JP3944570B2 - ホーランダイト型化合物繊維とその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱による励起あるいは光による励起によって触媒機能を発揮する、あるいはさらに放射性廃棄物に対してこれを吸着、固定化する機能を有するホーランダイト型化合物繊維とその製造方法に関する。さらに詳細には、繊維状に形成してなるZrO2繊維を基体として、該繊維基体に該化合物を厚み0.3μm〜2.0μmにコーティング処理し、ホーランダイト型化合物繊維をクラックを生じることなく形成することで、粉末または薄膜による従来法よりも有効な触媒機能性を発揮する、実用性に優れたホーランダイト型化合物繊維とその製造方法に関するものある。
【0002】
【従来の技術】
ホーランダイト型化合物は、窒素酸化物などを吸着する熱触媒や有機塩素化合物を浄化する光触媒として近年注目され、研究が進められている。その触媒機能等の特有な性質は、その特有な結晶構造に由来する触媒活性点に基づくことから、前記物質等を始め特定のものに対して、高い選択性を示すものとして注目されている。本発明者らのグループにおいても、このホーランダイトの特異な性質に着目し、鋭意研究を行ってきた。その結果、一定の成果を納めることができ、これについては特許出願を申請中である。この提案、提言による発明としては、ホーランダイト型結晶構造を有するメソポア多孔体とその製造方法(特開平11−79743号公報)、低温結晶化・高比表面積を有するホーランダイト型化合物粉末の製造方法(特願2001−357178)およびホーランダイト型化合物薄膜の製造方法(特願2000−176462)等が提案され、開示されている。
【0003】
熱触媒及び光触媒は、物質の表面で触媒反応がおこなわれる。ホーランダイト化合物の触媒機能も、上記のようにその特有な結晶構造を触媒反応の活性点としているため、実用化を考慮すると、モジュール等への充填の際に従来のように粉末及び薄膜の形状では、触媒反応に利用される表面が必ずしも大であるとは言えず、ホーランダイト化合物本来の特性が十分に発揮される状態にあるとは言えない。また、ホーランダイト化合物の実用的なモジュール製造法としてホーランダイトチタニアハイブリッド繊維が提案されている(特願2001−357179)。この先願発明の提案による発明は、ホーランダイト化合物とチタニアの界面を触媒反応層とするものであり、その状態は、チタニア繊維上にホーランダイト化合物が疎らにコーティングされて成る状態のモジュールにて作製されている。そのため、生成するホーランダイト化合物は、チタニア繊維上に均一に生成、コーティングされていない。
【0004】
【発明の解決しようとする課題】
本発明は、ホーランダイト化合物の有している触媒特性を充分に発揮する新規な形態のモジュールを提案するものであり、これによって粉末あるいは薄膜による従来法ないしは先行技術に比し、一層優れた特性を発揮する形態のホーランダイト化合物を提供しようというものである。すなわち、均一な厚みを有し、クラックのない繊維状の形態のものを提供しようというものである。さらに言うと、ホーランダイト化合物の結晶化温度以上での温度においても、ホーランダイト化合物に含まれる成分との間で、反応し、クラックが生じることのない繊維状担体を選定し、これによって前示狙いの繊維状ホーランダイト化合物を提供しようというものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らにおいては、上記の課題を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、基材としてアルカリ成分に対しては反応性の乏しいジルコニア繊維を選択し、これに、コーティングする際のホーランダイト化合物前駆体溶液の濃度を所定濃度に調整し、加水分解し、焼成する一連のプロセスを複数回繰り返すことからなる一連の処理を結びつけることによって、所定の厚みを持ったホーランダイト型化合物を基体との関係で特に不都合な反応が生じることもなく安定に生成し、繊維からなる基体に対して該化合物を均一にコーティングした状態で得ることが出来ること、すなわち、充分な厚みを持った繊維状のホーランダイト型化合物を得ることが出来ることを知見したものである。本発明はこの知見に基づいてなされたものである。
【0006】
すなわち、本発明の解決手段は、以下(1)から(4)に記載する要件事項を講じてなるものである。
(1) ホーランダイト化合物の成分であるGa、N(但し、Nは、Sn、Tiより成る1種または2種の金属を表す。)を含んだ金属アルコキシドから出発して、ホーランダイト前駆体有機溶媒溶液を調整し、この組成式 Ga 8−y16(但し、Nは、Sn、Tiより成る1種または2種の金属を表す。1.5≦x≦2.0、1.5≦y≦2.0)に基づいて表される反応混合物を0.3mol/l〜1.0mol/l濃度含んでいる前駆体溶液をジルコニア繊維を基体担体として、基体担体表面にコーティングし、加熱水蒸気雰囲気中で加水分解し、乾燥し、700℃以上1000℃以下の温度で焼成することによってホーランダイト結晶を析出させる、以上のプロセスを複数回繰り返すことによって、クラックのない0.3μm〜5.0μmの厚みのホーランダイト化合物を繊維基体担体表面に均一に生成して成ることを特徴とする、ホーランダイト型化合物繊維。
(2) 前記加熱水蒸気雰囲気が、50℃〜100℃の水蒸気雰囲気であることを特徴とする前記(1)のホーランダイト型化合物繊維。
【0007】
(3) ホーランダイト化合物の成分であるGa、N(但し、Nは、Sn、Tiより成る1種または2種の金属を表す。)を含んだ金属アルコキシドから出発して、ホーランダイト前駆体有機溶媒溶液を調整し、この組成式 Ga 8−y16(但し、Nは、Sn、Tiより成る1種または2種の金属を表す。1.5≦x≦2.0、1.5≦y≦2.0)に基づいて表される反応混合物を0.3mol/l〜1.0mol/l濃度含んでいる前駆体溶液をジルコニア繊維を基体担体として、基体担体表面にコーティングし、加熱水蒸気雰囲気中で加水分解し、乾燥し、700℃以上1000℃以下の温度で焼成することによってホーランダイト結晶を析出させる、以上のプロセスを複数回繰り返すことによって、クラックのない0.3μm〜5.0μmの厚みのホーランダイト化合物を繊維基体担体表面に均一に生成して成ることを特徴とする、ホーランダイト型化合物繊維の製造方法。
(4) 前記加熱水蒸気雰囲気が、50℃〜100℃の水蒸気雰囲気であることを特徴とする前記(3)のホーランダイト型化合物繊維の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のホーランダイト型化合物繊維とその製造方法は、その調製の手順は次の通りである。先ず、反応混合物を、組成式Axy8-y16(ここに、Aは、K、Na、Rb、Caより成る1種または2種以上の金属、Mは、Fe、Ga、Zn、In、Cr、Co、Mg、Al、Niより成る1種または2種以上金属、Nは、Sn、Tiより成る1種または2種に金属、1.5≦x≦2.0、1.5≦y≦2.0)に基づいて調整する。この組成式を満たすよう、ホーランダイト化合物に必要な前示各金属A、M、Nを有する金属アルコキシドをアルゴン雰囲気中で秤量し、これを2−メトキシエタノール等の有機溶媒に溶解し混合して、濃度0.3mol/l〜1.0mol/lの前駆体溶液を調製する。次いで、該溶液をジルコニア繊維上にコーティングする。
【0009】
ここにx、yを前記規定した理由は、次の通りである。すなわち、xの値が1.5を下回ると、あるいは、yの値が2.0を上回るとホーランダイト化合物以外に不純物となるMとNの酸化物が析出し、ホーランダイト化合物本来の特性が十分に発揮されない。また、xの値が2.0を上回ると、あるいは、yの値が1.5を下回ると過剰なアルカリ金属が、反応溶液中のアルコキシド成分の分解等に由来して生ずる炭酸イオン、あるいは、混在している他の陰イオンと反応し、炭酸塩、あるいは他のアルカリ金属塩として析出し、繊維表面を覆ってしまうことが生じる。
そして、このような状態では、次の焼成プロセスに供しても、ホーランダイトの生成に困難を生じることがある。すなわち、所定の複合酸化物組成に設定されてなるホーランド化合物の結晶を得るには、酸素との接触が必要であり、該焼成工程は、その意義を有するものでもある。該接触を遮断するアルカリ金属による被覆は、このような理由で避けなければならない。過剰なアルカリによって前述事態となった場合、これを次の焼成工程で高温に加熱することによって、アルカリを蒸発し、以て解決手段とすることも考えられるが、かかる場合、その焼成操作は、ホーランダイト化合物の結晶化温度より高い温度での熱処理となり、生成するホーランダイト結晶層に過度の熱を与え、そこに応力を生じさせ、ひいては、クラックを発生させる等の原因となり、このような処理は、決して望ましいことではない。また、繊維表面を炭酸塩あるいは他のアルカリ金属塩により覆われてしまうと触媒表面の活性点の減少につながり、触媒機能を十分に発揮できない。したがって、かかる事態が生じないように配慮することが肝要であり、そのために、x、yを前示範囲に規定することが必要である。
【0010】
また、前駆体溶液の濃度を規定する理由は、前記範囲よりも低い濃度では、ジルコニア繊維にコーティングをおこなった場合、前駆体溶液に含まれる有機溶媒の量が多いため、水蒸気処理(ここにいう水蒸気処理は、湿度が70%以上の状態で気化している水を使って加水分解する工程を指す)によって得られるホーランダイト化合物ゲルは、ジルコニア繊維上に局部的に析出することになる。その結果、熱処理をおこなっても、ホーランダイト化合物はジルコニア繊維上に局部的に、疎らに存在し、その後これらの工程を数回繰り返しても均一で緻密なホーランダイト化合物繊維を作製することはできない。
【0011】
また、逆に前駆体溶液の濃度がこの範囲よりも高い場合、ジルコニア繊維にコーティングし、水蒸気処理おこなった際に前駆体溶液の粘度が高いため、前駆体溶液の表面だけが加水分解され表面とジルコニア繊維との間にある前駆体溶液の加水分解がおこなわれず、ホーランダイト化合物結晶化温度で熱処理しても結晶化されず表面が炭化する。そのため結晶化により高い温度での熱処理が必要になる。高温での熱処理は、ホーランダイト化合物に含まれるアルカリ金属が揮発してしまい組成の均一性に欠ける原因となるので望ましくない。前駆体溶液の濃度は、以上を考慮して、0.3mol/l〜1.0mol/lの範囲に設定することが望ましい。
【0012】
次に、前示ホーランダイト化合物前駆体溶液をコーティング後、ジルコニア繊維を水蒸気雰囲気中50℃〜100℃で1時間以上保持することでコーティングされた前駆体溶液を加水分解する。その際、50℃以下では水の気化量が少なく、表面だけで加水分解がおこなわれ、ホーランダイト化合物結晶化温度で熱処理しても結晶化されず表面が炭化し、100℃以上では、コーティングされた前駆体溶液の急激な加水分解反応及び縮重合反応が生じ、厚みが不均一になる、と言ったことから50℃〜100℃の範囲が好ましい。
【0013】
保持時間が1時間よりも短い場合、上記にあるように前駆体溶液の表面だけが加水分解されるだけで、そのためその後に行うホーランダイト化合物結晶化温度で熱処理しても結晶化されず、表面が炭化する。結晶化するために高温度で熱処理することも考えられるが、高温での熱処理は、アルカリ成分の蒸発による組成割合の変化を来たし、均一性に欠ける原因となるので望ましくない。1時間よりも長く保持した場合、すでにコーティングされた前駆体溶液の加水分解及び縮重合反応が終わっているために、それ以上の効果は期待することが出来ない。
【0014】
再現性のあるプロセス操作としては、加水分解処理は1時間程度が好ましく、また、熱処理温度は、700℃以上1000℃以下が好ましい。700℃より低い温度での熱処理では、ホーランダイト化合物の結晶化は確認されず、非晶質であり、1000℃より高い温度での熱処理は、アルカリ金属が揮発してしまうためホーランダイト化合物の構造を維持することが困難である。上記記載した前駆体溶液の濃度、水蒸気処理条件、熱処理温度条件等の諸条件は、厚み0.3μm〜5.0μmのクラックのないホーランダイト型化合物繊維を得るのには必要である。ここに、厚みの設定は、厚みが0.3μmより薄いとクラックが存在し、5.0μmより厚いとコーティングされたホーランダイト化合物層の内部まで光が十分に達せず、表面だけが光励起され触媒の性能を十分に発揮できないため、これらを考慮してコーティングするホーランダイト化合物の厚みは、0.3μm〜5.0μmに設定することが好ましい。
【0015】
ホーランダイト化合物を繊維状に析出する基体担体として使用されるセラミック繊維としては、ホーランダイト化合物の成分として含まれるアルカリ金属に対して、反応することのないセラミックス繊維が望ましい。シリカまたはシリカを含むセラミックス繊維を始め、各種のセラミックスは、アルカリ金属と反応することが考えられ、このためコーティングしたホーランダイト化合物の組成を均一に維持することが難しく、ホーランダイト化合物の触媒機能を十分に発揮できず好ましくない。ジルコニア繊維を選定した理由は、このような理由からによる。
【0016】
すなわち、ジルコニア繊維に対してホーランダイト化合物前駆体溶液をコーティングし、水蒸気雰囲気中50℃以上100℃以下で1時間保持することでコーティングされた前駆体溶液を均一に加水分解することが可能となる。引きつづき、700℃以上1000℃以下、好ましくは800℃以下で焼成処理することにより、ホーランダイト化合物結晶を変質することなく安定に生成することが可能となり、しかもこの操作を複数回繰り返すことにより析出する結晶を、繊維表面上、長さ方向に沿って均一な0.3μm〜5.0μm、好ましくは2.0μm以下の厚みの連続する繊維状結晶層とすることが可能となるものである。厚みが0.3μmを下回るとクラックが存在し、厚みが増すにつれて、コーティングされたホーランダイト化合物層には残留応力が発生し、コーティングされた繊維の物理的強度が低下し、脆くなりコーティングされたホーランダイト化合物が剥がれやすくなるため、コーティングによって形成された化合物層の厚みは、0.3μm〜5.0μmの範囲、特に0.3μmから2.0μmの範囲にあることが望ましい。
【0017】
本発明を、以下図面及び実施例、また、比較例に基づいて説明する。
但し、これらの実施例は、あくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものであって、本発明を限定する趣旨ではないし、本発明は、これらの実施例によって限定されることはない。
【0018】
実施例1;
反応混合物を、組成式KxGaySn8-y16に基づいて、x=y=2.0になるようにK(n−OC37)を0.4140g、Ga(n−OC493を1.2188g、及びSn(t−OC494を5.2007gそれぞれアルゴン雰囲気中のグローブボックス中で秤量し、それぞれ20mlの脱水2−メトキシエタノール(モレキュラシーブス3Aで脱水)に溶解した後、それらを混合し5時間以上撹拌し濃度0.35mol/lの前駆体溶液を調製した。グローブボックス中でジルコニア繊維200mgに前駆体溶液約1.0mlをコーティングして、水蒸気雰囲気中50℃で1時間保持することでコーティングされた前駆体溶液を加水分解し、100℃の乾燥機で1時間乾燥した後、毎時300℃の昇温速度で700℃まで加熱し、3時間保持した後、室温まで放冷した。上記の条件で3回コーティングおよび熱処理をおこない目的のホーランダイト化合物繊維を得た。室温に戻した試料の一部を用い、X線粉末回折測定を行った結果、得られた粉末のX線回折図はホーランダイト化合物に帰属される相と基材である酸化ジルコニウムの単斜晶の相からなることが分かった(図1)。また、試料の一部を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES装置)により組成分析した結果、ジルコニア繊維にコーティングされたホーランダイト化合物の組成は、K2.0Ga2.0Sn6.016であることを確認した。走査型電子顕微鏡SEM(TypeS−5000、Hitachi CO. Ltd)により表面の形状及び膜厚の観察をおこなったところジルコニア繊維上に約0.3μm厚さのホーランダイト化合物がコートされていることが確認された。
【0019】
実施例2;
反応混合物を、組成式KxGayTi8-y16に基づいて、x=1.6、y= 2.0になるようになるようにK(n−OC37)を0.4129g、Ga(n−OC493を1.6546g、及びTi(i−OC374を5.6424g、アルゴン雰囲気中のグローブボックス中で秤量し、それぞれ20mlの脱水2−メトキシエタノールに溶解した後、それらを混合し5時間以上撹拌し濃度0.48mol/lの前駆体溶液を調製した。グローブボックス中でジルコニア繊維200mgに前駆体溶液約1.0mlをコーティングして、水蒸気雰囲気中50℃で3時間保持することでコーティングされた前駆体溶液を加水分解し、100℃の乾燥機で1時間乾燥した後、毎時300℃の昇温速度で700℃まで加熱し、1時間保持した後、室温まで放冷した。上記の条件で3回コーティングおよび熱処理をおこない目的のホーランダイト化合物繊維を得た。室温に戻した試料の一部を用い、X線粉末回折測定を行い、X線粉末回折測定を行った結果、ホーランダイト化合物に帰属される相と基材である酸化ジルコニウムの単斜晶の相とからなることがわかった。また、試料の一部をICP−AESにより組成分析した結果、ジルコニア繊維にコーティングされたホーランダイト化合物の組成はK1.6Ga2.0Ti6.016(x=1.6、y=2.0)であることを確認した。
走査型電子顕微鏡SEMにより表面の形状及び膜厚の観察をおこなったところのジルコニア繊維上に約0.5μm厚さのホーランダイト化合物がコートされていることが確認された。
【0020】
実施例3;
反応混合物を、組成式KxGaySn8-y16に基づいて、x=y=2.0になるようにK(n−OC37)を0.4140g、Ga(n−OC493を1.2188g、及びSn(t−OC494を5.2007g、アルゴン雰囲気中のグローブボックス中で秤量し、それぞれ10mlの脱水2−メトキシエタノールに溶解した後、それらを混合し5時間以上撹拌し濃度0.7mol/lの前駆体溶液を調製した。グローブボックス中でジルコニア繊維200mgに前駆体溶液約1.5mlをコーティングして、水蒸気雰囲気中50℃で1時間保持することでコーティングされた前駆体溶液を加水分解し、100℃の乾燥機で1時間乾燥した後、毎時300℃の昇温速度で700℃まで加熱し、3時間保持した後、室温まで放冷した。上記の条件で3回コーティングおよび熱処理をおこない目的のホーランダイト化合物繊維を得た。室温に戻した試料の一部を用い、X線粉末回折測定を行った結果、得られた粉末のX線回折図は実施例1と同様にホーランダイト化合物の結晶相と酸化ジルコニウムの単斜晶の相からなることがわかった。また、試料の一部をICP−AESにより組成分析した結果、ジルコニア繊維にコーティングされたホーランダイト化合物の組成はK2.0Ga2.0Sn6.016であることを確認した。走査型電子顕微鏡SEMにより形状の観察をおこなったところジルコニア繊維上に約1.2μm厚さのホーランダイト化合物がコートされていることが確認された。
【0021】
実施例4;
反応混合物を、組成式KxGaySn8-y16に基づいて、実施例1と同様に濃度0.35mol/lのアルコキシド混合溶液を調製し、グローブボックス中でジルコニア繊維200mgに前駆体溶液約1.0mlをコーティングして、水蒸気雰囲気中100℃で1時間保持することでコーティングされた前駆体溶液を加水分解し、100℃の乾燥機で1時間乾燥した後、毎時300℃の昇温速度で700℃まで加熱し、3時間保持した後、室温まで放冷した。上記の条件で3回コーティングおよび熱処理をおこない目的のホーランダイト化合物繊維を得た。
室温に戻した試料の一部を用い、X線粉末回折測定を行った結果、得られた粉末のX線回折図は実施例1と同様にホーランダイト化合物の結晶相と酸化ジルコニウムの単斜晶の相からなることがわかった。また、試料の一部をICP−AESにより組成分析した結果、ジルコニア繊維にコーティングされたホーランダイト化合物の組成はK1.94Ga2.0Sn6.016であることを確認した。走査型電子顕微鏡SEMにより形状の観察をおこなったところジルコニア繊維上に約0.5μm厚さのホーランダイト化合物がコートされていることが確認された。
【0022】
比較例1;
反応混合物を組成式KxGaySn8-y16に基づいて、x=1.3、y=2.0になるようにK(n−OC37)を0.2691g、Ga(n−OC493を1.2188g、及びSn(t−OC494を5.2007g、アルゴン雰囲気中のグローブボックス中で秤量し、それぞれ5mlの脱水2−メトキシエタノールに溶解した後、それらを混合し5時間以上撹拌、濃度1.4mol/lの前駆体溶液を調製した。グローブボックス中でジルコニア繊維200mgに前駆体溶液約3.0mlをコーティングして、水蒸気雰囲気中50℃で1時間保持することでコーティングされた前駆体溶液を加水分解し、100℃の乾燥機で1時間乾燥した後、毎時300℃の昇温速度で700℃まで加熱し、3時間保持した後、室温まで放冷した。上記の条件で3回コーティングおよび熱処理をおこない目的のホーランダイト化合物繊維を得た。室温に戻した試料の一部を用い、X線粉末回折測定を行った結果、得られた粉末のX線回折図は、ホーランダイト化合物の結晶相、酸化スズそして酸化ジルコニウムの単斜晶の相であった。
【0023】
比較例2;
反応混合物を組成式KxGaySn8-y16に基づいて、x=2.0、y=1.4になるようにK(n−OC37)を0.414g、Ga(n−OC493を0.853g、及びSn(t−OC494を3.64g、アルゴン雰囲気中のグローブボックス中で秤量し、それぞれ5mlの脱水2−メトキシエタノールに溶解した後、それらを混合し5時間以上撹拌、濃度1.4mol/lの前駆体溶液を調製した。グローブボックス中でジルコニア繊維200mgに前駆体溶液約3.0mlをコーティングして、水蒸気雰囲気中50℃で1時間保持することでコーティングされた前駆体溶液を加水分解し、100℃の乾燥機で1時間乾燥した後、毎時300℃の昇温速度で700℃まで加熱し、3時間保持した後、室温まで放冷した。上記の条件で3回コーティングおよび熱処理をおこない目的のホーランダイト化合物繊維を得た。室温に戻した試料の一部を用い、X線粉末回折測定を行った結果、得られた粉末のX線回折図は、酸化ジルコニウムの単斜晶の相であり、ホーランダイト化合物は、結晶化していなかった。
【0024】
比較例3;
反応混合物を組成式KxGaySn8-y16に基づいて、x=y=2.0になるようにK(n−OC37)を0.4140g、Ga(n−OC493を1.2188g、及びSn(t−OC494を5.2007g、アルゴン雰囲気中のグローブボックス中で秤量し、それぞれ5mlの脱水2−メトキシエタノールに溶解した後、それらを混合し5時間以上撹拌、濃度1.4mol/lの前駆体溶液を調製した。グローブボックス中でジルコニア繊維200mgに前駆体溶液約3.0mlをコーティングして、水蒸気雰囲気中50℃で1時間保持することでコーティングされた前駆体溶液を加水分解し、100℃の乾燥機で1時間乾燥した後、毎時300℃の昇温速度で700℃まで加熱し、3時間保持した後、室温まで放冷した。上記の条件で3回コーティングおよび熱処理をおこない目的のホーランダイト化合物繊維を得た。得られたホーランダイト化合物繊維は、十分な加水分解がおこなわれていないため、表面が黒く炭化していた。室温に戻した試料の一部を用い、X線粉末回折測定を行った結果、得られた粉末のX線回折図は、酸化ジルコニウムの単斜晶の相であり、ホーランダイト化合物は、結晶化していなかった。
【0025】
比較例4;
反応混合物を、組成式KxGaySn8-y16に基づいて、x=y=2.0になるようにK(n−OC37)を0.4140g、Ga(n−OC493を1.2188g、及びSn(t−OC494を5.2007g、アルゴン雰囲気中のグローブボックス中で秤量し、それぞれ50mlの脱水2−メトキシエタノールに溶解した後、それらを混合し5時間以上撹拌、濃度0.14mol/lの前駆体溶液を調製した。グローブボックス中でジルコニア繊維200mgに前駆体溶液約1.0mlをコーティングして、水蒸気雰囲気中50℃で1時間保持することでコーティングされた前駆体溶液を加水分解し、100℃の乾燥機で1時間乾燥した後、毎時300℃の昇温速度で700℃まで加熱し、3時間保持した後、室温まで放冷した。上記の条件で3回コーティングおよび熱処理をおこない目的のホーランダイト化合物繊維を得た。室温に戻した試料の一部を用い、X線粉末回折測定を行った結果、得られた粉末のX線回折図は実施例1と同様にホーランダイト化合物の結晶相と酸化ジルコニウムの単斜晶の相からなることがわかった。また、走査型電子顕微鏡SEMにより表面の形状及び膜厚の観察をおこなったところのジルコニア繊維上に約0.2μm厚さのホーランダイト化合物が確認されたが、ホーランダイト化合物がコーティングされていない表面も多く確認された。
【0026】
比較例5;
反応混合物を組成式KxGaySn8-y16に基づいて、実施例1と同様に濃度0.35mol/lのアルコキシド混合溶液を調製し、グローブボックス中でジルコニア繊維200mgに前駆体溶液約1.0mlをコーティングして、室温にて1時間保持することでコーティングされた前駆体溶液を加水分解し、100℃の乾燥機で1時間乾燥した後、毎時300℃の昇温速度で700℃まで加熱し、3時間保持した後、室温まで放冷した。上記の条件で3回コーティングおよび熱処理をおこない目的のホーランダイト化合物繊維を得た。得られた試料は、部分的に黒く炭化していた。室温に戻した試料の一部を用い、X線粉末回折測定を行った結果、得られた粉末のX線回折図は実施例1と同様にホーランダイト化合物の結晶相と酸化ジルコニウムの単斜晶の相からなることがわかった。また、走査型電子顕微鏡SEMにより形状の観察をおこなったところジルコニア繊維上に厚み均一性±0.3μmで約0.6μm厚さのホーランダイト化合物がコートされていたが、表面に無数のクラックが確認された。
【0027】
比較例6;
反応混合物を、組成式KxGaySn8-y16に基づいて、実施例1と同様に濃度0.35mol/lのアルコキシド混合溶液を調製し、グローブボックス中でシリカ繊維200mgに前駆体溶液約1.0mlをコーティングして、水蒸気雰囲気中50℃で1時間保持することでコーティングされた前駆体溶液を加水分解し、100℃の乾燥機で1時間乾燥した後、毎時300℃の昇温速度で700℃まで加熱し、3時間保持した後、室温まで放冷した。上記の条件で3回コーティングおよび熱処理をおこない目的のホーランダイト化合物繊維を得た。室温に戻した試料の一部を用い、X線粉末回折測定を行った結果、得られた粉末のX線回折図は、非晶質の割合が多く、ルチル型構造を有するSnO2のメインピークのみ確認された。
【0028】
【発明の効果】
本発明は、近年、その特異な触媒特性を有することから注目されているホーランダイト化合物を、これまでの粉末状あるいは薄膜状を呈した形態とは異なる形態、すなわち、繊維状に生成することに成功したものであり、これによってホーランダイト化合物を用いた触媒設計に際し、材料の形態についても自由度が担保されたことは、それ自体評価に値し、大きな意義を有しているものと言える。加えて、繊維状としたことにより、同じ重量割合に設定した場合、特定のモジュールにおいて、その有効な表面積が大となり、その本来有している触媒活性機能を充分に発揮することが期待され、その意義は極めて大きいし、ホーランダイト化合物を利用した各種触媒反応に対して大きく寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ホーランダイト型結晶構造を有するKxGaySn8-y16(x=2.0、y=2.0)繊維のX線回折図。

Claims (4)

  1. ホーランダイト化合物の成分であるGa、N(但し、Nは、Sn、Tiより成る1種または2種の金属を表す。)を含んだ金属アルコキシドから出発して、ホーランダイト前駆体有機溶媒溶液を調整し、この組成式 Ga 8−y16(但し、Nは、Sn、Tiより成る1種または2種の金属を表す。1.5≦x≦2.0、1.5≦y≦2.0)に基づいて表される反応混合物を0.3mol/l〜1.0mol/l濃度含んでいる前駆体溶液をジルコニア繊維を基体担体として、基体担体表面にコーティングし、加熱水蒸気雰囲気中で加水分解し、乾燥し、700℃以上1000℃以下の温度で焼成することによってホーランダイト結晶を析出させる、以上のプロセスを複数回繰り返すことによって、クラックのない0.3μm〜5.0μmの厚みのホーランダイト化合物を繊維基体担体表面に均一に生成して成ることを特徴とする、ホーランダイト型化合物繊維。
  2. 前記加熱水蒸気雰囲気が、50℃〜100℃の水蒸気雰囲気であることを特徴とする請求項1記載のホーランダイト型化合物繊維。
  3. ホーランダイト化合物の成分であるGa、N(但し、Nは、Sn、Tiより成る1種または2種の金属を表す。)を含んだ金属アルコキシドから出発して、ホーランダイト前駆体有機溶媒溶液を調整し、この組成式 Ga 8−y16(但し、Nは、Sn、Tiより成る1種または2種の金属を表す。1.5≦x≦2.0、1.5≦y≦2.0)に基づいて表される反応混合物を0.3mol/l〜1.0mol/l濃度含んでいる前駆体溶液をジルコニア繊維を基体担体として、基体担体表面にコーティングし、加熱水蒸気雰囲気中で加水分解し、乾燥し、700℃以上1000℃以下の温度で焼成することによってホーランダイト結晶を析出させる、以上のプロセスを複数回繰り返すことによって、クラックのない0.3μm〜5.0μmの厚みのホーランダイト化合物を繊維基体担体表面に均一に生成して成ることを特徴とする、ホーランダイト型化合物繊維の製造方法。
  4. 前記加熱水蒸気雰囲気が、50℃〜100℃の水蒸気雰囲気であることを特徴とする請求項3記載のホーランダイト型化合物繊維の製造方法。
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