JP3938990B2 - 溶液気化装置及び成膜装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は溶媒と溶質とを含む溶液を気化させ、供給された溶液と同じ組成の気体として取り出すようにした溶液気化装置、及びそのような溶液気化装置を含む成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の溶液気化装置の一例は、容器に入れた溶液を加熱することにより溶液を蒸発させるものである。また、他の例は、加熱した液体を容器から霧状に吹き出させて表面積を増やすことで蒸発させるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
溶液を一定温度で加熱することにより気体に蒸発させる場合、溶媒と溶質とは蒸発温度が異なるために、供給された溶液の組成と蒸発した気体の組成とは一般に異なる平衡関係になる。このため、溶液を一定温度で気化させ続けると、溶液中の蒸発しにくい成分の濃度が上昇し続ける。従って、上記前者の方法では蒸発しにくい成分が容器に蓄積されてやがて設定された一定温度では溶液を気化できなくなる。このように、従来の一定温度に保たれた気化器では、溶媒と溶質を完全に蒸発させ、定常状態を作ることは困難である。
【0004】
また供給された溶液の濃度と蒸発して取り出された気体の濃度は異なったものとなる。そして、溶質が固体の場合には、例えば管等をつまらせ、閉塞する可能性が生じる。一方、上記後者の場合には、霧となった微細な溶液の粒子の温度は気化熱により低下し、やはり蒸発しにくい成分は気化されずに残り、供給された溶液全てを気化することは難しい。いずれの場合にも、溶液をかなり高い温度まで加熱すれば溶液の全成分を気化することは可能であるが、熱的に不安定な物質を含む溶液の場合には溶液を過度に高い温度まで加熱することができず、そのために従来の溶液気化装置では上記した問題点を解決できなかった。
【0005】
従って、従来の溶液気化装置を使用した成膜装置では、さらに均一な成膜を行うことができるようにすることが求められていた。
本発明の目的は、溶液、特に蒸発しにくく、また熱的に不安定で、場合によっては固体である溶質を含む溶液を定常的に気化させ、供給された溶液と同じ組成の気体をつくり出す溶液気化装置、及び成膜装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による溶液気化装置は、溶液を供給する溶液供給部と、該溶液供給部で供給された溶液が蒸発する溶液蒸発部と、蒸発した気体が取り出される気体取り出し部とを有し、該溶液供給部と該溶液蒸発部と該気体取り出し部とは液体又は気体が連続的に流れる流路にあり、該溶液供給部から該気体取り出し部へ向かって温度が高くなるような温度勾配をもつことを特徴とするものである。
【0007】
この構成において、溶液供給部から気体取り出し部へ向かって温度が高くなるような温度勾配が形成されているので、溶液は溶液蒸発部の手前の位置である温度で蒸発されはじめ、溶液中の蒸発しやすい成分はただちに蒸発しはじめるが、濃溶液中の蒸発されにくい成分はすぐには蒸発されないので、蒸発されにくい成分の濃度が高くなる。溶液は溶液供給部から気体取り出し部へ向かって連続的に供給されているので、蒸発されにくい成分の濃度が高くなった溶液は、前記の手前の位置から溶液蒸発部へ進む。溶液蒸発部の温度は最初に蒸発がはじまった位置における温度よりも高いので、蒸発されにくい成分のを多く含み、濃度が高くなった溶液でも蒸発することができるようになる。こうして、供給された全ての溶液が蒸発され、蒸発により得られた気体の組成は、供給された溶液の組成と同じになる。
【0008】
好ましくは、該溶液気化装置は管により構成され、該管の断面積は、液体が該溶液供給部から該溶液蒸発部へ流れていく線流速が該溶液供給部と該溶液蒸発部との間で生じる溶液の濃度差による溶質の拡散速度に比べて十分に早くなるようなものである。
また、該気体取り出し部が加熱され、該熱が該溶液供給部から該気体取り出し部へ向かって放熱されることにより前記温度勾配が形成される。
【0009】
また、該気体取り出し部にヒータが取り付けられる。
また、該気体取り出し部に電磁波を照射することにより該気体取り出し部を加熱する。
また、該溶液気化装置は共通の溶液供給部から複数の溶液蒸発部及び気体取り出し部に分岐された管からなるもとすることもできる。
【0010】
また、本発明は上記したような溶液気化装置を含む成膜装置を提供する。この成膜装置では、均一な成分の優れた薄膜を形成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の原理説明図である。溶液供給装置10は連続的な流路を提供する管12として構成され、図において管12の右端部側から溶液Sを供給し、左端部側から気体Gとして取り出す。すなわち、溶液供給装置10は、溶液を供給する溶液供給部14と、溶液供給部14で供給された溶液が蒸発する溶液蒸発部16と、蒸発した気体が取り出される気体取り出し部18とを有する。
【0012】
ヒータ20が気体取り出し部18に取り付けられている。ヒータ20によって気体取り出し部18によって与えられた熱は、管12を通る熱伝導によって溶液供給部14へ伝えられる。熱は管12において熱伝導するとともに管12から放熱し、よって図2に示すような温度勾配ができる。
図2においては、Xが気体取り出し部18を示し、Yが溶液蒸発部16を示し、Zが溶液供給部14を示す。溶液供給部(Z)14の温度はT1 であり、溶液蒸発部(Y)16の温度はT2 であり、気体取り出し部(X)18の温度はT3 である。ここで、T3 >T2 >T1 の関係がある。T0 は溶液の気化が始まる温度であり、T2 >T0 >T1 である。
【0013】
図3は、溶液供給部(Z)14、溶液蒸発部(Y)16、及び気体取り出し部(X)18を含む管12内の溶液の濃度分布を示す。溶液供給部(Z)14の溶液の濃度はC1 であり、溶液蒸発部(Y)16の溶液の濃度はC3 である。
溶液気化装置10を構成する管12の断面積は、液体が溶液供給部14から溶液蒸発部16へ流れていく線流速が溶液供給部14と溶液蒸発部16との間で生じる溶液の濃度差による溶質の拡散速度に比べて十分に早くなるようなものである。また、溶液の線流速は下記の蒸発が生じるように十分に遅くなくてはならない。
【0014】
図4は、2成分系の溶液の気液平衡の一般的な関係を示す。図1の管12の左端部側に位置する気体取り出し部(X)18の圧力を一定とし、高沸点物質を濃度C1 で含む溶液が溶液供給部(Z)14に供給されたとする。この溶液は溶液の温度がT0 に達したときに気化が始まる。溶液が動かずにこのままの条件で加熱を続けると、得られる気体は高沸点物質の濃度がC2 のものになる。つまり、得られる気体の濃度C2 は供給された溶液の濃度C1 とは異なっており、高沸点物質の一部は気化されない。
【0015】
本発明では、上記したような温度勾配があり、且つ溶液が流れているので、一部蒸発した残りの溶液は濃度がC1 よりも高くなって、図1で左方に向かって移動する。その結果、濃度が高くなった溶液の沸点は上昇し、温度の高い部位でさらに蒸発することができる。その結果、未気化の溶液の濃度はさらに高くなり、液面はさらに図1で左に移動する。最終的には、溶液の濃度はC3 になり、温度はT2 になる。図3はこのような管内の溶液の濃度分布を示す図である。このときに得られた気体の濃度はC1 となり、これは供給される溶液の濃度C1 と同じになる。
【0016】
図5は、溶液供給装置10の変形例を示す図である。この溶液供給装置10は分岐管22で構成されている。分岐管22は共通の溶液供給部14から複数の溶液蒸発部16及び気体取り出し部18に分岐された管である。ヒータ20が各気体取り出し部18に取り付けられている。溶液供給部14、溶液蒸発部16及び気体取り出し部18の作用は上記実施例のものと同様である。このように、分岐管を用いると、より多くの溶液を同時に気化することができる。なお、分岐管22の代わりに複数の穴のあいた構造を用いることもできる。
【0017】
図6は、溶液気化装置10を含むCVD装置の実施例を示す図である。CVD装置30は、反応管32と、例えば半導体基板34を支持するホルダ36と、反応管32の内部のチャンバを加熱するための電気炉38と、反応管32を真空雰囲気にするためのポンプ40とを備えている。溶液気化装置10は反応管32に取り付けられ、溶液気化装置10から取り出された気体を基板34に蒸着して、基板34に薄膜を形成するものである。溶液気化装置10には、溶液容器42からポンプ44によって溶液が供給されるようになっている。
【0018】
図7は溶液気化装置10を反応管32に取り付けた例を示す図である。反応管32の開口端部にはステンレスのキャップ46が取り付けられ、溶液気化装置10(管12)はこのキャップ46に気密に取り付けられる。ヒータ20は反応管32内に位置する管12の先端に取り付けられている。この熱源により、管12に温度勾配を作る。管12の内径は0.1mm、外径は6mmとする。
【0019】
基板34にCuの薄膜を作る場合、溶液として、VEMS(ビニルトリメチルシラン)を溶媒とし、溶質に95から50%程度のCuHFAVTMS(ヘキサフルオロアセトネート、ビニルトリメチルシラン銅)を原料として使用する。この場合、反応管32内の圧力を300mmTorr、基板34の温度を170℃、ヒータ20の温度を70℃とする。この条件では、溶液の流量を0.1g/minで定常的に気化させることができる。6インチ基板34の場合には、300nm・分程度の成膜速度で銅の薄膜を形成することができる。
【0020】
図6のような溶液気化装置10を用いると、より多くの溶液を同時に気化することができ、反応管32内に大量の基板34をおいても、同等の成長速度で成膜が可能となる。
同様の装置で、酸化物超伝導体や高誘電体、強誘電体等、固体の錯体化合物を利用するCVD装置の溶液気化装置としても利用できる。例えば、Y1 Ba2 Cu3 Oの超伝導体を作製する場合、原料にTHF(テトラハイドロフラン)溶媒に溶かした固体の金属錯体であるCuDPM2 、BaDPM2 、YDPM3 (ここでDPMはジピバロイルメタン)を用い、溶液気化装置のヒータの温度を300℃に設定すると、CVDに必要な金属錯体を供給した濃度と同じ組成の気体として反応管内に導入できる。金属錯体は通常は固体であり、昇華温度付近で熱的に不安定となるため、この種のCVDでは組成制御が困難であったが、本溶液気化装置を利用すると、原料を液体で扱えるため、正確な流量制御が可能であり、またこの種の溶液を一定温度で保たれた気化器に導入したときに必ず起きる溶液気化装置の閉塞を回避することができる。
【0021】
上記した例においては、温度勾配を形成するための熱源として電気ヒータ20が気体取り出し部18に取り付けられている。しかし、電気ヒータ20に変わってあらゆるタイプのヒータを使用することができる。また、熱源は必ずしも気体取り出し部18に取り付けられたものでなくてもよい。例えば、気体取り出し部18に電磁波(例えば赤外線)を照射することにより気体取り出し部18を加熱するようにしてもよい。あるいは、液体が吸収する波長の電磁波を気体取り出し部18側から液体表面に照射することによって所望の温度勾配をつくることもできる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、2成分又は2成分以上を含む溶液からこの溶液と同じ組成の気体を定常的に取り出すことが可能であり、従来複雑であった構造を簡略化できるとともに、装置の信頼性を向上することができる。また、本発明による成膜装置では、均一な成分の優れたハツ膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理説明図である。
【図2】図1の溶液気化装置における位置と温度との関係を示す図である。
【図3】図1の溶液気化装置における位置と濃度との関係を示す図である。
【図4】溶液─気体の平衡関係を示す図である。
【図5】分岐管で構成された実施例を示す図である。
【図6】本発明の溶液気化装置を含むCVD装置の実施例を示す図である。
【図7】図6の部分詳細図である。
【符号の説明】
10…溶液供給装置
12…管
14…溶液供給部
16…溶液蒸発部
18…気体取り出し部
20…ヒータ
22…分岐管
30…CVD装置
【発明の属する技術分野】
本発明は溶媒と溶質とを含む溶液を気化させ、供給された溶液と同じ組成の気体として取り出すようにした溶液気化装置、及びそのような溶液気化装置を含む成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の溶液気化装置の一例は、容器に入れた溶液を加熱することにより溶液を蒸発させるものである。また、他の例は、加熱した液体を容器から霧状に吹き出させて表面積を増やすことで蒸発させるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
溶液を一定温度で加熱することにより気体に蒸発させる場合、溶媒と溶質とは蒸発温度が異なるために、供給された溶液の組成と蒸発した気体の組成とは一般に異なる平衡関係になる。このため、溶液を一定温度で気化させ続けると、溶液中の蒸発しにくい成分の濃度が上昇し続ける。従って、上記前者の方法では蒸発しにくい成分が容器に蓄積されてやがて設定された一定温度では溶液を気化できなくなる。このように、従来の一定温度に保たれた気化器では、溶媒と溶質を完全に蒸発させ、定常状態を作ることは困難である。
【0004】
また供給された溶液の濃度と蒸発して取り出された気体の濃度は異なったものとなる。そして、溶質が固体の場合には、例えば管等をつまらせ、閉塞する可能性が生じる。一方、上記後者の場合には、霧となった微細な溶液の粒子の温度は気化熱により低下し、やはり蒸発しにくい成分は気化されずに残り、供給された溶液全てを気化することは難しい。いずれの場合にも、溶液をかなり高い温度まで加熱すれば溶液の全成分を気化することは可能であるが、熱的に不安定な物質を含む溶液の場合には溶液を過度に高い温度まで加熱することができず、そのために従来の溶液気化装置では上記した問題点を解決できなかった。
【0005】
従って、従来の溶液気化装置を使用した成膜装置では、さらに均一な成膜を行うことができるようにすることが求められていた。
本発明の目的は、溶液、特に蒸発しにくく、また熱的に不安定で、場合によっては固体である溶質を含む溶液を定常的に気化させ、供給された溶液と同じ組成の気体をつくり出す溶液気化装置、及び成膜装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による溶液気化装置は、溶液を供給する溶液供給部と、該溶液供給部で供給された溶液が蒸発する溶液蒸発部と、蒸発した気体が取り出される気体取り出し部とを有し、該溶液供給部と該溶液蒸発部と該気体取り出し部とは液体又は気体が連続的に流れる流路にあり、該溶液供給部から該気体取り出し部へ向かって温度が高くなるような温度勾配をもつことを特徴とするものである。
【0007】
この構成において、溶液供給部から気体取り出し部へ向かって温度が高くなるような温度勾配が形成されているので、溶液は溶液蒸発部の手前の位置である温度で蒸発されはじめ、溶液中の蒸発しやすい成分はただちに蒸発しはじめるが、濃溶液中の蒸発されにくい成分はすぐには蒸発されないので、蒸発されにくい成分の濃度が高くなる。溶液は溶液供給部から気体取り出し部へ向かって連続的に供給されているので、蒸発されにくい成分の濃度が高くなった溶液は、前記の手前の位置から溶液蒸発部へ進む。溶液蒸発部の温度は最初に蒸発がはじまった位置における温度よりも高いので、蒸発されにくい成分のを多く含み、濃度が高くなった溶液でも蒸発することができるようになる。こうして、供給された全ての溶液が蒸発され、蒸発により得られた気体の組成は、供給された溶液の組成と同じになる。
【0008】
好ましくは、該溶液気化装置は管により構成され、該管の断面積は、液体が該溶液供給部から該溶液蒸発部へ流れていく線流速が該溶液供給部と該溶液蒸発部との間で生じる溶液の濃度差による溶質の拡散速度に比べて十分に早くなるようなものである。
また、該気体取り出し部が加熱され、該熱が該溶液供給部から該気体取り出し部へ向かって放熱されることにより前記温度勾配が形成される。
【0009】
また、該気体取り出し部にヒータが取り付けられる。
また、該気体取り出し部に電磁波を照射することにより該気体取り出し部を加熱する。
また、該溶液気化装置は共通の溶液供給部から複数の溶液蒸発部及び気体取り出し部に分岐された管からなるもとすることもできる。
【0010】
また、本発明は上記したような溶液気化装置を含む成膜装置を提供する。この成膜装置では、均一な成分の優れた薄膜を形成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の原理説明図である。溶液供給装置10は連続的な流路を提供する管12として構成され、図において管12の右端部側から溶液Sを供給し、左端部側から気体Gとして取り出す。すなわち、溶液供給装置10は、溶液を供給する溶液供給部14と、溶液供給部14で供給された溶液が蒸発する溶液蒸発部16と、蒸発した気体が取り出される気体取り出し部18とを有する。
【0012】
ヒータ20が気体取り出し部18に取り付けられている。ヒータ20によって気体取り出し部18によって与えられた熱は、管12を通る熱伝導によって溶液供給部14へ伝えられる。熱は管12において熱伝導するとともに管12から放熱し、よって図2に示すような温度勾配ができる。
図2においては、Xが気体取り出し部18を示し、Yが溶液蒸発部16を示し、Zが溶液供給部14を示す。溶液供給部(Z)14の温度はT1 であり、溶液蒸発部(Y)16の温度はT2 であり、気体取り出し部(X)18の温度はT3 である。ここで、T3 >T2 >T1 の関係がある。T0 は溶液の気化が始まる温度であり、T2 >T0 >T1 である。
【0013】
図3は、溶液供給部(Z)14、溶液蒸発部(Y)16、及び気体取り出し部(X)18を含む管12内の溶液の濃度分布を示す。溶液供給部(Z)14の溶液の濃度はC1 であり、溶液蒸発部(Y)16の溶液の濃度はC3 である。
溶液気化装置10を構成する管12の断面積は、液体が溶液供給部14から溶液蒸発部16へ流れていく線流速が溶液供給部14と溶液蒸発部16との間で生じる溶液の濃度差による溶質の拡散速度に比べて十分に早くなるようなものである。また、溶液の線流速は下記の蒸発が生じるように十分に遅くなくてはならない。
【0014】
図4は、2成分系の溶液の気液平衡の一般的な関係を示す。図1の管12の左端部側に位置する気体取り出し部(X)18の圧力を一定とし、高沸点物質を濃度C1 で含む溶液が溶液供給部(Z)14に供給されたとする。この溶液は溶液の温度がT0 に達したときに気化が始まる。溶液が動かずにこのままの条件で加熱を続けると、得られる気体は高沸点物質の濃度がC2 のものになる。つまり、得られる気体の濃度C2 は供給された溶液の濃度C1 とは異なっており、高沸点物質の一部は気化されない。
【0015】
本発明では、上記したような温度勾配があり、且つ溶液が流れているので、一部蒸発した残りの溶液は濃度がC1 よりも高くなって、図1で左方に向かって移動する。その結果、濃度が高くなった溶液の沸点は上昇し、温度の高い部位でさらに蒸発することができる。その結果、未気化の溶液の濃度はさらに高くなり、液面はさらに図1で左に移動する。最終的には、溶液の濃度はC3 になり、温度はT2 になる。図3はこのような管内の溶液の濃度分布を示す図である。このときに得られた気体の濃度はC1 となり、これは供給される溶液の濃度C1 と同じになる。
【0016】
図5は、溶液供給装置10の変形例を示す図である。この溶液供給装置10は分岐管22で構成されている。分岐管22は共通の溶液供給部14から複数の溶液蒸発部16及び気体取り出し部18に分岐された管である。ヒータ20が各気体取り出し部18に取り付けられている。溶液供給部14、溶液蒸発部16及び気体取り出し部18の作用は上記実施例のものと同様である。このように、分岐管を用いると、より多くの溶液を同時に気化することができる。なお、分岐管22の代わりに複数の穴のあいた構造を用いることもできる。
【0017】
図6は、溶液気化装置10を含むCVD装置の実施例を示す図である。CVD装置30は、反応管32と、例えば半導体基板34を支持するホルダ36と、反応管32の内部のチャンバを加熱するための電気炉38と、反応管32を真空雰囲気にするためのポンプ40とを備えている。溶液気化装置10は反応管32に取り付けられ、溶液気化装置10から取り出された気体を基板34に蒸着して、基板34に薄膜を形成するものである。溶液気化装置10には、溶液容器42からポンプ44によって溶液が供給されるようになっている。
【0018】
図7は溶液気化装置10を反応管32に取り付けた例を示す図である。反応管32の開口端部にはステンレスのキャップ46が取り付けられ、溶液気化装置10(管12)はこのキャップ46に気密に取り付けられる。ヒータ20は反応管32内に位置する管12の先端に取り付けられている。この熱源により、管12に温度勾配を作る。管12の内径は0.1mm、外径は6mmとする。
【0019】
基板34にCuの薄膜を作る場合、溶液として、VEMS(ビニルトリメチルシラン)を溶媒とし、溶質に95から50%程度のCuHFAVTMS(ヘキサフルオロアセトネート、ビニルトリメチルシラン銅)を原料として使用する。この場合、反応管32内の圧力を300mmTorr、基板34の温度を170℃、ヒータ20の温度を70℃とする。この条件では、溶液の流量を0.1g/minで定常的に気化させることができる。6インチ基板34の場合には、300nm・分程度の成膜速度で銅の薄膜を形成することができる。
【0020】
図6のような溶液気化装置10を用いると、より多くの溶液を同時に気化することができ、反応管32内に大量の基板34をおいても、同等の成長速度で成膜が可能となる。
同様の装置で、酸化物超伝導体や高誘電体、強誘電体等、固体の錯体化合物を利用するCVD装置の溶液気化装置としても利用できる。例えば、Y1 Ba2 Cu3 Oの超伝導体を作製する場合、原料にTHF(テトラハイドロフラン)溶媒に溶かした固体の金属錯体であるCuDPM2 、BaDPM2 、YDPM3 (ここでDPMはジピバロイルメタン)を用い、溶液気化装置のヒータの温度を300℃に設定すると、CVDに必要な金属錯体を供給した濃度と同じ組成の気体として反応管内に導入できる。金属錯体は通常は固体であり、昇華温度付近で熱的に不安定となるため、この種のCVDでは組成制御が困難であったが、本溶液気化装置を利用すると、原料を液体で扱えるため、正確な流量制御が可能であり、またこの種の溶液を一定温度で保たれた気化器に導入したときに必ず起きる溶液気化装置の閉塞を回避することができる。
【0021】
上記した例においては、温度勾配を形成するための熱源として電気ヒータ20が気体取り出し部18に取り付けられている。しかし、電気ヒータ20に変わってあらゆるタイプのヒータを使用することができる。また、熱源は必ずしも気体取り出し部18に取り付けられたものでなくてもよい。例えば、気体取り出し部18に電磁波(例えば赤外線)を照射することにより気体取り出し部18を加熱するようにしてもよい。あるいは、液体が吸収する波長の電磁波を気体取り出し部18側から液体表面に照射することによって所望の温度勾配をつくることもできる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、2成分又は2成分以上を含む溶液からこの溶液と同じ組成の気体を定常的に取り出すことが可能であり、従来複雑であった構造を簡略化できるとともに、装置の信頼性を向上することができる。また、本発明による成膜装置では、均一な成分の優れたハツ膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理説明図である。
【図2】図1の溶液気化装置における位置と温度との関係を示す図である。
【図3】図1の溶液気化装置における位置と濃度との関係を示す図である。
【図4】溶液─気体の平衡関係を示す図である。
【図5】分岐管で構成された実施例を示す図である。
【図6】本発明の溶液気化装置を含むCVD装置の実施例を示す図である。
【図7】図6の部分詳細図である。
【符号の説明】
10…溶液供給装置
12…管
14…溶液供給部
16…溶液蒸発部
18…気体取り出し部
20…ヒータ
22…分岐管
30…CVD装置
Claims (7)
- 溶液を供給する溶液供給部と、該溶液供給部で供給された溶液が蒸発する溶液蒸発部と、蒸発した気体が取り出される気体取り出し部とを有し、該溶液供給部と該溶液蒸発部と該気体取り出し部とは液体又は気体が連続的に流れる流路にあり、該溶液供給部から該気体取り出し部へ向かって温度が高くなるような温度勾配をもつことを特徴とする溶液気化装置。
- 該溶液気化装置は管により構成され、該管の断面積は、液体が該溶液供給部から該溶液蒸発部へ流れていく線流速が該溶液供給部と該溶液蒸発部との間で生じる溶液の濃度差による溶質の拡散速度に比べて十分に早くなるようなものであることを特徴とする請求項1に記載の溶液気化装置。
- 該気体取り出し部が加熱され、該熱が該溶液供給部から該気体取り出し部へ向かって放熱されることにより前記温度勾配が形成されることを特徴とする請求項2に記載の溶液気化装置。
- 該気体取り出し部にヒータが取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の溶液気化装置。
- 該気体取り出し部に電磁波を照射することにより該気体取り出し部を加熱することを特徴とする請求項3に記載の溶液気化装置。
- 共通の溶液供給部から複数の溶液蒸発部及び気体取り出し部に分岐された管からなることを特徴とする請求項1に記載の溶液気化装置。
- 請求項1から6のいずれかに記載の溶液気化装置を含む成膜装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29998097A JP3938990B2 (ja) | 1997-10-31 | 1997-10-31 | 溶液気化装置及び成膜装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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