JP3942111B2 - 多気筒内燃エンジンの希薄燃焼制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多気筒内燃エンジンの希薄燃焼制御に関し、特に失火を検出することによって希薄限界を検出して混合気の空燃比を制御する多気筒内燃エンジンの希薄燃焼制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスエンジンの空燃比をO2 センサを用いないで希薄限界に制御することによって、高効率化と低NOx 化を実現しようとした空燃比制御方法及び装置が提案されている(特開平6−288265号公報参照)。この制御方法及び装置は、ガスエンジンに振動センサを設置し、該振動センサの出力から振動変動率を算出し、この算出された振動変動率を予め設定された許容振動変動率内に維持するように燃料ガスの流量調整手段をフィードバック制御するものである。
【0003】
しかしながら、上記制御方法及び装置においては、振動センサの出力に基づいて算出された振動変動率が許容範囲内に入るように燃料流量を制御して希薄燃焼を行うものであるため、混合気を希薄限界までリーン化しようとした場合、振動センサの特性に与えるエンジン振動の影響が大きく、実際は失火していても希薄限界を可成り超えないと失火を検知することができないという問題がある。このため、希薄限界付近における失火検知の応答性が悪く、失火状態のままエンジンが駆動されるために未燃焼ガスが排気系に流出し、燃費の悪化を招く。
【0004】
そこで、本出願人は、希薄燃焼状態における排気圧力に基づいて失火を検出し、失火の有無に応じて空燃比を増減する(具体的には、エンジンの定常運転状態において、失火を検出するまで所定単位ずつ混合気をリーン化し、失火を検出すると所定単位だけ混合気をリッチ化する)希薄燃焼制御方法を先に提案した(特願平7−120991号において)。
【0005】
而して、上記制御方法によれば、運転中にエンジンへの吸気量が変化し、それに応じて空燃比が変化しても、失火を検知して空燃比をフィードバック制御することにより、混合気の燃焼状態を失火限界に近い希薄燃焼状態に維持することができ、これによって排気の清浄化が可能となる。特に、本方法においてはフィードバック制御が採用されるため、エンジンの特性にバラツキがあっても、各エンジンについて排気の清浄化が可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、多気筒エンジンにおいては排気通路が各気筒と連通しており、排気系に排気圧センサを取り付けても、他の気筒の排気が干渉するため、複数気筒の何れかの気筒が失火状態にあるか否かを正確に判定することが困難であった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、多気筒エンジンについても失火状態を確実に検知して排気の清浄化と燃費の改善を実現することができる多気筒内燃エンジンの希薄燃焼制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、クランク角検知手段と、排気圧検知手段及び燃料制御弁を備える多気筒内燃エンジンの希薄燃焼制御方法において、所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値と、先行する燃焼サイクルについて所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値の平均値とを比較し、両者の差又は比が何れかの気筒において所定値を超えた場合に失火と判断し、前記燃料制御弁を、失火と判断した時或いはその前直近時の開度まで所定単位ずつ開いて混合気をリッチ化する失火防止制御を実施するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、クランク角検知手段と、排気圧検知手段及び燃料制御弁を備える多気筒内燃エンジンの希薄燃焼制御方法において、所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値と、先行する複数回の燃焼サイクルについて各燃焼サイクル毎に所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値の単純平均値又は二乗平均値或いは所定乗平均値とを比較し、両者の差又は比が何れかの気筒において所定値を超えた場合に失火と判断し、前記燃料制御弁を、失火と判断した時或いはその前直近時の開度まで所定単位ずつ開いて混合気をリッチ化する失火防止制御を実施するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記排気圧波形の積分値を、所定時間(所定クランク角)間隔で排気圧データをサンプリングし、そのサンプリング値を積算することによって求めることを特徴とする。
【0014】
従って、請求項1,2又は3記載の発明によれば、多気筒内燃エンジンの所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値に基づいて失火を判定するようにしたため、多気筒エンジンについても失火状態を確実に検知して排気の清浄化と燃費の改善を実現することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1はエンジン駆動式空気調和装置の基本構成を示す回路図、図2はガスエンジンの構成図、図3は同ガスエンジン要部の構成図である。
【0020】
図1に示す空気調和装置は駆動源として水冷ガスエンジン1を有しており、該ガスエンジン1によって2基の圧縮機2A,2Bが回転駆動される。
【0021】
而して、本空気調和装置には、圧縮機2A,2Bを含んで閉ループを構成する冷媒回路3と水ポンプ45を含んで閉ループを構成する冷却水回路4が設けられている。尚、図1に示す冷媒回路3において、実線矢印は暖房運転時の冷媒の流れ方向を示し、破線矢印は冷房運転時の冷媒の流れ方向を示す。
【0022】
ここで、ガスエンジン1の構成を図2及び図3に基づいて説明する。
【0023】
図2に示す水冷ガスエンジン1において、6はピストン、7はピストン6とクランク軸3を連結するコンロッド、8はシリンダ1aの周囲に形成された冷却水ジャケット、9はエンジン回転数センサ、10はクランク角センサである。
【0024】
又、ガスエンジン1のシリンダヘッド1cに形成された吸気通路1d及び排気通路1eには吸気管11、排気管12がそれぞれ接続されており、吸気通路1d、排気通路1eは吸気弁15、排気弁16によってそれぞれ適当なタイミングで開閉される。
【0025】
ところで、前記吸気管11にはエアクリーナ17及び空気と燃料ガスを混合するためのミキサー18が接続されており、吸気管11内のミキサー18の下流側にはスロットル弁19が設けられている。そして、前記ミキサー18には、燃料ガスボンベ13に接続された燃料供給管20が接続されており、該燃料供給管20の途中には2つの燃料開閉弁21とガス圧力を低圧に調圧するゼロガバナ22及び燃料制御弁23が接続されている。
【0026】
又、ガスエンジン1のシリンダヘッド1cには点火プラグ24が結着されており、該点火プラグ24には点火コイル25及び点火制御回路26が接続されている。
【0027】
他方、前記排気管12の途中には排気ガス熱交換器27が設けられており、この排気ガス熱交換器27内に排気圧センサ28が設けられている。
【0028】
ところで、ガスエンジン1のクランク軸3には増速装置14が連結されており、この増速装置14の出力軸には電磁クラッチ5Aを介して一方の圧縮機2Aが接続されている。又、前記増速装置14の出力軸に結着されたギヤG1には小径のギヤG2を介してギヤG1と同径の別のギヤG3が噛合しており、ギヤG3は電磁クラッチ5Bを介して他方の圧縮機2Bに連結されている。
【0029】
而して、ガスエンジン1は、例えば図3に示すように、4気筒エンジンであり、各気筒に対して吸気マニホールド29から吸気通路1dを介して混合気が供給される。そして、吸気マニホールド29にはエアクリーナ17及びスロットル弁19を介して吸気されるとともに、スロットル弁19部分に燃料ガスボンベ13から燃料開閉弁21及びゼロガバナ22及び燃料制御弁23を介して燃料ガスが供給される。
【0030】
一方、各気筒の排気通路1eは排気マニホールド30に連結されており、排気マニホールド30内に排気ガス熱交換器27と排気圧センサ28が設けられている。
【0031】
ここで、図1に基づいて空気調和装置の基本構成を説明する。
【0032】
前記冷媒回路3は圧縮機2A,2Bによってフロン等の冷媒を循環させる回路であって、これは、圧縮機2A,2Bの各吐出側からオイルセパレータ31に至る冷媒ライン3aと、オイルセパレータ31から四方弁32に至る冷媒ライン3bと、四方弁32から3台の室内熱交換器33に至る冷媒ライン3cと、室内熱交換器33から膨張弁34を経て途中でアキュームレータ35内を通過して2台の室外熱交換器36に至る冷媒ライン3dと、室外熱交換器36から前記四方弁32に至る冷媒ライン3eと、四方弁32から前記アキュームレータ35に至る冷媒ライン3fと、アキュームレータ35から圧縮機2A,2Bの各吸入側に至る冷媒ライン3gを含んで構成されている。
【0033】
尚、前記オイルセパレータ31からはオイル戻りライン37とバイパスライン3iが導出しており、オイル戻りライン37は前記冷媒ライン3gに接続され、バイパスライン3iは前記冷媒ライン3fに接続されており、このバイパスライン3iにはバイパス弁38が接続されている。又、前記アキュームレータ35には、これに貯留される液相冷媒の液面を検出する液面レベルセンサ39,40が設けられており、アキュームレータ35の底部は主にオイル戻り用のバイパスライン3jによって前記冷媒ライン3gに接続されており、バイパスライン3jにはバイパス弁41が設けられている。
【0034】
以上説明した冷媒回路3の前記冷媒ライン3bには冷媒の高圧側圧力を検知する高圧側圧力センサ42が設けられ、冷媒ライン3gには冷媒の低圧側圧力を検知する低圧側圧力センサ43が設けられている。
【0035】
一方、前記冷却水回路4はガスエンジン1を冷却する冷却水を水ポンプ45によって循環させる回路であって、これは、水ポンプ45の吐出側から前記排気ガス熱交換器27を通ってガスエンジン1の冷却水入口(図2に示す冷却水ジャケット8の入口)に至る冷却水ライン4aと、ガスエンジン1の冷却水出口から感温切換弁46に至る冷却水ライン4bと、感温切換弁46からリニア三方弁47に至る冷却水ライン4cと、リニア三方弁47から導出して前記アキュームレータ35内を通って水ポンプ45の吸入側に接続される冷却水ライン4dと、前記感温切換弁46、リニア三方弁47からそれぞれ導出して前記冷却水ライン4dに接続される冷却水ライン4e,4fを含んで構成されており、冷却水ライン4fには放熱用熱交換器48が設けられている。
【0036】
次に、本実施の形態に係る空気調和装置の暖房運転時の作用を図4に示すモリエル線図を参照しながら説明する。
【0037】
ガスエンジン1が駆動されると、そのクランク軸3の回転は増速装置14によって増速され、ON状態にある電磁クラッチ5Aを介して一方の圧縮機2Aに伝達されると同時に、ギヤG1,G2,G3及びON状態にある電磁クラッチ5Bを経て他方の圧縮機2Bに伝達され、両圧縮機2A,2Bが同時に同速度で回転駆動される。
【0038】
上述のように圧縮機2A,2Bが回転駆動されると、図4の▲1▼で示される状態(圧力P1 、エンタルピi1 )の気相冷媒は冷媒ライン3gから圧縮機2A,2Bに吸引されて圧縮され、図4の▲2▼で示される状態(圧力P2 、エンタルピi2 )の高温高圧冷媒となる。尚、このときの圧縮機2A,2Bの所要動力(圧縮熱量)ALは(i2 −i1 )で表される。又、圧縮機2A,2Bに吸引される気相冷媒の圧力P1 は、前記低圧側圧力センサ43によって検出される。
【0039】
上記高温高圧の気相冷媒は冷媒ライン3aを通ってオイルセパレータ31に導かれ、オイルセパレータ31によってオイル分を除去される。そして、オイル分が除去された気相冷媒は冷媒ライン3bを通って四方弁32に至る。尚、オイルセパレータ31において冷媒から分離されたオイルは、前記オイル戻りライン37を通って前記冷媒ライン3gに戻される。又、冷媒ライン3bを流れる高温高圧の冷媒の圧力P2 (圧力損失を無視する)は、前記高圧側圧力センサ42によって検出される。
【0040】
ところで、暖房運転時においては、四方弁32のポートaとポートc及びポートbとポートdがそれぞれ連通されており、高温高圧の気相冷媒は四方弁32を通って冷媒ライン34c側へ流れ、凝縮器として機能する室内熱交換器33に導かれる。そして、室内熱交換器33に導かれた高温高圧の気相冷媒は室内の空気に凝縮熱Q2 を放出して液化し、図4に示す▲3▼の状態(圧力P2 、エンタルピi3 )の液相冷媒となり、このときの放熱量Q2 (=i2 −i3 )によって室内の暖房が行われる。
【0041】
次に、室内熱交換器33において液化した高圧の液相冷媒は膨張弁34によって減圧されて図4において▲4▼で示す状態(圧力P1 、エンタルピi3 )となってその一部が気化し、冷媒ライン3dを室外熱交換器36に向かって流れる。
【0042】
前記冷媒ライン3dを流れる冷媒は、蒸発器として機能する室外熱交換器36に至り、外気温度が所定値以上であるときには、室外熱交換器36のファン36aが駆動され、上述のように室外熱交換器36において冷媒が外気から熱Q1aを奪って蒸発する。尚、室外熱交換器36において冷媒が外気から受ける熱量Q1aは(i5 −i3 )で表される。
【0043】
そして、冷媒は室外熱換器36から冷媒ライン3eを通って四方弁32に至り、四方弁32を通って冷媒ライン3f側へ流れ、アキュームレータ35内に導入される。
【0044】
一方、水ポンプ45の駆動によって冷却水回路4内を循環される冷却水は、水ポンプ45から吐出されて冷却水ライン4aを流れ、その途中で、排気ガス熱交換器27においてガスエンジン1から排気管12に排出される排気ガスの熱を回収して加熱された後、ガスエンジン1の冷却水ジャケット8を通って該ガスエンジン1を冷却する。そして、排ガス熱交換器27とガスエンジン1により加熱された冷却水は、冷却水ライン4bを流れて感温切換弁46に至る。
【0045】
ガスエンジン1の始動後は冷却水温は低く、感温切換弁46は冷却水を冷却水ライン4eへ循環させる一方、冷却水ライン4cへの流れを止める。そして、ガスエンジン1が定常運転状態になると、排ガス熱交換器27及びガスエンジン1との熱交換量が増大して冷却水温が上昇するため、感温切換弁46は冷却水ライン4eへの流れを止める一方、冷却水ライン4cへの流れを許容する。
【0046】
而して、アキュームレータ35においては、冷却水ライン4dを流れる冷却水によって、アキュームレータ35に貯留されている液相冷媒が加熱され、ガスエンジン1の廃熱(排気ガスによって与えられる熱と冷却によってガスエンジン1から奪われる熱)Q1bが冷媒に与えられ、冷媒は図4に▲1▼にて示す状態(圧力P1 、エンタルピi1 )となる。尚、このときの冷媒の吸熱量Q1bは(i1 −i5 )で表される。
【0047】
上記アキュームレータ35においては冷媒の気液が分離され、アキュームレータ35内の気相冷媒は冷媒ライン3gを通って圧縮機2A,2Bに吸引されるが、圧縮機2A,2Bに吸引される気相冷媒の状態は図5に示す▲1▼の状態(圧力P1 、エンタルピi1 )に復帰しており、この気相冷媒は圧縮機2A,2Bによって再度圧縮されて前述と同様の作用を繰り返す。
【0048】
従って、膨張弁34によって減圧されて冷媒が圧縮機2A,2Bに吸引されるまでの間、冷媒には室外熱交換器36において外気から熱Q1aが与えられるとともに、アキュームレータ35においてガスエンジン1の廃熱Q1bが与えられ、結局、冷媒は熱量Q1a+Q1b(=i1 −i3 )を受け取って蒸発し、更に過熱(スーパーヒート)される。
【0049】
尚、冷房運転時においては、四方弁32のポートaとポートb及びポートcとポートdがそれぞれ連通しており、高温高圧の気相冷媒は四方弁32を通って冷媒ライン3e側へ流れ、凝縮器として機能する室外熱交換器36に導かれ、更に冷媒ライン3dを通って途中アキュームレータ35内を通過しつつ膨張弁34に至る。高温高圧の気相冷媒は室外熱交換器36で冷却されて放熱し、更にアキュームレータ35内の低温低圧の液相冷媒により冷却されて放熱する。室外熱交換器36での冷媒の放熱量とアキュームレータ35通過時の冷媒の放熱量との合計がQ2 (=i2 −i3 )となる冷媒は膨張弁34の上流側において図4に示す(3)の状態(圧力P2 、エンタルピi3 )の液相冷媒になる。
【0050】
液相冷媒は膨張弁34を通過して図4に示す▲4▼の状態(圧力P1 、エンタルピi3 )になった後、蒸発器として機能する室内熱交換器33において吸熱して▲5▼の状態(圧力P1 、エンタルピi5 )になる。このときの冷媒の吸熱量はQ1aは(=i5 −i3 )となる。気液混合状態の冷媒は室内熱交換器33から四方弁32を経てアキュームレータ35に至り、液相分はアキュームレータ35内にて分離滞留する一方、気相冷媒は圧縮機2A,2Bに吸引される。そして、アキュームレータ35内に滞留する液相冷媒は、冷却水ライン4dを流れる冷却水と冷媒ライン3dを通る冷媒により加熱されて気化し、前記気相冷媒に混合されて圧縮機2A,2Bに吸引される。冷媒は圧縮機2A,2Bの上流側において図4に示す▲1▼の状態(圧力P1 、エンタルピi1 )の気相冷媒になる。即ち、アキュームレータ35を通過することにより新たに与えられる熱量はQ1b(=i1 −i5 )となる。
【0051】
次に、本実施の形態に係る空気調和装置の制御系の構成を図5及び図6に基づいて説明する。尚、図5は制御系全体の構成を示すブロック図、図6はコンプレッサ部及びガスエンジンの制御系の構成を示すブロック図である。
【0052】
図5に示すように、各室内熱交換器33には室内機制御装置50が設けられており、各室内機制御装置50には膨張弁上流側冷媒温度センサ52、室内希望温度設定スイッチを有する操作部53及び室内温度センサ54からの信号が入力され、室内機制御装置50はこれらの信号に基づいてファン51と膨張弁34を制御する。
【0053】
又、本空気調和装置には室外機制御装置60が設けられており、該室外機制御装置60はコンプレッサ部61、ガスエンジン1、吸込冷媒温度センサ62、アキュームレータ液面レベルセンサ39,40、高圧側圧力センサ42、低圧側圧力センサ43、外気温センサ63及び冷媒循環量センサ64からの信号を受けてコンプレッサ部61、ガスエンジン1、四方弁32、リニア三方弁47、感温切換弁46及びファン36aを制御するとともに、データを記憶装置65に格納するとともに、必要に応じて格納装置65からデータを読み込む。
【0054】
ここで、図6に示すように、コンプレッサ部61においては、室外機制御装置60は各種センサからのデータ、スイッチ操作データに基づいて電磁クラッチ5A,5Bと増速比制御アクチュエータ67を制御する。尚、作動台数検知手段66はクラッチ操作のフィードバック用データを室外機制御装置60に送信する。室内温度センサ54の検知温度と操作部53において設定された希望室内温度との差、或は目標高圧圧力と高圧側圧力センサ42の検知圧力との差、或は低圧側圧力センサ43の検知圧力と目標低圧圧力との差、或は室内温度センサ54の検知温度と外気温センサ63の検知温度との差、或は操作部53において空調状態に設定される部屋数データ、更にはこれらのデータにより設定される目標冷媒循環量と冷媒循環量センサ64の検知値との差等のデータの内1つ或は複数により決められる目標エンジン回転数とエンジン回転数センサ9による検知値との差を0とするようにスロットル弁開度制御アクチュエータ69によりスロットル弁開度を増減すると同時に、希薄空燃比で運転すべく燃料開閉弁開閉制御アクチュエータ71を制御する。点火タイミングはエンジン回転数センサ9による検知値とスロットル弁開度制御アクチュエータ69の制御量に基づいて室外機制御装置60で決められ、室外機制御装置60がクランク角センサ10の検知値を基準として点火制御回路26及び点火コイル25を介して点火プラグ24を駆動制御する。
【0055】
次に、ガスエンジン1の希薄燃焼制御方法を図7に示すフローチャートに従って説明する。
【0056】
空気調和装置の運転に際しては、先ず、冷媒システム系の運転条件(例えば、空調部屋数(運転室内機数)、外気温度と設定温度との差等)に基づいてスロットル弁19の開度の初期値、燃料ガス流量制御弁23の開度の初期値等を設定する(ステップS1)。尚、空調部屋数が大きい程、又、温度差が大きい程、それぞれの初期値は大きく設定される。但し、燃料制御弁開度の初期値は、理論空燃比或はそれより若干濃い目又は薄目の空燃比の混合気が燃焼室に供給されるような開度とされる。
【0057】
次に、ガスエンジン1が起動中であるか否かが判断され(ステップS2)、ガスエンジン1が起動中であればプログラム実行切換の判断がなされ(ステップS3)、実行数m回の内1回だけエンジン運転制御プログラムが実行され(ステップS4)、その他の場合はクランク角度に伴うエンジン回転数が算出される(即ち、クランク軸3が所定角回転するに要する時間を検知して回転数が算出される)(ステップS5)。
【0058】
上記エンジン運転制御プロクラムにおいては、目標回転数N0 算出プログラムが実行される。この目標エンジン回転数N0 は圧縮機2A,2Bへの吸込側の冷媒温度ts 、圧縮機2A,2Bからの吐出側の冷媒温度td 、冷媒回路3中の低圧側の冷媒圧力Ps 、冷媒回路3中の高圧側の冷媒圧力Pd 等の関数として、
N0 =f(ts ,td ,Ps ,Pd )
で表され、検出された冷媒温度及び冷媒圧力等に基づいて目標エンジン回転数N0 が算出される。
【0059】
次に、スロットル開度T0 算出・設定動作プログラムが実行され(ステップS3)、エンジン回転数センサ9によって検出されたエンジン回転数Nと算出された目標エンジン回転数N0 との差(N−N0 )に基づいてスロットル弁開度T0 が算出され、スロットル弁19を開閉するスロットル弁開度制御アクチュエータ(ステッピングモータ)69が駆動されてスロットル弁19の開度がT0 に設定される。具体的には、NとN0 との差(N−N0 )が負であって、検出されたエンジン回転数Nが小さい程、スロットル弁開度T0 は大きく設定される。
【0060】
而して、前述のようにクランク角度に伴うエンジン回転数が算出されると(ステップS5)、エンジン回転数の時間的平均値を算出し(ステップS6)、その値に基づいて燃料制御弁23の開度制御の可否を判断する(ステップS7)。即ち、エンジン回転数のバラツキが所定以下、即ち、平均値と、平均値の算出に使用した複数のエンジン回転数の内、最大或は最小のものとの差の絶対値が所定値以下であれば希薄燃焼制御が実行され(ステップS8)、所定値以上であればプログラム実行切換の判断がなされる(ステップS3)。
【0061】
希薄燃焼制御においては、希薄燃焼化制御として燃料制御弁23の開度が所定量絞られて混合気が希薄化される。このように燃料制御弁23の開度が所定量絞られた後、混合気希薄化に伴う失火を防止するための失火防止制御が実施される。即ち、所定のクランク角範囲についての排気圧波形の積分値(面積)SUMと、先行する1乃至複数回の燃焼サイクルにおけるそれぞれ同一の所定のクランク角範囲についての排気圧波形の積分値(面積)とから、それらの平均値SUMAVをそれぞれ求め、両者の比W(=SUM/SUMAV)が算出される(ステップS9)。
【0062】
尚、ソフト上においては、ステップS9において先行する所定回(R回)の燃焼サイクルにおける前記積分値と今回の燃焼サイクルの前記積分値との平均値を求めるに当たって移動平均法を使うことができる。即ち、先行する(R+1)回から直前までの燃焼サイクルでそれぞれ求めて記憶した(R+1)個の前記積分値と、これらを加えた積算積分値とを記憶装置65中に記憶しておき、該積算積分値から(R+1)回前の積分値を引き、今回の燃焼サイクルにおける前記積分値を加えて求めた新しい積算積分値を(R+1)で除して前記平均値を算出する。該平均値算出後、前記比Wを算出するとともに、記憶装置65からは(R+1)回前の前記積分値をクリアし、今回の燃焼サイクルにおける前記積分値と新しい積算積分値とを新たに記憶装置65に記憶する。このようにステップS9を実行することにより、ステップS9での演算時間を節約することができ、流量制御弁23の開度が絞られることにより失火が発生した後、後述の失火処理(ステップS11)において流量制御弁23の開度が増加されるまでの時間を短縮することができ、エンジンストールの発生を防ぐことができる。
【0063】
ここで、排気圧波形の積分値SUMは、所定時間(所定クランク角)間隔で排気圧データをサンプリングし、そのサンプリング値を積算することによって求められる。
【0064】
而して、前記比Wが算出されると、この値に基づいて失火の判断がなされる(ステップS10)。即ち、何れかの気筒に失火が発生するとその排気圧波形が欠落するために排気圧波形の積分値(面積)SUMが正常燃焼時のそれよりも小さくなる。従って、前記比W(=SUM/SUMAV)が所定値Hよりも小さい(W<H)場合には、ガスエンジン1の何れかの気筒に失火が発生したと判断して失火処理を行い(ステップS11)、比Wが所定値H以上(W≧H)である場合には失火は発生していないと判断して希薄燃焼制御を実施する。尚、失火の有無の判定基準である値Hは図8に示すようにエンジン回転数によって変化する。
【0065】
ステップS8の希薄燃焼制御において燃料制御弁23の開度が所定量絞られた後、ステップS10の失火判定を経て再びステップS8の制御に入るまでの時間をTS とするとき、前記所定量の開度絞り量を時間TS で割った値が絞り速度となる。この絞り速度はTS の時間が変化すると変化するが、タイマーを使うことにより、スロットル弁開度が大きい程絞り速度を大きくし、スロットル弁開度(エンジンへの要求負荷)が小さい程絞り速度を小さくすることができる。これにより、混合気の希薄化によりエンジンストールし易い低負荷において失火防止制御を有効に機能させることができる。
【0066】
そして、失火処理においては、燃料制御弁23の開度が失火と判断した時或はその前直近時の開度まで所定時間当り所定単位ずつ開かれて混合気がリッチ化される。
【0067】
尚、確実にエンジンストールが発生しないようにするためには、ステップS8の制御により絞られた前後の燃料制御弁23の開度データを記憶装置65に入れておき、ステップS10の失火判定において失火の判断がされるとき、ステップS12において記憶装置65中の前記絞り前後の燃料制御弁23の開度データの内、絞り前の開度に直ちに戻すようにすると良い。或は、絞り前の開度に戻すのに加え、絞りにおける所定量の所定倍の開度分だけ余計に燃料制御弁23の開度を増加させるようにしても良い。
【0068】
その後、エンジン停止要求があるか否かが判断され(ステップS12)、エンジン停止要求がない場合にはステップS3〜ステップS12の処理が繰り返され、エンジン停止要求がなされた場合にはガスエンジン1が停止されて一連の処理が終了する(ステップS13)。
【0069】
ステップS4のエンジン運転制御における燃料制御弁23の開度は、その前のステップにおいて設定された開度となる。即ち、エンジン起動直後或はステップS7を経てステップS8に進むことなく、ステップS3に戻った後のステップS4のエンジン運転制御における燃料制御弁23の開度は初期値となって運転されることになる。そして、ステップS11を経てステップS3に戻った後のステップS4のエンジン運転制御における燃料制御弁23の開度は、ステップS12の失火処理において設定された開度とされて運転される。
【0070】
尚、本実施の形態では、失火の判断を排気圧波形の積分値SUMと積分の平均値SUMAVとの比W(=SUM/SUMAV)に基づいて行ったが、両者の差(SUM−SUMAV)に基づいて失火の判断を行っても良い。
【0071】
又、所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値と、先行する複数回の燃焼サイクルについて各燃焼サイクル毎に所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値の単純平均値又は二乗平均値或は所定乗平均値とを比較し、両者の差又は比が所定値を超えた場合に失火と判断するようにしても良い。
【0072】
尚、複数気筒からの排気圧波形が互いに干渉しないクランク角範囲を選んで積分値を求めるようにすることにより、特定の気筒の排気波形を監視することが可能となり、その気筒についてより確実に失火を判定することができる。又、排気干渉があっても、各エンジン回転数毎に失火しない場合の前記積分値の平均値を求めることにより、各エンジン回転数毎に前記所定値Hを設定して記憶装置65に記憶しておき、ステップS10の失火判定において、ステップS5により算出したエンジン回転数に対応する記憶装置65中の前記所定値Hを使って失火判定することで、何れかの気筒において失火が発生したか否か、より確実に判定することができる。ここでは、図8に示すように、或るエンジン回転数域で一様に変化させるのではなく、特に排気系の共振によりW値がその共振によりW値がその共振エンジン回転数の前後より大きく変化するとき、それに合わせて所定値を大きく変化させるのである。
【0073】
更に、排気圧センサ28を排気マニホールド30内ではなく、所定気筒の排気通路1eに配置するようにしても良い。
【0074】
尚、ステップS6を削除するとともに、ステップS7において、エンジン負荷と同等であるスロットル弁開度T0
が所定値以下の中低負荷時において希薄燃焼制御(ステップS8)を実施し、所定値以上の高負荷時において燃料制御弁開度は初期値となるように設定するようにしても良い。或は、ステップS7において、エンジン回転数のバラツキが所定値以下であり、且つ、スロットル弁開度T0
が所定値以下の中低負荷時において希薄燃焼制御(ステップS8)を実施、そうでない場合には燃料制御弁開度は初期値となるように設定するようにしても良い。これにより、エンジン負荷が所定値以下において失火防止をしつつ希薄燃焼が可能であるとともに、急加速時(或は急激に大きな出力が必要とされる時)にはエンジン負荷が先行して大きくされるため、希薄燃焼化は解除され、内燃エンジンへの燃料供給が絞られることはなくなり、急加速(或は急激な出力上昇)が可能となる。
【0075】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1,2又は3記載の発明によれば、多気筒内燃エンジンの所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値に基づいて失火を判定するようにしたため、多気筒エンジンについても失火状態を確実に検知して排気の清浄化と燃費の改善を実現することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジン駆動式空気調和装置の基本構成を示す回路図である。
【図2】ガスエンジンの構成図である。
【図3】ガスエンジン要部の構成図である。
【図4】冷媒の状態変化を示すモリエル線図(P−i線図)である。
【図5】エンジン駆動式空気調和装置の制御系全体の構成を示すブロック図である。
【図6】エンジン駆動式空気調和装置のコンプレッサ部及びガスエンジンの制御系の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明に係る希薄燃焼制御方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】失火判定基準値Hのエンジン回転数に対する変化を示す図である。
【符号の説明】
1 ガスエンジン(内燃エンジン)
2A,2B 圧縮機
9 エンジン回転数センサ(エンジン回転数検知手段)
10 クランク角センサ(クランク角検知手段)
19 スロットル弁
23 燃料制御弁
28 排気圧センサ
Claims (3)
- クランク角検知手段と、排気圧検知手段及び燃料制御弁を備える多気筒内燃エンジンの希薄燃焼制御方法において、
所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値と、先行する燃焼サイクルについて所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値の平均値とを比較し、両者の差又は比が何れかの気筒において所定値を超えた場合に失火と判断し、前記燃料制御弁を、失火と判断した時或いはその前直近時の開度まで所定単位ずつ開いて混合気をリッチ化する失火防止制御を実施するようにしたことを特徴とする多気筒内燃エンジンの希薄燃焼制御方法。 - クランク角検知手段と、排気圧検知手段及び燃料制御弁を備える多気筒内燃エンジンの希薄燃焼制御方法において、
所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値と、先行する複数回の燃焼サイクルについて各燃焼サイクル毎に所定のクランク角範囲について求めた排気圧波形の積分値の単純平均値又は二乗平均値或いは所定乗平均値とを比較し、両者の差又は比が何れかの気筒において所定値を超えた場合に失火と判断し、前記燃料制御弁を、失火と判断した時或いはその前直近時の開度まで所定単位ずつ開いて混合気をリッチ化する失火防止制御を実施するようにしたことを特徴とする多気筒内燃エンジンの希薄燃焼制御方法。 - 前記排気圧は計の積分値は、所定時間(所定クランク角)間隔で排気圧データをサンプリングし、そのサンプリング値を積算することによって求められることを特徴とする請求項1又は2に記載の多気筒内燃エンジンの希薄燃焼制御方法。
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