JP3937063B2 - 積層体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は包装用、特に食品包装用フィルム用として好適な酸素ガスバリヤー性積層体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸素ガスバリヤー性フィルムおよびそれを用いた包装材は既に多く知られている。最も完璧な酸素ガスバリヤー性を有するものとしてはアルミニウム(以下「Al」)箔があるが、単独ではピンホール強度が弱く、特殊な例を除いて使用できず、ほとんどラミネートフィルムの中間層として使用される。このラミネートフィルムのガスバリヤー性はほぼ完璧なものであるが、不透明のため内容物が見えないこと等の欠点がある。
【0003】
他の酸素ガスバリヤー性フィルムとしてはポリ塩化ビニリデン(以下「PVDC」)のフィルムおよびPVDCコーティングフィルムがよく知られている。特にPVDCのコーティングフィルムはよく知られ、酸素ガスおよび水蒸気のバリヤー性が必要な場合、ラミネート用基材フィルムとしてよく使用されている。PVDCは吸湿性が殆どなく、高湿下でも良好なガスバリヤー性を有するため、種々の基材にコーティングされて用いられる。例えば二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)、セロファン等のフィルムが使用されている。そしてラミネートされたフィルムはガスバリヤー性を生かし、乾燥・水物を問わず、種々の食品包装に利用されている。しかしこれらの包装材料は利用された後、家庭から一般廃棄物として廃棄されることとなるが、PVDCは燃焼により塩化水素ガスを生じることから、他材料への移行が強く望まれている。しかし性能やコスト面からこのPVDCに代わる素材はまだ現れていないのが現状である。
【0004】
さらに、酸素ガスバリヤー性フィルムとして従来公知のポリビニルアルコール(以下「PVA」)系フィルムもよく知られている。PVAフィルムは吸湿の少ない状態では非常に酸素ガスバリヤー性の良いフィルムであるが、吸湿が激しく、相対湿度が70%を越えるあたりから酸素ガスバリヤー性は急激に悪化し、実用性に乏しいと考えられている。またベースフィルムとして用いられるOPP、OPETとの接着性が低いという問題点も有している。PVAの吸湿性を改良するため、エチレンを20モル%以上共重合させてエチレン・ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」)としたり、PVAの両面にPVDCをコーティングして防湿対策を施したものも提案されている。しかしEVOHの場合溶液コートするためには有機溶剤を多量に用いなければならず、さらにバリアー性が不足であり、またPVDCをコーティングしたものは、焼却時に塩化水素ガスが発生するという問題点は前述の通りである。
また、高湿度下での酸素ガスバリヤー性を向上させる目的で、PVAとジルコニウム化合物とを混合し、混合液をベースフィルム上に塗布する方法も提案されている。しかしこの場合、混合液の粘度安定性が著しく悪く、塗膜の厚みむらが大きい等の致命的問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記現状を踏まえ、PVDCに代わる安価な材料で、高湿度下での酸素ガスバリヤー性の優れた積層体の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくとも炭素数が4以下のα−オレフィンを1モル%以上、10モル%以下含有する水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)を基材フィルム上に塗布し塗膜を形成した後、その水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)上にジルコニウム化合物(B)からなる溶液を塗布し積層体を得ることを特徴とする積層体の製造方法により上記問題点を解決できることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は、少なくとも炭素数が4以下のα−オレフィンを1モル%以上、10モル%以下含有する水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)を基材フィルム上に塗布し塗膜を形成した後、その水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)上にジルコニウム化合物(B)からなる溶液を塗布し積層体を得ることを特徴とする積層体の製造方法であり、好ましくは水溶性ポリビニルアルコール系重合体のけん化度は90〜99.99モル%であり、酢酸ナトリウム含有量が0.01〜2.0重量%であり、さらに好ましくは、シリル基を5モル%以下含有し、水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)とジルコニウム化合物(B)の重量比率(A)/(B)が99.9/0.1〜50/50であり、水溶性ポリビニルアルコール系重合体を塗布する基材フィルムが、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルムまたはポリエステルフィルムであり、2wt%以下の珪素を含有する積層体の製造方法である。
【0008】
通常、これら積層体の水溶性ポリビニルアルコール系重合体層上にヒートシール層をラミネートして多層化しガスバリヤー性フィルムを得る。
【0009】
本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に用いる水溶性ポリビニルアルコール系重合体の炭素数が4以下のα−オレフィンの変性度は1モル%以上、10モル%以下であり、好ましくは3モル%以上、9モル%以下、さらに好ましくは4モル%以上、8モル%以下である。変性度が1モル%未満では良好なバリヤー性が得られず、10モル%を越える場合は水溶性が低下し、水系での塗工が困難となる。
【0010】
本発明に用いる水溶性ポリビニルアルコール系重合体のけん化度は、90〜99.99モル%が好ましく、より好ましくは97〜99.95モル%以上、さらに好ましくは98.5〜99.90モル%以上である。
99.99モル%を越えるけん化度は工業的に得ることが困難であり、けん化度90モル%未満では十分なバリヤー性は得られない。
【0011】
本発明に用いる水溶性ポリビニルアルコール系重合体は特定量の酢酸ナトリウムを含有することが好ましく、その含有量は0.01〜2.0重量%以下が好ましく、より好ましくは0.02〜1重量%以下、さらに好ましくは0.03〜0.5重量%以下、最も好ましくは0.35〜0.45重量%以下である。
酢酸ナトリウム含有量が0.01〜2.0重量%の範囲にないときは十分なバリヤー性は得られない。
【0012】
本発明に用いる水溶性ポリビニルアルコール系重合体は特定量のシリル基を含有することが好ましく、その含有量は5モル%以下が好ましく、より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは0.1モル%〜1.5モル%である。
シリル基含有量が5モル%を越えると該ポリビニルアルコール水溶液が著しく不安定となる。
【0013】
本発明に用いる水溶性ポリビニルアルコール系重合体のα−オレフィンの種類は炭素数が4以下であれば特に制限はないが、エチレン、プロピレンが好適に用いられる。
【0014】
本発明に用いる水溶性ポリビニルアルコール系重合体の重合度は特に制限は無いが、2000以下のものが好適に用いられ、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは600以下、最も好ましくは100以上400以下である。
重合度が2000を越える場合、水溶液粘度が高くなりすぎ、扱いにくい。
【0015】
本発明に用いる水溶性ポリビニルアルコール系重合体の製造方法は従来公知の方法であれば特に制限はない。
【0016】
本発明の水溶性ポリビニルアルコール系重合体は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基またはこれらの塩を側鎖または分子末端に有しても良い。通常その変性量は0.05〜10モル%である。
【0017】
本発明の水溶性ポリビニルアルコール系重合体は通常単体で用いても良いが、さらに耐水性を付与する目的で一般公知の架橋剤を併用し組成物として使用することが可能である。
架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物、シリカ化合物、アルミ化合物、硼素化合物等が上げられるが、コロイダルシリカ、アルキルシリケート等、シリカ化合物が好適に用いられる。
これら架橋剤の添加量は、本発明の目的を損なわない程度であれば特に制限はないが通常ポリビニルアルコール系重合体100部に対して5部〜60部であり、好ましくは10部〜40部、さらに好ましくは15部〜30部である。
架橋剤添加量が60部を越える場合は、バリヤー性に悪影響を与えることがある。
【0018】
次に本発明に用いるジルコニウム化合物に関し詳述する。
本発明のジルコニウム化合物(B)としては、酸塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、珪酸ジルコニウムなどが挙げられる。
これらのジルコニウム化合物のなかでも塩素を持たないものが好ましい。具体的には硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウムが挙げられる。
これらのジルコニウム化合物は必ずしも単独で使用する必要はなく、必要に応じて2種以上混合して用いることもできる。
ジルコニウム化合物は水溶液、水性分散液、有機溶剤溶液として用いられる。
【0019】
本発明の水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)とジルコニウム化合物(B)の重量比率(A)/(B)は99.9/0.1〜50/50が好ましく、より好ましくは99.85/0.15〜90/10であり、さらに好ましくは99.5/0.5〜95/5である。
【0020】
次に本発明の積層体の製造方法について詳述する。
本発明の積層体は、まずポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルムあるいはポリアミドフィルム等の基材フィルム上に前述の水溶性ポリビニルアルコール系重合体を塗布し、塗膜を形成した後、該水溶性ポリビニルアルコール系重合体側に前述のジルコニウム化合物を塗布することが必要である。
【0021】
水溶性ポリビニルアルコール系重合体は水溶液あるいは水と低級脂肪族アルコールの混合溶液として塗布される。
水溶液あるいは水と低級脂肪族アルコールの混合溶液の濃度は特に制限はないが、通常5wt%〜50wt%の範囲から選択することが望ましい。濃度が5wt%未満では乾燥負荷が大きくなり、50wt%を越える場合は溶液粘度が高くなり取り扱い性が問題となる。
溶剤として低級脂肪族アルコールを用いる場合、その含量は全溶媒中50wt%以下であることが必要であり、好ましくは0.5wt%〜40wt%、さらに好ましくは1wt%〜20wt%、最も好ましくは3wt%〜10wt%である。
低級脂肪族アルコールの含量が50wt%を越える場合、該水溶性ポリビニルアルコール系重合体の溶解度が低下する。
低級脂肪族アルコールとしては水と混合可能であれば特に制限はないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等が好適に用いられる。
水溶性ポリビニルアルコール系重合体よりなる樹脂水溶液を塗布する際、界面活性剤、レベリング剤等を添加しても良い。
また、本発明のポリビニルアルコール系重合体水溶液に防黴剤、防腐剤等を添加することを何ら制限するものではない。
【0022】
塗工時水溶液温度は20℃〜80℃で好適に行われ、塗工方法もグラビアロールコーティング法、リバースグラビアコーティング法、リバースロールコーティング法、マイヤーバーコーティング法等一般公知の方法が好適に用いられる。
【0023】
本発明の積層体におけるポリビニルアルコール層の厚みは何ら制限はないが、通常0.1ミクロン〜20ミクロンである。
【0024】
本発明のポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルムあるいはポリアミドフィルム等の基材フィルムには珪素(Si)が含まれていることが好ましい。
その含有量は2wt%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1wt%以下、より好ましくは0.1〜0.5wt%である。珪素含有量が0.1〜2wt%の範囲でポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルムあるいはポリアミドフィルム層と本発明のフィルム塗布用樹脂との接着性が向上する。
用いられる珪素はシリカ化合物より導入されるものであり、酸化珪素、アルキルシリケート等、一般公知のシリカ化合物が用いられるが、コロイダルシリカ(SiO2)が好適に用いられる。
シリカ化合物の導入方法はポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルムあるいはポリアミドフィルムの成膜時にあらかじめ樹脂中に混合する方法が一般的である。
【0025】
また該水溶性ポリビニルアルコール系重合体あるいはその組成物層と該ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルムあるいはポリアミドフィルム層との間に、接着層として一般公知のアンカーコート剤層をもうけることは何ら問題ない。
【0026】
ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルムあるいはポリアミドフィルム上に該水溶性ポリビニルアルコール系重合体を塗布、乾燥した後した後、ジルコニウム化合物の溶液を塗布する。この塗布の方法は先の水溶性ポリビニルアルコール系重合体の時と同様の方法が好適に用いられる。
すなわち塗工時液温度は20℃〜80℃で好適に行われ、塗工方法もグラビアロールコーティング法、リバースグラビアコーティング法、リバースロールコーティング法、マイヤーバーコーティング法等一般公知の方法が好適に用いられる。
【0027】
本発明の積層体はポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルムあるいはポリアミドフィルム上に水溶性ポリビニルアルコール系重合体を塗布し、乾燥して塗膜を形成した後、ジルコニウム化合物を塗布して得られるが、延伸の有無、熱処理温度等、またはそれらの手順については特に制限はない。
一般的には、基材フィルムを延伸あるいは熱処理、またはその両者を施した後水溶性ポリビニルアルコール系重合体を塗布する方法、あるいは、基材フィルムに水溶性ポリビニルアルコール系重合体を塗布した後、熱処理、またはその両者を施す方法が一般的である。熱処理温度、延伸倍率等も従来公知の範囲で好適に行われる。
【0028】
得られたガスバリヤー性積層体フィルムは、通常ジルコニウムを塗布した側にヒートシール樹脂層が形成される。ヒートシール樹脂層の形成は、通常押し出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。
ヒートシール樹脂としてはHDPE,LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、PP樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂など、通常ヒートシール樹脂として使用されるものがそのまま使用できる。
【0029】
【実施例】
次に本発明を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
実施例1〜7、比較例1、2
表1に示す溶媒中に各種ポリビニルアルコール(PVA)を撹拌下徐々に添加し、均一に分散させたあと、約95℃に加熱して完全に溶解させた。次いで濾過をしてから冷まし、20%のPVA溶液を調製した。
表1に示すコロナ処理を施された基材フィルムに、グラビアコーターにてウレタン系アンカーコート剤を0.2μmの厚みで塗布し、続いて上記PVA溶液を50℃でコーティングし、100℃で乾燥した。得られたPVAコーティング層厚みは1.8μm〜4.2μmであった。
次に得られたPVAコーティング層の上に、表1に示すジルコニウム化合物の水溶液を同じくグラビアコーターにて50℃でコーティングし、100℃で乾燥して積層体を得た。
得られた積層体の酸素透過量(OTR)を測定した。なお酸素透過量測定フィルムは温度20℃、相対湿度85%の状態で5日間放置したものを用い、同条件で酸素透過量を測定した。得られた結果を2μm厚みに換算して表1に示す。
[OTRの単位:cc・2μm/m2・day・atm]
【0031】
実施例8
積層体を得た後、積層体を木枠に固定し、140℃で2分間熱処理を行った以外は、実施例5と同様の方法でサンプル調製、酸素透過量測定を行った。
【0032】
比較例3
表1に示すPVAを実施例と同様の方法で溶液調製した後、表1に示すジルコニウム化合物を得られた溶液中に添加したが、数分後にゲル化して流動性を失ったため、基材フィルム上へ塗工できず、積層体が得られなかった。
【0033】
【表1】
Figure 0003937063
【0034】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、PVDCに代わる安価な材料で、高湿度下での酸素ガスバリヤー性の優れた積層体を提供することができる。

Claims (7)

  1. 少なくとも炭素数が4以下のα−オレフィンを1モル%以上、10モル%以下含有する水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)を基材フィルム上に塗布し塗膜を形成した後、その水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)上にジルコニウム化合物(B)からなる溶液を塗布し積層体を得ることを特徴とする積層体の製造方法。
  2. 水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)のけん化度が90〜99.99モル%である請求項1記載の積層体の製造方法。
  3. 水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)が酢酸ナトリウムを0.01〜2.0重量%含有する請求項1又は2記載の積層体の製造方法。
  4. 水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)がシリル基を5モル%以下含有する請求項1乃至3記載の積層体の製造方法。
  5. 水溶性ポリビニルアルコール系重合体(A)とジルコニウム化合物(B)の重量比率(A)/(B)が99.9/0.1〜50/50である請求項1乃至4記載の積層体の製造方法。
  6. 基材フィルムが、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルムまたはポリエステルフィルムである請求項1乃至5記載の積層体の製造方法。
  7. 基材フィルムが、2重量%以下の珪素を含有する請求項1乃至6記載の積層体の製造方法。
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