JP3942212B2 - TGF−βファミリーの情報伝達系を担う新規キナーゼ - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、TGF−βファミリーの情報伝達系を担う、トランスフォーミング成長因子−βによって活性化されるキナーゼ(Transforming growth factor- β activated kinase ;TAK1) 、及びその製造方法、並びにそれをコードする遺伝子に関する。TAK1は、MAPKキナーゼのアクチベーター(Activator of MAPK Kinase;AMK-1)とも称され、TGF−βおよびBMP(bone morphogenetic protein)により活性化され且つMAPKキナーゼをリン酸化して活性化する酵素である。
【0002】
【従来の技術】
TGF−βスーパーファミリーの受容体は細胞質内領域にSer/Thrキナーゼを含み、その膜貫通ドメインに近いアミノ末端側にGly,Serの繰り返し配列(GS box)を有するI型、及びGS boxを有しないII型に分類される。TGF−βの場合、リガンドがII型受容体に結合した後にI型受容体との複合体を形成し、構成的にリン酸化されているII型受容体のキナーゼがI型受容体のGS box付近をリン酸化し、これによってI型受容体が活性化されることにより前記リガンドからのシグナルが細胞内に伝達されると考えられている。しかしながら、この受容体より下流の伝達分子についてはほとんど知られていない。
【0003】
真核生物である出芽酵母サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)においては、細胞外からの接合フェロモン(Mating pheromone) により接合が生ずるまでの情報伝達カスケードとして、接合フェロモンによりGプロテインが活性化され、GプロテインがMAPKKキナーゼ(MAPKKK)(Ste11)を活性化し、活性化されたMAPKKKがMAPKキナーゼ(MAPKK)をリン酸化して活性化し、次にこうして活性化されたMAPKK(Ste7)がMAPキナーゼ(マイトジェン−活性化プロテインキナーゼ;mitogen-activated protein kinase;MAPK) をリン酸化して活性化し、最後にMAPKがFUS1蛋白質を活性化して細胞の接合が開始されることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、哺乳類のTGF−βの受容体のシグナル伝達系において、受容体よりも下流に位置し、該シグナルの伝達に関与する新規な因子、それをコードする遺伝子、及び当該因子の製造方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、上記接合フェロモンの情報伝達カスケードにおけるMAPKKK(Ste11)の活性が欠損した酵母サッカロミセス・セレビシエーにマウス由来のcDNAを挿入し、活性が欠損したMAPKKKを補完できるcDNAについてスクリーニングし、活性が欠損したMAPKKKを補完し得るcDNAをクローニングすることに成功し、本発明を完成した。
【0006】
従って本発明は、配列番号:1に示す23位のSer から579 位のSer までのアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列に対して1〜少数個のアミノ酸配列の付加、除去及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を含んで成る、トランスフォ−ミング成長因子(TGF)−βによって活性化されるキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを提供する。その1つの態様によれば、前記DNAは配列番号:1に示す223 位のT から1893位のA までのヌクレオチド配列を有する。
【0007】
また、本発明は、配列番号:1に示す1位のMet から579 位のSer までのアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列に対して1〜少数個のアミノ酸配列の付加、除去及び又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を含んで成る、トランスフォ−ミング成長因子(TGF)−βによって活性化されるキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを提供する。その1つの態様によれば、前記DNAは配列番号:1に示す157 位のA から1893位のA までのヌクレオチド配列を有する。
【0008】
また、本発明は、配列番号:1に示すヌクレオチド配列に対して80%以上の相同性を有し、且つTGF−βによって活性化されるキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを提供する。本発明はさらに、配列番号:1に示すヌクレオチド配列と、60℃、0.1 ×SSC 、0.1 %SDS (sodium dodecyl sulfate)の条件下にハイブリダイズすることができ且つTGF−βによって活性化されるキナーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNAを提供する。
【0009】
本発明は更に、配列番号:5に示す23位のSer から579 位のSer までのアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列に対して1〜少数個のアミノ酸配列の付加、除去及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を含んで成る、トランスフォ−ミング成長因子(TGF)−βによって活性化されるキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを提供する。その1つの態様によれば、前記DNAは配列番号:5に示す249 位のT から1919位のA までのヌクレオチド配列を有する。
【0010】
また、本発明は、配列番号:5に示す1位のMet から579 位のSer までのアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列に対して1〜少数個のアミノ酸配列の付加、除去及び又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を含んで成る、トランスフォ−ミング成長因子(TGF)−βによって活性化されるキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを提供する。その1つの態様によれば、前記DNAは配列番号:5に示す183 位のA から1919位のA までのヌクレオチド配列を有する。
【0011】
また、本発明は、配列番号:5に示すヌクレオチド配列に対して80%以上の相同性を有し、且つTGF−βによって活性化されるキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAを提供する。本発明はさらに、配列番号:5に示すヌクレオチド配列と、60℃、0.1 ×SSC 、0.1 %SDS (sodium dodecyl sulfate)の条件下にハイブリダイズすることができ且つTGF−βによって活性化されるキナーゼの活性を有するポリペプチドをコードするDNAを提供する。
また、本発明は、配列番号1に示す23位のMet から579 位のSer までのアミノ酸配列を含んでなる、TGF−βによって活性化されるキナーゼ活性を有するポリペプチドおよび配列番号5に示す23位のMet から579 位のSer までのアミノ酸配列を含んでなる、TGF−βによって活性化されるキナーゼ活性を有するポリペプチドを提供する。
【0012】
本発明はまた、前記いずれかのDNAを含んで成るベクターにより形質転換された宿主細胞を培養し、培養物から発現生成物を採取することを特徴とする、TGF−βによって活性化されるキナーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法を提供する。本発明はまた、この方法により製造される、TGF−βによって活性化されるキナーゼ活性を有するポリペプチドを提供する。このポリペプチドは、配列番号:1の23位のSer から579 位のSer までのアミノ酸配列、又は配列番号:5に示す23位のSer から579 位のSer までのアミノ酸配列を有するものと予想される。従って本発明は、かかるアミノ酸配列を有するTGF−βによって活性化されるキナーゼ酵素を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、目的とする遺伝子のクローニングに際しては、例えば、MAPKKKの活性を欠損しており且つカスケードの末端に容易に検出可能なリポーター遺伝子を有する酵母に哺乳類のcDNAを含む発現ベクターを導入し、欠損したMAPKKK活性を補完するcDNAが挿入されたか否かを、リポーター遺伝子の発現により検出すればよい。さらに、例えば、高浸透圧シグナル伝達系のもとで機能する、Ssk2/Ssk22及びShol活性を欠く他の酵母を使用することもできる。
【0014】
この様な検出系として、サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)中の、接合フェロモン(Mating pheromone) の情報を伝達するMAPK経路(I.Herskowitz, Cell, Vol.80, 187 (1995);D.E.Lein et., Curr.Opin.Cell Biol. Vol.7, 197 (1995);J.Schulz et al., Curr.Opin.Gene Dev., Vol.5, 31 (1995)) を用いることができる。この系における正常な情報伝達カスケードはSte11キナーゼ、Ste7キナーゼ、及びFus3/Kss1キナーゼから成り、これらはそれぞれMAPKKK,MAPKK及びMAPKに相当する。Ste11,Ste7、及びFus3/Kss1は逐次的に作用してシグナルを転写因子Ste12に伝達し、このSte12はFUS1のごとき接合特異的(mating specific) 遺伝子の転写を活性化する。
【0015】
cDNAのスクリーニングに際しては、上記のカスケード中Ste7の機能的変異(STE7P368)及びSte11の欠損変異(Ste11Δ)を含むカスケードを用いることができ(K.Irie et al., Science Vol.265, 1716 (1994))、この系においては、接合経路に対応するリポーター遺伝子FUS1p::HIS3により付与されるヒスチジン表現型(His)によりモニターする場合、哺乳類Raf又はMEKKの活性化形(それぞれRafΔN又はMEKKΔN)がSte7P368依存的にSte11活性の欠損を代替することができることが確認されている。従って、上記の変異したカスケードを有する酵母に被験cDNAを導入して、ヒスチジン表現型を検出することによりSte11Δ(MAKKK欠損)を補完することができるcDNAを選択することができる。
【0016】
被験cDNAライブラリーとしては、任意の哺乳動物由来のcDNAライブラリーを用いることができるが、一例として、マウスの細胞系、例えばマウス細胞系BAF−BO3からのcDNA発現ライブラリーを用いることができる。このcDNAライブラリーは、マウスIL−3依存性pro−β細胞系であるBAF−BO3からpoly(A)−RNAに対するcDNAを、酵母発現ベクターpNV11のTDH3プロモーターの制御下にクローニングすることにより得られる。使用される被験cDNAライブラリーの他の例は、ヒト細胞系、例えばヒト細胞系JurkatからのcDNA発現ライブラリーである。
【0017】
上記のcDNAライブラリーを前記のスクリーニング系によりスクリーニングすることにより1個の陽性クローンを得た。このクローンのcDNAの塩基配列及びそれによりコードされるアミノ酸配列は、配列番号:1のヌクレオチド番号223 〜1893、及びアミノ酸番号23〜579 に相対する。
ヒト細胞系からのcDNAライブラリーは上記のスクリーニング系に従ってスクリーニングすることができる。あるいは、ヒト細胞系からのcDNAライブラリーは、前記のようにして得られたマウスcDNAをプローブとして使用してスクリーニングすることができる。
他の陽性クローンのcDNA及びそれによりコードされるアミノ酸配列は配列番号:5に示すヌクレオチド249 −1919及びアミノ酸23−579 に相当する。
【0018】
さらに長いcDNA(全長cDNA)を得るため、前記のcDNAをプローブとして用いて、上記のcDNAライブラリーをスクリーニングし、複数の陽性クローンを得た。これらのクローンは、前記のcDNAに対して、約230bpの5′−延長部分を有していた。この5′−末端延長部分を有するcDNAをTAK1 cDNAと称し、この5′−末端延長部分を有しない最初にクローニングしたcDNAをTAK1ΔN cDNAと称する。TAK1 cDNAのヌクレオチド配列を配列番号:1の1 〜2443に示し、それによりコードされているアミノ酸配列を配列番号:1のアミノ酸番号:1〜579に示す。このアミノ酸配列により示されるタンパク質又はポリペプチドをTAK1タンパク質又はポリペプチドと称する。これに対して、TAK1ΔN cDNAによりコードされているアミノ酸配列により示されるタンパク質又はポリペプチドをTAK1ΔNタンパク質又はポリペプチドと称する。さらに、ヒトTAK1 cDNAのヌクレオチド配列は配列番号:5のヌクレオチド1−2656により示され、そしてそれによりコードされるアミノ酸配列は配列番号:5のアミノ酸1−579 により示される。
【0019】
TAK1タンパク質の1次アミノ酸配列から、この蛋白質はN−末端側のプロテインキナーゼ触媒ドメインと約300アミノ酸残基のC−末端ドメインを有することが示唆される。この触媒ドメインはプロテインキナーゼ・サブドメインI〜XI(S.K.Hanks et al., Science 241, 42 (1988)) に対応するコンセンサス配列を含有する。この触媒ドメインはRaf−1(T.I.Bonner et al., Nucleic Acids Res. Vol.14, 1009 (1986)) 及びMEKK(C.A.Langer-Carter et al., Science Vol.260, 315 (1993)) の触媒ドメインのアミノ酸配列と約30%の同一性を有する。前記触媒ドメインに続くC−末端の300アミノ酸残基の配列は他のタンパク質との顕著な相同性を有しない。
【0020】
N−末端の22個のアミノ酸のコドンを欠くTAK1ΔN cDNAをste11Δ変異を有する酵母に導入すればste11Δ変異(MAPKKK欠損)を補完するが、全長のTAK1 cDNAをste11Δ変異株に導入した場合ste11Δ変異を補完しない。従って、TAK1キナーゼはN−末端の22個のアミノ酸の除去により活性化されると考えられる。
【0021】
従って本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列中の1位のMet から579 位のSer までのアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドをコードするDNAを提供する。このDNAには、典型的な例として、23位のアミノ酸Ser から579 位のアミノ酸Ser までのアミノ酸配列から成るポリペプチドをコードするDNA、及び30位のアミノ酸Glu から295 位のアミノ酸Asp までのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNAが含まれる。しかしながら、本発明のDNAは、上記のものに限られるものではなく、1位のMet 〜30位のGlu の間のいずれかのアミノ酸から295 位のアミノ酸Asp までのアミノ酸配列から成るポリペプチドをコードするDNAをも包含する。
【0022】
延長されたN−末端を有するポリペプチドをコードするDNAであっても、発現後のポリペプチドのプロセシングにより活性な酵素を得ることができ、またC 末端のキナーゼ以外の領域を欠いていても同様のキナーゼ活性を有すると容易に想像できるからである。
さらに、本発明は、配列番号:5に示す23位のSer から579 位のSer までのアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドをコードするDNAを提供する。このDNAは、典型的な例として、配列番号:5に示す1位のMet から579 位のSer までのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA及び23位のSer から579 位のSer までのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAを包含する。
【0023】
本発明はまた、上記の種々のアミノ酸配列を有するポリペプチドの修飾体であって、なおTGF−βによって活性化されるキナーゼ活性(TAK1活性と称する)を保持しているポリペプチドをコードするDNAをも包含する。この修飾は、配列番号:1又は配列番号:5に示すアミノ酸配列中の上記種々の長さのアミノ酸配列に対して1〜少数個、例えば約1〜10個、又は約1〜5個のアミノ酸の付加、除去、及び/又は他のアミノ酸による置換を意味する。より一般的には、本発明は、配列番号:1又は配列番号:5に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、TAK1活性を保持しているポリペプチドをコードするDNAを包含する。
【0024】
本発明はまた、配列番号:1又は配列番号:5に示すヌクレオチド配列と例えば60℃、0.1 ×SSC 、0.1 %SDS の条件下でハイブリダイズすることができ、且つTAK1活性を保持しているポリペプチドをコードしているDNAをも包含する。ここで、0.1 ×SSC は、3MNaClおよび0.3Mクエン酸ナトリウムからなる20×SSC を200 倍に希釈して使用することができる。
【0025】
本発明はさらに、上記種々のDNAのヌクレオチド配列に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチド又はタンパク質、特にTAK1活性を保持しているポリペプチド又はタンパク質を提供する。より具体的な例として、本発明は、上記種々のDNAを、例えばベクター、特に発現ベクターに挿入した状態で宿主細胞、例えば動物細胞又は微生物細胞に導入して発現されるポリペプチド又はタンパク質、特にTAK1活性を有するポリペプチド又はタンパク質に関する。
【0026】
典型的には、本発明のポリペプチド又はタンパク質は、配列番号:1又は配列番号:5に示すアミノ酸配列中の1位のMet (これを含む)〜23位のSer (これを含む)の間のいずれかのアミノ酸から579 位のアミノ酸Ser までのアミノ酸配列を有する。
本発明はさらに、上記のアミノ酸配列に対して1〜少数個、例えば1〜10個、又は1〜5個のアミノ酸残基の付加、除去及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチド又はタンパク質を包含する。これらは好ましくはTAK1活性を有する。本発明はまた、配列番号:1又は配列番号:5に示すアミノ酸配列の全部又は一部分に対して80%以上、好ましくは90%以上、そしてさらに好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し且つTAK1活性を保持しているポリペプチド又はタンパク質に関する。
【0027】
前記のごとく、ヒトTAK1をコードするcDNAはマウスTAK1をコードするcDNAを用いて得ることができ、そして実施例5及び6は、ヒトTAK1をコードするcDNAの単離を示す。
前記種々の本発明のDNAは、例えば実施例2に記載する方法により動物細胞から、例えばcDNAとしてクローニングすることができる。生来のcDNAに対して変異又は修飾されたDNAは、例えば生来のcDNAを鋳型として、PCR増幅、部位特異的変異誘発、等の常用手段により調製することができる。
【0028】
本発明のポリペプチド又はタンパク質は、対応するDNAを適当な宿主中で発現させることにより得られる。この場合、宿主としては、真核細胞、例えばヒト、サル、マウス、ハムスター、カエル等の高等真核生物の培養細胞、例えば、THP-1 細胞、MC3T3-E1細胞、XTC 細胞、Mv1Lu 細胞、CHO 細胞、COS 細胞、等;下等真核細胞、例えば、糸状菌、例えばアスペルギルス(Aspergillus )属糸状菌、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger );あるいは酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces )属酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)等が使用される。さらに宿主としては、原核細胞、例えば細菌、例えば大腸菌(Escherichia coli)等が使用される。
【0029】
これらの宿主において目的DNAの発現を行う場合、宿主に応じて適当なプロモーター等の発現制御配列が使用される。例えば動物細胞内での発現においてはpCDM8 、pSV 、pEF 等の各プロモーターを有するプラスミドが使用され、酵母宿主においては、例えばpNV11 等のプラスミドが使用され、大腸菌においては例えばpGEMEX、pUEX等のプラスミドが使用される。
【0030】
形質転換された宿主の培養は常法により行われることができる。培養物からのポリペプチド又はタンパク質の回収・精製は、酵素の精製のために常用されている方法、例えば、遠心分離、濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティー・クロマトグラフィー等により行うことができる。
本発明のTGF−βファミリーの情報伝達系を担うキナーゼであるTGF−βによって活性化されるキナ−ゼは、多くの疾患に係わっていることが知られているTGF−βおよびそのスーパーファミリーのシグナル伝達を抑制または促進する薬剤の検索に使用することにおいて有用である。
【0031】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
実施例1.cDNAライブラリーの作製
マウスIL−3依存性細胞系BAF−BO3からのpoly(A)−RNAから常法に従ってcDNAを合成し、これを図1に示す酵母発現ベクターpNV11(Ninomiya-Tsuji, J.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 9006-9010 (1991) )に、TDH3プロモーターの制御の下に挿入してcDNAライブラリーを作製した。
【0032】
実施例2.cDNAライブラリーのスクリーニング
実施例1において調製したcDNAライブラリーを、サッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)SY1984−P(his3Δ,ste11Δ,FUS1p::HIS3,STE7P368)を用いてスクリーニングした。この酵母では、接合フェロモンの情報伝達系において、Ste11が変異してその活性が欠損しており、Ste−7の368位のセリンがプロリンにより置換されており、さらにFUS1上流活性化配列がHIS3オープンリーディングフレームに連結されてレポーター遺伝子を形成している。この酵母株は生来のhis3を欠失しており、従って、培地中に外来のヒスチジンが存在する場合、又は変異により欠損したSte11活性が補完された場合にのみ増殖し得る。
【0033】
S.セレビシエーSY1984−Pを種々のプラスミドにより形質転換した。使用したプラスミドはYCplac22(ベクター)、pRS314PGKMEKKCT(PGK1プロモーターの下流のN−末端ドメインを欠くMEKKΔN(K.J.Blumerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA, Vol.91, 4925 (1994))を発現する) 、及びpADU−RafΔN(ADH1プロモーターからN−末端ドメインを欠くRafΔNを発現する) (K.Irieら、Science Vol.265, 1716 (1994)) である。これらの形質転換体をヒスチジンを欠くSC−Hisプレートに塗布し、そして30℃にてインキュベートした。その結果、YCplac22ベクターにより形質転換された酵母は増殖せず、pRS314PGKMEKKCT又はpADU−RafΔNにより形質転換された酵母は増殖した。これにより、このスクリーニング系は有効であることが確認された。
【0034】
次に、前記スクリーニング系酵母株YS1984−Pを、実施例1において作製したcDNAライブラリーにより形質転換し、SC−Hisプレート上でスクリーニングしたところ、1個の陽性クローンpNV11−HU11が得られた。このクローンのcDNAをTAK1ΔN cDNAと称する。このcDNAのヌクレオチド配列をジデオキシヌクレオチド・チェイン・ターミネーション法により決定した。そのヌクレオチド配列は、配列番号:1中のヌクレオチド223 〜1893の配列に相当し、それによりコードされているアミノ酸配列は配列番号:1のアミノ酸配列中23位のSer 〜579 位のSer に相当する。
【0035】
次に、全長cDNAをクローニングすべく、前記TAK1ΔN cDNAを放射能標識してプローブとして使用し、実施例1において得たcDNAライブラリーをさらにスクリーニングした。こうして、複数のポジティブクローンを得た。このクローンのcDNAをpBSベクター(Stratagene社製)のEcoRI部位にサブクローニングし、pBS−TAK1−5′を得た。このクローンは開始コドンATGを含有する全長クローンであった。このcDNAをTAK1 cDNAと称する。そのヌクレオチド配列を配列番号:1に示す。この配列の内ヌクレオチド番号1〜2443に全長アミノ酸配列である1位のMet 〜579 位のSer がコードされている。
【0036】
実施例3.TAK1遺伝子の組織間分布
マウスの種々の組織から全RNAを抽出し、前記TAK1 cDNAを放射能ラベルしたものをプローブとして用いてノーサンブロッティングを行ったところ、TAK1 cDNAとハイブリダイズするRNAは試験したすべての組織又は器官(脾臓、胸腺、肺、心臓、肝臓及び脳)において発現していた。脾臓、胸腺及び脳には高レベルで存在し、そして肺、心臓及び肝臓には低レベルで存在した。
【0037】
実施例4.TAK1キナーゼの性質
哺乳動物細胞でのTGF−βによって活性化されるキナーゼの機能を調べるため、TAK1cDNA及びTAK1ΔN cDNAを哺乳類発現ベクターpEF(H.Shibuya et al., Nature Vol.357, 700 (1992))に、ヒトエロンゲーションファクター(EF)プロモーターの制御下に挿入し、発現プラスミドpEF−TAK1及びpEF−TAK1ΔNを得た。発現プラスミドpEF−TAK1及びpEF−TAK1ΔNはそれぞれ全長TAK1コード配列及びTAK1ΔNコード配列をEFプロモーターの制御のもとに含有している。
【0038】
すなわち、pNV11−HU11の2.3kbのXhoI断片をpBSのXhoIギャップに挿入してpBS−TAK1ΔNを得た。pEF−MSS1(H.Shibuyaら、Nature Vol.357, 700 (1992)) をEcoRI及びXbaIにより開裂せしめ、そしてこれに、合成EcoRI−XhoIリンカー(センス鎖:5′−AATTCGCCACCATGGC−3′)(配列番号:2);アンチセンス鎖:5′−TCGAGCCATGGTGGCG−3′)(配列番号:3)(開始コドンATGを含有する)、並びにpBS−TAK1ΔNからのXhoI−HindIII 断片及びHindIII −XbaI断片を挿入することによりpEF−TAK1ΔNを作製した。pBSをEcoRI及びXhoIにより開裂せしめ、これにpBS−TAK1−5′からのEcoRI−SacI断片、及びpBS−TAK1ΔNからのSacI−XhoI断片を挿入することにより、TAK1の全長cDNA(TAK1 cDNA)を含有するpBS−TAK1を得た。pEF−MSS1をEcoRI及びSalIにより開裂せしめ、これにpBS−TAK1からのEcoRI−SacI断片を挿入することによりpEF−TAK1を作製した。
【0039】
尚、プラスミドpEF−TAK1を含有する大腸菌はEscherichia coli MC1061/P3(pEF−TAK1)として、そしてプラスミドpEF−TAK1ΔNを含有する大腸菌はEscherichia coli MC1061/P3(pEF−TAK1ΔN)として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に平成7年9月28日、それぞれ、受託番号FEFM−BP−5246およびFERM−BP−5245の下ブダペスト条約に基づき国際寄託された。
【0040】
プラスミドpEF−TAK1に含まれるTAK1遺伝子は適切な制限酵素、例えばEcoRIおよびBamHIを用いて切り出すことができる。
種々のリガンドによる遺伝子発現の誘導に対するTAK1の効果を試験した結果、TAK1はTGF−βによる遺伝子誘導に対して効果を有することが見出された。TGF−βに対する初期細胞性応答はプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)のmRNAレベルの上昇を誘導する(M.R.Keeton et al., J.Biol.Chem. Vol.266, 23048 (1991))。
【0041】
そこで、TGF−β応答に対するTAK1の効果を検討するため、TGF−βにより誘導されるPAI−1プロモーターにより制御されるルシフェラーゼ遺伝子を含有するTGF−βリポータープラスミドp800neoLUC(M.Abe et al., Analyt.Biochem., Vol.216, 276 (1994) )を、Mv1Lu肺上皮細胞に、リン酸カルシウム法(H.Shibuyaら、Nature Vol.357, 700 (1992)により一過性トランスフェクションした。この測定法においては、Mv1Lu肺上皮細胞へのp800neoLUCのトランスフェクションによりTGF−βにより誘導されるルシフェラーゼ活性の測定が可能となる。p800neoLUCにより一過性にトランスフェクトされたMv1Lu細胞は、4〜5倍の増強されたリポーター遺伝子活性をもってTGF−βに応答した。この結果を図2のベクターの欄に示す。
【0042】
前に作製したTAK1又はTAK1ΔN発現プラスミドをp800neoLUCと共にMv1Lu細胞に一過性に同時トランスフェクトした。TAK1の発現によりTGF−β誘導性遺伝子発現がわずかに増強され、そしてTAK1ΔNはPAI−1遺伝子発現を構成的に活性化した(図2のTAK1ΔNの欄)。TAK1ΔNによるリポーター遺伝子の構成的発現のレベルはTGF−βにより処理されたトランスフェクタントにおけるレベルに匹敵する。従って、活性化されたTAK1(すなわちTAK1ΔN)はTGF−βの非存在下でシグナルを伝達することができる。さらに、TAK1ΔNトランスフェクタントにTGF−βを添加した場合PAI−1遺伝子の発現はさらに増加した。
【0043】
なお、図2において、白い棒はTGF−βによる誘導を行わなかった場合を示し、斜線を付した棒はTGF−βによる誘導を行った場合を示す。上記の実験においては、トランスフェクションの後、細胞をヒトTGF−β1(30ng/ml)の存在下又は非存在下で20時間培養し、細胞から抽出液を調製し、そして、 H.Shibuyaら、Mol.Cell.Biol. Vol.14, 5812 (1994)に記載されているようにしてルシフェラーゼ測定を行った。図2のグラフでは、ベクター(TAK1遺伝子
を含有しない)により形質転換された細胞をTGF−β1により誘導しなかった場合のルシフェラーゼ活性を1として、相対活性を示す。棒グラフの結果は、
1実験につき3連の実験結果の平均を示す。
【0044】
上記の効果がTAK1のキナーゼ活性により介在されることを確認するため、触媒的に不活性なTAK1ΔN−K63Wを作製した。これは、PCRを用いて部位特異的変異誘発により行った。このベクターにおいては、ATP−結合部位における63位のリジンがトリプトファンにより置換されている。この変異はTAK1ΔNのキナーゼ活性及びシグナル伝達活性を破壊すると予想される。TAK1ΔN−K63Wをp800neoLUCと共に同時−トランスフェクトすると、PAI−1遺伝子発現を構成的に刺激する能力が失われた(図2)。これらの結果が示唆するところによれば、PA1−1遺伝子のTGF−β非依存的発現のためにはTAK1ΔNのキナーゼ活性が必要である。さらに、キナーゼ・ネガティブTAK1ΔNはTGF−βによる誘導発現の部分的低下を惹起した。これらの結果が示唆するところによれば、TAK1はTGF−β介在シグナル伝達経路のメディエーターとして機能すると考えられる。
【0045】
TAK1がTGF−β介在シグナル伝達経路において機能することの直接的な証拠を得るために、TGF−βによる細胞の処理によってTAK1のキナーゼ活性が活性化されるか否か決定した。適当な外来性基質の同定のため、ヘマグルチニン(HA)エピトープにより標識されたTAK1(TAK1−HA)(抗−HAモノクローナル抗体12CA5により認識されるエピトープをコードするDNA配列をPCRによりTAK1をコードするDNAの3′−末端にフレームを合わせて連結したもの)を発現する酵母細胞から免疫沈降されたTAK1のインビトロ・キナーゼ反応を行った。
【0046】
このイムノコンプレックスキナーゼ測定が示すところによれば、活性形のTAK1のMAPKKのXMEK2/SEK1サブファミリー(Sanchez et al., Nature Vol.372, 794 (1994)) をリン酸化し、そして活性化することができた。他方、もともとのMAPKK−MEK1(E.Nishida et al., Trends Biochem.Sci., 128 (1993);K.J.Blumer et al., ibid Vol.19, 286 (1994);R.J.Davis, ibid Vol.19, 470 (1990);C.L.Marchall, Cell, Vol.80, 179 (1995)) 、ヒストン及びミエリン塩基性タンパク質のリン酸化は検出されなかった。従って、TAK1キナーゼ活性は、インビトロでXMEK2を活性化するその能力について測定することができる。
【0047】
HAエピトープ−標識化TAK1(HA−TAK1)の発現用構成物を次の様にして作製した。モノクローナル抗体12CA5により認識されるHAエピトープ Tyr-Pro-Tyr-Asp-Val-Pro-Asp-Tyr-Ala(配列番号:4)をコードする合成オリゴヌクレオチドをpBS−TAK1のSalI部位(ATGコドンから+3位)及びEcoRI部位にクローニングしてpBS−HA−TAK1を作製した。pEF−MSS1をEcoRI及びSalIにより開裂せしめ、そしてそれにpBS−HA−TAK1からのEcoRI−XhoI断片を挿入することによりpEF−HA−TAK1を作製した。
【0048】
pBS−HA−TAK1ΔNを作製するため、pNV11−HU11をXhoI及びHindIII により消化した。この断片を単離し、そしてpBS−HA−TAK1のHincII−HindIII 部位に挿入した。pEF−MSS1をEcoRI及びSalIで開裂せしめ、そしてそれにpBS−HA−TAK1ΔHからのPstI−XhoI断片を挿入することによりpEF−HA−TAK1ΔNを作製した。これら両構成物はEFプロモーターから発現されるN−末端HAエピトープの2つのコピーを有する。
【0049】
これらの構成物pEF−HA−TAK1又はpEF−HA−TAK1ΔHをMC3T3−E1マウス骨芽細胞(S.Ohtaら、FEBS Lett. Vol.314, 356 (1992)) に一過性にトランスフェクトした。TGF−β1による刺激の後、発現されたHA−TAK1を免疫沈降により単離し、そしてその活性をカップル・キナーゼ測定(coupled kinase assay) (S.Matsudaら、J.Biol.Chem. Vol.270, 12969 (1995)) により測定した。
【0050】
すなわち、トランスフェクトされた細胞をTGF−β1(20ng/ml)又はBMP−4(100ng/ml)により0分間(未処理)〜30分間処理した。細胞を緩衝液中にかきとり(S.Matsudaら、J.Biol.Chem. Vol.270, 12781 (1995); T.Moriguchiら、J.Biol.Chem. Vol.270, 12969 (1995)) 、そして細胞抽出液を15,000×gにて10分間遠心分離した。得られた上清を抗HA抗体による免疫沈降にかけた。すなわち、前記上清の300μlのアリコートを20μlの抗体及び20μlのプロテインAセファロースと混合し、そしてイムノコンプレックスをPBSで2回洗浄し、そしてこれを用いてキナーゼ測定を行った(S.Matsudaら、J.Biol.Chem. Vol.270, 12781 (1995); T.Moriguchiら、J.Biol.Chem. Vol.270, 12969 (1995)) 。
【0051】
活性は刺激されていない細胞からのHA−TAK1の活性に対する増加倍数として示す。免疫沈降したTAK1の活性は、組換えXMEK2/SEK1を活性化するその能力により測定した。なお、XMEK2/SEK1の活性は、組換えキナーゼ・ネガティブ(KN)p38/MPK2をリン酸化する能力により測定した(S.Matsudaら、J.Biol.Chem. Vol.270, 12781 (1995); T.Moriguchiら、J.Biol.Chem. Vol.270, 12969 (1995)) 。HA−TAK1がKN−p38/MPK2を直接リン酸化しないことは確認されている。なお、各免疫沈降の抗−HA−抗体によるイムノブロッティングによれば、各時点での免疫沈降においてほとんど同量のHA−TAK1が回収された。
【0052】
上記の実験の結果、TAK1キナーゼ活性はTGF−βによる刺激の後5分間以内に増加しはじめ、10分後にピークに達し、そして30分以内にほとんどベースラインにもどった(図3)。さらに、TGF−β1はTAK1キナーゼ活性を投与量依存的に刺激した(図4)。次に、TAK1がTGF−βスーパーファミリーの1員であるBMP(A.H.Reddiら、Curr.Opin.Genet.Dev. Vol.4, 737 (1994))、又は上皮成長因子(EGF)により活性化されるか否かを調べた。興味あることには、BMP−4もまたTAK1キナーゼを時間−及び用量−依存的に活性化した(図4)。
【0053】
他方、EGFにより処理された細胞においてはTAK1の活性化は観察されなかった。EGFがTAK1の活性化を誘導しないのはMC3T3−E1細胞がEGFに応答しないためではなく、EGFのシグナルがTAK1を介在していないためであると考えられる。それはEGFはMC3T3−E1細胞中でfosの発現を誘導することからもわかる。これらのデータが相俟って、TAK1がTGF−βスーパーファミリーにより活性化されることを示している。
【0054】
TAK1ΔNはTGF−β非依存的にPAI−1遺伝子の発現を活性化することができ(図2)、このことは、細胞のTGF−β処理が無くてもTAK1ΔNタンパク質が上昇したキナーゼ活性を有することを示唆している。この可能性を試験するため、HAエピトープで標識されたTAK1ΔN(HA−TAK1ΔN)(前記)をMC3T3−E1細胞に一過性にトランスフェクトし、そしてTAK1ΔNの活性をイムノコンプレックスキナーゼ測定により測定した。すなわち、MC3T3−E1細胞をpEF−HA−TAK1ΔNによりトランスフェクトし、トランスフェクトされた細胞からHA−TAK1ΔNを前記のようにして免疫沈降せしめ、そしてその活性を測定した。
【0055】
すべてのデータを、刺激されていない細胞からのHA−TAK1の活性に対する増加倍率により示す。
図4に示す通り、TAK1ΔN蛋白質はより高いベース・キナーゼ活性を示し、N−末端の22アミノ酸残基を欠くTAK1ΔNは構成的に (constitutively) 活性であるとする仮説を支持している。
【0056】
実施例5.cDNAライブラリーの作製
ヒトT細胞株Jurkat細胞からpoly(A)RNAを調製し、常法に従ってcDNAを合成した。これを酵母の発現ベクターpNV7(Ninomiya-Tsuji, J., ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88, 9006-9010(1991)) のTDH3プロモーターの下流に挿入してcDNAライブラリーを作製した。
【0057】
実施例6.cDNAライブラリーのスクリーニング
サッカロマイセス・セレビジエー(Saccharomyces cerevisiae)の高浸透圧ストレスの情報伝達系で働く、Ssk2/Ssk22、およびSholの活性を欠損させた変異株は、YEPD培地(Yeast extract(10g/l)、tryptone(20g/l)、glucose(20g/l))では増殖できるが、この培地に1Mソルビトールを添加した培地中では増殖できない(T.Maeda,ら、Science, 269, 554(1995))。従って、この変異株にcDNAを導入してスクリーニングを行うことにより、欠損したSsk2/Ssk22活性を補完できるcDNAが単離できる。
【0058】
実際に、上述の文献に記載されているSsk2/Ssk22、およびSholの活性を欠損させたサッカロマイセス・セレビジエー株(ssk2Δ,ssk2Δ,sholΔ)を実施例2で得たpNV11−HU11(マウスTAK1ΔN)により形質転換した。この形質転換体を1Mソルビトールを含むYEPDプレートに塗布し、30℃にてインキュベートした。その結果、pNV11−HU11により形質転換された酵母は高浸透圧ストレス下でも増殖した。これにより、このスクリーニング系は有効であることが確認された。
【0059】
そこで、このサッカロマイセス・セレビジエー株(ssk2Δ,ssk2Δ,sholΔ)を、実施例5において作製したcDNAライブラリーにより形質転換し、高浸透圧ストレス下でスクリーニングを行った(1Mソルビトールを含むYEPD培地中、30℃にてインキュベートした。)。その結果、1個の陽性クローンpNV7−hTAK1が得られた。このクローンに含まれるcDNAを、PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing キット(Perkin Elmer製)により増幅し、その塩基配列を決定した。その塩基配列及びその対応アミノ酸配列は配列番号:5に示す通りであった。このcDNAの塩基配列はマウスTAK1の塩基配列と92%の相同性を示し、それによりコードされるアミノ酸配列はマウスTAK1のアミノ酸配列と99%の相同性を示した。マウスTAK1とヒトTAK1の塩基配列の対比を図5〜図9に示し、これらのアミノ酸配列の対比を図10及び図11に示す。
ヒトTAK1 cDNAを、Sal1で消化したpUC19にサブクローニングして、ヒトTAK1の全長cDNAを含有するプラスミドphTAK1を得た。このプラスミドphTAK1を含有する大腸菌は、Escherichia coli JM109(phTAK1)と称し、工業技術院生命工学工業技術研究所に、FERM BP−5598として、1996年7月19日に、ブダペスト条約に基き国際寄託された。
【0060】
微生物の寄託
以下の微生物を、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)の特許微生物寄託センターに寄託し、以下の受託番号を得た。
菌名:大腸菌(Escherichia coli) MC1061/P3(pEF−TAK1)
寄託日:1995年9月28日
受託番号:FERM BP−5246
【0061】
菌名:大腸菌(Escherichia coli) MC1061/P3(pEF−TAK1ΔN)
寄託日:1995年9月28日
受託番号:FERM BP−5245
菌名:Escherichia coli JM109(phTAK1)
寄託日:1996年7月19日
受託番号:FERM BP−5598
【0062】
【配列表】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、酵母発現ベクターpNV11 を示す。
【図2】図2は、種々のTAK1遺伝子の発現に対するTGF−βの添加効果を、ルシフェラーゼ遺伝子をリポーター遺伝子として用いて調べた結果を示すグラフである。
【図3】図3は、MC3T3細胞におけるTAK1遺伝子の活性に対するTGF−β及びBMP−4の効果を免疫沈降法およびカップル・キナーゼ法により測定した結果を示すグラフである。
【図4】図4は、HA−TAK1遺伝子でトランスフェクトされた細胞におけるTAK1キナーゼ活性に対する種々の濃度のTGF−β又はBMP−4の効果を示すグラフである。TAK1ΔNはTAK1ΔN遺伝子でトランスフェクトされた細胞をTGF−β及びBMP−4のいずれによっても刺激しなかった場合の結果を示す。
【図5】図5はマウスTAK1をコードするDNAの塩基配列とヒトTAK1をコードするDNAの塩基配列との対比を示す。
【図6】図6はマウスTAK1をコードするDNAの塩基配列とヒトTAK1をコードするDNAの塩基配列との対比を示す。
【図7】図7はマウスTAK1をコードするDNAの塩基配列とヒトTAK1をコードするDNAの塩基配列との対比を示す。
【図8】図8はマウスTAK1をコードするDNAの塩基配列とヒトTAK1をコードするDNAの塩基配列との対比を示す。
【図9】図9はマウスTAK1をコードするDNAの塩基配列とヒトTAK1をコードするDNAの塩基配列との対比を示す。
【図10】図10は、マウスTAK1のアミノ酸配列とヒトTAK1のアミノ酸配列の対比を示す。
【図11】図11は、マウスTAK1のアミノ酸配列とヒトTAK1のアミノ酸配列の対比を示す。
Claims (16)
- 配列番号:1に示す23位のSer から579 位のSer までのアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列に対して1〜数個のアミノ酸の付加、除去及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を含んで成る、トランスフォ−ミング成長因子(TGF)−βによって活性化され、 XMEK2/SEK1 をリン酸化するキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
- 配列番号:1に示す1位のMet から579 位のSer までのアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列に対して1〜数個のアミノ酸の付加、除去及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を含んで成る、トランスフォ−ミング成長因子(TGF)−βによって活性化され、 XMEK2/SEK1 をリン酸化するキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
- 配列番号:1に示す223 位のT から1893位のA までのヌクレオチド配列を有する請求項1に記載のDNA。
- 配列番号:1に示す157 位のA から1893位のA までのヌクレオチド配列を有する請求項2に記載のDNA。
- 配列番号:1に示すヌクレオチド配列に対して90%以上の相同性を有し、且つTGF−βによって活性化され、 XMEK2/SEK1 をリン酸化するキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
- 配列番号:5に示す23位のSer から579 位のSer までのアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列に対して1〜数個のアミノ酸の付加、除去及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を含んで成る、トランスフォ−ミング成長因子(TGF)−βによって活性化され、 XMEK2/SEK1 をリン酸化するキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
- 配列番号:5に示す1位のMet から579 位のSer までのアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列に対して1〜数個のアミノ酸の付加、除去及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を含んで成る、トランスフォ−ミング成長因子(TGF)−βによって活性化され、 XMEK2/SEK1 をリン酸化するキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
- 配列番号:5に示す249 位のT から1919位のA までのヌクレオチド配列を有する請求項6に記載のDNA。
- 配列番号:5に示す183 位のA から1919位のA までのヌクレオチド配列を有する請求項7に記載のDNA。
- 配列番号:5に示すヌクレオチド配列に対して90%以上の相同性を有し、且つTGF−βによって活性化され、 XMEK2/SEK1 をリン酸化するキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
- 配列番号1に示す23位のMet から579 位のSer までのアミノ酸配列を含んでなる、TGF−βによって活性化され、 XMEK2/SEK1 をリン酸化するキナーゼ活性を有するポリペプチド。
- 配列番号5に示す23位のMet から579 位のSer までのアミノ酸配列を含んでなる、TGF−βによって活性化され、 XMEK2/SEK1 をリン酸化するキナーゼ活性を有するポリペプチド。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載のDNAを含んで成るベクターにより形質転換された宿主細胞を培養し、培養物から発現生成物を採取することを特徴とする、TGF−βによって活性化され、 XMEK2/SEK1 をリン酸化するキナーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法。
- 請求項13に記載の方法により製造されるTGF−βによって活性化され、XMEK2/SEK1をリン酸化するキナーゼ活性を有するポリペプチド。
- 配列番号:1の23位のSer から579 位のSer までのアミノ酸配列を有するTGF−βによって活性化され、 XMEK2/SEK1 をリン酸化するキナーゼ。
- 配列番号:5に示す23位のSer から579 位のSer までのアミノ酸配列を有する、TGF−βにより活性化され、 XMEK2/SEK1 をリン酸化するキナーゼ。
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