JP3944374B2 - 工具、工具ホルダおよび工作機械 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械の主軸に装着されるワークを加工する工具、エンドミル等の加工具を保持する工具ホルダ、この工具または工具ホルダが主軸に着脱される工作機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、マシニングセンタ等の主軸を備えた工作機械では、主軸の最大回転数(単位時間当たり)は主軸を回転自在に保持するメインベアリングの構造や潤滑方式によって決定されるため、この最大回転数より増速した回転数で工具を回転させたい場合には、たとえば、増速装置を用いている。
増速装置としては、たとえば、工具を保持し主軸に着脱可能となっており、主軸の回転力を遊星歯車機構等の歯車機構によって増速して工具の回転数を増速させるものが知られている。
たとえば、マシニングセンタにおいて、一時的に主軸の最大回転数よりも工具の回転数を増速させたい場合には、上記のような増速装置を主軸に対して通常の工具と同様に装着し、工具を高い回転数で回転させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような歯車機構による増速装置によって工具を主軸の回転数よりも増速する場合に、数万回転〜数十万回転の超高速回転させると、増速装置の発熱が増大し、工具の熱膨張のために加工精度に影響することがある。また、数万回転〜数十万回転の超高速回転では、増速装置からの騒音も増大する。さらに、増速装置は、たとえば、数万回転〜数十万回転の回転に耐えうる信頼性の高い構造にするため、比較的製造コストが高騰するという不利益も存在した。
また、歯車機構による増速装置の場合、歯車や軸受の潤滑が必要であり、潤滑油の供給経路および排出経路を増速装置内に設けるため、装置が大型化し、自動工具交換装置による自動交換が難しいという不利益も存在した。
また、他の増速方法として、工具を駆動するモータに高周波モータを使用し、この高周波モータに特別に用意された制御装置から駆動電流を供給し、工具を高速回転させる方法が採られる場合がある。しかしながら、この方法では、電力を外部から供給するケーブルが存在するため、工具の自動交換を通常の工具と同様に行うことが難しく、また、設備コストが比較的高いという不利益が存在する。
【0004】
本発明は、上述の問題に鑑みて成されたものであって、その目的は、通常の工具と同様に工作機械の主軸に着脱自在に装着され、外部の電源等と結線することなく駆動可能で、外部から電力を供給することなく工作機械の主軸よりも高い回転数を得ることができ、自動工具交換が可能な工具、工具ホルダおよびこれらを備えた工作機械を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の工具は、工作機械の主軸に着脱される工具であって、 前記加工具を保持する回転軸と、前記回転軸を回転させる電動機と、前記工作機械の主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する発電機と、前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、前記電動機および前記発電機を保持し、かつ前記装着部を回転自在に保持し、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースと、前記発電機から前記電動機への電流の供給路に所定以上の電流が流れた場合には、当該供給路を遮断する遮断手段とを有し、前記回転軸、前記電動機、前記発電機及び前記装着部は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、前記ケースは、前記回転軸を回転自在に保持する第1のケース部材と、前記電動機及び前記発電機を保持する第2のケース部材と、前記装着部を保持する第3のケース部材と、を備え、前記第1のケース部材、前記第2のケース部材及び前記第3のケース部材は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、締結手段により互いに連結され、前記遮断手段は、前記供給路を遮断後に、当該供給路を再び接続可能な遮断器であり、前記遮断器は、前記第2のケース部材の外部から接続状態を視認可能にかつ操作可能に設けられている。
【0008】
さらに好適には、前記発電機は、前記主軸の回転数に応じた周波数の電圧を電動機に供給する交流発電機であり、前記電動機は、前記周波数に応じた回転数で回転する誘導電動機である。
【0009】
本発明の工具ホルダは、前記加工具を保持する回転軸と、前記回転軸を回転させる電動機と、前記工作機械の主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する発電機と、前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、前記電動機および前記発電機を保持し、かつ前記装着部を回転自在に保持し、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースと、前記発電機から前記電動機への電流の供給路に所定以上の電流が流れた場合には、当該供給路を遮断する遮断手段とを有し、前記回転軸、前記電動機、前記発電機及び前記装着部は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、前記ケースは、前記回転軸を回転自在に保持する第1のケース部材と、前記電動機及び前記発電機を保持する第2のケース部材と、前記装着部を保持する第3のケース部材と、を備え、前記第1のケース部材、前記第2のケース部材及び前記第3のケース部材は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、締結手段により互いに連結され、前記遮断手段は、前記供給路を遮断後に、当該供給路を再び接続可能な遮断器であり、前記遮断器は、前記第2のケース部材の外部から接続状態を視認可能にかつ操作可能に設けられている。
【0010】
本発明の工作機械は、主軸と、前記主軸を駆動する駆動手段と、前記主軸とワークとの相対位置を変更する少なくとも一の制御軸とを備える工作機械本体と、ワークを加工する加工具と、前記加工具を保持する回転軸と、前記回転軸を駆動する電動機と、前記主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する発電機と、前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、前記電動機および前記発電機を保持し、かつ前記装着部を回転自在に保持し、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースとを備え、前記主軸に着脱される工具と、前記駆動手段および前記制御軸を加工プログラムにしたがって駆動制御する制御装置とを有する工作機械であって、前記工具は、前記発電機から前記電動機への電流の供給路に所定以上の電流が流れた場合には、当該供給路を遮断する遮断手段を備え、前記回転軸、前記電動機、前記発電機及び前記装着部は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、前記ケースは、前記回転軸を回転自在に保持する第1のケース部材と、前記電動機及び前記発電機を保持する第2のケース部材と、前記装着部を保持する第3のケース部材と、を備え、前記第1のケース部材、前記第2のケース部材及び前記第3のケース部材は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、締結手段により互いに連結され、前記遮断手段は、前記供給路を遮断後に、当該供給路を再び接続可能な遮断器であり、前記遮断器は、前記第2のケース部材の外部から接続状態を視認可能にかつ操作可能に設けられている。
【0011】
本発明では、主軸に着脱される工具に発電機および電動機を備え、主軸の回転力を利用して発電し、発電した電力で電動機を駆動して加工具を回転させる。これにより、外部の電源等と結線することなく工具の駆動が可能となり、自動工具交換も可能となる。
また、本発明の工具は、主軸の回転力を利用して発電しているため、加工中に加工具に過負荷が印加された場合であっても、主軸はそのまま駆動されるため、発電機や電動機に過電流が流れる可能性がある。このため、本発明では遮断手段を設けて、発電機から電動機への電流の供給路に所定以上の電流が流れた場合には、当該供給路を遮断することにより、発電機および電動機を保護している。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明が適用される工作機械の一例としてのマシニングセンタの構成図である。なお、マシニングセンタはいわゆる複合加工の可能な数値制御工作機械である。
マシニングセンタ1は、工作機械本体2と、数値制御装置(NC装置)250と、プログラマブルコントローラ(PLC)150とを備えている。
図1において、工作機械本体2は、門型のコラム38の各軸によって両端部を移動可能に支持されたクロスレール37を備えており、このクロスレール37上を移動可能に支持されたサドル44を介してラム45が鉛直方向(Z軸方向)に移動可能に設けられている。
【0013】
サドル44には、水平方向にクロスレール37内を通じて図示しないねじ部が形成されており、これに外周にねじ部が形成された送り軸41が螺合している。
送り軸41の一端部には、サーボモータ19が接続されており、送り軸41はサーボモータ19によって回転駆動される。
送り軸41の回転駆動によって、サドル44はY軸方向に移動可能となり、これによってラム45のY軸方向の移動および位置決めが行われる。
【0014】
さらに、サドル44には、鉛直方向に図示しないねじ部が形成されており、これに外周にねじ部が形成された送り軸42がねじ込まれている。送り軸42の端部には、サーボモータ20が接続されている。
サーボモータ20によって送り軸42が回転駆動され、これによりサドル44に移動可能に設けられたラム45のZ軸方向の移動および位置決めが行われる。
【0015】
ラム45内には、主軸モータ31が内蔵され、この主軸モータ31はラム45に回転自在に保持された主軸46を回転駆動する。
主軸46の先端には、エンドミルなどの加工具とこの加工具を保持する工具ホルダからなる工具Tが装着され、主軸46の回転によって工具Tが駆動される。
ラム45の下方には、加工すべきワークが固定されるテーブル35がX軸方向に移動可能に設けられている。テーブル35には、図示しないねじ部が形成されており、これにX軸方向に沿って設けられた図示しない送り軸が螺合しており、この図示しない送り軸にサーボモータ18が接続されている。
テーブル35は、サーボモータ18の回転駆動によってX軸方向の移動および位置決めが行われる。
【0016】
また、2本の門型コラム38には、図示しないねじ部がそれぞれ形成されており、これに螺合する送り軸32aをクロスレール昇降用サーボモータ32によって回転駆動することによりクロスレール37は昇降する。
自動工具交換装置(ATC)39は、主軸46に対して各種工具Tを自動交換する。
この自動工具交換装置39は、たとえば、図示しないマガジンにエンドミル、ドリル等の各種加工具を工具ホルダによって保持した工具Tを収納しており、主軸46に装着された工具Tを図示しない工具交換アームによってマガジンに収納し、必要な工具Tを主軸46に工具交換アームによって装着する。
【0017】
NC装置250は、上記のサーボモータ18,19,20およびクロスレール昇降用サーボモータ32の駆動制御を行う。
NC装置250は、具体的には、予め加工プログラムで規定されたワークの加工手順に従って、サーボモータ18,19,20および32による工具Tとワークとの間の位置および速度制御を行う。また、NC装置250は、加工プログラムにおいて、たとえば、Sコードで規定された主軸モータ31の回転数(単位時間当りの回転数)を解読することにより主軸46の回転数の制御を行う。
さらに、NC装置250は、NCプログラムにおいて、たとえば、Mコードで規定された工具Tの交換動作を解読することにより、各種工具Tの自動交換を実行する。
【0018】
PLC150は、NC装置250および操作パネル200と接続されている。このPLC150は、予め決められたシーケンスプログラムに従って、マシニングセンタ1の起動、停止を行ったり、操作パネル200の表示部を点灯、消灯する信号を出力する等の各種シーケンス制御を行う。
また、PLC150は、主軸モータ31を駆動制御する主軸モータドライバ157と接続されている。PLC150は、主軸モータ31の起動、停止および速度制御を行うための制御指令を主軸モータドライバ157に出力する。なお、PLC150は各種シーケンス制御を行う。
【0019】
図2は、本発明の工具の一実施形態の構成を示す断面図である。
図2において、工具60は、刃具100と、この刃具100を保持する工具ホルダ61とから構成される。なお、刃具100は本発明の加工具の一実施態様である。また、本実施形態に係る工具60は、上記した通常の工具Tと同様に自動工具交換装置39によって主軸46に着脱される。
【0020】
工具ホルダ61は、装着部62と、ケース部材66,67および68からなるケース65と、発電機70と、電動機80と、工具保持部90と、回り止め部材85とを備えている。
【0021】
装着部62は、把持される把持部62aと、上記の主軸46の先端部に形成されたテーパスリーブ46aに装着されるテーパシャンク部62bと、このテーパシャンク部62bの先端部に形成されたプルスタッド62cと、ケース部材66に回転自在に保持される軸部62dとを備えている。
【0022】
装着部62の把持部62aは、上記した自動工具交換装置39の工具交換アームによって、自動工具交換装置39のマガジンから主軸46に装着される際および主軸46から自動工具交換装置39のマガジンへ搬送される際に把持される。
【0023】
装着部62のテーパシャンク部62bは、主軸46のテーパスリーブ46aに装着されることによって、中心軸が主軸46の中心軸と同心になる。
【0024】
装着部62のプルスタッド62cは、装着部62が主軸46のテーパスリーブ46aに装着されると、主軸46に内蔵された図示しないクランプ機構のコレットによってクランプされる。なお、主軸46に内蔵されたクランプ機構は周知技術であるので詳細については省略する。
【0025】
装着部62の軸部62dは、ケース部材66の内周に複数の軸受72を介して回転自在に保持されている。軸受72には、密封玉軸受が用いられる。
密封玉軸受は、JISやISOにおいてキャップ軸受と呼ばれるものであり、シールドタイプ、非接触シールタイプ、接触シールタイプのものが知られている。
密封玉軸受は、たとえば、内輪と外輪の両側面側にシール部材を設け、このシール部材によって密封された空間内に、グリースが封入されたものである。このような密封玉軸受を用いることにより、潤滑剤の供給、排出のための管路を工具60内に形成する必要がなく、工具60の小型化を図ることができる。
【0026】
ケース部材67の内周には、保持部材73を介して発電機70および電動機80が保持されている。
発電機70は、入力軸71が装着部62の軸部62dと同心に連結されており、この発電機70には主軸46の回転力が装着部62を介して伝達される。
発電機70には、たとえば、三相同期発電機が用いられる。
【0027】
電動機80は、図3に示すように、3本の導電ケーブルCU,CV,CWによって発電機70に接続されており、発電機70で発電された電力が供給される。
この電動機80は、発電機70から供給される電力によって駆動される。
電動機80には、たとえば、三相誘導電動機を用いることができる。
【0028】
上記の導電ケーブルCU,CV,CWの途中には、それぞれヒューズFU,FV,FWが設けられている。
ヒューズFU,FV,FWは、上記したケース60内の所定箇所に配置されている。
これらヒューズFU,FV,FWは、導電ケーブルCU,CV,CWに所定値以上の電流が流れたときに、たとえば、溶断することにより電動機80と発電機70との間の回路を遮断する。これにより、発電機70および電動機80に過電流が流れて焼損するのを防ぐことができる。ヒューズFU,FV,FWとしては、たとえば、アルミニウム、亜鉛、銅等の材料からなる部材をガラスやファイバの筒に収納したものを使用することができる。
【0029】
図2に戻って説明すると、工具保持部90は、回転軸91と、この回転軸91と電動機80の回転軸81とを連結するカップリング93と、回転軸91の先端部に固定された工具装着部材95とを有する。なお、回転軸91および回転軸81が本発明の駆動軸の一実施態様である。
電動機80の回転軸81は、図示しない軸受によって回転自在に保持されている。この軸受には密封玉軸受が用いられる。
【0030】
回転軸91は、ケース部材68の内周に複数の軸受92を介して回転自在に保持されている。軸受92には、密封玉軸受が用いられる。
回転軸91の先端側は、ケース部材68に抜け止め部材94によって抜け止めされている。
【0031】
刃具100は、工具装着部95に保持されており、この刃具100はワークを加工する。なお、工具装着部95は本発明の工具保持部の一実施態様である。刃具100は、具体的には、ドリル、エンドミル等の各種の刃具である。
【0032】
ケース部材66,67および68は、たとえば、ボルト等の締結手段によって連結されており、これらケース部材66,67および68がケース65を構成している。
ケース部材66の外周には、回り止め部材85が設けられている。
回り止め部材85は、装着部62が主軸46のテーパスリーブ46aに装着されることにより、主軸46側の、たとえば、ラム45等の非回転部47に形成された嵌合穴47aに先端85aが挿入される。
これにより、ケース部材66、すなわち、ケース65は、主軸46が回転しても回転が規制される。
【0033】
次に、本実施形態に係る工具60の動作の一例について説明する。
まず、自動工具交換装置39によって、工具装着部95に刃具100を保持した工具60を工作機械本体2の主軸46に装着する。
工具60は、回り止め部材85の先端部85aが非回転部47の嵌合穴47aに嵌合挿入され、ケース65の回転が規制される。
【0034】
この状態から、主軸46を回転数N0 で回転させると、工具60の装着部62が回転し、主軸46の回転力が発電機70に伝達される。
これにより、発電機70は、たとえば、三相同期発電機を用いた場合には、三相交流電力を発電する。
【0035】
三相同期発電機の発生する三相交流電力の周波数fは、三相同期発電機の極数をP1 とし、主軸46の回転数をN0 〔min-1〕とすると、次式(1)によって表される。
【0036】
【数1】
f=P1 ×N0 /120〔Hz〕 …(1)
【0037】
従って、主軸46を回転数N0 で回転させると、上記(1)式で表される周波数fの三相交流電力が電動機80に供給される。
【0038】
ここで、電動機80に三相誘導電動機を用いたとすると、この三相誘導電動機の極数がP2 とすると、三相誘導電動機は三相交流の1サイクルで2/P2 回転することから、滑りがない時の三相誘導電動機の同期速度N1 は、次式(2)で表される。
【0039】
【数2】
1 =120×f/P2 〔min-1〕 …(2)
【0040】
従って、主軸46の回転数N0 に対する工具60の回転数N1 は次式(3)によって表される。
【0041】
【数3】
1 =N0 ×P1 /P2 〔min-1〕 …(3)
【0042】
(3)式からわかるように、主軸46の回転数N0 は、上記(3)式で表される回転数N1 に変速される。
(3)式で示すように、三相同期発電機の極数P1 と三相誘導電動機の極数P2 との比を適宜設定することにより、主軸46の回転数N0 に対する工具60の回転数N1 の変速比を任意に設定できることが分かる。
すなわち、主軸46の回転数N0 を増速したい場合には、極数比P1 /P2 を1より大きくし、減速したい場合には、極数比P1 /P2 を1より小さくなるように、三相同期発電機の極数P1 および三相誘導電動機の極数P2 を予め選択すればよい。
【0043】
たとえば、主軸46の最大回転数Nmax が3000min-1であるとすると、通常の工具を用いたワークの加工では、主軸46の回転数は上記の最大回転数Nmax の範囲で十分である場合が多い。
一方、主軸46の最大回転数Nmax が3000min-1のマシニングセンタ1を使用し、たとえば、ワークにアルミニウム合金材を用いてこれを高速加工したい場合には、工具60の回転数を、たとえば、30000min-1に増速させたいような場合がある。
このような場合のために、マシニングセンタ1の自動工具交換装置39のマガジンに工具60を予め収容しておく。なお、工具60は、増速比が10となるように、上記の極数比P1 /P2 が10である三相同期発電機および三相誘導電動機を内蔵させる。
【0044】
自動工具交換装置39によって、主軸46に通常の工具と同様に工具60を自動装着する。
主軸46を主軸モータ31を駆動して回転させるが、工具60に保持された刃具100の回転数は、主軸46の回転数によって制御する。すなわち、NC装置250にダウンロードするNCプログラムにおいて、主軸46の回転数をSコードで指定することにより、工具60の刃具100の回転数を規定しておく。すなわち、NC装置250は、主軸46の回転数を制御することにより、工具60の刃具100の回転数を制御する。
たとえば、工具60の刃具100を30000min-1で回転させたい場合には、NCプログラムにおいてSコードで主軸46の回転数を3000min-1に指定しておく。
【0045】
主軸46を3000min-1で回転させると、発電機70は主軸46の回転数および極数P1 に応じた周波数の三相交流を発生する。
電動機80は、発電機70から供給される三相交流によって駆動され、工具60の刃具100は、略30000min-1の回転数で回転する。
【0046】
上記のように刃具100が増速された状態で、テーブル35に固定されたワークと刃具100(主軸46)とを加工プログラムに従って相対移動させることにより、ワークの切削加工が行われる。
【0047】
これにより、たとえば、主軸46の最大回転数が制限されるマシニングセンタ1を使用した場合に、主軸46の最大回転数を越える回転数で刃具100を回転させてワークの高速加工が可能となる。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、通常の工具と同様にユニット化された工具ホルダ61に発電機70および電動機80を内蔵し、発電機70で発生した電力で電動機80を駆動することで、主軸46に対する工具60の回転速度を増速させるため、主軸46を高速回転させても歯車装置のように発熱が増大せず、工具60の熱膨張が抑えられ加工精度の低下が抑制される。
【0049】
さらに、本実施形態によれば、電動機80のイナーシャを主軸46のイナーシャよりも小さくできるため、主軸46を直接に高速回転させる場合に比べて、刃具100の応答性を向上できる。
【0050】
また、本実施形態によれば、主軸46の回転速度を増速させる工具60を主軸46に対して着脱自在とし、かつ、自動工具交換装置39によって通常の工具と同様に交換可能となっているため、通常の回転速度の範囲での加工を行いながら、高速加工の要求に対して即座に対応することができる。
また、本実施形態によれば、主軸46の回転によって発電した電力によって刃具100を駆動するため、外部から駆動電流を供給する必要がなく、この結果、電源供給のための配線が必要ない。
また、本実施形態によれば、加工中に過負荷が刃具100に印加されたような場合に、発電機70および電動機80に過電流が流れるのを防ぐことができ、発電機70および電動機80が焼損するのを確実に回避できる。
【0051】
第2実施形態
図4は、本発明の第2の実施形態に係る工具における発電機と電動機の接続状態を説明するための図である。なお、本実施形態に係る工具の他の構成部分については上述した第1の実施形態と同様である。
図4に示すように、本実施形態では、発電機70と電動機80とを結線する導電ケーブルCU,CV,CWの途中に、操作部OSを備えたサーキットブレーカCBが設けられている。
【0052】
サーキットブレーカCBは、導電ケーブルCU,CV,CWに所定値以上の電流が流れたときに、電動機80と発電機70との間の回路を遮断する。
サーキットブレーカCBに備わる操作部OSは、回路を接続する接続位置Paと回路を遮断する遮断位置Pbで移動可能となっており、サーキットブレーカCBが遮断されると、接続位置Paにあった操作部OSは遮断位置Pbに自動的に移動するようになっている。
遮断位置Pbに移動した操作部OSを操作して、接続位置Paに再び移動させることによって、電動機80と発電機70との間の回路は再び接続される。
【0053】
図5は、上記のサーキットブレーカCBの工具における配置の一例を示す図である。
図5に示すように、サーキットブレーカCBの操作部OSはケース65に形成された窓部Wdを通じて外部から視認可能にかつ操作可能に設けられている。
【0054】
たとえば、加工中にサーキットブレーカCBが過電流を検出して操作部OSが遮断位置Pbに移動すると、オペレータは過電流が発生して電動機80と発電機70との間の回路が遮断されたことを視覚的に確認することができる。
さらに、オペレータは遮断位置Pbに移動した操作部OSを操作して接続位置Paに移動させることにより、電動機80と発電機70との間の回路を再び確立させることができる。
【0055】
このように、本実施形態によれば、電動機80と発電機70を過電流から保護できることに加えて、操作性を向上させることができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、外部から電力を供給することなく工作機械の主軸よりも高い回転数で加工具を回転させることができる工具、工具ホルダおよびこれらを備えた工作機械が得られる。
また、本発明によれば、通常の工具と同様に工作機械の主軸に着脱自在に装着され、外部の電源等と結線することなく駆動可能で、自動工具交換が可能な工具、工具ホルダおよびこれらを備えた工作機械が得られる。
また、本発明によれば、過電流から電動機および発電機を保護することができる工具、工具ホルダおよびこれらを備えた工作機械が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される工作機械の一例としてのマシニングセンタの構成図である。
【図2】本発明の工具の一実施形態の構成を示す断面図である。
【図3】発電機と電動機の接続関係を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る工具における発電機と電動機との接続関係を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る工具の外観図である。
【符号の説明】
1…マシニングセンタ
2…工作機械本体
31…主軸モータ
39…自動工具交換装置
46…主軸
60…工具
62…装着部
65…ケース
66,67,68…ケース部材
70…発電機
80…電動機
90…工具保持部
95…工具装着部
100…刃具
250…NC装置
CB…サーキットブレーカ
OS…操作部
FU,FV,FW…ヒューズ

Claims (4)

  1. 工作機械の主軸に着脱される工具であって、
    ワークを加工する加工具と、
    前記加工具を保持する回転軸と、
    前記回転軸を駆動する電動機と、
    前記工作機械の主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する発電機と、
    前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、
    前記電動機および前記発電機を保持し、かつ前記装着部を回転自在に保持し、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースと、
    前記発電機から前記電動機への電流の供給路に所定以上の電流が流れた場合には、当該供給路を遮断する遮断手段と
    を有し、
    前記回転軸、前記電動機、前記発電機及び前記装着部は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、
    前記ケースは、
    前記回転軸を回転自在に保持する第1のケース部材と、
    前記電動機及び前記発電機を保持する第2のケース部材と、
    前記装着部を保持する第3のケース部材と、
    を備え、
    前記第1のケース部材、前記第2のケース部材及び前記第3のケース部材は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、締結手段により互いに連結され、
    前記遮断手段は、前記供給路を遮断後に、当該供給路を再び接続可能な遮断器であり、
    前記遮断器は、前記第2のケース部材の外部から接続状態を視認可能にかつ操作可能に設けられている
    工具。
  2. 前記発電機は、前記主軸の回転数に応じた周波数の電圧を電動機に供給する交流発電機であり、
    前記電動機は、前記周波数に応じた回転数で回転する誘導電動機である
    請求項1に記載の工具。
  3. ワークを加工する加工具を保持可能で、工作機械本体の主軸に着脱される工具ホルダであって、
    前記加工具を保持する回転軸と、
    前記回転軸を回転させる電動機と、
    前記工作機械の主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する発電機と、
    前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、
    前記電動機および前記発電機を保持し、かつ前記装着部を回転自在に保持し、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースと、
    前記発電機から前記電動機への電流の供給路に所定以上の電流が流れた場合には、当該供給路を遮断する遮断手段と
    を有し、
    前記回転軸、前記電動機、前記発電機及び前記装着部は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、
    前記ケースは、
    前記回転軸を回転自在に保持する第1のケース部材と、
    前記電動機及び前記発電機を保持する第2のケース部材と、
    前記装着部を保持する第3のケース部材と、
    を備え、
    前記第1のケース部材、前記第2のケース部材及び前記第3のケース部材は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、締結手段により互いに連結され、
    前記遮断手段は、前記供給路を遮断後に、当該供給路を再び接続可能な遮断器であり、
    前記遮断器は、前記第2のケース部材の外部から接続状態を視認可能にかつ操作可能に設けられている
    工具ホルダ。
  4. 主軸と、前記主軸を駆動する駆動手段と、前記主軸とワークとの相対位置を変更する少なくとも一の制御軸とを備える工作機械本体と、
    ワークを加工する加工具と、前記加工具を保持する回転軸と、前記回転軸を駆動する電動機と、前記主軸から回転力が伝達され、前記電動機を駆動させる電力を発生する発電機と、前記主軸に着脱可能に装着され、当該主軸の回転力を前記発電機に伝達する装着部と、前記電動機および前記発電機を保持し、かつ前記装着部を回転自在に保持し、前記工作機械の非回転部分に係合し、回転が規制されるケースとを備え、前記主軸に着脱される工具と、
    前記駆動手段および前記制御軸を加工プログラムにしたがって駆動制御する制御装置とを有する工作機械であって、
    前記工具は、前記発電機から前記電動機への電流の供給路に所定以上の電流が流れた場合には、当該供給路を遮断する遮断手段を備え、
    前記回転軸、前記電動機、前記発電機及び前記装着部は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、
    前記ケースは、
    前記回転軸を回転自在に保持する第1のケース部材と、
    前記電動機及び前記発電機を保持する第2のケース部材と、
    前記装着部を保持する第3のケース部材と、
    を備え、
    前記第1のケース部材、前記第2のケース部材及び前記第3のケース部材は、前記主軸の長手方向に沿って順に配置され、締結手段により互いに連結され、
    前記遮断手段は、前記供給路を遮断後に、当該供給路を再び接続可能な遮断器であり、
    前記遮断器は、前記第2のケース部材の外部から接続状態を視認可能にかつ操作可能に設けられている
    工作機械。
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