JP3940795B2 - 燃料油の酸化脱硫方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫黄化合物を含有する燃料油の酸化脱硫方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油、石炭などの化石資源を原料とする燃料油中に含まれる硫黄化合物類は、燃焼に際して大気環境汚染の原因となる硫黄酸化物を生成する。そのため、燃料油中に含まれる硫黄化合物の除去を目的とする脱硫技術については、従来より、積極的に開発が進められてきている。現在、石油系燃料の脱硫法としては、一般的に、触媒の存在下に水素化処理を行う水素化脱硫方法が採用されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
一方、近年、大都市地域において、光化学オキシダント、酸性雨等による大気環境汚染が世界的なレベルで深刻化しており、その主な原因として軽油を燃料とするディーゼル自動車の排出ガス中に含まれる窒素酸化物および粒子状物質等があげられている。
ディーゼル自動車の排出ガス浄化の達成のための手段として、軽油中の硫黄分の削減・除去は、規制強化の第一対象とされている。その理由は、軽油の排出ガスに含まれる硫黄化合物は、ディーゼル自動車の排出ガス対策として期待されている、酸化触媒、窒素酸化物還元触媒、および、排気微粒子除去フィルター等の排気後処理装置の信頼性や耐久性に影響を及ぼすことが懸念されるからである。
【0004】
このようなことを考慮して、我が国においては、ディーゼル自動車の排出ガス浄化対策の一環として、軽油中に含まれる硫黄分を現在の規制値である硫黄分500 ppmから、将来的には50 ppm以下へと規制の強化を図る方策を採るとされており、軽油中に含まれる硫黄分に対してその低減が強く要請されている。
【0005】
ところで、このような軽油などの燃料油中には、水素化脱硫法において、その除去が極めて困難な有機硫黄化合物、特に硫黄原子周辺にアルキル基などの立体障害性の置換基を持つアルキル置換ジベンゾチオフェン類が含まれているため、50 ppm以下の超深度脱硫の達成のためには、有機硫黄化合物、特にアルキル置換ジベンゾチオフェン類を他の化合物に変化させるなどを行うことにより、有効に脱硫する必要がある。
【0006】
そこで、超深度脱硫の達成のためには、このような難除去性硫黄化合物を有効に除去することのできる、新たな脱硫技術の開発が急務とされている。例えば、有機硫黄化合物を含む燃料油に、酸性触媒の存在下にアルコールやオレフィンなどのアルキル化剤で処理して低減硫黄含量の燃料油を製造する方法がある(特許文献3)。この脱硫方法の問題点としては、水素が高価であること及び含まれるオレフィンが飽和炭化水素に変換されることなどが指摘されている。
【0007】
新たな脱硫方法としては、前記の有機硫黄化合物を酸化することにより燃料油中から除去する酸化脱硫方法が有効であると考えられる。この酸化反応では、水素化反応の場合とは逆に、アルキル置換ジベンゾチオフェン類が反応しやすくなることが考えられるので、有効に除去することができることが考えられる。
この酸化方法によれば、これらのジベンゾチオフェン類をスルホキシドやスルホン誘導体のような極性化合物に変化させることができ、これらの生成物を抽出及び吸着操作等を利用して、燃料油から効率的に分離することができるものと考えられる。
石油精製の分野では、かつては硫酸処理が行われてきた。これは硫黄及び沈降アスフアルトを除去するためであり、強酸とともに低い温度(−4℃〜10℃)が用いられてきた。また、ナフサの硫酸処理によりによりイソアミルメルカプトン、ジメチルスルフェート、n−ブチルスルフィドなどの有機硫黄化合物を除去することが有効であることも知られている。ガソリンの硫酸処理も知れている。これはチオフェンのアルキル化に有効である。
また、有機パーオキサイド、有機ハイドロパーオキサイド、有機過酸又はこれらの混合物から選択される酸化剤で、モリブデン含有触媒の存在下に処理し酸化する脱硫法も知られている(特許文献4)。また、オゾン処理する脱硫法も知られている(特許文献5)。また、 酸化脱硫法としては,硫黄化合物を含有する液状油を、酸化剤で処理した後、酸化された有機硫黄化合物を蒸留等の分離手段によって回収する方法(特許文献6)がある。この方法では、有機硫黄化合物をスルホオキシド化合物やスルホン化合物に変化させることをにより脱硫を行うことを意図している。この酸化剤の一例として、過酸化水素と酢酸の混合物を用いることも列挙されている。しかしながら、実際にこの方法を適用してみると、効果的に酸化化合物を得ることができない。このことについては、本件明細書において比較例4として、後記した。 すなわち、前記引用の特許からは、過酸化水素と酢酸を等量程度で用いる方法が想定されるが、この方法では、酸化剤として作用する過酢酸の生成効率の低さ、および、有機硫黄化合物の酸化効率の低さのために、硫黄化合物の酸化速度が不十分であるということが、考えられる。いずれにしても、前記引用特許では、その意図するところとは相違して、酸化脱硫方法として、満足する結果は得られないのである。
【0008】
前記特許では、酸化剤として過酸化水素と酢酸を用い、両者を液状油と混合後に、所定の温度において撹拌することにより、系内に過酢酸を生成させ、この過酢酸の作用により、反応温度を上昇した状態で、硫黄化合物を酸化することが想定される。しかし、この方法では、酸化前の予備混合が必要であるため、操作が煩雑である。さらに、過酸化水素と酢酸の混合物の所定温度での撹拌操作では、硫黄化合物を酸化するための過酢酸の生成法としては不十分である。また、酢酸の添加量としては、処理しようとする対象油に対して1/10以下の量が想定され、酢酸と等量程度の過酸化水素の混合が考えられる。このように酢酸の使用量が少ない場合には、酢酸が有機黄化合物の抽出溶媒として作用できないため、それら有機黄化合物の酸化を十分に行うことができない。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−78670.
【特許文献2】
特開平11−80754
【特許文献3】
特表2001−508829
【特許文献4】
特開昭49−52803
【特許文献5】
特開昭62−290793
【特許文献6】
特開平5-286829
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、燃料油中に含まれている有機硫黄化合物類を、選択的に酸化して燃料油中から除去する酸化脱硫方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決しようとする手段】
本発明によれば、硫黄化合物を含有する燃料油に、溶媒として、前記燃料油に対して容積比で1/2〜5倍の量の酢酸を添加した後に、酸触媒の存在下に、過酸化水素と処理することにより硫黄化合物を硫黄酸化物に変化させて、硫黄酸化物を分離することで、燃料油の脱硫をすることができることを見いだして本発明を完成させた。すなわち、積極的に酸触媒を存在させて過酢酸が生成しやすい状態とし、燃料油に含まれる有機硫黄化合物を酢酸溶媒中に抽出しながら酸化することにより燃料油から分離できる状態とすることを見出して本発明を完成させたものである。
【0012】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)硫黄化合物を含有する燃料油に、前記燃料油に対して容積比で1/2〜5倍の量の酢酸を添加した後に、酸触媒の存在下に、過酸化水素と処理することにより硫黄化合物を硫黄酸化物に変化させて、硫黄酸化物を分離することを特徴とする燃料油の酸化脱硫方法。
(2)硫黄化合物を含有する燃料油に、前記燃料油に対して容積比で1/2〜5倍の量の酢酸を添加し、有機二相系とし、酸触媒の存在下に、過酸化水素と処理することにより硫黄化合物を硫黄酸化物に変化させて、硫黄酸化物を分離することを特徴とする燃料油の酸化脱硫方法。
(3)燃料油に含まれる硫黄化合物が有機硫黄化合物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の燃料油の酸化脱硫方法。
(4)有機硫黄化合物がジベンゾチオフェン類等であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の燃料油の酸化脱硫方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の対象となる燃料油は、化石燃料由来の燃料油である。化石燃料としては、石油系によるものの他、石炭系によるもの、オイルサンド、オイルシェールなどの未開発燃料、及びオリマルジョン等の広く有機化石資源由来の燃料油が対象となる。
この具体例を挙げると、石油系としては、その沸点により各留分に分けられた組成物からなる燃料油が対象となる。軽質ナフサ(沸点10〜221℃)、軽油(沸点180〜300℃)、軽質サイクルオイル(沸点221〜345℃)、重質サイクルオイル(沸点が345℃を超えるもの)であり、ガソリン、灯油、軽油、重油等の特定の留分から成る蒸留生成物である。
石炭系としては、コールタール、或いは石炭液化油等が挙げることができる。
未利用石油類似資源では、オイルサンド、オイルシェール、オリマルジョン等からの抽出物、及び精製油等の液体化されているものである。
【0014】
前記の燃料油中に含まれる硫黄化合物としては、無機硫黄化合物及び有機硫黄化合物を挙げることができる。
有機硫黄化合物としては、脂肪族炭化水素を構成する炭素鎖中に硫黄原子を含有する化合物、たとえばチオール類、チオエーテル類等、芳香族炭化水素の置換基として炭素鎖中に硫黄原子を含有する基を有する化合物、たとえば、チオフェノール類、チオアニソール類等、および、骨格中に硫黄原子を含む複素環化合物、たとえばチオフェン類、ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類等を挙げることができる。
これらの硫黄化合物のうちには、従来法により比較的に容易に取り除くことができるものも含まれているが、必ずしも十分に脱硫することができないものも含まれている。
【0015】
前記した骨格中に硫黄原子を含有する複素環化合物、特に硫黄原子周辺にアルキル基などの置換基を持つジベンゾチオフェン類は、通常の水素化脱硫法では立体障害の影響により分解することが、困難な化合物であるとされている。
本発明ではこのような硫黄化合物も有機硫黄酸化物に酸化させ、簡便に分離除去することができるので、かかる硫黄化合物の除去法として特に有効である。
このような本発明により、前述の有機硫黄化合物類を燃料油中から有効に酸化除去することができるが、特にジベンゾチオフェン類への適用が効果的である。ジベンゾチオフェン類に含まれる化合物としては、ジベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェンのモノアルキル化体又はジアルキル化体等のアルキル化誘導体、更に分子内にジベンゾチオフェン骨格を有する化合物等が挙げられる。
【0016】
これらの有機硫黄化合物は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、縮合多環式化合物などの炭化水素を主成分とする燃料油中に含有されているものである。
本発明の対象となる燃料油は、これらの各成分を適宜含有する混合物であってもよい。さらに、これらの燃料油は、特定の脱硫操作を施した後の、有機硫黄化合物を含有する混合物であっても差し支えない。
本発明においては、水素化脱硫を行った後の燃料油中に含まれる水素化脱硫では分解することができなかった有機硫黄化合物を適宜割合で含有する燃料油を対象とすることが、特に有効である。
【0017】
燃料油中に含まれる硫黄化合物の割合は、格別限定されるものではないが、有機硫黄化合物の含有量として、硫黄として 1×10-4 (1 ppm) 〜10 重量%であるものであれば、十分に処理することができる。
【0018】
本発明の方法では、前記した硫黄化合物、一般に除去しにくいとされている有機硫黄化合物を含有する燃料油を、酸触媒の存在下に、過酸化水素と酢酸の混合組成物により処理すると、前記硫黄化合物は有機硫黄酸化物とすることができ、この有機硫黄酸化物は燃料油から物理的手段により分離除去することができる状態となり、この手段により分離除去される。
【0019】
本発明では、酸触媒が用いられる。この酸触媒は、過酸化水素と酢酸に作用して、過酢酸の生成を促進する役目を担うものであり、この過酢酸が有機硫黄化合物類を硫黄酸化物に変化させるものと考えられる。
このような酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等の有機酸、さらには、強酸性陽イオン交換樹脂及び高分子スルホン酸等の高分子酸触媒、固体リン酸触媒等が使用される。
高分子酸触媒及び固体リン酸触媒は、ろ過等の操作により容易に反応液中から回収することが可能である。そのため、触媒の分離・回収操作が非常に簡略化することができる。
酸触媒の使用量に特に制限はないが、通常、酢酸に対して0.1ミリ等量/L〜5 等量/Lの割合で添加される。
【0020】
本発明においては、反応に際して、極性有機溶媒を用いる。処理対象とする燃料油を極性有機溶媒に溶解させる。極性有機溶媒としては酢酸を使用することが好ましい。処理対象とする燃料油を極性溶媒に溶解させた後に、酸化剤を添加することが必要となるが、酸化剤として使用することを考慮して、過剰の酢酸を使用することをかねることができる。
燃料油として、酢酸と混合しない軽油等を対象とする場合は、そのまま適用が可能である。一方、燃料油として酢酸と混合してしまうガソリン等を対象とする場合は、酢酸と混合しない長鎖炭化水素類等を系に添加することにより、酢酸と混合しない状態とすることができるので、この状態で本発明を適用することができる。
【0021】
燃料油と酢酸から形成される有機二相系中において、酢酸は有機硫黄化合物の抽出溶媒として作用し、さらに、酸化溶媒としても作用する。したがって、本発明においては、硫黄化合物のほとんどは酢酸中で酸化される。その上、生成する硫黄酸化物のほとんどが、酢酸中に分配するため、酢酸は、酸化生成物の抽出溶媒としても作用する。
したがって、以上示したような酢酸の機能を十分に発揮させるために、酢酸の使用量としては、通常、燃料油に対して1/2〜5v/v(容積比)の割合で添加される。
【0022】
酸化剤としては、過酸化水素を使用する。
過酸化水素は、酢酸に作用して過酢酸を生成することにより、ジベンゾチオフェン類などの有機硫黄化合物を酸化し、主酸化生成物としてスルホン類を与える。 過酸化水素の使用濃度は、反応条件により適宜設定することができるが、入手しやすい30%水溶液として使用することができる。
過酸化水素の添加量は、反応条件により適宜設定することが出来るが、一般的には燃料油中に含まれる硫黄分に対して2倍モル量以上添加するのが好ましい。具体的には、硫黄分500 ppmの軽油1 Lに対して、30 %過酸化水素水溶液として1.5 mL以上としておけば充分である。
【0023】
反応温度は、反応原料が液状を保持できる温度であれば適宜設定することができる。このようなことから20〜 120 ℃で行うことができる。
反応温度は、やや加温した状態とすること、具体的には、50〜100℃の範囲であることが好ましい。
反応の再現性を達成するためには、反応器を上記温度範囲に保つための温度調節が有効である。温度調節のために反応器外壁より、熱媒体を用いて行うことができる。場合によっては、温度調節装置を反応器内に直接設置することも可能である。
反応に際しては、反応原料が極性有機溶媒と燃料油を十分に接触するように攪拌することが有効である。
反応器は流通系でも、回分式でも、又、半回分式でも行うことができる。
【0024】
反応終了後、酸化反応生成物を分離する。
有機硫黄化合物は酸化されることにより、酸素と結合した有機硫黄酸化物に変換される。例えばジベンゾチオフェン類は、酸化されて主としてジベンゾチオフェンスルホン類に変化する。すなわち、ジベンゾチオフェンでは、ジベンゾチオフェンスルホンとなり、4,6-ジメチルジベンゾチオフェンでは、4,6-ジメチルジベンゾチオフェンスルホンとなる。
【0025】
生成した有機硫黄酸化物は、抽出および吸着等の各種の分離操作を用いて除去することが出来る。吸着操作の吸着剤には、ゼオライト、粘土鉱物、活性炭等を挙げることができる。抽出操作の抽出剤には、酢酸、メタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、スルホラン等を挙げることができる。
本発明の方法では、溶媒として、脱硫処理対象である燃料油と混合しない酢酸を使用するため、反応により得られる有機硫黄酸化物は主としてその酢酸溶媒中に分配する。したがって、この混合溶媒から酢酸溶媒を分離することにより、生成する有機硫黄酸化物の大部分を除去することができる。分離後の燃料油は、更なる抽出および吸着操作等によりさらに精製することが出来る。また、有機硫黄酸化物を分離後の酢酸は再循環して極性溶媒として利用することができる。
【0026】
反応生成物である有機硫黄酸化物を除去した燃料油は、そのまま有機硫黄化合物が除去されたものとして、目的とする用途に使用することができる。また、一部を反応原料に再循環することもできる。さらに、添加した酢酸中に分配した炭化水素類を分離・回収することにより、処理物の歩留まりを向上することが出来る。
【0027】
【実施例】
以下に、本発明の内容を実施例により具体的に説明する。しかしながら、以下に示す、実施例は一例であり、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0028】
実施例1
内容積200 mLのガラス製反応器中に、モデル燃料油として調製したジベンゾチオフェン(DBT, 有機硫黄化合物)のテトラデカン(TD)溶液50 mL(DBT濃度, 10 mM)および酢酸 50 mLをとり、さらに、酸触媒として硫酸 1 mmol(2ミリ等量)を添加する。反応器に還流冷却器を設置後、反応器を60 ℃に保たれている水浴中に浸し、反応器内の液体をマグネチックスターラーで攪拌しながら、反応液の温度を60 ℃とする。しかる後、30 %過酸化水素水溶液0.5 mLを添加することにより、酸化反応を開始した。
モデル軽油中、すなわちTD溶液中のDBTは、速やかに酢酸中へと分配し、酢酸相中において速やかに酸化された。DBTの分配率は、TD相/酢酸相で、56:44であった。酸化の進行にともない、DBTは逐次TD相から酢酸相へと分配し、一方、主酸化生成物であるジベンゾチオフェンスルホンは酢酸相中に蓄積した。TD溶液中のDBTは、反応開始後40分以内にすべて酸化された(図1)。
図中、実施例1の結果は,○で示している。
【0029】
比較例1
酸触媒を添加しない他は、実施例1と同じ条件下に、反応を行った。
酸触媒を添加しない場合は、過酢酸の生成速度が小さいために、実施例1に比較して、DBTの酸化速度がかなり遅かった。反応開始後1時間経過後のDBTの酸化反応率は約55 %であり(図1),主酸化生成物はジベンゾチオフェンスルホキシドであった。
図中、 比較例1の場合は,●で示している。
【0030】
比較例2
前記した特許(特開平5-286869)の実施例に基づき反応を行った。
内容積200 mLのガラス製反応器中に、モデル燃料油である10 mM DBTのTD溶液50 mL、30 %過酸化水素水溶液5 mLおよび酢酸 5 mLをとり、還流冷却器を設置後、反応器を40 ℃に保たれている水浴中に浸し、反応器内の液体を、マグネチックスターラーで1時間攪拌する。しかる後、水浴の温度を60 ℃として酸化反応を行った。DBTの分配率は、TD相/酢酸相で、約600:1であった。実施例1に対する、この酢酸相中への低分配率は、酢酸添加量の不足および過酸化水素添加量の過多に起因している。DBTの酸化反応は、40 ℃においても進行し(反応率約10 %,図中波線部)、反応温度を60 ℃としてから1時間経過後のDBTの酸化反応率は約50 %であった(図1)。
図中、比較例2について■で示した。
また、主酸化生成物はジベンゾチオフェンスルホンであった。
この結果から明らかなように、前記した特許(特開平5-286869)から想定される方法では、過酸化水素と酢酸の使用は不満足な結果しか与えない。
【0031】
実施例2
酸触媒として強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーリスト15DRY,オルガノ(株))426 mg(2ミリ等量)を用いた他は、実施例1と同じ条件下に酸化反応を行った。その結果を、図1に示した。実施例2の結果は、□で示している。
TD溶液中のDBTは、反応開始50分以内にすべて酸化された(図1)。
【0032】
実施例3
基質である硫黄化合物に関し、実施例1で用いられているDBTを4,6-ジメチルジベンゾチオフェン(DMDBT)に変更し、その他は実施例1と同じ条件下に酸化反応を繰り返した。反応開始後30分経過後のDMDBTの酸化反応率は100 %であり、主酸化生成物は4,6-ジメチルジベンゾチオフェンスルホンであった。
【0033】
実施例4及び比較例3,4
酢酸の添加量の反応に与える影響に関し、実施例1で用いられている量を変更し、その他の条件は実施例1と同じ条件下に、酸化反応を繰り返した。
5mL(比較例3)、10mL(比較例4)および25mL(実施例4)の酢酸を各々用いた。結果を、図2に示した。酢酸添加量がモデル軽油に対して1/10(比較例3)でも十分に酸化が進行するが、1/2以上の酢酸の添加によりより速やかに酸化を達成できることがわかった。図2では、前記実施例1の結果については○で、比較例3の結果については□で、比較例4の結果については■で、実施例4の結果については●で、示した。
【0034】
実施例5
燃料油として、深度脱硫軽油(硫黄分,330 ppm)50 mLを用い、反応時間を1時間とした他は、実施例1と同じ条件下に酸化反応を行った。反応終了後、酢酸を分液した処理油を、水洗および脱水し,硫黄分を分析した。結果を、表1に示した。
反応処理後の硫黄分が58 ppm(脱硫率,82 %)へと大きく減少したことから、深度脱硫軽油の場合にも、本発明による酸化脱硫法が有効に作用することを確認できた。
脱硫油中には、微量の有機硫黄酸化物類が残存していることから、抽出および吸着操作等による処理が、硫黄分のさらなる低減に有効である。得られた脱硫油を等量のメタノールにより抽出処理した結果、硫黄分は14 ppm(脱硫率,96 %) まで低減できた。
【0035】
比較例5
酸触媒を添加しない他は、実施例5と同じ条件下に、反応を行った。結果を、表1に示した。
反応処理後の硫黄分は、76 ppm(脱硫率,77 %)まで減少したが、上記と同様のメタノール抽出処理後の硫黄分は48 ppm(脱硫率,85 %)であった。この結果は、酸触媒の無添加による、過酢酸の生成速度の低下にともなう、有機硫黄化合物類の酸化速度の減少に起因すると考えられる。酸触媒を添加しない場合においても、反応時間を3時間とすることにより、実施例5と同等の脱硫結果を得ることができた。
【0036】
比較例6
前記した特許(特開平5-286869)の実施例に基づき反応を行った。
燃料油として、深度脱硫軽油(硫黄分,330 ppm)50 mLを用い、反応温度60 ℃における反応時間を1時間とした他は、比較例2と同じ条件下に酸化反応を行った。
反応処理後の硫黄分は、275 ppm(脱硫率,17 %)であり、メタノール抽出処理後の硫黄分は83 ppm(脱硫率,75 %)であった。この結果から明らかなように、前記した特許(特開平5-286869)から想定される方法では、過酸化水素と酢酸の使用は不満足な結果しか与えない。
【0037】
実施例6
酸触媒として強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーリスト15DRY,オルガノ(株))426 mg(2ミリ等量)を用いた他は、実施例5と同じ条件下に酸化反応を行った。結果を以下に記す表1に示した。
反応処理後の硫黄分は55 ppm(脱硫率,83 %)へと大きく減少し,さらにメタノール抽出により15 ppm(脱硫率,95 %)まで低減できた。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、硫黄化合物である有機硫黄化合物を含有する液体燃料油に、前記燃料油に対して容積比で1/2〜5倍の量の酢酸を添加し、酸触媒の存在下、過酸化水素と処理して、含まれる有機硫黄化合物を含酸素有機硫黄化合物に選択的に変換し、燃料油中から除去することができる。本発明の方法では、従来から知られている水素化反応を利用する脱硫法では脱硫することが困難であったアルキル置換ジベンジチオフェン類等の難脱硫性化合物を除去できるものであり、その含有量も少ない量にまで脱硫する超深度脱硫が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 軽油を酸触媒の存在下に過酸化水素と酢酸で処理した結果、酸触媒を添加しない場合及び従来例と同じ条件下に行った結果を示す図。
【図2】軽油を酸触媒の存在下に過酸化水素と酢酸で処理する際に、酢酸の添加量を変化させたときの結果を示す図。
Claims (4)
- 硫黄化合物を含有する燃料油に、前記燃料油に対して容積比で1/2〜5倍の量の酢酸を添加した後に、酸触媒の存在下に、過酸化水素と処理することにより硫黄化合物を硫黄酸化物に変化させて、硫黄酸化物を分離することを特徴とする燃料油の酸化脱硫方法。
- 硫黄化合物を含有する燃料油に、前記燃料油に対して容積比で1/2〜5倍の量の酢酸を添加し、有機二相系とし、酸触媒の存在下に、過酸化水素と処理することにより硫黄化合物を硫黄酸化物に変化させて、硫黄酸化物を分離することを特徴とする燃料油の酸化脱硫方法。
- 燃料油に含まれる硫黄化合物が有機硫黄化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料油の酸化脱硫方法。
- 有機硫黄化合物がジベンゾチオフェン類等であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料油の酸化脱硫方法。
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