JP3938813B2 - 油圧駆動機械の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧ショベル、クレーン等の油圧駆動機械において、操作レバー等操作手段の操作量に応じて油圧アクチュエータを駆動制御する制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、建設機械のような油圧駆動機械では、図7に示すように、複数の操作レバー6、7の操作量を示す駆動指令信号が、対応する複数の操作弁4、5(流量制御弁4、5)に加えられ、これら複数の操作弁4、5の開口面積が上記駆動指令信号に応じて変化され、それによって、対応する複数の油圧アクチュエータ2、3が駆動されるという構成がとられる。つまり、複数の操作レバー6、7が同時に操作されると、油圧ポンプ1の吐出圧油は、複数の圧油供給路上の複数の操作弁4、5を介して複数の油圧アクチュエータ2、3に供給され、これら複数の油圧アクチュエータ2、3が同時に駆動される。
【0003】
かかる構成において、複合操作時の油圧アクチュエータ2、3の駆動速度のいわゆる負荷依存性を解消する技術として、圧力補償弁付ロードセンシングシステムと呼ばれるものがある。
【0004】
このシステムでは、油圧ポンプ1と流量制御弁4、5との間、あるいは流量制御弁4、5と油圧アクチュエータ2、3との間(図7では、この場合の構成を示している)に、圧力補償弁16´、17´、18´、19´と呼ばれるバルブが設けられ、流量制御弁4、5を通過する圧油の弁の前後における圧力の差圧が、いずれの駆動軸(建設機械では、ブーム、アーム等のことである)についても同一の値になるように補償するようにしている。つまり、油圧回路の一般公式である、
Q=c・A・√( ΔP ) …(1)
(ただし、Qは流量制御弁の絞りを通過する流量、cは流量定数、Aは絞りの開口面積、ΔPは絞りの前後差圧である)
において、差圧ΔPが、各駆動軸について同一となるようにすることで、オペレータが指令する駆動指令値(開口面積A)に比例した流量Qが得られるようにしている。
【0005】
また、油圧ポンプ1の吐出圧が、操作中の油圧アクチュエータ2、3の負荷圧の最大値に、上記前後差圧が加算された圧力となるように、油圧ポンプ1の吐出圧の制御を行うようにしており、これによって複合操作時の各油圧アクチュエータ2、3の負荷圧の違いによる速度の変化(負荷圧依存性)が防止される。
【0006】
しかし、このシステムでは、圧力補償弁の圧力補償設定値が固定されており、油圧アクチュエータの圧力補償特性が一義的に定まってしまう。このため状況に応じて、油圧アクチュエータの圧力補償特性を変えることができないという欠点があった。
【0007】
そこで、この問題点を解決すべく、本出願人に係る先願(特願平8−43101号、特願平8−41554号)では、上記圧力補償弁を使用しないでシステムを構成するようにしている。
【0008】
上記先願に開示されたものでは、上記油圧回路の一般公式、
Q=c・A・√( ΔP )
において、複合操作時の各油圧アクチュエータ2、3の負荷圧の違いによって生ずる各油圧アクチュエータの速度、つまり各油圧アクチュエータ2、3の流量Qi(以下、添え字iはi番目の駆動軸を示す)の変化(負荷依存性)を防止するために、オペレータの操作に応じて駆動された操作弁4、5の絞りの前後差圧△Pi、つまり操作弁に流入する圧油の圧力Pと操作弁4、5から流出する圧油の圧力PLの差圧ΔPi を検出し、以下のような補正処理を行うようにしている。
【0009】
すなわち、上記検出した各差圧△Piの中の最小値ΔPminを求め、各駆動軸ごとに、差圧△Piと最小差圧△Pmin の比の平方根を、操作弁4、5の開口面積補正係数Ki(Ki=√(△Pmin /△Pi))として演算し、これを操作レバー6、7による駆動速度指令である操作弁4、5の開口面積Aiに乗じるという開口補正を行なうというものである。これを式で示すと、
Qi=c・(Ai・Ki)・√(△Pi)=c・Ai・√(△Pmin/△Pi)・√(△Pi)=c・Ai・√(△Pmin) …(2)
となり、i番目の油圧アクチュエータに流入する流量Qiは、複合操作中どの軸も共通である最小差圧△Pmin を基準にして、各軸の開口面積指令Aiの比で分流されるという作用をなす。
【0010】
ここで、差圧ΔPiが最小差圧ΔPminとなっている駆動軸では、上記補正係数Kiの分母分子の値は同一となる(Ki=1)。したがって、負荷圧PLが最大負荷圧となっている駆動軸(差圧ΔPiは最小差圧ΔPmin)では、開口面積Aiは絞られないことになる。
【0011】
このような補正を行うことにより、複合操作時に、ポンプ圧Pと各油圧アクチュエータの負荷圧PLの差圧ΔPiの如何に関わらず、レバー操作通りの分流性能を、簡単な制御でショックなく、連続性を保持しつつ取得することができる。
【0012】
また、上記先願では、上記補正係数Ki(0<Ki≦1)に対して下限値KLiを設け、この下限値KLiを0近傍とすることにより、完全な圧力補償機能を働かせるようにしたり、また下限値KLiを1とすることにより、完全に負荷なりの流量分配を実現するようにしている。
【0013】
すなわち、補正係数のとれる範囲を、レバー操作量に応じて、KLi≦Ki≦1と制限することにより、上記圧力補償の機能を強めたり、弱めたりするようにしている。
【0014】
例えば、レバー操作量から上記補正係数下限値KLiを求める関数を用いて、レバー操作量に対応する補正係数下限値KLiを求め、これにより、微操作時は圧力補償を効かせたレバーなりの流量分配(KLi=0近傍)にしたり、フルレバーのラフ操作時は圧力補償を弱めて負荷なりの流量分配(KLi=0.5)にしたりという具合に、流量分配の仕方を連続的に変えることができる。
【0015】
これにより、例えば、吊り作業や法面の整正作業などのファイコン作業時には、オペレータとしては負荷によらずに操作レバー通りの精密作業を行うことができるとともに、一方、掘削時の放土作業や荒スキトリ作業(刃先で平地をラフにならす作業)などの複数の操作レバーをフルに操作するフルレバー作業時には、オペレータとしては操作レバーの操作比に気を遣うことなく、負荷なりの作業を行うことができる。
【0016】
以上のように、上記先願に記載された発明は、各駆動軸i毎に、補正係数Kiを求め、この補正係数Kiを、各駆動軸i毎に設定した制限範囲KLi≦Ki≦1で制限することにより、圧力補償の度合いを、操作レバーの操作量に応じて変化させるというものである。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の制御では、各駆動軸i毎に、操作弁の絞り前後差圧ΔPiを検出することが必要であり、このため各駆動軸毎に差圧検出手段である圧力センサ等を装着しなければならず、制御回路が高価なものになっていた。
【0018】
また、各駆動軸i毎に補正係数Kiと制御範囲KLi≦Ki≦1を設定する必要があり、圧力補償の制御が煩雑となっていた。
【0019】
本発明の第1発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、低負荷側の駆動軸の操作レバーを大きく動かすことに対応して、この低負荷側の駆動軸のみについて圧力補償の度合いを緩める演算処理、制御を行うことで、圧力補償の制御を安価でかつ簡易に行うことを第1の解決課題とするものである。
【0020】
さらに、上述した従来の制御では補正係数Ki=√(△Pmin/△Pi)を各駆動軸i毎に求め、自軸の操作量を基に補正量Kiに対する制限KLi≦Ki≦1を加えるようにしており、各操作レバー毎に独立して圧力補償の度合いが強められたり、弱められたりする。
【0021】
したがって、フルレバー状態からある操作レバーを戻して、それ以外の軸の圧力補償特性を変化させて流量分配を変えることはできない。
【0022】
本発明の第2発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、低負荷側の駆動軸の操作レバーがフルレバー領域まで操作されたとしても、他の駆動軸の操作レバーが戻されたことを検出することによって、低負荷側の油圧アクチュエータを加速させたい意思を判断して、低負荷側の駆動軸の圧力補償の度合いを緩めて、この低負荷側の油圧アクチュエータの速度をさらに加速させるようにすることを第2の解決課題とするものである。
【0023】
【課題を解決するための手段および効果】
本発明の第1発明では、上記第1の解決課題達成のために、
油圧ポンプと、この油圧ポンプの吐出圧油が供給されることにより駆動される複数の油圧アクチュエータと、これら複数の油圧アクチュエータ毎に設けられた複数の操作手段と、これら複数の操作手段毎に設けられ、操作手段の操作量に応じた流量の圧油を、対応する油圧アクチュエータに供給する複数の流量制御弁と、この流量制御弁の流入側の圧油の圧力と流出側の圧油の圧力との差圧が、全ての流量制御弁で同一となるように、圧力補償を行う圧力補償手段とを具えた油圧駆動機械の制御装置において、
前記複数の操作手段の操作量を検出する操作量検出手段と、
前記操作量検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の操作手段のうちのいずれかの操作手段が、操作量が増加する方向に操作されたことを判断し、この操作量が増加する方向に操作された操作手段に対応する流量制御弁の前後の差圧が大きくなるように、前記圧力補償手段による圧力補償度合いを変化させる圧力補償度合い変化手段と
を具えるようにしている。
【0024】
すなわち、かかる第1発明を、図1、図3に示す実施形態に即して説明すると、操作量検出手段20の検出結果に基づいて、複数の操作手段6、7のうちのいずれかの操作手段6が、操作量Stが増加する方向に操作されたことが判断され、この操作量Stが増加する方向に操作された操作手段6に対応する流量制御弁4の前後の差圧が大きくなるように、圧力補償手段16による圧力補償度合いが変化される。具体的には、コントローラ8から、操作量Stが大きくなるほど圧力補償の度合いが小さくなる(図3)指令電流I1が、圧力補償手段16に加えられ、これにより操作量Stが大きくなるほど圧力補償手段16の圧力補償の度合いが小さくなる。
【0025】
このように、第1発明によれば、低負荷側の駆動軸の操作レバー6の操作量Stを増加させる方向に動かしたことによって、オペレータの低負荷側の油圧アクチュエータ2を加速させたいとの意思を判断し、そのときの操作レバー6の操作量Stの増加量ΔStが大きくなるほど、圧力補償手段16の圧力補償の度合いを小さくする(緩める)制御が行われる。これにより、低負荷側の流量制御弁4の前後の差圧が大きくなり、流量制御弁5を介して油圧アクチュエータ2に供給される流量が増加し、低負荷側の油圧アクチュエータ2の速度が加速される。このように低負荷側の駆動軸の操作レバーを大きく動かすことに対応して、この低負荷側の駆動軸のみについて圧力補償の度合いを緩める制御が行われるので、圧力補償の制御が簡易に行われる。
【0026】
また、第2発明では、上記第1発明において、
前記圧力補償度合い変化手段は、操作量が増加する方向に操作された操作手段の操作量の増加量が大きくなるに伴い、この操作手段に対応する流量制御弁の前後の差圧がより大きくなるように、前記圧力補償手段による圧力補償度合いを変化させるものであるとしている。
【0027】
このように第2発明では、図4に示すように、操作量Stが増加する方向に操作された操作手段6の操作量Stの増加量ΔStが大きくなるに伴い、この操作手段6に対応する流量制御弁4の前後の差圧がより大きくなるように、圧力補償手段16による圧力補償度合いを変化させている。
【0028】
また、第3発明では、上記第1発明において、
前記圧力補償手段は、各流量制御弁毎に設けられた圧力補償弁によって構成されており、
前記圧力補償度合い変化手段は、操作量が増加する方向に操作された操作手段に対応する圧力補償弁の開口面積を変化させることによって、圧力補償度合いを変化させるものである
としている。
【0029】
このように第3発明では、図1に示すように、圧力補償手段は、各流量制御弁4、5毎に設けられた圧力補償弁(16、17)、(18、19)によって構成されており、圧力補償度合い変化手段8によって、操作量Stが増加する方向に操作された操作手段6に対応する圧力補償弁16の開口面積が変化される。
【0030】
また、第4発明では、上記第1発明において、
前記圧力補償手段は、前記操作手段の操作量に応じて変化する流量制御弁の開口面積を補正することにより、圧力補償を行うものであり、
前記圧力補償度合い変化手段は、操作量が増加する方向に操作された操作手段に対応する流量制御弁の開口面積をさらに補正することによって、圧力補償度合いを変化させるものである
としている。
【0031】
このように第4発明では、図2に示すように、コントローラ8から、操作手段6の操作量V1に応じて変化する流量制御弁4の開口面積A1を補正することにより(流量制御弁4に対して指令電流A1・K1を出力することにより)、圧力補償が行われ、さらに、操作量Stが増加する方向に操作された操作手段6に対応する流量制御弁4の開口面積A1・K1をさらにA1・K1´と補正することによって(K1を大きくすることによって)、圧力補償度合いが変化される。
【0032】
また、第5発明では、上記第2の解決課題達成のために、
油圧ポンプと、この油圧ポンプの吐出圧油が供給されることにより駆動される複数の油圧アクチュエータと、これら複数の油圧アクチュエータ毎に設けられた複数の操作手段と、これら複数の操作手段毎に設けられ、操作手段の操作量に応じた流量の圧油を、対応する油圧アクチュエータに供給する複数の流量制御弁と、この流量制御弁の流入側の圧油の圧力と流出側の圧油の圧力との差圧が、全ての流量制御弁で同一となるように、圧力補償を行う圧力補償手段とを具えた油圧駆動機械の制御装置において、
前記複数の操作手段の操作量を検出する操作量検出手段と、
前記操作量検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の操作手段のうちのいずれかの操作手段が、操作量が減少する方向に操作されたことを判断し、この操作量が減少する方向に操作された操作手段以外の操作手段に対応する流量制御弁の前後の差圧が大きくなるように、前記圧力補償手段による圧力補償度合いを変化させる圧力補償度合い変化手段と
を具えるようにしている。
【0033】
すなわち、第5発明を、図1、図5に示す実施形態に即して説明すると、操作量検出手段22の検出結果に基づいて、複数の操作手段6、7のうちのいずれかの操作手段7が、操作量Stが減少する方向に操作されたことを判断し、この操作量Stが減少する方向に操作された操作手段7以外の操作手段6に対応する流量制御弁4の前後の差圧が大きくように、圧力補償手段による圧力補償度合いが変化される。具体的には、コントローラ8から、操作手段7の操作量Stの減少量ΔStが大きくなるほど圧力補償の度合いが小さくなる指令信号(図5)が、圧力補償手段16に加えられ、これにより操作手段7の操作量Stの減少量ΔStが大きくなるほど圧力補償手段16の圧力補償の度合いが小さくなる。
【0034】
このように、第5発明によれば、低負荷側の駆動軸の操作レバー6がフルレバー領域まで操作されたとしても、他の駆動軸の操作レバー7が戻されたことを検出することによって、低負荷側の油圧アクチュエータ2を加速させたい意思を判断して、低負荷側の駆動軸の圧力補償の度合いが小さくなり、この低負荷側の油圧アクチュエータ2の速度がさらに加速される。このため、高負荷側の駆動軸の操作レバー7を中立側に戻していくことによって、低負荷側の油圧アクチュエータ2の速度をさらに加速させるという従来技術ではなし得なかった制御が実現される。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0036】
図1は、本実施形態で想定している油圧駆動機械の制御装置を示す油圧回路図である。
【0037】
すなわち、図1に示すように、この制御装置は、大きくは、図示せぬエンジンによって駆動される可変容量型の油圧ポンプ1と、同エンジンによって駆動されパイロット用の圧油を吐出するパイロットポンプ10と、油圧ポンプ1の吐出圧油が流入されることによって駆動される油圧シリンダ2、3と、スプールストローク位置に応じて開口面積Aが変化され、それにより油圧ポンプ1から吐出される圧油の流量を変化させて、これを対応する油圧シリンダ2、3にそれぞれ供給する流量制御弁4、5と、上記流量制御弁4、5のスプールストローク位置を操作する油圧式レバーとしての操作レバー6、7と、操作レバー6の操作量(操作ストローク位置)Stをパイロット圧として検出する圧力センサ20、21と、操作レバー7の操作量Stをパイロット圧として検出する圧力センサ22、23と、流量制御弁4と油圧シリンダ2との間の圧油供給路に配設された可変圧力補償弁16、17と、流量制御弁5と油圧シリンダ3との間の圧油供給路に配設された可変圧力補償弁18、19と、可変圧力補償弁16、17に対して圧力補償度合いを変化させるための指令電流I1を出力するとともに、可変圧力補償弁18、19に対して圧力補償度合いを変化させるための指令電流I2を出力するコントローラ8とから構成されている。さらに具体的に説明する。
【0038】
操作レバー6が操作されると、この操作レバー6に付設された減圧弁によって、パイロットポンプ10から吐出されているパイロット圧油が、操作量Stに応じた圧力にまで減圧される。そして、この操作レバー6の操作量Stを示すパイロット圧油が、流量制御弁4の各入力ポートのうち、レバー操作方向に対応する入力ポートに加えられ、これにより、流量制御弁4のスプールストロークが変化される。
【0039】
ここで、圧力センサ20は、操作レバー6が、油圧シリンダ2のロッドを伸張させる側に操作された場合の操作量Stを、パイロット圧として検出する圧力センサである。同様に、圧力センサ21は、操作レバー6が、油圧シリンダ2のロッドを縮退させる側に操作された場合の操作量Stを、パイロット圧として検出する圧力センサである。油圧シリンダ2のロッドは、たとえば建設機械の作業機を構成するブームに接続されている。
【0040】
同様にして、操作レバー7が操作されると、この操作レバー7に付設された減圧弁によって、パイロットポンプ10から吐出されているパイロット圧油が、操作量Stに応じた圧力まで減圧される。そして、この操作レバー7の操作量Stを示すパイロット圧油が、流量制御弁5の各入力ポートのうち、レバー操作方向に対応する入力ポートに加えられ、これにより、流量制御弁5のスプールストロークが変化される。
【0041】
ここで、圧力センサ22は、操作レバー7が、油圧シリンダ3のロッドを伸張させる側に操作された場合の操作量Stを、パイロット圧として検出する圧力セサである。同様に、圧力センサ23は、操作レバー7が、油圧シリンダ3のロッドを縮退させる側に操作された場合の操作量Stを、パイロット圧として検出する圧力センサである。油圧シリンダ3のロッドは、たとえば建設機械の作業機を構成するバケットに接続されている。
【0042】
同図1では、流量制御弁4と油圧シリンダ2との間に、可変圧力補償弁16、17が配設されている。可変圧力補償弁16は、油圧シリンダ2のロッドが伸張側に駆動されている場合の流量制御弁4の圧力補償を行うために設けられた弁であり、可変圧力補償弁17は、油圧シリンダ2のロッドが縮退側に駆動されている場合の流量制限弁4の圧力補償を行うために設けられた弁である。
【0043】
同様にして、流量制御弁5と油圧シリンダ3との間に、可変圧力補償弁18、19が配設されている。可変圧力補償弁18は、油圧シリンダ3のロッドが伸張側に駆動されている場合の流量制御弁5の圧力補償を行うために設けられた弁であり、可変圧力補償弁19は、油圧シリンダ3のロッドが縮退側に駆動されている場合の流量制御弁5の圧力補償を行うために設けられた弁である。
【0044】
流量制御弁4、5にはそれぞれ負荷圧抽出ポートが設けられており、これにより油圧アクチュエータ2、3の負荷圧がそれぞれ検出される、各負荷圧抽出ポートを通過した圧油は、シャトル弁11に連通されており、シャトル弁11からは、油圧アクチュータ2の負荷圧、油圧アクチュエータ3の負荷圧のうちで高い方の圧、すなわち最大負荷圧PLを示す圧油が、流出される。
【0045】
ここで、一般に、圧力補償弁16´では、図7に示すように、一方側(右側)から上記最大負荷圧PLを作用させ、反対側(左側)からは流量制御弁4と圧力補償弁16´との間の圧力(補償圧)を作用させることで、補償圧が最大負荷圧PLと釣り合うように(同じになるように)作動される。
【0046】
本実施形態の可変圧力補償弁では、可変圧力補償弁16を被補償側と仮定し代表させて示せば、一方側(右側)からは上記最大負荷圧である油圧アクチュエータ3の負荷圧PLが作用されている。また可変圧力補償弁16の反対側(左側)からは、上記補償圧とともに、コントローラ8から出力される指令電流I1に応じたパイロット圧Ppが作用されている。
【0047】
すなわち、後述するように、コントローラ8からは、指令電流I1が生成、出力されて、電磁比例制御弁24のソレノイドに加えられる。電磁比例制御弁24では指令電流I1がパイロット圧Ppに変換されて、このパイロット圧Ppのパイロット圧油が可変圧力補償弁16の左側に加えられる。
【0048】
ここで、電磁比例制御弁24から出力されるパイロット圧Ppがオフされている場合には、可変圧力補償弁16の開口は、左側から作用する、流量制御弁4と可変圧力補償弁16との間の補償すべき圧力(補償圧)と、右側から作用する最大負荷圧力PLが釣り合う位置で、バランスしており、補償圧は最大負荷圧PLと同一の圧力まで上昇する。
【0049】
よって、流量制御弁4の絞りの前後差圧(流量制御弁4の流入側の圧力と流出側の圧力の差圧)ΔPは、油圧ポンプ1の吐出圧と最大負荷圧PLの差圧となり、これにより最大負荷圧となった流量制御弁の前後差圧と同一の差圧に補償される。つまり、差圧ΔPが、各流量制御弁4、5について同一となる。
【0050】
この結果、前述した(1)式、
Q=c・A・√( ΔP ) …(1)
(ただし、Qは流量制御弁の絞りを通過する流量、cは流量定数、Aは絞りの開口面積、ΔPは絞りの前後差圧)
において、差圧ΔPが各流量制御弁4、5について同一となったことによって、オペレータが指令する操作量St(開口面積A)に比例した流量Qを、各油圧シリンダ2、3に供給することができる。
【0051】
ここで、電磁比例制御弁24から出力されるパイロット圧Ppが可変圧力補償弁16に加わると、パイロット圧Ppの大きさに応じて可変圧力補償弁16の開口量(絞りの開口面積)が大きくなり、可変圧力補償弁16と流量制御弁4の間の補償圧は、最大負荷圧PLより低い圧力で釣り合うことになる。この結果、流量制御弁4の前後差圧ΔPは大きくなり、圧力補償の度合いが小さくなる。この結果、前述した(1)式、
Q=c・A・√( ΔP ) …(1)
(ただし、Qは流量制御弁の絞りを通過する流量、cは流量定数、Aは絞りの開口面積、ΔPは絞りの前後差圧である)
において、差圧ΔPが大きくなったことによって、オペレータが指令する同じ駆動指令値(開口面積A)であっても、パイロット圧Ppがオフの場合に比較して、より多くの流量Qを、油圧シリンダ2に供給することができ、油圧シリンダ2の駆動速度、つまりブームの作動速度が上昇することになる。
【0052】
可変圧力補償弁17についても同様に、コントローラ8から出力される指令電流I1に応じたパイロット圧Ppに応じて弁の開口量が変化され、これに応じて圧力補償の度合いが小さくなる。
【0053】
同様に、流量制御弁5と油圧シリンダ3との間の可変圧力補償弁18についても同様であり、コントローラ8から出力される指令電流I2が電磁比例制御弁25でパイロット圧Ppに変換されて、このパイロット圧Ppのパイロット圧油が可変圧力補償弁18の左側に加えられることによって、圧力補償の度合いが小さくなり、同じ操作レバー7の操作量St(流量制御弁5の開口面積A)であっても油圧シリンダ3に、より多くの流量を流し、バケットの作動速度を、上昇させることができる。可変圧力補償弁19についても同様に、コントローラ8から出力される指令電流I2に応じたパイロット圧Ppに応じて弁の開口量が変化され、これに応じて圧力補償の度合いが小さくなる。
【0054】
つぎに、コントローラ8で行われる処理について、図3〜図6を併せ参照して説明する。
【0055】
.第1の実施形態
本実施形態では、コントローラ8に、図3に示すように、操作レバー6、7のレバーストローク位置Stと、圧力補償の度合いとの対応関係が記憶テーブルとして記憶されている。
【0056】
図3は、操作レバー6、7のレバーストローク位置Stが大きくなる方向に操作されたときに、レバーストローク位置Stが大きくなるほど、圧力補償の度合いが徐々に小さくなる対応関係を表している。図において、圧力補償の度合い1とは、可変圧力補償弁(たとえば可変圧力補償弁16)に、パイロット圧Ppが作用していない従来の圧力補償弁16´の圧力補償の度合いに対応している。圧力補償の度合いが1よりも徐々に小さくなることは、可変圧力補償弁16に作用するパイロット圧Ppが徐々に大きくなり、これに伴い可変圧力補償弁16の開口量が徐々に大きくなり、対応する流量制御弁4の差圧ΔPが徐々に大きくなることに対応している。
【0057】
コントローラ8では、まず、低負荷側の操作レバー6が、操作量Stを増加させる方向(中立位置からフルレバー位置に向かう方向)に操作されたか否かが判断される。すなわち、圧力センサ20または21の検出パイロット圧が増加したことを検出することによって、低負荷側の操作レバー6が、操作量Stを増加させる方向に操作されたことを判断する。
【0058】
ここで、低負荷側の操作レバー6が、たとえば油圧シリンダ2のロッドを伸張させる側に倒され、ハーフレバー位置から、さらに操作量Stを増加させる方向に操作されたとする。
【0059】
すると、圧力センサ20の検出パイロットが増加するので、これにより、低負荷側の操作レバー6が、油圧シリンダ2のロッドを伸張させる側に倒され、操作量Stの増加方向に操作されたと判断される。
このように、低負荷側の駆動軸の操作レバー6の操作量Stが増加する方向に動かされたことを判断することによって、オペレータの低負荷側の油圧シリンダ2を加速させたいとの意思が判断される。
【0060】
そこで、つぎに、圧力センサ20の現在の検出パイロット圧から、操作レバー6の現在のレバーストローク位置Stが求められる。
【0061】
そして、この求められたレバーストローク位置Stに対応する圧力補償の度合いが、図3に示す記憶テーブルの記憶内容から読み出される。
【0062】
レバーストローク位置Stが大きいほど、圧力補償の度合いが小さいのは、操作レバー7が増加方向に大きく操作されるほど、油圧アクチュエータ2の速度を増速させたいとの意思が強いからである。
【0063】
たとえば、上記記憶テーブルから読み出された圧力補償の度合いが0.8であったとすれば、この圧力補償度合い0.8を得るための指令電流I1が生成され、これが電磁比例制御弁24に対して出力される。そして、電磁比例制御弁24から指令電流I1に対応するパイロット圧Ppのパイロット圧油が、可変圧力補償弁16に加えられて、可変圧力補償弁16の開口量が変化されて、圧力補償の度合いが0.8になる。この結果、流量制御弁4は、圧力補償の度合いが1から0.8まで小さくなったことに応じて差圧ΔPが大きくなり、その分、油圧シリンダ2に供給される流量Qが増加する。これにより、油圧シリンダ2の速度は増速されることになる。操作レバー6の操作ストローク位置Stが大きいほど、圧力補償の度合いが小さくなり、油圧シリンダ2は、大きく加速されることになる。
【0064】
以上、操作レバー6が油圧シリンダ2のロッドを伸張させる側に倒された場合を想定したが、操作レバー6が油圧シリンダ3のロッドを縮退させる側に倒された場合も同様に、可変圧力補償弁17に、操作ストローク位置Stの大きさに応じたパイロット圧Ppが加えられることによって、油圧シリンダ2が、(ロッド縮退側に)加速されることになる。
【0065】
なお、低負荷側の操作レバーが、操作レバー7であれば、同様にして、この操作レバー7に対応する可変圧力補償弁18、19に、操作ストローク位置Stの大きさに応じたパイロット圧Ppが加えられることによって、油圧シリンダ3が、より加速されることになる。
以上説明した実施形態では、操作レバー6、7を電気式レバーとし、コントローラ8で圧力センサ20等の検出圧力から操作レバー6あるいは7の現在のレバーストローク位置Stを求め、この求めたレバーストローク位置Stに対応する圧力補償の度合いが得られるようなパイロット圧Ppを可変圧力補償弁に対して出力するようにしているが、図8に示すように操作レバー6´、7´を油圧式のレバーとし、コントローラ8を設けない油圧回路に対しても適用可能である。
【0066】
図8に示す実施形態の可変圧力補償弁30は、流量制御弁4に付設された補償弁であり、図1の可変圧力補償弁16、17に対応するものである。同様に、可変圧力補償弁31は、流量制御弁5に付設された補償弁であり、図1の可変圧力補償弁18、19に対応するものである。
【0067】
また、チェック弁11´は図1のシャトル弁11と同等の機能を有しており、可変圧力補償弁30、31の一方側に最大負荷圧PLを作用させる。なお、可変圧力補償弁30、31の反対側には補償圧が作用される。
【0068】
いま、可変圧力補償弁30を被補償側と仮定し代表させて示せば、可変圧力補償弁30に補償圧が作用する側に、操作レバー6´の減圧弁から出力されるパイロット圧油のパイロット圧Ppが作用されている。なお、油圧式レバーである操作レバー6´の減圧弁では、図示せぬパイロットポンプから吐出された圧油がレバー操作量Stに応じたパイロット圧Ppまで減圧され、これがパイロット圧油として流量制御弁4および可変圧力補償弁30に加えられる。
【0069】
操作レバー6´のレバーストローク位置Stが大きくなると、これに応じて可変圧力補償弁30に加えられるパイロット圧Ppが大きくなる。これに伴い可変圧力補償弁30の開口量が徐々に大きくなり、対応する流量制御弁4の差圧ΔPが徐々に大きくなり、圧力補償の度合いが徐々に小さくなる。
【0070】
したがって図1の実施形態と同様にレバーストローク位置Stが大きいほど、圧力補償の度合いが小さくなり、油圧シリンダ2が大きく加速されるという制御が実現される。
【0071】
なお、低負荷側の操作レバーが、操作レバー7´であれば、同様にして、この操作レバー7´に対応する可変圧力補償弁31に、操作ストローク位置Stが大きくなるにつれて大きくなるパイロット圧Ppが加えられることによって、圧力補償の度合いが小さくなり、油圧シリンダ3が、より加速されることになる。
【0072】
また、図1のコントローラ8の記憶テーブルに、図3に示す対応関係を記憶させておく代わりに、図4に示す対応関係を、記憶させておくこともできる。
【0073】
図4は、操作レバー6、7のレバーストローク量Stが増加する方向に操作されたときに、レバーストローク量Stの単位時間当たりの増加量ΔStが大きくなるほど、圧力補償の度合いが徐々に小さくなる対応関係を表している。
【0074】
図4に示す対応関係が記憶テーブルに記憶されているときのコントローラ8で行われる処理について説明する。
【0075】
コントローラ8では、低負荷側の操作レバー6が、操作量Stを増加させる方向(中立位置からフルレバー位置に向かう方向)に操作されたか否かが判断される。すなわち、圧力センサ20または21の検出パイロット圧が増加したことを検出することによって、低負荷側の操作レバー6が、操作量Stを増加させる方向に操作されたことを判断する。
【0076】
ここで、低負荷側の操作レバー6が、たとえば油圧シリンダ2のロッドを伸張させる側に倒され、ハーフレバー位置から、さらに操作量Stを増加させる方向に操作されたとする。
【0077】
すると、圧力センサ20の検出パイロットが増加するので、これにより、低負荷側の操作レバー6が、油圧シリンダ2のロッドを伸張させる側に倒され、操作量Stの増加方向に操作されたと判断される。
このように、低負荷側の駆動軸の操作レバー6の操作量Stが増加する方向に動かされたことを判断することによって、オペレータの低負荷側の油圧シリンダ2を加速させたいとの意思が判断される。
【0078】
そこで、つぎに、圧力センサ20の出力から、パイロット圧の単位時間当たりの増加量ΔStが求められ、この求められたレバーストローク増加量ΔStに対応する圧力補償の度合いが、図4に示す記憶テーブルの記憶内容から読み出される。
【0079】
レバーストローク増加量ΔStが大きいほど、圧力補償の度合いが小さいのは、操作レバー7の単位時間当たりの増加量ΔSt(操作速度)が大きいほど、油圧アクチュエータ2の速度を増速させたいとの意思が強いからである。
【0080】
たとえば、上記記憶テーブルから読み出された圧力補償の度合いが0.8であったとすれば、この圧力補償度合い0.8を得るための指令電流I1が生成され、これが電磁比例制御弁24に対して出力される。そして、電磁比例制御弁24から指令電流I1に対応するパイロット圧Ppのパイロット圧油が、可変圧力補償弁16に加えられて、可変圧力補償弁16の開口量が変化されて、圧力補償の度合いが0.8になる。この結果、流量制御弁4は、圧力補償の度合いが1から0.8まで小さくなったことに応じて差圧ΔPが大きくなり、その分、油圧シリンダ2に供給される流量Qが増加する。これにより、油圧シリンダ2の速度は増速されることになる。操作レバー6のレバーストローク増加量ΔStが大きいほど、圧力補償の度合いが小さくなり、油圧シリンダ2は、大きく加速されることになる。
【0081】
以上、操作レバー6が油圧シリンダ2のロッドを伸張させる側に倒された場合を想定したが、操作レバー6が油圧シリンダ3のロッドを縮退させる側に倒された場合も同様に、可変圧力補償弁17に、レバーストローク増加量ΔStの大きさに応じたパイロット圧Ppが加えられることによって、油圧シリンダ2が、(ロッド縮退側に)より加速されることになる。
【0082】
なお、低負荷側の操作レバーが、操作レバー7であれば、同様にして、この操作レバー7に対応する可変圧力補償弁18、19に、レバーストローク増加量ΔStの大きさに応じたパイロット圧Ppが加えられることによって、油圧シリンダ3が、より加速されることになる。
【0083】
なお、図3、図4では、レバーストローク位置Stの増大またはレバーストローク増加量ΔStの増加にしたがって、圧力補償の度合いが漸次変化する対応関係を想定しているが、レバーストローク位置Stまたはレバーストローク増加量ΔStのしきい値を定めて、このしきい値の前後で、圧力補償の度合いが二値的に変化するような対応関係を設定しておいてもよい。
【0084】
たとえば、図4の対応関係の代わりに、レバーストローク増加量ΔStにしきい値ΔSthを定めておき、このしきい値ΔSthよりも現在のレバーストローク増加量ΔStが小さい場合には、圧力補償の度合いを現在のままの1とし、現在のレバーストローク増加量ΔStが、しきい値ΔSth以上の場合には、圧力補償の度合いを1から0.8に緩めるような対応関係を設定しておいてもよい。
【0085】
以上のように、この第1の実施形態によれば、低負荷側の駆動軸の操作レバー6の操作量Stが増加する方向に動かしたことによって、オペレータの低負荷側の油圧シリンダ2を加速させたいとの意思を判断し、そのときの操作レバー6のレバーストローク位置St、レバーストローク増加量ΔStが大きくなるほど、圧力補償手段16の圧力補償の度合いを小さくする(緩める)制御を行うようにし、低負荷側の流量制御弁4の前後の差圧ΔPを大きくし流量制御弁4を介して油圧シリンダ2に供給される流量を増加させ、低負荷側の油圧シリンダ2を加速させるようにしたので、レバー操作性が向上するとともに、作業効率が向上する。
【0086】
しかも、従来技術として比較して、圧力補償を緩める駆動軸のみについて、演算処理、制御を行うだけでよいので、制御を簡易を行うことができる。
【0087】
・第2の実施形態
つぎに、低負荷側の駆動軸の操作レバー6がフルレバー領域まで操作されたとしても、この低負荷側の油圧シリンダ2をさらに加速させることができる実施形態について説明する。
【0088】
本実施形態では、コントローラ8に、図5に示すように、操作レバー6、7のレバーストローク位置Stと、圧力補償の度合いとの対応関係が記憶テーブルとして記憶されている。
【0089】
図5は、操作レバー6、7のレバーストローク量Stが減少する方向に操作されたときに、レバーストローク位置Stが小さくなるほど、この操作されている操作レバーとは異なる操作レバーに対応する流量制御弁の圧力補償の度合いが徐々に小さくなる対応関係を表している。図において、圧力補償の度合い1とは、可変圧力補償弁(たとえば可変圧力補償弁16)に、パイロット圧Ppが作用していない従来の圧力補償弁16´の圧力補償の度合いに対応している。圧力補償の度合いが1よりも徐々に小さくなることは、可変圧力補償弁16に作用するパイロット圧Ppが徐々に大きくなり、これに伴い可変圧力補償弁16の開口量が徐々に大きくなり、対応する流量制御弁4の差圧ΔPが徐々に大きくなることに対応している。
【0090】
コントローラ8では、低負荷側の操作レバー6がフルレバー位置まで操作されているか否かが判断される。低負荷側の操作レバー6がフルレバー位置まで操作されていない場合には、上記第1の実施形態と同様の処理が実行される。
【0091】
ここで、低負荷側の操作レバー6がフルレバー位置まで操作されている場合には、以下の処理が実行される。
【0092】
すなわち、高負荷側の操作レバー7が、操作量Stを減少させる方向(フルレバー位置から中立位置に向かう方向)に操作されたか否かが判断される。すなわち、圧力センサ22または23の検出パイロット圧が減少したことを検出することによって、高負荷側の操作レバー7が、操作量Stを減少させる方向に操作されたことを判断する。
【0093】
ここで、高負荷側の操作レバー7が、操作量Stを減少させる方向に操作されたとする。
【0094】
すると、圧力センサ22または23の検出パイロットが減少するので、これにより、高負荷側の操作レバー7が、操作量Stを減少させる方向に操作されたと判断される。
このように、高負荷側の駆動軸の操作レバー7の操作量Stが減少する方向に動かされたことを判断することによって、オペレータの低負荷側の油圧シリンダ2を加速させたいとの意思が判断される。
【0095】
そこで、つぎに、圧力センサ22または23の現在の検出パイロット圧から、操作レバー7の現在のレバーストローク位置Stが求められる。
【0096】
そして、この求められたレバーストローク位置Stに対応する圧力補償の度合いが、図5に示す記憶テーブルの記憶内容から読み出される。
【0097】
レバーストローク位置Stが小さいほど、圧力補償の度合いが小さいのは、操作レバー7が大きく中立位置側に戻し操作されるほど、油圧シリンダ2の速度を増速させたいとの意思が強いからである。
【0098】
たとえば、上記記憶テーブルから読み出された圧力補償の度合いが0.8であったとすれば、この圧力補償度合い0.8を得るための指令電流I1が生成され、これが電磁比例制御弁24に対して出力される。そして、電磁比例制御弁24から指令電流I1に対応するパイロット圧Ppのパイロット圧油が、可変圧力補償弁16に加えられて、可変圧力補償弁16の開口量が変化されて、圧力補償の度合いが0.8になる。この結果、流量制御弁4は、圧力補償の度合いが1から0.8まで小さくなったことに応じて差圧ΔPが大きくなり、その分、油圧シリンダ2に供給される流量Qが増加する。これにより、油圧シリンダ2の速度は増速されることになる。操作レバー7の戻し操作位置Stが小さいほど、圧力補償の度合いが小さくなり、油圧シリンダ2は、大きく加速されることになる。
【0099】
以上のように、たとえば、高負荷側のバケットがリリーフ状態で、低負荷側のブームが上げ側にフルレバー位置まで操作されていたとしても、高負荷のバケット側の操作レバー7を中立位置側に戻す操作を行えば、ブーム上げが増速されることになる。
【0100】
なお、高負荷側の操作レバーが、操作レバー6であれば、この操作レバー6を中立位置側に戻す操作をすることによって同様にして、この操作レバー6以外の操作レバー7に対応する可変圧力補償弁18または19に、戻し操作位置Stの大きさに応じたパイロット圧Ppが加えられることによって、油圧シリンダ3が、より加速されることになる。
【0101】
また、図5に示す対応関係の代わりに、図6に示す対応関係を、記憶テーブルに記憶させておくこともできる。
【0102】
図6は、操作レバー6、7の操作量Stが減少する方向に操作されたときに、レバーストローク減少量ΔStが大きくなるほど、この操作されている操作レバーとは異なる操作レバーに対応する流量制御弁の圧力補償の度合いが徐々に小さくなる対応関係を表している。
【0103】
コントローラ8では、低負荷側の操作レバー6がフルレバー位置まで操作されているか否かが判断される。低負荷側の操作レバー6がフルレバー位置まで操作されていない場合には、上記第1の実施形態と同様の処理が実行される。
【0104】
ここで、低負荷側の操作レバー6がフルレバー位置まで操作されている場合には、以下の処理が実行される。
【0105】
すなわち、高負荷側の操作レバー7が、操作量Stを減少させる方向(フルレバー位置から中立位置に向かう方向)に操作されたか否かが判断される。すなわち、圧力センサ22または23の検出パイロット圧が減少したことを検出することによって、高負荷側の操作レバー7が、操作量Stを減少させる方向に操作されたことを判断する。
【0106】
ここで、高負荷側の操作レバー7が、操作量Stを減少させる方向に操作されたとする。
【0107】
すると、圧力センサ22または23の検出パイロットが減少するので、これにより、高負荷側の操作レバー7が、操作量Stを減少させる方向に操作されたと判断される。
このように、高負荷側の駆動軸の操作レバー7の操作量Stが減少する方向に動かされたことを判断することによって、オペレータの低負荷側の油圧シリンダ2を加速させたいとの意思が判断される。
【0108】
そこで、つぎに、圧力センサ22または23の現在の検出パイロット圧から、操作レバー7の単位時間当たりのレバーストローク減少量ΔStが求められる。
【0109】
そして、この求められたレバーストローク減少量ΔStに対応する圧力補償の度合いが、図6に示す記憶テーブルの記憶内容から読み出される。
【0110】
レバーストローク減少量ΔStが大きいほど、圧力補償の度合いが小さいのは、操作レバー7が大きい速度で中立位置側に戻し操作されるほど、油圧シリンダ2の速度を増速させたいとの意思が強いからである。
【0111】
たとえば、上記記憶テーブルから読み出された圧力補償の度合いが0.8であったとすれば、この圧力補償度合い0.8を得るための指令電流I1が生成され、これが電磁比例制御弁24に対して出力される。そして、電磁比例制御弁24から指令電流I1に対応するパイロット圧Ppのパイロット圧油が、可変圧力補償弁16に加えられて、可変圧力補償弁16の開口量が変化されて、圧力補償の度合いが0.8になる。この結果、流量制御弁4は、圧力補償の度合いが1から0.8まで小さくなったことに応じて差圧ΔPが大きくなり、その分、油圧シリンダ2に供給される流量Qが増加する。これにより、油圧シリンダ2は、速度は増速されることになる。操作レバー7のレバーストローク減少量ΔStが大きいほど、圧力補償の度合いが小さくなり、油圧シリンダ2は、大きく加速されることになる。
【0112】
なお、高負荷側の操作レバーが、操作レバー6であれば、操作レバー6を戻し操作することによって同様にして、この操作レバー6以外の操作レバー7に対応する可変圧力補償弁18または19に、レバーストローク減少量ΔStの大きさに応じたパイロット圧Ppが加えられることによって、油圧シリンダ3が、より加速されることになる。
【0113】
なお、図5、図6では、レバーストローク位置Stまたはレバーストローク減少量ΔStの変化にしたがって、圧力補償の度合いが漸次変化する対応関係を想定しているが、レバーストローク位置Stまたはレバーストローク減少量ΔStのしきい値を定めて、このしきい値の前後で、圧力補償の度合いが二値的に変化するような対応関係を設定しておいてもよい。
【0114】
たとえば、図6の対応関係の代わりに、レバーストローク減少量ΔStにしきい値ΔSthを定めておき、このしきい値ΔSthよりも現在のレバーストローク減少量ΔStが小さい場合には、圧力補償の度合いを現在のままの1とし、現在のレバーストロー減少量ΔStが、しきい値ΔSth以上の場合には、圧力補償の度合いを1から0.8に緩めるような対応関係を設定しておいてもよい。
【0115】
以上のように、この第2の実施形態によれば、低負荷側の駆動軸の操作レバー6がフルレバー領域まで操作されたとしても、他の駆動軸の操作レバー7が戻されたことを検出することによって、低負荷側の油圧シリンダ2を加速させたい意思を判断して、低負荷側の駆動軸の圧力補償の度合いを小さくし、この低負荷側の油圧シリンダ2の速度をさらに加速させるようにしたので、高負荷側の駆動軸の操作レバー7を中立側に戻していったときに、低負荷側の油圧シリンダ2の速度を加速させるという従来技術ではなし得なかった制御が実現される。
【0116】
以上説明した実施形態では、可変型の圧力補償弁を設ける場合を想定しているが、可変圧力補償弁を設ける必要のない実施も可能である。
【0117】
図2は、操作レバー6、7を電気レバーとし、コントローラ8から、各流量制御弁4、5に対して指令電流A1・K1、A2・K2を出力することにより、圧力補償の度合いを変化させる場合を示している。指令電流A1・K1、A2・K2は、電磁比例制御弁12、13によってそれぞれパイロット圧に変換されて、このパイロット圧のパイロット圧油が、流量制御弁4、5の入力ポートにそれぞれ加えられ、これにより流量制御弁4、5のスプールストローク位置が変化される。
【0118】
なお、各流量制御弁4、5に対する指令電流A1・K1、A2・K2は、前述した(2)式、
Qi=c・(Ai・Ki)・√(△Pi)
における係数Ai・Kiに対応するものである。
【0119】
以下、コントローラ8で行われる処理について説明する。
【0120】
コントローラ8には、操作レバー6、7の操作ストローク位置Stを示す電気信号V1、V2がそれぞれ入力される。
【0121】
コントローラ8では、この電気信号V1、V2に基づき、図1で説明したのと同様にして、低負荷側の操作レバーが操作量Stを増加させる方向に操作されたか、高負荷側の操作レバーが操作量Stを減少させる方向に操作されたかが判断される。
【0122】
いずれでもない場合には、コントローラ8から各流量制御弁4、5に対して、上記(2)式で示される指令電流A1・K1、A2・K2が出力される。このとき、低負荷側の流量制御弁の圧力補償の度合いは1のままとなっている。
【0123】
そこで、いま、たとえば油圧シリンダ2が低負荷側であるとし、この低負荷側の操作レバー6が操作量Stを増加させる方向に操作されたか、高負荷側の操作レバー7が操作量Stを減少させる方向に操作されたことが判断されると、この低負荷側の流量制御弁4の圧力補償度合いが、図3または図4または図5または図6に示す対応関係から求められる。
【0124】
すると、現在の補正係数K1よりも値の大きい補正係数K1´が新たに求められる。この補正係数K1´は、上記求められた圧力補償度合いが小さくなる(緩められる)に従い、より大きい値をとる。そして、この補正係数K1´に、操作レバー6の操作ストローク位置St(V1)に応じた開口面積A1が乗算されることによって、補正指令電流A1・K1´が求められる。
【0125】
コントローラ8から、この補正指令電流A1・K1´が流量制御弁4に加えられることによって、この流量制御弁4の圧力補償の度合いは、より小さくなり、流量制御弁4の前後差圧ΔPがより大きくなり、油圧シリンダ2に供給される圧油の流量が増加され、ブームの作動速度が増速される。
【0126】
一方、油圧シリンダ3が低負荷側であり、この低負荷側の操作レバー7が操作量Stを増加させる方向に操作されたか、高負荷側の操作レバー6が操作量Stを減少させる方向に操作されたことが判断された場合には、流量制御弁5に対して、補正指令電流A1・K2´が出力され、これによって油圧シリンダ3に供給される圧油の流量が増加され、バケットの作動速度が増速される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係る油圧駆動機械の制御装置の実施の形態を示す油圧回路図である。
【図2】図2は図1とは異なる実施形態を示す油圧回路図である。
【図3】図3はレバーが増加方向に操作されたときのレバーストローク位置と圧力補償の度合いの対応関係を示す図である。
【図4】図4はレバーストローク増加量と圧力補償の度合いの対応関係を示す図である。
【図5】図5はレバーが減少方向に操作されたときのレバーストローク位置と、このレバーとは別のレバーに対応する流量制御弁の圧力補償の度合いの対応関係を示す図である。
【図6】図6はレバーストローク減少量と、このレバーとは別のレバーに対応する流量制御弁の圧力補償の度合いの対応関係を示す図である。
【図7】図7は従来の圧力補償弁を用いた油圧回路を示す図である。
【図8】図8は操作レバーが油圧式レバーである場合の実施形態を示す油圧回路図である。
【符号の説明】
1 可変容量型油圧ポンプ
2、3 油圧シリンダ
4、5 流量制御弁
6、7 操作レバー
8 コントローラ
20〜24 圧力センサ
16〜19 可変圧力補償弁

Claims (3)

  1. 油圧ポンプと、この油圧ポンプの吐出圧油が供給されることにより駆動される複数の油圧アクチュエータと、これら複数の油圧アクチュエータ毎に設けられた複数の操作手段と、これら複数の操作手段毎に設けられ、操作手段の操作量に応じた流量の圧油を、対応する油圧アクチュエータに供給する複数の流量制御弁と、各流量制御弁毎に設けられ、流量制御弁の流入側の圧油の圧力と流出側の圧油の圧力との差圧が、全ての流量制御弁で同一となるように、圧力補償を行なう圧力補償弁とを具えた油圧駆動機械の制御装置において、
    前記複数の操作手段の操作量を検出する操作量検出手段と、
    前記操作量検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の操作手段のうちのいずれかの操作手段が、操作量が増加する方向に操作されたことを判断し、この操作量が増加する方向に操作された操作手段に対応する流量制御弁の前後の差圧が大きくなるように、当該流量制御弁に対応する圧力補償弁の開口面積を変化させることによって当該圧力補償弁の圧力補償度合いを変化させる圧力補償度合い変化手段と
    を具えた油圧駆動機械の制御装置。
  2. 前記圧力補償度合い変化手段は、操作量が増加する方向に操作された操作手段の操作量の増加量が大きくなるに伴い、この操作手段に対応する流量制御弁の前後の差圧がより大きくなるように、前記圧力補償弁による圧力補償度合いを変化させるものである
    請求項1記載の油圧駆動機械の制御装置。
  3. 油圧ポンプと、この油圧ポンプの吐出圧油が供給されることにより駆動される複数の油圧アクチュエータと、これら複数の油圧アクチュエータ毎に設けられた複数の操作手段と、これら複数の操作手段毎に設けられ、操作手段の操作量に応じた流量の圧油を、対応する油圧アクチュエータに供給する複数の流量制御弁と、この流量制御弁の流入側の圧油の圧力と流出側の圧油の圧力との差圧が、全ての流量制御弁で同一となるように、圧力補償を行なう圧力補償手段とを具えた油圧駆動機械の制御装置において、
    前記複数の操作手段の操作量を検出する操作量検出手段と、
    前記操作量検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の操作手段のうちのいずれかの操作手段が、操作量が減少する方向に操作されたことを判断し、この操作量が減少する方向に操作された操作手段以外の操作手段に対応する流量制御弁の前後の差圧が大きくなるように、前記圧力補償手段による圧力補償度合いを変化させる圧力補償度合い変化手段と
    を具えた油圧駆動機械の制御装置。
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