JP3936970B2 - 薄膜作製用スパッタ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、エレクトロニクス、電子工業、時計工業、機械工業、光学工業等ににおける薄膜をスパッタで形成するスパッタ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
単層又は多層構造の薄膜からなる電子材料とその応用である電子デバイス作製においては、真空状態下での薄膜作製装置が重要である。乾式での薄膜作製方法には、大別して真空蒸着、スパッタ等の物理蒸着法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)の化学蒸着法等がある。なかでもスパッタは、基板材料の種類を問わずにどんな材質の膜でも有毒なガスを使用しないで安全に比較的簡単な装置で薄膜を堆積できることから、各方面において広く使用されている。
【0003】
スパッタの原理は、真空チャンバー内でプラズマを発生させ、そのプラズマ中のイオンをターゲットに衝突させターゲット表面の構成原子や、分子をはじき飛ばして、基板上に堆積させて薄膜を作製するものである。
【0004】
スパッタ装置には、衝撃イオン源であるイオン化ガス、又は放電プラズマの発生方法、印加電源の種類、電極の構造からイオンビームスパッタ方法、2極スパッタ方法、マグネトロンスパッタ方法、対向ターゲット式スパッタ方法等の各種の方法を用いたものがある。
イオンビームスパッタ方法を用いたものは、イオン室で形成した照射イオンをスパッタ室へ導出し、その照射イオンでターゲットをスパッタして薄膜を堆積させたもので、放電圧力が10−4Torr以下と低くてもスパッタが可能である。薄膜への放電ガスの混入が少なくスパッタ粒子のもつ運動エネルギーが大きいために、表面平滑性の優れた緻密な薄膜形成が可能となるが、薄膜堆積速度が小さいことが欠点であり、工業用の適用の難点となっている。
【0005】
2極スパッタ方法を用いたものは、プラズマ内のイオンが陰極降下内で加速されてターゲットを衝撃してスパッタをおこし、対向した基板上にスパッタされた粒子を飛来させて薄膜を堆積させている。印加電源の違いにより直流(DC)、交流(RF)スパッタがある。装置の構成は簡単ではあるが、次のような欠点がある。(1)プラズマの効率が悪く、プラズマを発生させるために導入するガス圧力を高くしなければならので、薄膜へのガス混入が大きくなる。(2)プラズマ効率が悪く、結果的に薄膜堆積速度が小さい。(3)イオンガスがターゲットを衝撃する時に生成される高エネルギーのγ電子(2次電子)が正対している基板を直撃するので、基板温度が堆積中に数百度にも上昇する。(4)ターゲットと基板が正対しているために、ターゲットを衝撃したイオンの一部が基板を直撃する(反跳イオン)ために基板へのダメージ及び多成分の薄膜での積層ずれが発生する。
【0006】
2極スパッタ方法の欠点を解決するために、マグネトロンスパッタ方法が考案された。図13に示すその代表的なプレナーマグネトロンスパッタ方法を用いたものは、印加電源の違いにより直流と、交流スパッタがある。2極スパッタで述べた、ターゲットをイオンガスが直撃する時に生成される高エネルギーのγ電子は、基板直撃による基板温度上昇の大きな原因ではあるが、高エネルギーのためにガスをイオン化してプラズマ放電を維持する上で重要な役割をしている。そこで、ターゲット裏面に図のように永久磁石を備えるマグネトロンを配置してターゲット表面に平行な磁界(磁束線で示す)を作り、ターゲット表面から放出されたγ電子をターゲット表面近くに閉じ込めるようにして雰囲気ガスとの衝突回数の増加を図ることによって、次のような長所がある。(1)雰囲気ガスのイオン化を促進してプラズマ効率を高めることができる(高速スパッタ)。(2)磁束線が閉じた移動経路であるので、高エネルギーのγ電子の基板衝撃による基板温度上昇を抑制できる(低温スパッタ)。
【0007】
このプレナーマグネトロンスパッタ方法は、マグネトロンの配置により2極スパッタ方法の欠点が大幅に改善され、構造が比較的簡単で、高堆積速度で薄膜形成可能なために、この方法による装置は広く用いられている。しかしながら、基板とターゲットが正対しているために、次のような欠点がある。(1)γ電子及び反跳イオンの基板への入射を完全には抑制することができない。(2)強磁性体をターゲットにした場合、マグネトロンの磁束線が強磁性体の部分を通り、γ電子を閉じ込めるのに十分な大きさの磁界がターゲット表面に印加できないため、強磁性体の低温スパッタ及び高速スパッタが困難である。
【0008】
図14に示す対向ターゲット式スパッタ方法を用いたものは、マグネトロンスパッタ方法のもつ欠点を更に改善するために考案された。2つのターゲットが対向する位置にあり、それぞれのターゲット裏面には、永久磁石が互いに反対磁極をもつようにマグネトロンが配置されている。雰囲気ガスのイオン化ガスのターゲット衝撃によりターゲット表面から放出された高エネルギーのγ電子は、対向するターゲット間に閉じ込められた高密度プラズマを発生する。基板は、対向するターゲットの横のプラズマ外に置かれているので、γ電子及び反跳イオンの基板への入射を完全に抑制することができ、低温及び高速スパッタが可能となる。また、この対向ターゲット式スパッタ方法は、γ電子を閉じ込めることによる高密度プラズマにより、雰囲気ガス圧力を低くしても放電が可能で(真空度10−4Torr台)、薄膜への雰囲気ガス混入も小さく、強磁性体の低温及び高速スパッタも可能であるという長所を持っている。なお、対向ターゲット式スパッタ方法にも、印加電源の違いにより直流スパッタと、交流スパッタがある。
【0009】
しかしながら、図13に示した、プレナーマグネトロンスパッタ方法は、ターゲット裏面に配置されたマグネトロンの発生する磁束線が閉じているのに対して、図14に示した、対向ターゲット式スパッタ方法の場合は、対向するターゲット間の向き合う面のマグネトロンの磁極は反対であるために、ここで発生する磁束線が閉じているが、マグネトロンのターゲット反対面は、閉じた磁束線を形成できず、磁束の漏洩が生じている。裏面で磁束が漏洩するということは、その分だけ対向するターゲット面間に磁束線が廻らないことを意味し、マグネトロンから発生する磁束を有効に対向するターゲット面に導いていないことになり効率のよいマグネトロンの使い方になっていない。
【0010】
この影響を小さくするために、ターゲットと反対側の磁極後ろには、漏れ磁束を小さくするために鉄ヨークを設置する必要があり、装置の構造が大きくならざるを得ない欠点がある。通常、対向するターゲット間の磁束は、およそ150〜250エルステッド(Oe)が必要であり、大きな磁束を発生させるためには、ネオジム磁石を用いているが、ターゲットと反対側の磁極での漏れ磁束の発生から、有効に磁束を導かないために磁石の厚さを厚くしなければならない。しかも、鉄ヨークの飽和磁化は有限であるので、鉄ヨークをあまり薄くすると磁気的に飽和してしまい、鉄ヨークの裏面に磁束を漏洩させてしまう。従って、漏洩磁束を小さくするための鉄ヨークの厚みを厚く設計しなければならない。図13で示した、プレナーマグネトロンスパッタ方法では、磁束がマグネトロンの表面及び裏面両方とも閉じているためにマグネトロンと鉄ヨークを合わせた厚みが30〜50mm程度で済んでいる。これに対して、図14に示した、対向ターゲット式スパッタ方法では、マグネトロンと鉄ヨークを合わせた厚みが100mm程度になってしまう。更に、図15に示すように、この対向ターゲット式スパッタ方法で多層構造の薄膜を同一真空装置で作製する場合には、大きな構造の装置にしなくてはならず、対向ターゲット式スパッタを治める真空装置が大きくなるという問題が生じる。真空装置が大型になると、同じ到達真空度を作るためにはより排気速度の大きな真空ポンプを装置に設置しなければならず、コスト面からも問題となる。
【0011】
また、従来の対向ターゲット式スパッタ方法は、スパッタ時に発生するγ電子がターゲット間を往復運動することで雰囲気ガスとの衝突確率が高くなり、結果的に高密度プラズマ化により雰囲気ガス圧力を低くしても放電が可能(真空度10−4Torr台)で、薄膜への雰囲気ガス混入も小さくできるという優れた長所をもっている。しかしながら、より高性能な電子デバイス作製のためには、雰囲気ガスの薄膜内への取り込み量を更に小さくすることが必要であり、そのためには真空度をより高く(10−5Torr台)して高密度プラズマ化を計り、スパッタすることが求められている。これらの薄膜作製用スパッタ装置に係る状況を鑑みて、高速及び低温スパッタが可能で、磁束漏洩を防止して、構造の小型化、マルチターゲット化、及びそれに伴う真空装置の小型化を計って、コスト的に有利とし、更に、より高密度プラズマ状態でのスパッタを実現し、多層薄膜が同じ位置にできる高真空、高速、低温スパッタが可能な薄膜作製用スパッタ装置を提供することを目的として特願2001−385645号が提出されている。
【0012】
図16に示すように、この薄膜作製用スパッタ装置は、回転できる多角柱型回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱回転式対向ターゲットスパッタ方法からなり、その一例として、回転できるターゲットホルダーがボックス型になっており、それぞれの面に4枚のターゲットが設置されて、一対のボックス型回転式対向ターゲットホルダーが対向している。ボックス型ターゲットホルダーのそれぞれのターゲット裏面に配置されている磁石の作る磁束線が、ボックス型ターゲットホルダー内面において完全に閉じるように、磁石の極性が交互に変わるように配置してある。これによって、ターゲット面と反対面の磁石の作る磁束線がオープンにならず、交互に反対の磁極をもつ4つの磁石で閉じた磁束線を形成することが可能になっている。これまでの対向ターゲット式スパッタ方法では、漏洩磁束を防ぐために、磁石に鉄ヨーク貼り付けた厚みが100mm程度必要であったのに対して、この装置では、磁石の裏面で磁束線を閉じることができるので、原理的には磁束の漏洩を防ぐための鉄ヨークは必要なくなり、取り付けるとしても磁石に鉄ヨーク貼り付けた厚みは、30〜50mm程度で、非常に小型化にすることができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したような従来の薄膜作製用スパッタ装置は、未だ解決すべき次のような問題がある。
(1)ボックス型ターゲットホルダーのそれぞれのターゲット裏面に配置されている磁石の作る磁束線は、ボックス型ターゲットホルダーの外面側において、対向するボックス型ターゲットホルダーの磁石とで閉じることで対向するターゲットの表面の構成原子や、分子をはじき飛ばし、はじき飛ばした原子や、分子を基板上に堆積している。この時、はじき飛ばされた原子や、分子は、ボックス型ターゲットホルダーの隣接するターゲットホルダーのターゲット上にも飛ばされて付着し、ターゲット表面が汚染される問題が発生している。
(2)基板へのスパッタを工業的に作製するには、スパッタの効率化を図ってよりコスト的に有利になることが求められている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、高速、且つ低温スパッタが可能な従来の対向ターゲット式スパッタ方法の長所を生かしながら、構造の小型化、隣接するターゲット汚染を防止し、しかもコスト的に有利にできる薄膜作製用スパッタ装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明に係る薄膜作製用スパッタ装置は、回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置し、しかも、多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれの隣接するターゲットの間に薄膜作製時のターゲットの表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板を設ける。これにより、対向ターゲット式スパッタ方法のもつ磁束漏洩対策のための大型化の問題を解消でき、真空装置の小型化も可能になる。しかも、防御板によってターゲットの表面からはじき飛ばされた構成原子や、分子が隣接するターゲットの表面へ付着して発生するターゲット表面の汚染を防止することができる。
【0015】
ここで、薄膜作製用スパッタ装置は、多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれのターゲットの裏面に配置されている磁石の作る磁束線が多角柱型ターゲットホルダー内面で完全に閉じるように磁石の極性が交互に変わるように磁石を設けるのがよい。これにより、ターゲットの後ろにある磁石の極性がそれぞれ交互に反対磁極となることで磁束線をオープンとすることなく閉じることができ、磁束漏洩防止のための大きな鉄ヨークを必要としないので、装置の大型化を防止することができる。
【0016】
また、薄膜作製用スパッタ装置は、一対の対向する多角柱型ターゲットホルダーの対向するそれぞれのターゲットの裏面に配置されている磁石の極性が反対で、しかも対向するそれぞれのターゲット間で磁束線が閉じているのがよい。これにより、磁束を漏洩させることなく、イオンをターゲットに照射してスパッタさせることができるので、効率よく基板に薄膜を堆積させることができる。
【0017】
また、薄膜作製用スパッタ装置は、対向する多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれを回転して別の面を対向させ、対向するそれぞれのターゲットの裏面に配置されている磁石の極性が回転前と反対になり、一対の多角柱型ターゲットホルダーをそれぞれ回転することで多角柱型ターゲットホルダーについているターゲットの数だけの多層薄膜が同じ場所で作製できるのがよい。これにより、多層構造の薄膜を効率的に、容易に形成することができるので、コスト的に有利な多層薄膜を形成する基板を作製することができる。
【0018】
更に、薄膜作製用スパッタ装置は、往復運動する誘発電子ビームを励起する一対の対向する多角柱型ターゲットホルダーの間に電子ビームガンで入射できる自発電子ビーム機構を設けた、自発及び誘発電子ビーム励起プラズマを利用するのがよい。これにより、より高真空下で高密度のプラズマを発生させることができるので、高真空、低温、高速スパッタが可能になる。
【0019】
前記目的に沿う本発明に係る薄膜作製用スパッタ装置は、回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置する機構を1つのモジュールとして、真空チャンバー内に1つ以上のモジュールを配設する。これにより、多角柱型ターゲットホルダーに取り付けられているターゲット数にモジュール数を掛けた数の多層薄膜からなる基板の作製が可能となり、スループットの向上もあって、コスト面を重視する工業的生産に非常に有利となる。
【0020】
前記目的に沿う本発明に係る薄膜作製用スパッタ装置は、回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置する機構を1つのモジュールとして、真空チャンバー内に1つ以上のモジュールを配設する複数の真空チャンバーを真空が共通にできる連結体を介して連結し、しかも、該連結体には開閉機構を有する。複数の真空チャンバーを共通とするので、多数の多層薄膜の作製を行うのに1つの真空ポンプ行うことができ、スループットの向上もあって、コスト面を重視する工業的生産に非常に有利となる。また、連結体には開閉機構を備えているので、生産量の変動に応じて効率的な装置稼動を行うことができる。
【0021】
ここで、薄膜作製用スパッタ装置は、それぞれの多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれの隣接するターゲットの間に薄膜作製時のターゲットの表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板を設けるのがよい。これにより、防御板でターゲット表面の汚染を防止することができる。
【0022】
また、薄膜作製用スパッタ装置は、多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれのターゲットの裏面に配置されている磁石の作る磁束線が多角柱型ターゲットホルダー内面で完全に閉じるように磁石の極性が交互に変わるように磁石を設けるのがよい。そして、一対の対向する多角柱型ターゲットホルダーの対向するそれぞれのターゲットの裏面に配置されている磁石の極性が反対で、しかも対向するそれぞれのターゲット間で磁束線が閉じているのがよい。更に、対向する多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれを回転して別の面を対向させ、対向するそれぞれのターゲットの裏面に配置されている磁石の極性が回転前と反対になり、一対の多角柱型ターゲットホルダーをそれぞれ回転することで多角柱型ターゲットホルダーについているターゲットの数だけの多層薄膜が同じ場所で作製できるのがよい。これにより、磁束線をオープンとすることなく閉じることができ、磁束漏洩防止のための大きな鉄ヨークを必要とせず、装置の大型化を防止することができる。また、磁束を漏洩させることなく、イオンをターゲットに照射してスパッタでき、効率よく基板に薄膜を堆積させることができる。更に、多層構造の薄膜を効率的に、容易に形成することができ、コスト的に有利な多層薄膜からなる基板を作製することができる。
【0023】
また、薄膜作製用スパッタ装置は、薄膜を形成するための基板を多角柱型基板ホルダーカセットに最大で多角柱型基板ホルダーカセットの多角柱の側面の数だけ装着し、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー間に垂直に設けたロードロック室から、多角柱型基板ホルダーカセットを対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー間に挿入と、取り出しができる機構を備えるのがよい。これにより、多層構造の薄膜を更に効率的に、容易に連続して形成することができ、コスト的に有利な多層薄膜からなる基板を作製することができる。
【0024】
更に、薄膜作製用スパッタ装置は、往復運動する誘発電子ビームを励起する一対の対向する多角柱型ターゲットホルダーの間に電子ビームガンで入射できる自発電子ビーム機構を設けた、自発及び誘発電子ビーム励起プラズマを利用するのがよい。これにより、より高真空下で高密度のプラズマを発生させることができるので、高真空、低温、高速スパッタが可能になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る薄膜作製用スパッタ装置の対向する一対の多角柱型ターゲットホルダーの斜視図、平面図、図2は同薄膜作製用スパッタ装置の対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー間に自発電子ビームが照射される説明図、図3(A)、(B)はそれぞれ同薄膜作製用スパッタ装置の変形例の多角柱型ターゲットホルダーの平面図、図4は同変形例の薄膜作製用スパッタ装置の説明図、図5は同他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の説明図、図6は同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置におけるスパッタの方向依存性の説明図、図7は同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の多角柱型基板ホルダーカセットの説明図、図8は同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の多角柱型基板ホルダーカセットのシャッター機構の説明図、図9は同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の真空チャンバー内とロードロック室内を往復する多角柱型基板ホルダーカセットの移動機構の説明図、図10は同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の真空チャンバー内の冷却及び電源供給ステージの概念図、図11は同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の真空チャンバー内とロードロック室内を往復する多角柱型基板ホルダーカセットの変形例の移動機構の説明図、図12は同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の真空チャンバー内の対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー間に自発電子ビームが照射される説明図である。
【0026】
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る薄膜作製用スパッタ装置10は、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11を有している。この対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11は、例えば、回転できるボックス型の回転軸12に平行なそれぞれの面にそれぞれ4枚の異なった材料のターゲット13を有し、一対のそれぞれが回転できるボックス型の多角柱型ターゲットホルダー11が対向している。ターゲット13の取付方法は着脱の簡便性から銅のバッキングプレートにターゲット13を取付、バッキングプレートを銅又はステンレスからなるボックス型の多角柱型ターゲットホルダー11に取り付けている。更に、対向する一対のそれぞれの多角柱型ターゲットホルダー11には、それぞれの隣接するターゲット13間に多層薄膜作製時のターゲット13の表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板14を設けている。この防御板14は、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11間で形成される磁束線15によって誘発されたγ電子(誘発電子ビーム)16がAr等のイオンビームを引き出しターゲット13に照射してターゲット13の表面からはじき飛ばされた構成原子や、分子を基板に堆積させる時に、対向する一対のそれぞれの多角柱型ターゲットホルダー11の隣接するターゲット13の表面に堆積させて隣接するターゲット13の表面を汚染させるのを防止している。
【0027】
対向する一対のそれぞれの多角柱型ターゲットホルダー11のそれぞれのターゲット13の裏面には、それぞれ磁石17を有し、これらの磁石17の作る磁束線15がそれぞれ1つの多角柱型ターゲットホルダー11の内面で完全に閉じるように、磁石17の極性が交互に変わるように配置されているのがよい。これにより、ターゲット13面と反対面の磁石17の作る磁束がオープンにならず、交互に反対の磁性をもつ磁石17で閉じた磁束線15を形成することが可能になる。従って、原理的には磁束の漏洩を防ぐための鉄ヨークが不要となり、付けてもその厚さを薄くすることができるので、装置の小型化を行うことができる。
【0028】
また、対向する一対のそれぞれの多角柱型ターゲットホルダー11は、対向するターゲット13のそれぞれの面のターゲット13の裏面の磁石17の極性が反対になるように配置されている。そして、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11の間で形成される磁束線15が一方の多角柱型ターゲットホルダー11のターゲット13の裏面の磁石17のN極から他方の多角柱型ターゲットホルダー11のターゲット13の裏面の磁石17のS極の向きに閉じるようになっているのがよい。そして、この対向する一対のボックス型からなる多角柱型ターゲットホルダー11は、それぞれの回転軸12が互いに同方向回転、又は、逆方向回転することで、別の材料からなるそれぞれのターゲット13の面が向き合い次のスパッタが行われる。この時の対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11の2つのターゲット13間で作る磁束線15の向きは、回転前と反対向きになる。そして、順次回転を重ねることで、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11についている一対のターゲット13の数だけの多層薄膜が同じ場所で作製可能にすることができる。
【0029】
対向ターゲット式スパッタ方法では、プラズマを発生させるための雰囲気ガスの圧力を10−4Torr台にして、雰囲気ガスのイオン化ガスのターゲット13への衝撃によって、ターゲット13の表面から放出された高エネルギーの誘発電子ビーム(γ電子)16が対向するターゲット13間に閉じ込められて対向するターゲット13間を往復運動して雰囲気ガスをイオン化して高密度プラズマを発生している。図2に示すように、この誘発電子ビーム16と共に、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11の間に、例えば、斜め上方から電子ビームガン18で自発電子ビーム19を入射している。これにより、より低真空下(10−5Torr台)で高密度プラズマを生成しての高真空で、低温、高速スパッタが可能になる。
【0030】
なお、上記の対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11のそれぞれのホルダーは、ボックス型で説明したが、図3(A)、(B)に示すように、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11のそれぞれのホルダーは、例えば、6角柱(図3(A)参照)、あるいは、8角柱(図3(B)参照)であってもよく、更に、これより多い多角柱の偶数角柱からなる多角柱型のターゲットホルダー11であってもよい。また、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11のそれぞれの磁石17の形状は、円柱型以外に円筒型等であってもよく、その形状は特に限定されるものではない。
また、多角柱型ターゲットホルダー11の回転面は水平面に平行で説明したが、回転面の方向は限定されるものではない。また、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11のそれぞれのホルダーは、お互いに同方向回転、又は、逆方向回転になればよく、その向きは問わない。更に、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11間の距離は、それぞれの回転軸12も含めた多角柱型ターゲットホルダー11を平行移動することで調整することができる。
【0031】
試みに、図15に示した従来型で4つの異なる材料をスパッタする場合の対向ターゲット式スパッタ方法と比較すると、従来型は、一対の対向ターゲット式ホルダー自体が裏面の磁極後ろに漏れ磁束を小さくするための厚い鉄ヨークを設置する必要があり、構造が大きくならざるを得ない欠点がある。また、多層構造の薄膜を同一真空装置でこの方式で作製するためには、大きな構造の対向ターゲット式スパッタを4対を並列させて配置しなくてはならず、対向ターゲット式スパッタを治める真空装置が大きくなる。例えば、同一サイズのターゲットを4つ配置した場合で比較すると、本発明の一実施の形態に係る薄膜作製用スパッタ装置10のスパッタ部分の占有面積及び体積は、従来型の時のスパッタ部分の占有面積及び体積の約50%で済む。また、真空装置が大型になると、同じ到達真空度を作るために、より排気速度の大きな真空ポンプを必要とし、コスト面からも問題がある。
【0032】
続いて、図4、図5を参照しながら、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11を1つのモジュールとする薄膜作製用スパッタ装置を説明する。
図4に示すように、本発明の一実施の形態に係る変形例の薄膜作製用スパッタ装置10aは、回転できる多角柱型の回転軸12に平行なそれぞれの面にターゲット13を配置した対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11を1つのモジュールとして、真空チャンバー20内に1つ以上(図4では2つ)のモジュールを配設している。真空チャンバー20内に1つ以上のモジュールを配設することで、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11に取り付けられているそれぞれのターゲット13の一対の数にモジュール数を掛けた数の多層薄膜作製が可能であり、スループットの向上が期待できる。
【0033】
また、図5に示すように、本発明の一実施の形態に係る他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置10bは、回転できる多角柱型の回転軸12に平行なそれぞれの面にターゲット13を配置した対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11を1つのモジュールとして、真空チャンバー20内に1つ以上(図5では2つ)のモジュールを配設し、このモジュールの配設された複数の真空チャンバー20を真空が共通にできる連結体21を介して連結している。また、連結体21には、真空チャンバー20毎に真空状態を作り出すことができるための開閉機構を設けている。真空ポンプが共用できる真空チャンバー20内に多数のモジュールを配設することで、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11に取り付けられているそれぞれのターゲット13の一対の数にモジュール数を掛けた数の多層薄膜作製が可能であり、スループットの向上が期待できる。また、逆に生産量を制限したい時には、連結体に設けられている開閉機構を閉じることで、容易に生産量に合わせた装置稼動を行うことができる。
【0034】
真空チャンバー20内の対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11のそれぞれの隣接するターゲット13間には、多層薄膜作製時のターゲット13の表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板14を設けるのがよい。この防御板14は、ターゲット13の表面からはじき飛ばされた構成原子や、分子を基板に堆積させる時に、対向する一対のそれぞれの多角柱型ターゲットホルダー11の隣接するターゲット13の表面や、隣り合うモジュールの対向する一対のそれぞれの多角柱型ターゲットホルダー11のターゲット13の表面に堆積させて表面を汚染させるのを防止している。
【0035】
また、真空チャンバー20内の対向する一対のそれぞれの多角柱型ターゲットホルダー11のそれぞれのターゲット13の裏面に配置されている磁石17の作る磁束線15は、それぞれ1つの多角柱型ターゲットホルダー11の内面で完全に閉じるように、磁石17の極性が交互に変わるように配置されているのがよい。ターゲット13面と反対面の磁石17の作る磁束が交互に反対の磁性をもつ磁石17で閉じた磁束線15を形成するので、磁束の漏洩を防ぐための鉄ヨークが不要となり、付けてもその厚さを薄くすることができ、真空チャンバーを小型化できる。
【0036】
また、真空チャンバー20内の対向する一対のそれぞれの多角柱型ターゲットホルダー11の対向するそれぞれのターゲット13の裏面の磁石17の極性は、互いに反対になるように配置されているのがよく、しかも、対向するそれぞれのターゲット13間で磁束線15が閉じるようになっているのがよい。磁束を漏洩させることなく、効率的にイオンをターゲットに照射してスパッタさせることができるので、高速に薄膜を基板に堆積させることができる。
【0037】
また、真空チャンバー20内の対向する一対のそれぞれの多角柱型ターゲットホルダー11は、それぞれを回転させて、別の材料からなるターゲット13面を対向させ磁束線15の向きを回転前と反対向きにする。そして、順次回転を重ねることで、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11についている一対のターゲット13の数だけの多層薄膜が同じ場所で作製できるのがよい。多層構造の薄膜を同じ場所で効率的に形成することができ、コスト的に有利な多層薄膜からなる基板を作製することができる。
【0038】
次いで、図6〜図11を参照しながら、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11間で、基板23が装着できる多角柱型基板ホルダーカセット24を用いて、基板23にスパッタをするために、挿入と取り出しができる機構を説明する。
図6に示すように、対向ターゲット式スパッタ方法の特徴として、向き合うターゲット13から飛び出すスパッタ粒子は、ターゲット13間の空間で矢印22で示すような方向に向って飛び出してスパッタが行われる。この特徴を生かして、薄膜を形成しようとする基板23は、通常、ターゲット13間の軸線に対して、例えば、ターゲット13間の距離の半分程度の距離をおいたところに、軸線に対して垂直面となるように設置されている。そして、図7に示すように、この基板23を対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11間に設置し、基板23に連続して多層の薄膜を形成するためには、多角柱型基板ホルダーカセット24が用いられ、基板23は、この多角柱型基板ホルダーカセット24に最大で、多角柱の側面の数だけ装着される。なお、図7では、多角柱型基板ホルダーカセット24は、6角柱で示しており、基板ホルダーカセットの足部は省略している。図8に示すように、多角柱型基板ホルダーカセット24のそれぞれの多角柱の側面のターゲット13に面する側には、独立して、あるいは同時に開閉ができるシャッター25機構が設置されており、基板23個々に製膜、あるいは同時に製膜が可能となっている。
【0039】
図9に示すように、多角柱型基板ホルダーカセット24は、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11間に垂直に設けられたロードロック室26に挿入されている。そして、多角柱型基板ホルダーカセット24は、ロードロック室26から対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11間に挿入したり、取り出したりすることができる機構によって、真空チャンバー20内と、ロードロック室26内とを移動できる。なお、図9では、多角柱型基板ホルダーカセット24は、6角柱で示しており、基板ホルダーカセットの足部は省略している。
【0040】
図10に示すように、真空チャンバー20内には、多角柱型基板ホルダーカセット24を受け取って、多角柱型基板ホルダーカセット24を冷却したり、電源を供給したりすることができる冷却及び電源供給ステージ27が設けられている。なお、図10では、多角柱型基板ホルダーカセット24は、8角柱で説明しており、基板ホルダーカセットの足部も示している。この冷却及び電源供給ステージ27によって、基板23を冷却した状態で個々に、あるいは同時に多数枚の基板23に製膜ができ、スループットの向上が期待できる。更に、加熱ヒーターを対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11に装着することで基板23加熱下での製膜も可能となる。本実施の形態ではロードロックタイプで示してあるが、装置構成としてはロードロック室26等のサブチャンバーがない、直接多角柱型基板ホルダーカセット24を真空チャンバー20に入れる所謂バッチ式であってもよい。
【0041】
上述した実施の形態の変形例として、図11に示すように、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11の機構を1つのモジュールとして、同一真空チャンバー20内に2つのモジュールを設置して、多角柱型基板ホルダーカセット24の2つをそれぞれ真空チャンバー20の両側に設置したロードロック室26から同時に挿入や、取り出しを行っている。これにより、図9に示した方法による製膜枚数の2倍のスループットが達成することができる。
また、2つのモジュールのそれぞれのターゲット13の材料を変えて、片側のロードロック室26から入れた多角柱型基板ホルダーカセット24を、入れた側の1つめの対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11での製膜を行う。そして、製膜終了後、多角柱型基板ホルダーカセット24を2つめのモジュール側に移動して製膜し、製膜終了後2つめのモジュール側のロードロック室26から多角柱型基板ホルダーカセット24を取り出すことで、多角柱型ターゲットホルダー11に装着しているターゲット13の数の2倍の異なる多層薄膜構造の基板23を作製することができる。
【0042】
続いて、図12を参照しながら、真空チャンバー20内の対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11間に誘発電子ビーム16に加えて自発電子ビーム19を照射する形態を説明する。
雰囲気ガスのイオン化ガスのターゲット13への衝撃によってターゲット13表面から放出された高エネルギーの誘発電子ビーム16は、対向するターゲット13間に閉じ込められ、対向するターゲット13間を往復運動して雰囲気ガスをイオン化して高密度プラズマを発生している。これによって、多層薄膜を同じ場所でコンパクトに高速且つ低温スパッタで作製できるが、プラズマを発生させるための雰囲気ガスの真空チャンバー20内での圧力は10−4Torr台で行われている。しかしながら、より高密度プラズマを生成して、より高速且つ低温スパッタで作製することが求められている。図12に示すように、誘発電子ビーム16に加えて、真空チャンバー20内の対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー11間に、例えば、斜め上から電子ビームガン18で入射できる自発電子ビーム19機構を設けた自発及び誘発電子ビーム励起プラズマを利用できるようにするのがよい。これにより、より低真空下(10−5Torr台)で高密度プラズマを生成でき、より高速且つ低温スパッタが可能になる。
【0043】
なお、本実施の形態においては、スパッタには、回転式の多角柱型ターゲットホルダー11に印加する電源の違いによって、直流(DC)又は交流(RF)スパッタがある。また、基板23は、スパッタ中においてフロート状態でもよく、更には、バイアス電圧を印加してバイアススパッタを行うことも可能である。
【0044】
次に、本実施の形態に係る薄膜作製用スパッタ装置で作製される薄膜スパッタの一例を説明する。自発電子ビームを照射しない場合、Nbターゲットを用いて、ターゲットと基板間の距離を9cmで、Ar圧力2×10−4Torr、DC印加電流2.0A、DC印加電圧350Vで、堆積速度125nm/minが得られた。Nbは、超伝導材料で超伝導になる温度(Tc)は、9.3Kであるが、酸素が1at%混入しただけでそのTcは、8.3Kに下がってしまうほど敏感である。上記の条件で作製したNb薄膜は、Tcが9.3Kと同じ値を示した。次に、自発電子ビームを100V、10Aの印加電力で電子ビーム源から引出しして対向するターゲット間に照射したところ、Ar圧力3×10−5Torr、DC印加電流2.0A、DC印加電圧350Vで、堆積速度100nm/minが得られた。この条件で作製したNb薄膜は、Tcが9.3Kと同じ値を示し、室温と10Kでの抵抗の比で表す残留抵抗比が約10と自発電子ビーム19を照射しない場合に比べて約3倍の大きな値を示し、残留ガスの取り込みの小さな高品質な薄膜が形成された。
【0045】
【発明の効果】
本発明の薄膜作製用スパッタ装置は、回転できる多角柱型ターゲットホルダーを用いた対向ターゲット式スパッタ方法により、磁束線の漏洩を防ぐことで、マルチターゲット化と装置の小型化の同時達成が可能となると共に、隣接するターゲット間に防御板を設けることで、ターゲット面の汚染を防いで品質の向上を計って、コスト的に有利な基板を作製することができる。また、同じ場所で多層薄膜構造の高速且つ低温スパッタが達成でき、多角柱型基板ホルダーカセットの導入でスループットの向上も計れる。更にターゲット間の誘発電子ビームに自発電子ビームを上乗せすることで、より高密度プラズマ状態が形成でき、多層薄膜構造の高真空、高速、及び低温スパッタが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る薄膜作製用スパッタ装置の対向する一対の多角柱型ターゲットホルダーの斜視図、平面図である。
【図2】同薄膜作製用スパッタ装置の対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー間に自発電子ビームが照射される説明図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれ同薄膜作製用スパッタ装置の変形例の多角柱型ターゲットホルダーの平面図である。
【図4】同変形例の薄膜作製用スパッタ装置の説明図である。
【図5】同他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の説明図である。
【図6】同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置におけるスパッタの方向依存性の説明図である。
【図7】同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の多角柱型基板ホルダーカセットの説明図である。
【図8】同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の多角柱型基板ホルダーカセットのシャッター機構の説明図である。
【図9】同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の真空チャンバー内とロードロック室内を往復する多角柱型基板ホルダーカセットの移動機構の説明図である。
【図10】同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の真空チャンバー内の冷却及び電源供給ステージの概念図である。
【図11】同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の真空チャンバー内とロードロック室内を往復する多角柱型基板ホルダーカセットの変形例の移動機構の説明図である。
【図12】同薄膜作製用スパッタ装置、変形例及び他の変形例の薄膜作製用スパッタ装置の真空チャンバー内の対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー間に自発電子ビームが照射される説明図である。
【図13】従来の薄膜作製用スパッタ装置のマグネトロンスパッタ方法の説明図である。
【図14】従来の薄膜作製用スパッタ装置の対向ターゲット式スパッタ方法の説明図である。
【図15】従来の薄膜作製用スパッタ装置の対向ターゲット式スパッタ方法で多層構造の薄膜を同一真空装置で作製する場合の説明図である。
【図16】従来の薄膜作製用スパッタ装置の多角柱回転式対向ターゲットスパッタ方法の説明図である。
【符号の説明】
10、10a、10b:薄膜作製用スパッタ装置、11:多角柱型ターゲットホルダー、12:回転軸、13:ターゲット、14:防御板、15:磁束線、16:γ電子(誘発電子ビーム)、17:磁石、18:電子ビームガン、19:自発電子ビーム、20:真空チャンバー、21:連結体、22:矢印、23:基板24:多角柱型基板ホルダーカセット、25:シャッター、26:ロードロック室、27:冷却及び電源供給ステージ

Claims (13)

  1. 回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置し、しかも、前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれの隣接する前記ターゲットの間に薄膜作製時の該ターゲットの表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板を設けることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  2. 請求項1記載の薄膜作製用スパッタ装置において、前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている磁石の作る磁束線が前記多角柱型ターゲットホルダー内面で完全に閉じるように前記磁石の極性が交互に変わるように該磁石を設けることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  3. 請求項1又は2記載の薄膜作製用スパッタ装置において、一対の対向する前記多角柱型ターゲットホルダーの対向するそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている前記磁石の極性が反対で、しかも対向するそれぞれの前記ターゲット間で磁束線が閉じていることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、対向する前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれを回転して別の面を対向させ、対向するそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている前記磁石の極性が回転前と反対になり、一対の前記多角柱型ターゲットホルダーをそれぞれ回転することで前記多角柱型ターゲットホルダーについている前記ターゲットの数だけの多層薄膜が同じ場所で作製できることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、往復運動する誘発電子ビームを励起する一対の対向する前記多角柱型ターゲットホルダーの間に電子ビームガンで入射できる自発電子ビーム機構を設けた、自発及び誘発電子ビーム励起プラズマを利用することを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  6. 回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置する機構を1つのモジュールとして、真空チャンバー内に1つ以上の前記モジュールを配設することを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  7. 回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置する機構を1つのモジュールとして、真空チャンバー内に1つ以上の前記モジュールを配設する複数の前記真空チャンバーを真空が共通にできる連結体を介して連結し、しかも、該連結体には開閉機構を有することを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  8. 請求項6又は7記載の薄膜作製用スパッタ装置において、それぞれの前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれの隣接する前記ターゲットの間に薄膜作製時の該ターゲットの表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板を設けることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている磁石の作る磁束線が前記多角柱型ターゲットホルダー内面で完全に閉じるように前記磁石の極性が交互に変わるように該磁石を設けることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  10. 請求項6〜9のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、一対の対向する前記多角柱型ターゲットホルダーの対向するそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている前記磁石の極性が反対で、しかも対向するそれぞれの前記ターゲット間で磁束線が閉じていることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  11. 請求項6〜10のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、対向する前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれを回転して別の面を対向させ、対向するそれぞれの前記ターゲットの裏面に配置されている前記磁石の極性が回転前と反対になり、一対の前記多角柱型ターゲットホルダーをそれぞれ回転することで前記多角柱型ターゲットホルダーについている前記ターゲットの数だけの多層薄膜が同じ場所で作製できることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  12. 請求項6〜11のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、薄膜を形成するための基板を多角柱型基板ホルダーカセットに最大で該多角柱型基板ホルダーカセットの多角柱の側面の数だけ装着し、対向する一対の前記多角柱型ターゲットホルダー間に垂直に設けたロードロック室から、前記多角柱型基板ホルダーカセットを対向する一対の前記多角柱型ターゲットホルダー間に挿入と、取り出しができる機構を備えることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
  13. 請求項6〜12のいずれか1項に記載の薄膜作製用スパッタ装置において、往復運動する誘発電子ビームを励起する一対の対向する前記多角柱型ターゲットホルダーの間に電子ビームガンで入射できる自発電子ビーム機構を設けた、自発及び誘発電子ビーム励起プラズマを利用することを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
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