JP3945410B2 - 消耗品の残存量を計測可能な消耗品容器 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、消耗品容器内の消耗品の残存量を計測する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの出力装置として、インクジェットプリンタが普及している。消耗品であるインクジェットプリンタのインクは、インクカートリッジに、収容されて提供されるのが通例である。インクカートリッジに収容された消耗品の残量を計測する方法としては、たとえば特許文献1に開示されているように圧電素子を用いて直接計測する方法も提案されている。
【0003】
この方法では、まず、インクカートリッジに装着された圧電素子に電圧波を印可することにより圧電素子の振動部を振動させる。つぎに、圧電素子の振動部に残留する残留振動によって生ずる逆起電力の周期の変動に応じて消耗品の残量を計測する。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−147146号公報
【特許文献2】
特開2002−241450号公報
【特許文献3】
特開平6−8427号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような方法では、発生を意図しない振動ノイズによってS/N比が下がって正確な計測ができない場合があるという問題が生じていた。このような問題は、インクカートリッジに限られず、一般に、圧電素子を用いて消耗品の残存量を計測可能な消耗品容器に共通する問題であった。
【0006】
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、圧電素子を用いて消耗品の残存量を計測可能な消耗品容器において、計測の信頼性を高める技術を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明は、収容された消耗品の残存量を計測可能な消耗品容器であって、
前記消耗品を格納するとともに圧電素子が装着された消耗品タンクと、
前記圧電素子の充電と放電とを行うとともに、前記圧電素子の放電後の残留振動の周期を表す情報を含む検出信号を生成する検出信号生成回路と、
前記圧電素子の充電と放電の制御を行う制御部と、
を備え、
前記周期は、前記格納された消耗品の残存量が所定量より多いか否かの決定に利用可能であり、
前記制御部は、前記圧電素子の放電特性を変更可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明の消耗品容器は、圧電素子の放電特性を変更することが可能なので、放電後の残留振動の特性を残存量検出に好ましいものに変更することができる。これにより、計測の信頼性を高めることができる。ここで、圧電素子とは、充放電に応じて変形する逆圧電効果と、変形に応じて電圧を発生させる圧電効果という2つの特性を有する素子をいう。
【0009】
上記消耗品容器において、前記制御部は、前記圧電素子の放電時定数を変更可能であるように構成しても良いし、前記圧電素子の放電時間を変更可能であるように構成しても良い。ここで、放電時間とは、圧電素子と接地との間に接続されたスイッチが閉じていて導通状態にある時間をいう。
【0010】
上記消耗品容器において、前記検出信号生成回路は、
高電位側の第1端子と低電位側の第2端子との間に所定の電位差を発生させる電圧発生回路と、
一端が前記第2端子に接続された圧電素子と、
前記第1端子と前記圧電素子の他端との間に接続され、前記制御部からの制御出力に応じて、前記第1端子から前記圧電素子への充電をオンオフ制御する充電制御スイッチと、
前記圧電素子の他端と前記第2端子との間に接続され、前記制御部からの制御出力に応じて、前記圧電素子から前記第2端子への放電をオンオフ制御する放電制御スイッチと、
前記圧電素子の他端と前記第2端子との間に接続された回路であって、抵抗値を変更可能な抵抗回路と、
を備え、
前記制御部は、前記充電制御スイッチのオンオフ制御と、前記放電制御スイッチのオンオフ制御と、前記抵抗回路の抵抗値の制御とを行うように構成しても良い。
【0011】
本発明の方法は、消耗品容器内の消耗品の残存量を計測する方法であって、
(a)前記消耗品を格納するとともに圧電素子が装着された消耗品タンクと、前記圧電素子の充放電を行う回路とを準備する工程と、
(b)前記圧電素子の放電特性を可変に設定する工程と、
(c)前記計測を行う工程と、
を備え、
前記工程(c)は、
(c−1)前記圧電素子に充電する工程と、
(c−2)前記圧電素子から放電する工程と、
(c−3)前記圧電素子の放電後の残留振動の周期を表す情報を含む検出信号を生成する工程と、
(c−4)前記検出信号に応じて、前記格納された消耗品の残存量が所定量より多いか否かを決定する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
上記方法において、前記工程(c)は、さらに、前記検出信号に応じて前記格納された消耗品の残存量を計測できるか否かの判断を行うとともに、前記計測ができなかったとの判断に応じて前記工程(b)に処理を戻す工程を含み、
前記工程(b)は、前記計測ができなかったとの判断に応じて、前記計測ができなかったと判断された放電特性とは異なる放電特性に、前記放電特性を設定するとともに、前記工程(c)に処理を進める工程を含むようにすることが好ましい。
【0013】
こうすれば、自動的にインク残量の計測が可能な放電特性に設定され、この設定で計測されることになるので計測の信頼性を高めることができる。
【0014】
上記方法において、さらに
(d)不揮発性メモリを準備する工程と、
(e)前記計測時に設定された放電特性の設定内容を表す設定情報を前記メモリに記録する工程と、
を備え、
前記工程(b)は、前記不揮発性メモリから読み出された前記設定情報に応じて放電特性を設定する工程を含むようにすることが好ましい。
【0015】
こうすれば、最後の計測時に設定された放電特性を表す情報がメモリに記録され、記録された設定で計測されることになるので、放電特性の設定変更なしで計測できる可能性を高めることができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、たとえば、残量計測装置、残量計測制御方法および残量計測制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、その印刷装置に用いられる印刷ヘッドやカートリッジ、その組合せ等の態様で実現することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.本発明の実施例におけるインクカートリッジの構造:
B.本発明の実施例におけるインクカートリッジの電気的構成:
C.本発明の実施例におけるインク残量検出部の回路構成:
D.本発明の実施例におけるインク残量測定処理:
E.本発明の実施例における放電特性設定処理の内容:
F.本発明の実施例における放電特性設定処理の方法:
G.変形例:
【0018】
A.インクカートリッジの構造:
図1は、本発明の実施におけるインクカートリッジ100の外観斜視図である。インクカートリッジ100は、消耗品として内部に1種類のインクを収容する筐体140を備えている。筐体140の下部には、後述するプリンタにインクを供給するためのインク供給口110が設けられている。筐体140の上部には、プリンタと電波により通信するためのアンテナ120やロジック回路130が備えられている。筐体140の側部には、インク残量の計測に利用されるセンサSSが装備されている。センサSSは、ロジック回路130に電気的に接続されている。
【0019】
図2は、インクカートリッジ100の筐体140の側部に装備されたセンサSSの断面を示す断面図である。センサSSは、圧電効果や逆圧電効果といった圧電素子としての特性を備えるピエゾ素子PZTと、ピエゾ素子PZTに電圧を印可する2つの電極10、11と、センサアタッチメント12とを備える。電極10、11は、ロジック回路130に接続されている。センサアタッチメント12は、ピエゾ素子PZTからインクと筐体140とに振動を伝える薄膜を有するセンサSSの構造部である。
【0020】
図2(a)は、インクが所定量以上残存していて、インクの液面がセンサSSの位置(図1)より高い場合を示している。図2(b)は、インクが所定量以上残存しておらず、インクの液面がセンサSSの位置より低い場合を示している。これらの図から分かるように、インクの液面がセンサSSの位置より高い場合には、センサSSとインクと筐体140とが振動体となるが、インクの液面がセンサSSの位置より低い場合には、センサSSと筐体140とセンサSSに付着した少量のインクのみが振動体となる。この結果、ピエゾ素子PZT周辺の振動特性がインクの残量に応じて変化することになる。本実施例では、このような振動特性の変化を利用して、インクの残量の計測が行われる。なお、計測の方法の詳細については後述する。
【0021】
B.インクカートリッジの電気的構成:
図3は、インクカートリッジ100に備えられたロジック回路130のブロック図である。ロジック回路130は、RF回路200と、制御部210と、不揮発性メモリであるEEPROM220と、インク残量検出回路230と、電力発生部240と、チャージポンプ回路250とを備えている。
【0022】
RF回路200は、アンテナ120を介してプリンタ20から受信した電波を復調する復調部201と、制御部210から受信した信号を変調してプリンタ20に送信するための変調部202とを備えている。プリンタ20は、アンテナ121を用いて所定の周波数の搬送波でベースバンド信号をインクカートリッジ100に送信している。一方、インクカートリッジ100は、搬送波を用いずにアンテナ120の負荷を変動させることによりアンテナ121のインピーダンスを変動させることができる。インクカートリッジ100は、このインピーダンスの変動を利用して信号をプリンタ20に送信する。このようにして、インクカートリッジ100とプリンタ20とは、双方向通信を行うことができる。
【0023】
電力発生部240は、RF回路200が受信した搬送波を整流して所定の電圧(たとえば5V)で電力を生成する。電力発生部240は、RF回路200と、制御部210と、EEPROM220と、チャージポンプ回路250とに電力を供給する。チャージポンプ回路250は、センサSSが要求する所定の電圧に昇圧してからインク残量検出回路230に電力を供給する。
【0024】
C.本発明の実施例におけるインク残量検出回路230の回路構成:
図4は、インク残量検出回路230とセンサSSの回路構成を示す回路図である。インク残量検出回路230は、PNP型トランジスタTr1と、NPN型トランジスタTr2と、充電時定数調整用抵抗器R1と、放電時定数調整用抵抗回路Rsと、アンプ232と、パルスカウンタ235とを備えている。センサSSは、2つの電極10、11(図2)でインク残量検出回路230に接続されている。
【0025】
放電時定数調整用抵抗回路Rsは、4つの放電時定数調整用抵抗器R2a、R2b、R2c、R2dと、その各々に接続された4つのスイッチSa、Sb、Sc、Sdとを有している。4つのスイッチSa、Sb、Sc、Sdは、制御部210によって開閉することができる。この開閉の組合せによって、制御部210は、放電時定数調整用抵抗回路Rsの抵抗値を設定することができる。
【0026】
PNP型トランジスタTr1は以下のように接続されている。ベースは、制御部210からの制御出力を受信する端子TAと接続されている。エミッタは、充電時定数調整用抵抗器R1を介してチャージポンプ回路250に接続されている。コレクタは、センサSSの一方の電極である電極10に接続されている。センサSSの他方の電極である電極11は接地されている。
【0027】
NPN型トランジスタTr2は以下のように接続されている。ベースは、制御部210からの制御出力を受信する端子TBと接続されている。コレクタは、センサSSの一方の電極である電極10に接続されている。エミッタは、上述のように抵抗値を変更可能な放電時定数調整用抵抗回路Rsを介して接地されている。
【0028】
パルスカウンタ235は、ピエゾ素子PZTが出力する電圧を増幅するアンプ232を介して、ピエゾ素子PZTに接続された電極10に接続されている。パルスカウンタ235は、制御部210からの制御出力を受信することができるように制御部210に接続されている。
【0029】
図5は、インク残量検出回路230に備えられたパルスカウンタ235のブロック図である。パルスカウンタ235は、コンパレータ234と、カウンタ制御部236と、カウント部238と、図示しない発振器とを備えている。コンパレータ234には、分析対象となるアンプ232の出力と、比較対象となる基準電位Vrefとが入力されている。カウンタ制御部236とカウント部238とは、制御部210に接続されている。なお、インク残量検出回路230は、特許請求の範囲における「検出信号生成回路」に相当する。
【0030】
D.本発明の実施例におけるインク残量測定処理:
図6は、本発明の実施例におけるインク残量測定処理の方法を示すフローチャートである。図7は、この処理におけるインク残量検出回路230とセンサSSの作動を示すタイミングチャートである。この処理は、たとえばプリンタ20の電源スイッチの操作に応じてインクカートリッジ100とプリンタ20の双方で実行される。インクカートリッジ100では、ピエゾ素子PZTが出力する電圧波が所定の数(たとえば5つ)だけ発生する間のクロック信号の数をカウントする。一方、プリンタ20は、カウントされた値に応じて電圧波の周波数を算出するとともに、算出された周波数に応じてインクの残量状態を推定する。具体的には、以下の処理が行われる。
【0031】
ステップS100では、制御部210(図4)は、放電時定数調整用抵抗回路Rsの4つのスイッチSa、Sb、Sc、Sdを開閉してピエゾ素子PZTの放電時定数を設定する。放電時定数の設定処理の詳細については後述する。
【0032】
ステップS110では、制御部210(図4)は、時刻t0において端子TAに所定の制御出力信号を出力してトランジスタTr1をオンする。これにより、チャージポンプ回路250からピエゾ素子PZTに電流が流れ込み、この電流によってキャパシタンスを有するピエゾ素子PZTに電圧が印可される。なお、初期状態では、2つのトランジスタTr1、Tr2は、いずれもオフにされている。
【0033】
制御部210は、時刻t1においてトランジスタTr1をオフし、時刻t2までインク残量検出回路230を待機させる。時刻t2まで待機させるのは、電圧が印可されたことによるピエゾ素子PZTの振動を減衰させるためである。なお、時刻の計測は、制御部210内部の図示しないクロックを利用して行われる。
【0034】
ステップS120では、制御部210(図4)は、時刻t2において端子TBに所定の制御出力信号を送信してトランジスタTr2を時刻t2でオンし、時刻t3でオフする。これにより、時刻t2から時刻t3までの間だけピエゾ素子PZTからの放電が行われる。ピエゾ素子PZTは、この放電によって急激に変形してセンサ振動系を加振する。センサ振動系とは、本実施例では、センサSS(図2)とセンサSS周辺の筐体140とインクとを含む系である。
【0035】
図8は、放電時のピエゾ素子PZTの放電波形を示す説明図である。図8(a)は、時間領域における放電波形を示す説明図である。各時刻における電圧は以下のとおりである。
(1)放電開始時刻t2:電位Vch(チャージポンプ回路250の出力電位)(2)時定数時刻td :電位Vchから63.2%だけ降下した電位
(3)放電終了時刻t3:接地電位より少し高い電位(図8)
ここで、時定数時刻tdは、放電開始時刻t2から時定数だけ経過した時刻である。なお、本明細書では、放電開始時刻t2から放電終了時刻t3までのピエゾ素子PZTと接地とが導通関係にある時間を放電時間と呼ぶ。
【0036】
図8(b)は、周波数領域における印可電圧の基本波と複数の高調波とを示す説明図である。これは、第1ウィンドウ(図7)におけるピエゾ素子PZTの印可電圧の波形が永遠に繰り返されると仮定した波形のフーリエ解析結果を示す図である。この結果、印可電圧は、放電時間の逆数である基本周波数とその整数倍の周波数を有する高調波とから構成される電圧波となることが分かる。ここで、説明を分かりやすくするためにピエゾ素子PZTの歪みが印可電圧と線形の関係あると仮定すると、加振力の波形は、印可電圧の波形と一致することになる。
【0037】
図9は、センサSSを含むセンサ振動系の周波数応答関数(伝達関数)を示す説明図である。周波数応答関数とは、センサ振動系の振動伝達系の入力と出力との関係を表したものであり、入力のフーリエスペクトルと出力のフーリエスペクトルの比で表される。すなわち、本実施例の周波数応答関数は、ピエゾ素子PZTの放電波形(加振力と線形の関係にある)のフーリエスペクトルと、センサ振動系の自由振動のフーリエスペクトルの比である。
【0038】
図9の1次モードと2次モードは、センサ振動系の2つの固有モードを示している。固有モードとは、センサ振動系が振動し得る形である。換言すれば、全ての物体は、振動するときのそれぞれの固有の形を持っていて、これ以外の形では振動することができない。この固有の形が固有モードである。物体の固有モードは、モーダル解析によって求めることができる。
【0039】
インクカートリッジ100は以下の2つの振動モードを有すると仮定している。
(1)1次モードは、センサSS(図2)が有する凹部のエッジ部分が振動の節となるとともに、凹部の中心が振動の腹になってお椀型に変形する振動モードである。
(2)2次モードは、センサSSが有する凹部のエッジ部分と中心部分の双方が振動の節となるとともに、エッジ部分と中心部分の中間部の中心部から見て左右2箇所が振動の腹となってシーソー型に変形する振動モードである。
【0040】
このように、センサ振動系は、1次モードと2次モードの固有振動数においてのみ加振による自由振動が生ずる。一方、他の周波数でピエゾ素子PZTがセンサ振動系を加振しても、センサ振動系に生ずる自由振動は極めて小さく直ちに減衰する。
【0041】
図10は、ピエゾ素子PZTの自由振動に応じてピエゾ素子PZTに電圧が発生する様子を示す説明図である。図10(a)は、周波数領域における印可電圧(放電時)の波形(図8(b))と、センサ振動系の周波数応答関数(図9)とを重畳させて、それぞれ実線と破線とで示している。図10(b)は、ピエゾ素子PZTの出力電圧を示している。
【0042】
図10(a)から分かるように、センサ振動系の1次モードの固有振動数にほぼ一致し、センサ振動系の2次モードの周波数に一致する放電波形の高調波が存在しないように放電波形の基本波の周波数が調整されている。これにより、センサ振動系の1次モードの固有振動数においてのみ大きな自由振動が発生することになる。この結果、センサ振動系の1次モードの固有振動数においてのみピエゾ素子PZTに大きな電圧が発生することになる(図10(b))。これは、第2ウィンドウ(図7)におけるピエゾ素子PZTの出力電圧の波形が永遠に繰り返されると仮定した波形のフーリエ解析結果と一致することになる。
【0043】
本実施例では、センサ振動系の1次モードの固有振動数の微小なシフトを利用してインクの液面を計測している。すなわち、本実施例では、インクの液面がセンサSSより高いか否かで1次モードの固有振動数が微小にシフトする。このシフトに応じて、センサSSとインクの液面の位置関係が決定されている。この結果、他の周波数の電圧波は、ノイズとなることが分かる。
【0044】
ステップS130(図6)では、制御部210は、図7の時刻t3から時刻t4までの間インク残量検出回路230を再び待機させる。この待機時間は、ノイズ源となる不要振動を減衰させるための時間である。この待機時間に、1次モードと2次モードの固有振動数以外の周波数における振動がほとんど消滅することになる。待機時間は、前述のように時刻t4に終了する。
【0045】
制御部210(図5)は、時刻t4においてカウンタ制御部236にカウンタ起動信号を出力する。カウンタ起動信号を受信したカウンタ制御部236は、カウント部238へカウントイネーブル信号を出力する。カウントイネーブル信号の出力は、受信後の最初のコンパレータ出力の立ち上がりエッジEdge1に応じて開始され(時刻t5)、6番目の立ち上がりエッジEdge6(時刻t6)に応じて終了する。なお、コンパレータ234において比較対象となる基準電位Vrefは、本実施例では接地電位に設定されている。
【0046】
ステップS140では、カウント部238は、クロックをカウントする。クロックのカウントは、カウント部238がカウントイネーブル信号を受信している間にのみ行われる。これにより、コンパレータ出力の立ち上がりエッジEdge1から6番目の立ち上がりエッジEdge6までの間のクロック信号の数がカウントされることになる。すなわち、ピエゾ素子PZTが出力した電圧波の5周期分のクロック信号がカウントされたことになる。
【0047】
ステップS150では、カウント部238は、カウント値を出力する。出力されたカウント値は、プリンタ20に送られる。プリンタ20は、受信したカウント値とクロック周期とに応じてピエゾ素子PZTが出力した電圧波の周波数を算出する。
【0048】
ステップS160では、プリンタ20は、この周波数に応じてインクの残量が所定の量以上であるか否かを決定することができる。たとえば、インクの液位がセンサSSの位置よりも高いときには、90kHzに近い周波数となり、インクの液位がセンサSSの位置よりも低いときには、110kHzに近い周波数となることが分かっていると仮定する。この場合には、計測された周波数が、たとえば105kHzだったとするとインク残量が所定値未満であることが分かる(ステップS170、S180)。
【0049】
E.本発明の実施例における放電特性設定処理の内容:
図11は、図10と同様にピエゾ素子PZTの自由振動に応じてピエゾ素子PZTに電圧が発生する様子を示す説明図である。ただし、放電特性が適切に設定される前の状態における電圧発生の様子である。調整前であるため、放電時の印可電圧の基本波の周波数がセンサ振動系の1次モードの固有振動数に一致していない一方、センサ振動系の2次モードの固有振動数に一致する放電時の印可電圧の高調波が存在する。
【0050】
この結果、1次モードの固有振動数だけでなく2次モードの固有振動数においても大きな電圧が発生する。このため、2次モードの固有振動数における電圧波がノイズとなってインク残量の計測を阻害することが分かる。
【0051】
図12は、本発明の実施例における放電特性設定処理の様子を示す説明図である。図12(a)は、放電特性の設定後の放電波形を示しており、図8(a)と同一の図である。図12(b)は、放電特性の設定前の放電波形を示している。
【0052】
この例では、放電特性として放電時定数と放電時間とを設定している。放電時定数は、ピエゾ素子PZTと接地との間の抵抗値と、ピエゾ素子PZTの静電容量の積である。放電時定数は、放電時定数調整用抵抗回路Rsの抵抗値の調整によって設定することができる。この抵抗値は、各放電時定数調整抵抗制御スイッチSa、Sb、Sc、Sdを適切な組合せで開閉することにより設定することができる。
【0053】
一方、放電時間とは、前述のようにピエゾ素子PZTと接地とが導通状態にある時間である。具体的には、制御部210がトランジスタTr2をオンにしている時間である。放電時間は、制御部210が自由に設定することができる。
【0054】
このような方法により、放電時定数を時定数Td’から時定数Tdに変更するとともに、放電終了時刻をt3’からt3に延ばして放電時間を変更すると図12(a)に示される放電波形と同一の波形となる。
【0055】
このように、本発明の実施例のインクカートリッジ100によれば、ピエゾ素子PZTからの放電特性を変更することが可能なので、放電後の残留振動の特性を残存量検出に好ましいS/Nの高いものに変更することができる。この結果、計測の信頼性を高めることができる。
【0056】
F.本発明の実施例における放電特性設定処理の方法:
図13は、本発明の実施例における放電特性設定処理の方法を示すフローチャートである。放電特性設定処理は、製造時とユーザによるインクカートリッジ100の使用時に行うことができる。ステップS200とステップS210における処理が製造時における設定処理であり、ステップS220以降の処理がユーザによるインクカートリッジ100の使用時における設定処理である。なお、この例では、説明を分かりやすくするために放電時定数のみを設定するものとする。
【0057】
ステップS200では、センサSSの製造者は、センサSSのセンサランクを決定する。センサランクとは、印可電圧と歪みの関係その他のセンサの特性を表すランクである。センサランクの決定は、センサの特性を実際に計測することによって行われる。本実施例では、センサSSは、AからHまでの8段階のセンサランクに分類されるものとする。
【0058】
ステップS210では、インクカートリッジ100の製造者は、決定されたセンサランクに応じて放電特性の初期設定を行う。放電特性の初期設定は、予め定められたセンサランクと放電時定数調整用抵抗回路Rsの設定状態の関係(図14)に従って行われる。
【0059】
たとえばセンサランクがBのときには、放電時定数調整用抵抗回路Rsが有する4つのスイッチSa、Sb、Sc、Sdのうち3つのスイッチSa、Sb、Scが「ON」に設定され、スイッチSdが「OFF」に設定される。ここで、スイッチSa、Sb、Sc、Sdの開閉によって接続が制御される抵抗Ra、Rb、Rc、Rdの抵抗値は、100Ω、200Ω、400Ω、800Ωとされている(図14)。
【0060】
この設定内容は、インクカートリッジ100がロジック回路130内に備える不揮発性メモリであるEEPROM220にセンサランクとともに記録される。なお、インクの残量が所定量以上であることを表す情報もインク注入時に記録される。これにより、最後の計測時に設定された放電特性を表す情報が不揮発性メモリに記録され、この記録された設定で計測されることになるので、簡易に計測の信頼性を高めることができるという利点がある。
【0061】
ステップS220では、ユーザは、インク残量の計測試験を実施する。計測試験の実施は、インクカートリッジ100をプリンタ20に装着すると自動的に行われる。プリンタ20は、計測試験を以下に示すシーケンスで実施する。
(1)インクの残量が所定量以上であることを、EEPROM220に記録された残存量を表す情報で確認する。
(2)EEPROM220に記録された情報に基づいて、放電時定数調整用抵抗回路Rsを設定する。
(3)前述のインク残量測定処理の方法(図6)のうちステップS110からステップS160までの処理を実行する。
【0062】
ステップS230では、プリンタ20は、計測値が所定の許容範囲内にあるか否かを判断する。所定の許容範囲は、この例では、インクの残量が所定量以上である場合の周波数である90kHzの±5kHzに設定されている。この判断の結果、計測値が所定の許容範囲内にある場合には、放電特性設定処理は完了する。一方、計測値が所定の許容範囲内にない場合には、処理がステップS240に進む。なお、許容範囲内であるか否かの判断は、特許請求の範囲における「消耗品の残存量を計測できるか否かの判断」に相当する。
【0063】
ステップS240では、プリンタ20は、予め定められた順序で放電時定数調整用抵抗回路Rsを再設定した後に繰り返して計測を行う。たとえば、EEPROM220に格納されたセンサランクがCの場合には、Bに設定して計測、Dに設定して計測、Aに設定して計測、Eに設定して計測といった順序で許容範囲内に入るまで繰り返して計測する。これにより、インク残量の計測が可能な放電特性に自動的に設定され、放電特性の設定を確実に適切なものとすることができるという利点がある。
【0064】
なお、ステップS220からステップS240までの処理は、製造者側で実施しても良い。また、ステップS200からステップS210までの処理は、製造者が設定を行う場合にもユーザ側で設定を行う場合にも省略可能である。
【0065】
G.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
G−1.上記各実施例では、センサの要素としてピエゾ素子PZTを使用しているが、たとえばロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム)を使用しても良い。本発明で使用するセンサは、充放電に応じて変形する逆圧電効果と、変形に応じて電圧を発生させる圧電効果という2つの特性を有する圧電素子を利用するものであれば良い。
【0067】
G−2.上記実施例では、トランジスタTr2のオンの時間と、圧電素子と放電時定数調整用抵抗で定まる時定数とを調整することによって放電特性を変更しているが、いずれか一方だけでも良い。また、たとえば放電用の回路に定電流回路を付加して図15に示されるような放電波形とすることにより放電特性を変更するようにしても良い。
【0068】
G−3.上記実施例では、放電時定数は、放電時定数調整用の抵抗回路の抵抗値を変更することによって調整されているが、たとえば圧電素子に並列にコンデンサを接続可能としてキャパシタンスを変更することによって時定数を調整するようにしても良い。
【0069】
G−4.上記実施例では、残量の計測対象はインクであるが、たとえばトナーであっても良い。本発明で残量の計測対象となるのは、機器の使用によって減少する消耗品であれば良い。
【0070】
本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施におけるインクカートリッジ100の外観斜視図。
【図2】 インクカートリッジ100の筐体140の側部に装備されたセンサSSの断面を示す断面図。
【図3】 インクカートリッジ100に備えられたロジック回路130のブロック図。
【図4】 インク残量検出回路230とセンサSSの回路構成を示す回路図。
【図5】 インク残量検出回路230に備えられたパルスカウンタ235のブロック図。
【図6】 本発明の実施例におけるインク残量測定処理のフローチャート。
【図7】 インク残量検出回路230とセンサSSの作動を示すタイミングチャート。
【図8】 ピエゾ素子PZTの印可電圧(接地電位との電位差)を示す説明図。
【図9】 センサSSを含むセンサ振動系の周波数応答関数(伝達関数)を示す説明図。
【図10】 ピエゾ素子PZTからの放電に応じてピエゾ素子PZTに電圧が発生する様子を示す説明図。
【図11】 ピエゾ素子PZTからの放電に応じてピエゾ素子PZTに電圧が発生する様子を示す説明図。
【図12】 本発明の実施例における放電特性設定処理の内容を示す説明図。
【図13】 本発明の実施例における放電特性設定処理の方法を示すフローチャート。
【図14】 センサランクと放電時定数調整用抵抗回路の設定状態の関係を示す説明図。
【図15】 変型例におけるピエゾ素子PZTからの放電特性を表す電圧波形。
【符号の説明】
10、11…電極
12…センサアタッチメント
20…プリンタ
100…インクカートリッジ
110…インク供給口
120…アンテナ
121…アンテナ
130…ロジック回路
140…筐体
200…RF回路
2001…特開
2002…特開
201…復調部
202…変調部
210…制御部
220…EEPROM
230…インク残量検出回路
232…アンプ
234…コンパレータ
235…パルスカウンタ
236…カウンタ制御部
238…カウント部
240…電力発生部
250…チャージポンプ回路
【発明の属する技術分野】
この発明は、消耗品容器内の消耗品の残存量を計測する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの出力装置として、インクジェットプリンタが普及している。消耗品であるインクジェットプリンタのインクは、インクカートリッジに、収容されて提供されるのが通例である。インクカートリッジに収容された消耗品の残量を計測する方法としては、たとえば特許文献1に開示されているように圧電素子を用いて直接計測する方法も提案されている。
【0003】
この方法では、まず、インクカートリッジに装着された圧電素子に電圧波を印可することにより圧電素子の振動部を振動させる。つぎに、圧電素子の振動部に残留する残留振動によって生ずる逆起電力の周期の変動に応じて消耗品の残量を計測する。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−147146号公報
【特許文献2】
特開2002−241450号公報
【特許文献3】
特開平6−8427号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような方法では、発生を意図しない振動ノイズによってS/N比が下がって正確な計測ができない場合があるという問題が生じていた。このような問題は、インクカートリッジに限られず、一般に、圧電素子を用いて消耗品の残存量を計測可能な消耗品容器に共通する問題であった。
【0006】
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、圧電素子を用いて消耗品の残存量を計測可能な消耗品容器において、計測の信頼性を高める技術を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明は、収容された消耗品の残存量を計測可能な消耗品容器であって、
前記消耗品を格納するとともに圧電素子が装着された消耗品タンクと、
前記圧電素子の充電と放電とを行うとともに、前記圧電素子の放電後の残留振動の周期を表す情報を含む検出信号を生成する検出信号生成回路と、
前記圧電素子の充電と放電の制御を行う制御部と、
を備え、
前記周期は、前記格納された消耗品の残存量が所定量より多いか否かの決定に利用可能であり、
前記制御部は、前記圧電素子の放電特性を変更可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明の消耗品容器は、圧電素子の放電特性を変更することが可能なので、放電後の残留振動の特性を残存量検出に好ましいものに変更することができる。これにより、計測の信頼性を高めることができる。ここで、圧電素子とは、充放電に応じて変形する逆圧電効果と、変形に応じて電圧を発生させる圧電効果という2つの特性を有する素子をいう。
【0009】
上記消耗品容器において、前記制御部は、前記圧電素子の放電時定数を変更可能であるように構成しても良いし、前記圧電素子の放電時間を変更可能であるように構成しても良い。ここで、放電時間とは、圧電素子と接地との間に接続されたスイッチが閉じていて導通状態にある時間をいう。
【0010】
上記消耗品容器において、前記検出信号生成回路は、
高電位側の第1端子と低電位側の第2端子との間に所定の電位差を発生させる電圧発生回路と、
一端が前記第2端子に接続された圧電素子と、
前記第1端子と前記圧電素子の他端との間に接続され、前記制御部からの制御出力に応じて、前記第1端子から前記圧電素子への充電をオンオフ制御する充電制御スイッチと、
前記圧電素子の他端と前記第2端子との間に接続され、前記制御部からの制御出力に応じて、前記圧電素子から前記第2端子への放電をオンオフ制御する放電制御スイッチと、
前記圧電素子の他端と前記第2端子との間に接続された回路であって、抵抗値を変更可能な抵抗回路と、
を備え、
前記制御部は、前記充電制御スイッチのオンオフ制御と、前記放電制御スイッチのオンオフ制御と、前記抵抗回路の抵抗値の制御とを行うように構成しても良い。
【0011】
本発明の方法は、消耗品容器内の消耗品の残存量を計測する方法であって、
(a)前記消耗品を格納するとともに圧電素子が装着された消耗品タンクと、前記圧電素子の充放電を行う回路とを準備する工程と、
(b)前記圧電素子の放電特性を可変に設定する工程と、
(c)前記計測を行う工程と、
を備え、
前記工程(c)は、
(c−1)前記圧電素子に充電する工程と、
(c−2)前記圧電素子から放電する工程と、
(c−3)前記圧電素子の放電後の残留振動の周期を表す情報を含む検出信号を生成する工程と、
(c−4)前記検出信号に応じて、前記格納された消耗品の残存量が所定量より多いか否かを決定する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
上記方法において、前記工程(c)は、さらに、前記検出信号に応じて前記格納された消耗品の残存量を計測できるか否かの判断を行うとともに、前記計測ができなかったとの判断に応じて前記工程(b)に処理を戻す工程を含み、
前記工程(b)は、前記計測ができなかったとの判断に応じて、前記計測ができなかったと判断された放電特性とは異なる放電特性に、前記放電特性を設定するとともに、前記工程(c)に処理を進める工程を含むようにすることが好ましい。
【0013】
こうすれば、自動的にインク残量の計測が可能な放電特性に設定され、この設定で計測されることになるので計測の信頼性を高めることができる。
【0014】
上記方法において、さらに
(d)不揮発性メモリを準備する工程と、
(e)前記計測時に設定された放電特性の設定内容を表す設定情報を前記メモリに記録する工程と、
を備え、
前記工程(b)は、前記不揮発性メモリから読み出された前記設定情報に応じて放電特性を設定する工程を含むようにすることが好ましい。
【0015】
こうすれば、最後の計測時に設定された放電特性を表す情報がメモリに記録され、記録された設定で計測されることになるので、放電特性の設定変更なしで計測できる可能性を高めることができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、たとえば、残量計測装置、残量計測制御方法および残量計測制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、その印刷装置に用いられる印刷ヘッドやカートリッジ、その組合せ等の態様で実現することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.本発明の実施例におけるインクカートリッジの構造:
B.本発明の実施例におけるインクカートリッジの電気的構成:
C.本発明の実施例におけるインク残量検出部の回路構成:
D.本発明の実施例におけるインク残量測定処理:
E.本発明の実施例における放電特性設定処理の内容:
F.本発明の実施例における放電特性設定処理の方法:
G.変形例:
【0018】
A.インクカートリッジの構造:
図1は、本発明の実施におけるインクカートリッジ100の外観斜視図である。インクカートリッジ100は、消耗品として内部に1種類のインクを収容する筐体140を備えている。筐体140の下部には、後述するプリンタにインクを供給するためのインク供給口110が設けられている。筐体140の上部には、プリンタと電波により通信するためのアンテナ120やロジック回路130が備えられている。筐体140の側部には、インク残量の計測に利用されるセンサSSが装備されている。センサSSは、ロジック回路130に電気的に接続されている。
【0019】
図2は、インクカートリッジ100の筐体140の側部に装備されたセンサSSの断面を示す断面図である。センサSSは、圧電効果や逆圧電効果といった圧電素子としての特性を備えるピエゾ素子PZTと、ピエゾ素子PZTに電圧を印可する2つの電極10、11と、センサアタッチメント12とを備える。電極10、11は、ロジック回路130に接続されている。センサアタッチメント12は、ピエゾ素子PZTからインクと筐体140とに振動を伝える薄膜を有するセンサSSの構造部である。
【0020】
図2(a)は、インクが所定量以上残存していて、インクの液面がセンサSSの位置(図1)より高い場合を示している。図2(b)は、インクが所定量以上残存しておらず、インクの液面がセンサSSの位置より低い場合を示している。これらの図から分かるように、インクの液面がセンサSSの位置より高い場合には、センサSSとインクと筐体140とが振動体となるが、インクの液面がセンサSSの位置より低い場合には、センサSSと筐体140とセンサSSに付着した少量のインクのみが振動体となる。この結果、ピエゾ素子PZT周辺の振動特性がインクの残量に応じて変化することになる。本実施例では、このような振動特性の変化を利用して、インクの残量の計測が行われる。なお、計測の方法の詳細については後述する。
【0021】
B.インクカートリッジの電気的構成:
図3は、インクカートリッジ100に備えられたロジック回路130のブロック図である。ロジック回路130は、RF回路200と、制御部210と、不揮発性メモリであるEEPROM220と、インク残量検出回路230と、電力発生部240と、チャージポンプ回路250とを備えている。
【0022】
RF回路200は、アンテナ120を介してプリンタ20から受信した電波を復調する復調部201と、制御部210から受信した信号を変調してプリンタ20に送信するための変調部202とを備えている。プリンタ20は、アンテナ121を用いて所定の周波数の搬送波でベースバンド信号をインクカートリッジ100に送信している。一方、インクカートリッジ100は、搬送波を用いずにアンテナ120の負荷を変動させることによりアンテナ121のインピーダンスを変動させることができる。インクカートリッジ100は、このインピーダンスの変動を利用して信号をプリンタ20に送信する。このようにして、インクカートリッジ100とプリンタ20とは、双方向通信を行うことができる。
【0023】
電力発生部240は、RF回路200が受信した搬送波を整流して所定の電圧(たとえば5V)で電力を生成する。電力発生部240は、RF回路200と、制御部210と、EEPROM220と、チャージポンプ回路250とに電力を供給する。チャージポンプ回路250は、センサSSが要求する所定の電圧に昇圧してからインク残量検出回路230に電力を供給する。
【0024】
C.本発明の実施例におけるインク残量検出回路230の回路構成:
図4は、インク残量検出回路230とセンサSSの回路構成を示す回路図である。インク残量検出回路230は、PNP型トランジスタTr1と、NPN型トランジスタTr2と、充電時定数調整用抵抗器R1と、放電時定数調整用抵抗回路Rsと、アンプ232と、パルスカウンタ235とを備えている。センサSSは、2つの電極10、11(図2)でインク残量検出回路230に接続されている。
【0025】
放電時定数調整用抵抗回路Rsは、4つの放電時定数調整用抵抗器R2a、R2b、R2c、R2dと、その各々に接続された4つのスイッチSa、Sb、Sc、Sdとを有している。4つのスイッチSa、Sb、Sc、Sdは、制御部210によって開閉することができる。この開閉の組合せによって、制御部210は、放電時定数調整用抵抗回路Rsの抵抗値を設定することができる。
【0026】
PNP型トランジスタTr1は以下のように接続されている。ベースは、制御部210からの制御出力を受信する端子TAと接続されている。エミッタは、充電時定数調整用抵抗器R1を介してチャージポンプ回路250に接続されている。コレクタは、センサSSの一方の電極である電極10に接続されている。センサSSの他方の電極である電極11は接地されている。
【0027】
NPN型トランジスタTr2は以下のように接続されている。ベースは、制御部210からの制御出力を受信する端子TBと接続されている。コレクタは、センサSSの一方の電極である電極10に接続されている。エミッタは、上述のように抵抗値を変更可能な放電時定数調整用抵抗回路Rsを介して接地されている。
【0028】
パルスカウンタ235は、ピエゾ素子PZTが出力する電圧を増幅するアンプ232を介して、ピエゾ素子PZTに接続された電極10に接続されている。パルスカウンタ235は、制御部210からの制御出力を受信することができるように制御部210に接続されている。
【0029】
図5は、インク残量検出回路230に備えられたパルスカウンタ235のブロック図である。パルスカウンタ235は、コンパレータ234と、カウンタ制御部236と、カウント部238と、図示しない発振器とを備えている。コンパレータ234には、分析対象となるアンプ232の出力と、比較対象となる基準電位Vrefとが入力されている。カウンタ制御部236とカウント部238とは、制御部210に接続されている。なお、インク残量検出回路230は、特許請求の範囲における「検出信号生成回路」に相当する。
【0030】
D.本発明の実施例におけるインク残量測定処理:
図6は、本発明の実施例におけるインク残量測定処理の方法を示すフローチャートである。図7は、この処理におけるインク残量検出回路230とセンサSSの作動を示すタイミングチャートである。この処理は、たとえばプリンタ20の電源スイッチの操作に応じてインクカートリッジ100とプリンタ20の双方で実行される。インクカートリッジ100では、ピエゾ素子PZTが出力する電圧波が所定の数(たとえば5つ)だけ発生する間のクロック信号の数をカウントする。一方、プリンタ20は、カウントされた値に応じて電圧波の周波数を算出するとともに、算出された周波数に応じてインクの残量状態を推定する。具体的には、以下の処理が行われる。
【0031】
ステップS100では、制御部210(図4)は、放電時定数調整用抵抗回路Rsの4つのスイッチSa、Sb、Sc、Sdを開閉してピエゾ素子PZTの放電時定数を設定する。放電時定数の設定処理の詳細については後述する。
【0032】
ステップS110では、制御部210(図4)は、時刻t0において端子TAに所定の制御出力信号を出力してトランジスタTr1をオンする。これにより、チャージポンプ回路250からピエゾ素子PZTに電流が流れ込み、この電流によってキャパシタンスを有するピエゾ素子PZTに電圧が印可される。なお、初期状態では、2つのトランジスタTr1、Tr2は、いずれもオフにされている。
【0033】
制御部210は、時刻t1においてトランジスタTr1をオフし、時刻t2までインク残量検出回路230を待機させる。時刻t2まで待機させるのは、電圧が印可されたことによるピエゾ素子PZTの振動を減衰させるためである。なお、時刻の計測は、制御部210内部の図示しないクロックを利用して行われる。
【0034】
ステップS120では、制御部210(図4)は、時刻t2において端子TBに所定の制御出力信号を送信してトランジスタTr2を時刻t2でオンし、時刻t3でオフする。これにより、時刻t2から時刻t3までの間だけピエゾ素子PZTからの放電が行われる。ピエゾ素子PZTは、この放電によって急激に変形してセンサ振動系を加振する。センサ振動系とは、本実施例では、センサSS(図2)とセンサSS周辺の筐体140とインクとを含む系である。
【0035】
図8は、放電時のピエゾ素子PZTの放電波形を示す説明図である。図8(a)は、時間領域における放電波形を示す説明図である。各時刻における電圧は以下のとおりである。
(1)放電開始時刻t2:電位Vch(チャージポンプ回路250の出力電位)(2)時定数時刻td :電位Vchから63.2%だけ降下した電位
(3)放電終了時刻t3:接地電位より少し高い電位(図8)
ここで、時定数時刻tdは、放電開始時刻t2から時定数だけ経過した時刻である。なお、本明細書では、放電開始時刻t2から放電終了時刻t3までのピエゾ素子PZTと接地とが導通関係にある時間を放電時間と呼ぶ。
【0036】
図8(b)は、周波数領域における印可電圧の基本波と複数の高調波とを示す説明図である。これは、第1ウィンドウ(図7)におけるピエゾ素子PZTの印可電圧の波形が永遠に繰り返されると仮定した波形のフーリエ解析結果を示す図である。この結果、印可電圧は、放電時間の逆数である基本周波数とその整数倍の周波数を有する高調波とから構成される電圧波となることが分かる。ここで、説明を分かりやすくするためにピエゾ素子PZTの歪みが印可電圧と線形の関係あると仮定すると、加振力の波形は、印可電圧の波形と一致することになる。
【0037】
図9は、センサSSを含むセンサ振動系の周波数応答関数(伝達関数)を示す説明図である。周波数応答関数とは、センサ振動系の振動伝達系の入力と出力との関係を表したものであり、入力のフーリエスペクトルと出力のフーリエスペクトルの比で表される。すなわち、本実施例の周波数応答関数は、ピエゾ素子PZTの放電波形(加振力と線形の関係にある)のフーリエスペクトルと、センサ振動系の自由振動のフーリエスペクトルの比である。
【0038】
図9の1次モードと2次モードは、センサ振動系の2つの固有モードを示している。固有モードとは、センサ振動系が振動し得る形である。換言すれば、全ての物体は、振動するときのそれぞれの固有の形を持っていて、これ以外の形では振動することができない。この固有の形が固有モードである。物体の固有モードは、モーダル解析によって求めることができる。
【0039】
インクカートリッジ100は以下の2つの振動モードを有すると仮定している。
(1)1次モードは、センサSS(図2)が有する凹部のエッジ部分が振動の節となるとともに、凹部の中心が振動の腹になってお椀型に変形する振動モードである。
(2)2次モードは、センサSSが有する凹部のエッジ部分と中心部分の双方が振動の節となるとともに、エッジ部分と中心部分の中間部の中心部から見て左右2箇所が振動の腹となってシーソー型に変形する振動モードである。
【0040】
このように、センサ振動系は、1次モードと2次モードの固有振動数においてのみ加振による自由振動が生ずる。一方、他の周波数でピエゾ素子PZTがセンサ振動系を加振しても、センサ振動系に生ずる自由振動は極めて小さく直ちに減衰する。
【0041】
図10は、ピエゾ素子PZTの自由振動に応じてピエゾ素子PZTに電圧が発生する様子を示す説明図である。図10(a)は、周波数領域における印可電圧(放電時)の波形(図8(b))と、センサ振動系の周波数応答関数(図9)とを重畳させて、それぞれ実線と破線とで示している。図10(b)は、ピエゾ素子PZTの出力電圧を示している。
【0042】
図10(a)から分かるように、センサ振動系の1次モードの固有振動数にほぼ一致し、センサ振動系の2次モードの周波数に一致する放電波形の高調波が存在しないように放電波形の基本波の周波数が調整されている。これにより、センサ振動系の1次モードの固有振動数においてのみ大きな自由振動が発生することになる。この結果、センサ振動系の1次モードの固有振動数においてのみピエゾ素子PZTに大きな電圧が発生することになる(図10(b))。これは、第2ウィンドウ(図7)におけるピエゾ素子PZTの出力電圧の波形が永遠に繰り返されると仮定した波形のフーリエ解析結果と一致することになる。
【0043】
本実施例では、センサ振動系の1次モードの固有振動数の微小なシフトを利用してインクの液面を計測している。すなわち、本実施例では、インクの液面がセンサSSより高いか否かで1次モードの固有振動数が微小にシフトする。このシフトに応じて、センサSSとインクの液面の位置関係が決定されている。この結果、他の周波数の電圧波は、ノイズとなることが分かる。
【0044】
ステップS130(図6)では、制御部210は、図7の時刻t3から時刻t4までの間インク残量検出回路230を再び待機させる。この待機時間は、ノイズ源となる不要振動を減衰させるための時間である。この待機時間に、1次モードと2次モードの固有振動数以外の周波数における振動がほとんど消滅することになる。待機時間は、前述のように時刻t4に終了する。
【0045】
制御部210(図5)は、時刻t4においてカウンタ制御部236にカウンタ起動信号を出力する。カウンタ起動信号を受信したカウンタ制御部236は、カウント部238へカウントイネーブル信号を出力する。カウントイネーブル信号の出力は、受信後の最初のコンパレータ出力の立ち上がりエッジEdge1に応じて開始され(時刻t5)、6番目の立ち上がりエッジEdge6(時刻t6)に応じて終了する。なお、コンパレータ234において比較対象となる基準電位Vrefは、本実施例では接地電位に設定されている。
【0046】
ステップS140では、カウント部238は、クロックをカウントする。クロックのカウントは、カウント部238がカウントイネーブル信号を受信している間にのみ行われる。これにより、コンパレータ出力の立ち上がりエッジEdge1から6番目の立ち上がりエッジEdge6までの間のクロック信号の数がカウントされることになる。すなわち、ピエゾ素子PZTが出力した電圧波の5周期分のクロック信号がカウントされたことになる。
【0047】
ステップS150では、カウント部238は、カウント値を出力する。出力されたカウント値は、プリンタ20に送られる。プリンタ20は、受信したカウント値とクロック周期とに応じてピエゾ素子PZTが出力した電圧波の周波数を算出する。
【0048】
ステップS160では、プリンタ20は、この周波数に応じてインクの残量が所定の量以上であるか否かを決定することができる。たとえば、インクの液位がセンサSSの位置よりも高いときには、90kHzに近い周波数となり、インクの液位がセンサSSの位置よりも低いときには、110kHzに近い周波数となることが分かっていると仮定する。この場合には、計測された周波数が、たとえば105kHzだったとするとインク残量が所定値未満であることが分かる(ステップS170、S180)。
【0049】
E.本発明の実施例における放電特性設定処理の内容:
図11は、図10と同様にピエゾ素子PZTの自由振動に応じてピエゾ素子PZTに電圧が発生する様子を示す説明図である。ただし、放電特性が適切に設定される前の状態における電圧発生の様子である。調整前であるため、放電時の印可電圧の基本波の周波数がセンサ振動系の1次モードの固有振動数に一致していない一方、センサ振動系の2次モードの固有振動数に一致する放電時の印可電圧の高調波が存在する。
【0050】
この結果、1次モードの固有振動数だけでなく2次モードの固有振動数においても大きな電圧が発生する。このため、2次モードの固有振動数における電圧波がノイズとなってインク残量の計測を阻害することが分かる。
【0051】
図12は、本発明の実施例における放電特性設定処理の様子を示す説明図である。図12(a)は、放電特性の設定後の放電波形を示しており、図8(a)と同一の図である。図12(b)は、放電特性の設定前の放電波形を示している。
【0052】
この例では、放電特性として放電時定数と放電時間とを設定している。放電時定数は、ピエゾ素子PZTと接地との間の抵抗値と、ピエゾ素子PZTの静電容量の積である。放電時定数は、放電時定数調整用抵抗回路Rsの抵抗値の調整によって設定することができる。この抵抗値は、各放電時定数調整抵抗制御スイッチSa、Sb、Sc、Sdを適切な組合せで開閉することにより設定することができる。
【0053】
一方、放電時間とは、前述のようにピエゾ素子PZTと接地とが導通状態にある時間である。具体的には、制御部210がトランジスタTr2をオンにしている時間である。放電時間は、制御部210が自由に設定することができる。
【0054】
このような方法により、放電時定数を時定数Td’から時定数Tdに変更するとともに、放電終了時刻をt3’からt3に延ばして放電時間を変更すると図12(a)に示される放電波形と同一の波形となる。
【0055】
このように、本発明の実施例のインクカートリッジ100によれば、ピエゾ素子PZTからの放電特性を変更することが可能なので、放電後の残留振動の特性を残存量検出に好ましいS/Nの高いものに変更することができる。この結果、計測の信頼性を高めることができる。
【0056】
F.本発明の実施例における放電特性設定処理の方法:
図13は、本発明の実施例における放電特性設定処理の方法を示すフローチャートである。放電特性設定処理は、製造時とユーザによるインクカートリッジ100の使用時に行うことができる。ステップS200とステップS210における処理が製造時における設定処理であり、ステップS220以降の処理がユーザによるインクカートリッジ100の使用時における設定処理である。なお、この例では、説明を分かりやすくするために放電時定数のみを設定するものとする。
【0057】
ステップS200では、センサSSの製造者は、センサSSのセンサランクを決定する。センサランクとは、印可電圧と歪みの関係その他のセンサの特性を表すランクである。センサランクの決定は、センサの特性を実際に計測することによって行われる。本実施例では、センサSSは、AからHまでの8段階のセンサランクに分類されるものとする。
【0058】
ステップS210では、インクカートリッジ100の製造者は、決定されたセンサランクに応じて放電特性の初期設定を行う。放電特性の初期設定は、予め定められたセンサランクと放電時定数調整用抵抗回路Rsの設定状態の関係(図14)に従って行われる。
【0059】
たとえばセンサランクがBのときには、放電時定数調整用抵抗回路Rsが有する4つのスイッチSa、Sb、Sc、Sdのうち3つのスイッチSa、Sb、Scが「ON」に設定され、スイッチSdが「OFF」に設定される。ここで、スイッチSa、Sb、Sc、Sdの開閉によって接続が制御される抵抗Ra、Rb、Rc、Rdの抵抗値は、100Ω、200Ω、400Ω、800Ωとされている(図14)。
【0060】
この設定内容は、インクカートリッジ100がロジック回路130内に備える不揮発性メモリであるEEPROM220にセンサランクとともに記録される。なお、インクの残量が所定量以上であることを表す情報もインク注入時に記録される。これにより、最後の計測時に設定された放電特性を表す情報が不揮発性メモリに記録され、この記録された設定で計測されることになるので、簡易に計測の信頼性を高めることができるという利点がある。
【0061】
ステップS220では、ユーザは、インク残量の計測試験を実施する。計測試験の実施は、インクカートリッジ100をプリンタ20に装着すると自動的に行われる。プリンタ20は、計測試験を以下に示すシーケンスで実施する。
(1)インクの残量が所定量以上であることを、EEPROM220に記録された残存量を表す情報で確認する。
(2)EEPROM220に記録された情報に基づいて、放電時定数調整用抵抗回路Rsを設定する。
(3)前述のインク残量測定処理の方法(図6)のうちステップS110からステップS160までの処理を実行する。
【0062】
ステップS230では、プリンタ20は、計測値が所定の許容範囲内にあるか否かを判断する。所定の許容範囲は、この例では、インクの残量が所定量以上である場合の周波数である90kHzの±5kHzに設定されている。この判断の結果、計測値が所定の許容範囲内にある場合には、放電特性設定処理は完了する。一方、計測値が所定の許容範囲内にない場合には、処理がステップS240に進む。なお、許容範囲内であるか否かの判断は、特許請求の範囲における「消耗品の残存量を計測できるか否かの判断」に相当する。
【0063】
ステップS240では、プリンタ20は、予め定められた順序で放電時定数調整用抵抗回路Rsを再設定した後に繰り返して計測を行う。たとえば、EEPROM220に格納されたセンサランクがCの場合には、Bに設定して計測、Dに設定して計測、Aに設定して計測、Eに設定して計測といった順序で許容範囲内に入るまで繰り返して計測する。これにより、インク残量の計測が可能な放電特性に自動的に設定され、放電特性の設定を確実に適切なものとすることができるという利点がある。
【0064】
なお、ステップS220からステップS240までの処理は、製造者側で実施しても良い。また、ステップS200からステップS210までの処理は、製造者が設定を行う場合にもユーザ側で設定を行う場合にも省略可能である。
【0065】
G.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
G−1.上記各実施例では、センサの要素としてピエゾ素子PZTを使用しているが、たとえばロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム)を使用しても良い。本発明で使用するセンサは、充放電に応じて変形する逆圧電効果と、変形に応じて電圧を発生させる圧電効果という2つの特性を有する圧電素子を利用するものであれば良い。
【0067】
G−2.上記実施例では、トランジスタTr2のオンの時間と、圧電素子と放電時定数調整用抵抗で定まる時定数とを調整することによって放電特性を変更しているが、いずれか一方だけでも良い。また、たとえば放電用の回路に定電流回路を付加して図15に示されるような放電波形とすることにより放電特性を変更するようにしても良い。
【0068】
G−3.上記実施例では、放電時定数は、放電時定数調整用の抵抗回路の抵抗値を変更することによって調整されているが、たとえば圧電素子に並列にコンデンサを接続可能としてキャパシタンスを変更することによって時定数を調整するようにしても良い。
【0069】
G−4.上記実施例では、残量の計測対象はインクであるが、たとえばトナーであっても良い。本発明で残量の計測対象となるのは、機器の使用によって減少する消耗品であれば良い。
【0070】
本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施におけるインクカートリッジ100の外観斜視図。
【図2】 インクカートリッジ100の筐体140の側部に装備されたセンサSSの断面を示す断面図。
【図3】 インクカートリッジ100に備えられたロジック回路130のブロック図。
【図4】 インク残量検出回路230とセンサSSの回路構成を示す回路図。
【図5】 インク残量検出回路230に備えられたパルスカウンタ235のブロック図。
【図6】 本発明の実施例におけるインク残量測定処理のフローチャート。
【図7】 インク残量検出回路230とセンサSSの作動を示すタイミングチャート。
【図8】 ピエゾ素子PZTの印可電圧(接地電位との電位差)を示す説明図。
【図9】 センサSSを含むセンサ振動系の周波数応答関数(伝達関数)を示す説明図。
【図10】 ピエゾ素子PZTからの放電に応じてピエゾ素子PZTに電圧が発生する様子を示す説明図。
【図11】 ピエゾ素子PZTからの放電に応じてピエゾ素子PZTに電圧が発生する様子を示す説明図。
【図12】 本発明の実施例における放電特性設定処理の内容を示す説明図。
【図13】 本発明の実施例における放電特性設定処理の方法を示すフローチャート。
【図14】 センサランクと放電時定数調整用抵抗回路の設定状態の関係を示す説明図。
【図15】 変型例におけるピエゾ素子PZTからの放電特性を表す電圧波形。
【符号の説明】
10、11…電極
12…センサアタッチメント
20…プリンタ
100…インクカートリッジ
110…インク供給口
120…アンテナ
121…アンテナ
130…ロジック回路
140…筐体
200…RF回路
2001…特開
2002…特開
201…復調部
202…変調部
210…制御部
220…EEPROM
230…インク残量検出回路
232…アンプ
234…コンパレータ
235…パルスカウンタ
236…カウンタ制御部
238…カウント部
240…電力発生部
250…チャージポンプ回路
Claims (8)
- 収容された消耗品の残存量を計測可能な消耗品容器であって、
前記消耗品を格納するとともに圧電素子が装着された消耗品タンクと、
前記圧電素子の充電と放電とを行うとともに、前記圧電素子の放電後の残留振動の周期を表す情報を含む検出信号を生成する検出信号生成回路と、
前記圧電素子の充電と放電の制御を行う制御部と、
を備え、
前記周期は、前記格納された消耗品の残存量が所定量より多いか否かの決定に利用可能であり、
前記制御部は、前記圧電素子の放電特性を変更可能であることを特徴とする、消耗品容器。 - 請求項1記載の消耗品容器であって、
前記制御部は、前記圧電素子の放電時定数を変更可能である、消耗品容器。 - 請求項1または2に記載の消耗品容器であって、
前記制御部は、前記圧電素子の放電時間を変更可能である、消耗品容器。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の消耗品容器であって、
前記検出信号生成回路は、
高電位側の第1端子と低電位側の第2端子との間に所定の電位差を発生させる電圧発生回路と、
一端が前記第2端子に接続された圧電素子と、
前記第1端子と前記圧電素子の他端との間に接続され、前記制御部からの制御出力に応じて、前記第1端子から前記圧電素子への充電をオンオフ制御する充電制御スイッチと、
前記圧電素子の他端と前記第2端子との間に接続され、前記制御部からの制御出力に応じて、前記圧電素子から前記第2端子への放電をオンオフ制御する放電制御スイッチと、
前記圧電素子の他端と前記第2端子との間に接続された回路であって、抵抗値を変更可能な抵抗回路と、
を備え、
前記制御部は、前記充電制御スイッチのオンオフ制御と、前記放電制御スイッチのオンオフ制御と、前記抵抗回路の抵抗値の制御とを行う、消耗品容器。 - 消耗品容器内の消耗品の残存量を計測する方法であって、
(a)前記消耗品を格納するとともに圧電素子が装着された消耗品タンクと、前記圧電素子の充放電を行う回路とを準備する工程と、
(b)前記圧電素子の放電特性を可変に設定する工程と、
(c)前記計測を行う工程と、
を備え、
前記工程(c)は、
(c−1)前記圧電素子に充電する工程と、
(c−2)前記圧電素子から放電する工程と、
(c−3)前記圧電素子の放電後の残留振動の周期を表す情報を含む検出信号を生成する工程と、
(c−4)前記検出信号に応じて、前記格納された消耗品の残存量が所定量より多いか否かを決定する工程と、
を含むことを特徴とする、計測方法。 - 請求項5記載の計測方法であって、
前記工程(c)は、さらに、前記検出信号に応じて前記格納された消耗品の残存量を計測できるか否かの判断を行うとともに、前記計測ができなかったとの判断に応じて前記工程(b)に処理を戻す工程を含み、
前記工程(b)は、前記計測ができなかったとの判断に応じて、前記計測ができなかったと判断された放電特性とは異なる放電特性に、前記放電特性を設定するとともに、前記工程(c)に処理を進める工程を含む、計測方法。 - 請求項6記載の計測方法であって、さらに
(d)不揮発性メモリを準備する工程と、
(e)前記計測時に設定された放電特性の設定内容を表す設定情報を前記メモリに記録する工程と、
を備え、
前記工程(b)は、前記不揮発性メモリから読み出された前記設定情報に応じて放電特性を設定する工程を含む、計測方法。 - 収容された消耗品の残存量を計測可能な消耗品容器が備える圧電素子の放電特性を設定させるために、コンピュータに前記消耗品容器を制御させるためのコンピュータプログラムであって、
前記消耗品容器は、
前記消耗品を格納するとともに圧電素子が装着された消耗品タンクと、
前記圧電素子の充電と放電とを行うとともに、前記圧電素子の放電後の残留振動の周期を表す情報を含む検出信号を生成する検出信号生成回路と、
前記圧電素子の充電と放電の制御を行うとともに、前記圧電素子の放電特性を変更可能である制御部と、
前記放電特性の設定内容を表す設定情報と、前記消耗品の残存量が所定量より多いか否かを表す残存量情報とを格納する不揮発性メモリと、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、
(a)前記設定情報と前記残存量情報とを前記不揮発性メモリから読み出す機能と、
(b)前記設定情報に基づいて、前記圧電素子の放電特性を設定させる機能と、
(c)前記残存量情報に基づいて、前記消耗品の残存量が前記所定量より多いことを確認する機能と、
(d)前記確認に応じて、前記圧電素子の放電後の残留振動の周期を表す情報を含む検出信号を生成させる機能と、
(e)前記検出信号を受信し、前記受信された検出信号に応じて前記消耗品の残存量を計測できるか否かの判断を行う機能と、
(f)前記計測できるか否かの判断に応じて、前記計測できないと判断がなされた場合には、前記計測ができないと判断された放電特性とは異なる放電特性に設定させるとともに、前記機能(d)に処理を戻す機能と、
(g)前記計測できるか否かの判断に応じて、前記計測可能との判断がなされた場合には、前記設定された放電特性の設定内容を表す設定情報を、前記不揮発性メモリに記録させる機能と、
を前記コンピュータに実現させるプログラムを含むコンピュータプログラム。
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