JP3945019B2 - 成形シミュレーション計算装置およびプログラム記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インフレーション成形シミュレーション計算装置に関する。さらに詳しくは、力のバランス、熱の収支、材料の粘弾性的性質、境界条件および入力条件として成形機条件、成形条件、樹脂条件に基づいて、インフレーション成形における成形ダイス出口からフロストラインに至るまでの各位置におけるバブルの形状、時間、応力、歪み速度などの物性値、及び、初期入力時に変数あるいは未定であった成形条件を推算するのに用いる装置に関する。
また、求めた物性値からフィルムの配向性を予測する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子材料のインフレーション成形のシミュレーションについては、Kanai ら(Polym.Eng.Sci., 24, 1185 (1984)) 、 Campbellら(Intern.Polym.Process.,7,229(1992) )、あるいはLui ら(Intern.Polym.Process.,3,226(1995) )などが、インフレーション成形のシミュレーションの際の連立微分方程式の解法にRunge-Kutta 法を使って試みている。
【0003】
しかし、インフレーション成形のシミュレーションの場合、Ruge-Kutta法は初期入力時の変数あるいは未定であった成形条件を上手に選択してやらないと解の発散がしばしば起こり、目的とする物性が得られない場合がある。また、Band Matrix 法を使ったインフレーション成形のシミュレーションは、Cainら(Polym.Eng.Sci,28,1527(1988)) が行っているが、目的のフィルム特性に合致するための必要条件である初期変数の最適化については考慮されておらず、さらにBand Matrix 法と連立非線形方程式の解法を組み合わせた複合的な繰り返し計算は行われていない。
【0004】
篠原等( 成形加工, 第9巻, 第3号,238(1997))は、非線形粘弾性モデルをインフレーション成形モデルに組み込み同一成形条件下での応力とバブル形状の粘弾性的性質依存性を検討したものであるが、インフレーション成形における成形ダイス出口からフロストラインに至るまでの各位置におけるバブルの形状、時間、応力、歪み速度などの物性値、及び、初期入力時に変数あるいは未定であった成形条件を推算する装置とは異なる。
また、これまでフィルムの配向性を実験との比較で調査する論文は数多くあった(RajenM.Patel、et.al,Polym.Eng.Sci.,34,1506(1994))が、シュミレーション結果を利用して数値的に配向度を予測したものはなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、インフレーション成形のシミュレーションにより、実験と合致するバブルの形状および物性(配向度を含む)を得て、さらに、実験では不明であった成形条件の情報を新たに求めることによって、新規フィルム開発などに対して、現実の実験を行わずに、シミュレーションにてインフレーション成形を行い、バブルの解析および開発が能率的に可能となる装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成要素からなるインフレーション成形シミュレーション計算装置に関する。
(a)下記の条件を入力する入力装置。(イ)インフレーション成形機の成形ダイスの半径Ro、及び成形ダイスのリップ間隔Ho、(ロ)インフレーション成形後の円筒フィルムの半径Rf、成形後のフィルムの厚みHf、成形開始温度To、フロストライン高さFLH、吐出量G 、及び冷却風温度Tair、(ハ)インフレーション成形される材料の変形停止温度Tf、材料の流動に関する活性化エネルギーAE、輻射率Em、溶融密度ρ、比熱Cp、及び材料の成形開始温度における零剪断粘度ηo、
(b)上記の入力条件、並びに、引き取り張力Fzo、内圧ΔPo、及び熱伝導係数UoからBand Matrix法を用いて、フロストライン高さにおけるバブルの半径Rf'、バブルの厚みHf’、及びバブルの温度Tf’を推算する第1の演算装置。
(c)上記の(b)で求めたHf’、Rf' 及びTf’と、(a)で入力したHf、Rf及びTfを比較し、連立非線形方程式の解法を用いて、計算解の最適値が得られるようにFz0、Δp0、U0に変化を与える変数α、β、γを求める第2の演算装置。
(d)第2の演算装置から得られた変数α、β、γを使って、任意の値である引き取り張力Fzo、内圧ΔPo、及び熱伝導係数Uoに変化を与えた値を用いて、再び(b)の演算を行い、次に再び(c)の演算を行い、この繰り返し計算を行ない、第2の演算装置で演算された変数α、β、γあるいは相対誤差Z α、Z β、Z γが許容誤差ε以下で繰り返し計算を終了し、その時点でのバブル形状に対応する成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置におけるバブルの半径R 、バブルの厚みH 、バブルの温度T 、時間t 、各方向の応力σii、各方向の歪速度e ii、各方向の歪量s ii、さらに成形条件である引き取り速度Vf、ドローダウン比DDR、内圧ΔP、熱伝達係数U、および引き取り張力Fzを推算する第3の演算装置。
(e)第3の演算装置より得られたバブルの形状や物性、及び成形条件の引き取り速度Vf、ドローダウン比DDR、内圧ΔP、熱伝達係数U、および引き取り張力Fzを記憶する記憶装置。
【0007】
また本発明は、上記の(a)〜(e)の機能を実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【0009】
また、以下の構成要素からなるインフレーション成形シミュレーション計算装置に関する。
即ち
(a) インフレーション成形シミュレーションをするにつき、少なくとも
(イ)インフレーション成形機の機械条件として成形ダイスの半径Ro、成形ダイスのリップ間隔Ho、(さらにエアーリングの高さZairをつけ加えても良い)
【0010】
(ロ)インフレーション成形の成形条件として、成形後の円筒フィルムの半径Rf(これはブローアップ比BUR でもよい)、成形後のフィルムの厚みHf、成形温度To、フロストライン高さFLH 、吐出量Q (吐出量の代わりに初期押し出し速度Voでもよい)、冷却風温度Tair(成形雰囲気温度Troomは冷却風温度Tairと同じ値でも良いし、別の値として入力しても良い)
【0011】
(ハ)インフレーション成形される材料について、変形停止温度Tf(結晶化温度あるいはガラス転移温度あるいは冷却固化温度でもよい)、材料の流動に関する活性化エネルギーAE、輻射率Em、溶融密度ρ、比熱Cp、零剪断粘度ηo
(また、次の4変数引き取り張力Fzo 、内圧Δpo、熱伝導係数Uo、許容誤差εはあらかじめ初期値を設定してあるが、入力項として各値を入力しても良い)
を入力する入力装置、
【0012】
(b) 上記の入力装置に入力された各入力条件とインフレーション成形に関する力の釣り合い式および熱収支の式および材料の粘弾性構成方程式および境界条件( これらの各式は変数を無次元化してもよい)を連立微分方程式の解法であるBand Matrix 法(Newman J.J.,I&E.C.Fundamentals,7,514(1968)) を用いて、各式が各式が成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置で成立するような収束解を求めて、フロストライン高さにおけるバブルの半径Rf' 、バブルの厚みHf' 、バブルの温度Tf' を推算する(また、成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置におけるバブルの半径R 、バブルの厚みH 、バブルの温度T 、時間t 、各方向の応力σii、各方向の歪速度e ii、各方向の歪量s ii を求めることもできる)第1の演算装置、
【0013】
(c) 上記の(b) のフロストライン高さにおけるバブルの厚みHf' 、バブル半径Rf' 、バブルの温度Tf' と、(a) の(ロ)のフィルムの幅Rf、成形後のフィルムの厚みHfおよび(a) の(ハ)の変形停止温度Tfを比較し、連立非線形方程式の解法、例えばNewton-Raphson法を用いて、計算解の最適値が得られるように任意の値である引き取り張力Fzo 、内圧Δpo、熱伝導係数Uoに変化を与える変数α、β、γを求める第2の演算装置、
【0014】
(d) 引き取り張力Fzo 、内圧Δpo、熱伝導係数Uoに変数α、β、γで変化を与えた値を用いて(b) と(c) の繰り返し計算を行ない、変数α、β、γあるいは相対誤差Z α、Z β、Z γが許容誤差ε以下で繰り返し計算を終了し、その時点での成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置におけるバブルの半径R、バブルの厚みH 、バブルの温度T 、時間t などの計算で求めることが可能なバブルの形状や物性を全て計算し(例えばバブルの半径R 、バブルの厚みH 、バブルの温度T 、時間t 、各方向の応力σii、各方向の歪速度e ii、各方向の歪量s iiなど)、さらに成形条件である引き取り速度Vf、ドローダウン比DDR 、内圧ΔP 、熱伝達係数U および引き取り張力Fzを推算する第3の演算装置
【0015】
(e) (d)で求めたバブルの各位置での物性値(例えばバブルの半径R、バブルの厚みH、バブルの温度T、時間t 、各方向の応力σii、各方向の歪速度eii、各方向の歪量siiなど)を用いて、各方向での比を取りその値からフィルムの配向度を予測する、あるいは物性値から再度材料に合った粘弾性構成方程式を解き、各方向の伸長比や応力を求めてその値の比からフィルムの配向を予測する第4の演算装置
(f) 第3の演算装置より得られた成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置におけるバブルの半径R 、バブルの厚みH 、バブルの温度T 、時間t などの計算で求めることが可能なバブルの形状や物性を全て計算し(例えばバブルの半径R 、バブルの厚みH 、バブルの温度T 、時間t 、各方向の応力σii、各方向の歪速度e ii、各方向の歪量s iiなど)、さらに成形条件である引き取り速度Vf、ドローダウン比DDR 、内圧ΔP 、熱伝達係数U および引き取り張力Fzおよび第4の演算装置より得られた各方向での比を取りその値から求められるフィルムの配向度あるいは物性値から再度材料に合った粘弾性構成方程式を解き、各方向の伸長比や応力を求めてその値の比から求まるフィルムの配向度を記憶する第1の記憶装置、及び、
【0016】
(g)この値を表示する表示部を含む推算装置。
【0017】
本発明のインフレーション成形シミュレーション計算装置においては、成形機の機械条件として、成形ダイスの半径Ro、成形ダイスのリップ間隔Ho(またエアーリングの高さZairをつけ加えても良い)、インフレーション成形の成形条件として、成形後の円筒フィルムの半径Rf(これはブローアップ比BURでもよい)、成形後のフィルムの厚みHf、成形温度To、フロストライン高さFLH、吐出量Q(吐出量の代わりに初期押し出し速度Voでもよい)、冷却風温度Tair(成形雰囲気温度Troomは冷却風温度Tairと同じ値でも良いし、別の値として入力することが出来る)、インフレーション成形される材料について、変形停止温度Tf(結晶化温度あるいはガラス転移温度あるいは冷却固化温度でもよい)、材料の流動に関する活性化エネルギーAE、輻射率Em、溶融密度ρ、比熱Cp、零剪断粘度ηo (また、次の4変数引き取り張力Fzo 、内圧Δpo、熱伝導係数Uo、許容誤差εはあらかじめ初期値を設定してあるが、入力項として各値を入力しても良い)を入力し、力のバランスの式、熱収支の式、材料の粘弾性構成方程式および境界条件式(これらの各式は変数を無次元化してもよい)からなる連立微分方程式をBand Matrix法を用いて、各式が成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置で成り立つような収束解を求め、フロストライン高さにおけるバブルの半径Rf' 、バブルの厚みHf' 、バブルの温度Tf' を推算し、これらと(a) の(ロ)の成形後の円筒フィルムの半径Rf、成形後のフィルムの厚みHfおよび(a) の(ハ)の変形停止温度Tfを比較し、連立非線形方程式の解法、例えばNewton-Raphson法を用いて、計算解の最適値が得られるように任意の値である引き取り張力Fzo 、内圧Δpo、熱伝導係数Uoに変化を与える変数α、β、γを求め、そこで引き取り張力Fzo、内圧Δpo、熱伝導係数Uoに変数α、β、γで変化を与えた値を用いて(b) と(c) の繰り返し計算を行ない、変数α、β、γあるいは相対誤差Z α、Z β、Z γが許容誤差ε以下で繰り返し計算を終了し、その時点での成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置におけるバブルの半径R 、バブルの厚みH 、バブルの温度T 、時間t などの計算で求めることが可能なバブルの形状や物性を全て計算し、さらに成形条件である引き取り速度Vf、ドローダウン比DDR、内圧ΔP、熱伝達係数Uおよび引き取り張力Fzを推算するものである。さらに、求めたバブルの各位置での物性値(例えばバブルの半径R、バブルの厚みH、バブルの温度T、時間t 、各方向の応力σii、各方向の歪速度eii、各方向の歪量siiなど)を用いて、各方向での比を取りその値からフィルムの配向度を予測する、あるいは物性値から再度材料に合った粘弾性構成方程式を解き、各方向の伸長比や応力を求めてその値の比からフィルムの配向を予測するものである。
【0018】
以下本発明に基づく実施態様の例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のインフレーション成形シミュレーション計算装置の構成の一例を示すブロック図である。入力装置01、第1の演算装置11、第2の演算装置12、第3の推算装置13、記憶装置20、読み出し手段40、および表示装置30からなるインフレーション成形シミュレーション計算装置の例である.
【0019】
図2は本発明のインフレーション成形シミュレーション計算装置を用いてインフレーション成形をシミュレーションする手順の一例を示すフローチャートである。
【0020】
入力装置01としては、キーボードの他、ライトペンやイメージリーダーなどの図形入力装置やパンチカードリーダ等を用いることができる。またこれらの装置を2種類以上併用することができる。
【0021】
演算装置11〜13としては、CPU としていわゆるパーソナルコンピュータを用いることができる。また必要に応じてミニコンピュータやスーパーコンピュータ、ワークステーションなども用いることができる。
記憶装置20としては、フロッピーディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、テープ等を用いることができる。
【0022】
表示装置30としては、ブラウン管、液晶ディスプレ、各種プリンタ、プロッターなどが公的に用いられる。これを併用にてもよい。
【0023】
以下に本発明のインフレーション成形シミュレーション計算装置の各構成部分の働きについて詳細に説明する。
【0024】
入力装置はインフレーション成形シミュレーション計算を行う際の
(イ)インフレーション成形機の機械条件として、成形ダイスの半径Ro、成形ダイスのリップ間隔Ho、(さらにエアーリングの高さZairをつけ加えても良い)
(ロ)インフレーション成形の成形条件として、成形後の円筒フィルムの半径Rf(これはブローアップ比BUR でもよい)、成形後のフィルムの厚みHf、成形温度To、フロストライン高さFLH 、吐出量Q (吐出量の代わりに初期押し出し速度Voでもよい)、冷却風温度Tair(成形雰囲気温度Troom は冷却風温度Tairと同じ値でも良いし、別の値として入力しても良い)
(ハ)インフレーション成形される材料について、変形停止温度Tf(結晶化温度あるいはガラス転移温度あるいは冷却固化温度でもよい)、材料の流動に関する活性化エネルギーAE、輻射率Em、溶融密度ρ、比熱Cp、零剪断粘度ηo
(また、次の4変数引き取り張力Fzo 、内圧Δpo、熱伝導係数Uo、許容誤差εはあらかじめ初期値を設定してあるが、入力項として各値を入力しても良い)
を入力する為の装置である.
【0025】
各入力値については、数字で直接入力しても良いし、あるいは項目ごとのファイルの形式で読みとらせても良い。
【0026】
第1の演算装置11においては、入力装置に入力された成形ダイスの半径Ro、成形ダイスのリップ間隔Ho、(さらにエアーリングの高さZairをつけ加えても良い)、成形後の円筒フィルムの半径Rf(これはブローアップ比BUR でもよい)、成形後のフィルムの厚みHf、成形温度To、フロストライン高さFLH 、吐出量Q (吐出量の代わりに初期押し出し速度Voでもよい)、冷却風温度Tair(成形雰囲気温度Troom は冷却風温度Tairと同じ値でも良いし、別の値として入力しても良い)、インフレーション成形される材料について、変形停止温度Tf(結晶化温度あるいはガラス転移温度あるいは冷却固化温度でもよい)、材料の流動に関する活性化エネルギーAE、輻射率Em、溶融密度ρ、比熱Cp、零剪断粘度ηo (また、次の4変数引き取り張力Fzo 、内圧Δpo、熱伝導係数Uo、許容誤差εはあらかじめ初期値を設定してあるが、入力項として各値を入力しても良い)から力のバランスの式、熱収支の式、および材料の粘弾性構成方程式および境界条件式からなる連立微分方程式(これらの各式は変数を無次元化してもよい)をBand Matrix法を用いて、各式が成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置で成り立つような収束解を求め、フロストライン高さにおけるバブルの半径Rf' 、バブルの厚みHf' 、バブルの温度Tf' を推算する。また成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置におけるバブルの半径R 、バブルの厚みH 、バブルの温度T 、時間t 、各方向の応力σii、各方向の歪速度e ii、各方向の歪量s iiを推算する事も出来る。
【0027】
第2の演算装置12においては、第1の演算装置11の計算解であるフロストライン高さにおけるバブルの厚みHf、バブル半径Rf、バブルの温度Tfと、(a) の(ロ)のフィルムの幅Rf、成形後のフィルムの厚みHfおよび(a) の(ハ)の変形停止温度Tfを比較し、連立非線形方程式の解法、例えばNewton-Raphson法を用いて、計算解の最適値が得られるように任意の値である引き取り張力Fzo 、内圧Δpo、熱伝導係数Uoに変化を与える変数α、β、γを演算する。
【0028】
第3の演算装置13においては、演算装置12から得られた変数α、β、γを使って、任意の値である引き取り張力Fzo 、内圧Δpo、熱伝導係数Uoに変化を与えた値を用いて、再び演算装置11を行い、次に演算装置12を行い、この繰り返し計算を行ない、演算装置12で演算された変数α、β、γあるいは相対誤差Z α、Z β、Z γが許容誤差ε以下で繰り返し計算を終了し、その時点でのバブル形状に対応する成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置におけるバブルの半径R 、バブルの厚みH 、バブルの温度T 、時間t 、各方向の応力σii、各方向の歪速度e ii、各方向の歪量s ii、さらに成形条件である引き取り速度Vf、ドローダウン比DDR 、内圧ΔP 、熱伝達係数Uおよび引き取り張力Fzを推算する。第4の演算装置においては、第3の演算装置で求めたバブルの各位置での物性値(例えばバブルの半径R、バブルの厚みH、バブルの温度T、時間t 、各方向の応力σii、各方向の歪速度eii、各方向の歪量siiなど)を用いて、各方向での比を取りその値からフィルムの配向度を予測する、あるいは物性値から再度材料に合った粘弾性構成方程式を解き、各方向の伸長比や応力を求めてその値の比からフィルムの配向を予測するものである。
【0029】
演算装置11では数式1、数式2、数式3、数式4、数式5に示されるように、バブル上のある点で力のバランス、熱収支、樹脂の挙動および境界条件をニュートン流体とした場合の応力あるいは粘度の式の連立微分方程式をBand Matrix 法で解くことで、成形ダイス出口からフロストラインまでの距離をn当分(例えば100等分以上)に細かく区切ったバブル各位置での材料の厚みH、温度T、バブル半径R等が求められる。なお、これらの各式は変数を無次元化してもよい。
【0030】
【数1】
【0031】
ここでRはバブル半径、Hはフィルムの厚み、σiiはξ1方向の応力、Rfは最終バブル半径、ΔPは内圧、Fzはz軸方向の張力である。
【0032】
【数2】
【0033】
【数3】
【0034】
ここで、ρは密度、Cpは比熱、Tair は冷却風温度、hcは熱伝達係数、εmは輻射率、σSBはステファン−ボルツマン定数、Troomは雰囲気温度である。
【0035】
【数4】
【0036】
ここで、σは応力テンソル、pは等方性圧力項、1は単位テンソル、eは歪み速度テンソル、ηは粘度、Eは流動の活性化エネルギー、Rは気体定数、ηo は温度To におけるゼロ剪断粘度である.
【0037】
例えば成形ダイス出口からフロストラインまでn=100 としたとき
成形ダイス出口 j=1
フロストライン j=100 と置く。
つぎの境界条件を考慮する。
【0038】
【数5】
【0039】
ここで、ηo は温度To におけるゼロ剪断粘度、Ho は成形ダイスリップ間隔、Vo は初期材料押し出し速度、Ro は成形ダイス半径である。
【0040】
フィルムの厚みHfo 、温度Tfo 、バブル半径Rfo と要求される最終的なフィルムの厚みHf、温度Tf、バブル半径Rfから、Newton-Raphson法とGauss-Jordan法を用いて, 初期変数である引き取り張力Fzo 、内圧Δpo、熱伝導係数Uoの補正ベクトル行列δを求める。
【数6】
【0041】
演算装置13では、α、β、γの絶対値を許容誤差εと比較し、数式7に示すように、
【0042】
【数7】
【0043】
を満たさない場合は、初期変数である引き取り張力Fzo 、内圧Δpo、熱伝導係数Uoにα、β、γで変化を与え(例えばα、β、γを加えたり、引いたり、掛けたりする)、再度演算装置11、演算装置12を繰り返す。
数式7を満たす場合は、その時点でのバブル形状に対応する成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置におけるバブルの半径R 、バブルの厚みH 、バブルの温度T 、時間t 、各方向の応力σii、各方向の歪速度e ii、各方向の歪量s ii、さらに成形条件である引き取り速度Vf、ドローダウン比DDR 、内圧ΔP 、熱伝達係数U および引き取り張力Fzを推算する。
演算装置14では、例えば求めた各方向のひずみ速度を時間で一部あるいは全部分積分した値の比を取ったもの、あるいは求めた各方向の応力値の一部分の比を取ったもの、あるいは各方向の応力値を時間で一部または前部分積分したエネルギー値の比を取ったもの、あるいは数式8に示すように各位置におけるひずみ速度と時間を用いて、さらに材料の緩和時間分布、緩和強度分布、伸長特性、セン断速度特性を加えて再度粘弾性構成方程式(例えばLeonovモデル)を解き、そこから求められる各方向の伸長比および応力値の比を取ったものを材料の配向の指標として与え、配向性を推測する。
例えば、粘弾性構成方程式として、Leonovモデルを用いた場合
【数8】
のように与えられ(T. Isaki, et al, Rheol. Acta, 30,539(1991))、例えば伸長粘度の非線型性パラメータあるいはstrain hardeningパラメータβ=0、第2ニュートン粘度パラメータs=0としたときに、
【数9】
の連立微分方程式を解くことによって得られる各方向の伸長比を求めることができる。また、伸長比から以下のようにして応力値を求めることができる。
【数10】
【0044】
【発明の効果】
本発明は、インフレーション成形のシミュレーションにおける微分方程式の解法として収束性の良いBand Matrix法を用い、さらに目的のフィルム特性に合致するのに必要である初期変数の最適化アルゴリズムとして非線形方程式の解法、例えばNewton-Raphson法を用い、その両者を組み合わせた繰り返し計算を行うことにより、実験と合致するバブルの形状および物性を得ることができる。また、シミュレーションからフィルムの配向性の予測まで可能である。さらに、実験では不明であった成形条件の情報を新たに求めることによって、新規フィルム開発などに対して、現実の実験を行わずに、シミュレーションにてインフレーション成形を行い、バブルの解析および開発が能率的に可能となる。
さらに、エアーリングの高さZairを考慮に入れたシミュレーションを行うこともでき、より現実的なインフレーション成形のシミュレーションが可能となる。
【0045】
【実施例】
Farber等(Polym.Eng.Sci.,14,435(1974)) の行ったインフレーション成形実験(Case3) を本計算装置がインフレーション成形をシミュレーションできるかについて、検討した。Farberの実験条件について、表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
本装置によるシミュレーションの際の条件として、使用する材料(High branched PE)の活性化エネルギーを14.0Kcal/molとし、フロストライン温度Tfを100.0 ℃とした。図3および表2に実験結果とシミュレーション結果の比較を示す。
【0048】
【表2】
【0049】
図3よりバブル半径の計算結果c)は、ダイス出口からフロストラインまで実験値と合致し、成形時間に対するバブル温度変化b)も、ほぼ同等の減少曲線を描く。フロストラインまでの成形時間の差は約1秒であり、引き取り速度の差0.8m/sec. 程度のずれで実験値をよく再現した。また、それぞれMD、TD方向の歪み速度も絶対値は異なるがほぼ同等の傾向を示した。以上のことから本装置は十分にインフレーション成形をシミュレーションできるものである。
また、配向性について、複屈折測定および広角X線回折から求めたフィルムの面方向の複屈折率△n(MD,TD)と本シミュレーション結果のうち例えばLeonovモデルから求めた配向度λMD/λTDは、図4より正の相関があることが分かり、この配向度がフィルムの配向を推測するのに十分に有用であることがわかる。
尚、本実施例については第1の記憶装置及び第1から第3の演算装置として32ビットのマイクロコンピュータを用いた高分子材料のインフレーション成形シミュレーション装置を用いたが、この結果を得るのに約5分であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のインフレーション成形シュミレーション計算装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】 本発明の計算装置を用いてインフレーション成形をシュミレーションする手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】 実施例における実験結果とシュミレーション結果の比較を示したものである。
【図4】 実施例における実験結果とシュミレーション結果の比較を示したものである。
Claims (2)
- 以下の構成要素からなるインフレーション成形シミュレーション計算装置。
(a)下記の条件を入力する入力装置。(イ)インフレーション成形機の成形ダイスの半径Ro、及び成形ダイスのリップ間隔Ho、(ロ)インフレーション成形後の円筒フィルムの半径Rf、成形後のフィルムの厚みHf、成形開始温度To、フロストライン高さFLH、吐出量G 、及び冷却風温度Tair、(ハ)インフレーション成形される材料の変形停止温度Tf、材料の流動に関する活性化エネルギーAE、輻射率Em、溶融密度ρ、比熱Cp、及び材料の成形開始温度における零剪断粘度ηo、
(b)上記の入力条件、並びに、引き取り張力Fzo、内圧ΔPo、及び熱伝導係数UoからBand Matrix法を用いて、フロストライン高さにおけるバブルの半径Rf'、バブルの厚みHf’、及びバブルの温度Tf’を推算する第1の演算装置。
(c)上記の(b)で求めたHf’、Rf' 及びTf’と、(a)で入力したHf、Rf及びTfを比較し、連立非線形方程式の解法を用いて、計算解の最適値が得られるようにFz0、Δp0、U0に変化を与える変数α、β、γを求める第2の演算装置。
(d)第2の演算装置から得られた変数α、β、γを使って、任意の値である引き取り張力Fzo、内圧ΔPo、及び熱伝導係数Uoに変化を与えた値を用いて、再び(b)の演算を行い、次に再び(c)の演算を行い、この繰り返し計算を行ない、第2の演算装置で演算された変数α、β、γあるいは相対誤差Z α、Z β、Z γが許容誤差ε以下で繰り返し計算を終了し、その時点でのバブル形状に対応する成形ダイス出口からフロストライン高さまでの各位置におけるバブルの半径R 、バブルの厚みH 、バブルの温度T 、時間t 、各方向の応力σii、各方向の歪速度e ii、各方向の歪量s ii、さらに成形条件である引き取り速度Vf、ドローダウン比DDR、内圧ΔP、熱伝達係数U、および引き取り張力Fzを推算する第3の演算装置。
(e)第3の演算装置より得られたバブルの形状や物性、及び成形条件の引き取り速度Vf、ドローダウン比DDR、内圧ΔP、熱伝達係数U、および引き取り張力Fzを記憶する記憶装置。 - 請求項1に記載の(a)〜(e)の機能を実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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