JP3939171B2 - フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インフレーション成形を用いた熱可塑性樹脂からなるフィルム製造装置およびフィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インフレーション成形法によって、様々な用途のフィルムが製造されている。
【0003】
上記インフレーション成形法について説明する。先ず、ダイから溶融樹脂(熱可塑性樹脂)を押出し、該溶融樹脂に空気を入れて膨らますことにより、チューブ状の樹脂とする。そして、該チューブ状の樹脂の、未硬化部分であるバブルの外部から冷却媒体を吹き付けることにより、バブルを固化させて、一定の幅を有するフィルムを製造する。
【0004】
このとき、上記バブルを冷却するために、エアリングと整流筒とが用いられる。具体的には、エアリングから吹出す冷却媒体をバブルに効率よく当てるために整流筒を配置して、該冷却媒体を上記バブルに当てることによりバブルを固化させている。
【0005】
このような、インフレーション成形法によりフィルムを製造するフィルム製造装置としては、例えば、特開2000-25109号公報に開示されているフィルム製造装置等がある。
【0006】
上記特開2000-25109号公報に開示されているフィルム製造装置では、整流筒が同心円状に配置され、かつ、上下方向に可動になっている。
【0007】
また、上記エアリングとしては、特開平5−228993号公報に開示されているエアリングがある。
【0008】
上記特開平5−228993号公報には、2箇所の冷却媒体吹出し口を有しているエアリングが開示されている。そして、該エアリングは、一方の冷却媒体吹出し口をダイの開口部に対して水平になるように配置して、もう一方の吹出し口を適当な角度で配置するようになっている。
【0009】
ところで、従来、例えば、農園芸用の包装材料として用いられていた塩化ビニル樹脂は、高い強度を有しており、それゆえ、塩化ビニル製のフィルムは、屋外のような比較的外力の加わりやすい環境下でも十分に用いることが可能となっていた。
【0010】
しかしながら、近年、環境上の問題等から塩化ビニル樹脂をできる限り使用しないようになっている。そのため、ポリオレフィン系のフィルムは、塩化ビニル製の包装材料に代わる有望な包装材料となっている。
【0011】
そこで、製造されるフィルムの原料としては、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)やエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂が用いられている。これら、LDPEやEVA等の樹脂は、共押出し加工による多層化が容易である。また、メルトテンションが高いのでインフレーション成形法によるフィルムの製造が容易である。ところが、上記従来のLDPEやEVA等からなるフィルムは、引っ張りや、引き裂き、破り等のかたちで外力が加えられると容易に破損するため、例えば、農園芸用等に用いるには強度の点で不十分となっている。
【0012】
従って、インフレーション成形法によって製造され、かつ、従来よりもさらに強度の高いフィルムが求められており、様々な樹脂を用いたフィルムの製造が試みられている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のインフレーション成形法によって製造されるフィルムのフィルム製造装置では、製造するフィルムの寸法や用いる樹脂の特性によっては、良好にフィルムを製造することができないという問題を生じている。
【0014】
具体的には、例えば、メルトテンションが低い樹脂を用いてフィルムを製造する場合には、エアリングから吹出す風によるフィルムのばたつきが顕著に表れるため、一定の幅を有するフィルムの製造が困難になる。従って、メルトテンションの低い樹脂を用いてフィルムを製造するために、例えば、特開平5−228993号公報に開示されているエアリングを用いた場合では、例えば図6に示すように、エアリングから吹出す風がバブルに対して急な角度で当たることとなり、フィルムがばたついてしまう。また、エアリングから吹出す風を強くした場合には、エアリングにフィルムが接触する場合があり、バブル切れを起こす場合がある。
【0015】
一方、例えば、幅が広く、かつ、厚さが厚いフィルム、いわゆる、厚膜広幅のフィルムを製造する場合では、バブルを冷却媒体によって冷却して、固化させるには時間がかかる。また、厚膜広幅のフィルムは、自重により、バブルの垂れ下がりが大きい。従って、上記バブルを冷却する際、バブルを冷却する冷却開始位置がダイから遠い場合には、バブルの固化が遅いので、自重により垂れ下がったバブルが整流筒に接触して、バブル切れを起こす場合がある。バブル切れを起こすとフィルムを製造することができない。また、図7に示すように、整流筒の先端が、ダイの中心軸の所定の一点から放射状に伸びた形で配置されている場合には、上記冷却媒体を、バブルの垂れ下がりに沿って吹き付けることが困難になり、バブルがより接触し易くなる。
【0016】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、例えば、厚さが厚く、幅が広いフィルムを製造する場合やメルトテンションが低い樹脂を用いてフィルムを製造する場合等の、製造するフィルムの寸法や用いる樹脂の特性に関係なく、幅が一定であるフィルムを良好に製造するフィルムの製造方法およびフィルム製造装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明のフィルムの製造方法は、上記の課題を解決するために、800mm以上のダイ口径を有するダイから溶融樹脂を押出すとともに、エアリングの開口部から冷却媒体を吹出して溶融樹脂のバブルを冷却するインフレーション成形法により、フィルムを製造するフィルムの製造方法であって、ダイの中心軸に対して直角な方向における、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの距離Lが、10〜60mmの範囲内であり、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの、ダイの中心軸方向の距離tが0〜35mmの範囲内であり、かつ、ダイの中心軸を含む断面における、ダイの中心軸と上記冷却媒体の吹出し方向とのなす角度θが20〜50°の範囲内となるようにエアリングから冷却媒体を吹出させ、ダイの中心軸を含む断面における、それぞれの先端が、溶融樹脂の押出し方向に対して凹形状となるように配置された複数の整流筒によって、上記エアリングから吹出される冷却媒体を整流することを特徴としている。
【0018】
上記バブルとは、押出された溶融樹脂の固化していない部分のことである。上記バブルを、冷却媒体により固化させることにより、フィルムの幅を決めることができる。なお、上記溶融樹脂とは、溶融させた状態の熱可塑性樹脂を示す。
【0019】
上記エアリングとは、押出し成形、例えば、インフレーション成形法により溶融樹脂からなるフィルムを製造する際、ダイより押出された溶融樹脂のバブルに、該バブルの外側から冷却媒体を吹き付ける装置である。
【0020】
また、上記ダイとは、押出し成形を行う際、押出し成形機から排出される溶融樹脂を連続的に一定形状に賦形するために、押出し成形機の出口に取り付ける金属製の型のことである。
【0021】
上記の構成によれば、ダイの中心軸に対して直角な方向における、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの距離Lが、10〜60mmの範囲内であり、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの、ダイの中心軸方向の距離tが0〜35mmの範囲内であり、かつ、ダイの中心軸を含む断面における、ダイの中心軸と上記冷却媒体の吹出し方向とのなす角度θが20〜50°の範囲内となるようにエアリングから冷却媒体を吹出すようになっている。ここで、「エアリングの開口部」とは、エアリングから冷却媒体を吹出す吹出し口の中心を示している。また、「冷却媒体の吹出し方向」とは、エアリングの開口部における冷却媒体を吹出す方向を示している。また、「ダイの開口部の中心」とは、ダイの溶融樹脂を押出す面における開口部の中心を示している。
【0022】
ダイの中心軸に対して直角な方向における、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの距離Lを、10〜60mm、より好ましくは30〜60mmの範囲内として、かつ、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの、ダイの中心軸方向の距離tを0〜35mm、より好ましくは0〜25mmの範囲内の範囲内とすることにより、従来と比べて、バブルの冷却開始位置を近づけることができる。
【0023】
また、ダイの中心軸を含む断面における、ダイの中心軸と上記冷却媒体の吹出し方向とのなす角度θが20〜50°、より好ましくは20〜40°の範囲内となるようにエアリングから冷却媒体を吹出すことにより、冷却媒体をバブルに対して急な角度で吹き付けることがないので、フィルムをばたつかせることがない。
【0024】
これにより、エアリングから吹出される冷却媒体をバブルに吹き付ける位置、すなわち、バブルの冷却開始位置を従来と比べて近くすることができ、かつ、バブル(バブルの形成方向)に沿わせるように冷却媒体を吹き付けることができる。それゆえ、早くバブルを冷却することができ、かつ、フィルムをばたつかせることがない。
【0025】
従って、例えば、メルトテンションの低い樹脂であっても、フィルムをばたつかせることがないので、幅が一定であるフィルムとすることができる。
【0026】
また、例えば、幅が広く、厚さが厚いフィルムを製造する場合でも、冷却開始位置を近くすることができるので、自重による垂れ下がりを防止することができ、一定の幅のフィルムを製造することが出来る。
【0027】
以上のように、ダイとエアリングとを上記関係を満足するように配置することにより、製造するフィルムの寸法や用いる樹脂の特性に関係なく、幅が一定であるフィルムを良好に製造することができる。
【0028】
本発明のフィルムの製造方法は、上記溶融樹脂が少なくともエチレン・α―オレフィン系共重合体を含む構成がより好ましい。
【0029】
上記溶融樹脂(熱可塑性樹脂)として、エチレン・α―オレフィン系共重合体を用いることにより、例えば、溶融樹脂が低密度ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル共重合体であるフィルムに比べて、より強度の高いフィルムを得ることができる。
【0030】
本発明のフィルムの製造方法は、上記エチレン・α―オレフィン系共重合体は、メタロセン系触媒を用いて製造されている構成がより好ましい。
【0031】
メタロセン系触媒を用いて、エチレン・α―オレフィン系共重合体を製造することにより、通常のエチレン・α―オレフィン系共重合体と比べて、より一層強度の強いエチレン・α―オレフィン系共重合体を得ることができる。従って、より一層強度が高いフィルムを製造することができる。
【0032】
本発明のフィルムは、上記の課題を解決するために、上記フィルムの製造方法によって得られ、かつ、上記フィルムの厚さが80μm以上であり、かつ、円周が7500mm以上のチューブ状であることを特徴としている。
【0033】
本発明のフィルムは、さらに、農園芸用途に用いられる構成がより好ましい。
【0034】
上記製造方法では、例えば、メルトテンションは低いが強度は高いといった強度の高いフィルムを簡単に製造することができる。また、フィルムを農園芸用途に使用するには、強度が高いことが求められる。上記製造方法によれば、強度の高いフィルムを簡単に得ることができるので、農園芸用途として、より好適に使用することができる。
【0035】
本発明のフィルム製造装置は、上記の課題を解決するために、溶融樹脂を押出すダイと、エアリングから吹出される冷却媒体を整流する複数の整流筒とを備えた、インフレーション成形法によりフィルムを製造するフィルム製造装置において、ダイの中心軸を含む断面における、上記複数の整流筒のそれぞれの先端(先端を結んだ線)が、溶融樹脂の押出し方向に対して凹形状、すなわち、溶融樹脂の押出し方向の反対方向に対して凸形状となるように整流筒が配置されていることを特徴としている。
【0036】
整流筒とは、エアリングから吹出される冷却媒体をバブルに沿わすために、該冷却媒体の流れを抑制(整流)するものである。また、該整流筒は、ダイの中心軸に対して、同心円状に配置されている。
【0037】
例えば、メルトテンションが低い樹脂を用いてフィルムを製造する場合、樹脂のメルトテンションが低いために、バブルは、自重(重力)によって、垂れ下がった形状となる。また、厚さが厚く、かつ、幅の広いフィルムを製造する場合でも、バブルは、自重(重力)によって、垂れ下がった形状となる。
【0038】
上記の構成によれば、ダイの中心軸を含む断面における、上記複数の整流筒のそれぞれの先端(先端を結んだ線)が、溶融樹脂の押出し方向に対して凹形状、すなわち、溶融樹脂の押出し方向の反対方向に対して凸形状となるように整流筒が配置されている。これにより、例えば、幅が広く厚さが厚いようなフィルムやメルトテンションが低いフィルム等の様々な条件のフィルムを製造する場合であっても、バブルに沿って冷却媒体を吹き付けることができるので、バブルが整流筒に接触することなく、フィルムを得ることができる。
【0039】
従って、整流筒が上記形状であることにより、例えば、幅を変化させてフィルムを製造する場合やメルトテンションの低い樹脂を用いてフィルムを製造する場合等でも、バブル切れを起こすことがなく、かつ、バブルに沿って冷却媒体を吹き付けることができるので、良好にフィルムを製造することができる。
【0040】
なお、上記複数の整流筒のそれぞれの先端は、ダイの中心軸を通る断面において、該ダイの中心軸上を頂点とする円弧上に配置されていてもよい。
【0041】
本発明のフィルム製造装置は、上記溶融樹脂が少なくともエチレン・α−オレフィン系共重合体を含む構成がより好ましい。
【0042】
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体は、例えば、塩化ビニル等と比べて、メルトテンションが低いため、フィルムを製造するときフィルムがばたついてバブル切れを起こし易い。上記構成によれば、上記溶融樹脂がエチレン・α−オレフィン系共重合体であっても、好適にフィルムを製造することができる。
【0043】
本発明のフィルム製造装置は、上記エチレン・α―オレフィン系共重合体は、メタロセン系触媒を用いて製造されている構成がより好ましい。
【0044】
メタロセン系触媒を用いて、エチレン・α―オレフィン系共重合体を製造することにより、通常のエチレン・α―オレフィン系共重合体と比べて、より一層強度の強いエチレン・α―オレフィン系共重合体を得ることができる。従って、より一層強度が高いフィルムを製造することができる。
【0045】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0046】
本実施の形態にかかるフィルム製造装置は、溶融樹脂を押出す、800mm以上のダイ口径を有するダイと冷却媒体を吹出すエアリングとエアリングから吹出される冷却媒体を整流する複数の整流筒とを備えた、インフレーション成形法によりフィルムを製造するフィルム製造装置において、エアリングは、ダイから見て、溶融樹脂の押出し方向の下流側に設けられており、ダイの中心軸に対して直角な方向における、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの距離Lが、10〜60mm、より好ましくは30〜60mmの範囲内であり、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの、ダイの中心軸方向の距離tが0〜35mm、より好ましくは0〜25mmの範囲内であり、かつ、ダイの中心軸を含む断面における、ダイの中心軸と上記冷却媒体の吹出し方向とのなす角度θが20〜50°、より好ましくは20〜40°の範囲内となるようにダイとエアリングとが配置されており、かつ、ダイの中心軸を含む断面における、上記複数の整流筒のそれぞれの先端(先端を結んだ線)が、溶融樹脂の押出し方向に対して凹形状、すなわち、溶融樹脂の押出し方向の反対方向に対して凸形状となるように上記整流筒が配置されている構成である。なお、「溶融樹脂の押出し方向」とは、ダイの中心軸の形成されている方向と一致し、かつ、溶融樹脂が押出される方向を示している。
【0047】
本実施の形態にかかるフィルム製造装置は、インフレーション成形法によってフィルムを製造する製造装置であり、図1、図2に示すように、ダイ1とエアリング2と整流筒3とガイド板4とニップローラ5と押出し成形機(図示しない)とを備えている。なお、インフレーション成形法については後述する。
【0048】
上記ダイ1とは、押出し成形を行う際、押出し成形機から排出される溶融樹脂、すなわち、溶融した熱可塑性樹脂を連続的に一定形状に賦形するために、図示しない押出し成形機の出口に取り付ける金属製の型のことである。ダイ1としては、多層インフレーション成形用のダイを用いればよく、環状ダイが好適に使用される。ダイ1の溶融樹脂を押出す口、すなわちダイ1の開口部(以下、ダイ開口部と称する)の形としては、通常は円形であるが、特に限定されるものではない。該ダイ開口部の中心には、図示しない、ダイ1から押出された溶融樹脂の内部に空気を吹き込むためのパイプ(チューブ)が設けられている。ダイ開口部の直径、すなわち、ダイ1のダイ口径は、800mm以上であることが好ましく、上記800mm以上のダイ口径を有することにより、広幅厚膜のフィルムを製造するのに適している。なお、製造するフィルムのサイズは、溶融樹脂に吹き込む空気の量やダイ開口部の直径、押出す溶融樹脂の量等によって変えることができる。また、「ダイ開口部の中心」とは、ダイ1の熱可塑性樹脂を押出す面における開口部の中心を示している。また、上記押出し機については、公知であり、詳細な説明は省略する。
【0049】
上記エアリング2とは、押出し成形、例えば、インフレーション成形法によりチューブ状のフィルムを製造する際に、ダイ1より押出された、固化していないチューブの部分(以下、バブルと称する)を冷却する装置である。該エアリング2の吹出し口からは、冷却媒体が吹出すようになっている。そして、該エアリング2から吹出される冷却媒体をバブルに吹き付けることにより、該バブルを固化するようになっている。また、バブルに冷却媒体を吹き付けることで、ベンチュリ効果によりバブルを固定することができる。該冷却媒体としては、具体的には、例えば、空気等が挙げられる。また、上記空気を冷房機等で冷却することにより、バブルの冷却効率を上げることができる。また、バブルに吹き付ける冷却媒体の風速(風圧)としては、製造するフィルムの寸法、および、使用する熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜変更すればよい。なお、エアリング2の配置位置、および、形状については後述する。
【0050】
整流筒3とは、エアリング2から吹出される冷却媒体をバブルに沿わす、すなわち、該冷却媒体の流れを抑制(整流)するものである。また、該整流筒3は、ダイ1の中心軸に対して、同心円状に配置されている。また、該整流筒3は、ガイドチャンバーと称されることもある。整流筒3の断面形状については後述する。
【0051】
ガイド板4およびニップロール5は、エアリング2によって冷却されることにより幅の決まったフィルムを折りたたむために備えられている。ガイド板4およびニップロール5については、公知であり、詳細な説明は省略する。
【0052】
ここで、本実施の形態にかかるエアリング2の形状および配置位置について説明する。該エアリング2の吹出し口2a、すなわち、エアリング開口部は、図3に示すように、ダイ1の内側、すなわち、熱可塑性樹脂の押出し方向(すなわち図3、図4でいうダイ1の中心軸に平行な方向;以下、樹脂押出し方向と称する)に対して、上流側に設けられている。また、エアリング2は、従来と比べて、ダイ1の近くに配置されている。具体的には、エアリング2の冷却媒体移動管2bは、ダイ1に埋め込まれた形になっている。なお、「樹脂の押出し方向」とは、ダイ1の中心軸方向であり、かつ、溶融樹脂が押出される方向を示している。
【0053】
また、上記エアリング2の吹出し口の形状としては、図3に示すように、切り欠き状、すなわち、ダイ1の溶融樹脂の押出し面に対して傾斜している形状となっていることがより好ましい。エアリング2の吹出し口2aをダイ1に近づける方法としては、図3に示すように、ダイ1の円周部を切り取る方法が有効である。切り取る部分としては、垂直方向(ダイ1の中心軸方向)の距離をy、水平方向(垂直方向に対して直交する方向)の距離をxとしたとき、10≦x≦60mmの範囲内、0<y≦100mmの範囲内がより好ましい。
【0054】
また、エアリング2の吹出し口2aは、従来のエアリングの吹出し口に比べて、ダイ開口部1aにより近い位置に配置されている。すなわち、エアリング2の吹出し口2aを、従来よりもダイ1に近づけることができる。これにより、ダイ1から押出された熱可塑性樹脂を冷却する冷却開始位置をダイ1に、より近づけることができるので、早く冷却することができる。
【0055】
従って、冷却開始位置をダイ1に近づけたことにより、例えば、メルトテンションの低い熱可塑性樹脂を用いた場合でも、バブルの硬化を早くすることができるので、良好なフィルムを製造することができる。また、厚膜広幅のフィルムを製造する場合でも、バブルの冷却を十分に行うことができるので、良好なフィルムを製造することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、エアリング2の吹出し口2aの方向、換言すれば、エアリング2から吹出す冷却媒体の吹出し方向がバブルの形成方向に対して、略同じ方向になっている。これについて、以下に説明する。ダイ1から押出された熱可塑性樹脂は、該熱可塑性樹脂の内部に空気を注入することによりバブルを形成する。該バルブは、樹脂押出し方向に向かって、広がるように形成される。そして、本実施の形態にかかるエアリング2は、ダイ1の中心軸を通る断面における、ダイ1の樹脂押出し方向とエアリング2の冷却媒体吹出し方向とのなす角度が20〜50°の範囲となるように吹出し口2aを配置している。なお、「冷却媒体吹出し方向」とは、エアリング2の冷却媒体を吹出す吹出し口(エアリング開口部)の中心における冷却媒体を吹出す方向を示している。
【0057】
これにより、エアリング2から吹出す冷却媒体を、バブルに対して、急な角度で当てることないので、該冷却媒体がバブルをばたつかせることがない。特に、メルトテンションが低い熱可塑性樹脂を用いてフィルムを製造する場合でも、急な角度で当てることがないので、フィルムのばたつきを抑制することができるので、例えば、熱可塑性樹脂としてエチレン・α−オレフィン系共重合体を用いた場合、強度があり、かつ、幅が一定のフィルムを得ることができる。
【0058】
ダイ1とエアリング2との位置関係について、図4を参照して説明する。なお、以下の説明では、エアリング2の吹出し口2aとは、冷却媒体を吹出す面の中心を示す。また、ダイ開口部1aとは、ダイ1の開口部の中心、すなわち、ダイ1の中心軸上、かつ、ダイ1の先端である点(位置)を示す。
【0059】
本実施の形態にかかるフィルム製造装置では、(1)ダイ開口部1aとエアリング2の吹出し口2aとの、ダイ1の中心軸に対して垂直な方向の距離をL、(2)ダイ開口部1aとエアリング2の吹出し口2aとの、ダイ1の中心軸方向(上記垂直な方向に対して直交する方向)の距離をt、(3)ダイ1の中心軸を含む断面における、冷却媒体吹出し方向と樹脂押出し方向とのなす角度をθとしたとき、10≦L≦60より好ましくは30≦L≦60、0≦t≦35より好ましくは0≦t≦25、20≦θ≦50より好ましくは20≦θ≦40を満足するようにダイ1とエアリング2とが配置されている。なお、冷却媒体吹出し方向とダイ1の中心軸とは、同一平面上に存在する。また、Lの値を小さくする場合、製膜安定性を高めるために、θの値を大きくする必要がある。一方、Lの値が大きい場合、冷却効率を高めるために、θの値を小さくする必要がある。なお、例えば、ダイが環状ダイの場合には、ダイの開口部はリング状に形成されている。従って、上記位置関係は、ダイの中心軸を含む断面における、エアリングの吹出し口とダイの開口部とが最も近い位置における位置関係を示している。
【0060】
ダイ1とエアリング2とを、上記範囲を満足する配置とすることにより、フィルムをばたつかせることがなく、かつ、バブルを早く固化させて、一定の幅を有するフィルムを得ることができる。また、エアリング2は、冷却効率をさらに良くするために、当該冷却媒体の吹出し口の上にさらに別の冷却媒体吹出し口を設けた多段構造としてもよい。
【0061】
本実施の形態にかかる整流筒3について説明する。本実施の形態にかかる整流筒3は、図5に示すように、ダイ1の中心軸を含む断面における、複数の整流筒3のそれぞれの先端(先端を結んだ線)が、樹脂押出し方向に対して凹形状、すなわち、樹脂押出し方向の反対方向に対して凸形状となるように整流筒3が配置されている。
【0062】
例えば、厚膜広幅のフィルムを製造する場合や、メルトテンションが低い熱可塑性樹脂を用いてフィルムを製造する場合、自重によって、バブルは樹脂押出し方向に対して凹形状となる。上記バブルの凹形状は、製造するフィルムの寸法や用いる熱可塑性樹脂により異なる。本実施の形態にかかる整流筒3では、ダイ1の中心軸を含む断面が、樹脂押出し方向に対して凹形状であるので、上記凹形状になったバブルと整流筒3とが接触することをより一層防止することができる。
【0063】
上記凹形状の度合いは、製造するフィルムの寸法や用いる熱可塑性樹脂の特性によって適宜変更すればよい。
【0064】
なお、ダイ1の中心軸を含む断面における、該ダイ1の中心軸上の任意の一点を頂点として、円弧状となるように整流筒3を配置してもよい。また、複数の整流筒3のそれぞれの先端が、ダイ1の中心軸を含む断面における、該ダイ1の中心軸上の所定の一点を頂点として樹脂押出し方向に向かって二次曲線となるように配置されていてもよい。
【0065】
以上のように、本実施の形態にかかるフィルム製造装置を用いてフィルムを製造することにより、フィルムをばたつかせることがなく、かつ、バブルを早く固化させることができるので、例えば、メルトテンションが従来よりも低い熱可塑性樹脂を用いる場合や厚膜広幅のフィルムを製造する場合であっても、幅が一定であるフィルムを製造することができる。
【0066】
次に、本実施の形態にかかるフィルムの製造方法について説明する。
【0067】
本実施の形態にかかるフィルムの製造方法は、800mm以上のダイ口径を有するダイから溶融樹脂を押出すとともに、エアリングの開口部から冷却媒体を吹出して溶融樹脂のバブルを冷却するインフレーション成形法により、フィルムを製造するフィルムの製造方法であって、エアリングの開口部は、ダイから見て、該ダイから押出す溶融樹脂の押出し方向の下流側に設けられており、ダイの中心軸に対して直角な方向における、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの距離Lが、10〜60mm、より好ましくは30〜60mmの範囲内であり、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの、ダイの中心軸方向の距離tが0〜35mmより好ましくは0〜25mmの範囲内であり、かつ、ダイの中心軸を含む断面における、ダイの中心軸と上記冷却媒体の吹出し方向とのなす角度θが20〜50°より好ましくは20〜40°の範囲内となるようにエアリングから冷却媒体を吹出す構成である。
【0068】
本実施の形態のフィルムの製造方法において、溶融樹脂とは、溶融した熱可塑性樹脂のことである。上記熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・メタクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩素含有樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂;フッ素含有樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記例示の熱可塑性樹脂のうち、環境面、フィルム強度および透明性の観点から、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
【0069】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には例えば、α−オレフィンの単独重合体または共重合体、α−オレフィンを主成分とするα−オレフィンと異種単量体との共重合体等が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体、さらに上記異種単量体が極性ビニルモノマーである、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・メタクリル酸メチル共重合体、アイオノマー樹脂等を挙げることができる。上記エチレン・α−オレフィン共重合体(以下、LLDPEと称する)については後述する。
【0070】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、フィルムの透明性、柔軟性およびコストの点からは、JIS K7112(1980)の規定による測定で密度が0.945g/cm3以下、より好ましくは、0.93g/cm3以下の、低密度ポリエチレン(LDPE)やエチレン・α−オレフィン共重合体、酢酸ビニル含有量が30重量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等がより好ましい。
【0071】
しかし、例えば、熱可塑性樹脂としてLDPEのみやEVAのみを用いたフィルムは、フィルムの強度に劣るため、本実施の形態にかかるフィルムを、強度を必要とする用途、例えば、農園芸用等に用いる場合には、好適に用いることができない場合がある。
【0072】
従って、例えば、本実施の形態にかかるフィルムを農園芸用に用いる場合、熱可塑性樹脂としては、LLDPEを含む樹脂が最も好ましい。LLDPEを含む樹脂を用いることにより強度の強いフィルムを得ることができる。また、例えば、より強度を必要とする用途には、LLDPEの重合時に、メタロセン系触媒等の均一系触媒を使用することが好ましい。すなわち、本実施の形態で用いられるLLDPEとしては、メタロセン系触媒を用いて製造されたLLDPE(以下、m−LLDPEと称する)が好適に用いられる。上記m−LLDPEは、強度、および、得られるフィルムの取り扱い性に優れている。なお、m−LLDPEの具体的な製造方法(重合法)については、従来公知の各種手法を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0073】
上記LLDPEについて説明する。本実施の形態で用いられるLLDPEは、エチレンとα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン共重合体であれば得に限定されるものではない。使用されるα−オレフィンは、炭素数が3〜18のα−オレフィンであることが好ましく、炭素数が4〜12であることが特に好ましい。
【0074】
上記α−オレフィンとしては、具体的には、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。これらα−オレフィンは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0075】
上記LLDPE中のα−オレフィンモノマー単位の含有量(二種以上を併用した場合はその合計量)は、0.5モル%〜25モル%の範囲内であることが好ましく、0.5モル%〜15モル%の範囲内であることがより好ましい。
【0076】
本実施の形態で用いられるLLDPEのメルトフローレートは、0.1g/10分〜50g/10分の範囲内であることが好ましく、0.3g/10分〜10g/10分の範囲内であることがより好ましく、0.5g/10分〜5g/10分の範囲内であることがさらに好ましく、0.8g/10分〜2.5g/10分の範囲内であることが特に好ましい。該メルトフローレートの下限値が0.1g/10分未満であると、本実施の形態にかかるフィルムを押出成形する際の加工性に劣る場合がある。また、該メルトフローレートの上限値が50g/10分を超えても加工性が劣ることとなり、また、得られるフィルムの強度も劣る場合がある。
【0077】
本実施の形態で用いられるLLDPEの密度は、JIS K7112(1980)の規定による測定で0.875g/cm3〜0.945g/cm3の範囲内であればよいが、0.875g/cm3〜0.935g/cm3の範囲内であることが好ましく、0.880g/cm3〜0.930g/cm3の範囲内であることがより好ましく、0.895g/cm3〜0.925g/cm3の範囲内であることが特に好ましい。密度が0.945g/cm3よりも大きいと、フィルム製造時の各樹脂層の積層性が劣る場合がある。また、密度が0.875g/cm3よりも小さいと、フィルムの強度や加工性が劣る場合がある。
【0078】
本実施の形態で用いられるLLDPEのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC;gel permeation chromatography)で求めた分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、フィルムの強度、および加工性の点から、1.2〜4の範囲内であることがより好ましく、1.5〜3.5の範囲内であることがさらに好ましく、1.7〜2.5の範囲内であることが特に好ましい。分子量分布の上限値が4を超えると、フィルムの透明性や強度が劣る場合がある。また、分子量分布の下限値を1.2未満にする場合には、LLDPEの重合が困難になり、コストがかかることとなる。
【0079】
上記熱可塑性樹脂に上記LLDPEが含まれている場合、該LLDPEの含有量としては、熱可塑性樹脂を100重量%としたとき、10〜90重量%の範囲内がより好ましく、15〜80重量%の範囲内が特に好ましい。熱可塑性樹脂を構成する樹脂組成物にLLDPEを上記範囲内で添加することで、高い強度を得ることができる。
【0080】
また、上記熱可塑性樹脂(溶融樹脂)には、製品に求められる性能に応じて、種々の添加剤を配合することができる。該添加剤としては、具体的には、例えば、赤外線吸収剤、界面活性剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、難燃剤等が挙げられる。
【0081】
上記熱可塑性樹脂への添加剤の配合は、バンバリーミキサー、スーパーミキサー、ニーダー、一軸押出機、二軸押出機等の混合機を使用する慣用的な方法により行うことができる。
【0082】
また、上記熱可塑性樹脂の150℃で測定したときのメルトテンションとしては、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましく、5以上が特に好ましい。上記熱可塑性樹脂のメルトテンションが3よりも小さい場合には、ダイ1から押出されたバルブが、自重によって垂れ下がり、整流筒3と接触する場合がある。従って、上記熱可塑性樹脂のメルトテンションを3以上とすることにより、バブルをより安定にすることができるので、得られるフィルムの幅を一定にすることが容易になる。
【0083】
また、フィルムは単層構成であっても二層以上を含む多層構成であってもよい。つまり、ダイ1から押出す樹脂を多層構成にして押出してもよい。また、上記製造方法によって得られたフィルムにさらに他のフィルム(層)を積層させてもよい。多層構成のフィルムの場合、その層構成については特に限定されるものではなく、例えば3種3層、3種5層、4種5層、5種5層、P種Q層(P,Qは自然数であり、Q≧P)等の構成を例示することができる。フィルムが3層以上からなる場合、フィルムの両表面層の厚さの合計は、フィルム全体の厚さの10〜90%の範囲内がより好ましく、20〜80%の範囲内がさらに好ましく、30〜70%の範囲内が特に好ましい。
【0084】
また、例えば、上記赤外線吸収剤をフィルムの表面層以外の層に多く配合する場合には、フィルムの両表面層の厚さの合計は、フィルム全体の厚さの10〜40%の範囲内がより好ましく、15〜30%の範囲内が特に好ましい。なお、これら両表面層の厚さは同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0085】
上記の熱可塑性樹脂を用いて、インフレーション成形法によって、本実施の形態にかかるフィルムを製造する。該インフレーション成形法とは、ダイから押出された溶融樹脂(熱可塑性樹脂)の内部に空気を入れて膨らませながらチューブ形状の溶融樹脂とするとともに、外部から上記チューブ形状の溶融樹脂に冷却媒体を吹き付けて、溶融樹脂(バブル)を固化させることにより、チューブ状フィルム(環状フィルム)を得る方法である。
【0086】
本実施の形態にかかるフィルムの製造方法では、▲1▼800mm以上のダイ口径を有するダイの中心軸に対して直角な方向における、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの距離Lが、10〜60mmの範囲内であり、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの、ダイの中心軸方向の距離tが0〜35mmの範囲内となるように冷却媒体をバブルに吹き付けている。ここで、「エアリングの開口部」とは、エアリングから冷却媒体を吹出す吹出し口の中心を示している。
【0087】
さらに、本実施の形態にかかるフィルムの製造方法では、上記▲1▼に加えて、ダイの中心軸を含む断面における、ダイの中心軸と上記冷却媒体の吹出し方向とのなす角度θが20〜50°の範囲内となるようにエアリングから冷却媒体を吹出すようになっている。ここで、「冷却媒体の吹出し方向」とは、エアリングの開口部の中心から冷却媒体を吹出す方向を示している。
【0088】
これにより、エアリングからの冷却媒体をバブル吹き付ける位置、すなわち、バブルの冷却開始位置を従来と比べて近くすることができ、かつ、バブルに沿わせるように冷却媒体を吹き付けることができる。これにより、早くバブルを冷却することができ、かつ、フィルムをばたつかせることがない。
【0089】
従って、例えば、メルトテンションの低い樹脂であっても、フィルムをばたつかせることがないので、一定の幅のフィルムとすることができる。
【0090】
また、例えば、幅が広く、厚さが厚いフィルムを製造する場合でも、冷却開始位置を近くすることができるので、自重による垂れ下がりを防止することができ、一定の幅のフィルムを製造することが出来る。
【0091】
本実施の形態にかかるフィルムは、以上のように、上記フィルムの製造方法によって得られ、かつ、上記フィルムの厚さが80μm以上、より好ましくは110μm以上であり、特に好ましくは130μm以上であり、かつ、円周が7500mm以上、さらに好ましくは8000mm以上、特に好ましくは9000mm以上のチューブ状である構成である。
【0092】
また、熱可塑性樹脂としてLLDPEを用いて、本実施の形態にかかるフィルムの製造方法により製造されたフィルムは、例えば、温度や湿度の変化が比較的激しい環境下、具体的には、特に、風雨や直射日光にさらされる屋外での使用、例えば農園芸用途に好適に使用することができる。この農園芸用途としては、より具体的には、農業用のパイプハウスや鉄骨ハウスの被服フィルム、屋外展帳用ハウス資材等の包装材料として好適に用いることができる。また、上記LLDPEがメタロセン系触媒を用いて製造されたm−LLDPEの場合には、より強度が強いため、農園芸用途により好適に使用することができる。
【0093】
なお、本実施の形態にかかるフィルム製造装置は、溶融樹脂を押出す、800mm以上のダイ口径を有するダイと冷却媒体を吹出すエアリングとを備えた、インフレーション成形法によりフィルムを製造するフィルム製造装置において、エアリングの開口部は、ダイから見て、該ダイから押出す溶融樹脂の押出し方向の下流側に設けられており、ダイの中心軸に対して直角な方向における、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの距離Lが、10〜60mmの範囲内であり、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの、ダイの中心軸方向の距離tが0〜35mmの範囲内であり、かつ、ダイの中心軸を含む断面における、ダイの中心軸、すなわち、ダイの開口部の中心における上記溶融樹脂の押出し方向と上記冷却媒体の吹出し方向とのなす角度θが20〜50°の範囲内となるようにダイとエアリングとが配置されている構成であってもよい。なお、「溶融樹脂の押出し方向」とは、ダイの中心軸の方向と一致し、かつ、溶融樹脂が押出される方向を示している。
【0094】
また、本実施の形態にかかるフィルム製造装置には、必要に応じて、バブルの固化速度を速くするために、バブルを水冷する水冷手段を備えていてもよい。該水冷手段とエアリングとを併用することで、バブルの固化速度をさらに速くすることができる。
【0095】
また、本実施の形態にかかるフィルム製造装置には、バブルの冷却を促進するために、複数のエアリング装置を備えていてもよい。具体的には、例えば、樹脂押出し方向に2個並んだエアリング装置を用いてもよい。
【0096】
また、本実施の形態にかかるフィルムは、上記フィルムの原料となる溶融樹脂が、エチレン・α―オレフィン系共重合体であることがより好ましく、上記エチレン・α―オレフィン系共重合体が、メタロセン系触媒を用いて製造されていることが特に好ましい。
【0097】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の説明では、(1)ダイ開口部とエアリングの吹出し口との、ダイの中心軸に対して垂直な方向の距離をL、(2)ダイ開口部とエアリングの吹出し口との、ダイの中心軸方向までの距離をt、(3)ダイの中心軸を含む断面における、冷却媒体吹出し方向と樹脂押出し方向とのなす角度をθとする。なお、評価としては、バブルのばたつきと製造されたフィルムの状態とを目視にて観察した。
【0098】
〔実施例1〕
LLDPE(住友化学工業(株)製;メタロセン触媒を用いて重合されたもの、商品名;スミカセンE FV201)75重量%とLDPE(住友化学工業(株)製;商品名;スミカセン F208−1)25重量%をブレンドしたものを内外層とし、EVA(住友化学工業(株)製;商品名;エバテート H2031)を中間層として用いて、内層/中間層/外層=20/60/20の比率(平均のメルトテンション10g(東洋精機社製メルトテンションテスターを用いて、内径2.1mm、長さ8mmのオリフィスで、ピストン降下速度5.5mm/分測定温度150℃の条件で測定した))となるようにインフレーション成形法により本発明にかかるフィルムを製造した。このとき、ダイ口径は980mm、フィルム円周長さ840cm、フィルム厚さ150μm、加工温度180℃、L=50mm、t=14mm、θ=25°とした。その結果を表1に示す。また、このフィルムの押出し方向の破断点強度は32MPaであった。
【0099】
〔実施例2〕
上記LLDPEをLDPE(住友化学工業(株)製;商品名;スミカセン F208−1)とした以外は、実施例1と同様にして(平均のメルトテンション12g(東洋精機社製メルトテンションテスターを用いて、内径2.1mm、長さ8mmのオリフィスで、ピストン降下速度5.5mm/分測定温度150℃の条件で測定した))フィルムを製造した。バブル状態、フィルム状態とも良好であった。その結果を表1に示す。また、このフィルムの押出し方向の破断点強度は23MPaであった。
【0100】
〔実施例3〕
中間層としてLLDPE(MI=2、密度0.89、メタロセン触媒を用いて重合されたエチレン・ヘキセン共重合体)60重量%EVA(住友化学工業(株)製;商品名;エバテート H2031)40重量%をブレンドしたものを用いた以外は、実施例1と同様にして(平均のメルトテンション6g(東洋精機社製メルトテンションテスターを用いて、内径2.1mm、長さ8mmのオリフィスで、ピストン降下速度5.5mm/分測定温度150℃の条件で測定した))フィルムを製造した。バブル状態、フィルム状態とも良好であった。その結果を表1に示す。また、このフィルムの押出し方向の破断点強度は40MPaであった。
【0101】
〔比較例1〕
L=58mm、t=45mm、θ=25°とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。その結果を表1に示す。
【0102】
〔比較例2〕
L=58mm、t=45mm、θ=10°とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。その結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
Figure 0003939171
【0104】
表1の結果から明らかなように、本発明にかかるフィルム製造装置でえられたフィルムは、バブルのばたつきもなく、均一の幅を有するフィルムであった。
【0105】
【発明の効果】
本発明のフィルムの製造方法は、以上のように、800mm以上のダイ口径を有するダイから溶融樹脂を押出すとともに、エアリングの開口部から冷却媒体を吹出して溶融樹脂のバブルを冷却するインフレーション成形法により、フィルムを製造するフィルムの製造方法であって、ダイの中心軸に対して直角な方向における、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの距離Lが、10〜60mmの範囲内であり、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの、ダイの中心軸方向の距離tが0〜35mmの範囲内であり、かつ、ダイの中心軸を含む断面における、ダイの中心軸と上記冷却媒体の吹出し方向とのなす角度θが20〜50°の範囲内となるようにエアリングから冷却媒体を吹出させる構成である。
【0106】
これにより、エアリングから吹出される冷却媒体をバブルに吹き付ける位置、すなわち、バブルの冷却開始位置を従来と比べて近くすることができ、かつ、バブルに沿わせるように冷却媒体を吹き付けることができる。それゆえ、早くバブルを冷却することができ、かつ、フィルムをばたつかせることがない。従って、製造するフィルムの寸法や用いる樹脂の特性に関係なく、幅が一定であるフィルムを良好に製造することができるという効果を奏する。例えば、溶融樹脂のメルトテンションが10g以下、より好ましくは8g以下のものでも、実施例3に示すように、良好なフィルムを得ることができる。また、強度面でも実施例2との対比で示されるように、格段に優れたものが得られる。
【0107】
本発明のフィルムの製造方法は、上記溶融樹脂が少なくともエチレン・α―オレフィン系共重合体を含む構成がより好ましい。
【0108】
それゆえ、例えば、溶融樹脂が低密度ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル共重合体であるフィルムに比べて、より強度の高いフィルムを得ることができるという効果を奏する。
【0109】
本発明のフィルムの製造方法は、上記エチレン・α―オレフィン系共重合体は、メタロセン系触媒を用いて製造されている構成がより好ましい。
【0110】
メタロセン系触媒を用いて、エチレン・α―オレフィン系共重合体を製造することにより、通常のエチレン・α―オレフィン系共重合体と比べて、より一層強度の強いエチレン・α―オレフィン系共重合体を得ることができる。従って、より一層強度が高いフィルムを製造することができるという効果を奏する。
【0111】
本発明のフィルムは、以上のように、上記フィルムの製造方法によって得られ、かつ、上記フィルムの厚さが80μm以上であり、かつ、円周が7500mm以上のチューブ状である構成である。
【0112】
本発明のフィルムは、さらに、農園芸用途に用いられる構成がより好ましい。
【0113】
それゆえ、従来よりも強度の高いフィルムを簡単に得ることができるので、農園芸用途として、より好適に使用することができるという効果を奏する。
【0114】
本発明のフィルム製造装置は、以上のように、溶融樹脂を押出すダイと、エアリングから吹出される冷却媒体を整流する複数の整流筒とを備えた、インフレーション成形法によりフィルムを製造するフィルム製造装置において、ダイの中心軸を含む断面における、上記複数の整流筒のそれぞれの先端(先端を結んだ線)が、溶融樹脂の押出し方向に対して凹形状、すなわち、溶融樹脂の押出し方向の反対方向に対して凸形状となるように整流筒が配置されている構成である。
【0115】
それゆえ、例えば、幅が広く厚さが厚いようなフィルムやメルトテンションが低いフィルム等の様々な条件のフィルムを製造する場合であっても、バブルに沿って冷却媒体を吹き付けることができるので、バブルが整流筒に接触することなく、フィルムを得ることができるという効果を奏する。
【0116】
本発明のフィルム製造装置は、上記溶融樹脂が少なくともエチレン・α−オレフィン系共重合体を含む構成がより好ましい。
【0117】
それゆえ、上記溶融樹脂がメルトテンションが比較的低いエチレン・α−オレフィン系共重合体を含んでも、好適にフィルムを製造することができるという効果を奏する。
【0118】
本発明のフィルム製造装置は、上記エチレン・α―オレフィン系共重合体は、メタロセン系触媒を用いて製造されている構成がより好ましい。
【0119】
それゆえ、より一層強度が高いフィルムを製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフィルム製造装置の要部の構造を示す断面図である。
【図2】上記フィルム製造装置の概略の構成を示す断面図である。
【図3】本発明のエアリングの構造を示す断面図である。
【図4】本発明のフィルム製造装置におけるダイとエアリングとの位置関係を示す断面図である。
【図5】本発明の整流筒におけるダイの中心軸を含む断面を示す断面図である。
【図6】従来のエアリングの構造を示す断面図である。
【図7】従来の整流筒におけるダイの中心軸を含む断面を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ダイ
1a ダイ開口部(ダイの開口部)
2 エアリング
2a エアリングの吹出し口(エアリングの開口部)
3 整流筒

Claims (6)

  1. 800mm以上のダイ口径を有するダイから溶融樹脂を押出すとともに、エアリングの開口部から冷却媒体を吹出して溶融樹脂のバブルを冷却するインフレーション成形法により、フィルムを製造するフィルムの製造方法であって、
    ダイの中心軸に対して直角な方向における、ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの距離Lが、10〜60mmの範囲内であり、
    ダイの開口部の中心からエアリングの開口部までの、ダイの中心軸方向の距離tが0〜35mmの範囲内であり、
    かつ、ダイの中心軸を含む断面における、ダイの中心軸と上記冷却媒体の吹出し方向とのなす角度θが20〜50°の範囲内となるようにエアリングから冷却媒体を吹出させ
    ダイの中心軸を含む断面における、それぞれの先端が、溶融樹脂の押出し方向に対して凹形状となるように配置された複数の整流筒によって、上記エアリングから吹出される冷却媒体を整流することを特徴とするフィルムの製造方法。
  2. 上記エアリングの冷却媒体移動管が上記ダイに埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  3. 上記溶融樹脂が少なくともエチレン・α―オレフィン系共重合体を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
  4. 上記エチレン・α―オレフィン系共重合体は、メタロセン系触媒を用いて製造されることを特徴とする請求項3記載のフィルムの製造方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法によって得られるフィルムであって、
    上記フィルムの厚さが80μm以上であり、かつ、円周が7500mm以上のチューブ状であることを特徴とするフィルム。
  6. 農園芸用途に用いられることを特徴とする請求項5記載のフィルム。
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