JP3939468B2 - 耐摩耗性ベンド管及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に固形物を輸送する輸送パイプの曲げ部に使用される耐摩耗性ベンド管及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、石炭等の固形物のパイプ輸送が注目されている。この輸送方法は、空気等の流体によに推進力で固形物を輸送するものであるが、その輸送パイプにおいては、固形物が激しく衝突する曲げ部、特に外周側の内面摩耗が激しく、その摩耗対策が求められている。
【0003】
この要求に対し、本出願人は所定の曲げ角度を所要数に分割し、各内面を耐摩耗材でラインニングした複数の節管を連結した関節状の耐摩耗性ベンド管を先に開発した(特許第1531757号)。この関節状の耐摩耗性ベンド管では、外周側の内面で各節管の輸送方向前縁が下流側の各節管の輸送方向後縁より高くなるように工夫が講じられている。この段差のため、節管の継ぎ目についても、外周側での内面摩耗が効果的に抑制される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本出願人が開発したこの耐摩耗性ベンド管は、固形物輸送パイプの曲げ部の寿命を延長するものとして各方面で注目されているが、その需要の延びに伴って製造方法の煩雑さが問題になってきた。
【0005】
即ち、節管の如きセグメントブロックが連結された構造のベンド管を製作する上で最も重要な点は、当該ベンド管に要求される所定の曲げ半径を如何に正確に維持して製作を行うかという点にあり、且つ、その所定の曲げ半径を維持しつつ迅速に製作を行う必要がある。しかし、要求される曲げ半径は種々雑多である。本出願人が開発した耐摩耗性ベンド管では、節管の個数調整により周長の変更は容易であるが、節管の連結部における連結角度に自由度がないため、種々雑多な曲げ半径に対応するためには様々な連結角度をもつ節管を組み合わせる必要があり、そのベンド管の製作に多大の工数を要していた。このため、ベンド管の製造コストが高くなり、また、急な注文に対しては対応が困難になっていた。
【0006】
本発明の目的は、要求される様々な曲げ半径を迅速に且つ低コストで実現できる耐摩耗性ベンド管及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、耐摩耗材からなり、且つ一端から他端にかけて内外径が変化すると共に、大径側の端部内面に、中心軸に対する傾斜角度が他の部分の内面と比べて大きいアンダカット部が設けられたテーパリング形状のセグメントブロックを用意しておく。そして、その複数個を、小径側の端部が大径側の端部内に傾斜して挿入された状態で連結する。小径側の端部は大径側の端部内で傾斜角度を変えることができる。このため、同じ形状のセグメントブロックを使用して、広範囲の曲げ半径が実現される。特に、セグメントブロックの大径側の端部内面に、中心軸に対する傾斜角度が他の部分の内面と比べて大きいアンダカット部を設けているため、セグメントブロックの個数を増大させることなく、連結角度αの増大が図られる。
【0008】
しかも、小径側の端部は大径側の端部内側に重なった状態となる。このため、大径側から小径側へ輸送媒体を流通させることにより、流通方向前端である小径側の端部は、下流側に連結されたセグメントブロックの内面より高くなって段差を形成するので、格段の配慮を行わずとも、段差による継ぎ目部の摩耗抑制効果が得られる。
【0009】
連結された複数個のセグメントブロックは、ベンド管の剛性確保、曲げ半径固定、更には管内の気密性確保のために、隣接するブロック同士が結合固定される。結合固定には接着剤、エポキシ樹脂、機械加工による締め付け、溶接、ロー付けなどを用いることができる。
【0010】
連結された複数個のセグメントブロックは又、管内の気密性を確保するため、外面がシールされる。このシールとしては、樹脂被覆、蛇腹管によるカバー、その他、管体によるカバーなとがある。被覆樹脂としてはFRP樹脂などがあり、蛇腹管の材質としてはアルミニウム、樹脂、ゴム、鉄等がある。
【0011】
本発明の耐摩耗性ベンド管は、連結部における連結角度の自由度を生かし、例えば次のような2つの方法で簡単に製造できる。
【0012】
第1の方法は、複数個のセグメントブロックを、所定の半径で湾曲した位置決め用の芯管の外側に同じ向きで嵌め込むと共に、小径側の端部を対向する大径側の端部内に挿入し、この状態で、隣接するセグメントブロック同士を固定することにより、所定半径で湾曲するベンド管を製造する。
【0013】
第2の方法は、複数個のセグメントブロックを、所定の半径で湾曲した位置決め用の溝内に同じ向きで挿入すると共に、小径側の端部を対向する大径側の端部内に挿入し、この状態で、隣接するセグメントブロック同士を固定することにより、所定半径で湾曲するベンド管を製造する。
【0014】
いずれの方法も、セグメントブロックの連結部における連結角度の自由度を生かして、所望の曲げ半径が簡単に得られる。
【0015】
第1の方法では、芯管は使用時に摩耗によって消失するので、抜き出す必要はない。
【0016】
セグメントブロックは、高クロム鋳鉄、各種セラミック、ガラス、超硬合金等の耐摩耗性をもつ各種耐摩耗性材料の単体物により構成される。また、易溶接鋼材からなる環状母材の内面に、耐摩耗材を溶接肉盛、溶射、メッキ等によりライニングした複合材により構成される。
【0017】
セグメントブロックでは、材質と共にテーパリング形状が重要である。
【0018】
小径側の端部を大径側の端部内に挿入するために、小径側の先端外径D1は、大径側の先端内径d2より小でなければならない。
【0019】
セグメントブロックの内外面の中心軸に対する傾斜角度θは5°以上、45°以下が好ましい。傾斜角度θが小さすぎると、セグメントブロックの長さLが長くなりすぎ、小さい曲げ半径の確保が困難になる。傾斜角度θが大きすぎる場合は、セグメントブロックの個数が増え、不経済になる。
【0020】
セグメントブロックの肉厚tは、使用される材質と要求される耐摩耗性によって適宜選択され、通常は3〜30mmである。
【0021】
小径側の端部を大径側の端部内に同心状にして(傾斜させずに)挿入すると、小径側の端部外縁が大径側の端部内面に全周にわたって当接し、これ以上の挿入が不可能となる。大径側の端部内で小径側の端部を傾斜させるためには、この挿入限界位置から小径側の端部を引き抜く必要があり、引き抜き過ぎると小径側の端部が抜け出る。同心状態で挿入限界位置まて挿入を行ったときに端部が重なり合う部分の長さは、セグメントブロックの肉厚t、傾斜角度θ、大径側の先端内径d2によって多少異なるが、10〜50mmの範囲が適切である。この長さが短すぎると、連結部における連結角度αが確保されない。長すぎる場合は、材料が無駄になる。
【0022】
連結部における連結角度α(大径側の端部内での小径側の端部の傾斜角度)は3°以上、15°以下が好ましい。連結角度αが小さすぎる場合は、所定の曲げ半径を確保するために必要なセグメントブロックの個数が増大する。連結角度αが大きすぎる場合は、小径側の端部と大径側の端部の間にあく隙間が大きくなり、気密性の確保が困難になる。
【0023】
セグメントブロックの大径側の端部内面に、中心軸に対する傾斜角度が他の部分の内面と比べて大きいアンダカット部が設けられていることにより、セグメントブロックの個数を増大させることなく、連結角度αの増大が図られることは前述したとおりである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施形態を示す耐摩耗性ベンド管の縦断面図、図2は同耐摩耗性ベンド管に使用されているセグメントブロックの縦断面図である。
【0025】
第1実施形態の耐摩耗性ベンド管は、図1に示すように、高クロム鋳鉄等の耐摩耗材料からなるテーパーリング形状をした同一形状・同一寸法のセグメントブロック10,10・・を、当該ベンド管の曲げ円弧に沿って連結した構造になっている。
【0026】
各セグメントブロック10は、図2に示すように、一端から他端に向かって内外径が漸減しており、より具体的には、外面が中心軸に対して所定の傾斜角度θで傾斜すると共に、内面が大径側の端部を除いて、同じ傾斜角度θで傾斜している。大径側の端部内面は、他の部分の内面に対して所定の傾斜角度φで更に大きく傾斜したアンダーカット部11となっている。
【0027】
セグメント10の小径側の端部を大径側の端部内に挿入するために、小径側の先端外径D1は、大径側の先端内径d2より小とされている。アンダーカット部11の起点は、小径側の端部を大径側の端部内に同心状態で挿入したときに、小径側の先端が大径側の端部内面に当接する挿入限界位置とされている。
【0028】
アンダーカット部11の傾斜角度φは45°以下が好ましい。連結部における連結角度αを増大させる点からは傾斜角度φは大きい方が好ましいが、大きすぎるとセグメントブロック10の肉厚が増大し、経済性が悪化する。また、アンダーカット部11の長さXは、大径側の先端内径d2に対する比率で表してd2×(1/4〜1/2)の範囲が好ましい。この長さが大きすぎると、例えば隣接する2つのセグメント10,10の重なり量が増大したり、セグメント10,10の肉厚が増大することにより、経済性が悪化する場合がある。
【0029】
複数個のセグメントブロック10,10・・は、同じ方向を向け、小径側の端部を傾斜させて対向する大径側の端部内に挿入した状態で、接着剤20により結合固定されることで、所定の曲げ半径の耐摩耗性ベンド管を形成している。
【0030】
ここで、セグメントブロック10,10・・の各連結部では、大径側の端部内に挿入された小径側の端部の傾斜角度が可変であるため、連結角度αに自由度がある。このため、同一形状・同一寸法のセグメントブロック10,10・・を使用するにもかかわらず、ベンド管の曲げ半径を広範囲に変更できる。特に、本実施形態では、小径側の端部内面にアンダーカット部11が設けられているので、連結角度αの調整範囲が特に大きい。
【0031】
なお、図2はこの連結角度αが最大値の状態を示している。
【0032】
形成された耐摩耗性ベンド管は、セグメントブロック10,10・・の大径側から小径側へ輸送媒体が流通する方向で使用される。セグメントブロック10,10・・の小径側の端部は大径側の端部内側に重なっているので、段差による継ぎ目部の摩耗抑制効果が得られる。
【0033】
耐摩耗性ベンド管の両端部には、接続のためにフランジ付きセグメント30,40が接続されている。媒体流通方向に対して上流側のフランジ付きセグメント30は、その先端部を下流側のセグメントブロック10の大径側の端部内に挿入するために、セグメントブロック10の小径側の先端外径D1とほぼ同じ外径の直管タイプとされている。下流側のフランジ付きセグメント40は、上流側のセグメントブロック10の小径側の端部が挿入される関係から、セグメントブロック10の大径側の先端内径d1とほぼ同じ内径のテーパー管とされている。フランジ付きセグメント30,40も接着剤20によってセグメントブロック10と結合されている。
【0034】
また、耐摩耗性ベンド管の外面側には、管内の気密性確保のため樹脂被覆層50が設けられている。
【0035】
図3は本発明の第2実施形態を示す耐摩耗性ベンド管の縦断面図である。
【0036】
第2実施形態の耐摩耗性ベンド管は、管内の気密性を確保するために、蛇腹管60を使用した点が、第1実施形態の耐摩耗性ベンド管と相違する。他の構造は、第1実施形態の耐摩耗性ベンド管と同じであり、同一部分に同一番号を付して説明を省略する。
【0037】
図4は耐摩耗性ベンド管の製造方法を示す斜視図である。
【0038】
図4では、製造すべきベンド管と同じ曲げ半径Rに加工された保持具70が使用される。保持具70はH型鋼からなり、両側のフランジ部71,71に挟まれたウエブ72の上方を、位置決め用の溝73として利用する。
【0039】
ベンド管の製造では、同一形状・同一寸法のセグメントブロック10,10・・を同じ向きで保持具70の上に並べ、それぞれの小径側の端部を大径側の端部に突き当たるまで挿入する。セグメントブロック10,10・・は、各下部が溝73内に嵌合し、位置決めされることにより、製造すべきベンド管と同じ曲げ半径Rに連結される。この状態で、セグメントブロック10,10・・を接着剤で相互に結合固定し、外面を樹脂被覆層や蛇腹管でシールすれば、前述したベンド管が製造される。
【0040】
図5は他の方法で製造される耐摩耗性ベンド管の縦断面図である。
【0041】
ここでは、製造すべきベンド管と同じ曲げ半径Rに加工された芯管80が使用されている。芯管80は軟鋼等からなり、セグメントブロック10,10・・に挿入されるように、その小径側の先端内径とほぼ同じ外径を有している。
【0042】
ベンド管の製造では、同一形状・同一寸法のセグメントブロック10,10・・を同じ向きで芯管80の外側に嵌め、それぞれの小径側の端部を大径側の端部に突き当たるまで挿入する。これにより、セグメントブロック10,10・・は、製造すべきベンド管と同じ曲げ半径Rに連結される。この状態で、セグメントブロック10,10・・を接着剤で相互に結合固定し、外面を樹脂被覆層や蛇腹管でシールすれば、前述したベンド管が製造される。
【0043】
このように、保持具70や芯管80を使用すれば、セグメントブロック10,10・・は製造すべきベンド管と同じ曲げ半径Rに連結される。従って、多種多様な曲げ半径のベンド管も簡単に製造される。
【0044】
図6〜図8はセグメントブロックの参考例を示す縦断面図である。
【0045】
図6に示されたセグメントブロック10は、図2のものより薄肉で、セラミックなどを想定している。アンダーカット部はないが、曲げ半径の最小値は小さい。これは、セグメントブロック10の長さとも関係があるが、肉厚が小さいために挿入傾斜角度を大きく取れるためである。
【0046】
図7に示されたセグメントブロック10は、内外面の傾斜角度θを大きくして、曲げ半径の最小値の更なる低減を図ったものである。曲げ半径の最小値は低減するが、セグメントブロック10の個数が多くなる。ただし、重なりが多くなるため、同じ厚みでも耐摩耗性は向上する。
【0047】
図8に示されたセグメントブロック10は、図2と同程度に厚肉である。曲げ半径の最小値を小さくするため、内外面の傾斜角度θを大きくしている。曲げ半径は低減するが、セグメントブロック10の個数が多くなり、重量も嵩む。ただし、重なりが多くなるため、同じ厚みでも耐摩耗性は向上する。
【0048】
【発明の効果】
以上に説明した通り、本発明の耐摩耗性ベンド管は、耐摩耗材からなり、且つ一端から他端にかけて内外径が変化したテーパリング形状のセグメントブロックの複数個を、小径側の端部が大径側の端部内に傾斜して挿入された状態で連結する構造のため、連結部における連結角度に自由度があり、種々雑多な曲げ半径ににも低コストで迅速に対応できる。また、段差効果により継ぎ目部の耐摩耗性が非常に良好である。
【0049】
本発明の耐摩耗性ベンド管の製造方法は、セグメントブロックを位置決めするための溝や芯管を用いることにより、所定の曲げ半径を特に簡単に得ることができ、これにより高性能な耐摩耗性ベンド管を安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態を示す耐摩耗性ベンド管の縦断面図である。
【図2】 同耐摩耗性ベンド管に使用されたセグメントブロックの縦断面図である。
【図3】 本発明の第2実施形態を示す耐摩耗性ベンド管の縦断面図である。
【図4】 耐摩耗性ベンド管の製造方法を示す斜視図である。
【図5】 他の方法で製造される耐摩耗性ベンド管の縦断面図である。
【図6】 セグメントブロックの参考例を示す縦断面図である。
【図7】 セグメントブロックの別の参考例を示す縦断面図である。
【図8】 セグメントブロックの更に別の参考例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 セグメントブロック
11 アンダーカット部
20 接着剤
30,40 フランジ付きセグメント
50 樹脂被覆層
60 蛇腹管
70 保持具
80 芯管
Claims (3)
- 耐摩耗材からなり、且つ一端から他端にかけて内外径が変化すると共に、大径側の端部内面に、中心軸に対する傾斜角度が他の部分の内面と比べて大きいアンダカット部が設けられたテーパリング形状のセグメントブロックの複数個を、小径側の端部が大径側の端部内に傾斜して挿入された状態で連結すると共に、隣接するセグメントブロック同士を固定し、且つ、連結された複数個のセグメントブロックの外面をシールすることにより、所定の半径で湾曲するベンド管を形成したことを特徴とする耐摩耗性ベンド管。
- 耐摩耗材からなり、且つ一端から他端にかけて内外径が変化すると共に、大径側の端部内面に、中心軸に対する傾斜角度が他の部分の内面と比べて大きいアンダカット部が設けられたテーパリング形状のセグメントブロックの複数個を、所定の半径で湾曲した位置決め用の芯管の外側に同じ向きで嵌め込むと共に、小径側の端部を対向する大径側の端部内に挿入し、この状態で、隣接するセグメントブロック同士を固定した後、連結された複数個のセグメントブロックの外面をシールすることにより、所定半径で湾曲するベンド管を製造することを特徴とする耐摩耗性ベンド管の製造方法。
- 耐摩耗材からなり、且つ一端から他端にかけて内外径が変化すると共に、大径側の端部内面に、中心軸に対する傾斜角度が他の部分の内面と比べて大きいアンダカット部が設けられたテーパリング形状のセグメントブロックの複数個を、所定の半径で湾曲した位置決め用の溝内に同じ向きで挿入すると共に、小径側の端部を対向する大径側の端部内に挿入し、この状態で、隣接するセグメントブロック同士を固定した後、連結された複数個のセグメントブロックの外面をシールすることにより、所定半径で湾曲するベンド管を製造することを特徴とする耐摩耗性ベンド管の製造方法。
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