JP3940801B2 - ゼオライトの合成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ゼオライトの合成方法に関し、特に、石炭灰から一工程で単一相のゼオライトを合成しうるゼオライトの合成方法に関する。
石炭灰は、火力発電所で石炭を燃焼させた際に大量に排出される産業廃棄物であり、「再生資源利用促進法」では指定副産物とされている。日本では年間約600万トンの石炭灰が排出され、その量は年々増加している。石炭灰には飛灰すなわちフライアッシュ(なお、以降において、適宜Faと表記することとする。)と、泥灰すなわちクリンカーアッシュが含まれており、Faは全石炭灰の約85%を占めている。
飛灰の6割はセメント混和材や土木材料などに利用されているが、残りの4割は埋立て処理されているのが現状である。しかしながら、Fa中にはAs、Pb、Sn、Cdなどの重金属が含まれており、深刻な環境汚染を引き起こす可能性があるため、Faの廃棄物処理を兼ねた再資源化方法の開発が必要とされている。
Faの主成分はケイ素やアルミニウムの酸化物であり、非晶質アルミノシリケイトおよびムライトやクオーツなどの結晶質相で構成されている。これらを利用して、Faを用いたゼオライトの合成に関する研究は多くの研究者により行われてきている。例えば、非特許文献1に示すように、本願発明者によってもこれまで、Faをアルカリ溶液で処理するとFa中の非晶質相が溶解し、ゼオライトが生成されることを明らかにしている。
H. Tanaka,Y.Sakai and R.Hino,Mater.Res.Bull.,37,1873(2002)
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。従来では、石炭灰からゼオライトを合成しても、Faと混ざった状態となり、これを分離することは困難であるという問題点があった。従って、混合物として使用せざるを得ず、純粋なゼオライト本来の吸着性やイオン交換能を十分に発揮できず、用途が限定されるという問題点があった。また、非特許文献1に掲げる技術では、合成に複数工程を要し、従来の工業的生産方法に要する時間の3〜4倍かかってしまうという生産効率の問題点もあった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、石炭灰から一工程で純粋なもしくは単一相のゼオライトをも合成しうる方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載のゼオライトの一工程合成方法は、石炭灰をNaOH−NaAlO混合溶液に溶解させて、半透膜を通じて膜外の混合液中に単一相のゼオライト、もしくは、ゼオライトとヒドロキシソーダライトとの混合物を合成することを特徴とする。
また、請求項2に記載のゼオライトの一工程合成方法は、石炭灰をNaOH−NaAlO混合溶液に溶解させて、半透膜を通じて膜外の混合液中に単一相のゼオライト、もしくは、ゼオライトとヒドロキシソーダライトとの混合物を合成するとともに膜内にP型ゼオライトを合成することを特徴とする。
また、請求項3に記載のゼオライトの合成方法は、請求項1または2に記載のゼオライトの合成方法において、所定のアルカリ雰囲気下でSiO/Al:NaO/SiO=2.0〜5.0:6.0としたことを特徴とする。ここで、所定のアルカリ雰囲気下とは、ゼオライトが合成できる濃度ということである。これは、アルカリ濃度が低いと合成が進まないか、極めて遅い反応となり、反対に、アルカリ濃度が高いと合成されたものが溶解してしまうからである。この濃度として、例えば、SiO/Al:NaO/SiO:HO=2.0〜5.0:6.0:50.0とすることができる。
また、請求項4に記載のゼオライトの合成方法は、請求項1または2に記載のゼオライトの合成方法において、所定のアルカリ雰囲気下でSiO/Al:NaO/SiO=2.0〜3.4:6.0に調整し、膜外にA型ゼオライトを生成させることを特徴とする。
また、請求項5に記載のゼオライトの合成方法は、請求項1または2に記載のゼオライトの合成方法において、所定のアルカリ雰囲気下でSiO/Al:NaO/SiO=4.0〜5.0:6.0に調整し、膜外にX型ゼオライトを生成させることを特徴とする。
また、請求項6に記載のゼオライトの合成方法は、請求項1または2に記載のゼオライトの合成方法において、所定のアルカリ雰囲気下でSiO/Al:NaO/SiO=2.0:6.0に調整し、ヒドロキシソーダライトが合成されてくる所定時間までに膜外に生成されているA型ゼオライトを回収して単一相のA型ゼオライトのみを得ることを特徴とする。
また、請求項7に記載のゼオライトの合成方法は、請求項1〜6のいずれか一つに記載のゼオライトの合成方法において、石炭灰として飛灰を用いることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、産業廃棄物である石炭灰から吸着材やイオン交換体として種々利用されているゼオライトを合成する方法を提供可能となる。ここで、合成は一工程からなり、半透膜外では純粋なもしくは単一相のゼオライトを合成可能であり、膜内では、従来と同様のゼオライトが合成されるので、用途によって使い分けのできるゼオライトを効率的に合成可能となる。また、人工ゼオライトの工業的合成方法は、SiイオンとAlイオンをアルカリ中で反応させるので、実質的に従来の工業的合成方法をそのまま利用可能となる。
以下、本発明の一実施例を詳細に説明する。Faは、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の火力発電所から排出された飛灰を用いた。Faの化学組成および鉱物組成は、蛍光X線分析と粉末X線回折測定により求めた。表1および表2にそれらの結果を示す。
Figure 0003940801
Figure 0003940801
上記分析されたFa中の非晶質アルミノシリケイトを用いてゼオライトを合成することを試みた。合成処理は図1に示した容器によっておこなった。すなわち、半透膜で作製したチューブ内に原料であるFaとNaOH−NaAlO混合溶液を加え、ポリプロピレン製の袋で包み、これをポリプロピレン製容器に入れ、さらにNaOH−NaAlO混合溶液を加え、85℃で48時間熟成(合成)した。
このとき、出発物質のモル組成比はNaO/SiO:HO/NaO=6.0:50.0とし、これに対しSiO/Alを2.0〜5.0の間でふることとした。その後、生成物をろ過し、蒸留水でpH=10.5になるまで洗浄し、110℃の空気中で24時間乾燥した。より具体的には、分析および解析により飛灰中のSiの含有量があらかじめ分かっているので、飛灰の量を一定とし、これにNaOH−NaAlOの濃度と量を変化させ、SiO/Alを2.0〜5.0まで振った。なお、使用した半透膜は孔径24オングストロームである。
図2は、SiO/Alを2.0から略0.5刻みで5.0までふり、48時間経過後の半透膜外に生じた物質のXRDパタンを示した説明図である。図3は、SiO/Alに対する半透膜外に生成したゼオライトのピーク強度を示した図である。図示したように、SiO/Al=2.0では、A型(Na−A型)ゼオライトおよびヒドロキシソーダライトの回折ピークが現れた。SiO/Al=2.5になると、さらにフォージャサイトの回折ピークが現れた。これを、格子定数(633)および(555)の回折ピークから求めたところ、このフォージャサイトは、X型(Na−X型)ゼオライトであることが確認できた。
なお、A型ゼオライトの回折強度はSiO/Al=2.0〜3.0で最大になり、それ以降では減少し、かつ、SiO/Al≧3.0ではヒドロキシソーダライトの回折ピークは認められなくなった。また、X型ゼオライトの回折強度はSiO/Al>3.5で急激に増加した。
図4は、SiO/Alに対する半透膜外に生成した物質の収量を示した説明図である。図示したように、収量は、SiO/Alの増加とともに増加するが、SiO/Al=3.4になると急激に減少し、それ以上ではほとんど変化しなかった。この結果と図3に示した結果より、SiO/Al=2.0〜3.4では、主としてA型ゼオライトを効率的に合成することが出来るといえ、SiO/Al=4.0〜5.0では、主としてX型ゼオライトを効率的に合成できるといえる。
なお、半透膜内に残存する物質のXRDパタンを調べたところ、いずれのモル比のSiO/AlにおいてもP型ゼオライトの回折ピークが現れた(図5参照)。なお、未処理のFaのXRDパタンでは、非晶質相の存在を示すハローおよびムライト、αクオーツの回折ピークが現れるが、48時間処理でハローは認められず、ムライトおよびαクオーツの回折強度は処理の前後でほとんど変化しなかったことから、合成によりFa中の非晶質アルミノシリケイトがアルカリ中に溶解し、それらがSi、Al源となりP型ゼオライトを生じさせることが確認できた。
なお、膜外で得られた生成物は、白色であり、膜内の生成物はFaと同様に灰色であった。
次に、X型ゼオライトが表れないSiO/Al=2.0において、合成時間を48時間から短くし、42、36、30、24、18、12、6時間としてA型ゼオライトの生成について調べた。図6は、SiO/Al=2.0に固定した場合の合成時間と半透膜外の合成物との関係を示したXRDパタンを示した説明図である。また、図7は、SiO/Al=2.0に固定した場合の半透膜外に合成されたA型ゼオライトの(100)、ヒドロキシソーダライト(110)、非晶質の熟成時間に対するピーク強度の変化を示した図である。図8は、合成時間に対する半透膜外に合成された物質の収量の様子を示した図である。反応時間6時間までは沈殿は生成しなかった。反応12時間後には、白色沈殿が生成したが、これはXRD測定から非晶質であることが分かった。A型ゼオライトの回折ピークは反応18時間後から観測された。反応時間の増加とともにA型ゼオライトの回折強度は増加し、24時間後には非晶質相は認められなくなった。一方、36時間後にはヒドロキシソーダライトの回折ピークが現れた。このことから、85度の雰囲気下では30時間の反応により、単一相のA型ゼオライトが生成することが分かった。従って、合成が開始される時間差を用いてA型ゼオライトを効率的に回収可能であることが確認できた。なお、ヒドロキシソーダライトはゼオライトの構成単位であり、ゼオライトと同様の作用を有するので、用途によって適宜熟成時間を変化させ、ゼオライトと所望の混合比のものを合成することとしてもよい。
なお、半透膜内のFaについても調べたところ、XRD測定から反応時間の増加とともに非晶質相が減少することが確認でき、30時間後にはP型ゼオライトが生成し、非晶質相は完全に認められなくなった(図9および図10参照)。P型ゼオライトの回折強度は36時間で最大になり、それ以降では減少した。一方、Fa中のムライトおよびαクオーツの回折強度は熟成の前後でほとんど変化しなかった。
なお、以上の実施例では、アルカリ濃度と温度を固定しているが、ゼオライトを合成できるのであれば、種々変更してもよい。例えば、耐圧容器を用いて100℃を超える雰囲気下で反応させてもよい。
本方法を利用して得られたゼオライトは、純度を必要とするものは透過膜外で得られたものを用い、純度を必要としないものは透過膜内で得られたものを用い、単一工程によって純度の高いものも純度が低くて済むものも両方得ることができる。例えば、洗剤に用いたり、園芸土場に適用したり、吸湿材として用いることができる。
本実施例における反応容器の構成を示した説明図である。 SiO/Alを2.0から略0.5刻みで5.0までふり、48時間経過後の半透膜外に生じた物質のXRDパタンを示した説明図である。 SiO/Alに対する半透膜外に生成したゼオライトのピーク強度を示した図である。 SiO/Alに対する半透膜外に生成した物質の収量を示した説明図である。 SiO/Alを振った場合の半透膜内に生成した物質のXRDパタンを示した説明図である。 SiO/Al=2.0に固定した場合の合成時間と半透膜外の合成物との関係を示したXRDパタンを示した説明図である。 SiO/Al=2.0に固定した場合の半透膜外に合成されたA型ゼオライトの(100)、ヒドロキシソーダライト(110)、非晶質の熟成時間に対するピーク強度の変化を示した図である。 SiO/Al=2.0に固定した場合の合成時間に対する半透膜外に合成された物質の収量の様子を示した図である。 SiO/Al=2.0として合成時間を変えた場合の半透膜内に生成した物質のXRDパタンを示した図である。 SiO/Al=2.0として合成時間を変えた場合の半透膜内のP型ゼオライトと非晶質のピーク強度の変化を示した図である。

Claims (7)

  1. 石炭灰をNaOH−NaAlO混合溶液に溶解させて、半透膜を通じて膜外の混合液中に単一相のゼオライト、もしくは、ゼオライトとヒドロキシソーダライトとの混合物を合成することを特徴とする石炭灰由来のゼオライトの一工程合成方法。
  2. 石炭灰をNaOH−NaAlO混合溶液に溶解させて、半透膜を通じて膜外の混合液中に単一相のゼオライト、もしくは、ゼオライトとヒドロキシソーダライトとの混合物を合成するとともに膜内にP型ゼオライトを合成することを特徴とする石炭灰由来のゼオライトの一工程合成方法。
  3. 所定のアルカリ雰囲気下でSiO/Al:NaO/SiO=2.0〜5.0:6.0としたことを特徴とする請求項1または2に記載のゼオライトの合成方法。
  4. 所定のアルカリ雰囲気下でSiO/Al:NaO/SiO=2.0〜3.4:6.0に調整し、膜外にA型ゼオライトを生成させることを特徴とする請求項1または2に記載のゼオライトの合成方法。
  5. 所定のアルカリ雰囲気下でSiO/Al:NaO/SiO=4.0〜5.0:6.0に調整し、膜外にX型ゼオライトを生成させることを特徴とする請求項1または2に記載のゼオライトの合成方法。
  6. 所定のアルカリ雰囲気下でSiO/Al:NaO/SiO=2.0:6.0に調整し、ヒドロキシソーダライトが合成されてくる所定時間までに膜外に生成されているA型ゼオライトを回収して単一相のA型ゼオライトのみを得ることを特徴とする請求項1または2に記載のゼオライトの合成方法。
  7. 石炭灰として飛灰を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のゼオライトの合成方法。

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