JP3943845B2 - リポソームベクター - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子治療用リポソームベクターに関し、更に詳細には、肝実質細胞における高い遺伝子発現率を示す遺伝子治療用ベクター及びその研究用試薬として有用なリポソームベクターに関する。
【0002】
【従来の技術】
リポソームとは、内部に水相を含むリン脂質二重層の微小ベシクルで、脂質を相転移温度以上で、十分な量の水で水和することにより形成される。リポソームは、その脂質二重層の数に基づいて分類した場合、複数の脂質二重層からなる多重膜リポソーム(MLV)と単一の脂質二重層からなる一枚膜リポソームに分けられ、後者は、さらに大きさに基づいて、小さな一枚膜リポソーム(SUV)、大きな一枚膜リポソーム(LUV、REV)および巨大リポソーム(GUV)に分けられる。
【0003】
一般に、SUVは、直径が、数100nm以下、LUV(REV)は、直径が、100〜1000nm、GUVは、直径が、1000nm以上のリポソームを指す。MLVのサイズは不均一で、その直径の分布は数百から数千nmにまで及ぶ。
【0004】
このように、種々のタイプのリポソームが知られているが、水溶性薬物はその内水相に、油溶性のものは膜の脂質二重層の部分に取り込むことができる。リポソームに内包された薬物、例えば、抗悪性腫瘍剤であるドキソルビシンは、心臓への集積が見られるが、リポソーム化することによって心臓への集積が見られなくなり、また体内からの薬物の消失も遅くなるという遊離の薬物とはまったく異なる体内動態を示すので、薬物による副作用の軽減、徐放化などの効果がある。また、遊離の薬物は、これを導入できるように操作することが困難である。
【0005】
さらに、リポソームを構成するリン脂質は、生体膜の主要構成成分であるため毒性が低いうえ、投与の目的、方法に合わせて粒子サイズをコントロールすることができ、更には、リポソーム粒子表面に官能基を導入することによって抗原、抗体、糖鎖などをリポソームに導入することができ、標的部位に対するターゲティング(標的指向化)が可能となるという利点があり、これらの利点を生かした製剤学的研究が広く行われている
【0006】
一方、近年、がん等の遺伝子の異常が原因となって起こる病気を、人体に遺伝子を導入することによって、正常な遺伝子と入れ換えたり、正常な作用を有する遺伝子を補って治療する方法、すなわち遺伝子治療法が開発されてきている。遺伝子治療法には、患者の細胞を取り出して、生体外でこれらの細胞に治療遺伝子を導入した後に、生体内に戻すエクソビボ(ex vivo)法と、直接体内に治療遺伝子を投与して、標的細胞(治療を目的とする細胞)に取り込ませるインビボ(in vivo)法の2種類がある。エクソビボ法は、遺伝子の導入効率は高いものの、導入遺伝子の発現効率が低く、治療に利用するのには十分な遺伝子導入効率を達成することはできない。また、インビボ法では、生体内に投与した治療遺伝子が、標的細胞に選択的に導入されるように操作することが困難であるという欠点がある。
【0007】
また、遺伝子治療法においては、治療遺伝子を効率よく標的細胞へ導入するために、アデノウイルスのようなウイルスベクターが用いられるのが一般的である。しかし、ウイルスベクターは、低い遺伝子導入効率、大量生産が困難、抗原性、宿主に対する毒性等が問題となり、実用化されているものはない。一方、遺伝子をそのまま生体に投与すると、生体内の分解酵素により分解され、標的細胞に到達することができない。そこで、ウイルスを使用しない遺伝子導入法として、リポソームを用いた遺伝子治療用ベクターが開発されつつある。
【0008】
遺伝子治療用リポソームベクターとしては、膜中にN−アシル化アシアロフェツインを含有するリポソームが知られている(特願平6−69933)。
しかし、リポソームにN−アシル化アシアロフェツインを含有させるためには、ミセルを調製する必要が、またリポソームをDNAに封入するのに凍結融解が必要であり、更には血清存在下では遺伝子導入率が低くなるため、血清不在下で処置する必要があるという欠点がある。
【0009】
先に、本発明者らは、肝臓、脾臓などの細網内皮系組織に取り込まれることなく、肝細胞に多く取り込まれる大豆由来ステロールグルコシドで被覆したリポソーム(SGリポソーム)を発明した(特開平6−298638)。
このとき用いたリポソームは、多重膜リポソーム(MLV)であったが、DNAは水溶性であるので、内水相の小さい多重膜リポソームでは、遺伝子導入に十分な量のDNAの封入は困難であった。またDNAとリポソーム複合体の粒子径が大きくなり、動物に注射することが困難であった。
【0010】
また、ベクターとしてカチオン性リポソームを用いる遺伝子治療も知られている(特表平10−512882)。
しかし、リポソームとDNAの複合体の精製には、密度勾配遠心による精製が必要であり、肝臓への標的化も達成されていない。また、カチオン性リポソームは、中性リポソームと比べて、より強い毒性を示し、また、血漿タンパクとの相互作用が高いので、動物の血中での安定性も低い。
【0011】
上述のように、リポソームを遺伝子導入用の遺伝子ベクターとして用いる方法は、いくつか開発されているが、一般に、血清存在下では遺伝子発現効率が低くなることが知られており、インビボ(in vivo)においても高い遺伝子発現効率を示すベクター及びその簡便かつ迅速な調製方法の開発が望まれている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い肝実質細胞への移行性、高い遺伝子導入率、及び高い遺伝子発現効率を示す、肝疾患の遺伝子治療に有用な肝細胞をターゲットとする遺伝子治療用リポソームベクター、及びその新規調製方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、先に特開平6−298638で示したように、大豆由来ステロールグルコシドを有するリポソーム(以下、SGリポソームという)が、肝臓、脾臓などの細網内皮系組織に取り込まれることなく、肝細胞に多く取り込まれることを見出した。更に、本発明者らは、SGリポソームに遺伝子を封入させたSGリポソーム(以下、遺伝子封入SGリポソームという)が、肝実質細胞への移行性が高く、高い遺伝子導入率を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明で遺伝子を封入するとは、遺伝子をリポソームの内水相に取り込んでいる場合のみならず、遺伝子とリポソームとの単純な複合体の形成をも含む。したがって、リポソーム表面上に遺伝子が付着しているものを含む。
【0014】
すなわち本発明は、ステロールグルコシドを有する肝細胞をターゲットとする(肝細胞を標的とする)遺伝子治療用リポソームベクターに関する。
【0015】
本発明の大豆由来ステロールグリコシドは、例えば、植物油精製工程で生じるソーダ油滓から得られるステロールグルコシド(以下SGという)の未精製物であり、シトステリル−D−グルコシド、カンペステリル−D−グルコシド、スチグマステリル−D−グルコシド及びブラシカステリル−D−グルコシドからなる群より選ばれる混合物である。この混合物も使用することができるが、その混合物を構成する単独成分であるシトステリル−D−グルコシドの使用が最も有効である。
【0016】
本発明のリポソームベクターとしては、中性リポソームベクター若しくはカチオン性リポソームベクター又はその組合わせを用いることができる。本発明のSGを有する中性リポソーム(以下、SG中性リポソームという)は、好ましくは、ジバルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、コレステロール(Ch)及びステロールグルコシド(SG)を用いて調製することができる。好ましくは、ジバルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、コレステロール(Ch)及びステロールグルコシド(SG)のモル比は、6:3:1である。
【0017】
本発明のSGを有するカチオン性リポソーム(以下、SGカチオン性リポソームという)は、好ましくは、Tfx−20、DC−Chol及びSGの主成分であるβ−シトステリルβ−D−グルコシド(Sit−G)を用いて調製することができる。Tfx−20、DC−Chol及びβ−シトステリルβ−D−グルコシド(Sit−G)のモル比は、好ましくは、1.3:2:1,すなわち、重量比でTfx−20(合成カチオン脂質である〔N,N,N,N−テトラメチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,3−ジ(オレオイル−オキシ)−1,4−ブタンジアンモニウム ヨウ化物〕とL−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)の重量比が1:3のもの、プロメガ(株))/DC−Chol/Sit−G=0.325:0.975:2:1である。より好ましくは、Tfx−20はなくてもよいので、重量比でDOPE/DC−Chol/Sit−G=0.2〜10:0.1〜10:1〜10、最も好ましくは重量比で、Tfx/DOPE/DC−Chol/Sit−G=0.3:1:2:1です。Tfx−20は、米国プロメガ社製のもので、カチオニック脂質とジオレオイルホスファチジルエタノールアミンの混合物である。DC−Cholは、相対的に毒性が低いカチオン性脂質である3−β−N−(N′,N′−ジメチルアミノエタン)−カルバモイルコレステロールである。
【0018】
SG中性リポソームでは、遺伝子との静電的相互作用が期待できず、静電的力でリポソームとDNAの複合体を形成することができないということから、逆相蒸発法(REV法、REVリポソームができる)を用いて、遺伝子封入リポソームを調製することができる。
【0019】
SGカチオン性リポソームでは、負電荷である遺伝子との静電的相互作用が期待できることから、新規調製法であるエタノールインジェクション法により空のリポソームを調製し、次いで遺伝子とインキュベーションし、遺伝子とリポソームとの複合体を調製する。
【0020】
本発明の遺伝子導入に用いられる遺伝子は、DNAもしくはRNAであることができる。DNAもしくはRNAは、一本鎖もしくは二本鎖であってよく、その形態は線状、環状等であることができ、1種類以上のDNAおよび/もしくはRNAを同時に用いることもできる。
【0021】
SGリポソームに封入されたDNAは、ヒト肝芽細胞癌由来のHepG2細胞に対して、高い遺伝子導入効率を示し、かつ、HepG2細胞に選択性があることから、DNAの肝実質細胞へのターゲティングには、本発明のSGリポソームが有効である。また、通常、リポソームベクターは血清存在下で不安定となり、遺伝子導入率が低くなることが知られている。しかし、SGの主成分であるβ−シトステリルβ−D−グルコシド(Sit-G)を有するリポソームを用いた遺伝子導入においては、インビトロで、10%血清存在下においても、血清不在の場合に比べて増加した遺伝子発現が認められた(図2)。更に、マウスへの静脈内注射後の各臓器における遺伝子発現性を評価した結果、肝臓に特異的な遺伝子発現が認められた(図3)。したがって、本発明のSGリポソームベクターを用いると、肝実質細胞に高い効率で遺伝子を導入することができ、その遺伝子を高い効率で発現させることができる。
【0022】
本発明のリポソームベクター中に封入することができる肝疾患治療用遺伝子としては、例えば、自殺遺伝子、α−インターフェロン遺伝子、β−インターフェロン遺伝子、γ−インターフェロン遺伝子、B型又はC型肝炎ウイルスのアンチセンスDNA又はRNA、α1−アンチトリプシン遺伝子、腫瘍壊死因子(TNF)遺伝子、低比重リポプロテイン(LDL)遺伝子等が挙げられる。プラスミドDNA封入リポソームのDNA/脂質重量比は、好ましくは1/10〜1/500である。
【0023】
本発明によって得られたSGリポソームベクターは、そのまま懸濁させるか、又は凍結乾燥若しくはスプレードライによって粉末化したものを水、生理食塩液等で再懸濁させて静脈内投与することができる。こうして、本発明のリポソームベクターは、肝実質細胞に選択的に到達し、そこで遺伝子が発現することによって肝疾患の遺伝子治療が可能となる。したがって、本発明は、上記リポソームベクターを含む遺伝子治療剤にも関する。
【0024】
本発明の遺伝子治療剤の投与経路は、非経口、例えば、静脈、腹腔内、皮下、経鼻または経肺を用いることができる。投与量は、患者の健康状態、症状の重篤度に依存するが、一日用量0.01〜10mg/kg、好ましくは0.01〜1mg/kgであり、毎日又は1〜7回/週で投与することができる。剤形は、好ましくは、水若しくは生理食塩液の懸濁液、又はその凍結乾燥もしくはスプレードライの粉末製剤である。
【0025】
また、本発明のSGリポソームベクターは、培養細胞及び動物を用いる遺伝子導入、遺伝子発現等の研究用試薬としても使用することができる。したがって、本発明は、上記リポソームベクターを含む遺伝子導入キットにも関する。
【0026】
本発明のリポソームベクターを含む遺伝子導入キットは、リポソームベクター、懸濁用媒体、導入用遺伝子及び容器を含む。好ましくは、リポソームベクターは、リポソーム懸濁液又は粉末、懸濁用媒体は、水又は5%グルコース溶液、導入用遺伝子は、通常用いられる形態で、そして容器は、バイアル瓶を用いることができる。また上記遺伝子導入キットは、1.バイアル瓶のリポソームベクター懸濁液または、リポソームベクター粉末に懸濁用媒体を入れて再懸濁液にしてから一定量をとって、必要時に遺伝子と混ぜて使う、2.リポソームベクターと遺伝子の複合体懸濁液または、その粉末に懸濁用媒体を入れて再懸濁液にしてから、必要時に一定量をとって使うことができる。
【0027】
また、本発明は、Tfx−20、DC−Chol及びβ−シトステリルβ−D−グルコシドをエタノールに溶かし、エタノールが少量になるまで減圧除去し、この脂質のエタノール溶液に水を加え直ちに混和した後、残留のエタノールを減圧除去する。これを次に、クリーンベンチ内に、1日置いた後、孔径0.22μmの滅菌フィルターに通し、粒子径を揃え、このリポソームをプラスミドDNAと混合し、室温で10〜15分間インキュベートすることによって、プラスミドDNA封入SGカチオン性リポソーム複合体を調製する、新規カチオン性リポソームの調製及びカチオン性リポソームとDNAの混合方法にも関する。
【0028】
【実施例】
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0029】
実施例1 本発明で用いるステロールグルコシド(SG)の製造方法
植物油精製工程で生じるソーダ油宰の乾燥粉末100gにピリジン1,000mlを加え、加熱溶解した。この溶液に活性炭を加えて攪判した後に濾過し、濾液を得た。濾液1,000mlに対しアセトン1,500mlを添加した後、冷却し結晶を析出させた。析出した結晶(ステロールグルコシド未精製物)を再びピリジンに加熱溶解し、上記と同様に活性炭を加えて脱色処理を行った後、アセトンを加えて結晶を析出させた。得られた結晶を減圧乾燥し、精製SG30gを得た。このステロールグルコシドは、β−シトステリルβ−D−グルコシド(49.9%)、カンペステリルβ−D−グルコシド(29.1%)、スチグマステリルβ−D−グルコシド(13.4%)、ブラシカステリルβ−D−グルコシド(7.2%)の混合物であった。各成分の単離は、カラムで分離した。
【0030】
実施例2 プラスミドDNA封入SG中性リポソームの調製法
リポソームの脂質組成としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)/コレステロール(Ch)/SG(モル比6:3:1)を用い、プラスミドDNA(pAAV−CMV−Luc、ルシフェラーゼ遺伝子含有プラスミド)を封入させた。プラスミドDNA封入SG中性リポソームは、逆相蒸発法(REV法)により調製した。
【0031】
まず、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)/コレステロール(Ch)/SGをナス型フラスコに入れて、クロロホルムとメタノールを適量加え溶解し、室温でロータリーエバポレーターによって有機溶媒を減圧除去し、脂質薄膜を作った。この薄膜にクロロホルム及びイソプロピルエーテルを加え再溶解させてから、プラスミド含有10倍希釈のリン酸緩衝生理食塩液 (1/10PBS) を加えた後、1分間ボルテックスミキサーにかけ、45℃の水浴中で2分間超音波処理し、水和させた。このW/Oエマルションを、50〜55℃の水浴中で窒素(流量450〜500ml/min)を通しながら、ロータリーエバポレーターで有機溶媒を減圧除去し、リポソームを調製した。このリポソームを、エクストルーダーを用いて約60℃で孔径0.4μmのポリカーボネイトメンブランフィルター(Costar Scientific Corporation 製)に1回通し、次いで0.2μmポリカーボネートメンブランフィルターに2回通し、0.2μm以下に粒子径を揃えた。プラスミドDNA封入リポソームのDNA/脂質重量比は、1/200であった。
【0032】
試験例1 肝細胞におけるSG中性リポソームの遺伝子発現
ヒト肝芽細胞癌由来のHepG2細胞(理化学研究所の細胞開発銀行より入手)を用いて、実施例2で調製したSG中性リポソームの遺伝子発現を調べた。HepG2細胞を10%牛胎児血清(FBS)含有RPMI1640培地(和光純薬)(0.3mg/mlグルタミン、10nmol/lのHEPES緩衝液を添加)1mlに播種し(細胞密度:3×105 cells/well、容器:FALCON MULTIEWELL 12WELL)、37℃で1日培養した。培養プレートの培養液を取り除き、FBS不含RPMI1640培地で洗浄し、次いでFBS不含RPMI1640培地0.8ml/wellを加えた。DNA封入リポソームをDNA2μg/200μlになるように1/10PBSで希釈し、37℃で10分間インキュベートし、培地に加え、そのDNA封入リポソーム懸濁液を培養プレート内の細胞上に分散させた。PBSの組成は、塩化ナトリウム8.000g、塩化カリウム0.194g、リン酸二ナトリウム2.290g、リン酸一カリウム0.196g、精製水1000mlである。培養プレートを37℃で6時間培養後、培養液を除去し、10%FBS含有培地1ml/wellを加え、さらに、37℃で24時間培養した。その後、PBSで細胞を3回洗浄し、細胞溶解液(ピッカジーン培養細胞溶解液Luc.東洋インキ株式会社)を125μl/well加え、15分間振盪混和した後、−80℃の冷凍庫で凍結させた。凍結後、室温で解凍し、遠心分離(13000rpm×2分間)し、上澄みを回収した。その後、ケモルミノメーター(chemoluminometer)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。標準タンパク質測定(BCA試薬、Pierce, Rockford, IL, USA)で得た結果をもとに、ルシフェラーゼ活性を補正した。
その結果、図1に示すように、SG不含中性リポソームでは、HepG2細胞において、遺伝子発現がほとんど見られなかったのに対し、プラスミドDNA封入SG中性リポソームでは、高い効率の遺伝子発現が見られた。したがって、SG中性リポソームが、肝細胞に高い効率で遺伝子を導入し、その遺伝子が発現することが明らかとなった。
対照としてプラスミドDNAが封入されたSG不含中性リポソームを調製した。プラスミドDNAとしては、pAAV−CMV−Luc、ルシフェラーゼ遺伝子含有プラスミドを用いた。リポソームの脂質材料としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC):コレステロール(Ch)=6:4(モル比)を用いた。対照リポソームは、逆相蒸発法(REV法)によって調製した。
【0033】
実施例3 プラスミドDNAとSGカチオン性リポソームとの複合体の調製
Tfx−20、DC−Chol及びSGの主成分であるβ−シトステリルβ−D−グルコシド(Sit−G)〔(重量比1.3:2:1)〕をエタノールに溶かし、エタノールが少量になるまで減圧除去した。この脂質のエタノール溶液に水を加え直ちに混和した後、残留のエタノールを減圧除去した。これを、クリーンベンチ内に、1日置いた後、孔径0.22μmの滅菌フィルターに通し、粒子径を揃えた。このリポソームをプラスミドDNAと混合し、室温で10〜15分間インキュベートすることによって、プラスミドDNA封入SGカチオン性リポソーム複合体を調製した。
【0034】
試験例2 肝細胞におけるプラスミドDNA封入SGカチオン性リポソーム複合体の遺伝子発現
ヒト肝芽細胞癌由来のHepG2細胞(理化学研究所 細胞開発銀行)を用いて、実施例2で調製したSG中性リポソームによる遺伝子発現効率を調べた。HepG2細胞を10%牛胎児血清(FBS)含有RPMI1640培地(和光純薬)(0.3mg/mlグルタミン、10nmol/lのHEPES緩衝液を添加)1mlに播種し(3×105cells/well)、37℃で1日培養した。細胞プレートの培養液を取り除き、FBS不含RPMI1640培地で洗浄した。DNAが2μg/mlになるように10%FBS含有または不含のRPMI1640培地で希釈した。実施例3で調製したプラスミドDNA封入SGカチオン性リポソーム複合体の懸濁液1ml/wellを細胞に分散させた。FBS不含の場合は、37℃で2時間培養後、10%FBS含有培地1ml/wellを加え、さらに、37℃で24時間培養した。FBS含有の場合は、そのまま37℃で24時間培養した。その後、PBSで細胞を3回洗浄し、セルライシスを125μl/well加え、15分間振盪混和した後、−80℃の冷凍庫で凍結させた。凍結後、室温で解凍し、遠心分離(13000rpm×2分間)し、上澄みを回収した。その後、ケモルミノメーター(chemoluminometer)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。標準タンパク質測定(BCA試薬、Pierce, Rockford, IL, USA)で得た結果をもとに、ルシフェラーゼ活性を補正した。
その結果、図2に示すように、HepG2細胞において、DNA封入SGカチオン性リポソーム複合体では、SGを含まないカチオン性リポソームに比べ、高い遺伝子発現が見られた。また、通常、リポソームベクターは血清存在下で不安定となり、遺伝子導入率が低くなるが、DNA封入SGカチオン性リポソーム複合体は、血清(FBS)含有の場合でも、高い遺伝子発現率を示した。したがって、SGカチオン性リポソームが、肝細胞に高い効率で遺伝子を導入し、その遺伝子が発現することが明らかとなった。
【0035】
試験例3 マウスへの静脈投与によるDNA封入SGカチオン性リポソーム複合体の遺伝子発現
実施例3で調製したプラスミドDNA封入SGカチオン性リポソーム複合体の懸濁液をマウスに尾静脈内注射し、24時間後の各臓器における遺伝子発現を調べた。その結果、図3に示すように、市販品のTfx−20ベクター及びSGを有しないカチオン性リポソームでは、肝臓においての遺伝子発現が低かったが、プラスミドDNA封入SGカチオン性リポソーム複合体によっては、肝臓における高い遺伝子発現が見られた。このことから、DNA封入SGカチオン性リポソームの静脈内注射により、肝細胞に選択的に遺伝子を導入し、高い効率で発現させることができることが明らかとなった。
対照とした、SG不含カチオン性リポソームとプラスミドDNAとの複合体の調製は、空のSG不含カチオン性リポソームを、Tfx−20とDC−Chol(重量比1.3:2)をエタノールに溶かし、エタノールを少量になるまで留去した。この脂質のエタノール溶液に水を加え直ちに混和した後、残留のエタノールを減圧除去した。これを、クリーンベンチで、1日置いた後、孔径0.22μmの滅菌フィルターに通し、粒子径を揃えた。このリポソームをプラスミドDNAと混合し、室温で10〜15分間インキュベーションすることによって、プラスミドDNAを封入したSGを有しないカチオン性リポソーム複合体を調製した。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドDNA封入SG中性リポソームによって導入された遺伝子の肝細胞における高い遺伝子発現を示す図である。***の表示は、p<0.001で有意差があることを示す。RLUは、相対光単位(relative light unit)を表す。4℃は、吸着による対照を示す。
【図2】プラスミドDNA封入SGカチオン性リポソームによって導入された遺伝子の肝細胞における高い遺伝子発現を示す図である。***の表示は、p<0.001で有意差があることを示す。RLUは、相対光単位(relative light unit)を表す。
【図3】DNA封入SGカチオン性リポソームによって導入された遺伝子のマウス肝臓における高い遺伝子発現を示す図である。*の表示は、p<0.05で有意差があることを示す。RLUは、相対光単位(relative light unit)を表す。

Claims (8)

  1. ステロールグルコシドを有するリポソームからなる、肝細胞をターゲットとする遺伝子治療用リポソームベクターであって、該リポソームが、エタノールインジェクション法で製造されたカチオン性リポソームである、リポソームベクター。
  2. ステロールグルコシドが、シトステリル−D−グルコシドである、請求項1記載のリポソームベクター。
  3. リポソームが、Tfx−20、3−β−N−(N′,N′−ジメチルアミノエタン)−カルバモイルコレステロール及びβ−シトステリルβ−D−グルコシド(Sit−G)を含む、請求項1又は2記載のリポソームベクター。
  4. Tfx−20、3−β−N−(N′,N′−ジメチルアミノエタン)−カルバモイルコレステロール及びβ−シトステリルβ−D−グルコシド(Sit−G)のモル比が、1.3:2:1である、請求項記載のリポソームベクター。
  5. 請求項1〜いずれか1項記載のリポソームベクター及び遺伝子を含む、遺伝子治療剤。
  6. 請求項1〜いずれか1項記載のリポソームベクターを含む、遺伝子導入用キット。
  7. Tfx−20、3−β−N−(N′,N′−ジメチルアミノエタン)−カルバモイルコレステロール及びβ−シトステリルβ−D−グルコシド(Sit−G)をエタノールに溶解し、エタノールを減圧除去することを特徴とする、リポソームの調製方法。
  8. ステロールグルコシドをエタノールに溶かし、エタノールが少量になるまで減圧除去し、この脂質のエタノール溶液に水を加え直ちに混和した後、残留のエタノールを減圧除去して製造されたカチオン性リポソームとDNAとを混合し、室温でインキュベートすることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のカチオン性リポソームベクターの調製方法。
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