JP3938348B2 - インクジェット用記録シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット用記録シートの製造方法に関し、さらに詳しくは、印字画像に優れた耐水性、耐湿性を付与し、且つインクの吸収性、インクの発色性に優れ、安定した高品位な印字画像の記録が可能で、さらに透明性、搬送性、耐ブロッキング性に優れるインク受容層を有するインクジェット用記録シートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理、例えば、静電吸引方式、圧電素子を用いてインクに機械的振動又は変位を与える方式、インクを加熱して発泡させその圧力を利用する方式等によりインクの微小液滴を飛翔させて紙などの記録シートに付着させて画像、文字などの記録を行うものであり、高速印字、騒音の発生が少なく、高品位印字、多色印字の行える記録方式として種々の用途に急速に普及している。
【0003】
このようなインクジェット記録に用いられる被記録媒体には、被記録媒体上に付着したインクが滲みや流れを発生し、印字品位を損ねることがないように、インクの吸収を速やかにし、明瞭なインクドットが形成されるように、紙等の支持体に種々の顔料と樹脂を主成分とするインク受容層を設けたもの、あるいは紙自身に多孔質の顔料を抄き込んだ記録用シート等が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、顔料として無機顔料と有機顔料を併用し、水溶性高分子からなるインク受容層を設けることが、又、特許文献2には、微粉末シリカとシラノール基を有するポリビニルアルコール共重合体よりなるインク受容層を設けることがそれぞれ開示されている。
【0005】
しかし、装置の高速化、高精細化或いはフルカラー化等のインクジェット記録装置の性能の向上や用途の拡大に伴い、インクジェット用記録シートにも次のような高度な特性を併せ持つことが要求されるようになった。
(1)インクの吸収が速く、且つインク吸収容量が大きいこと、
(2)インクの発色性が高いこと、
(3)インク受容層の表面強度が高いこと、
(4)支持体が耐水性を有し、インクにより支持体に凹凸やカールを生じないこ
と、
(5)インク受容層に印字された画像は、耐水性及び耐オゾン性等の画像保存性
が良いこと、
(6)インク受容層が経時変化しないものであること、等。
【0006】
従来、これらの要求を満たすためにインクジェット用記録シートに設けるインク受容層の成分として、インク吸収性に優れた多孔質顔料や水溶性高分子を使用したり、インク受容層の耐水性向上のためにラテックスを使用したり、更には支持体自体に耐水性を有する合成紙やプラスチック等を用いることが提案並びに検討されてきた。
【0007】
しかしながら、支持体に紙を用いたり、水溶性高分子のみをインク受容層として用いたものは、耐水性が悪く、印字部分が滲み、画像の鮮明性に劣る。又、インク受容層に多孔質顔料を分散させたものは、多孔質顔料は通常つや消し剤(マット剤)として使用されるように一般的に透明性を低下させるものであり、たとえ5重量%以下の少ない分散量であってもその透明性は著しく低下する。一方、支持体に合成紙やプラスチックフィルムを用いたり、インク受容層の樹脂にラテックスを使用したものについては、インク受容層と支持体との接着性やインクの吸収性や乾燥性に問題がある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭57−82085号公報
【特許文献2】
特開昭62−268682号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特に水性インクの吸収性に優れ、且つインクドットの形状がシャープで、インクの発色性に優れ、安定した高品位な印字画像を与え、更に搬送性、透明性、耐ブロッキング性、耐水性及び耐湿性に優れるインク受容層を有するインクジェット用記録シートの提供を目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、基材シートの少なくとも片面に、少なくとも一層のインク受容層を設けたインクジェット用記録シートを製造する方法において、インク受容層を、有機ポリイソシアネートと、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物と、少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサン化合物とを、反応させることによって親水性セグメントと第3級アミノ基とポリシロキサンセグメントとを有する親水性ポリウレタン系樹脂を合成する際に、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンの少なくとも一部として、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと微粒子アルミナとの混合物を用いてなるアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物を用いて形成することを特徴とするインクジェット用記録シートの製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に発明の実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明のインクジェット用記録シートは、インク受容層が樹脂成分の親水性ポリウレタン系樹脂と微粒子アルミナとから構成されている。本発明の親水性ポリウレタン系樹脂は、有機ポリイソシアネート、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物と、少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサン化合物を、必要に応じて鎖延長剤と反応させて得られる親水性セグメントと第3級アミノ基とポリシロキサンセグメントとを有する親水性ポリウレタン系樹脂である。
【0012】
一方、アルミナ微粒子は、この親水性ポリウレタン系樹脂を合成する際、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンの少なくとも一部として、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと微粒子アルミナとの混合物を使用することによって、生成する親水性ポリウレタン系樹脂中に含有(分散)される(これを、本発明ではアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物と称する。)。微粒子アルミナは、分散剤を使用しないにも拘らず、親水性ポリウレタン系樹脂の溶液に安定に分散している。このアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物を用いて本発明のインクジェット用記録シートのインク受容層が形成される。尚、本発明においてはポリウレタン系樹脂とは、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン−ポリウレア樹脂を総称するものである。
【0013】
本発明において、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと微粒子アルミナとの混合物は、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンに微粒子アルミナとを機械的に混合、分散させたものも使用できるが、上記ポリオール及び/又はポリアミンとアルミナゾルとの混合物からアルミナゾルの分散溶剤を除去して得られたものを使用することが好ましい。上記ポリオール及び/又はポリアミンをそれらの可溶性溶剤の溶液として使用する場合には、この溶剤も除去する。
【0014】
本発明におけるアルミナゾルとは、微粒子アルミナ又は微粒子アルミナ化合物が、通常、分散溶剤の水及び/又はアルコール類に安定に分散させたものである。分散溶剤としては、上記以外にケトン、エステル、その他の有機溶剤も使用される。このアルミナゾル中の微粒子アルミナの平均粒径は、通常1μm以下であり、特に1〜300mμm(nm)のものが好ましい。
【0015】
インクジェット用記録シートのインク受容層を形成する場合には、樹脂溶液や分散液等を使用する方法が一般的である。アルミナ微粒子をポリウレタン系樹脂の溶液に分散させる方法として、下記の方法が挙げられる。例えば、アルミナ微粒子をポリウレタン系樹脂に通常の分散混合機を用いて分散させ、これを溶剤に溶解して使用する方法(1)、アルミナ微粒子或いはアルミナゾルをポリウレタン系樹脂溶液に添加・分散させる方法(2)が考えられる。しかし、方法(1)は、分散剤を用いても安定な分散液が得られず、経済的にも不利である。方法(2)は、一般的な方法ではあるが、この方法でも分散剤を用いてもアルミナ微粒子を安定に分散させることはできない。アルミナゾルを用いても分散安定性は低く、時間とともに両者は容易に分離してしまう。この理由は、ポリウレタン系樹脂と微粒子アルミナとの相溶性(親和性)や両者のpHの変化に対する安定性或はポリウレタン系樹脂と微粒子アルミナの表面の性質が異なること等によるものである。他の方法として、ポリウレタン系樹脂の合成反応時にアルミナゾルを合成系に添加する方法も考えられるが、アルミナゾルの水やアルコール系の分散媒は、イソシアネートと反応することから、使用できないのは勿論、他の溶剤系のアルミナゾルを用いても分散安定性のあるポリウレタン系樹脂溶液は得られない。
【0016】
しかし、本発明で使用する後述の高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンは、その親水性によりアルミナとの相溶性(親和性)が極めて高く、任意の割合でアルミナゾルと安定に混合することができる。そして、この混合物からアルミナゾルの分散媒を任意の方法で除去することにより、極めて安定に微粒子アルミナが分散した高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンが得られ、しかも、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミン中の微粒子アルミナの分散量が増大しても、該ポリポリオール及び/又はポリアミンの粘度上昇は少なく、且つこの混合物と他の原料成分を溶剤中で反応させることによって、分散剤を使用しなくても親水性ポリウレタン系樹脂溶液中にアルミナ微粒子が安定に分散した分散液が得られる。無溶剤で反応させた場合には、ポリウレタン系樹脂をその可溶性溶剤に溶解することで上記と同じ安定な分散液が得られる。これらの分散液は、いずれも極めて透明であり、これから形成されるフィルムも透明である。
【0017】
高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミン或いはその溶液とアルミナゾルとの混合物からのアルミナゾルの分散媒や有機溶剤の除去は、一般的に減圧等で容易に留去することができる。この場合、留去を減圧下、低温で行うことが好ましく、70℃以下で留去することが特に好ましい。これ以上の高温になると微粒子アルミナの凝集が起こることがあり、アルミナの分散安定性が低下するとともに、透明性の低いアルミナ分散高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンが生成することがある。高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンとアルミナゾルとの混合割合は、微粒子アルミナが、生成する前記の親水性ポリウレタン系樹脂に対して5〜95重量%となる量が好ましく、更に好ましくは10〜90重量%となる量である。
【0018】
本発明においてインク受容層を構成する樹脂として使用する親水性ポリウレタン系樹脂は、高分子量の親水性ポリオール及び/又はポリアミンを構成単位とする親水性セグメントと少なくとも1個の第3級アミノ基を同一分子中に有する化合物を構成単位とする第3級アミノ基含有セグメントとポリシロキサンセグメントとを有している。これらのセグメントは、鎖延長剤を使用しない場合は、それぞれランダムにウレタン結合、ウレア結合又はウレタン−ウレア結合で結合されている。鎖延長剤を使用する場合には、これらの結合とともに、これらの結合の間に鎖延長剤の残基である短鎖が存在する結合が存在する。
【0019】
分子中に第3級アミノ基とポリシロキサンセグメントが導入されることにより、本発明における親水性ポリウレタン系樹脂には、各種素材に対する優れた接着性、且つ優れた吸水性、防曇性、透明性、可とう性、水性インクの筆記性並びに優れた耐水性、耐ブロッキング性、滑性が付与される。
【0020】
耐水性が付与される理由は定かではないが、次のように考えている。印刷インクやインクジェットインクに用いられている染・顔料は、その分子中に陰イオン性のカルボキシル基やスルフォン酸基を一般的に有しており、親水性ポリウレタン系樹脂中の第3級アミノ基と上記の染・顔料とが混合若しくは接触すると、染・顔料と該樹脂中の第3級アミノ基との間にイオン結合が形成されることと、後述のポリシロキサンセグメントの環境応答性によって染・顔料の定着性及び記録画像の耐水性が向上するものと考えられる。
【0021】
しかし、水分の存在下では上記の如きイオン性結合は解離し易く、耐水性の向上は期待できないはずであるが、耐水性は向上する。耐水性向上の理由は定かではないが、本発明におけるポリウレタン系樹脂は親水性であるが、その分子内には疎水性部分も存在しており、該樹脂中の親水性部分及び第3級アミノ基と染・顔料との間にイオン結合が形成されたあと、疎水性部分がイオン結合部分の回りを取り囲むようになるため、耐水性が向上するものと思われる。
【0022】
次に、本来、疎水性(撥水性)であるポリシロキサンセグメントをポリウレタン系樹脂構造中に導入することは、吸水性及び親水性に対して良好な結果を期待できないはずである。ところが、ポリシロキサンセグメント含有量の少ないポリウレタン系樹脂から形成される皮膜表面は、乾燥状態では完全にポリシロキサン成分で覆われるが、水中に浸漬した場合にはポリシロキサン成分が該樹脂皮膜中に埋没してしまう現象、つまり環境応答性があることが知られている(高分子論文集、第48巻[第4号]、227頁(1991)他)。
【0023】
本発明における親水性ポリウレタン系樹脂は、この現象を利用したものであり、該樹脂中におけるポリシロキサンセグメント含有量を適度にコントロールすることにより、該樹脂を用いた膜面への高湿度又は水性インク等による印字の際には、環境応答性によりその表面は親水性を示し、乾燥時又は乾燥後の表面は、ポリシロキサン成分で覆われて、優れた耐水性、耐ブロッキング性、滑性等が発現される。これらのポリウレタン系樹脂へのポリシロキサンセグメントの導入による効果については、本発明者らはすでに特願平10−235545号、特願平10−240811号や特願平10−170296号等の特許出願で明らかにしている。
【0024】
本発明において親水性ポリウレタン系樹脂を構成する分子鎖中に第3級アミノ基を導入するために使用する化合物は、少なくとも1個の活性水素含有基(反応性基)、例えば、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、或はアルコキシ基、酸ハライド基、カルボキシエステル基、酸無水物基等の水酸基或はカルボキシル基に変換される基を有し、且つ分子鎖中に少なくとも1個の第3級アミノ基を有する化合物である。
【0025】
上記の如き反応性基を有する第3級アミノ基含有化合物の好ましい例としては、例えば、下記の如き化合物が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物
(式中の、R1は炭素数20以下のアルキル基、脂環族基、芳香族基(ハロゲン、アルキル基で置換されていてもよい)であり、R2及びR3は−O−、−CO−、−COO−、−NHCO−、−S−、−SO−、−SO2−等で連結されていてもよい低級アルキレン基であり、X及びYは−OH、−COOH、−NH2、
−NHR1、−SH等の反応性基であり、X及びYは同一でも異なってもよい。又、これらの基に誘導できるエポキシ基、アルコキシ基、酸ハライド基、酸無水物基、又はカルボキシルエステル基でもよい。)
【0026】
一般式(2)で表される化合物
(式中の、R1、R2、及びR3は前記と同じ定義であるが、但し二つのR1同士は環状構造を形成するものであってもよい。R4は−(CH2)n−(nは0〜20の整数)である。)
【0027】
一般式(3)で表される化合物
(式中の、X及びYは前記の定義と同じであり、Wは窒素含有複素環、窒素と酸素含有複素環、又は窒素と硫黄含有複素環を表す。)
【0028】
上記の一般式(1)、(2)又は(3)で表される化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。
N,N−ジヒドロキシエチル−メチルアミン、
N,N−ジヒドロキシエチル−エチルアミン、
N,N−ジヒドロキシエチル−イソプロピルアミン、
N,N−ジヒドロキシエチル−n−ブチルアミン、
N,N−ジヒドロキシエチル−t−ブチルアミン、
メチルイミノビスプロピルアミン、
N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、
N,N−ジヒドロキシエチル−m−トルイジン、
N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、
N,N−ジヒドロキシエチル−m−クロロアニリン、
N,N−ジヒドロキシエチルベンジルアミン、
N,N−ジメチル−N,N−ジヒドロキシエチル1,3−ジアミノプロパン、
N,N−ジエチル−N,N−ジヒドロキシエチル1,3−ジアミノプロパン、
【0029】
N−ヒドロキシエチル−ピペラジン、
N,N−ジヒドロキシエチル−ピペラジン、
N−ヒドロキシエトキシエチル−ピペラジン、
1,4−ビスアミノプロピル−ピペラジン、
N−アミノプロピル−ピペラジン、
ジピコリン酸、
2,3−ジアミノピリジン、
2,5−ジアミノピリジン、
2,6−ジアミノピリジン、
2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、
2,6−ジヒドロキシピリジン、
2,6−ピリジン−ジメタノール、
2−(4−ピリジル)−4,6−ジヒドロキシピリミジン、
2,6−ジアミノトリアジン、
2,5−ジアミノトリアゾール、
2,5−ジアミノオキサゾール等がある。
【0030】
又、これら第3級アミノ化合物のエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等も本発明に使用できる。その付加物としては、例えば、
(上記式中のnは1〜60の整数を、mは1〜6の整数を表す。)
【0031】
本発明において親水性ポリウレタン系樹脂を構成する分子鎖中にポリシロキサンセグメントを導入するために使用するポリシロキサン化合物は、分子中に1個又は2個以上の活性水素を含有する反応性基(活性水素含有基)、例えば、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基等を有するポリシロキサン化合物である。活性水素含有基を有するポリシロキサン化合物の好ましい例としては、例えば、下記の如き化合物が挙げられる。
【0032】
(1)アミノ変性ポリシロキサン化合物
【0033】
(2)エポキシ変性ポリシロキサン化合物
【0034】
(3)アルコール変性ポリシロキサン化合物
【0035】
【0036】
(4)メルカプト変性ポリシロキサン化合物
【0037】
(5)カルボキシル変性ポリシロキサン化合物
【0038】
以上列記した活性水素含有基を有するポリシロキサン化合物は、本発明において使用する好ましい化合物の例示であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って、これらの例示の化合物のみならず、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
【0039】
本発明で使用する有機ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン系樹脂の合成に従来から使用されているものがいずれも使用でき、特に制限されない。好ましいものとして、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添MDI、イソホロンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等、或いはこれらの有機ポリイソシアネートと低分子量のポリオールやポリアミンを末端イソシアネートとなる様に反応させて得られるポリウレタンプレポリマー等も使用することができる。
【0040】
本発明で使用する高分子量親水性ポリオール及び/又は高分子量親水性ポリアミンとしては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等を分子中に有する重量平均分子量が400〜8000の範囲のものが好ましい。末端が水酸基で親水性を有するポリオールとしては、例えば、
ポリエチレングリコール、
ポリエチレングリコール/ポリテトラメチレングリコール共重合ポリオール、
ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合ポリオール、
ポリエチレングリコールアジペート、
ポリエチレングリコールサクシネート、
ポリエチレングリコール/ポリ−ε−カプロラクトン共重合ポリオール、
ポリエチレングリコール/ポリバレロラクトン共重合ポリオール、
等が挙げられる。特に好ましいのは、ポリエチレングリコールである。
【0041】
末端がアミノ基で親水性を有するポリアミンとしては、例えば、
ポリエチレンオキサイドジアミン、
ポリエチレンオキサイドプロピレンオキサイドジアミン、
ポリエチレンオキサイドトリアミン、
ポリエチレンオキサイドプロピレンオキサイドトリアミン、
等が挙げられる。
その他、カルボキシル基やビニル基を有したエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0042】
本発明においては、親水性ポリウレタン系樹脂に耐水性を付与するため、上記の親水性ポリオール及び/又はポリアミンとともに、親水性鎖を有しない他のポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸等を適宜共重合させることも可能である。
【0043】
本発明において必要により使用される鎖延長剤としては、例えば、低分子量ジオールやジアミン等の従来公知の鎖延長剤がいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0044】
本発明で使用するアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物は、上述の高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンの一部あるいは全部として、これらのそれぞれとアルミナゾルとの混合物からアルミナゾルの分散溶剤等を除去すること等により得られる微粒子アルミナが分散した高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンを用い、これらのいずれか、又は両方と有機ポリイソシアネート、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子中に有する化合物及び少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサン化合物を、必要により鎖延長剤と、従来の公知のポリウレタン系樹脂の製造方法に準じて反応させることによって得ることができる。反応は、無溶剤でもよいし、水溶液や有機溶剤中での反応でもよい。無溶剤の場合には、得られたアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物は、親水性ポリウレタン系樹脂の可溶性溶剤に溶解して使用する。可溶性溶剤は特に限定されず、ジメチルホルムアミドやメチルエチルケトン等が好ましいものとして挙げられる。親水性ポリウレタン系樹脂の合成に使用される溶剤も同様である。アルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物は、親水性ポリウレタン系樹脂溶液に微粒子アルミナが安定に分散している分散液である。親水性ポリウレタン系樹脂を無溶剤で合成した場合も、該樹脂の溶液に微粒子アルミナが安定に分散している分散液が得られる。
【0045】
本発明で使用する親水性セグメント、第3級アミノ基及びポリシロキサンセグメントを分子鎖中に有する親水性ポリウレタン系樹脂の分子量は特に限定されず、重量平均分子量(GPCで測定した標準ポリスチレン換算)が3,000〜800,000の範囲が好ましく、更に好ましくは5,000〜500,000の範囲である。
【0046】
本発明で使用するアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物において、微粒子アルミナの含有量は、親水性ポリウレタン系樹脂に対して5〜95重量%が好ましく、更に好ましくは10〜90重量%である。微粒子アルミナの含有量が5重量%未満では、本発明の目的である耐ブロッキング性、滑性といった表面特性の発現が不十分となり、一方、95重量%を超えると皮膜の強度、基材に対する接着性等に劣るようになるので好ましくない。驚くべきことに、アルミナ微粒子の含有量が75〜95重量%の場合には、本発明のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物を用いた塗布液を基材にコーティングすることにより、数mμm(nm)サイズの微多孔質の、透明性にも優れた皮膜が形成される。
【0047】
本発明における親水性ポリウレタン系樹脂中の第3級アミノ基の含有量は、分子量10,000当たり1個以下では、本発明の所期の目的である耐水性、耐ブロッキング性といった特性の発現が不十分となり、一方、第3級アミノ基の含有量が分子量20当たり1個を超えると樹脂中の親水性部分の減少による撥水性が強くなり、吸水性能や防曇性に劣るようになるので好ましくない。
【0048】
本発明における親水性ポリウレタン系樹脂中のポリシロキサンセグメントは、主鎖中或いは側鎖中でも、又は両方に含有されていてもよい。親水性ポリウレタン系樹脂中の該セグメントの含有量は、0.1〜10重量%が好ましく、更に好ましくは2〜10重量%である。ポリシロキサンセグメントの含有量が0.1重量%未満では本発明の目的である耐水性、耐ブロッキング性、滑性といった表面特性の発現が不十分となり、一方、10重量%を超えるとポリシロキサンセグメントによる撥水性が強くなるとともに、本発明が利用する環境応答性に乏しくなり、吸水性、防曇性や透明性に劣るようになるので好ましくない。
【0049】
又、本発明におけるポリウレタン系樹脂中の親水性セグメントの含有量は、30〜80重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは50〜75重量%の範囲である。親水性セグメントの含有量が30重量%未満では、吸水性、防曇性に劣るようになり、一方、80重量%を超えると耐水性、耐ブロッキング性に劣るようになり好ましくない。
【0050】
本発明のインクジェット用記録シートの基材シートとしては、例えば、紙、プラスチックフィルム、ガラス、布、木材、金属等が用いられるが、特に限定されない。紙としては、例えば、上質紙、中質紙、コート紙、キャストコート紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタアクリレート等の厚さ50乃至250μmのシート等が挙げられる。又、基材シートには、必要に応じてインク受容層に対する接着性を付与するプライマー層や非受容層側である基材シートの裏面にカール防止層や摩擦係数を改良する滑性層を設けることもできる。
【0051】
本発明においてインク受容層を形成するために前記のアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物が使用される。インク受容層を構成する樹脂成分としては、前記の親水性ポリウレタン系樹脂単独でもよいが、インクジェット記録用インクの組成により、親水性及び/又は吸水性を更に付与するか調整するために、前記の親水性ポリウレタン系樹脂に水溶性高分子を組み合わせて使用してもよい。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、CMC、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸系重合体、澱粉、カチオン澱粉、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。
【0052】
又、インク受容層や印字画像に耐水性や耐久性を更に付与するために、前記の親水性ポリウレタン系樹脂に疎水性の高分子を組み合わせて使用してもよい。疎水性高分子としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の如くインク受容層の形成に一般に使用されている合成樹脂が挙げられる。
【0053】
又、インク受容層のインクの吸収性、定着性、発色性、更にはブロッキング性及び耐水性を向上させる目的で、アルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物に、無機及び有機の顔料や樹脂粒子等を含有させることができる。使用される顔料や樹脂粒子としては、例えば、カオリン、デラミカオリン、水酸化アルミニウム、シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、コロイダルシリカ、ゼオライト、ベンナイト、セリサイト、リトポン等の鉱物質顔料、多孔質顔料やポリスチレン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、その他有機顔料等の微粒子、多孔質微粒子及び中空粒子等の公知の顔料や樹脂粒子の中からインクジェット用記録シートの品質設計に応じて1種又は2種以上が適宜使用される。この場合、これら顔料や樹脂粒子の使用量は、インク受容層形成に使用するアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物の全固形分の0〜95重量%、好ましくは10〜90重量%の範囲である。
【0054】
更に、必要に応じて、アルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物に上記以外に増粘剤、離型剤、浸透剤、湿潤剤、熱ゲル化剤、サイズ剤、消泡剤、抑泡剤、発泡剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、クエンチャー剤、防腐剤、帯電防止剤、架橋剤、分散剤、滑剤、可塑剤、pH調整剤、流動性改良剤、固化促進剤、耐水化剤等の各種助剤を適宜配合することも可能である。
【0055】
本発明においてインク受容層を形成するために使用するアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物は、溶剤中で合成した前記の親水性ポリウレタン系樹脂の溶液を使用することが好ましく、無溶剤で合成した場合には前記の親水性ポリウレタン系樹脂を溶剤に溶解して使用する。必要により添加する成分が溶剤可溶性であれば、上記の親水性ポリウレタン系樹脂組成物に直接添加して溶解してもよく、又は予め溶剤に溶解して添加してもよい。更に不溶性の添加成分を加え、アルミナ分散ポリウレタン系樹脂組成物は、通常、固形分が5〜15重量%程度の塗布液に調製される。
【0056】
調製された塗布液は、グラビアコート、ダイレクト又はリバースロールコート、ワイヤーバーコート、エアナイフコート、カーテンコート、ブレードコート、ロッドコート、ダイコート等で基材シートに塗布される。更に、塗布後、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダーを用いて仕上げ、インクジェット記録用シートが得られる。
【0057】
形成されるインク受容層の厚みは、上記組成物の乾燥重量で5〜100g/m2程度となる厚みが好ましく、更に好ましくは10〜50g/m2程度である。インク受容層の厚みが5g/m2未満では、インク受容層によるインクの吸収が不十分となり、厚みが100g/m2を超えると、得られる効果は飽和となり不経済であり、その上インク受容層の折れ割れやカール等の発生が起こりやすくなる。
【0058】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中の部又は%は重量基準である。
【0059】
参考例1
ポリエチレングリコール(分子量1,000)700部とアルミナ水ゾル(アルミナ平均粒径150〜160nm、固形分40重量%)750部を充分に混合し、得られた混合物を攪拌しながら70℃で減圧脱水を行った。理論量の水が留去された後、温度を120℃に上げ133.3Pa以下の減圧下で水分を除去してアルミナ含有量30%の白色固体状ポリオール(A)を得た。このポリオールは、水酸基価76mgKOH/g、水分率0.15%、80℃では透明で、粘度は380dPa・sであった。
【0060】
参考例2
ポリエチレングリコール(分子量590)100部とアルミナ水ゾル(アルミナ平均粒径10〜20nm、固形分20重量%)500部を充分に混合し、得られた混合物を攪拌しながら70℃で減圧脱水を行った。理論量の水が留去された後、温度を120℃に上げ133.3Pa以下の減圧下で水分を除去してアルミナ含有量50重量%の白色固体状ポリオール(B)を得た。このポリオールは、水酸基価95mgKOH/g、水分率0.12%、90℃で軟化するものであった。
【0061】
参考例3
ポリエチレンオキサイドジアミン(テキサコケミカル社製ジェファーミンED;分子量600)100部とアルミナ水ゾル(アルミナ平均粒径150〜160nm、固形分40重量%)2250部を充分に混合し、得られた混合物を攪拌しながら70℃で減圧脱水を行った。理論量の水が留去された後、温度を120℃に上げ133.3Pa以下の減圧下で水分を除去してアルミナ含有量90重量%の白色固体状ポリアミン(C)を得た。このポリアミンは、アミン当量30g/mol、水分率0.20%、110℃で軟化するものであった。
【0062】
参考例4
(アルミナ分散ポリウレタン樹脂組成物の製造)
上記構造のポリジメチルシロキサンポリオール(分子量3,200)5部と、参考例1のポリオール(A)145部、N−メチルジエタノールアミン20部及ジエチレングリコール3部を、200部のメチルエチルケトンと200部のジメチルホルムアミドとの混合溶剤中に溶解し、60℃でよく攪拌しながら、77部の水添MDIを100部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、80℃で8時間反応させた後ジメチルホルムアミド500部を加えて本発明のアルミナ分散ポリウレタン樹脂組成物の溶液を得た。
【0063】
この溶液は固形分20%で、50dPa・s(25℃)の粘度を有し、ポリウレタン樹脂のGPCで測定した(以下の例においても同様)重量平均分子量は62,000であり、該樹脂中の親水性セグメントの含有量は49.1%、ポリシロキサンセグメントの含有量は2.1%で、アルミナの含有量は17.4%であった。この樹脂組成物溶液から形成したフィルムは、透明で、破断強度は28.8Mpa、破断伸度は50%、且つ軟化点は163℃であった。
【0064】
参考例5
(アルミナ分散ポリウレタン−ポリウレア樹脂組成物の製造)
上記構造のエチレンオキシド付加型ポリジメチルシロキサンポリオール(分子量4,500)5部と参考例2のポリオール(B)120部及びポリエチレンオキサイドジアミン(分子量2,000)25部、N,N−ジメチル−N′,N′−ジヒドロキシエチル−1,3−ジアミノプロパン25部を200部のメチルエチルケトン及び200部のジメチルホルムアミド混合溶剤中に溶解し、60℃でよく攪拌しながら、64部の水添MDIを100部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、80℃で8時間反応させた後ジメチルホルムアミド455部を加えて本発明のアルミナ分散ポリウレタン−ポリウレア樹脂組成物の溶液を得た。
【0065】
この溶液は固形分20%で40dPa・s(25℃)の粘度を有していた。ポリウレタン−ポリウレア樹脂の重量平均分子量は41,000であり、樹脂中の親水性セグメントの含有量は47.5%、ポリシロキサンセグメントの含有量は2.5%で、アルミナの含有量は25.1%であった。この 樹脂組成物溶液から形成したフィルムは、透明で破断強度は21.5Mpa、破断伸度は20%、且つ軟化点は176℃であった。
【0066】
参考例6
(アルミナ分散ポリウレア樹脂組成物の製造)
上記構造のポリジメチルシロキサンジアミン(分子量3,880)2部、参考例3のポリアミン(C)148部及びメチルイミノビスプロピルアミン3部をジメチルホルムアミド250部に溶解し、内温を0〜−5℃に保持して充分に撹拌しながら12部の水添MDIを100部のジメチルホルムアミドに溶解した溶液を徐々に滴下して反応させた。滴下終了後、次第に内温を上昇させ、50℃に達したところでさらに5時間反応させた後ジメチルホルムアミド310部を加えて本発明のアルミナ分散ポリウレア樹脂組成物の溶液を得た。
【0067】
この溶液は固形分20%で110dPa・s(25℃)の粘度を有し、ポリウレア樹脂の重量平均分子量は38,000であり、樹脂中の親水性セグメントの含有量は46.5%、ポリシロキサンセグメントの含有量は6.2%で、アルミナの含有量は80.7%であった。この樹脂組成物溶液から形成したフィルムは、やや半透明で多孔質で、破断強度は5.0Mpa、破断伸度は5%、且つ軟化点は210℃であった。
【0068】
参考例7
ポリジメチルシロキサンポリオール及びN−メチルジエタノールアミンを使用せず、又、参考例1のポリオール(A)のアルミナを除いたポリオールを使用する他は参考例4と同じ材料と処方によりポリウレタン樹脂の溶液を得た。この溶液は固形分20%で、80dPa・s(25℃)の粘度を有し、ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は69,000であった。この樹脂溶液から形成したフィルムは、破断強度42.0Mpa、破断伸度450%、軟化点は102℃であった。
【0069】
参考例8
ポリジメチルシロキサンポリオール及びN,N−ジメチル−N′,N′−ジヒドロキシエチル−1,3−ジアミノプロパンを使用せず、又、参考例2のポリオール(B)のアルミナを除いたポリオールを使用する他は参考例5と同じ材料と処方によりポリウレタン−ポリウレア樹脂の溶液を得た。この溶液は固形分20%で、52dPa・s(25℃)の粘度を有し、ポリウレタン−ポリウレア樹脂の重量平均分子量は58,000であった。この樹脂溶液から形成したフィルムは、破断強度35.3MPa、破断伸度400%、軟化点は95℃であった。
【0070】
参考例9
ポリジメチルシロキサンジアミン及びメチルイミノビスプロピルアミンを使用せず、又、参考例3のポリアミン(C)のアルミナを除いたポリアミンを使用する他は参考例6と同じ材料と処方によりポリウレア樹脂の溶液を得た。この溶液は固形分20%で、38dPa・s(25℃)の粘度を有し、ポリウレア樹脂の重量平均分子量は42,000であった。この 樹脂溶液から形成したフィルムは、破断強度25.7MPa、破断伸度350%、軟化点は117℃であった。
【0071】
参考例10〜12
参考例1〜3のそれぞれのアルミナ水ゾルを、参考例7〜9のそれぞれの樹脂溶液中に攪拌しながら添加したが、粒子が析出し溶液は不透明となった。
【0072】
参考例13
鹸化度98.5%のポリビニルアルコール(重合度550)の5%水溶液を調製した。
【0073】
実施例1〜3
参考例4〜6で得られたアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物を坪量35g/m2 の上質紙に、エアーナイフコーターで、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗工し、インク受容層を形成し、本発明のインクジェット記録用シートとした。
【0074】
比較例1〜7
参考例7〜13で得られた樹脂溶液を坪量35g/m2 の上質紙に、エアーナイフコーターで、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗工して、インク受容層を形成し、比較例のインクジェット記録用シートとした。
【0075】
〔インクジェット用記録シートの評価〕
以上のようにして得られた10種類のインクジェット用記録シートについて、水溶性染料インクで印字記録するインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PM−800C)でイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色を使用して印字記録を行い、以下の項目の評価を行った。
(1)ブロッキング性
樹脂コーティング面に未処理PETフィルムを重ね、荷重0.29MPa、温度40℃で一日放置後のブロッキング性の評価を行った。結果を以下のように表示する。
結果の表示は以下の通りである。
○:ブロッキング性なし △:ややブロッキング性あり
×:ブロッキング性あり
(2)透明性
樹脂コーティング面の曇りを目視にて判定した。結果を以下のように表示する。
○:完全に透明 △:僅かに曇りがある ×:完全に不透明
【0076】
(3)発色鮮明性
インクジェットプリンターでカラー印字後、得られたカラー画像の発色鮮明性を目視により観察した。結果を以下のように表示する。
○:滲みがなく鮮明 △:やや滲みがあり、やや不鮮明
(4)インキの乾燥性
インクジェットプリンターでカラー印字後、50g/m2の荷重で5秒間濾紙を押し付けインキが濾紙に転写しなくなるまでの時間を測定した。
(5)印字画像の耐水性
インクジェットプリンターでカラー印字後、記録シートを水中に漬け(20℃、1時間)、その後、室温で乾燥した際の、記録画像の滲み、発色の変化を目視により観察。結果を以下のように表示する。
○:変化なし △:インキ及び皮膜に変化が認められる
×:インキがかなりとれるか、皮膜ごと取れる
以上の評価結果を表1に示す。
【0077】
【0078】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、インクの吸収・乾燥性、発色性に優れ、安定した高品位の印字画像を形成し、印字画像に優れた耐水性、耐湿性を付与し、更にそれ自体及び印字画像の透明性に優れ、耐ブロッキング性、搬送性に優れたインク受容層を有するインクジェット用記録シートが提供される。
Claims (5)
- 基材シートの少なくとも片面に、少なくとも一層のインク受容層を設けたインクジェット用記録シートを製造する方法において、インク受容層を、有機ポリイソシアネートと、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物と、少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサン化合物とを、反応させることによって親水性セグメントと第3級アミノ基とポリシロキサンセグメントとを有する親水性ポリウレタン系樹脂を合成する際に、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンの少なくとも一部として、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンと微粒子アルミナとの混合物を用いてなるアルミナ分散親水性ポリウレタン系樹脂組成物を用いて形成することを特徴とするインクジェット用記録シートの製造方法。
- 前記の混合物は、高分子量親水性ポリオール及び/又はポリアミンとアルミナゾルとの混合物からアルミナゾルの分散溶剤を除去して得られるものである請求項1に記載のインクジェット用記録シートの製造方法。
- 前記の混合物中のアルミナの含有量が、前記の親水性ポリウレタン系樹脂に対して5〜95重量%となる量である請求項1に記載のインクジェット用記録シートの製造方法。
- 微粒子アルミナは、平均粒径が1〜300nmである請求項1に記載のインクジェット用記録シートの製造方法。
- 前記の親水性ポリウレタン系樹脂中の親水性セグメント及びポリシロキサンセグメントの含有量が、それぞれ30〜80重量%及び0.1〜10重量%である請求項1に記載のインクジェット用記録シートの製造方法。
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