JP3943622B2 - 細菌培養容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、細菌培養及び細菌検査に用いる細菌培養容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の細菌培養及び細菌検査に用いる容器は、ガラスや硬質樹脂等の剛性材料からなる定形のシャーレ、ボトル又は試験管であった。それぞれの容器の使用方法は、例えば以下のようである。
【0003】
シャーレで培養する場合、検体(通常、好気性菌)をピペットで滅菌シャーレに入れ、次いで寒天培地を加え、蓋を被せて検体や培地がこぼれないように注意しながら直ちにシャーレを振って十分混釈する。その後、好気的条件下の恒温装置内で培養する。
【0004】
試験管で培養する場合、図6に示すように、試験管Tの中に細菌の増殖とともにガスを発生する液体培地Mを充填し、望ましくはその培地Mに試験管Tよりもはるかに小さいダーラム管Dを空気を抜いて逆さに沈めておく。細菌が存在するときは、培養とともに発生したガスGがダーラム管D内に溜まる。こうして、ガス発生の有無をもって細菌の存否を確認する。ダーラム管を沈めない代わりに培地から目をそらすことなく、注意深くガス発生を観察してもよい。
【0005】
一方、ボトルで培養する場合、試験管培養と同様にダーラム管を逆さに沈めてガス発生の状況を観察するか、又は細菌の増殖とともに色が変わる培地を充填し、変色の程度によって細菌の存否を確認する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、シャーレであろうと試験管であろうとボトルであろうと、その体積及び形状を変化させることができないので、使用不使用の如何に拘わらず収納空間が多く必要であり、持ち運びにも不便である。また、細菌の増殖によってガスが発生する培地の場合、ガス発生とともに容器内部の圧力が高まるから、容器の破損を防止するために、スクリュー式キャップの場合はキャップを少し緩める、ゴム栓式キャップの場合はキャップに注射針を突き刺しておく等、ガスの逃げ道を培養中に確保しておかなければならず、感染の危険がある。
【0007】
さらにボトルを用いて血液中の細菌検査をする際の特有の課題もある。即ち、採取した血液は直ちに培地に接種しなければならないが、医療現場でボトルの口を解放して血液を入れることは培地に雑菌が混入する可能性があるので、通常ボトルの口にゴム栓をし、そのゴム栓に血液を採取した注射器の針を刺してボトル内に血液を入れる。このとき、ボトル内が陽圧になっていると、注射器と注射針とが外れて規定量の血液をボトル内に接種できないばかりか、注射器内の血液及びボトルの内容物が飛散して2次感染の恐れすらある。従って、予めボトル内部を陰圧に調整しておくための減圧機といった高価な装置が必要であり操作も面倒である。
【0008】
さらに、シャーレで培養する際の特有の課題として、培地が乾燥しないように恒温装置内を湿潤状態に保つ必要がある、シャーレの開口面積が広いので操作中に雑菌混入の危険が伴う、等がある。
【0009】
それ故、この発明の目的は、占有体積が少なく、目的に応じて変形可能な細菌培養容器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の細菌培養容器は、半透明ないし透明で液体及び細菌を通過させない柔軟性材料からなる袋と、フィルムを筒状に形成し、その筒状のフィルムを扁平形態とし一部を前記袋の内部に挿入して、その一端側の開口が袋の外部に配置され他端側の開口が袋の内部に配置されるように袋に一体的に固着され、袋に培地を出し入れ可能とするとともに、液体及び細菌に対して密閉可能とされた弁とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の細菌培養容器において、柔軟性材料が、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の合成樹脂フィルムであることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の細菌培養容器において、培地にガスが発生したとき、そのガスを溜めるガストラッパーを内部に一体的に有することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の細菌培養容器において、袋が内部空間に鋭角部分を有し、その鋭角部分がガストラッパーであることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4に記載の細菌培養容器において、ガストラッパーと弁との間に、ガストラッパーに溜まったガスを弁の位置まで案内するガイドを有することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明の細菌培養容器は、半透明ないし透明で液体及び細菌を通過させない柔軟性材料からなり互いに区分された複数の収容部を有する袋と、フィルムを筒状に形成し、その筒状のフィルムを扁平形態とし一部を前記袋の各収容部に挿入して、その一端側の開口が各収容部の外部に配置され他端側の開口が各収容部の内部に配置されるように袋に一体的に固着され、各々の収容部に個別に培地を出し入れ可能とするとともに、液体及び細菌に対して密閉可能とされた複数の弁とを備えたことを特徴とする。この細菌培養容器は、各々の収容部が請求項1に係る発明の細菌培養容器の袋に対応する。
請求項7に係る発明の細菌培養容器集合体は、半透明ないし透明で液体及び細菌を通過させない柔軟性材料からなり互いに隣同士で連結された複数の袋と、フィルムを筒状に形成し、その筒状のフィルムを扁平形態とし一部を前記各袋の内部に挿入して、その一端側の開口が各袋の外部に配置され他端側の開口が各袋の内部に配置されるように各袋にそれぞれ一体的に固着され、各々の袋に個別に培地を出し入れ可能とするとともに、液体及び細菌に対して密閉可能とされた複数の弁とを備えたことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、柔軟性材料からなる袋の中に培地を入れて培養するので、培地や発生するガスの量に応じて袋が変形する。従って、袋内を負圧に調整したり、ガスの逃げ道を設けたりする必要はない。また、培地は液体培地にしろ寒天培地にしろ、本来流動性を有するから、収納空間や運搬上の都合に応じて変形させることもできる。さらに、不使用時に袋を折って小さくすることもできる。
【0014】
細菌培養容器集合体を用いれば、1つの検体から種類の異なる細菌を検査する場合、同じ細菌を異なる組成の培地で培養する場合、段階希釈する場合等において、それぞれの培地が袋の連結部で繋がっているので、他との混同を防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は細菌検査方法にも適用可能であり、この場合、上記細菌培養方法によって培養された培地を、前記袋を介して透視することにより細菌の有無を検査する。
【0016】
袋を構成する柔軟性材料は、培養する細菌によって適宜選択すればよい。例えば好気性菌の培養には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の通気性のある合成樹脂フィルムが好ましく、嫌気性菌の培養には、単独で気体不透過性を発揮するフィルムか又は重層フィルムが好ましい。
【0017】
細菌の増殖とともにガスが発生する培地を用いる場合、培地にガスが発生したとき、そのガスを溜めるガストラッパーを本発明細菌培地容器の内部に一体的に設けることで、ガス発生を容易に確認できる。袋が内部空間に鋭角部分を有するものであれば、その鋭角部分をガストラッパーとして利用できる。
【0018】
ガストラッパーと弁との間には、ガストラッパーに溜まったガスを弁の位置まで案内するガイドが存在すると好ましい。検体を袋内の培地に接種する際に弁から空気が混入するが、そのまま培養するとガストラッパーに溜まっているガスが細菌増殖に由来するものであるのか空気であるのか区別できない。ガイドが存在すれば、混入した空気をガイドに沿って速やかに排出することができるからである。
【0019】
【実施例】
−実施例1−
この発明の第一の実施例を図面とともに説明する。図1は細菌培養容器の第一実施例を示す斜視図、図3は同じく平面図、図4(a)は図3のXY断面図、図4(b)は培地を入れた状態の断面図である。
【0020】
細菌培養容器1は、袋2と弁3とからなる。袋2は、無色透明の2枚のポリエチレン製方形フィルム2a,2bを周辺部2cで互いに熱圧着等により接着して得られたものである。弁3は、袋と同質の2枚のリボン状フィルム3a,3bを両長辺に沿う縁で互いに接着して筒状に形成したものである。弁3は、方形フィルム2a,2bを相互に接着する際、予め筒状に形成したフィルム3a,3bをフィルム2a,2bで挟んでおくことによって、フィルム2a,2bの相互接着と同時にフィルム2a,2bに固着される。ただし、袋2の周辺部2cのうち、弁3と対向する底辺部2dは、後述の培地4を充填した後に接着される。
【0021】
この容器1は、全体がポリエチレン製であるから、不使用時には多数個を平たく束ねたり折り曲げたりして、保管場所に応じて適当な形態で保存することができ、運搬も容易である。しかも運搬中、破損の心配もなく、軽量である。この容器1を用いて細菌を培養する方法は、以下の通りである。
【0022】
底辺部2dを接着する前の袋2の底辺側から培地4を充填する。先に底辺部2dを接着しておいて、弁3から注射器等で培地を充填することもできるが、本例では弁3の無菌性を保つために底辺側から培地4を充填した後、底辺部2dを接着する。培地4は、液体培地、寒天培地又は粉末培地のいずれでも良い。その後、血液、食品、試薬等の検体を加え、適当な環境で培養する。弁3のフィルム3a,3bは、袋2内の流体圧力が高まるほど互いに密接するので、培養中に容器1に外力が加わっても開かない。
【0023】
水道水、井戸水、プール、河川、海水浴場、貯水タンク等における大腸菌群の有無を検査する場合、大腸菌群が存在するときのみガスが発生するBGLB(液体)培地か又は色が変わるMMO−MUG(粉末)培地を袋2に充填しておけば、袋2を介して培地4を透視することにより、容易に気泡5又は変色(図示省略)を観察することができる。粉末培地を用いる場合、袋2が充填物質の量に応じて膨らむので、従来の定形容器と異なり、検体(水道水等)の容積を予め確保しておく必要はない。
【0024】
食品中の細菌を検査するためには、食品を培地全体に均一に分散させる必要がある。従来の定形容器を用いる場合、加温溶解した寒天培地と検体とを混合して容器に充填し、凝固させた後、好気性菌であるか嫌気性菌であるか等の細菌の性質に適応し且つ培地が乾燥しないように湿潤した雰囲気を有する恒温装置に入れて培養していた。本例の容器1を用いる場合、袋2の材質として好気性菌に対しては上記ポリエチレンのように通気性のものを用いる。一方、嫌気性菌に対しては気体不透過性のものを選定しておく。そして、予め袋2に寒天培地を充填しておき、容器1とともに電子レンジに入れて数秒で溶かした後、袋2に検体を入れて袋2を介して軽く揉むか又は容器1全体を数回転倒させるかして攪拌するだけで均一に分散し培養することができる。培養中、袋2は密閉されているので、培地4が乾燥することがない。従って、恒温装置の湿潤が不要である。
【0025】
血液検査の場合、検体(血液)が不透明であるから、従来ダーラム管を使用することができず、しかも検体の飛散防止のために予め減圧機で内部を陰圧に調整したボトル内で培養せざるを得なかった。これに対して、本例の容器1を用いれば、検体の充填量に応じて袋2が膨らむので内圧を調整しておく必要はなく、注射器を弁3に挿入して、採取した検体を押し込むだけでよい。しかもガス発生を気泡の有無だけでなく、袋2の膨らみによっても確認することができる。
【0026】
−実施例2−
図2は、実施例1の細菌培養容器を更に発展させた本発明の第二実施例の容器を示す斜視図である。
【0027】
本例の細菌培養容器1は、フィルム2a,2bを互いに接着する際に周辺で接着するだけでなく、両フィルムの外周の1辺から中央に向かって延びる線61に沿っても相互接着する以外は実施例1の容器1と同形同質である。本例の容器1は、その1辺と延線61とで袋2の内部に平面視で鋭角の空間を有し、それがガストラッパー6となる。従って、容器1を立てて培養すれば、培地に発生したガスが気泡となって図中の矢印方向に移動してガストラッパー6に溜まるので、ガス発生を確認しやすい。
【0028】
また、延線61は弁3の延長上に差し掛かったところで方向転換して弁3に向かい、ガストラッパー6に溜まったガスを弁3の位置まで案内するガイド62に連なる。従って、検体を袋2内の培地に接種する際に弁3から空気が混入しても、混入した空気をガイドに沿って培養開始前に速やかに排出することができる。その結果、培養後にガストラッパー6に溜まったガスがまさしく細菌増殖に由来するものであるとの確証を得ることができる。
【0029】
−実施例3−
図5は、実施例1、2とは異なる構成に係る細菌培養容器の実施例を示す斜視図である。細菌培養容器11は、袋12、実施例1と同一構造の5つ弁13,13・・13とからなる。袋12は、無色透明の2枚のポリエチレン製方形フィルム12a,12bを周辺部12cと両側辺に平行な4本の仕切り部12dとで互いに熱圧着等により接着して得られたものである。従って、袋12は仕切り部12dで区切られた5つの収容部12eを有する。そして、各収容部12eの開口端の弁13が固着されている。
【0030】
この細菌培養容器11も実施例1の細菌培養容器と同様に、不使用時には保管場所や運搬の都合に応じて適当な形態に変形させることができる。また、実施例1の場合と同様に袋12の底辺側から収容部12eに培地(図示省略)を充填した後、底辺を接着することにより、実施例1の細菌培養容器と同様に弁13の無菌性を保持した状態で培養に使用できる。しかも1つの細菌培養容器11が5つの収容部12eを有するので、分離された細菌を5種類の培地で培養して生化学的性状を確認し同定する、5段階希釈して定量する等、の場合に関連する培地を常に1箇所に集約しておくことができ、紛失や他の培地との混同の防止に役立つ。
【0031】
仕切り部12dには、ミシン目(図示省略)を形成し、隣り合う収容部を切り離し可能にしても良い。切り離し後は、各々の収容部12e及び弁13の組が細菌培養容器として機能する。換言すれば、本例の細菌培養容器11は、単一の収容部を有する細菌培養容器が仕切り部12eで複数個繋がった集合体ともいえる。
【0032】
【0033】
【発明の効果】
以上のように、この発明の細菌培養容器によれば、容器が変形可能で、その占有体積も小さいので、検体の採取現場での取り扱い、運搬が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第一実施例の細菌培養容器を示す斜視図である。
【図2】 第二実施例の細菌培養容器を示す斜視図である。
【図3】 第一実施例の細菌培養容器を示す平面図である。
【図4】 (a)は図3のXY断面図、(b)は同じく使用状態の断面図である。
【図5】 第三実施例の細菌培養容器を示す斜視図である。
【図6】 従来の細菌培養容器を示す断面図である。
【符号の説明】
1,11 細菌培養容器
2,12 袋
2c,12c 周辺部
2d 底辺
12e 収容部
3,13 弁
4 培地
5 気泡
6 ガストラッパー
61 延線
62 ガイド
Claims (7)
- 半透明ないし透明で液体及び細菌を通過させない柔軟性材料からなる袋と、
フィルムを筒状に形成し、その筒状のフィルムを扁平形態とし一部を前記袋の内部に挿入して、その一端側の開口が袋の外部に配置され他端側の開口が袋の内部に配置されるように袋に一体的に固着され、袋に培地を出し入れ可能とするとともに、液体及び細菌に対して密閉可能とされた弁とを備えたことを特徴とする細菌培養容器。 - 柔軟性材料が、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の合成樹脂フィルムである請求項1に記載の細菌培養容器。
- 培地にガスが発生したとき、そのガスを溜めるガストラッパーを内部に一体的に有する請求項1又は請求項2に記載の細菌培養容器。
- 袋が内部空間に鋭角部分を有し、その鋭角部分がガストラッパーである請求項3に記載の細菌培養容器。
- ガストラッパーと弁との間に、ガストラッパーに溜まったガスを弁の位置まで案内するガイドを有する請求項3又は請求項4に記載の細菌培養容器。
- 半透明ないし透明で液体及び細菌を通過させない柔軟性材料からなり互いに区分された複数の収容部を有する袋と、
フィルムを筒状に形成し、その筒状のフィルムを扁平形態とし一部を前記袋の各収容部に挿入して、その一端側の開口が各収容部の外部に配置され他端側の開口が各収容部の内部に配置されるように袋に一体的に固着され、各々の収容部に個別に培地を出し入れ可能とするとともに、液体及び細菌に対して密閉可能とされた複数の弁とを備えたことを特徴とする細菌培養容器。 - 半透明ないし透明で液体及び細菌を通過させない柔軟性材料からなり互いに隣同士で連結された複数の袋と、
フィルムを筒状に形成し、その筒状のフィルムを扁平形態とし一部を前記各袋の内部に挿入して、その一端側の開口が各袋の外部に配置され他端側の開口が各袋の内部に配置されるように各袋にそれぞれ一体的に固着され、各々の袋に個別に培地を出し入れ可能とするとともに、液体及び細菌に対して密閉可能とされた複数の弁とを備えたことを特徴とする細菌培養容器集合体。
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