JP3944889B2 - ウエブ帯電用装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、写真用フィルム、写真用印画紙、印刷用感光材料、医療用感光材料、マイクロフィルム、磁気記録テープ、接着テープ、感圧記録紙、感熱記録紙、オフセット版材等の製造において連続走行する帯状支持体（以下「ウエブ」と称する）に各種液状組成物（以下「塗布液」と称する）を塗布する塗布装置の前段に配設され、ウエブに単極性電荷を付与するためのウエブ帯電用装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
例えば、特開平４─６５０８８号公報に開示されるように、ウエブ面に単極性電荷を付与してから塗布液とウエブに塗布すると、塗布液とウエブとの親和性、付着性が良化することを利用して、塗布装置の直前にウエブ帯電用装置を設けることが行なわれている。このウエブ帯電装置は、走行するウエブの幅方向に張設されたワイヤー状のコロナ放電電極と、ウエブを係合支持すると共にコロナ放電電極に対する接地極を形成するローラとの間でウエブを介してコロナ放電を行なうことにより、ウエブに単極性電荷を付与するものである。これにより、塗布時における塗布開始時の塗付けの容易化、厚塗り防止、ウエブ接合部通過時の塗膜の乱れ防止等の効果を奏することができる。このことから、この静電場を利用した塗布方法があらゆる塗布方式において用いられるようになってきた。
【０００３】
しかし、近年、ウエブの走行速度を上げた状態で塗布液を塗布する高速塗布化が進むにつれて、ウエブ表面に単極性電荷を付与した時に、ウエブ幅方向の両端部における電位が両端部以外のウエブの電位よりも小さくなることがわかった。ウエブ両端の電位が小さい部分を、以下「ウエブの耳部」と称すと共に、両端部以外のウエブを以下「ウエブの中央部」と称すことにする。この結果、塗布液をウエブに塗布した時に、ウエブ耳部における塗布液の親和性や付着性がウエブ中央部に比べて悪くなるという問題が生じた。
【０００４】
この問題の対策として、特開平４─６５０８８号公報のウエブ帯電用装置では、ワイヤー状導電材料のコロナ放電電極とウエブとの間隔を、ウエブの中央部よりもウエブの耳部の間隔を小さくすることで解決する対策を開示している。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平４─６５０８８号公報に開示された対策の場合、ワイヤー状のコロナ放電電極を１ｍｍ以下のミクロレベルで間隔調整しなくてはならないので、調整が極めて難しいという欠点がある。また、コロナ放電電極とウエブとを、一旦所望の間隔に調整できても、ウエブ帯電用装置を使用しているうちにワイヤー状のコロナ放電電極にたるみが生じてしまい、ウエブの耳部の電位が中央部の電位よりも小さくなるという欠点がある。この結果、ウエブの耳部が中央部よりも塗布性が悪くなる所謂「耳部液切れ現象」が発生した。
【０００６】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ウエブの幅方向に渡って均等に単極性電荷を付与することができるので、塗布液をウエブに塗布した時にウエブ耳部とウエブ中央部における塗布液の親和性や付着性を均一にすることのできるウエブ帯電用装置を提供することを目的とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために、ウエブに塗布液を塗布する塗布装置の前段に配設され、走行する前記ウエブの幅方向に張設されたワイヤー状のコロナ放電電極と、前記ウエブを係合支持すると共に前記コロナ放電電極に対する接地極を形成するローラとから成り、前記ウエブを介して前記コロナ放電電極と前記接地極との間でコロナ放電を行なうことにより前記ウエブ表面に単極性電荷を付与するウエブ帯電用装置において、前記コロナ放電電極を挟んだ前記ローラの反対側に導電性接地板を設けると共に、前記ウエブの幅方向両端部に対応する前記導電性接地板両端部を中央部よりも前記ウエブに近くなるように折曲させたことを特徴とする。
【０００８】
本発明によれば、ワイヤー状のコロナ放電電極を挟んで接地極であるローラの反対側、即ち接地極の反対側に導電性接地板を設けたので、走行するウエブの幅方向に渡って単極性電荷を均等に付与することができる。従って、塗布液をウエブに塗布した時にウエブ耳部とウエブ中央部における塗布液の親和性や付着性を均一にすることができるので、塗布液をウエブの幅方向に渡って均一に塗布することができる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係るウエブ帯電用装置の好ましい実施の形態について詳説する。
図１は、本発明のウエブ帯電用装置の第１の実施の形態を説明する側面図であり、図２は図１のＡ−Ａ線上の正面断面図である。
【００１０】
図１及び図２に示すように、ウエブ帯電用装置１０は、主として、コロナ放電の放電電極側を形成する放電電極装置１２と、その放電電極装置１２の上方に設けられウエブ１４を係合支持すると共にコロナ放電の接地極側を形成するローラ１６とで構成される。
放電電極装置１２は、導電材料で形成されたワイヤー状のコロナ放電電極１８（以下、「放電線１８」と称す）が、ローラ１６の軸方向に沿って張設されると共に、その両端が上面が開放された電極支持フレーム２０の両側板２０Ａに支持される。放電線１８は、ローラ１６下側周面の径方向、換言するとウエブ１４の走行方向に対して所定間隔をおいて複数本（例えば４本）平行に並列配置される。放電線１８を形成するワイヤー状導電材料としては、タングステン線、モリブデン線、白金線、炭素繊維線等を用いることができ、その太さは１００μｍ〜２００μｍ程度が好ましい。また、電極支持フレーム２０の両側板２０Ａには、放電線１８を支持すると共に放電線１８の張力を調整する図示しない張設具が設けられる。放電線１８は、通常約１ｋｇの張力で張設される。また、前記電極支持フレーム２０の両側板２０Ａは、図１に示すようにローラ１６の周面に沿って湾曲状に切り欠きが形成されている。
【００１１】
一方、ローラ１６は、走行するウエブ１４に対してローラ１６の周面下側が係合すると共に、ローラ１６自体がアースされており接地極として作用する。通常、各放電線１８と、ローラ１６に係合支持されるウエブ１４との間隔は、１０ｍｍ程度離間されている。
そして、複数本の放電線１８には直流高電圧電源２２から電圧６５００Ｖ程度の高電圧が印加され、ウエブ１４を介して放電線１８とローラ１６との間にコロナ放電が行われる。
【００１２】
また、電極支持フレーム２０内には、放電線１８を挟んだローラ１６の反対側にアースされた状態の導電性接地板２４が設けられている。この導電性接地板２４は、矩形板状に形成され、長手方向が放電線１８の長さに略等しく、短手方向がローラ１６の直径よりもやや長くなるように形成される。更に、図２に示すように、導電性接地板２４の長手方向両端部、即ちローラ１６に係合支持されるウエブ１４の耳部に対応する部分がウエブ１４側に近くなるように折曲されている。導電性接地板２４として使用される導電性材料の材質は、アルミニウム板、銅板、鉄板、ステンレス板、その他の金属以外の導電性材料を用いることができる。
【００１３】
次に、上記の如く構成されたウエブ帯電用装置１０の作用について、本発明のウエブ帯電用装置１０を組み込んだ図３の塗布システムフローを用いて説明する。
図３に示すように、走行するウエブ１４は、塗布装置２６の前段に設けられたウエブ帯電用装置１０において、高電圧電源２２から放電線１８に高電圧が印加され、ウエブ１４に対してコロナ放電が行なわれる。これにより、ウエブ１４表面に単極性電荷が付与される。次に、ウエブ１４は表面電位計２８を通過し、ここでウエブ表面の電位が測定され記録計に記録される。表面電位計２８を通過したウエブ１４はパスローラ３０を経由して塗布装置２６に達する。塗布装置２６では、バックアップローラ３２に係合するウエブ１４の表面に、塗布ヘッド３４からウエブ１４の幅方向に渡って塗布液３６が吐出される。これにより、走行するウエブ１４に塗布液３６が塗布される。
【００１４】
この塗布操作において、ウエブ帯電用装置１０でウエブ１４表面に単極性電荷が付与されることによりウエブ１４と塗布液３６との親和性及び付着性が向上し、塗布性能を高めることができる。しかし、従来のウエブ帯電用装置では、ウエブ１４の耳部の電位がウエブ１４の中央部の電位よりも小さくなるために、耳部の塗布性が悪くなる、所謂「耳部液切れ現象」が発生した。
【００１５】
そこで、本発明のウエブ帯電用装置１０では、放電線１８を挟んだローラ１６の反対側に導電性接地板２４を設けたので、ウエブ１４に単極性電荷を付与した時に耳部の電位が中央部の電位より小さくならずにウエブ１４の幅方向に渡って均等に帯電させることができる。尚、導電性接地板２４の長手方向両端部を折曲させることによりウエブ１４の耳部の電位と中央部の電位とを均等にし易いが、折曲しない場合でも十分な効果がある。
【００１６】
このように放電線１８を挟んだローラ１６の反対側に導電性接地板２４を設けることによりウエブ１４の耳部の電位と中央部の電位とを均等にすることができるのは、放電線１８からウエブ１４を介してローラ１６に至る電気力線によって形成される静電場の密度がウエブ１４の幅方向において均等になるためと考えられる。従って、導電性接地板２４を設けることにより「耳部液切れ現象」が発生しないようにできる。
【００１７】
また、本発明のウエブ帯電用装置１０の場合、従来のウエブ帯電用装置のように、放電線１８をウエブ１４に対して１ｍｍ以下のミクロ的なレベルで間隔調整する必要もなく、更に、放電線１８によるたるみの影響でウエブ１４の耳部と中央部の電位が異なることもなくなる。
図４は、本発明のウエブ帯電用装置１０の第２の実施の形態を説明する側面図であり、第１の実施の形態と同じ部材や装置は同符号を付して説明する。
【００１８】
第２の実施の形態は、導電性接地板２４をローラ１６の径方向周面に沿って、湾曲状にしたものである。従って、ウエブ１４の走行方向に所定間隔を有して平行に配設した複数本の放電線１８の導電性接地板２４に対する距離が均等になる。これにより、放電線１８からウエブ１４を介してローラ１６に至る電気力線によって形成される静電場の密度をウエブ１４の走行方向においても均等にすることができる。これにより、ウエブ１４の走行方向における電位変動をなくすことができるので、ウエブ１４の走行方向における塗布性を均等にすることができる。
【００１９】
図５は、本発明のウエブ帯電用装置１０の第３の実施の形態を説明する側面図であり、第１の実施の形態と同じ部材や装置は同符号を付して説明する。
第３の実施の形態は、導電性接地板２４の中央部をローラ１６の径方向周面に沿って湾曲状にすると共に、導電性接地板２４の端部をローラ１６側に折曲して複数本の放電線を覆うようにしたものである。
【００２０】
この第３の実施の形態の場合も、第２の実施の形態と同様の効果を得ることができる上に、放電線１８を囲んで外乱を生じにくくさせたので、静電場の状態をより安定化させることができる。
図６は、本発明のウエブ帯電用装置１０の第４の実施の形態を説明する正面断面図であり、第１の実施の形態と同じ部材や装置は同符号を付して説明する。
【００２１】
第４の実施の形態は、ウエブ１４両端の耳部位置とウエブ１４中央部位置とにそれぞれ独立した導電性接地板２４、２４、２４を配設すると共に、それぞれの導電性接地板２４を上下方向に移動可能にしたものである。
この場合は、第１の実施の形態のように導電性接地板２４の長手方向両端を折曲する必要がないと共に、ウエブ１４とウエブ耳部位置の導電性接地板２４Ｂの距離、及びウエブ１４とウエブ中央部位置の導電性接地板２４Ａとの距離をそれぞれ独自に調整することができるので、ウエブ１４の耳部と中央部の電位を同じにすることもできるし、或いは、ウエブ１４の耳部の電位を中央部の電位よりも意図的に小さくしてウエブ１４の耳部に塗布液が塗布されにくくすることも可能である。
【００２２】
また、これらの導電性接地板２４Ａ、２４Ｂのうち、ウエブ１４の中央部位置の導電性接地板２４Ａを取り外して耳部位置にのみ導電性接地板２４Ｂを配設することもできる。
図７は、本発明のウエブ帯電用装置１０の第５の実施の形態を説明する正面断面図であり、第１の実施の形態と同じ部材や装置は同符号を付して説明する。
【００２３】
第５の実施の形態は、一枚の導電性接地板２４において導電性接地板２４とウエブ１４との距離を調整するための位置調整手段４０を設けるようにしたものである。即ち、導電性接地板２４の長手方向（ウエブ１４の幅方向）の両端位置と中央位置にそれぞれ、電極支持フレーム２０の底板に螺合されたボルト４０（位置調整手段）の先端が当接される。また、導電性接地板２４の材質としては弾性変形し易いものが用いられる。これにより、ボルト４０を押し込んで導電性接地板２４を押圧することにより、導電性接地板２４とウエブ１４との距離を調整することができる。従って、ウエブ１４の耳部と中央部の電位が等しくなるように微妙な調整を行うことができる。この場合、導電性接地板２４の位置調整手段４０は、ボルト４０に限らず、エアシリンダー等を用いることもできる。また、ボルト４０の位置は３か所に限定するものではない。
【００２４】
尚、導電性接地板２４の形状は、矩形板状に限定されることはなく放電線１８と帯電させるウエブ１４の間の電気力線を妨げない形状であれば、第１の実施の形態のように平面形状であってもよいし、第２の実施の形態のように円弧状であってもよいし、第３の実施の形態のように放電線１８を覆う形状であってもよいし、第４及び第５の実施の形態のようにウエブ１４と放電線１８との間隔が可変できる構造であってもよい。
【００２５】
【実施例】
図３に示した本発明のウエブ帯電用装置１０を組み込んだ塗布システムを用いて試験を行った。
即ち、ＴＡＣ（トリアセチルセルロース）ウエブ表面にゼラチンを被覆した写真フイルム用の２００ｍｍ幅のウエブ１４を搬送速度１００ｍ/ 分で走行し、ウエブ帯電用装置１０において直流高電圧電源２２から放電線１８に印加電圧６３００Ｖの直流を流し、ウエブ１４にコロナ放電してウエブ１４表面に単極性電荷を帯電させた。そして、帯電されたウエブ１４の表面電位を表面電位計２８で計測記録した。計測後のウエブ１４は、塗布装置２６において塗布液３６を塗布した。
【００２６】
放電線１８は、直径１００μｍ、長さ２００ｍｍタングステンワイヤーを４本平行に配置すると共に、放電線１８とウエブ１４との間隔を１０ｍｍとした。
一方、導電性接地板２４はアルミニウム平板を使用した。
試験▲１▼は、導電性接地板２４の長さを放電線１８の長さと同じ２００ｍｍのものを使用し、ウエブ１４と導電性接地板２４との距離を２４ｍｍ、２１ｍｍ、１８ｍｍ、１４ｍｍと可変した場合についてウエブ１４の耳部と中央部の電位差を調べた。
【００２７】
試験▲２▼は、ウエブ１４の両端に対応する位置にのみ長さ２０ｍｍの導電性接地板２４Ｂをそれぞれ配設し、その他の条件は試験▲１▼と同様の場合についてウエブ１４と導電性接地板２４Ｂとの距離を２４ｍｍ、２１ｍｍ、１８ｍｍとした場合についてウエブ１４の耳部と中央部の電位差を調べた。ウエブ１４の耳部と中央部の電位差は、次式の如く中央部の電位に対する耳部の電位の電位比で表した。
【００２８】
また、試験▲３▼として、試験▲１▼で処理したウエブ１４に塗布装置２６で塗布した時の「耳部液切れ現象」の発生の有無を調べた。
【００２９】
試験▲１▼の結果を第１表に、試験▲２▼の結果を第２表に、試験▲３▼の結果を第３表に示す。また、それぞれの試験の比較例として、導電性接地板２４を設けない場合について行った。
【００３０】
【表１】
表１の結果から明らかなように、導電性接地板２４を設けなかった場合のウエブ１４の中央部の電位に対する耳部の電位の電位比は、０．４２であるのに対し、導電性接地板２４を設けた場合には電位比が１に近くなった。導電性接地板２４の形状や放電線１８への印加電圧等の試験条件により多少の変動はあると思われるが、上記条件で行った場合には、放電線１８と導電性接地板２４の距離を１４ｍｍにした時に電位比が１となり、ウエブ１４の中央部と耳部の電位が全く同じになった。これにより、導電性接地板２４を設けることにより、ウエブ１４の幅方向に渡って均等に単極性電荷を付与することができることが実証された。
【００３１】
また、表１から分かるように、電位比が１である時の放電線１８と導電性接地板２４との距離１４ｍｍを、１８ｍｍまで移動させても電位比は０．９４と大きく変動しない。従って、本発明のウエブ帯電用装置１０は、従来のウエブ帯電用装置のように、ウエブ１４と放電線１８の距離を１ｍｍ以下のミクロレベルで調整する必要がないと共に、放電線１８が若干たるんでも問題ない。
【００３２】
【表２】
表２の結果からわかるように、ウエブ１４の耳部に対応する位置にのみ導電性接地板２４Ｂを配設すると、逆に中央部の電位よりも耳部の電位の方が大きくなる傾向がある。従って、ウエブ１４の耳部に対応する位置にのみ導電性接地板２４Ｂを配設する場合には、放電線１８と導電性接地板２４の距離を大きくとる必要があると共に、耳部の塗布液３６の薄塗りを意図的に厚塗りしたい場合に適切である。
【００３３】
【表３】
表３の結果から、導電性接地板２４を設けない従来の場合、即ち電位比が０．４２の場合には、「耳部液切れ現象」が発生するが、導電性接地板２４を設けた本発明の場合、即ち、電位比が０．７８〜１．００の場合には「耳部液切れ現象」が発生しなかった。
【００３４】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のウエブ帯電用装置によれば、ウエブの幅方向に渡って均等に単極性電荷を付与することができるので、塗布液をウエブに塗布した時にウエブ耳部とウエブ中央部における塗布液の親和性や付着性を均一にすることができる。
【００３５】
従って、ウエブの耳部が中央部よりも塗布性が悪くなる所謂「耳部液切れ現象」が発生しない。
また、本発明のウエブ帯電用装置は、ウエブ耳部を意図的に厚塗りにしたりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のウエブ帯電用装置の第１の実施の形態を説明する側面図
【図２】図１のＡ−Ａ線に沿った正面断面図
【図３】本発明のウエブ帯電用装置を組み込んだ塗布システムのフロー図
【図４】本発明のウエブ帯電用装置の第２の実施の形態を説明する側面図
【図５】本発明のウエブ帯電用装置の第３の実施の形態を説明する側面図
【図６】本発明のウエブ帯電用装置の第４の実施の形態を説明する正面断面図
【図７】本発明のウエブ帯電用装置の第５の実施の形態を説明する正面断面図
【符号の説明】
１０…ウエブ帯電用装置
１２…放電電極装置
１４…ウエブ
１６…ローラ（接地極）
１８…放電線（コロナ放電電極）
２０…電極支持フレーム
２２…高電圧電源
２４…導電性接地板
２６…塗布装置
２８…表面電位計
３２…バックアップローラ
３４…塗布ヘッド
３６…塗布液
【発明の属する技術分野】
本発明は、写真用フィルム、写真用印画紙、印刷用感光材料、医療用感光材料、マイクロフィルム、磁気記録テープ、接着テープ、感圧記録紙、感熱記録紙、オフセット版材等の製造において連続走行する帯状支持体（以下「ウエブ」と称する）に各種液状組成物（以下「塗布液」と称する）を塗布する塗布装置の前段に配設され、ウエブに単極性電荷を付与するためのウエブ帯電用装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
例えば、特開平４─６５０８８号公報に開示されるように、ウエブ面に単極性電荷を付与してから塗布液とウエブに塗布すると、塗布液とウエブとの親和性、付着性が良化することを利用して、塗布装置の直前にウエブ帯電用装置を設けることが行なわれている。このウエブ帯電装置は、走行するウエブの幅方向に張設されたワイヤー状のコロナ放電電極と、ウエブを係合支持すると共にコロナ放電電極に対する接地極を形成するローラとの間でウエブを介してコロナ放電を行なうことにより、ウエブに単極性電荷を付与するものである。これにより、塗布時における塗布開始時の塗付けの容易化、厚塗り防止、ウエブ接合部通過時の塗膜の乱れ防止等の効果を奏することができる。このことから、この静電場を利用した塗布方法があらゆる塗布方式において用いられるようになってきた。
【０００３】
しかし、近年、ウエブの走行速度を上げた状態で塗布液を塗布する高速塗布化が進むにつれて、ウエブ表面に単極性電荷を付与した時に、ウエブ幅方向の両端部における電位が両端部以外のウエブの電位よりも小さくなることがわかった。ウエブ両端の電位が小さい部分を、以下「ウエブの耳部」と称すと共に、両端部以外のウエブを以下「ウエブの中央部」と称すことにする。この結果、塗布液をウエブに塗布した時に、ウエブ耳部における塗布液の親和性や付着性がウエブ中央部に比べて悪くなるという問題が生じた。
【０００４】
この問題の対策として、特開平４─６５０８８号公報のウエブ帯電用装置では、ワイヤー状導電材料のコロナ放電電極とウエブとの間隔を、ウエブの中央部よりもウエブの耳部の間隔を小さくすることで解決する対策を開示している。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平４─６５０８８号公報に開示された対策の場合、ワイヤー状のコロナ放電電極を１ｍｍ以下のミクロレベルで間隔調整しなくてはならないので、調整が極めて難しいという欠点がある。また、コロナ放電電極とウエブとを、一旦所望の間隔に調整できても、ウエブ帯電用装置を使用しているうちにワイヤー状のコロナ放電電極にたるみが生じてしまい、ウエブの耳部の電位が中央部の電位よりも小さくなるという欠点がある。この結果、ウエブの耳部が中央部よりも塗布性が悪くなる所謂「耳部液切れ現象」が発生した。
【０００６】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ウエブの幅方向に渡って均等に単極性電荷を付与することができるので、塗布液をウエブに塗布した時にウエブ耳部とウエブ中央部における塗布液の親和性や付着性を均一にすることのできるウエブ帯電用装置を提供することを目的とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために、ウエブに塗布液を塗布する塗布装置の前段に配設され、走行する前記ウエブの幅方向に張設されたワイヤー状のコロナ放電電極と、前記ウエブを係合支持すると共に前記コロナ放電電極に対する接地極を形成するローラとから成り、前記ウエブを介して前記コロナ放電電極と前記接地極との間でコロナ放電を行なうことにより前記ウエブ表面に単極性電荷を付与するウエブ帯電用装置において、前記コロナ放電電極を挟んだ前記ローラの反対側に導電性接地板を設けると共に、前記ウエブの幅方向両端部に対応する前記導電性接地板両端部を中央部よりも前記ウエブに近くなるように折曲させたことを特徴とする。
【０００８】
本発明によれば、ワイヤー状のコロナ放電電極を挟んで接地極であるローラの反対側、即ち接地極の反対側に導電性接地板を設けたので、走行するウエブの幅方向に渡って単極性電荷を均等に付与することができる。従って、塗布液をウエブに塗布した時にウエブ耳部とウエブ中央部における塗布液の親和性や付着性を均一にすることができるので、塗布液をウエブの幅方向に渡って均一に塗布することができる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係るウエブ帯電用装置の好ましい実施の形態について詳説する。
図１は、本発明のウエブ帯電用装置の第１の実施の形態を説明する側面図であり、図２は図１のＡ−Ａ線上の正面断面図である。
【００１０】
図１及び図２に示すように、ウエブ帯電用装置１０は、主として、コロナ放電の放電電極側を形成する放電電極装置１２と、その放電電極装置１２の上方に設けられウエブ１４を係合支持すると共にコロナ放電の接地極側を形成するローラ１６とで構成される。
放電電極装置１２は、導電材料で形成されたワイヤー状のコロナ放電電極１８（以下、「放電線１８」と称す）が、ローラ１６の軸方向に沿って張設されると共に、その両端が上面が開放された電極支持フレーム２０の両側板２０Ａに支持される。放電線１８は、ローラ１６下側周面の径方向、換言するとウエブ１４の走行方向に対して所定間隔をおいて複数本（例えば４本）平行に並列配置される。放電線１８を形成するワイヤー状導電材料としては、タングステン線、モリブデン線、白金線、炭素繊維線等を用いることができ、その太さは１００μｍ〜２００μｍ程度が好ましい。また、電極支持フレーム２０の両側板２０Ａには、放電線１８を支持すると共に放電線１８の張力を調整する図示しない張設具が設けられる。放電線１８は、通常約１ｋｇの張力で張設される。また、前記電極支持フレーム２０の両側板２０Ａは、図１に示すようにローラ１６の周面に沿って湾曲状に切り欠きが形成されている。
【００１１】
一方、ローラ１６は、走行するウエブ１４に対してローラ１６の周面下側が係合すると共に、ローラ１６自体がアースされており接地極として作用する。通常、各放電線１８と、ローラ１６に係合支持されるウエブ１４との間隔は、１０ｍｍ程度離間されている。
そして、複数本の放電線１８には直流高電圧電源２２から電圧６５００Ｖ程度の高電圧が印加され、ウエブ１４を介して放電線１８とローラ１６との間にコロナ放電が行われる。
【００１２】
また、電極支持フレーム２０内には、放電線１８を挟んだローラ１６の反対側にアースされた状態の導電性接地板２４が設けられている。この導電性接地板２４は、矩形板状に形成され、長手方向が放電線１８の長さに略等しく、短手方向がローラ１６の直径よりもやや長くなるように形成される。更に、図２に示すように、導電性接地板２４の長手方向両端部、即ちローラ１６に係合支持されるウエブ１４の耳部に対応する部分がウエブ１４側に近くなるように折曲されている。導電性接地板２４として使用される導電性材料の材質は、アルミニウム板、銅板、鉄板、ステンレス板、その他の金属以外の導電性材料を用いることができる。
【００１３】
次に、上記の如く構成されたウエブ帯電用装置１０の作用について、本発明のウエブ帯電用装置１０を組み込んだ図３の塗布システムフローを用いて説明する。
図３に示すように、走行するウエブ１４は、塗布装置２６の前段に設けられたウエブ帯電用装置１０において、高電圧電源２２から放電線１８に高電圧が印加され、ウエブ１４に対してコロナ放電が行なわれる。これにより、ウエブ１４表面に単極性電荷が付与される。次に、ウエブ１４は表面電位計２８を通過し、ここでウエブ表面の電位が測定され記録計に記録される。表面電位計２８を通過したウエブ１４はパスローラ３０を経由して塗布装置２６に達する。塗布装置２６では、バックアップローラ３２に係合するウエブ１４の表面に、塗布ヘッド３４からウエブ１４の幅方向に渡って塗布液３６が吐出される。これにより、走行するウエブ１４に塗布液３６が塗布される。
【００１４】
この塗布操作において、ウエブ帯電用装置１０でウエブ１４表面に単極性電荷が付与されることによりウエブ１４と塗布液３６との親和性及び付着性が向上し、塗布性能を高めることができる。しかし、従来のウエブ帯電用装置では、ウエブ１４の耳部の電位がウエブ１４の中央部の電位よりも小さくなるために、耳部の塗布性が悪くなる、所謂「耳部液切れ現象」が発生した。
【００１５】
そこで、本発明のウエブ帯電用装置１０では、放電線１８を挟んだローラ１６の反対側に導電性接地板２４を設けたので、ウエブ１４に単極性電荷を付与した時に耳部の電位が中央部の電位より小さくならずにウエブ１４の幅方向に渡って均等に帯電させることができる。尚、導電性接地板２４の長手方向両端部を折曲させることによりウエブ１４の耳部の電位と中央部の電位とを均等にし易いが、折曲しない場合でも十分な効果がある。
【００１６】
このように放電線１８を挟んだローラ１６の反対側に導電性接地板２４を設けることによりウエブ１４の耳部の電位と中央部の電位とを均等にすることができるのは、放電線１８からウエブ１４を介してローラ１６に至る電気力線によって形成される静電場の密度がウエブ１４の幅方向において均等になるためと考えられる。従って、導電性接地板２４を設けることにより「耳部液切れ現象」が発生しないようにできる。
【００１７】
また、本発明のウエブ帯電用装置１０の場合、従来のウエブ帯電用装置のように、放電線１８をウエブ１４に対して１ｍｍ以下のミクロ的なレベルで間隔調整する必要もなく、更に、放電線１８によるたるみの影響でウエブ１４の耳部と中央部の電位が異なることもなくなる。
図４は、本発明のウエブ帯電用装置１０の第２の実施の形態を説明する側面図であり、第１の実施の形態と同じ部材や装置は同符号を付して説明する。
【００１８】
第２の実施の形態は、導電性接地板２４をローラ１６の径方向周面に沿って、湾曲状にしたものである。従って、ウエブ１４の走行方向に所定間隔を有して平行に配設した複数本の放電線１８の導電性接地板２４に対する距離が均等になる。これにより、放電線１８からウエブ１４を介してローラ１６に至る電気力線によって形成される静電場の密度をウエブ１４の走行方向においても均等にすることができる。これにより、ウエブ１４の走行方向における電位変動をなくすことができるので、ウエブ１４の走行方向における塗布性を均等にすることができる。
【００１９】
図５は、本発明のウエブ帯電用装置１０の第３の実施の形態を説明する側面図であり、第１の実施の形態と同じ部材や装置は同符号を付して説明する。
第３の実施の形態は、導電性接地板２４の中央部をローラ１６の径方向周面に沿って湾曲状にすると共に、導電性接地板２４の端部をローラ１６側に折曲して複数本の放電線を覆うようにしたものである。
【００２０】
この第３の実施の形態の場合も、第２の実施の形態と同様の効果を得ることができる上に、放電線１８を囲んで外乱を生じにくくさせたので、静電場の状態をより安定化させることができる。
図６は、本発明のウエブ帯電用装置１０の第４の実施の形態を説明する正面断面図であり、第１の実施の形態と同じ部材や装置は同符号を付して説明する。
【００２１】
第４の実施の形態は、ウエブ１４両端の耳部位置とウエブ１４中央部位置とにそれぞれ独立した導電性接地板２４、２４、２４を配設すると共に、それぞれの導電性接地板２４を上下方向に移動可能にしたものである。
この場合は、第１の実施の形態のように導電性接地板２４の長手方向両端を折曲する必要がないと共に、ウエブ１４とウエブ耳部位置の導電性接地板２４Ｂの距離、及びウエブ１４とウエブ中央部位置の導電性接地板２４Ａとの距離をそれぞれ独自に調整することができるので、ウエブ１４の耳部と中央部の電位を同じにすることもできるし、或いは、ウエブ１４の耳部の電位を中央部の電位よりも意図的に小さくしてウエブ１４の耳部に塗布液が塗布されにくくすることも可能である。
【００２２】
また、これらの導電性接地板２４Ａ、２４Ｂのうち、ウエブ１４の中央部位置の導電性接地板２４Ａを取り外して耳部位置にのみ導電性接地板２４Ｂを配設することもできる。
図７は、本発明のウエブ帯電用装置１０の第５の実施の形態を説明する正面断面図であり、第１の実施の形態と同じ部材や装置は同符号を付して説明する。
【００２３】
第５の実施の形態は、一枚の導電性接地板２４において導電性接地板２４とウエブ１４との距離を調整するための位置調整手段４０を設けるようにしたものである。即ち、導電性接地板２４の長手方向（ウエブ１４の幅方向）の両端位置と中央位置にそれぞれ、電極支持フレーム２０の底板に螺合されたボルト４０（位置調整手段）の先端が当接される。また、導電性接地板２４の材質としては弾性変形し易いものが用いられる。これにより、ボルト４０を押し込んで導電性接地板２４を押圧することにより、導電性接地板２４とウエブ１４との距離を調整することができる。従って、ウエブ１４の耳部と中央部の電位が等しくなるように微妙な調整を行うことができる。この場合、導電性接地板２４の位置調整手段４０は、ボルト４０に限らず、エアシリンダー等を用いることもできる。また、ボルト４０の位置は３か所に限定するものではない。
【００２４】
尚、導電性接地板２４の形状は、矩形板状に限定されることはなく放電線１８と帯電させるウエブ１４の間の電気力線を妨げない形状であれば、第１の実施の形態のように平面形状であってもよいし、第２の実施の形態のように円弧状であってもよいし、第３の実施の形態のように放電線１８を覆う形状であってもよいし、第４及び第５の実施の形態のようにウエブ１４と放電線１８との間隔が可変できる構造であってもよい。
【００２５】
【実施例】
図３に示した本発明のウエブ帯電用装置１０を組み込んだ塗布システムを用いて試験を行った。
即ち、ＴＡＣ（トリアセチルセルロース）ウエブ表面にゼラチンを被覆した写真フイルム用の２００ｍｍ幅のウエブ１４を搬送速度１００ｍ/ 分で走行し、ウエブ帯電用装置１０において直流高電圧電源２２から放電線１８に印加電圧６３００Ｖの直流を流し、ウエブ１４にコロナ放電してウエブ１４表面に単極性電荷を帯電させた。そして、帯電されたウエブ１４の表面電位を表面電位計２８で計測記録した。計測後のウエブ１４は、塗布装置２６において塗布液３６を塗布した。
【００２６】
放電線１８は、直径１００μｍ、長さ２００ｍｍタングステンワイヤーを４本平行に配置すると共に、放電線１８とウエブ１４との間隔を１０ｍｍとした。
一方、導電性接地板２４はアルミニウム平板を使用した。
試験▲１▼は、導電性接地板２４の長さを放電線１８の長さと同じ２００ｍｍのものを使用し、ウエブ１４と導電性接地板２４との距離を２４ｍｍ、２１ｍｍ、１８ｍｍ、１４ｍｍと可変した場合についてウエブ１４の耳部と中央部の電位差を調べた。
【００２７】
試験▲２▼は、ウエブ１４の両端に対応する位置にのみ長さ２０ｍｍの導電性接地板２４Ｂをそれぞれ配設し、その他の条件は試験▲１▼と同様の場合についてウエブ１４と導電性接地板２４Ｂとの距離を２４ｍｍ、２１ｍｍ、１８ｍｍとした場合についてウエブ１４の耳部と中央部の電位差を調べた。ウエブ１４の耳部と中央部の電位差は、次式の如く中央部の電位に対する耳部の電位の電位比で表した。
【００２８】
【００２９】
試験▲１▼の結果を第１表に、試験▲２▼の結果を第２表に、試験▲３▼の結果を第３表に示す。また、それぞれの試験の比較例として、導電性接地板２４を設けない場合について行った。
【００３０】
【表１】
【００３１】
また、表１から分かるように、電位比が１である時の放電線１８と導電性接地板２４との距離１４ｍｍを、１８ｍｍまで移動させても電位比は０．９４と大きく変動しない。従って、本発明のウエブ帯電用装置１０は、従来のウエブ帯電用装置のように、ウエブ１４と放電線１８の距離を１ｍｍ以下のミクロレベルで調整する必要がないと共に、放電線１８が若干たるんでも問題ない。
【００３２】
【表２】
【００３３】
【表３】
【００３４】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のウエブ帯電用装置によれば、ウエブの幅方向に渡って均等に単極性電荷を付与することができるので、塗布液をウエブに塗布した時にウエブ耳部とウエブ中央部における塗布液の親和性や付着性を均一にすることができる。
【００３５】
従って、ウエブの耳部が中央部よりも塗布性が悪くなる所謂「耳部液切れ現象」が発生しない。
また、本発明のウエブ帯電用装置は、ウエブ耳部を意図的に厚塗りにしたりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のウエブ帯電用装置の第１の実施の形態を説明する側面図
【図２】図１のＡ−Ａ線に沿った正面断面図
【図３】本発明のウエブ帯電用装置を組み込んだ塗布システムのフロー図
【図４】本発明のウエブ帯電用装置の第２の実施の形態を説明する側面図
【図５】本発明のウエブ帯電用装置の第３の実施の形態を説明する側面図
【図６】本発明のウエブ帯電用装置の第４の実施の形態を説明する正面断面図
【図７】本発明のウエブ帯電用装置の第５の実施の形態を説明する正面断面図
【符号の説明】
１０…ウエブ帯電用装置
１２…放電電極装置
１４…ウエブ
１６…ローラ（接地極）
１８…放電線（コロナ放電電極）
２０…電極支持フレーム
２２…高電圧電源
２４…導電性接地板
２６…塗布装置
２８…表面電位計
３２…バックアップローラ
３４…塗布ヘッド
３６…塗布液
Claims (3)
- ウエブに塗布液を塗布する塗布装置の前段に配設され、走行する前記ウエブの幅方向に張設されたワイヤー状のコロナ放電電極と、前記ウエブを係合支持すると共に前記コロナ放電電極に対する接地極を形成するローラとから成り、前記ウエブを介して前記コロナ放電電極と前記接地極との間でコロナ放電を行なうことにより前記ウエブ表面に単極性電荷を付与するウエブ帯電用装置において、
前記コロナ放電電極を挟んだ前記ローラの反対側に導電性接地板を設けると共に、前記ウエブの幅方向両端部に対応する前記導電性接地板両端部を中央部よりも前記ウエブに近くなるように折曲させたことを特徴とするウエブ帯電用装置。 - 前記導電性接地板は、前記ウエブの幅方向全体に渡って設けられていることを特徴とする請求項１のウエブ帯電用装置。
- 前記導電性接地板には、前記コロナ放電電極に対する位置を可変可能な位置調整手段が設けられていることを特徴とする請求項１又は２のウエブ帯電用装置。
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