JP3942452B2 - コンクリート先付工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、コンクリート先付工法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、躯体コンクリートの外面からの改質によってコンクリートの耐久性、耐劣化性を向上させることを、簡便な手段によって、優れた作業性で実現することを可能とした、コンクリート改質のための新しい方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
従来より、躯体コンクリートのひび割れに対して止水性を目的として樹脂やセメントを充填することや、躯体コンクリートの塩害、アルカリ骨材反応、中性化等による劣化を抑止するために内外面に樹脂やモルタルセメント層を塗布形成すること等が行われてきている。
【0003】
しかしながら、これら従来の躯体コンクリートの外面補修や劣化防止のための方策は、ひび割れへの充填、内外面への塗布や吹付けのいずれの場合にも物理的対応にとどまっており、躯体コンクリートの組織を改質してその緻密化等によって耐久性、劣化防止性等を高めるという作用効果のないものであった。
【0004】
このような状況において、この出願の発明者らは、無機質成分を主体として水和反応の生成物によってセメント組織もしくはその類似組織を増強させることのできる結晶増殖性の改質材を充填あるいは塗布・吹付けする方法を提案し、既設劣化コンクリート、並びに新設硬化コンクリートのいずれの場合についても、耐久性の向上、劣化防止等の観点において大きな実績をあげてきている。
【0005】
ただ、このような優れた改質材処方ではあるものの、実際の施工現場においては躯体コンクリート外面への塗布・吹付けがその作業として容易でない場合があり、施工において解決すべき課題となっていた。
【0006】
それというのも、たとえば開削トンネル等においては、図3のように、山留壁とその内側に打設した躯体コンクリートとの間に所要の隙間がある場合には、躯体コンクリートの外面に吹付機等によって作業者が前記のような改質材を塗布・吹付けすることが可能であるが、この作業のための隙間がとれない場合には塗布・吹付け作業が困難になることがある。これまでは、このような場合には、地山面に直接、あるいは地山面に配置した鉄枠材等に改質材を塗布・吹付けして躯体コンクリートを打設する等の作業上の工夫によって対応してきているが、地山面から漏出する水によって、有効に作用する前に改質材が流出してしまう等の問題があり、改質材による作用効果を充分に発現させるための対策が望まれていた。
【0007】
地山面からの水の漏出に対しては、従来工法の樹脂やモルタルセメントの充填、塗布による場合にも地山面にビニールシート等の遮水性シートを貼付けることが行われてきているが、このような遮水性シートによる場合には、改質材の塗布吹付けにおいては改質材をシート面に保持することが難しく、改質材の作用が充分なものになりにくいという問題がある。
【0008】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来の問題点を解消し、躯体コンクリートの改質を行うための塗布・吹付け作業が地山面と躯体コンクリートとの間のスペースの制約によって難しい場合にも、改質材による作用効果を充分に発現させ、しかもこのことが簡便な手段と方法によって可能とされる、新しい方策を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、地山面に外面が対向する躯体コンクリートの打設に先行して、遮水性面部と不織布または多孔質材から構成されている保水性面部とからなる先付シートを、その遮水性面部側を地山面に先付し、保水性面部側にセメントの組織緻密化と結晶増殖化を向上するコンクリート改質材を塗布または吹付けを行ない、その後、躯体コンクリートを打設することを特徴とするコンクリート先付工法を提供する。
【0010】
この出願の発明は、第2には、地山面に外面が対向する躯体コンクリートの打設に先行して、遮水性シートと不織布または多孔質シートから構成されている保水性シートとからなる先付シートの遮水性シート面を地山面に先付し、保水性シート面にセメント組織を緻密化するコンクリート改質材を塗布または吹付けを行ない、その後、躯体コンクリートを打設することを特徴とするコンクリート先付工法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0013】
この出願の発明においては、躯体コンクリートの打設に先行したシート先付することを特徴としているが、この場合の先付については前記のとおりの2種の工法のいずれによって実施可能とされている。すなわち
<A> 遮水性面部と保水性面部を有する先付シートを、その遮水性面部側において地山面に先付し、次いで保水性面部側にコンクリート改質材を塗布もしくは吹付けする。
【0014】
<B> 遮水性シートおよび保水性シートを地山面に順次に先付し、次いで保水性シート側にコンクリート改質材を塗布もしくは吹付けする。
【0015】
上記工法<A>の場合には、たとえば図1<A>のように、単一のシート状体(1)を、遮水性面部(11)と保水性面部(12)とによって構成し、これを先付シートとして用いている。また、工法<B>の場合には、各々別体の遮水性シート(21)と保水性シート(22)とを用いる。いずれの場合においても、地上面(3)、すなわち、たとえば枠体等によって水留した面に対して、遮水性面部(11)あるいは遮水性シート(21)を配設して、地山面からの漏水が躯体コンクリート側に流入するのを遮断防止し、保水性面部(12)あるいは保水性シート(22)に対して改質材(4)を塗布もしくは吹付けし、塗布もしくは吹付けされた改質材(4)を保持する。
【0016】
このようにしてコンクリート改質材が保持された後に、躯体コンクリート(5)を打設する。躯体コンクリート(5)の外面にはコンクリート改質材(4)が塗布・吹付けされた状態になる。これによって、コンクリート改質材(4)が充分に作用し、打設コンクリートの耐久性、耐劣化性能を高めることになる。
【0017】
シート状体(1)の遮水性面部(11)や遮水性シート(21)は、各種の樹脂シートによって構成してよく、また保水性面部(12)や保水性シート(22)は、たとえば合成繊維や天然繊維の不織布、あるいは多孔質樹脂シート等によって構成することができる。さらには、単一のシート状体(1)については、その片面が遮水性で、他方の面が保水性を有するように、一枚のシート材を表面処理したものであってもよい。また、単一のシート状体(1)については、遮水性シート(フィルム)材料と、保水性シート材料とを接着剤を用いて、あるいは熱融着等によって接着して構成することもできる。表面処理を組合わせてもよいことは言うまでもない。
【0018】
塗布・吹付けされるコンクリート改質材(4)については、従来のように物理的に充填したり、塗膜形成するだけの樹脂やモルタルセメント以外のものであって、躯体コンクリートのセメント組織との親和性や相互作用によって、セメント組織そのものを改質することで耐久性や耐劣化性を向上させることのできる各種のものが使用されてよい。たとえば緻密化して改質するものなどが使用されてよい。
【0019】
そして、これらの各種のコンクリート改質材(4)については、保水性面部(12)、あるいは保水性シート(22)に保持可能とされる必要がある。この保持のためには、たとえばコンクリート改質材(4)は、粘調質であるか、湿潤されたものであるか等の付着性を有していることが望ましい。
【0020】
以上のようなコンクリート改質材(4)については、たとえばこの出願の発明者らによって実現され、かつ実際にも市販され、使用されている無機質セメント結晶増殖剤としてのザイペックス(XYPEX:商標)材を例示することができる。このような結晶増殖性の改質材においては、高粘調物、あるいは微粉末として、吹付け等により保水性面部(12)や保水性シート(22)に塗布・吹付けし、次いで、たとえば水和反応のための水を散布した後に、躯体コンクリート(5)を打設することが考慮される。
【0021】
【発明の効果】
以上のような、この出願の発明によって、たとえば図2に開削トンネルの場合を例示したように、柱列式壁(SMW)山留めした地山面に対して型枠側からこの発明のシート状体(1)を先付し、シート状態(1)の保水性面部(12)としての不織布部にコンクリート改質材(4)を吹付け塗布した(先付工法)後に、躯体コンクリート(5)を打設することができる。
【0022】
実際、この出願の発明によって、これまでは難しかった地山面と躯体コンクリートとの間のスペースの制約のある場合でも改質材の塗布・吹付け施工が可能となり、たとえば前記のザイペックス(XYPEX)材によるコンクリートの組織緻密化にともなう、強度向上、止水性の向上、そして劣化防止等のコンクリート改質材の作用効果を充分に発揮させること可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のためのシートの構成例を示した頭である。
【図2】この発明による施工プロセスを例示した図である。
【図3】開削トンネルでの一般的工法を例示した図である。
【符号の説明】
1 ジート状体
11 遮水性面部
12 保水性面部
21 遮水性シート
22 保水性シート
3 地山面
4 コンクリート改質材
5 躯体コンクリート

Claims (2)

  1. 地山面に外面が対向する躯体コンクリートの打設に先行して、遮水性面部と不織布または多孔質材から構成されている保水性面部とからなる先付シートを、その遮水性面部側を地山面に先付し、保水性面部側にセメントの組織緻密化と結晶増殖化を向上するコンクリート改質材を塗布または吹付けを行ない、その後、躯体コンクリートを打設することを特徴とするコンクリート先付工法。
  2. 地山面に外面が対向する躯体コンクリートの打設に先行して、遮水性シートと不織布または多孔質シートから構成されている保水性シートとからなる先付シートの遮水性シート面を地山面に先付し、保水性シート面にセメント組織を緻密化するコンクリート改質材を塗布または吹付けを行ない、その後、躯体コンクリートを打設することを特徴とするコンクリート先付工法。
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