JP3942730B2 - ポリオレフィンシート積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用部材として好適に用いることができる剛性を有するポリオレフィンシート積層体に関し、より詳細には、金属、金属−樹脂複合材あるいは樹脂−ガラス繊維複合材に代えて用いることができる、強度及び熱寸法安定性に優れたポリオレフィンシート積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の軽量化を図るために、従来、金属により構成されていた部材を合成樹脂からなる部材で置き換える試みが種々なされている。例えば、窓ガラスまわりを気密にするためのウェザーストリップ、天井や車両室内の側面に取り付けられるルーフモール、サイドモール、ガーニッシュもしくはサイドシル、座席まわりの部材であるシートレールやシートフレーム、その他、荷物カバーの収納材であるトノカバー、衝撃吸収性が求められるバンパービームやサイドインパクトビームなどの種々の部材を樹脂で構成することが検討されている。
【0003】
しかしながら、これらの部材では取り付け精度が高いこと、熱寸法安定性に優れていること、剛性及び耐衝撃性に優れていることが強く求められる。従って、従来、上記部材は金属または金属を合成樹脂で被覆した材料により構成されていた。
【0004】
また、軽量化を進めるために、近年、金属に代えて、合成樹脂に剛性及び熱寸法安定性を高めるためにガラス繊維を強化材として複合してなる複合材が用いられてきている。このような複合材としては、合成樹脂とガラス繊維とを複合化してなるスタンパブルシートなどが知られている(例えば、特公昭54−36193号公報、特開平9−52322号公報など)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、軽量化だけでなく、環境汚染を引き起こさないために、自動車用部材においてもリサイクル性を有することが求められてきている。従って、廃棄後の処理が容易なように、合成樹脂単独で構成された車両用部材の登場が強く求められている。
【0006】
本発明の目的は、上記要望に応えるものであり、合成樹脂のみから構成されており、従ってリサイクルが容易であり、かつ強度及び熱寸法安定性に優れた部材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のポリオレフィンシート積層体は、ポリオレフィンからなる原反シートを圧延して得られた圧延シートを延伸してなり且つ上記原反シートの圧延倍率と上記圧延シートの延伸倍率との積である総延伸倍率が20〜40倍のポリオレフィン延伸シートを5〜100枚積層し、一体化してなる剛性を有するポリオレフィンシート積層体であって、延伸方向を揃えて積層された複数枚の第1のポリオレフィン延伸シートと、該第1のポリオレフィン延伸シートとは延伸方向が異なるように積層されている少なくとも1枚の第2のポリオレフィン延伸シートとを含み、ポリオレフィン延伸シートを構成しているポリオレフィンの融点よりも低い融点を有する樹脂フィルムをポリオレフィン延伸シート間に介在させた状態で、ポリオレフィンの融点と樹脂フィルムを構成している樹脂の融点との間の温度で加熱圧縮し、次に冷却することにより一体化させる方法で接合・一体化されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載のポリオレフィンシート積層体は、自動車用部材である請求項1に記載のポリオレフィンシート積層体である。
以下、本発明の詳細を説明する。
【0009】
本発明に係るポリオレフィンシート積層体は、複数枚のポリオレフィン延伸シートを積層することにより構成されている。
上記ポリオレフィンシートを構成するポリオレフィンとしては、特に限定されるわけではないが、例えば、ボリエチレン;ポリプロピレン;または1−ブテン、1−ペンテンなどの単独重合体あるいは共重合成分が10重量%以下であるこれらの共重合体、もしくはこれらとビニル系単量体、例えば酢酸ビニル、ビニルアルコール、塩化ビニル、アクリル酸などが好ましくは10重量%以下で共重合されている共重合体を用いることができる。また、上記ポリオレフィンは、複数の上述したポリオレフィンを組み合わせた混合樹脂であってもよい。
【0010】
中でも、結晶性が高く、延伸後の剛性が高いため、高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンが好適に用いられる。
上記ポリオレフィンの重量平均分子量については、延伸性に優れているので、10万〜50万の範囲のものが好ましい。
【0011】
また、上記ポリオレフィンのメルトインデックス(MI)は、0.1〜20の範囲が好ましく、より好ましくは、1〜10である。MIが0.1より小さいと押出機等の成形機に負担がかかり、20を超えると延伸性が十分でないことがある。
【0012】
本発明に係るポリオレフィンシート積層体の製造に際しては、上記ポリオレフィンを押出機に供給し、T型ダイからシート状に押し出し、冷却することによりポリオレフィンよりなる原反シートを得る。この場合、成形方法及び冷却方法については特に限定されるものではない。また、原反シートの厚みも特に限定されないが、0.5〜5mm範囲とすることが好ましい。0.5mm未満または5mmを超えると後で行う延伸が困難となることがある。
【0013】
上記原反シートは比較的厚いため、延伸に先立って圧延処理を施す。圧延処理とは、一対の互いに反対方向に回転する圧延ロール間のクリアランスを、原反シートの厚みよりも狭くし、圧延ロール間に原反シートを挿入し、原反シートの厚みを減少させると共に、長さ方向に伸長することにより行われる処理をいう。
【0014】
圧延工程における原反シートの温度が低過ぎると、圧下力が比較的大きいので、均一に圧延することが困難となることがあり、原反シートの温度が高過ぎると、シートが圧延中に溶融切れすることがある。従って、圧延工程における原反シートの温度については、ポリエチレンの場合には70〜125℃、より好ましくは90〜120℃とすることが望ましい。また、ポリプロピレンからなる原反シートの場合には、好ましくは120〜160℃、より好ましくは、130〜150℃とすることが望ましい。
【0015】
圧延倍率が低過ぎると、圧延の効果を期待することができないだけでなく、後の延伸工程に負担がかかることになる。逆に、圧延倍率が高過ぎると、圧下力が大きくなり、均一な圧延が困難となるだけでなく、圧延後のシートの厚みが薄くなり過ぎ、後の延伸工程においてシートが切断することがある。従って、圧延倍率は2〜10倍が好ましい。
【0016】
なお、本明細書における圧延倍率とは、次式により定義されるものである。
【0017】
(圧延倍率)=(原反シートの厚さ)/(原反シートの圧延後の厚さ)
【0018】
ポリオレフィンからなる原反シートを上記のようにして圧延した後、延伸する。この場合延伸方法としては、通常の一軸延伸法が用いられる。一軸延伸法とは、速度の異なる2対のピンチロール間に挟んでシートを加熱した状態で引っ張ることにより一軸方向のみに強く配向させることができる延伸方法である。この場合、ロールの回転速度比が延伸倍率となる。本発明においては、繰出ロールと引取ロールの速度比、すなわち延伸倍率は、2〜10倍とすることが好ましい。
【0019】
また、本発明においては、上述した圧延倍率と延伸倍率との積を総延伸倍率として定義する。総延伸倍率は20倍以上であり、好ましくは25倍以上である。総延伸倍率が20倍未満では、得られたポリオレフィン延伸シートの剛性が十分に高まらないことがあり、熱寸法安定性も十分に高められないことがある。また、総延伸倍率は40倍以下である。
総延伸倍率が40倍を超えると、局所的に延伸され過ぎ、シートの幅が安定しないからであり、好ましくは、総延伸倍率は35倍以下である。
【0020】
熱寸法安定性は、通常、線膨張率で評価される。自動車用部材では、金属並の熱寸法安定性が要求される。なお、アルミニウムの線膨張率は2.3×10-5(0℃〜80℃)である。従って、本発明に係るポリオレフィンシート積層体の線膨張率は、上記アルミニウムの代わりに用いることを考慮すると、使用するポリオレフィン延伸シートの線膨張率が0℃〜80℃の温度範囲で2×10-5以下、−2×10-5以上であることが好ましい。
【0021】
延伸時のポリオレフィンシートの温度については、ポリエチレンでは70〜120℃の範囲とすることが好ましく、ポリプロピレンでは100〜160℃の温度とすることが好ましい。この温度範囲外では、延伸に際してシートの延伸切れが起き易くなることがある。
【0022】
上記のようにして、ポリオレフィン延伸シートが得られるが、このポリオレフィン延伸シートの厚みについては、特に限定されるわけではないが、50〜500μmとすることが望ましい。50μm未満では、割れやすく、積層工程において割れを起こす恐れがあり、500μmを超えると、後の積層が困難となることがある。
【0023】
また、ポリオレフィン延伸シートには、延伸処理後に架橋処理を施してもよい。架橋処理により、シートの耐熱性及び耐クリープ性を高めることができる。架橋方法については特に限定されず、シランによる化学架橋法、紫外線照射による架橋方法、電子線照射による架橋方法などを挙げることができる。
【0024】
上記架橋処理の指標としては、ゲル分率が用いられる。この場合、通常、架橋シートを120℃の熱キシレンに24時間浸漬し、不溶なゲル分の浸漬前のシートに対する重量%で、ゲル分率が評価される。このゲル分率は25%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上であることが望ましい。
ゲル分率が20%未満では、架橋により耐熱性及び耐クリープ性を十分に高め得ないことがある。
【0025】
本発明に係るポリオレフィンシート積層体は、上記のようにして得られたポリオレフィン延伸シートを5〜100枚積層することにより得られる。積層枚数は目的とする部材に必要とされる厚みによって決定されるが、積層枚数が5枚未満のポリオレフィンシート積層体を用いた場合には、必要とされる剛性が十分に発現しない恐れがあり、100枚を超えるポリオレフィン延伸シートを積層し、接合しようとした場合、均一に加熱することが困難となり、確実にポリオレフィン延伸シート同士を均一に積層し難いことがある。
【0026】
ポリオレフィン延伸シートが、上記のように一軸延伸されているため、延伸方向には高い熱寸法安定性及び剛性を発揮する。しかしながら、延伸方向以外の方向では、物性はかなり低いものとなっている。
【0027】
例えば、適用される自動車部材が長尺状である場合、長さ方向に延伸方向が一致するように複数枚のポリオレフィン延伸シートを積層することにより、得られた積層体における長さ方向の熱寸法安定性及び剛性を著しく高めることができる。しかしながら、自動車部材は、上記長さ方向だけでなく横方向の強度も求められることが多い。また、ボルト孔を開ける加工にも耐える必要がある。
【0028】
従って、本発明では、延伸方向以外の方向における強度を高めるために、延伸方向を揃えて積層された複数枚の第1のポリオレフィン延伸シート以外に、延伸方向が異なるように少なくとも1枚の第2のポリオレフィン延伸シートが積層されている。
【0029】
すなわち、一定の方向に延伸された複数枚のポリオレフィン延伸シートを積層するにあたり、延伸方向を揃えた複数枚の第1のポリオレフィン延伸シートと延伸方向が異なる少なくとも1枚の第2のポリオレフィン延伸シートとを積層することにより、第1のポリオレフィン延伸シートの延伸方向だけでなく、第2のポリオレフィン延伸シートの延伸方向及び両者の延伸方向の間の方向における機械的強度及び熱寸法安定性が高められている。
【0030】
特に、自動車部材における衝撃吸収性を高めるには、長尺状部材の場合、長さ方向だけでなく、該長さ方向と直交する方向及び長さ方向と45°の角度をなして交差する方向における物性を高めることが望ましい。このような例を挙げると、例えばバンパービームなどの長尺状部材に適用する場合、長さ方向に延伸方向が揃うように第1のポリオレフィン延伸シートを複数枚積層し、該長さ方向と直交する方向及び45°の角度をなして交差する方向が延伸方向となる各第2のポリオレフィン延伸シートを積層することが好ましい。このように、延伸方向が第1のポリオレフィン延伸シートと異なる限り、2種以上の延伸方向の各第2のポリオレフィン延伸シートを用いてもよい。上記バンパービームなどに適用する場合、第1のポリオレフィン延伸シートと第2のポリオレフィン延伸シートの割合(重量比)については、第1のポリオレフィン延伸シート10重量部に対し、第2のポリオレフィン延伸シートを2〜10重量部程度の割合で積層することが好ましく、それによって長さ方向だけでなく、該長さ方向と直交する方向及び長さ方向と45°の角度をなして交差する方向における物性を高めることができる。
【0031】
上記のように、第1,第2のポリオレフィン延伸シートを積層し、接合・一体化するために、ポリオレフィン延伸シートを構成しているポリオレフィンの融点よりも低い融点を 有する樹脂フィルムをポリオレフィン延伸シート間に介在させた状態で、ポリオレフィンの融点と樹脂フィルムを構成している樹脂の融点との間の温度で加熱圧縮し、次に冷却することにより一体化させる。
【0032】
上記のように接合・一体化されて得られたポリオレフィンシート積層体の形状については、特に限定されず、目的とする部材の形状に応じて選択される。例えば、板状の部材が必要な場合には、上記積層・接合工程を平面プレス成形法により行えばよい。また、パイプ状、U字型、あるいは複雑な異型形状の部材を必要とする場合には、所望の断面形状を有する金型内を加圧しつつ、該金型からポリオレフィンシート積層体を引き抜く方法を採用すればよい。また、異型形状を有するプレスによりプレス成形をおこなってもよい。
【0033】
本発明に係るポリオレフィンシート積層体は、自動車部材として好適に用いられる。このような自動車部材の例としては、内装材、外装材、内部部材、衝撃吸収が要求される部材等が挙げられる。上記内装材としては、例えば、シートレール、シートフレーム、シートシェル、ガーニッシュ、サイドシル、トノカバー、A/Tシフトペース、サイドマットガード、ルーフライナー、ドアライナー、トランクルームライニング、サンルーフハウジング、サンシェード、インストルメントパネル、コンソールボックスが挙げられる。
【0034】
また、外装材としては、サイドモール、ルーフモール、ステップ、リアスポイラー、リアフェンダー、ヘッドカバー、センターピラー、エンジンアンダーカバー、従って、トランスミッションカバーなどが挙げられる。内部部材としては、例えば、ウエザーストリップ、バッテリートレイ、フェエルタンクカバー、エンジン防音壁、ブレーキカバー、エアクリーナーケース、ラジエータサポートなどが挙げられる。衝撃吸収が要求される部材としては、例えば、サイドインパクトビーム、バンパービーム、バンパーフェイシア、バンパーコーナー、バンパースカートなどが挙げられる。
【0035】
もっとも、本発明に係るポリオレフィンシート積層体は、自動車用部材だけでなく、他の用途にも用いることができる。すなわち、複数の方向に機械的強度が高く、かつ熱寸法安定性において優れているため、各種長尺状材料、ポリオレフィンの有する耐薬品性を生かした海岸等において使用される部材、高い衝撃吸収性を生かしたガードレール、ガードボールなどの道路資材にも好適に用いることができる。
【0036】
(作用)
請求項1に記載の発明に係るポリオレフィンシート積層体では、ポリオレフィンからなる原反シートを圧延して得られた圧延シートを延伸してなり且つ上記原反シートの圧延倍率と上記圧延シートの延伸倍率との積である総延伸倍率が20〜40倍の延伸方向において剛性及び熱寸法安定性が高められた5〜100枚のポリオレフィン延伸シートが積層されている。しかも、延伸方向を揃えて積層された第1のポリオレフィン延伸シートだけでなく、第1のポリオレフィン延伸シートとは延伸方向が異なるように少なくとも1枚の第2のポリオレフィン延伸シートが積層されている。また、ポリオレフィン延伸シートを構成しているポリオレフィンの融点よりも低い融点を有する樹脂フィルムをポリオレフィン延伸シート間に介在させた状態で、ポリオレフィンの融点と樹脂フィルムを構成している樹脂の融点との間の温度で加熱圧縮し、次に冷却することにより一体化させる方法で接合・一体化されている。従って、第1のポリオレフィン延伸シートの延伸方向だけでなく、第2のポリオレフィン延伸シートの延伸方向においても熱寸法安定性及び機械的強度が高められる。よって、例えば長尺状部材に用いた場合、長さ方向に第1のポリオレフィン延伸シートの延伸方向を一致させた場合、長さ方向だけでなく、長さ方向と交差する他の方向における機械的強度及び熱寸法安定性も高められる。
【0037】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明に係るポリオレフィンシート積層体により自動車用部材が構成されているので、一方向だけでなく、他の方向においても機械的強度及び寸法安定性が高められた、しかも合成樹脂のみからなる自動車用部材を提供することができる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の非限定的な実施例を挙げることにより、本発明を明らかにする。
(実施例1)
重量平均分子量3.3×105 、メルトインデックス(MI)=1.0、融点135℃の高密度ポリエチレン(日本ポリケム社製、グレード:HY540)を、同方向二軸混練押出機(池貝鉄鋼社製、品番:PCM30)を用い、樹脂温度約100℃で溶融混練し、ロール温度が90℃に制御されたカレンダ成形機にて、幅70mm×厚さ2.5mmのシートに成形し、巻き取った。しかる後、巻き取られたシートを繰り出し、120℃に加熱された熱ロール(小平製作所製、ロール直径6インチ)を用い、9倍に圧延し、圧延シートを得た。
【0039】
次に、熱風加熱式二段延伸機を用い、一段目の延伸倍率を1.8倍、二段目の延伸倍率を1.6倍とし、合計延伸倍率2.9倍となるようにして上記圧延シートを延伸した。なお、一段目及び二段目の延伸に際しての延伸温度は100℃とした。上記圧延工程及び延伸工程を合わせた総延伸倍率は約26倍であり、延伸後のシートの寸法は、幅35mm×厚さ200μmであり、シートの表面は平滑であった。
【0040】
上記のようにして得られた複数枚の延伸シート18枚を用意した。しかる後、該延伸シートのうち、12枚を第1のポリオレフィン延伸シートとして延伸方向を揃えて積層した。もっとも、該第1のポリオレフィン延伸シートを積層するにあたり、第1のポリオレフィン延伸シート間に、延伸方向が第1のポリオレフィン延伸シートとは直交する方向となるように6枚の第2のポリオレフィン延伸シートを介在させて積層した。なお、第2のポリオレフィン延伸シート6枚は、第1のポリオレフィン延伸シート12枚の間において、厚み方向に均一に分布するように第1のポリオレフィン延伸シート間に配置した。また、第1,第2のポリオレフィン延伸シートからなる上記積層体を得るにあたり、各シート間には、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(厚み30μm)を介在させた。
【0041】
上記のようにして得られた積層体を、プレス加熱温度が125℃に設定されたプレス機を用い、圧力0.5MPaの条件で2分間加熱圧縮し、一体化し、冷却プレスにより常温まで冷却した。このようにして、実施例1のポリオレフィンシート積層体を得た。
【0042】
(実施例2)
高密度ポリエチレン(日本ポリケミ社製、グレード:HY540)100重量部に対し、ベンゾフェノン(日本化薬社製)2重量部を配合し、これを原料として、実施例1と同様にして延伸シートを作成した。
【0043】
さらに、延伸シートに対し、出力120W/cmの高圧水銀灯を用い、延伸シートとの距離を50mmに保ち、紫外線を1秒間照射し、延伸シートを架橋した。架橋度については、120℃のキシレン中に架橋後の延伸シートサンプルを24時間溶解し、非溶解分の溶解処理前のサンプルに対する重量百分率(ゲル分率)を測定し、評価した。架橋度は、約60%であった。
【0044】
上記のようにして得た架橋処理された延伸シートを用いたことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィンシート積層体を得た。
【0045】
(実施例3)
第1,第2のポリオレフィン延伸シートの積層方向を下記の表1に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にしてポリオレフィンシート積層体を得た。
【0046】
(比較例1)
全てのポリオレフィン延伸シートを延伸方向を一致させて18枚積層させたこと以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィンシート積層体を得た。
【0047】
(比較例2)
総延伸倍率が15倍となるようにしてポリオレフィン延伸シートを得たことを除いては、比較例1と同様にしてポリオレフィンシート積層体を得た。
【0048】
(比較例3)
従来品として、市販のガラス繊維強化ポリオレフィン複合体(スタンパブルシート)を用意した。このスタンパブルシートは、ガラス繊維含有率が50重量%であり、一方向強化タイプ、宇部日東化成社製、商品名:AZDEL。
【0049】
【表1】
【0050】
(実施例及び比較例の評価)
実施例及び比較例で得たポリオレフィンシート積層体について、(1) 曲弾性率及び曲強度の測定、(2) 線膨張率の測定、並びに(3) 衝撃吸収値の測定を行った。結果を下記の表2に示す。
【0051】
(1) 曲弾性率及び曲強度の測定…JIS K7113に準じ、主積層方向すなわち第1のポリオレフィン延伸シートの延伸方向に沿う方向のポリオレフィン積層体の曲弾性率及び曲強度を測定した。
【0052】
(2) 線膨張率の測定…熱応力歪み測定装置(TMA)を用い、0〜90℃まで昇温速度2℃/分の条件で各実施例及び比較例で用意したポリオレフィン延伸シートについて4回繰り返し測定し、0〜90℃までの線膨張率の平均値を求めた。
【0053】
(3) 衝撃吸収値の測定…島津製作所製、高速衝撃試験機、品番:HTM−1を用い、試験速度3m/分の条件で、JIS K7084に準じ、23℃で衝撃吸収値を測定した。
【0054】
【表2】
【0055】
なお、表2において、比較例2では、線膨張率の値が示されていない。これは、比較例2では、シートの線膨張率の値のばらつきが非常に大きいため、測定不能としたものである。
【0056】
表2から明らかなように、積層方向を揃えてポリオレフィンシート積層体を構成した比較例1に対してこれに対応する実施例1〜3では、第1のポリオレフィン延伸シートの延伸方向における曲弾性率及び曲強度がさほど変わらないが、衝撃吸収値が著しく高められている。
【0057】
これは、実施例1〜3では、第1のポリオレフィン延伸シートと直交する方向、あるいは、さらに45°方向の角度をなして交差する方向に第2のポリオレフィン延伸シートが積層されているため、第1のポリオレフィン延伸シートの延伸方向以外の強度が高められ、それによって衝撃吸収値が高められたものと考えられる。
【0058】
また、延伸倍率を低下させた比較例2に比べて、それぞれ,実施例1〜3においては、
第1のポリオレフィン延伸シートの延伸方向に沿う曲弾性率及び曲強度が十分に高く、衝撃吸収値がさらに大きいことがわかる。
また、実施例1〜3では、従来品である比較例3に比べて、衝撃吸収値が大きく高められている。
【0059】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明に係るポリオレフィンシート積層体では、ポリオレフィンからなる原反シートを圧延して得られた圧延シートを延伸してなり且つ上記原反シートの圧延倍率と上記圧延シートの延伸倍率との積である総延伸倍率が20〜40倍のポリオレフィン延伸シートを5〜100枚積層し、一体化してなる剛性を有するポリオレフィンシート積層体であって、延伸方向を揃えて積層された複数枚の第1のポリオレフィン延伸シートと、該第1のポリオレフィン延伸シートとは延伸方向が異なるように積層されている少なくとも1枚の第2のポリオレフィン延伸シートとを含み、ポリオレフィン延伸シートを構成しているポリオレフィンの融点よりも低い融点を有する樹脂フィルムをポリオレフィン延伸シート間に介在させた状態で、ポリオレフィンの融点と樹脂フィルムを構成している樹脂の融点との間の温度で加熱圧縮し、次に冷却することにより一体化させる方法で接合・一体化されているので、剛性を有する積層体が得られ、第1のポリオレフィン延伸シートの延伸方向だけでなく、第2のポリオレフィン延伸シートの延伸方向及び両者の延伸方向の間の方向においても物性が高められる。従って、第1のポリオレフィン延伸シートの延伸方向だけでなく、これらの方向においても強度が高く、かつ熱寸法安定性に優れたポリオレフィンシート積層体を得ることができる。
【0060】
よって、例えば、剛性が要求されるバンパービームなどの長尺状の自動車部材に用いた場合、該長尺状部材の長さ方向だけでなく、長さ方向と交差する方向における機械的強度及び熱寸法安定性が高められる。従って、自動車用部材として適した、しかも合成樹脂のみからなる構造材を提供することができる。
【0061】
本発明に係るポリオレフィンシート積層体は、上記のように合成樹脂のみを用いるものであるため、すなわちガラス繊維等の他の材料を必要としないため、リサイクル性においても優れている。
【0062】
従って、様々な自動車用部材などの剛性を有し、かつ、機械的強度及び熱寸法安定性が強く求められる部材に本発明に係るポリオレフィンシート積層体を好適に用いることができると共に、そのリサイクル使用も容易に行い得る。
Claims (2)
- ポリオレフィンからなる原反シートを圧延して得られた圧延シートを延伸してなり且つ上記原反シートの圧延倍率と上記圧延シートの延伸倍率との積である総延伸倍率が20〜40倍のポリオレフィン延伸シートを5〜100枚積層し、一体化してなる剛性を有するポリオレフィンシート積層体であって、延伸方向を揃えて積層された複数枚の第1のポリオレフィン延伸シートと、該第1のポリオレフィン延伸シートとは延伸方向が異なるように積層されている少なくとも1枚の第2のポリオレフィン延伸シートとを含み、ポリオレフィン延伸シートを構成しているポリオレフィンの融点よりも低い融点を有する樹脂フィルムをポリオレフィン延伸シート間に介在させた状態で、ポリオレフィンの融点と樹脂フィルムを構成している樹脂の融点との間の温度で加熱圧縮し、次に冷却することにより一体化させる方法で接合・一体化されていることを特徴とするポリオレフィンシート積層体。
- 自動車用部材である請求項1に記載のポリオレフィンシート積層体。
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1998
- 1998-05-15 JP JP13399898A patent/JP3942730B2/ja not_active Expired - Lifetime
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