこの前輪の制動力に基づいて前後各輪がロックしない限界制動力の理想制動力配分となる後輪の目標制動力を設定し且つこの後輪の目標制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する制動液圧制御手段とを備え、前記制動液圧制御手段は、前記車輪回転角加速度検出手段で検出された前後各輪の回転角加速度を用いて前後各輪の制動力を算出すると共にこの前後各輪の制動力に基づいて算出される車両重量を用いて前記後輪の目標制動力を設定することを特徴とするものである。
【0008】
なお、この発明では、一般にこの種の車両の制動液圧制御装置では、後輪の制動用シリンダの作動液圧を制御するだけで、前輪の制動用シリンダには、マスタシリンダの作動液圧がそのまま供給されることを前提としている。
【0009】
また、本発明のうち請求項2に係る車両の制動液圧制御装置は、少なくとも車両の後輪の制動用シリンダの作動液圧を指令信号に応じて調整可能なアクチュエータと、前輪の制動用シリンダの作動液圧を検出する前輪制動用シリンダ作動液圧検出手段と、少なくとも前後各輪の回転角加速度を検出する車輪回転角加速度検出手段と、前記前輪制動用シリンダ作動液圧検出手段で検出された前輪制動用シリンダの作動液圧に基づいて前輪の制動力を算出すると共にこの前輪の制動力に基づいて前後各輪がロックしない限界制動力の理想制動力配分となる後輪の目標制動力を設定し且つこの後輪の目標制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する制動液圧制御手段とを備え、前記制動液圧制御手段は、前記車輪回転角加速度検出手段で検出された前後各輪の回転角加速度を用いて前後各輪の制動力を算出すると共にこの前後各輪の制動力に基づいて算出される車両重量を用いて前記後輪の目標制動力を設定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のうち請求項に係る車両の制動力制御装置は、少なくとも車両に作用する前後方向への前後加速度を検出する前後加速度検出手段を備え、前記制動液圧制御手段は、この前後加速度検出手段で検出された前後加速度及び前記算出された前後輪の制動力を用いて前記車両重量を算出すると共にこの車両重量及び前後加速度に基づいて算出される前後各輪の輪荷重を用いて前記後輪の目標制動力を設定することを特徴とするものである。
【0012】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の車両の制動液圧制御装置によれば、マスタシリンダの作動液圧を検出し、この検出されたマスタシリンダの作動液圧に基づいて前輪の制動力を算出することで、正確にして迅速な前輪の制動力を算出可能とすると共に、この正確で迅速な前輪の制動力に基づいて前後各輪がロックしない限界制動力の理想制動力配分となる後輪の目標制動力を設定し且つこの後輪の目標制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する構成としたために、従来に比して制御の応答性が向上すると共に制御性も向上することができる。
【0013】
また、前輪の制動用シリンダの作動液圧を検出し、この検出された前輪の制動用シリンダの作動液圧に基づいて前輪の制動力を算出することで、正確にして迅速な前輪の制動力を算出可能とすると共に、この正確で迅速な前輪の制動力に基づいて前後各輪がロックしない限界制動力の理想制動力配分となる後輪の目標制動力を設定し且つこの後輪の目標制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する構成としたために、従来に比して制御の応答性が向上すると共に制御性も向上することができる。
【0014】
また、前後各輪の回転角加速度を検出し、この検出された前後各輪の回転角加速度を用いることで正確な前後各輪の制動力を算出可能とすると共に、この正確な前後各輪の制動力に基づいて算出される車両重量を用いて前記後輪の目標制動力を設定することにより、当該後輪の目標制動力をより理想制動力配分に近いものとして制御性を向上することができる。
【0015】
また、車両に作用する前後方向への前後加速度を検出し、この検出された前後加速度と正確に算出された前後各輪の制動力とを用いることで正確な車両重量を算出可能とすると共に、この正確な車両重量と前後加速度とに基づいて算出される前後各輪の輪荷重を用いて前記後輪の目標制動力を設定することにより、当該後輪の目標制動力を更に理想制動力配分に近いものとして制御性を向上することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両の制動液圧制御装置の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明の車両の制動液圧制御装置を,FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式をベースにした後輪駆動車両のアンチスキッド制御装置に展開した一例である。
【0018】
図中、1FL,1FRは前左右輪、1RL,1RRは後左右輪であって、後左右輪1RL,1RRにエンジンEGからの回転駆動力が変速機T、プロペラシャフトPS及びディファレンシャルギヤDGを介して伝達される。また、各車輪1FL〜1RRには、それぞれ制動用シリンダとしてのホイールシリンダ2FL〜2RRが取付けられ、更に前輪1FL,1FRには、これらの車輪の各回転速度に応じた正弦波信号を出力する車輪速センサ3FL,3FRが取付けられ、プロペラシャフトPSには、後二輪の平均回転速度に応じた正弦波信号を出力する車輪速センサ3Rが取付けられている。なお、各ホイールシリンダ2FL〜2RRは、ディスクロータにパッドを押付けて制動する,所謂ディスクブレーキである。
【0019】
各前輪側ホイールシリンダ2FL,2FRには、ブレーキペダル4の踏込みに応じて前輪側及び後輪側の2系統のマスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダ5からの一方の系統の作動液圧(以下、単に前輪用マスタシリンダ圧とも記す)PMCF が元圧として前輪側アクチュエータ6FL,6FRを介して個別に供給されると共に、後輪側ホイールシリンダ2RL,2RRには、マスタシリンダ5からの他方の作動液圧(以下、単に後輪用マスタシリンダ圧とも記す)PMCR が元圧として共通の後輪側アクチュエータ6Rを介して供給されるように構成されている。従って、このアンチスキッド制御装置は、全体として3センサ3チャンネルのシステム構成になっている。なお、前記マスタシリンダ5の一方の系統には前記前輪側アクチュエータ6FL,6FRに供給される前輪用マスタシリンダ圧PMCF を、また他方の系統には前記後輪側アクチュエータ6Rに供給される後輪用マスタシリンダ圧PMCR を検出する圧力センサ13F,13Rが夫々配設されていると共に、ブレーキペダル4には、その踏込時にオン状態,即ち論理値“1”のブレーキスイッチ信号SBRK を出力するブレーキスイッチ14が配設されている。このうち、前記各圧力センサ13F,13Rは、前後輪用マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR の大きさを電気信号に変換するものであり、この実施形態では両者は互いにリニアな関係になっている。従って、後述するコントロールユニットCRのマイクロコンピュータ20で読込まれた電気信号はそのまま前後輪用マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR を表示する。なお、マイクロコンピュータ20で読込む前に、ノイズ除去処理等のために適宜ローパスフィルタ処理を施すなどしてもよい。また、この車両には、当該車両に作用する前後方向への加速度,所謂前後加速度GX を検出する前後加速度センサ15が取付けられている。
【0020】
前記アクチュエータ6FL〜6Rの夫々は、図2に示すように、マスタシリンダ5に接続される液圧配管7とホイールシリンダ2FL〜2RRとの間に介装された電磁流入弁8と、この電磁流入弁8と並列に接続された電磁流出弁9、液圧ポンプ11及び逆止弁11の直列回路と、流出弁9及び液圧ポンプ10間の液圧配管に接続されたアキュームレータ12とを備えている。そして、異常時の作動補償,所謂フェールセーフの関係から、前記電磁流入弁8は通電のないノーマル位置で常時開状態(増圧状態),通電による切換え位置で閉状態(圧力保持状態)に移行し、前記電磁流出弁9は通電のないノーマル位置で常時閉状態(圧力保持状態),通電による切換え位置で開状態(減圧状態)に移行する。
【0021】
そして、各アクチュエータ6FL〜6Rの電磁流入弁8、電磁流出弁9及び液圧ポンプ10は、車輪速センサ3FL〜3Rからの車輪速正弦波信号と、前記圧力センサ13F及び13Rのマスタシリンダ圧PMCF 及びPMCR と、前記ブレーキスイッチ14からのブレーキスイッチ信号SBRK と、横加速度センサ15からの横加速度GX が入力されるコントロールユニットCRからの液圧制御用駆動信号EV、AV及びMRによって制御される。
【0022】
前記コントロールユニットCRは、車輪速センサ3FL〜3Rからの車輪速正弦波信号が入力され、これらと各車輪1FL〜1RRのタイヤ転がり動半径とから各車輪の周速度でなる車輪速度(以下、単に車輪速とも記す)VwFL〜VwR を演算し、この車輪速VwFL〜VwR や前記マスタシリンダ圧PMCF 及びPMCR 或いは前記横加速度GX 等に基づいて、アンチスキッド制御及び後輪ホイールシリンダ液圧制御の演算処理を司るマイクロコンピュータ20を備えている。このマイクロコンピュータ20は、例えばアンチスキッド制御においては、車体速度勾配VXK及び車体速度VX を算出し、且つアンチスキッド制御中の各ホイールシリンダ2FL〜2RRの作動液圧(以下、単にホイールシリンダ圧とも記す)PFL〜PR を算出すると共に、例えば目標とするホイールシリンダ圧とのPD(比例−微分)値からなる目標ホイールシリンダ増減圧量ΔP* FL〜ΔP* R を算出し、この目標ホイールシリンダ増減圧量ΔP* FL〜ΔP* R が達成されるように、前記アクチュエータ6FL〜6Rに対する制御信号SEVFL〜SEVR ,SAVFL〜SAVR 及びSMRFL〜SMRR を出力する。また、このマイクロコンピュータ20は、後輪ホイールシリンダ液圧制御においては、前記前輪の各ホイールシリンダ圧PFL,PFRと等価なマスタシリンダ圧PMCF と、前記前輪の車輪速VwFL,VwFRの微分値を平均して得られる平均前輪回転角速度ω'wF とを用いて前輪の制動力FF を算出すると共に、現在の後輪ホイールシリンダ圧PR と、後輪の車輪速VwR を微分して得られる後輪回転角速度ω'wR とから後輪の制動力FR を算出し、これらに合わせて前後加速度GX を用いて車両重量Wを算出すると共に、それに前後加速度GX を乗じて前後輪荷重WF ,WR を算出し、これらに基づいて理想制動力配分を達成する目標後輪制動力F* R を算出し、このときの後輪制動力FR との偏差から目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* R を算出し、この目標後輪ホイールシリンダ増減圧量ΔP* R が達成されるように、前記アクチュエータ6FL〜6Rに対する制御信号SEVFL〜SEVR ,SAVFL〜SAVR 及びSMRFL〜SMRR を出力する。そして、このようにマイクロコンピュータ20から出力された制御信号SEVFL〜SEVR ,SAVFL〜SAVR 及びSMRFL〜SMRR は、駆動回路に22aFL〜22aR ,22bFL〜22bR 及び22cFL〜22cR より、指令信号としての駆動信号EVFL〜EVR ,AVFL〜AVR 及びMRFL〜MRR に変換されてアクチュエータ6FL〜6Rに供給される。
【0023】
そして、前記マイクロコンピュータ20は、例えばA/D変換機能等を有する入力インタフェース回路20aと、マイクロプロセサ等の演算処理装置20bと、ROM,RAM等の記憶装置20cと、例えばD/A変換機能を有する出力インタフェース回路20dとを備えている。また、前記マイクロコンピュータ20は、その動作周波数が大変に高いことから、当該マイクロコンピュータ20からパルス幅変調されたディジタルデータの基準矩形波制御信号SEVFL〜SEVR ,SAVFL〜SAVR 及びSMRFL〜SMRR を出力するようにし、各駆動回路22aFL〜22aR ,22bFL〜22bR 及び22cFL〜22cR は単にそれを各アクチュエータ作動に適した駆動信号EVFL〜EVR ,AVFL〜AVR 及びMRFL〜MRR に変換,増幅するだけのものとして構成されている。
【0024】
それでは次に、本実施形態の車両の制動液圧制御装置による制動液圧制御の構成を、前記マイクロコンピュータ20で実行される図3乃至図9のフローチャートに示す演算処理に従って説明する。この演算処理は所定のサンプリング時間(例えば10msec)ΔT毎にタイマ割込処理として実行される。なお、これ以後の演算処理では、何れも特に通信のためのステップを設けていないが、演算処理装置20bで必要なプログラムやマップ、或いは必要なデータは随時記憶装置20cから読込まれるし、逆に演算処理装置20bで算出されたデータは随時記憶装置20cに更新記憶されるものとする。
【0025】
まず、図3の演算処理では、そのステップS01で、例えば本出願人が先に提案した特開平8−150920号公報に記載される演算処理により推定車体速度VSPを算出する。
【0026】
次いで、ステップS02に移行して、図示されない演算処理によって、アンチスキッド制御を行わないアンチスキッド非制御条件を満足しているか否かを判定し、アンチスキッド非制御条件を満足している場合にはステップS03に移行し、そうでない場合にはステップS04に移行する。このアンチスキッド非制御条件とは、例えば前記推定車体速度VSPから当該車輪速度Vwi (i=FL,FR,R)を減じた値の推定車体速度VSPに対する比(百分率)を当該車輪のスリップ率Si としてとき、当該車輪のスリップ率Si が舵取効果に優れた所定の基準スリップ率S0 より小さいとか、或いは前記車輪速度Vwi の時間微分値からなる車輪(角)加(減)速度V'wi (<0)が予め設定された所定車輪加速度V'w0 (<0)より大きいといったように、アンチスキッド制御開始とは逆の判定条件を採用すればよい。
【0027】
前記ステップS03では、後述する図4の演算処理により後輪ホイールシリンダ圧制御を行ってからメインプログラムに復帰する。
また、前記ステップS04では、例えば前述した特開平8−150920号公報に記載される演算処理によりアンチスキッド制御を行ってからメインプログラムに復帰する。
【0028】
次に、前記図3の演算処理のステップS03で実行されるマイナプログラムを図4のフローチャートに従って説明する。
この演算処理では、まずステップS1で前記圧力センサ13F,13Rからのマスタシリンダ圧PMCF ,PMCR を読込む。
【0029】
次にステップS2に移行して、前記前後加速度センサ15からの前後加速度GX 及び前記車輪速センサ3FL〜3Rからの正弦波信号に基づいて算出された各車輪速VwFL〜VwR を読込む。なお、前記前後加速度センサ15から読込まれる前後加速度GX は、減速方向を正値とする。
【0030】
次にステップS3に移行して、後述する図5の演算処理により前後各輪の制動力FF ,FR を算出する。
次にステップS4に移行して、後述する図6の演算処理により車両重量Wを算出する。
【0031】
次にステップS5に移行して、後述する図7の演算処理により前後輪荷重WF ,WR を算出する。
次にステップS6に移行して、後述する図8の演算処理により目標後輪制動力F* R を算出する。
【0032】
次にステップS7に移行して、後述する図9の演算処理により後輪ホイールシリンダ圧制御信号を出力してからメインプログラムに復帰する。
次に、前記図4の演算処理のステップS3で実行されるマイナプログラムを図5のフローチャートに従って説明する。
【0033】
この演算処理では、まずステップS31で、前記読込まれた各車輪速度Vwi の時間微分値を更に各車輪のタイヤ転がり動半径ri で除して各車輪の車輪角加速度ω'wi を算出する。
【0034】
次にステップS32に移行して、後述する後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPが“0”のリセット状態か否かを判定し、当該後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPがリセット状態である場合にはステップS33に移行し、そうでない場合にはステップS34に移行する。
【0035】
前記ステップS33では、前記後輪用マスタシリンダ圧PMCR を現在の後輪ホイールシリンダ圧PR に設定してからステップS35に移行する。
また、ステップS34では、前記記憶装置20cに更新記憶されている前回の後輪ホイールシリンダ圧PR に、後述する前回の図9の演算処理で設定された後輪ホイールシリンダ増減圧量(以下、単に後輪増減圧量とも記す)ΔPR を和して現在の後輪ホイールシリンダ圧PR を設定してから前記ステップS35に移行する。
【0036】
前記ステップS35では、前記読込まれた前輪用マスタシリンダ圧PMCF を前左右輪ホイールシリンダ圧PFL,PFR又は単に前輪ホイールシリンダ圧PF に設定する。
【0037】
次にステップS36に移行して、前記前左右輪の車輪角加速度ω'wFL,ω'wFRの平均値から平均前輪角加速度ω'wF を算出する。
次にステップS37に移行して、下記1式に従って、前後ホイールシリンダによる制動トルクTBj(j=ForR)を算出する。
【0038】
Bj=μPj・Pj ・Aj ・rrj・2 ……… (1)
但し、式中の
μPj:各輪のディスクブレーキのパッドとディスクロータとの間の摩擦係数
j :各輪のディスクブレーキのホイールシリンダの断面積
rj:各輪のディスクブレーキのディスクロータの有効半径
を示す。なお、制動トルクが2倍されているのは、左右両輪の総和で考えるためである。
【0039】
次にステップS38に移行して、下記2式に従って、前後各輪の制動力Fj を算出してから前記図4の演算処理のステップS4に移行する。
j =(|Ij ・ω'wj |+TBj)/rj ……… (2)
但し、式中の
j :各輪の慣性モーメント
を示す。
【0040】
ここで、各輪の制動力Fj の導出原理について簡潔に説明する。まず、各車輪の制動力Fj は、下記2−1式のようにそのときの輪荷重Wj と路面摩擦係数μとの積の形で表れる。
【0041】
j =μ・Wj ……… (2-1)
一方、車輪の運動方程式からは、下記2−2式を得る。
|Ij ・ω'wj |=μ・Wj ・rj −TBj ……… (2-2)
従って、この2−2式に2−1式の輪荷重Wj を代入して各輪の制動力Fj で解けば前記2式を得る。
【0042】
次に、前記図4の演算処理のステップS4で実行されるマイナプログラムを図6のフローチャートに従って説明する。
この演算処理では、まずステップS41で、前記ブレーキスイッチ信号SBRK が“1”のON状態であるか否かを判定し、当該ブレーキスイッチ信号SBRK がON状態である場合にはステップS42に移行し、そうでない場合にはステップS43に移行する。
【0043】
前記ステップS42では、下記3式に従って車両重量Wを算出してから前記図4の演算処理のステップS5に移行する。
W=m・g=(FF +FR )・g/GX ……… (3)
但し、
g:重力加速度
を示す。
【0044】
ここで、車両重量Wの算出原理について簡潔に説明する。四輪の全制動力をFとしたとき、この全制動力Fは、車両質量mを前後加速度XG で減速することになるから、下記3−1式を得る。
【0045】
F=m・XG ……… (3-1)
また、全制動力Fは前輪制動力FF と後輪制動力FR と(何れも左右二輪で算出済)の和であるから、これを3−1式の左辺に代入し、これを車両質量mで解いた後、重力加速度gを乗じて前記3式による車両重量Wを得る。
【0046】
また、前記ステップS43では、前記3式による車両重量Wの算出原理が適用できないために、予め設定された所定値W0 を車両重量Wに設定してから前記図4の演算処理のステップS5に移行する。
【0047】
次に、前記図4の演算処理のステップS5で実行されるマイナプログラムを図7のフローチャートに従って説明する。
この演算処理では、まずステップS51で、下記4式、5式に従って前後各輪の輪荷重WF ,WR を算出してから前記図4の演算処理のステップS6に移行する。
【0048】
F =WF0+W・GX ・H/L ……… (4)
R =WR0−W・GX ・H/L ……… (5)
但し、
F0:前輪静荷重
R0:後輪静荷重
H :車両重心高さ
L :ホイールベース
を示し、前後加速度GX は減速方向で正値とする。この輪荷重WF ,WR の算出手法は十分に周知であるから、その詳細な説明を省略する。
【0049】
次に、前記図4の演算処理のステップS6で実行されるマイナプログラムを図8のフローチャートに従って説明する。
この演算処理では、まずステップS61で、下記6式に従って目標後輪制動力F* R を算出してから前記図4の演算処理のステップS7に移行する。
【0050】
* R =(|IF ・ω'wF |+TBF)・WR /(WF ・rF ) ……… (6)
ここで、目標後輪制動力F* R の算出原理について簡潔に説明する。理想制動力配分曲線は、前述したように例えば車両に作用する前後加速度をパラメータとして、前後各輪がロックしない限界制動力をプロットして得られるものであるが、各プロットポイントが前後各輪がロックしない限界制動力であることから、それはタイヤと路面との摩擦係数,所謂路面μをパラメータとしたものにも置換できる。これを図11に示すと、ある路面μが前輪制動力FF の下で決定すれば、その路面μにおいて理想制動力配分を達成する後輪制動力FR が決まる。そして、これらの各制動力FF ,FR は前後各輪の輪荷重WF ,WR と路面μとの積であるから、下記6−1式及び6−2式を得る。
【0051】
F =μ・WF ……… (6-1)
R =μ・WR ……… (6-2)
このうち6−1式に、添字jをFに設定した前記2式を代入してμで解けば、下記6−3式を得る。
【0052】
μ=(|IF ・ω'wF |+TBF)/(WF ・rF ) ……… (6-3)
この6−3式を前記6−2式に代入して、つまり前後輪で発生する路面μを等しく設定することで前記6式を得る。
【0053】
次に、前記図4の演算処理のステップS7で実行されるマイナプログラムを図9のフローチャートに従って説明する。
この演算処理では、まずステップS71で、下記7式に従って後輪制動力偏差ΔFR を算出する。
【0054】
ΔFR =F* R −FR ……… (7)
次にステップS72に移行して、下記8式に従って目標後輪ホイールシリンダ増減圧量(以下、単に目標後輪増減圧量とも示す)ΔP* R を算出する。
【0055】
ΔP* R =k1 ・ΔFR +k2 ・(dΔFR /dt) ……… (8)
但し、
1 :比例ゲイン
2 :微分ゲイン
を示す。
【0056】
次にステップS73に移行して、前記目標後輪増減圧量ΔP* R が、例えば0MPa程度に予め設定された増圧閾値ΔP* RZより小さいか否かを判定し、当該目標後輪増減圧量ΔP* R が増圧閾値ΔP* RZより小さい場合にはステップS74に移行し、そうでない場合にはステップS75に移行する。
【0057】
前記ステップS74では、前記後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPを“1”にセットし、次いでステップS76に移行して、前記目標後輪増減圧量ΔP* R が、例えば(−10MPa)程度に予め設定された減圧閾値ΔP* RGより大きいか否かを判定し、当該目標後輪増減圧量ΔP* R が減圧閾値ΔP* RGより大きい場合にはステップS77に移行し、そうでない場合にはステップS78に移行する。
【0058】
前記ステップS78では、増圧間隔カウンタCNTINT-Z をクリアし、次いでステップS79に移行して、増圧カウンタCNTZ をクリアし、次いでステップS80に移行して、後輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRR を“1”に設定し、次いでステップS81に移行して、減圧間隔カウンタCNTINT-G をインクリメントし、次いでステップS82に移行して、前記減圧間隔カウンタCNTINT-G が予め設定された所定カウントアップ値CNTINT-G0以上であるか否かを判定し、当該減圧間隔カウンタCNTINT-G が所定カウントアップ値CNTINT-G0以上である場合にはステップS83に移行し、そうでない場合には前記ステップS77に移行する。
【0059】
前記ステップS83では、後輪増減圧量ΔPR を予め設定された減圧所定値(−ΔPR0)に設定し、次いでステップS84に移行して、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR を“1”に設定すると共に、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR を予め設定されたパルス幅所定値WAVR0に設定し、次いでステップS85に移行して、前記減圧間隔カウンタCNTINT-G をクリアしてからステップS86に移行する。
【0060】
一方、前記ステップS75では、前記後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPが“1”のセット状態であるか否かを判定し、当該後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPがセット状態である場合にはステップS87に移行し、そうでない場合にはステップS88に移行する。
【0061】
前記ステップS87では、減圧間隔カウンタCNTINT-G をクリアし、次いでステップS89に移行して、増圧カウンタCNTZ をインクリメントし、次いでステップS90に移行して、当該増圧カウンタCNTZ が予め設定された所定カウントアップ値CNTZ0以上であるか否かを判定し、当該増圧カウンタCNTZ が所定カウントアップ値CNTZ0以上である場合にはステップS88に移行し、そうでない場合には前記ステップS91に移行する。
【0062】
前記ステップS91では、増圧間隔カウンタCNTINT-Z をインクリメントし、次いでステップS92に移行して、前記増圧間隔カウンタCNTINT-Z が予め設定された所定カウントアップ値CNTINT-Z0以上であるか否かを判定し、当該増圧間隔カウンタCNTINT-Z が所定カウントアップ値CNTINT-Z0以上である場合にはステップS93に移行し、そうでない場合には前記ステップS77に移行する。
【0063】
前記ステップS93では、後輪増減圧量ΔPR を予め設定された増圧所定値(+ΔPR0)に設定し、次いでステップS94に移行して、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR を予め設定されたパルス幅所定値WEVR0に設定すると共に、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR を“0”に設定し、次いでステップS95に移行して、前記増圧間隔カウンタCNTINT-Z をクリアしてから前記ステップS86に移行する。
【0064】
そして、前記ステップS77では、後輪増減圧量ΔPR を“0”に設定し、次いでステップS96に移行して、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR を“1”に設定すると共に、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR を“0”に設定してから前記ステップS86に移行する。
【0065】
また、前記ステップS88では、前記後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPを“0”にリセットし、次いでステップS97に移行して、前記後輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRR を“0”に設定し、次いでステップS98に移行して、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR を“0”に設定すると共に、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR を“0”に設定し、次いでステップS99に移行して、前記増圧間隔カウンタCNTINT-Z をクリアしてから前記ステップS86に移行する。
【0066】
前記ステップS86では、前左輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRFL及び前右輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRFRを共に“0”に設定すると共に、前左輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVFL及び前右輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVFRを共に“0”に設定すると共に、前左輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVFL及び前右輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVFRを共に“0”に設定する。
【0067】
次いで、ステップS100に移行して、図示されない演算処理により、前述した各パルス幅設定パラメータWEVi ,WAVi ,WMRi に応じた各制御信号SEVi ,SAVi ,SMRi を創成出力してからメインプログラムに復帰する。
【0068】
次に、前記図9の演算処理のステップS10で行われる演算処理の概要について端的に説明する。この演算処理では、前記各車輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVi が“0”のときには、図10aに示すように、前記図4の演算処理のサンプリング周期ΔTの間、常時OFF状態の各車輪用流入弁制御信号SEVi が出力される。また、前記各車輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVi が“0”のときには、図10bに示すように、前記サンプリング周期ΔTの間、常時OFF状態の各車輪用流出弁制御信号SAVi が出力される。
【0069】
また、前記後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR が前記パルス幅所定値WEVR0のとき(その他の車輪には当該パルス幅所定値WEVR0は適用されない)には、図10cに示すように、前記サンプリング周期ΔTのうちの最初にあって、当該パルス幅所定値WEVR0に相当して設定される所定時間だけOFF状態となり、その後はON状態となる後輪用流入弁制御信号SEVR が出力される。また、前記後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR が前記パルス幅所定値WAVR0のとき(その他の車輪には当該パルス幅所定値WAVR0は適用されない)には、図10dに示すように、前記サンプリング周期ΔTのうちの最初にあって、当該パルス幅所定値WAVR0に相当して設定される所定時間だけON状態となり、その後はOFF状態となる後輪用流出弁制御信号SAVR が出力される。
【0070】
また、前記各車輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVi が“1”のときには、図10eに示すように、前記サンプリング周期ΔTの間、常時ON状態の各車輪用流入弁制御信号SEVi が出力される。また、前記各車輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVi が“1”のときには、図10fに示すように、前記サンプリング周期ΔTの間、常時ON状態の各車輪用流出弁制御信号SAVi が出力される。
【0071】
また、前記各車輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRi が“0”のときには、図10gに示すように、前記サンプリング周期ΔTの間、常時OFF状態の各車輪用ポンプ制御信号SMRi が出力される。また、前記各車輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRi が“0”のときには、図10hに示すように、前記サンプリング周期ΔTの間、常時ON状態の各車輪用ポンプ制御信号SMRi が出力される。
【0072】
なお、理解を容易化するために、図9の演算処理の詳細部分について幾つか予め説明しておくと、前述のように後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR が前記パルス幅所定値WEVR0に設定される場合には、図4の演算処理のステップS7で実行される図9の演算処理において、ステップS91乃至ステップS95又はステップS92からステップS77,ステップS96に移行するフローが実行される。このフローでは、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR を前記パルス幅所定値WEVR0に設定することにより、前述のように後輪用アクチュエータ6Rの後輪用流入弁8を所定時間だけOFF状態として、作動液圧を後輪ホイールシリンダ2RL,2RRに供給可能とするのであるが、そのステップS91でインクリメントされる増圧間隔カウンタCNTINT-Z が所定カウントアップ値CNTINT-Z0以上にならない限り、ステップS92からステップS77を経てステップS96に移行するから、この間は後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR が“1”、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR が“0”となり、後輪用アクチュエータ6Rの流入弁8及び流出弁9が共に閉状態になって後輪ホイールシリンダ圧PR は保持される。そして、増圧間隔カウンタCNTINT-Z が所定カウントアップ値CNTINT-Z0以上になる度に、ステップS92からステップS93,ステップS94に移行し、ここで始めて後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR は前記パルス幅所定値WEVR0に設定され、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR は“0”に設定され、これにより後輪用アクチュエータ6Rの流出弁9を閉状態に維持しながら、流入弁8だけが前記パルス幅所定値WEVR0に相当する短時間だけ開状態となり、この間に後輪ホイールシリンダ圧PR は前記増圧所定値(+ΔPR0)分だけ増圧されるのである。なお、このように後輪ホイールシリンダ圧PR がステップ的に増圧された後は、ステップS95で増圧間隔カウンタCNTINT-Z がクリアされてしまうので、再び増圧間隔カウンタCNTINT-Z が所定カウントアップ値CNTINT-Z0以上となるまでは、後輪ホイールシリンダ圧PR の増圧は行われない。
【0073】
また、後輪ホイールシリンダ圧PR の減圧時にも同様に、後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR が前記パルス幅所定値WAVR0に設定される場合には、図9の演算処理においてステップS81乃至ステップS85又はステップS82からステップS77,ステップS96に移行するフローが実行される。このフローでも、そのステップS81でインクリメントされる減圧間隔カウンタCNTINT-G が所定カウントアップ値CNTINT-G0以上にならない限り、ステップS82からステップS77を経てステップS96に移行するから、この間は後輪用アクチュエータ6Rの流入弁8及び流出弁9が共に閉状態になって後輪ホイールシリンダ圧PR は保持される。そして、減圧間隔カウンタCNTINT-G が所定カウントアップ値CNTINT-G0以上になる度に、ステップS82からステップS83,ステップS84に移行し、ここで始めて後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR が前記パルス幅所定値WAVR0に設定され、後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR は“1”に設定され、これにより後輪用アクチュエータ6Rの流入弁8を閉状態に維持しながら、流出弁9だけが前記パルス幅所定値WAVR0に相当する短時間だけ開状態となり、既にステップS80で後輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRR が“1”に設定された当該後輪用ポンプ10が駆動されているために、この間に後輪ホイールシリンダ圧PR は前記減圧所定値(−ΔPR0)分だけ減圧されるのである。なお、この場合も後輪ホイールシリンダ圧PR がステップ的に減圧された後は、ステップS85で減圧間隔カウンタCNTINT-G がクリアされてしまうので、再び減圧間隔カウンタCNTINT-G が所定カウントアップ値CNTINT-G0以上となるまでは、後輪ホイールシリンダ圧PR の減圧は行われない。
【0074】
また、特に前述のような後輪ホイールシリンダ圧PR をステップ的に増圧する場合にはステップS87からステップS90のフローを通過する。ここで、このフローを通過することは、前記ステップS91以後で後輪ホイールシリンダ圧PR をステップ的に増圧することを前提としているが、そのステップS89でインクリメントされる増圧カウンタCNTZ が前記所定カウントアップ値CNTZ0以上になった場合には、即ち前述のような後輪ホイールシリンダ圧PR のステップ的な増圧が所定回数だけ繰返された場合には、ステップS90からステップS88,ステップS97を経てステップS98へのフローに移行する。このフローは、後述のように後輪用アクチュエータ6Rの流入弁8を開,流出弁9を閉状態に維持して、後輪用マスタシリンダ圧PMCR が直接後輪ホイールシリンダ2RL,2RRに流入する急増圧モードである。つまり、制御された後輪ホイールシリンダ圧PR のステップ的な増圧が所定回数繰返されたら、通常のブレーキ状態に復帰して制動距離を確保することを目的としている。
【0075】
次に、本実施形態の全体的な作用を、図12のタイミングチャートに従って説明する。このタイミングチャートは、時刻t00以前から車両が高μ良路を定速走行しており、その後の時刻t00から制動状態に移行し、やがて後輪ホイールシリンダ2RL,2RRの制動液圧制御が開始された場合をシミュレートしたものである。なお、このシミュレーションでは、前記図3の演算処理で随時アンチスキッド非制御条件が満足されてステップS03による後輪ホイールシリンダ圧制御が実行され続けたものとする。
【0076】
このタイミングチャートでは、まず前記時刻t00までの時間、図4の演算処理が実行される度に、未だブレーキペダルが踏込まれておらず、結果的に大気圧と等価なマスタシリンダ圧PMCF ,PMCR がステップS1で読込まれ、次いでステップS2で前後加速度GX や各車輪速Vwi が読込まれる。次のステップS3では、図5の演算処理が実行され、そのステップS31では各車輪角加速度ω'wi が算出されるが、このときには車輪速Vwi の時間微分値が“0”であることから各車輪角加速度ω'wi も“0”となり、次いで未だ後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPが“0”のリセット状態であるためにステップS33に移行して前述のように大気圧に等しい後輪用マスタシリンダ圧PMCR を後輪ホイールシリンダ圧PR に設定し、次いでステップS35で同じく大気圧に等しい前輪用マスタシリンダ圧PMCF を前輪ホイールシリンダ圧PF に設定し、次いでステップS36で平均前輪角加速度ω'wF が算出されるが、前左右輪角加速度ω'wFL,ω'wFRが共に“0”であることから平均前輪角加速度ω'wF も“0”となり、次いでステップS37で前後各ホイールシリンダの制動トルクTBjが算出されるが、ここでも各ホイールシリンダ圧Pj が大気圧に等しい(=0MPa)であることから各ホイールシリンダの制動トルクTBjは全て“0”となり、従って次のステップS38で算出される前後輪制動力Fj も、前記各車輪角加速度ω'wj が“0”であることから“0”となる。更に次のステップS4では図6の演算処理が実行されるが、このときはブレーキスイッチ信号SBRK が“0”のOFF状態であることからステップS41からステップS43に移行して、予め設定された所定値W0 がとりあえず車両重量Wに設定される。また、次のステップS5では図7の演算処理が実行されるが、このときは検出される前後加速度GX が“0”であるから前後輪荷重WF ,WR は、夫々前輪静荷重WF0,後輪静荷重WR0に等しくなる。また、次のステップS6では図8の演算処理が実行されるが、前述のように前輪制動力FF が“0”であることから目標後輪制動力F* R も“0”になってしまう。
【0077】
このように目標後輪制動力F* R が“0”であり、実際の後輪制動力FR も“0”である非制動時には、ステップS7で実行される図9の演算処理において、そのステップS71で算出される後輪制動力偏差ΔFR が“0”となることから、ステップS72で算出される目標後輪増減圧量ΔP* R も“0”になってしまう。このように目標後輪増減圧量ΔP* R が“0”になると、それは前記増圧閾値ΔP* RZ以上であるので、図9の演算処理でステップS73からステップS75に移行し、未だ後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPが“0”のリセット状態であるためにステップS88に移行して、当該後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPをリセットし直し、次にステップS97,ステップS98で後輪用ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRR ,後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR 及び後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR を全て“0”に設定し、次のステップS99で増圧間隔カウンタCNTINT-Z をクリアし、更にステップS86で前輪用の各ポンプ駆動パルス幅設定パラメータWMRFL,WMRFR及び流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVFL,WEVFR及び流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVFL,WAVFRを全て“0”に設定し、次のステップS100で各パルス幅設定パラメータWEVi ,WAVi ,WMRi に応じた各制御信号SEVi ,SAVi ,SMRi を創成出力してからメインプログラムに復帰する。ここで、創成出力される全ての制御信号SEVi ,SAVi ,SMRi は、前記図10の説明の通り、全てOFF状態であるから、前記各アクチュエータ6FL〜6Rの液圧ポンプ10は駆動されず、流出弁9が閉じた状態で流入弁8が開いている状態であるから、各マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR は各ホイールシリンダ2FL〜2RRに直接供給される,所謂急増圧の状態に維持される。但し、この状態は、実際のホイールシリンダ圧PF ,PR が急増圧されている状態ではないから、図12のホイールシリンダ圧制御モードには増圧可能な状態であることを破線で示す。
【0078】
一方、前記時刻t00で制動が開始されると、それに伴って各マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR が次第に増加し、それが図4の演算処理のステップS1で読込まれる。また、制動に伴う減速方向(正値)の前後加速度GX と、次第に減速する各車輪速Vwi とが同ステップS2で読込まれる。次のステップS3で実行される図5の演算処理では、そのステップS31で次第に減速する車輪速Vwi から負値の各車輪角加速度ω'wi が算出され、次いで未だ後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPが“0”のリセット状態であるためにステップS33に移行して次第に増加する後輪用マスタシリンダ圧PMCR を後輪ホイールシリンダ圧PR に設定し、次いでステップS35で同じく次第に増加する前輪用マスタシリンダ圧PMCF を前輪ホイールシリンダ圧PF に設定し、次いでステップS36で前記前左右輪角加速度ω'wFL,ω'wFRの平均値からなる負値の平均前輪角加速度ω'wF が算出され、次いでステップS37で次第に増加する各ホイールシリンダ圧Pj に応じた前後各ホイールシリンダの制動トルクTBjが算出され、従って次のステップS38でこの制動トルクTBjと前記負値の各車輪角加速度ω'wj とに応じた前後輪制動力Fj が算出される。次に、ステップS4で実行される図6の演算処理では、既に制動状態にあり、ブレーキスイッチ信号SBRK が“1”のON状態であるために、ステップS41からステップS42に移行し、前記前後輪制動力Fj に応じた,そのときの車両重量Wが正確に算出される。次に、ステップS5で実行される図7の演算処理では、前記車両重量Wとそのときの前後加速度GX とを用いて、そのステップS51で前後各輪の輪荷重WF ,WR が算出され、続くステップS6で実行される図8の演算処理では、これらの各演算結果を用いてそのときの前輪制動力FF に対して理想制動力配分を満足する目標後輪制動力F* R が算出される。
【0079】
しかしながら、未だ前輪用マスタシリンダ圧PMCF が増加しておらず、従って前輪制動力FF は、当該路面で車輪をロックするに遙に及ばない,小さな値であることから、算出される目標後輪制動力F* R 自体も小さな値となるが、現在の後輪制動力FR も未だ十分に小さいので、ステップS7で実行される図9の演算処理では、そのステップS71で比較的小さな正値の後輪制動力偏差ΔFR が算出され、この後輪制動力偏差ΔFR に基づいて、次のステップS72では比較的小さな正値の目標後輪増減圧量ΔP* R が設定される。そこで、図9の演算処理では、この目標後輪増減圧量ΔP* R が前記増圧閾値ΔP* RZ以上であるために、前述と同様にステップS73からステップS75に移行し、未だ後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPが“0”のリセット状態であるためにステップS88に移行して、当該後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPをリセットし直し、次にステップS97,ステップS98,ステップS99を経てステップS86に移行することで、全てのパルス幅設定パラメータWEVi ,WAVi ,WMRi を“0”に設定すると共に増圧間隔カウンタCNTINT-Z をクリアすることから、次のステップS100では、全てOFF状態の各制御信号SEVi ,SAVi ,SMRi を創成出力され、これにより前記各アクチュエータ6FL〜6Rの液圧ポンプ10は駆動されず、流出弁9が閉じた状態で流入弁8が開いている状態,つまり各マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR が各ホイールシリンダ2FL〜2RRに直接供給される急増圧の状態に維持される。
【0080】
この状態から、更に前後輪用マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR が次第に増加すると、前後輪ホイールシリンダ圧PF ,PR も大きくなって夫々の制動トルクTBF,TBRが増大し、それに伴って減速方向にある前後輪角加速度ω'wF ,ω'wR の絶対値が次第に大きくなるために前後輪制動力FF ,FR が増加する。但し、これに伴って車両に発生する前後加速度GX も大きくなるから、前記ステップS4で実行される図6の演算処理のステップS42では、前述と同等又は略同等の車両重量Wが算出される。しかしながら、前記ステップS5で実行される図7の演算処理では、前後加速度GX の増加に伴って、そのステップS51で、更に増加する前輪荷重WF と、更に減少する後輪荷重WR とが算出され、これらに応じてステップS6で実行される図8の演算処理では、そのステップS61で次第に或る値に漸近する目標後輪制動力F* R が算出設定されることになる。従って、時刻t01以後に図4の演算処理が実行されると、そのステップS7で実行される図9の演算処理では、そのステップS71からステップS72にかけて算出される目標後輪増減圧量ΔP* R が負値となり、つまり当該目標後輪増減圧量ΔP* R が前記増圧閾値ΔP* RZより小さくなり、従ってステップS73からステップS74に移行して後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPが“1”にセットされる。このとき、前記目標後輪増減圧量ΔP* R は未だ前記減圧閾値ΔP* RGより大きいためにステップS76からステップS77に移行し、後輪増減圧量ΔPR を“0”に設定すると共に、次のステップS96で後輪用流入弁駆動パルス幅設定パラメータWEVR を“1”,後輪用流出弁駆動パルス幅設定パラメータWAVR を“0”に夫々設定する。なお、次のステップS86では、前述と同様に前輪用の全てのパルス幅設定パラメータWEVFL,WEVFR,WAVFL,WAVFR,WMRFL,WMRFRが“0”に設定される。従って、次のステップS100では、前輪用のアクチュエータ6FL,6FRに対しては全てOFF状態の各制御信号SEVi ,SAVi ,SMRi を創成出力され、これにより前輪用マスタシリンダ圧PMCF は各前輪ホイールシリンダ2FL,2FRに直接供給される急増圧の状態に維持されるが、後輪用のアクチュエータ6Rに対しては、常時ON状態の流入弁制御信号SEVR 及び常時OFF状態の流出弁制御信号SAVR が創成出力されることになるから、当該後輪用アクチュエータ6Rは作動液圧を封じ込める保持状態となり、後輪ホイールシリンダ2RL,2RRは、そのときの作動液圧保持状態になる。
【0081】
このときの前輪速VwF と前輪制動力FF (∝前輪ホイールシリンダ圧PF )とから、前記理想制動力配分曲線で設定される車輪減速度を用いて目標とする目標後輪速V* R を図12に二点鎖線で記すと、前記時刻t01以後、後輪ホイールシリンダ2RL,2RR内が作動液圧保持状態になっているために、実際の後輪速VwR は前記目標後輪速V* R より若干速い状態が僅かに継続するが、車体速度の減速によって、直ぐに一致する。つまり、後輪ホイールシリンダ圧PR はむやみに増圧されたり減圧されたりすることなく、理想とする制動力で確実に車体速度を減速することに寄与した。また、これ以後、前輪用マスタシリンダ圧PMCF と等しい前輪ホイールシリンダ圧PF は僅かに増加し続け、その結果、理想制動力配分となる目標後輪制動力F* R を達成するための目標後輪ホイールシリンダ圧P* R も次第に増加することになるが、これから算出される目標後輪増減圧量ΔP* R は前記増圧閾値ΔP* RZより小さく且つ減圧閾値ΔP* RGより大きい状態が継続され、その結果、後輪ホイールシリンダ2RL,2RR内は暫くの間、作動液圧保持状態に維持され続けた。このときも、実際の後輪速VwR は前記目標後輪速V* R によく一致し続け、舵取効果を損なうことなく車体速度は確実に減速されていった。なお、この間、前記後輪増減圧量ΔPR は“0”に設定され続けており、且つ前記後輪ホイールシリンダ圧制御フラグFPROPが“1”にセットされているために、ステップS3で実行される図5の演算処理では、そのステップS32からステップS34に移行し、前記時刻t01で更新記憶された後輪ホイールシリンダ圧PR が、その後も保持され続ける。
【0082】
やがて、次第に増加し続ける目標後輪制動力F* R に対して、後輪ホイールシリンダ圧PR 一定で後輪制動力FR も一定であるから、その差分値である後輪制動力偏差ΔFR も次第に大きくなり、それから算出される目標後輪増減圧量ΔP* R が前記増圧閾値ΔP* RZ以上になると、前記ステップS7で実行される図9の演算処理において、再びステップS73からステップS75,ステップS87に移行する。このステップS87では、前述したように後輪ホイールシリンダ圧PR のステップ的な減圧中にインクリメントされる減圧間隔カウンタCNTINT-G をクリアし、次いでステップS89で前記増圧カウンタCNTZ をインクリメントする。しかしながら、インクリメントされたばかりの増圧カウンタCNTZ が前記所定カウントアップ値CNTZ0以上になることはないから、ステップS90からステップS91に移行し、ここで増圧間隔カウンタCNTINT-Z をインクリメントし、これが前記所定カウントアップ値CNTINT-Z0以上となるまではステップS92からステップS77に移行し、これ以後も、このフローを繰返す。やがて、時刻t02で、前記増圧間隔カウンタCNTINT-Z が所定カウントアップ値CNTINT-Z0以上となると、ステップS92からステップS93を経てステップS94に移行する。これにより、後輪用アクチュエータ6Rの流出弁9を閉状態に維持しながら、流入弁8だけが前記パルス幅所定値WEVR0に相当する短時間だけ開状態となり、この間に後輪ホイールシリンダ圧PR は前記増圧所定値(+ΔPR0)分だけ増圧された。
【0083】
なお、これ以後は、後輪制動力FR が理想制動力配分に相当する目標後輪制動力F* R に近づき、その結果、目標後輪増減圧量ΔP* R が前記増圧閾値ΔP* RZと減圧閾値ΔP* RGとの間に止まったため、前述と同様に、後輪ホイールシリンダ圧PR は保持され続け、しかしながら理想とする制動力で確実に車体速度を減速することに寄与した。
【0084】
これに対して、従来の車輪速Vwj を制御入力として用いた制動液圧制御のシミュレーションを図13に示す。このシミュレーションの前提は前記図12のものと同等であるが、前記後輪速VwR から理想制動力配分に沿う目標後輪速V* R を設定し、この目標後輪速V* R より実際の後輪速VwR が小さい(遅い)と判定されたときに、後輪ホイールシリンダ圧PR を減圧又は保持し、それより後輪速VwR が大きい(速い)と判定されたときに、後輪ホイールシリンダ圧PR を増圧するようにしたものである。
【0085】
前述したように、車輪速Vwj から各ホイールシリンダ圧Pj をオブザーブするフィードバック制御態様では、実際の制動力Fj の推定が遅れるから、当然のことながら液圧制御に応答遅れとハンチングが生じ易い。このシミュレーションでも、実際の後輪速VwR が目標後輪速V* R を下回る時刻t11では、前記図12のシミュレーションに比して既に後輪ホイールシリンダ圧PR が相応に大きくなっており、従ってその後も後輪速VwR は大きく減速し続けることになるから、時刻t12,t13,t14で後輪ホイールシリンダ圧PR をステップ的に減圧せざるを得ない。ところが、このように不要な減圧を繰返した結果、今度は時刻t15で後輪速VwR が目標後輪速V* R を上回り、仕方なく、今度は時刻t16,t17,t18で後輪ホイールシリンダ圧PR をステップ的に増圧しなければならなくなった。結果的には時刻t19で実際の後輪速VwR を目標後輪速V* R に略一致させることができたが、この間、後輪制動力FR は安定せず、結果的に理想的な制動力配分から外れる時間も長く、制動距離を最も効果的に確保できたとは言えない。
【0086】
このように本実施形態の制動液圧制御装置によれば、前輪用マスタシリンダ圧PMCF を検出し、このマスタシリンダ圧PMCF 或いはそれと等価な前輪ホイールシリンダ圧PF に基づいて正確な前輪制動力FF を迅速に算出し、この正確で迅速な前輪制動力FF に基づいて理想制動力配分となる目標後輪制動力F* R を直接設定することができるから、この目標後輪制動力F* R を達成する後輪ホイールシリンダ圧PR が得られるように指令信号を出力することにより、従来に比して制御の応答性が向上すると共に制御性も向上することができる。
【0087】
また、前後各輪の回転角加速度ω'wF ,ω'wR を用いることで正確な前後各輪の制動力FF ,FR を算出可能とすると共に、この正確な前後各輪の制動力に基づいて算出される車両重量Wを用いて前記目標後輪制動力F* R を設定することにより、当該目標後輪制動力F* R をより理想制動力配分に近いものとして制御性を向上することができる。
【0088】
また、前後加速度GX と正確に算出された前後制動力FF ,FR とを用いることで正確な車両重量Wを算出可能とすると共に、この正確な車両重量Wと前後加速度GX とに基づいて算出される前後輪荷重WF ,WR を用いて前記目標後輪制動力F* R を設定することにより、当該目標後輪制動力F* R を更に理想制動力配分に近いものとして制御性を向上することができる。
【0089】
以上より、前記圧力センサ13F,13R及び図4の演算処理のステップS1が本発明の制動液圧制御装置のマスタシリンダ作動液圧検出手段を構成し、或いは図5の演算処理のステップS35が前輪制動用シリンダ作動液圧検出手段を構成し、以下同様に、図3乃至図9の演算処理及び前記マイクロコンピュータ20を含むコントロールユニットCRが制動液圧制御手段を構成すると共に、図5の演算処理のステップS31,ステップS36が車輪回転角加速度検出手段を構成し、前記前後加速度センサ15及び図4の演算処理のステップS2が前後加速度検出手段を構成する。
【0090】
なお、上記実施例では、前輪ホイールシリンダ2FL,2FRの前輪ホイールシリンダ圧PF をマスタシリンダ圧PMCF から推定するようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、各ホイールシリンダ2FL,2FRのホイールシリンダ圧PF を圧力センサで直接検出するようにしてもよい。
【0091】
また、前記実施形態においては後輪側の車輪速を共通の車輪速センサで検出する3チャンネルアンチスキッド制御装置の場合についてのみ詳述したが、これに限らず後輪側の左右輪についても個別に車輪速センサを設け、これに応じて左右のホイルシリンダに対して個別のアクチュエータを設ける,所謂4チャンネルのアンチスキッド制御装置にも展開可能である。また、このようにアンチスキッド制御装置を、後輪用の制動液圧制御装置に兼用せずとも、独立した制御装置を用いてもよい。
【0092】
また、本発明の制動液圧制御装置は,後輪駆動車,前輪駆動車,四輪駆動車等のあらゆる車両に適用可能である。
また、前記各実施形態はコントロールユニットとしてマイクロコンピュータを適用した場合について説明したが、これに代えてカウンタ,比較器等の電子回路を組み合わせて構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制動液圧制御装置をアンチスキッド制御装置に展開した一例を示す車両概略構成図である。
【図2】図1のアクチュエータの一例を示す概略構成図である。
【図3】図1のコントロールユニットで実行される制動力制御の全体演算処理の一実施形態を示すフローチャートである。
【図4】図3の全体演算処理で実行される制動液圧制御演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図4の制動液圧制御演算処理で実行される前後輪制動力算出の演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】図4の制動液圧制御演算処理で実行される車両重量算出の演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図4の制動液圧制御演算処理で実行される前後輪荷重算出の演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】図4の制動液圧制御演算処理で実行される目標後輪制動力算出の演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】図4の制動液圧制御演算処理で実行される制御信号出力のための演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】図9の演算処理で実行される制御信号の説明図である。
【図11】理想制動力配分の説明図である。
【図12】本実施形態の制動液圧制御装置の作用説明図である。
【図13】従来の制動液圧制御装置の作用説明図である。
【符号の説明】
1FL〜1RRは車輪
2FL〜2RRはホイールシリンダ(制動用シリンダ)
3FL〜3Rは車輪速センサ
4はブレーキペダル
5はマスタシリンダ
6FL〜6Rはアクチュエータ
8は電磁流入弁
9は電磁流出弁
10はポンプ
13F,13Rは圧力センサ
20はマイクロコンピュータ
22aFL〜22cRは駆動回路
EGはエンジン
Tは変速機
DGはディファレンシャルギヤ
CRはコントロールユニット

Claims (3)

  1. 少なくとも車両の後輪の制動用シリンダの作動液圧を指令信号に応じて調整可能なアクチュエータと、マスタシリンダの作動液圧を検出するマスタシリンダ作動液圧検出手段と、少なくとも前後各輪の回転角加速度を検出する車輪回転角加速度検出手段と、前記マスタシリンダ作動液圧検出手段で検出されたマスタシリンダの作動液圧に基づいて前輪の制動力を算出すると共にこの前輪の制動力に基づいて前後各輪がロックしない限界制動力の理想制動力配分となる後輪の目標制動力を設定し且つこの後輪の目標制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する制動液圧制御手段とを備え、前記制動液圧制御手段は、前記車輪回転角加速度検出手段で検出された前後各輪の回転角加速度を用いて前後各輪の制動力を算出すると共にこの前後各輪の制動力に基づいて算出される車両重量を用いて前記後輪の目標制動力を設定することを特徴とする車両の制動液圧制御装置。
  2. 少なくとも車両の後輪の制動用シリンダの作動液圧を指令信号に応じて調整可能なアクチュエータと、前輪の制動用シリンダの作動液圧を検出する前輪制動用シリンダ作動液圧検出手段と、少なくとも前後各輪の回転角加速度を検出する車輪回転角加速度検出手段と、前記前輪制動用シリンダ作動液圧検出手段で検出された前輪制動用シリンダの作動液圧に基づいて前輪の制動力を算出すると共にこの前輪の制動力に基づいて前後各輪がロックしない限界制動力の理想制動力配分となる後輪の目標制動力を設定し且つこの後輪の目標制動力を達成する指令信号を前記アクチュエータに向けて出力する制動液圧制御手段とを備え、前記制動液圧制御手段は、前記車輪回転角加速度検出手段で検出された前後各輪の回転角加速度を用いて前後各輪の制動力を算出すると共にこの前後各輪の制動力に基づいて算出される車両重量を用いて前記後輪の目標制動力を設定することを特徴とする車両の制動液圧制御装置。
  3. 少なくとも車両に作用する前後方向への前後加速度を検出する前後加速度検出手段を備え、前記制動液圧制御手段は、この前後加速度検出手段で検出された前後加速度及び前記算出された前後輪の制動力を用いて前記車両重量を算出すると共にこの車両重量及び前後加速度に基づいて算出される前後各輪の輪荷重を用いて前記後輪の目標制動力を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制動液圧制御装置。
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